何が理由だったか・・・今でもよくわからない。

「あ、あの!い、いいい碇シンジ君!!」

衝動的な行動だといわれればそうかもしれない。

「ん、なに?」

感傷的かもしれなかった・・・ただ・・・

「わ、私と・・・」

その淡雪のように消えてしまいそうな彼女を・・・

「つ、付き合ってください!!」

掴んで・・・離さないで・・・

「うん、いいよ。」

たとえ後悔するとしても・・・






天使と死神と福音とレクリエーション

恋愛鎮魂歌

presented by 睦月様







休日とは文字通り休むための日だ。
安息日と呼ばれたりもするし、休日があるからこそ平日にも張りが出る。
人によっては休めなかったり塾などがあってつぶれることもありはするがそれもまた休日の過ごし方の一例だろう。

そして碇邸の朝は休日だろうが平日だろうが変わらない。
いつものとおりシンジの作った朝食を食べて、牛になるつもりなのか真っ先にスライム化したのはアスカだった。

「まんぞくまんぞくぅ~」
「アスカ、そんなところで寝たら邪魔だよ。」
「余は満足じゃシンジの助」
「誰がシンジの助だよ。時代劇の見すぎじゃない?」

牛化まっしぐらなアスカを見てため息を尽くシンジもいつもの通りだ。
そのうちアスカと書いてルビに牛と表示されるのではないだろうか?

そんなアスカにマナが声をかけた。

「アースカ、今日は一緒に買い物に行くんでしょ?」
「は!そうだった。こんなとこで満足してらんないんだった!!」
「っていうかあのまま放っておいたらそのままクライマックスまで行きそうだったけどね。」

買い物の約束を思い出して復活してきたアスカ・・・現金過ぎるだろう。

「マナたちは買い物に行くの?」
「そうよシンジ君、一緒に来る?」
「止めとく」

女の買い物に付き合う不毛さは”経験”で知っている。
むやみやたらと体力と気力と時間を消費しつつ、自分への見返りは皆無というありえないコンボだ。
せっかくの休日にそれはどうだろうか?

「え~レイもマナもマユミちゃんも行くのに?」

見れば4人そろって頷いている。
服をなめてはいけない。
一枚一枚は大した重さはなくても数枚集まれば結構な重さになる。

そしてたいていの場合それを運ぶための男手がいるわけで・・・

「あと、ヒカリも合流するからシンジ、荷物もちに付いてきなさい。」
「やだ。」
「だーいじょうぶ。さすがに下着は持たせないから」
「そういう問題じゃない。」

きっぱりと断ったシンジ、今日は珍しくはっきりとした拒絶だ。

「連れて行くならムサシとケイタにしてよ」
「シンジ、俺達を売るのか!?」
「ひどいよシンジ君!!」

友情とはなんだろう?
少なくとも脳裏を走った苦い記憶にシンジを置いてこそこそ逃げ出そうとしている人間には適応されないと思う。

「何言ってんの、もちろんあんた達三人共に決まっているでしょう?今日は他にも鈴原と相田も呼んでるのよ。」

男五人を引き連れての買い物とは、一体どれだけ買うつもりなんだ?

「とにかく今日は駄目」
「何よ?なんか予定があるの?」
「ある、はずせない用事が」
「何?」
「デート」
「「「「「「え?」」」」」」

時が止まった。
この場にいる全員が硬直している。

再起動まであと・・・3・・・2・・・1

「でぃ、でぃえーとぉー!!?」
「それ、どこの国の発音だよ?」
「い、いやそれより今あんたなんって言った!?」
「だからデート、逢引、恋人同士が一緒に出かけること。」

やはり聞き間違えではなかったらしい。

「だから今日は付き合えない。ごめんね」

硬直した一同が現実に戻ってきたのは身支度を整えたシンジが家を出て行ったあとだった。

---------------------------------------------------------------

デートの定番とはなんだろうか?
ありきたりなところを言うなら遊園地、映画、水族館、レストラン、エトセトラ・・・まあいろいろありはするがぶっちゃけ恋人同士が一緒に出かけることが第一条件なのだから、一緒にいること=デートといえなくもない。

そしてデートをすると宣言したシンジは今遊園地の入場口の前にいた。

さらにそんなシンジを見つめる視線が複数。

「こちらレッド小隊、目標を確認」

シンジから見えない位置から観察しているのはアスカだ。
ほかにケイタとマナがいる。

もちろん買い物の予定はドタキャンだ。
ヒカリが残念がっていようとそれどころではない。
って言うかトウジと二人っきりになれるチャンスなので感謝されてもいいはず。
お邪魔虫(ケンスケ)の駆除は自分でどうにかしてもらおう。

『こちらブルー小隊、こちらも確認した。問題ないわ』

通信機の向こうの声はレイだ。
別の位置からシンジを見ているらしい。

『なあ、趣味悪くないか?』

レイに続いて通信を入れてきたのはムサシだ。
軽く呆れているらしい。

「何言ってんの!?あのシンジがデートなのよ!!」
「そうそう、ここは相手をきっちり・・・確認しないとね!!」
「アスカ、マナ・・・ちょっと怖いよ・・・」

同じ班のケイタがかなり引き気味に言うが二人とも聞いていない。
目が血走っているところなんか年頃の女の子がそれはどうよ?な感じなのであえて目をそらして見ないようにするやさしさがケイタクォリティー。

『・・・ケイタ?』
「ムサシ?どうかしたの?」
『こっちはさっきから山岸が藁人形を持ち出している。』
「・・・・・・」

どう突っ込んだらいいのかわからなかったので口を閉じた。
ムサシの方にはレイとマユミがいる。
こっちのペアのようにうるさくはないだろうが逆に静かな恐怖を発散しているようだ。
別の意味できついかもしれない。

『・・・来た。』

通信機越しのレイの言葉に全員の緊張が高まった。
見ればシンジに向かって一人の女の子が近づいてくる。

おそらく自分たちと同じくらいの年だろう。
休日だというのに何故か学校の制服を着ているのが気になるが、ハーフロングの髪をポニーテールにしたなかなかかわいい子だ。

「あれってうちの学校の制服じゃない?」
「そういえば見たことあるかも?確か隣のクラスのえっと・・・浅見ヒナって言ったかな?」

やはりシンジの相手は彼女らしい。
自分に向かってくる彼女を見たシンジが手を振ると彼女は子犬の尻尾のように手をぶんぶん振ってうれしそうに笑って駆け寄るスピードが上がる。
どこからどう見てもデートの待ち合わせをしている恋人同士の図だ。

初々しい姿を見た周囲の人間も朝からいいもの見たと笑顔になる。

そして、そんなシンジ達の様子を見ているのはアスカ達だけではなかった。

第三新東京市の地下、再建された白亜のピラミッドのネルフ本部。
発令所のモニターのすべてにシンジと浅見ヒナの姿が映っていた。

「まさかシンジにそんな甲斐性があったなんて・・・母さんうれしいわ~」

なにやらとんでもなことを言っているのはユイだ。
いまさら驚くほどのことでもないが。

「私としてはアスカちゃんにがんばってほしいからちょっと複雑ね・・・はあ!!ひょっとしてここからドロッドロの略奪愛に!?」

昼ドラの見すぎな台詞を吐いているのはキョウコだ。
趣味に走るんじゃない。

「シンちゃんもやるわねー」
「あーうー」
「はいはい、ママはここよ~」

最近生まれた愛息子の世話をしながら、それでもシンジ達に興味津々なのはミサト。
むずがる赤ん坊にキスの雨を降らしている姿はだいぶ所帯じみている。

「まさかストーキングにMAGIを使う日が来るとはね・・・」

しみじみとため息をついたのはリツコだ。
どうやらシンジのデートを見るのにMAGIを使っていることにあきれているらしい。

しかし、そうは言ってもこの面子の中に入っている時点で十分にデバガメである。

この四人が発令所のど真ん中でひとつのテーブルを囲んでいるのだから浮きまくっていることこの上ない。

「でも、気になるわね」
「どうしたのリツコ?」
「あの奥手のシンジ君をどうやってデートに誘い出したのかしら?」

確かに気になる。
それはリツコだけでなくこの場にいる全員の思いだ。

シンジも女嫌いというわけではないが、いまいちその手の話題からは遠い。
アスカ達に手を出したとは聞かないし、他に誰か気になる子がいるそぶりもない。
恋愛というものに対して興味が薄いのかも知れない。

いつもそばにいる少女達はすでに家族に近い感覚なので、このまま行けば順当にあの五人の中の誰かを選ぶだろうと思っていたのだが、その予想を覆しつつ奥手なシンジをデートに引っ張り出した少女はいったい何者だろうか?
第一中の制服を着ているのだからシンジ達の同級生というのは間違いないと思うが。

「マヤちゃん、この子が誰なのか検索してくれる?」
「あ、はい」

ユイの言葉に答えたのは伊吹マヤ改め日向マヤ、先日結婚式を挙げた彼女の左手薬指で結婚指輪がキランと光る。
検索はすぐに済んでその結果がマヤのモニターに表示される。

「え~っと、名前は浅見ヒナ、第一中学校の三年生。シンジ君達の同級生で隣のクラス、15歳で・・・え?」

マヤの報告がとまった。

「マヤ?どうかしたの?」
「あ、すいません。ちょっと・・・おかしいな、こんな間違い・・・」
「間違い?」
「はい、何度も確認しているのですが・・・」

ユイ、キョウコ、リツコの三人が反応した。
マヤの行った検索はMAGIを使ったものだ。
MAGIに関しては三人が定期的にバージョンアップをして、情報に関してもほぼリアルタイムで更新される。
そんなMAGIに間違い?

たしかに、いくらMAGIが優秀だろうが間違いはある。
しかしそれはMAGIが間違うというよりもその前段階、使う側の人間が間違うのだ。

だが、ユイやキョウコやリツコには及ばないとしてもマヤも十分に優秀な人材だ。
ただの人物検索でそう何度も間違うものだろうか?

「マヤ、いったいどうしたの?」
「先輩、浅見ヒナちゃんのプロフィールなんですが・・・」
「どれ?」
「ここを見てください。」

そう言ってマヤは問題の部分を指差す。
表示されている単語を見た瞬間、リツコだけでなく全員がその意味を一瞬理解できなかった。

---------------------------------------------------------------

周囲の思いを完全に無視したかのようにシンジと浅見ヒナは遊園地に入っていく。

「まさかシンジ君とデートできるなんて」
「ぼくもデートって初めてだからどうしたらいいかよくわかんないんだけどね」

隣を歩くヒナに苦笑した笑顔を向けるとそれを見たヒナが赤くなる。

「で、でも惣流さんとか綾波さんとか、ほかにも霧島さんに山岸さんとも付き合ってるってうわさが・・・それに渚さんも・・・」
「ぼくっていったいどれだけプレイボーイ扱いされてるんだ?」

頭が痛い。
シンジに言わせればあの5人とは浮世苦節あってかなり強い絆を感じているがまだ彼女とか言う関係ではないと思っている。
周囲から言わせれば美少女達を独占しているとんでも野郎ということになるのだが、とりあえず。

「そのうわさの出所がとっても気になるんだけど?」
「相田君だけど?」

シンジのおしおき帳に親友”だった”めがねの少年の名前が載った。
この際徹底的に躾けてしまおう。
それが彼のためにもなる。

「まあケンスケに関しては後できっちり殺っておくとして、浅見さんはどこに行きたい?」
「あ、あの・・・」
「ん?」

見ればヒナが真っ赤になって何か言いたそうにしている。

「で、出来れば名前で呼んでくれないかな?」

かなり真剣な顔でそんなことを言われた。
そんな断ったら泣きますみたいな顔して来なくてもいいんじゃないか?と思いながら、シンジはにこやかに頷く。
今日のシンジは彼女の彼氏だ。
むしろ名前で呼び合うのは当然。

「いいよ。ヒナさんでいいのかな?」
「ヒ、ヒナでいいです。じゃなかった。いいよ。」
「じゃあヒナ、一緒に行こうか?」
「うん!」

花が咲いたかのような笑顔を浮かべたヒナの手をとったシンジはアトラクションに向かって歩き出す。
手をつかまれているヒナのほうはそれどころではないらしい。
茹蛸のように真っ赤になってシンジに引かれていく。

---------------------------------------------------------------

「「なによあれ!!」」
「ぐあ!!」

至近距離で甲高い絶叫という超音波にさらされたケイタがやられた。
ぶっ倒れてぴくぴくしている。
音波兵器の元はアスカとマナだ。

二人とも手をつないでいるシンジとヒナを見て歯軋りしている。

「デレッデレしてんじゃないわよシンジ!!」
「私だってあんなふうに手をつないだことないのに!!」

当然といえば当然なのだが、シンジの周囲にはたいてい誰かがいる。
この場合の誰かというのは当然女の子という意味でだ。
そして同時にアスカ、マナ、マユミ、レイにカヲルは強い絆で結ばれている。

出かけるにしても大抵誰かと一緒になるためにデートというよりはみんなそろって遊びにいくパターンになってしまうから抜け駆けやいまのシンジとヒナのような一対一のデートなどは不可能に近い。
せいぜい登下校や買出しなどで一緒になるのが関の山だ。
ムードとか雰囲気とかデートとはちょっと違う。

そんな感じだから普通に付き合う分には問題ないが、いざ恋人みたいなことをしようとすると逆に妙な気後れを感じるようになっていたのだが、それなのにあの浅見ヒナはそれをあっさり超えてきた。

『ちょっと待て綾波!!お前どこ行くつもりだ!?』
『シンジ君が呼んでる。』
『呼んでないって!っていうか何のために隠れていたと思ってるんだ!?あとそこ!山岸も丑三つ時でもないのに悪魔笑いしながら藁人形に五寸釘を打つんじゃない!!』
『くすくす・・・』

通信機の先も結構いっぱいいっぱいらしい。
こういうときに突っ込み役のシンジはいないし、代わりが出来そうな凪は仕事だ。
誰が止めるんだこのカオス?

そしてそんなことをしている間にもシンジ達はデートを続けている。

---------------------------------------------------------------

「ヒナは何か乗りたいものってある?」
「えっと、なにかお勧めのものってあるのかな?」
「パンフレットだと・・・ん?」

肩をたたかれたシンジが振り向くと着ぐるみがいた。
コミカルな動きをする二足歩行の耳が大きな黒ネズミのマスコットだ。

・・・まあここも第三とはいえ東京なのだから、その遊園地にこいつがいてもアリなのかもしれない。
微妙に違っている気もするのであるいはパチモノかもしれない。
ちなみに海バージョンも建設予定があるとかないとか・・・ネズミ君は自分たちに向けてカメラを構えている。
反対側の手には記念写真一枚300円のプラカード、とりあえず思ったのは・・・値段的にぼったくりだろう?

「写真?」
「・・・・・・」

ネズミ君はうんうんと頷いてきた。
こういう遊園地の着ぐるみの中の人・・・もとい、マスコット達はしゃべったらだめらしい。
子供の夢を壊すから、ちなみに今日の気温は30度を越えていたりするんだが、この猛暑の中でもあのもこもこを着て無言でサービスをするとは・・・まさにプロだとシンジは思う。

「せっかくだから撮ってもらわない?」
「そうだね」

マスコットのネズミがカメラを構える前でシンジとヒナは並んだ。
シンジの手をとるかどうかで指をわきわきさせているヒナに苦笑したシンジがヒナの肩を引き寄せると耳まで真っ赤になったヒナがうつむく。
いろんな意味で顔に出やすい子だ。

「ほら、写真撮るんだからヒナも顔を上げてないと」
「う、うん」

シンジに言われて顔を上げたヒナが緊張しながらもがんばって笑うとネズミ君がシャッターを切った。

写真は帰るまでに現像されて出入り口で受け取ることが出来るらしい。
引換券をシンジに渡すとネズミ君はアニメ風にさよならと手を振って去っていった。

「さて、どこを周ろうかな?」
「えっと・・・」

シンジの肩越しにパンフレットを覗くヒナの位置が近い。
大胆な攻勢に出ている。
一緒に写真を撮った事で緊張が取れたのかもしれなかった。

最初に向かうアトラクションを決めたシンジとヒナは連れ立って歩き出す。
その姿は多分誰が見ても恋人同士のそれだろう。

シンジ達が最初に選んだのはジェットコースターだった。

「えっと、これ?」
「嫌いだった?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」

デートの一発目から絶叫ものの王道というのはどうなんだ?
経験のないシンジとしては判断できないのだがそれは正しいのか?

「まだ並んでいる人も少ないし、行きましょ」
「うん」

まあ、ヒナが楽しめるならそれでいいかと思ってシンジも了承したのだが・・・甘かった。
どうやら絶叫物はヒナの好物だったらしい。

垂直落下に近いジェットコースターから始まり、地上30メートルからのフリーフォール、さらに360度ループ三連の立ち乗り型ジェットコースターと延々と絶叫物が続く。

「うぐぅ~」
「大丈夫?」

さすがのシンジもグロッキーだ。
休憩所のイスに座ってテーブルに突っ伏している。
あの加速といきなりの方向転換の反動の連発はしんどい。
エヴァは自分で操縦しているので、事前にどう動くかというのが分かっているから構えることも出来るが、ああいう風に好き勝手動かされると内蔵とかがシェイクされる。

車は運転手より助手席のほうが酔いやすかったりするのはそのあたりが原因かもしれない。

なのにだ・・・明らかにシンジよりか弱そうなヒナがぴんぴんしているのはなんとなく納得が出来ない。
しかも彼女は休憩所で平然とパフェまでぱくついている。

シンジは食欲がまったくない(今何か食べたら戻すかもしれない)のでスポーツドリンクのジュースだけ飲んでいる。

「えっと、次はどこまわろうか?」
「これがいいな」

そういってヒナが示すのは・・・バンジージャンプ・・・この期に及んでまだ絶叫物ですか?
シンジがちょっとだけ青くなっていると・・・

「あれ?」

いつの間にかまたきぐるみがいた。
今度はさっきの黒ネズミの恋人役の黒ネズミさんだ。
違いは耳のリボンと長いまつげ。

「えっと・・・何?」
「・・・・・・」

ネズミさんは何も言わない。
前のネズミ君も何もしゃべらなかったがこのネズミさんは動きもしない。
シンジを見下ろしながらじっとしている。

一応マスコットキャラの常で人形の顔は笑っているがその下の顔は多分怒っているんじゃないかと思うのは気のせいか?

「あ、あの・・・」
「・・・・・・」

無言の圧迫がきつい。
ヒナも何事かとシンジとネズミさんを見ている。

「・・・シンジ君・・・」

しゃべらないはずのマスコットキャラがしゃべった。
しかもどことなく聞き覚えのある声だ。

「ん?ひょっとして・・・」
「あ!!」

シンジが言い切る前にミニーなネズミさんが拉致された。
犯人は白いセーラーのガチョウと赤いシャツを着た黄色いクマ、全身真っ青な宇宙生物にランプから出てきそうな魔人・・・これも微妙にパチモノくさい・・・に担がれてネズミさんは去っていく。

「な、なに?」
「あー」

シンジには大体の状況が読めた。
この程度は最初から予想しておくべきだったと今更ながらに思う。

「気にしなくていいよ。ヒナは今日を楽しんでくれれば。」
「そう?」
「なんって言っても、デートだからね、今日の主役はヒナだもん。

その一言で真っ赤になったヒナに微笑みながらシンジは携帯を取り出す。

---------------------------------------------------------------

「あんた何してんのよ!!」

ガチョウのきぐるみを脱いだアスカが怒鳴りつけたのはレイだ。
さっきの黒ネズミさんのきぐるみを脱いでいる。

マナとマユミもそれぞれのきぐるみを脱いで二人のやり取りを見ている。

「・・・何とか言いなさいよ!!」
「・・・・・・シンジ君と話がしたかった。」
「ぐっ・・・」

案の定だ。
レイだけでなくアスカもマナもマユミも同じ思いだ。

「「「「・・・・・・」」」」

居心地の悪い空気が出来上がった。
全員思いは同じなのにそれを躊躇している。

しかしそれも長くは持たなかった。

「こうなったらシンジに一発殴ってからどういうことか説明させる!!」

いきなりアスカがそんなとんでもないことを言い出してシンジに向かっていこうとしたので、ムサシとケイタが羽交い絞めにしてとめた。

アスカの視線の先にはシンジとヒナがいる。
というかそれしか見えていない。
いくつかのアトラクションを回って、今は二人仲良くゴーカートで遊んでいるところだ。

とっても楽しそうに見える。

「ナイスアスカ!!」

ぐっと親指を立てて同意したのはマナだが、さレイとマユミもとめるどころか頷いている。

男二人はもうこれは自分たちには止められないとさじを投げた。
彼らが出来ることはシンジの冥福を祈ることだけだ。

「じゃあいくわよ!!」
「応!!」
「わるいんだけど・・・」
「「うきゅ!!」」

なにやら飛び出していくことに決定したアスカとマナがオレンジ色の壁に正面衝突した。
続こうとしたレイとマユミがあわてて止まる。

「今日はあの二人の邪魔をさせるわけにはいかないんだ。」

それはこの場にいる人間には見慣れたもの、拒絶の意思によって作り出される絶対領域・・・ATフィールド。
使徒との戦いが終わった今、この力を使えるものは渚カヲル一人しかいない。

「カヲル、どういうことよ!?っていうかあんた。」
「何で男に戻ってるの?」

そこにいたカヲルはいつもの少女ではない。
出会ったときと同じように、男の姿に戻っていた。

「今日は特別だからね、シンジ君に頼まれたのさ。邪魔をさせないでくれってね」
「そんな・・・あんたそれでいいの?」

視線をシンジ達に戻せばどうやら二人は観覧車に向かうようだ。
ソフトクリームをなめながら腕を組む二人、シンジに笑いかけるヒナ、ヒナに笑いかけるシンジ・・・その姿に嫉妬がわいた。

「・・・あんたも同じじゃなかったの?」

アスカだってシンジを拘束する気はない。
したいとも思わない。
そんなことをしてもシンジにその気がなければ自分を見てくれるようにはならないことを知っている程度には大人になった。

プライドの高いアスカは絶対口にすることはないが、シンジが自分じゃない・・・ここにいる誰かを選んだのなら、それを受け入れるだろう。
レイもマナもマユミもあの決戦をともに戦った仲間で戦友で親友だ。
シンジと同じくらい大事に思っている。

彼女達の誰かをシンジが選んだというのなら・・・悔しくはあるかもしれないが祝福してやれると思う。

それは皆言葉にはしないが同じ思いだと思っていた。
目の前のカヲルも・・・だからいきなり現れた浅見ヒナを受け入れることは出来ない。
子供じみたかんしゃくといえなくもない・・・実際その通りだろう。

だから今はシンジと話をしたい。
それは他の皆も同じ思いだ。
アスカはそれを代弁しているに過ぎない。

「とにかくシンジと・・・」

言いかけた言葉をさえぎるようにアスカの携帯がなった。
あわてて取り出して相手を確認すると母親のキョウコだ。

「ママ?どうかした?」
『アスカちゃん?あなたのいるところからシンジ君とデートしている女の子が見える?』
「え?見えるけど・・・って何で!?なんで私がシンジ達が見える場所にいるってわかるの!?」
『私たちは今発令所にいるの。ばっちり監視カメラに映っているわよ。』
「げ!!」

思わずアスカはうめいた。
監視カメラに映っているということは今日の尾行もどきもしっかり見られていたということだ。
他の皆も罰の悪い顔になる。

「ま、まあそれはとりあえずおいておいて、あの二人がどうかしたの?」
『えっとね、もう一度確認するわよ?アスカちゃん、あなたシンジ君と一緒にいる女の子が見える?』
「は?どういうこと?」
『重要なことなの、お願い。』

珍しくあの母があせってるらしいとアスカは気がつく。
面食らっいながらも確認するとシンジが観覧車に乗るところだった。
もちろん浅見ヒナも一緒だ。

「今観覧車に乗るところよ。あの女と一緒にね!」
『そう・・・あなたからも彼女は見えるのね・・・肉眼でも確認できるってことか・・・物理的に接触も出来るようだし・・・』
「は?どういうこと?」

電話の向こうから困惑している空気が伝わってくる。
しかもキョウコだけではなく何人もいるようだ。
どうやらただ事じゃないらしい。

『・・・冷静になって聞いてね、シンジ君と一緒にいる女の子、浅見ヒナさんだけど・・・』
「どうかしたの?」
『彼女・・・死んでるわ。』

---------------------------------------------------------------

シンジとヒナは観覧車のゴンドラから下を見ていた。
どんどん地面が遠くなっていく。
同じくらいの速さで空が近くなってくるように思えた。

「女の子と二人っきりでのデートなんて初めてだからどうしたらいいのかわからなかったけれど、ヒナは楽しかった?」

観覧車の席に座ったシンジは対面に座っているヒナに問いかけた。

「うん、とっても」

そういってヒナはやわらかく笑う。
混じりけのない笑みを見ると本当に楽しんでくれたようだ。

「本当はね、シンジ君の周りには私よりかわいい子が何人もいるから相手にされないだろうなって思ってたの」
「そう?」
「うん、だからね・・・今日は夢がかなってうれしかった。」
「・・・よかったね」

観覧車はゆっくり回る。
半分が過ぎて一番高い位置にゴンドラが到着した。
第三新東京市が一望できる絶景だ。

後は同じだけの時間をかけて降りる。

「・・・ねえヒナ?」
「なに?」
「ぼくでよかったの?」
「え?」

シンジの質問にヒナがきょとんとなる。
何を言われたのか分からなかったらしいがシンジは真剣だ。

「本当にぼくでよかったのかなって・・・デートの相手・・・」
「わ、私は嬉しかったわ」

真っ赤になりつつも力強く断言するヒナを見たシンジは・・・

「そう・・・よかった。」

自分に出来る最高の笑みを作った。
他に出来ることが思いつかない。

「今日はありがとうシンジ君」

シンジの目の前で、ヒナの体が淡い光を放った。
儚く夢幻のような輝きにヒナが包まれる。
それを見たシンジは素直にきれいだと思った。

---------------------------------------------------------------

「はあ?浅見ヒナが死んでる?ママ、それ何の冗談?」
『冗談だとよかったんだけどね、間違いなく彼女は死んでいるわ、それも二日前に。今データを携帯に送るから』

キョウコの言ったデータはすぐにメールで来た。
皆一緒になって画面を覗き込む。

[○月×日深夜 第三新東京市において交通事故発生、原因は自家用車のブレーキ部分の破損による事故と判明、これにより部活動で帰宅が遅くなった同市に住む第一中学校に通う女生徒一名が巻き込まれ重症を負う。病院に搬送されるが12時間後に死亡が確認、女生徒の名は浅見ヒナ(15)]

データに添付されていた写真は間違いなく今シンジと観覧車に乗っている浅見ヒナだった。

「・・・で、でもそれじゃあ・・・今シンジと一緒にいるのは誰!?」
『それは分からないけど・・・浅見ヒナって子が死んでいるのは間違いないわ、何度も確かめたから間違いない。あなたたちが知らないのは仕方ないことなのよ。事故の事後処理とかいろいろで学校の方に連絡が来たのは昨日の夜だったらしいから。』

では今シンジといるのは一体誰だ?
浅見ヒナそっくりの姿をした彼女の正体は?

「カヲル!?あんたなんか知っているんじゃないの!?」
「僕も詳しいことは知らないよ。でもシンジ君は知っていると思う。僕に今日のデートを邪魔しないようにって言ったのはそれが原因じゃないかな?」

確かにカヲルの言うとおりだ。
理由はわからないがシンジが彼女が何者なのか知っている可能性は高い。

「・・・アスカ?」
「何よレイ?」
「シンジ君のゴンドラが戻ってくるわ」

全員が観覧車を見た。
ゴンドラの色は確かにシンジ達が乗ったゴンドラだと示している。

地面についたゴンドラの扉が係員によって開かれ、降りたのは”一人”・・・中に誰もいないことを確認した係員は次のお客さんを中に通した。

そう・・・ゴンドラの中にはシンジ以外誰も乗っていなかったのだ。

---------------------------------------------------------------

日が沈みかける時間、夕日がよく見えるビルの屋上にシンジはいた。
その瞳は昼と夜の境目をじっと見ている。

「お疲れ様・・・でいいのかな?」

いつの間にかシンジの隣に男になったカヲルが並んでいた。
シンジに習うように夕日を見て目を細めている。

「カヲル君、何で男になってるの?」
「ん~今日は愛情よりも友情の方がいいかなって思ってね、そろそろ教えてくれないかな?」

それを聞いたシンジは苦笑した。

「とりあえず、今日はみんなを抑えてくれてありがとう。」
「今日の僕は君の男友達としてここにいるからね、親友の願いを聞くのは当然さ、でも・・・彼女はどこに消えたんだい?」
「文字通りの意味で消えたよ。ぼくの目の前でね。」
「そう・・・いったい彼女はなんだったんだ?」

浅見ヒナは死んでいた。
それも2日前の話だ。
だとすれば今日シンジとデートした浅見ヒナの姿をした彼女は誰なのか?

「・・・彼女は、浅見ヒナはMPLSだったんだ。」
「能力に目覚めていたのかい?」
「うん、でもそんな危険なものじゃない。ブギーさんも出てこなかったしね。それに彼女の能力は本人が死ぬことで始めて発現する能力だった。」

カヲルが見たのは深いため息をつくシンジの姿だった。

「残留思念ってしっている?」
「残留思念?」

何かを強く思い。
その思いを残したままこの世から去った人の置き土産。

「彼女の能力はそれ、具体的に言うと死ぬ瞬間に一番強く思っていたこと、それを自分のドッペルゲンガー(二重の歩く人)にやらせるんだ。」

ドッペルゲンガー、自分そっくりの人物を見る現象、寿命がつきかけている人間が見ると言われている。
浅見ヒナの能力はそれを実体付きの状態で作り出す能力だった。
だからこそ監視カメラにも他のみんなにも見えたのだ。

「つまり心残りを自分に代わって自分のコピーが自動的に果たす能力、って言えばいいのかな?」
「じゃあ君は浅見ヒナの幽霊みたいなものとデートしたということ?」
「あながち間違っちゃいないと思うよ。」
「ということは彼女の最後の願いは君とデートすることだったってことかい?」
「そうらしい・・・ぼくなんかのどこがよかったんだろうね?ほかにやりたいこととか行きたい場所もあったと思うんだけど。」

自分達くらいの年代にとって恋愛というものがどれだけ重いことなのか・・・シンジにだって分からなくはない。

「何時気がついたんだい?彼女が本物じゃないって。」
「会った瞬間、一目見たときにまっとうな人間じゃないってことには気がついたよ。彼女には”影”がなかったからね。」

実体があると言っても浅見ヒナのドッペルゲンガーの本質は能力で作られたエネルギー体だ。
彼女を構成していたエネルギーはもともと実体や色を持たないめに光を透過してしまった。
それゆえに彼女には影が存在しなかったのだ。

ちょっと注意して見ればアスカ達にもヒナに影がないことに気づいたかもしれないが、彼女たちの場合はいろんな意味で盲目になっていたので仕方がない。

「最初は何が目的なのか、どういう存在なのか確かめるためにデートを引き受けたんだけど。少し調べると全部ぼくの先走りってことが分かった。彼女の本体が死んることはすぐ分かったし、それであの子がどういう存在かも見当がついた。・・・それにね・・・」

シンジが差し出したのは今日のデートで撮った写真だ。
それを見たカヲルの目が細くなる。
シンジの隣に写っている浅見ヒナ・・・本当に楽しそうに笑っている彼女は・・・

「・・・消えかけているね?」

カヲルの言うとおりだった。
写真に写っているシンジははっきり写っているのに、その隣のヒナは文字通りの意味で消えていっている。
まるで初めからそこにいなかったかのように。

「もともと存在しなかったはずの物だからね、心残りがなくなれば消えてしまう。痕跡も含めて跡形もなくね。」
「・・・シンジ君?君は彼女が消えるから今日デートしたのかい?そうしなければ彼女のドッペルゲンガーが残り続けるから?」
「ぼくにもよくわからないんだ。」

能力の本体である本物の浅見ヒナは死んでいるのだ。
ドッペルゲンガーのヒナがこの世界に残り続けるとは思えない。
そう遠くない未来にドッペルゲンガーは消えていただろう。

シンジはそれまでヒナのデートの誘いを断り続ければよかったはずだ。

しかし、シンジはヒナの申し出を受けた。

「・・・なんでだろ?」

シンジ自身、なぜデートをしようと思ったのかわからない。
危険がないとはいえヒナのドッペルゲンガーを放っておくのは不安という実質的な理由もあったのは認めよう。

でもデートを受けようと思った一番の理由は・・・

「彼女が本気だったからかな?」

真剣な恋・・・あるいはヒナにとっては初恋だったのかも知れない。
死の間際に望むほど強い思いだったのは間違いない事実だ。

もしシンジが断ったとしても、本当の彼女が順調に成長し、学校を卒業して社会に出ればそんな自分を思い出して懐かしがることも笑うこともできただろうそれが本当の浅見ヒナだったなら・・・しかしその日は来ない、永遠に・・・だから彼女が最後に願ったことくらいかなえてやろうと思ったのかもしれない。
同情心があったのは確かだ。

「カヲル君?」
「なんだい?」
「ぼくはひどい奴だ。」
「なぜ?」
「誠実じゃなかったから」

純粋な恋愛でなかったのは誰よりもシンジが分かっている。
不誠実とののしられれば甘んじて受けるしかない。

「それでも彼女はぼくで良かったのかって聞いたら嬉しいって言って消えていったよ。」

どうやらシンジの憂鬱の原因はその辺りにあるらしい。
シンジも十分生真面目だ。

「何がおかしいわけ?」
「シンジ君は正直すぎるとおもうよ。それに考えすぎだ。」

カヲルはシンジとヒナの写った写真を指差す。
かなり薄くなっているがそこに写っているヒナの笑顔。

「君だって適当な気持ちじゃなかったんだろう?少なくとも今日だけは彼女の彼氏であろうとした。違う?」
「・・・・・・」
「僕はそれで十分だと思うけどね。」

不器用だったと思う。
誠実でさえなかった。

でも・・・それでも彼女は嬉しいと、楽しいと笑ってくれた。

いずれはヒナの笑顔も、ヒナの笑い声も・・・この写真と同じように記憶から薄れて思い出せなくなるだろう。
それでも・・・多分何かは残る。
目に見えない何かが・・・きっと。

「それでいいのかな・・・」
「このバカシンジがぁ!!」
「はう!!」

あ、ありのまま今起こったことをはなすよ。
「いきなり飛び出してきたアスカにとび蹴りを食らった」
な、何を言っているか分からないと思うけどぼくもなぜ蹴られた分からなかった。
不意打ちとか理不尽とかそんなチャチなもんじゃない。
わき腹に刺さってマジに命の危機ってやつを感じるくらい鋭いけりだった。

「分かってない!あんた何にも分かってないわ!!」
「こ、腰がリアルにくの字に曲がって・・・」
「私の話を聞きなさい!!」

自分でけりをぶち込んでおいて無茶を言う。
さすがにシンジも油断していたのか、もろに食らったみたいなので地面でピクピクもだえているのだが、それを仁王立ちで見下ろすアスカはさすがと言うべきか悪魔と言うべきか悩みどころだ。

「ア、アスカ?ぼくをこの歳で腰痛持ちにするつもりか!?」
「女心をかけらも理解していないあんたが悪い。」
「蹴り殺されそうになるくらいなら理解できなくていい!!」

まあ確かにそのとおりだ。
基本は『命を大事に』、特にシンジの、主にシンジの。

しかしその発言は今日この場限定で、いろいろな意味で命取りだ。

「シンジ君?」
「レイ?」

気がつけばいつの間にかレイが右手に自分の手を絡めて、上目使いでこっちを見上げいるんだが、その赤い瞳が自分を責めている気がするのは気のせいと思いたい。

「なんでせう?」
「ちょっと・・・お話しましょう。」

そのままずるずると引きずられていく。
今日のレイはいつになくパワフルだ。
静かなのに逆らっちゃいけないものを感じる。

「シンジくーん」
「マナまで!?」
「今夜は寝られると思わないでね?」
「なんで!?」

何で寝られないかの理由はアダルトな意味ではあるまい。
だってマナが笑いながら怒気を発散しているから、しかも気がつけば残った左手をがっちりホールドしていた。
いつの間にかシンジはロズウェル状態だ。

「大人の恋愛について教えてあげる。」
「同い年なのに?」
「そこを突っ込むのは野暮ってもんでしょう?」

なんだろうか?
皆何か怒ってる?
しかもこれはぼくのせい?

「EXACTLY(そのとおりでございます)」

気がつけば目の前にはマユミがいる。
文字通り読まれた?
でもマユミが読めるのは記憶だけのはずなのに・・・しかもなんで藁人形を持っているのか激しく問い詰めたい。

「じゃあ僕もご一緒しようかな。」

いつの間にかカヲルが女の子に戻っている。
何でそんな心の底から楽しそうに笑っているのだろうか?

これはあれか?
男には分からない女同士の連帯感とか共感とかそんな感じのあれか?

おしおきだべ~

なにやら不吉な台詞が聞こえた気がするのは全力で気のせいにしたい。

結局この日、シンジはお仕置きを食らった。
日付が変わろうが丑三つ時になろうが許してもらえず。
正座状態で5人に囲まれ、女心と言うものをきっちりレクチャーされた。
しかも「女心」と「恋する乙女」と言う単語を漢字学習帳一冊分書き取りさせられた徹底ぶりである(小学生の宿題か!?と反論したが当然聞き入れられなかった)。

挙句は休日のたびに彼女達と順番に一人ずつデートをする約束までさせられたらしい。

最後のデートが罰になるかどうかは疑問だが、少なくとも少女達はご満悦だったらしい。






Fin...

(2009.05.23 初版)


(あとがき)

書いてみて思ったんですが、この作品は難産でした。
話の構想自体は結構前からあったんですが、なぜか書きづらいんですよね、5~6回は書き直しましたか?
しかも一回書き直すたびに6割とか7割変わるという・・・自分でも不思議だったんですが、理由をじっくり考えるて見ると、自分って恋愛小説ってほとんど読んだ経験がなかったんですね。

物書きの引き出しの多さは読んできた本の数とジャンルに比例するのか・・・

最初から最後までシリアスな感じで行こうと思っていたんですけどね・・・なぜこんなラストがグダグダになるかな・・・読み物の好き嫌いはいかんなーと思う今日この頃です。

作者(睦月様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで