新☆世紀☆白書U
Yu☆Yu☆ GENESIS EVANGELION AFTER

presented by かのもの様


第3新東京市で起こった、『使徒』と呼ばれる巨大生物と特務機関『NERV』という組織の人型決戦兵器『エヴァンゲリオン』との戦いから8年の歳月が過ぎた。
ここ、第2新東京市にある帝國ホテルにおいて、碇家の当主であり、碇グループの若き会長、碇シンジと碇グループの傘下企業のイカリ・エレクトロニクスの若き社長である惣流・アスカ・ラングレー女史との結婚披露宴が行われようとしていた。

 ★☆★

「本当にいいの。レイ……マナ?」

アスカは、親友であり恋敵の2人に、最後の確認をしていた。

「……うん。いいよ……アスカ……」

「蔵馬君の正妻は、アスカでいいよ……」

あの戦いで育まれた蔵馬、レイ、アスカ、マナの恋。
元々、人間ではなく、妖怪であり、更には盗賊が本業の蔵馬は、実質、誰か1人を選ぶということをしなかった。
人間、碇シンジとして生まれ変わっても……人の心を持っていても……この3人の女性という宝を手放す事をしなかった。
しかし、この日本という国では、一夫一妻が法律で定められており、更には碇グループの会長としては、体裁を保つ為に、誰かと結婚しなければならなかった。
社会的地位の高い人間は、家庭を営んでいない者は軽んじられるからである。
『NERV』を陰から操り、『人類補完計画』などという、傍から見れば集団自殺に過ぎない計画を立てていた『SEELE』という組織は、もはや存在しない。
8年前の戦いで、『SEELE』のメンバーの老人達は謎の死を遂げており、彼らの勢力は全て碇グループに取って代わられた。
もはや、碇グループは世界第一位の大財閥であり、その発言力は国連の常任五ヶ国に匹敵するほどになっていた。
碇グループの会長だった祖父、碇シンタロウの後を継いだ蔵馬は、祖父を遥かに凌駕する辣腕振りを発揮し、碇グループの地位を不動のモノにしてしまったのだ。
大学を卒業して、僅か一年であった。
元々、魔界一の知略の持ち主と呼ばれ、かつて魔界三大国家の一つである黄泉の国の軍事参謀総長を務めた蔵馬にとっては、人間界の財界を牛耳ることなど造作もなかった。
何故なら、魔界という世界は力こそが全て、力を持つ者こそが法律である。
倫理も、人道も関係ない、謀略と殺戮が当たり前の世界である魔界を牛耳っていた三つの国の一つのナンバー2だったのだ。
それに比べれは、人間界のマネーゲームはお遊戯に等しかった。
確かに一般人から見れば、財界と呼ばれる上流世界は得たいの知れない世界かもしれない。
しかし、魔界は次元そのものが違うのだ。
例えば人間界のカリスマとも呼ばれる財界人が、魔界で勢力を伸ばそうとしても、恐らく一年も経たずして潰されてしまうだろう。
さて、話がそれてきたので戻そう。
正直、蔵馬としては誰でも良かった。
レイも、アスカも、マナも……蔵馬にとっては比べることなど出来ない大切な宝。
その中でアスカを選んだのは、純粋に彼女の知名度からである。
レイは、正式にユイの養女となり、綾波姓から碇姓に変わっていて、一応、蔵馬の義理の妹となっていた。
マナは、あれ以来ずっと当主専属のメイドという立場である。
その中で、碇グループに就職したアスカの名は碇グループ内はおろか、他の財閥、企業に知れ渡っていた。
研修期間において、己の実力を示したアスカは、正式に雇用され、次々と功績を立てていった。
蔵馬が大学を卒業し、碇翁の正式な後継者として経営に参加したとき、アスカは既に常務の地位に就いていた。
蔵馬は、すぐにアスカを傘下企業に送り、彼女をそこの社長に就けた。
流石にこの人事には、グループの幹部からの批判が相次いだが、蔵馬はそれを黙殺した。
そして半年後……この人事に文句を言う者は1人もいなくなったのだ。
半年で、アスカが任されたイカリ・エレクトロニクスはグループ内で最も功績を立てている企業になっていたのだ。
もう『一番』に拘り、能力はあるが、視野が狭く協調性がかけていた出会った当時のアスカではないのだ。
蔵馬に惹かれ、蔵馬の影響を受け、広い視野と協調性を身につけたアスカは、その天才的な才能を遺憾なく発揮し、業績を挙げ続けたのだ。
もはや、アスカに文句を言える者は存在しなかった。
碇グループは、功績を立てた者に対する謂れのない中傷は許されていない。
他人の能力を正当に評価できない者が、上に行くことなど決してできないのだ。
勿論、アスカの功績はそのまま蔵馬の慧眼を示したことにも繋がる。
蔵馬の先見の明は高く評価され、更に蔵馬自身の功績も加わり、誰もが蔵馬を後継者と認めるようになった。
むしろ、前会長てあるシンタロウを凌駕すると言われるに至った。
そして、蔵馬はアスカと共に、碇グループを不動のモノにしたのだ。
その為、蔵馬同様、アスカの名も知れ渡ったのだ。
しかしそれでも、蔵馬とアスカの結婚に反対を唱えた者も皆無だったわけではない。
アスカは確かに業績はあるが、家柄という物に拘る者たちからみれば、碇グループの会長の妻には相応しくないと判断されていた。
アスカの父は、それほど大した地位の人間でもないし、養母もそうである。
実母であるキョウコもユイの親友とはいえ、一研究所の副所長であるにすぎなかった。
それ故に、もっと高貴な身分の令嬢を……と、主張する者たちが居たのだ。
その様な輩が蔵馬に相応しいとして、紹介してきた女性が数多くいた。
明らかに政略結婚であり、蔵馬の好みからはかけ離れた存在ばかりであった。
確かに、容姿は十分に整っていた。
しかし、蔵馬から見ればただの頭の弱い女としか映らなかった。
衣食住に困ったことがなく、幼い頃から誰かに傅かれることに慣れすぎ、1人では何も出来ないような愚物ばかりであった。
最初の頃は、丁重に断っていた蔵馬だが、余りにもしつこいので一睨みして追い払うようになった。
財界がいかに厳しい競争世界であるとはいえ、蔵馬が生きてきた魔界に比べると次元が違う。
それ以来、二度とこのようなことは無くなった。

 ★☆★

レイとマナの2人が正妻の座をアスカに譲った理由は……。
マナは、碇シンジ専属のメイドという地位が確立されており、やはりレイ、アスカの2人に比べればその立場は微妙であった。
何よりマナは、蔵馬に愛され傍に居られればそれで良いと考えていた。
レイは、戸籍上では碇ユイの養女となっており、蔵馬の義理の妹という立場である。
それくらいなら、養子縁組を破棄すればそれで済むが、昔と比べてレイも色々考えるようになっていた。
それは、自分とアスカ、マナとの違い……。
レイは、使徒の遺伝子を持っているので、妖狐である蔵馬と同じく不老長寿である。
他の2人と違い、レイは蔵馬とかなり永く共にいることができる。
子供を身篭ることが出来なくても、これからもずっと蔵馬と一緒にいられるのだから、あと数十年くらいしか蔵馬と共にいられないアスカに正妻の座くらいは譲ってもいいと考えるようになっていた。
昔と違い、レイはアスカのことも大好きなのだ。
先に逝ってしまう恋敵にして親友であるアスカに、レイがしてやれることはコレくらいなのだ。

「……私は、アスカにこんなことくらいしか譲れない……。ごめんなさい…」

「……十分よ…。ありがとう…レイ…」



結婚式には、碇グループと係わり合いのある政財界の大物の他に、魔界にいる飛影以外の蔵馬の仲間たち―――。
相変わらずラーメン屋の屋台を引いている浦飯ユウスケ。
大学院生の雪村ケイコ。
碇グループの傘下企業に就職した桑原カズマ。
カズマの姉で理容師の桑原シズル。
ユウスケの母の浦飯アツコ。
桑原家に居候している雪菜。
若手文学作家の海藤ユウ。
蟲寄市の地元企業に就職した城戸アサトと柳沢ミツナリ。
ボランティア活動家の御手洗キヨシ。
そして、霊界の最高執政官であるコエンマも『人間界ヴァージョン』で、図々しくもぼたんと共に参加していた。
その他に畑中一家と旧NERVの職員らも招待された。
人工進化研究所所長である碇ユイと副所長の惣流・キョウコ・ツェッペリンは2人の母親なので当然として、他には監察部主任の加持リョウジ、警備部主任の加持ミサト(旧姓葛城)。
研究チームの主任である赤木リツコ。
旧NERVのオペレーターだった警備部主任補佐の日向マコト、副所長補佐の青葉シゲル、研究チーム主任補佐の青葉マヤ(旧姓伊吹)。
元NERV副司令だった、京都大学教授の冬月コウゾウ。
ただし、蔵馬の血縁上の父である元NERV司令の六分儀ゲンドウは招待されておらず、既にリツコにも捨てられており(これを持ってリツコのゲンドウに対する復讐が完遂した)、今では浮浪者にまで落ちぶれているらしい。
フィフスチルドレン、渚カヲルは、碇グループ会長主席秘書という立場なので、結婚式の準備に追われていた。

「結婚はいいねぇ。愛し合う男女が家族になる。リリンの恋愛の極みだよ」

「結婚は『人生の墓場』とも言われますよ渚秘書……」

等とわけの分からない台詞を吐き、部下に突っ込まれている。
フォースチルドレンの鈴原トウジは、婚約者の洞木ヒカリと共に、未だセカンド・インパクトの影響で貧困に苦しむ国への赴く、民間援助団体(NGO)に参加しているので、今回は欠席しており、代理としてトウジの妹の鈴原ハルナが出席している。

「すいません。碇さん……いえ、碇会長……。ウチの兄貴とヒカリさんはどうしても帰国できないらしくて……」

「残念ですが、仕方ありませんよ……。そういう事情なら……それにしても、あのトウジがNGOに参加しているとは……」

「ヒカリさんの影響かと思われるかもしれませんが、むしろ逆です。ヒカリさんが兄貴に引っ張れているようで……兄貴いわく『蔵馬の友人に相応しい漢になるんや!』らしいですわ……」

しかし、結局、鈴原トウジはこの後、二度と母国の土を踏むことはなかった。
これより10年後……事故に遭い若くして逝ってしまうのだ。

 ★☆★

10年後、霊界。
コエンマの審判を受け、NGO隊員として功績により、トウジは天国行きが決定した。
トウジは、ジョルジュ・早乙女に天国への道を案内されていた。

「……ワシは天国行きか……ありがたいこっちゃで……」

「……この先に、お前と話したいと言われた方が待っておられる。思い残すことのないように……な」

ジョルジュが指した方に、1人の青年が立っていた。
それは、トウジが憧れた漢……碇シンジであった。

「く……蔵馬!?」

「久しぶりだな……トウジ…」

「なんでここにお前がおるんや……お前も死んだんか!?」

「……いいや…俺はまだ生きている……。コエンマに頼んでお前と話す時間を用意してもらったんだ……」

「蔵馬さん……。コエンマ様から……30分だけだ……との事です」

「すまないな、ジョルジュ…」

「いえ、では鈴原トウジ。先程も言ったが、思い残す事の無い様に……な」

何が起こっているのか、よく理解できていないトウジに、蔵馬は自分の正体を明かした。
自分が人間ではなく、1000年以上生きている妖怪であること。
一時期、霊界の指令で行動していたことがあり、今でも霊界の最高執政官であるコエンマと付き合いがあること……など。

「ほぉ…そうやったんか…。やっぱりお前は只者やなかったんやな…」

「結果的に、お前を騙すことになってしまったな…」

「いや、ワシももう子供やない。蔵馬の事情もちゃんと理解できとる。何より、生きとる間にお前と再会できへんだことが心残りやったから……態々、あの世まで逢いに来てくれて……うれしいわ」

それから、30分間。蔵馬とトウジは心行くまで語り合った。

「もう時間やな……」

「死は……完全な終わりではない。人の魂は何度も生まれ変わる。最終的に魂はどうなるのかは霊界でさえも分かっていないが……お前はまた、新しい命として生まれ変わる。しばらく天国で過ごした、何十年、何百年後……いつになるかは分からないが……な。その来世でまた…お前と出会いたいものだ」

「そうやな。生まれ変わることが出来るんや……。いつか見つけてくれ……生まれ変わったワシを…」

2人は固く握手し、今生の別れを交わした。

 ★☆★

そして、最後は……相田ケンスケだった。
蔵馬から離れていったケンスケだったが、刻が経つにつれ、ケンスケは自分の過ちに気付いた。
そして、蔵馬がああしなければ、自分がどうなっていたか分からないことを悟った。
戦略自衛隊を志し、防衛大学校に入学したが、蔵馬の言うように自分に『兵士』は向いていないことが骨身に染みて思い知らされた。
結局、一月も持たず退学……。
進路に迷ったケンスケは、カメラマンを志した。
才能があったのか、頭角を現し、若手カメラマンとして脚光を浴びるようになっていた。
高校時代、この才能を無駄遣いし、隠し撮りなどに費やしていたことを後悔するほどの活躍ぶりであった。
蔵馬が、碇グループの会長に就任した頃に、小さいが個展を開ける程にまでなっていた。
蔵馬は、アスカと共にその個展を見に行っていた。

「すごいな……。以前の隠し撮りなんかとはレベルが違う……。この女性の写真だが、健康的な色気と魅力がうまく表現されている…」

「ほんとね。あの変態メガネも、こんな写真が撮れたんだ。これなら、アタシも撮ってもらいたいわね……」

「…あっ、碇……、惣流……」

「……ケンスケ…」

「……見に来てくれたのか……」

「……迷惑だったか。絶交を言い渡した男に来られて?」

「いや、嬉しいよ……。そして、あの時は……すまなかった。そして、ありがとう…」

ケンスケは素直に頭を下げた。

「お前がああしていなかったら、俺は今頃は、NERVにとっ捕まって、親父に多大な迷惑を掛けていたかもしれないんだよな…」

「へ〜。アンタがそんなこと言うなんて……。少しは成長したようね…」

「ああ。時間が経って、冷静に考えて……蔵馬の言うことが最もだったってのを悟ったよ…」

「分かってくれればそれでいいよ。ケンスケ」

「碇……。恥を忍んで頼む。……絶交を取り消したいんだ。もう一度……俺と…友達になってくれ!」

「………よく…立ち直ってくれたなケンスケ。お前に絶交されたとき……少し寂しかった。お前のこと、俺は嫌いじゃなかったからな……」

「それじゃあ!」

「ああ。おかえり……ケンスケ…」

「ありがとう…。碇……いや、蔵馬…」

 ★☆★

様々な人たちに祝福され、蔵馬とアスカは結婚した。
碇・アスカ・ラングレーは、碇シンタロウが待望した跡取りとなる男子を出産し、また碇グループの重鎮としても活躍することとなる。

〈新☆世紀☆白書2 完〉






Fin...
(2010.12.18 初版)


(あとがき)

コエンマ「……ジョ〜ル〜ジュ〜〜〜〜〜〜〜!!」
ジョルジュ「な……なんですか。コエンマ様……」
コエンマ「貴様、ワシを差し置いて本編で台詞付きの出番があったなぁ〜〜〜〜」
ジョルジュ「いえ、これは…その…」
コエンマ「ワシなんぞ、一行の説明文でしか出番がなかったのに……」
ジョルジュ「あのコエンマ様……そのハンマーは…」
ドシン!
ジョルジュ「ぐぇ」
コエンマ「ジョルジュの分際で思い知ったか!こら、かのもの。次の機会にはワシにも出番を寄越せ!」



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