最後の使徒殲滅?

デムパの受信者 とりもち様





 彼女は目隠しをされ、厳重すぎる拘束具をつけられた上で、 椅子に縛り付けられていた。

 しかも、縛り付けているのは、特殊な超合金ワイヤーであり、 かなりキツク、大げさにつけられている。

 そして、先ほどまで、閉じられたくらい部屋に電気が点き、 ドアが開いて、誰かが入ってきた。

 また尋問だ。

 彼女はそう思った。

 そして、彼女は、その口を開いて、自己弁護を始めた。

「わ、私は悪くないのよ!

 だって、仕方なかった事なのよ!

 全てはネルフの・・・

 そ、そう、人類の存続の為にしたんだから!」


 最後に、彼女、元・ネルフ作戦部長・葛城ミサトはそう叫んでいた。

「ふ〜ん、仕方ない・・・ねぇ〜
 ただそれだけで、貴女はどれだけの命や可能性を奪ってきたんですか?」

「仕方ないって言っているけどさ。
 本当は、単なる、アンタの、屁理屈にもならない言い訳じゃない」

「いえ、既に言い訳にもならない戯言・・・
 事実、他にやり様はいくらでもあったのに、貴女は自分の欲望の趣くまま、やっただけ・・・
 むしろ、貴女の存在が人類の為にならない」

 部屋に入ってきて、それを聞いていた人物。

 1人の少年と2人の少女が、呆れたように、そう言った。

「へ・・・その声・・・

 そんな、ま、まさか!

 何でアンタが!

 死んだんじゃ!」


 その声を聞いて、ミサトが叫ぶ。

「なんでって・・・
 僕はアレ以来、中々、死ねない体質になっているしねぇ〜」

 声の主、シンジがそう呟きながら、残りの声の主達を見る

「アンタが流布した嘘がバレて、無罪どころか、 サード・インパクトを最小限に抑えた真の英雄って事が、 世界中に知れ渡り、認められたからでしょう」

「そうね。
 だから、こそ、シンジ君は、ココに私達と戻って来てくれたの」

 呆れたように、残りの声の主であるアスカとレイがそう言った。

 因みに、レイがシンジを名前で呼んでいるのは、アスカと共に、男女の中になったからである。

 いつまでも、“碇君”では、他人行儀だということで・・・


「あ、アンタ等、裏切ったの!」


 驚いたように、ミサトが叫ぶ。

「裏切ったもなにも・・・


 最初っから、


裏切っていたのは、


アンタでしょうが!」




 アスカがそう怒鳴り返した。

「そうね。
 シンジ君を犯罪人にしたて、世界各国の軍に襲わせたわ」

 レイが冷たい声でそう言った。

「そして、その次は、私達を騙して、女神みたいに仕立てあげて、ご機嫌取り?
 はん、呆れるわね」

 アスカが呆れたようにそう言った。

 そう、ミサトは、ネルフを護る為と言って、サード・インパクトの依り代にされたが、 逆にそれを利用して、世界を救ったハズのシンジを人身御供にしたのである。

 本来なら、補完計画の概要がバレてしまい、殆ど崩壊しかけていたゼーレだけに、 その罪をかぶせれば、平和裏に済んだはずなのに、ワザワザ、目に見えていて、 標的にし易い存在を作ったのである。

 理由は、インパクト後のシンジは、ATフィールドらしきモノを使えるようになったからである。

 ミサトが、初めてそれを見たのは、サード・インパクトが終わった後、 まだ状況がつかめていなかった戦自の兵に発砲され、シンジに庇って貰った時である。

 それを見たミサトは、命を助けてもらったクセに、 シンジを使徒と決め付け、いきなり、発砲した。

 しかし、極自然にATフィールドの張れるシンジには通用せず、 ミサトは、その場を逃げるように離れ、世界中に、 自分の都合が良い事を流布し始めたのである。

 その顔は自分の手で討てる可能性のある仇が出来た事で、 邪悪な喜びに、打ち震えていたと言う。

 無論、今までの使徒は自分の手では直接倒せなかったのに、 殆どシンジが倒せていた事に対する身勝手な嫉妬もあったようだ。

 因みに、サード・インパクト直前に、加持から手渡されたマイクロフィルムや、 ツールによって、自分が調べ上げたセカンド・インパクトの事や人類補完計画の事等は、 すっかり忘れたと言うのは言うまでもない。

 目先の事に、自分の記憶を言いように改変して・・・

 シンジが必死に説明をしても、ミサトは全く聞かない

 または、聞いているフリをしても、隙をうかがって自分の命を狙う。

 反撃され、自分が不利になれば、『私達、家族でしょう!』と叫んで、懇願する。

 そして、その場で見逃すと、体勢を整え、繰り返す。

 実に都合の良いミサトや、そのミサトの言う事に、盲目的に従う日向対し、 シンジは悲しい目をして、ネルフを離れたのである。

 他の上層部が、その事態に気付いた時は遅かった。
(覚醒に時間差があり、ネルフ上層部で意識が一番早く戻ったのは、 ミサトと日向であった)

 そして、生き残ったゼーレの残党が、保身を図る為に、 ミサトの流した偽情報を利用し、逃げたり、隠れたりする時間を稼ぐ為、 世界各国にシンジがサード・インパクトの元凶と流布していたのである。

 そこで、訂正すれば終わったのだが・・・

 目覚めたばかりの上層部が、シンジがいなくなって、混乱したり、 国連などの各対応に追われたりして、混乱している内に、 ミサトがネルフ代表として、勝手にTVに出て、その嘘を自分の都合の良い所だけ、 真実と大々的に発表してしまったのである。

 自分の意のままに操れる日向マコトを利用し、ネルフを護る為と嘯いて・・・

 そして、レイとアスカは、サード・インパクトを防いだ女神として売り出したのである。
(この時点では、まだアスカとレイは、サード・インパクトの影響で目覚めてなかった)

 当然、後で、その事実を知り、レイとアスカは情報に誤りがあると訴えようとしたが、 ミサトやマコトの妨害などで、中々、上手くいかなかった。

 無論、青葉シゲルや伊吹マヤも、目覚めた後、その事態に、すぐ気付き、 ミサトに協力するどころか、反対し、むしろ、 ミサトの妨害真実を発表しようとした。

 その為、ミサトの考えで、前もって、日向に準備させていた書類を使い、居ないハズの司令の命令で、 2人は独房に投獄されたのである。
(書類の偽造であるが、ミサトの頼みと、許可をもらったと言う嘘を信じて、考え無しに日向が作った)

 因みに、レイとアスカは、流石に投獄すると拙いので、同じように司令命令を偽造し、 “今は大事をとって休養させる”と言う理由で、病室に監禁するだけだったが・・・

 そして、ミサトを除く、国連から召喚されたゲンドウ、冬月、リツコが、 事情聴取を終え、戻ってくるまで、シンジは人類の敵にされていたのである。

「更に、相応しい相手とか言って、勝手に恋人まで決めようとしたわね」

 アスカも、レイも、冷たい声で、そう言った。

「そ、それはアンタ・・・その、あの・・・
 わ、私はアスカとレイの幸せの為にと思って・・・」

 シドロモドロになりながらも、ミサトはそう言うが・・・

「私達の幸せを思うのであれば、シンジに危害を加えなければ良かったのよ」

「私達は、シンジ君が居れば、それだけでよかったのに・・・」

「シンジが助けに来なければ、あの中年、いえ、老人共の玩具にされていたわ」

「あそこに、何人の厭らしい爺さんがいたと思っているの?」

 先日、ミサトは、シンジの誤解を解く為と偽って、病室から出し、 アスカとレイをあるホテルのパーティ会場に連れて行ったのである。

 そして、ある程度、パーティが進んだ後、 ミサトは、隙を見て、2人の飲み物に、一服盛ったのである。

 パーティの途中で、急激な眠気を覚え、疲れたと言う2人を、 ミサトはスイートルームのベッドに案内したのだ。

 そして、ミサトが、2人が寝たのを確認し、 上手く行った事を、その富豪達に報告しに行った。

 2人をモノにさせるために・・・

 ミサトが意気揚々と部屋を出ていった時に、ホテルのボーイに変装していたシンジが、 仲間達と共に、急いで助けなければ、その毒牙にかかっていただろう。
(仲間とは、ある2人の少女である)

 富豪達は、どのベッドルームにも、どの部屋にも、2人が居なかったので、 ミサトに文句を言おうとした。
(因みに、最初の一発は、一番に2人を見つけた者のモノと言う協定を、 ミサトに言われて張っていたらしい。
 大きなホテルのスウィートルームには、ベッド・ルーム等の部屋が複数あります)

 だが、その時には、既に、ミサトはそのホテルから出て行っており、ネルフ本部に文句を言った所で、 下手に露見したら、自分達が捕まる事になるので、出来ずにいたらしい。
(犯罪行為と分かっていた)

 もっとも、この事件のお陰で、ミサトを逮捕し、投獄する為に、 指名手配にする最初の理由が出来たのであるが・・・

「相手には、全員、既に配偶者は勿論、私達よりも年上の子供が、いえ、ある者は孫さえいた。
 どこが私達のためなの?」

 レイが冷たい声でミサトに言った。

「だ、だって、相手はお金も権力も・・・」

 ミサトが言い訳をするように言葉を並べ始める。

「ふ〜ん、それで、私達を売ろうとしたのね」

 アスカが、怒気を孕んだ声でそう言った。

「う、売ったって・・・その・・・私はね」

「事実、貴女の凍結された口座には、 おかしすぎるほどの金額の入金及び出金があったわ」

 レイは、冷め切った声で、そう言いはなった。

 事実、ミサトが急遽作った口座に、その富豪達から、 パーティの前に、数十億を超える入金があった。
(前金で払った者だけをパーティ会場に招待したらしい)

 おそらく、N弾頭ミサイルを大量に使ったので、いずれ、国連の調査団が、 事実確認に来る事を予想して、逃走する為の資金を得るためだろう。

 ミサトがネルフ本部から消えた事が判明し、直ぐに凍結されたものの・・・

 その時には、既に、半分以上を、下ろして高飛びしていたのである。

 故に、言い訳は利かなかった。
(もっとも、本人は、まだ利くと思っているが・・・)

 当然、その富豪達は、ミサトと組んで、世界を救った女神達を汚そうとしたとして、 財産没収の上に、強姦未遂の罪で投獄されている。

 家族や一族に、離縁された者が多い。

 無論、その所為で離散した家族や一族もいる。

 最も、その元富豪達は、独房の中で、ネルフの代表者と名乗ったミサトから、 女神を自分達の妾に出来るという話が来て、彼女らもそれを望んでいると言ったから、 その話に乗ったのだと叫んでいるらしい。

 話を詳しく聞けば聞くほど、この元富豪の犯罪者達は、自分達の裏のステータスとして、 世界を救った女神達を、自分達共同のセッ○スドー○にしようとしていたとしか思えなかった。

 ミサトに置いていかれた日向は、その事を知り、愕然としたが、嘘と決め付けた。

 だが、ある事実確認に派遣された国連の査察団に、自分が知らずに、 色々と、その手伝いをしていたと言うモノの証拠を見せ付けられ・・・
(もっとも、査察団はわかっていて、手伝っていたとしか思っていないが)

 更に、ミサトと自分によって、投獄されていた青葉シゲルや伊吹マヤが、 査察団に助けられると・・・

 親友だと日向が思っていた青葉シゲルが看護士に支えて貰いながら・・・

「日向マコト二尉は、

葛城ミサト元三佐の色香に迷い、

更に、使徒大戦及び、

サード・インパクトでの最大の功労者、

初号機パイロット、

碇シンジ特務一尉に嫉妬し、

葛城ミサト元三佐と共に、彼をハメ、

恩を最大級の仇で返し、

更にネルフだけでなく、

全て人類の背信行為と分かっていても、

自ら進んで協力をし、諜報部を使って、

協力しない自分達を独房にぶち込み、

司令の命令と偽り、拷問にかけました」


(シンジは使徒殲滅の功績により、出世していると言う設定である)

 とハッキリ証言し、更に、日向の作った命令書も見つかった為、 そんな言い訳はきかなかった。
(因みに、内容の一部はミサトの筆跡だったらしい)

 その青葉シゲルの身体には、酷過ぎる拷問の痕があったと言う。

 回復しても、彼が再び趣味のギターを弾くことは難しいかもしれなかった。

 更に、マヤの方は、投獄中にミサトの所為で、その精神を、半ば壊されていたと言う。

 勿論、日向が、この2人がこんな事になっているとは、全く知らなかったらしい。

 何せ、胸を背中に押し付けられた事で、鼻下伸ばして、ミサトの言われた通りに、 対象者の名前のない、どんな事をするかも詳しく書いていない書類を作成していたのだ。

 また、青葉とマヤが投獄されていた頃、国連に取調べを受けたゲンドウ達は、自分達の罪を、 ある程度(軽い罪は)認めつつ、ミサトが言っている事が殆ど嘘と言う事を、 必死に国連上層部に訴え続け、シンジの無罪を主張していたのである。
(自分達のことも多少は含まれてはいたモノの、メインはシンジである)

 勿論、その時、ゲンドウの場合は、自分達が助かる為には、 現在の状況を引っ繰り返す必要があり、その為には、シンジを引き込み、 ミサトをスケープゴートにするのが、一番効率が良いと考えたからでもある。
(そうすることで、色々と覆せる事が多かった)

 ゆえに、寧ろ、ミサトこそが、セカンド・インパクトやサード・インパクトの原因である事・・・

 先の使徒戦では、子供達にワザワザ不可能に近い作戦を強要し、苦しめ、 常に死と隣り合わせの状態にしたりして、心を歪ませていた事・・・

 最終的には、ゼーレの依り代にする為に砕こうとしていたと言う事を訴えた。

 様々な状況証拠を提出して・・・
(司法取引もあったと言う事は言うまでもない)

 それは、ミサトの言った矛盾だらけの証言に比べれば、 真実としか言えない様な確りとしたものであった。
(マギ等からの資料や映像、他組織の者達からの証言や現状証拠などでも、 そうとしか取れなかったらしい・・・一部偽造があるものの)

 無論、ある程度、ゲンドウ達の罪をミサトに擦り付けはしたが、 それ以上に、ミサトの罪状は多く・・・

 下は駐車違反から、上は人身事故(相手は死亡したこともある)まで、 ネルフの特権を勝手に振りかざし、かなり、揉み消していた事・・・

 また、保険金詐欺や横領なども日常茶飯事で起こしていた事・・・

 他の組織との間に無用の軋みをワザワザ作り出し、 ゼーレの誘導に乗り易くなるように各組織を誘導していった事実も判明していた。

 コレらは、外の組織である現地の日本警察、戦自の技術武官、日本政府及び、 UN太平洋艦隊の提督など、ミサトと実際に接触した事のあるネルフ以外の第三者的組織の者達が、 ハッキリと証拠つきで証言した為、他の事にも真実味が深まった。

 国連は、事実を調べる為、ミサト本人から事情聴取するべく、 ネルフ本部にゲンドウ達とやって来たのであるが・・・

 その時には、既にミサトはネルフから消えており、更に、 一緒に連れ出されたらしい2人の女神も、行方不明・・・
(もっとも、ミサトがいなくなる前に、2人は、シンジ達に助けられ、居なくなっていたが・・・)

 慌てて探すと、2人の女神は、国際犯罪人と指名手配されていたハズのシンジに助けられ、 一緒にいるらしいとの連絡が、Nで消滅したと思われていた部隊の生き残りから入った。

 そこで、使徒戦後、新しく選ばれた事務総長及び、国連軍総司令達は、 真実を知る為、世界を本当の意味で平和にする為、 (更に、自分達の地位を磐石なモノにする為にも)自ら、 直接話を聞かなければならないと判断した。

 そこで、何とか、コンタクトを取り、自分達は、護衛をつけないで良いと言ったり、 自分達の命に賭けても、罠ではないと言ったりして、シンジと2人の女神に会う事が出来た。

 その会見で何を話されたかは詳しくは分からないが・・・
(『真実を知った』『人類の敵を滅する時に発表する』と、2人は言ったらしい)

 その会見後、すぐに、事務総長達は、シンジの指名手配を即座に解き、 逆に、2人の女神達と共に、いや、むしろ、中心となって、サード・インパクトの渦中に飛び込み、 自らの命をかけて、それをキャンセルさせ、世界を救った言わば、英雄神であるかのように、 大々的に、何度も発表した。

 そして、シンジを犯罪者のように発表したミサトこそ、世界中を騙し、混乱を引き起こし、 人類を、いや、地球の全生物を滅亡させようとする黒幕の1人、全地球生物の敵として、 即座に指名手配したのである。

 因みに、今も、証拠映像も流しつつ、世界各国で、放送しているらしい。

「もう全部、バレていんのよ、アンタがやった事はね」

「今度の事務総長さんや国連軍総司令の人は、非常に話のわかる人だったしね」

「えぇ、確りとした人達だったわ・・・
 共犯の眼鏡も、即、拘束し、監獄に更迭したそうだし」

 アスカ、シンジ、レイがそう言った。

 そして、ミサトは、自分の状態を悟った。

 ココには自分の味方は誰も居ないと・・・

 頼みの綱のマコトは既に重犯罪人として、真っ先に、 国連軍に捕まって、軍刑務所にぶち込まれているらしい。

 このままでは、非常に拙いと思ったミサトは・・・

「し、シンちゃぁ〜ん、 わ、私たち、家族でしょ、だ、だからね、ね♪」

 いきなり、甘えたような声を出した。

 しかも、シナ付である。

 そう、シンジに取り入ろうとし始めたのだ。

 だが・・・

「こう言う時だけ・・・
 本当に、自分の都合の良い時だけ、家族面ですか・・・」

 呆れたようにシンジがそう言った。

「全てばれているのよ。
 アンタがこう言う時や、私達の心を砕くために、 そう言う演技をしていた事くらい」

 アスカも呆れたようにそう言った。

「へ?」

 ミサトは訳が分からないという風に、首を傾げる。

 因みに、いつもナチュラルに己が二面性を使いこなしているが、この女、自覚はない。

 むしろ、その場その場で記憶の改変を行っている可能性もある。

「どうせ、ほとぼりが冷める前に、手のひらを返すんでしょ」

 シンジが呆れたようにそう言った。

「そ、そんな事するわけないでしょ」

 どの口が言うのか、ミサトはハッキリとそうのたまった。

「何度もやったじゃないですか」

「えぇ、色々と聞いたわ」

「ホント呆れるわね」

 シンジ、レイ、アスカは、心底呆れたように、そういった。


「う、嘘おっしゃい!」


 ミサトは、確実に自分の記憶を変えているようだ。

「それに、司令達から聞いたわ。
 17年前のセカンド・インパクト、その最大の功労者
 そして、ゼーレの監視員兼工作員、葛城ミサト元二佐。
 いえ、ゼーレ特務諜報工作員のエース、いえ、 ゼーレの最高幹部、キール=ローレンツ議長の懐刀だったわね」


「な、何の事よ!」


 レイの言葉に、ミサトは驚いたようにそう言った。

「既に、皆から、ぜ〜んぶ、聞いているのよ」

 アスカがそう言った。

 実は、ゲンドウがそう言う事にして、リツコを使い、色々な証拠を捏造していた。
(押し付ける分だけ)

 もっとも、リツコ自身も、自分の信頼の置ける部下で、愛弟子でもあるマヤを壊されたことで、 かなりミサトを恨み始めていたので、必要以上に協力した。
(更に、マヤに預けていた猫が、マヤの拷問に使われ、その所為で・・・が大きいのかも・・・)

 更に、ネルフの諜報部や国連軍に捕まったゼーレの工作員が、それを証明している。
(司法取引ということで、ゲンドウ達が何かをしたらしい)


「う、嘘よ!」


 マジで身に覚えのない事に、ミサトはそう言うものの・・・

「今まで、ゼーレの秘密基地に隠れていて、 ゼーレの幹部や兵士達と一緒に、武器を手に持って、国連軍と最後まで戦い、 多くの死傷者を出し、捕まった貴女が、どの口で言うの?」

 レイが呆れたようにそう言った。

 そう、逃げ出していたミサトが捕まったのは、某国にあるゼーレの秘密基地であり、 国連軍が攻めて来た時、ゼーレの生き残りと共に、いや、寧ろ、陣頭に立って、 徹底抗戦をしていたのである。

 国連の将兵達を、何百人、直接、その手にかけながら・・・

 ゼーレの尖兵を引き連れ、密林で自在に動くゲリラのように・・・
(その戦いのさなか、思いっきり、撃たれたが、某事情により、確り生きていたのである)

 襲われた将兵達は確りと証言している。

 勿論、ミサトは自分を庇ってくれたのが、ゼーレの一派とは思ってもいなかったようだが・・・
(戦っていた相手が本物の国連軍でも、自分を捕まえにきたと思ったので、 ゼーレの兵達を自分で煽り立てて、戦ったらしい)

 ともかく、捏造はしたものの、状況証拠から見ても、それ以外の何ものでもなく、 ミサトは立派なゼーレの、しかも、最上級の幹部の1人になっていた。

 また、己が身を機械化してまで、辛うじて生き残っていて、 捕らえられた委員会メンバーのある老人も、司法取引というゲンドウの甘い誘惑のり、 補完計画やインパクトを、故キール議長に勧めた女である事を証明していた。
(無論、その後、寝ている内に生命維持装置を止められ、そのまま、あの世へ旅立ったらしい)

「レイ、アスカ、行こう。
 コレの傍に居るのは、気分が非常に悪いよ」

「さよなら・・・次は司令達が事情徴収するらしいわ」

「そうね、ミサト、もう二度と遭いたくないわね」
(注:誤字にあらず)

 そして、シンジ達はその部屋を出て行った。








 暫くして、そこにやってきたのは、ゲンドウ、冬月、リツコであった。

「全人類、いや、全生命体の裏切り者である葛城ミサト受刑者・・・
 貴様の死刑は決まっている」


「そ、そんな、司令!」


 ゲンドウに言われた事を聞いて、目隠しを外されていたミサトは、 焦ったようにそう叫んだ。

「・・・」

 だが、ゲンドウはそのサングラスの奥の目で、睨みつけるだけである。

「葛城君、君が身勝手な私怨、いや、私欲か・・・
 それと自分の身を護る為だけに、世界中の人々をだまし、また、多くの人を死地へ逝かせ、 戦乱を引き起こし、君自らの手で、多くの民間人や将兵達を殺していた事は、既に発覚している」

 代わりに、冬月がそう言った。

「な!

 副司令!」


 冬月の言葉に、ミサトは今更ながら、驚く。

「サード・インパクトを防いだ英雄を大罪人として、世界をだまし・・・
 私達が国連に召喚されている内に証拠や、 インパクトを防ぐ可能性があるシンジ君を消そうと、彼を追う連隊ごと、 N弾頭ミサイルの雨で、彼を葬り去ろうとした事は、 既に日向マコト受刑者から、聞き出しているわ」

 リツコでさえ、冷たい声でそう言った。


「り、リツコォ!」


 実はミサト、シンジを殺す為だけに、国連軍の一軍が、 シンジを取り囲んでいる所へ、発見の報告が入るやいなや、 即座に、予告無しでN弾頭ミサイルを撃ち込ませたのである。

 マコトには、人類の未来を護る為には仕方ないと言いながら、 自分の胸を背中に押し付けて・・・

 己が手で、シンジを殺す充実感を得る為だけに・・・

 その時の死者は民間人を含み、数十万人を超えるとも言う。

 この結果、国連議会は、ミサトが世間一般に、発表し、 事実とされた事に疑いを持ち始め、ゲンドウ達が言っている事の事実確認を早急にする為、 正式な査察団を、ゲンドウ達と共に派遣したのである。


「な、何を言っているのよ!


 アレは使徒じゃない!


 人類のて」




 ミサトがそう叫ぼうとするが・・・

「使徒?・・・
 人類を護る為に、サード・インパクトの渦中に飛び込み、 多くの試練を、贖罪を、全人類の代わりに、全て受けてくれた英雄がかね?」

「マギも、彼は確り人間と判別していたわ」

 ゲンドウの目は更に鋭くなり、冬月は眉を顰めながら、リツコは呆れながら、そう言った。


「で、でも、奴は、ATフィールドを!」


 ミサトがそう叫ぶものの・・・

「アレは超能力によるサイコバリアー。
 ATフィールドに見かけは似ていても、全くの別物。
 しかも、使ったのは貴女を戦自の凶弾から助ける為・・・
 レイやアスカだって、シンジ君に比べれば弱いものの、同質の力を持っているわ。
 そう、貴女が女神として、世界中に発表した2人もね」

 リツコが冷たくそう言い放った。

「え?」

 よく理解できないミサト・・・

「あぁ、サード・インパクトを乗り越えた人類は、 本当に極少数だが、そのような力を得た者がいるらしいね。
 忙しかった我々でも、知っているだけでも、いや、 実際に会った人数だけでも、五人はいたよ
 実際はもっと多いかも知れんがね」

 冬月も後押しするようにそう言った。

「ま、まさか・・・」

 ミサトは呆然とする。

「更に、貴女が、マギの記録を改竄しようとして、 伊吹一尉を脅したが、拒否された為、司令の命令と言って、諜報監査部を騙し、 投獄して、拷問、いえ、虐待、リンチにかけていたのは、既に調べがついているわ」

 リツコが憎々しげにそう言い放った。

「そ、それは、その仕方なく・・・その・・・
 ねぇ、リツコ、私達、親友でしょ〜」

 ミサトは言い訳をしようとするも、思いつかなかったのか、 いきなりリツコに懇願をし始めるが・・・

「仕方なく?
 それで、私の大事な部下の精神まで壊したの・・・
(そして、猫ちゃんまで・・・)」

 リツコは完全に睨みつけながら、そう呟く。

「そ、そうよ。
 ネルフや人類を守る協力が出来ないというから・・・
 その、まぁ、 ちょち、やりすぎたかも知んないけど・・・
 あはははは・・・」

 そのミサトが小声で言った言葉を聞いて、リツコから、 抑えていたらしい殺気が溢れ出てきていた。

 現在、マヤは治療を受けているものの、幼児退行が酷く、治る見込みも無いらしい。

 この事実を知った時も、日向マコトは驚いたが・・・後の祭りである。

 マヤは、日向や黒服が目に入るだけで怯え、叫びだす状態になっていた。
(『もう殴らないで、苛めないで、犯さないで、汚さないで、助けて、助けて・・・
 いやぁ〜〜〜〜〜!!』と泣き叫ぶらしい)

 無論、拷問に参加した者達は、全員、捕らえられた後、死刑判決で、 理性が吹き飛んだマッドバリバリのリツコの木偶とされる。
(苦しめるだけ苦しめているらしい・・・“殺してください”と懇願されているが・・・)

 因みに、関わった黒服は、行方不明になっていたり、独房に入れられているらしい。

 そして、何とか面会する事が出来たシゲルは、ベッドの上で、日向を憎しみの目で睨み、 自分達が受けた事を全てを叫びながら、手近なものを投げつけてきた。

 もっとも、殆どは届かず、届いても、軽い物だけだったが・・・

 彼もまた、その肉体にかなりの傷を負っている為、まともに身体が動かないのだ。

 ミサトの命令によって・・・日向の指示ということで、拷問というか、リンチを受け・・・

 拷問をかけた者は、はっきり、『日向二尉に協力しないなら』『悪く思うな、コレも日向二尉からの指示でな』とミサトの命令で言っていたらしい。
(勿論、日向の著名入りの命令書を見せながら・・・)

「全ての罪を勝手にシンジ君に押し付けるのも、仕方なくかね?」

 冬月が冷たい目で見ながら、そう言った。

「そ、それは、だから、ネルフや人類を・・・」

「対象が、いや、真犯人が、別に居ると知っていてもかね」

「・・・えっと」

 冬月の言葉にミサトは言葉に詰まる。

「シンジ君を取り囲んだ味方の軍に向かって、街中であったにも関わらず、予告無しに、 ネルフのマギで支配できたN弾頭ミサイル降らせ、 数万の軍人と付近の民間人を消滅させたのも仕方ないかね?」


「そ、そうです!

 全ては、使徒を倒すために、仕方なく、涙を呑んで・・・」


 はっきり言うミサト・・・

 どうやっても、自分を正当化したいらしい。

「レイ君やアスカ君をあの富豪・・・
 いや、元富豪の犯罪者達に売ろうとしたのは?」

「そ、そりは・・・」

「何の為に、仕方ないのかね」

「その、ですから、資金を集めて、人類やネルフの」



「嘘をつきなさい!


 自分のエゴ、


自己満足の為!


 更には逃走資金を、


稼ぐ為でしょうが!」




 リツコが切れる様にそう言った。

「もういい・・・
 貴様には、既に、公開処刑しか残っていない。
 人類の裏切り者として、完全に消滅させてやる」

 ゲンドウがそう言い放って、会見は終わった。





 その後、国連から派遣された査察官達との 会見取調べがあったが・・・

 ミサトは、自分の罪を認めず、“全ては仕方のない事だった”と叫び・・・

 逆に、過去のネルフ本部作戦部長の地位などを振りかざし、 使えもしない特務権限を持ち出して、 自分を解放するように命令した。

 そして、暫く、尋問していると、油断させ、拘束を解かせる為か、 はたまたアルコールが切れたためか、突然、とある銘柄のビールを要求しだし、 その査察官達を、必死に誘惑しようとまでした。

 因みに、査察官の中には、女性も居たのにである。

 これらの会見は記録されており、国連上層部は、色々とその場その場で、 矛盾した自己弁護を始めるミサトという女に、心底呆れ果たらしい。






 ココで、もう少しゲンドウ達の事情を説明すると・・・

 冬月とリツコは、サード・インパクトを経験した後、自らの罪を悔いて、 シンジの冤罪を解く為に、シンジ側についたのだが・・・

 ゲンドウの場合、後悔したというよりも、己が保身、それに、 使徒を超えた力を得たシンジなら、初号機から、ユイをサルベージできるのでは考え、 味方にしようという打算も含まれていたからである。

 勿論、シンジと再開した時、それと無く?頼んでみたところ・・・

「一応、可能だし、元から、やろうと思っているけどね。
 弐号機と違い、今の初号機や、僕の状態では、 直ぐに出来ないから、かなり時間がかかるよ」

 ムスッとしながら、シンジはそう答えた。

「な、なぜだ?」

 ゲンドウは、驚いたようにそう言った。

 その手配が解かれ、シンジが英雄としてネルフに戻って来た時・・・

 アスカに頼まれたのか、それとも証明する為だったのか、 弐号機のコアに溶け込んでいたキョウコ魂を、肉体をコアから再構成しつつ、 即座に、サルベージしていた事を聞いていたからである。

 最も、あまり体力などが回復していないのと、検査等の為、今もキョウコは入院中だった。

 因みに、時間は取り込まれた時から、時間が止まっていたのか、 肉体は当時のままだったモノの、シンクロを続けていた為か、 幼い頃の面影で理解したのか、アスカのことは、直ぐにわかったらしい。

「僕だって、母さんに会いたかったし、家族、みんなで平和に暮らしたかったさ。
 でも、あの女に邪魔されて、更に、力も削られてね。
 かなり難しくなったんだ」

 シンジは憤慨したようにそう言った。

「クッ・・・
 つ、つまり、あの葛城ミサトの所為か?」

 ゲンドウの目線はかなり鋭くなる。

「当然です、司令。
 シンジ君は、平和な世界を実現する為、司令を説得しようと、 まず最初に、初号機のサルベージを行おうとしたのですが・・・
 アレに、作業中に、いきなり、後から撃たれ、邪魔されたそうです」

「私のママの場合、一気によどみなく出来たから楽だったらしいですが・・・
 初号機、司令の奥さんの場合、途中で邪魔をされ、途中の過程で、 変に混ざり合い、細心の注意、それに、かなりの力が必要になってしまったんです」

「無理やり強引にやると、ユイさんの魂は裂け、 二度と復活が出来なくなるので、相当の力と時間がかかります」

「更に、あの女が、N爆雷で、シンジの力を削ったから、私達全員が手伝っても、 かなり、時間もかかるし、慎重にならないと・・・」

 レイとアスカも、シンジの説明を補助するように、そう言ったのである。

 そして、呆然としつつも、ゲンドウがシンジに・・・

「お、俺を恨んでいないか」

 と尋ねた所・・・

「確かに、恨んでいないと言えば、嘘になるけど、僕も愛する人達が出来たからね。
 母さんを求めた父さんの気持ち、分からないでもないさ。
 だから、過去の事は水に流して、コレからを一緒に生きていこうと思ったんだ。
 過去より、これから、未来だよ」

 シンジはそう答えたのである。

 そして・・・

「こ、この俺を、こ、こんな自分を許してくれるのか・・・」

 と、更に訊いた所・・・

「だって、血を分けた家族じゃないか」

 と満面の笑みでそう答えたと言う。

 その笑顔に、ゲンドウはユイの姿を見たらしい。

 この時、ゲンドウの恨む相手はミサトとなり、シンジは、自分の唯一の希望となったのである。

 その為、現在、ゲンドウは、シンジ達に対しては、一気にその態度を変え、 かなりの親ばかブリを発揮しているらしい。
(ただ、ゲンドウが非常に忙しい身であるので、一緒に住んでいないが・・・)

 因みに、現在、ゼーレに加担した日本政府を脅し、 一部、日本でも重婚を認めるように働きかけているらしい。

 勿論、全ては、シンジ達の為である。
(リツコにはフラれたので関係ない)








 そして・・・数ヵ月後・・・

 シンジ、レイ、アスカ、マナ、マユミは、TVで、それを見ていた。

 マナとマユミは、身を隠している時から、一緒にいたらしく、 シンジ達が正式に復興した第三東京市に住居を構えた時に潜伏先から、呼び寄せたらしい。
(無論、シンジが、某事情により捉えられていた2人を、 戦自や国連の秘密基地から、助け出していたらしい)

『全世界の皆さん、お待たせしました。

 ただ今より、セカンド・インパクトの主犯。

 先の使徒大戦で、

人類に過剰な負担を強いるべく、

ネルフ内部に潜んでいた、

ゼーレの最凶のエージェント。

 サード・インパクトの協力者兼、

本当の意味での実行者。

 そして、某国で、

百数十万人を超える国連軍の兵士達と民間人を、

大量のN弾頭ミサイルを使って、


滅ぼした史上最悪のテロリストの公開裁判兼、

処刑が、今、始まります!』




 画面には、超合金の柱に固定されたミサトが映っていた。

 おそらく、後ろ手で、両腕を超合金で固められているのであろう。

 見える足は、既に固められている。

 無論、目隠し等はない。

 因みに、画面には、プロフィールも流れているが、ミサトの氏名はふせられている。

 なぜなら、もし、同姓同名の者が居た場合、 色々な問題が出るかもしれないからである。

 だが、確り顔は映っているし、名前以外は、確り流れているので、 知っている人間には、直ぐわかるのである。

「ヒカリ、そろそろ始まるわよ」

 アスカが、キッチンで、何かを作っているヒカリにそう言った。

「あ、コレを持っていくから」

 ヒカリがそう言うと、シンジは立ち上がって、 キッチンのカウンターの方に行く。

「手伝うよ」

「あ、ありがとう」

 顔を染めながら、ヒカリがそう言った。

「私も手伝うわ」

 レイもそう言って、やってきた。

「シンジぃ〜レイちゃぁ〜ん、ヒカリさぁ〜ん、早く来ないと、始まるよぉ〜」

 マナがそう言って呼ぶ。

 3人は、慌てて、TVのところに戻ってくる。

「私も、手伝いますわ」

 マユミがそう言って、お盆から、 飲み物や軽い食べ物をソファーの台の上並べていく。

 勿論、アスカやマナも手伝う。

 そして、大きなソファーにシンジが座ると、左右の腕には、レイとアスカが、 左右の足には、マナとマユミが座り、椅子に座っているのか、 シンジの頭の方には、ヒカリが居た。
(そのソファーには収納式の置き台が幾つか付いている)

 レイ、アスカ、マナ、マユミの位置、フォーメーションは、 ローテーションで変わるらしいが、TVなどを見る時は、 必ずシンジの近くに陣取るらしい。

「あれが、鈴原を殺した女」

 ヒカリが憎々しげに、文句を言いながら、顔を醜く歪ませて、 TVに映っているミサトを見ながら、そう言った。

 因みに、シンジがレイやアスカをつれて、逃げている時、 レイやアスカの口から、外部に真実が漏れる事を恐れたミサトは、当然、2人を探し始めた。
(この時、シンジが生きているとは思っておらず、レイとアスカが自力で逃げ出したと思っていた)

 すると、国連上層部が、N弾頭ミサイルをミサトが使わせた事を知り、

ミサトが流した事に対し疑問を感じ始めたと言う情報を耳にした。

 そこで焦ったミサトは、親友だったと言う理由だけで、知っていると決め付け、 左足を失って、入院していたトウジや、比較的に近くに疎開していたケンスケを強制連行し、 無理やりレイやアスカの居場所を聞き出そうとした。

 当然、トウジやケンスケは彼女らの居場所なんか知らないのだが、 ミサトは信じなかった。

 そして、ミサトは、自ら、2人を拷問し殺したのである。

 その後、直ぐに、ゲンドウ達の取り調べが済み、 本部に戻ってくる事を聞きつけ・・・

 更に、自分がマークされた事に気付いたミサトは、 部下達によってヒカリが連行されてくる前に、下ろせるだけの金を下ろして、 海外に逃げ出したのである。
(ヒカリは、疎開した後、父親の都合で引っ越していた為、 探し出すのに、時間がかかったらしい)

 当然、ヒカリは連行されてきたものの・・・
(因みに、庇おうとした父親は大怪我を負わされ、入院中であり、 姉と妹は付き添いで、現在近くの病院に居る)

 ちょうどネルフ本部にやって来た国連軍のお偉いさんや、リツコ、冬月の命令で、 そのまま保護されたのである。

 そして、その時、トウジ達の死を知ったのである。

 2人の死体のむごたらしい損傷から、拷問が苛烈を極めていた事が窺えたらしい。
(死体は、両方とも独房の天井からつるされたままの状態だったらしい)

 画面の中のミサトは必死に何かを訴え、無実を主張するものの・・・

 あっさり矛盾点等をつかれ、覆されていく。

 勿論、その度に、直前に言った事を、即、覆したりして、命乞いをしている。

 更に、時々、ミサトの罪などが証拠付きで流れていた。

(以下、シンジ達の台詞は、暫く後ろに印をつけます。
 シンジ=シ、レイ=レ、アスカ=ア、マナ=マ1、マユミ=マ2、ヒカリ=ヒ)

「セカンド・インパクトがあそこまで大きくなっていたのは、 あの女の所為だったのね」(ア)

「本来だったら、南極大陸の一部だけで、地軸が歪む事もなかったんですね」(マ2)

「自ら使徒アダムの細胞との融合実験に志願し、 人を超える力を得ていたと・・・」(シ)

「アレだけ大量のアルコールを摂取したり、猛毒料理を食べたりしても、 平気だったのは、使徒アダムの力を、 取り込んでいたからなのね」(レ)

「他人に与えたくないから、セカンド・インパクトの姦策を謀ったんだって・・・」(マ1)

「アダムを使ったS2実験の時、安全を確保する為の器材を弄って壊していたそうですね」(マ2)

「しかも、脱出装置は、一つを残して壊し、自分だけ、逃げ出したのね」(ア)

「十四歳の頃に、そこまで・・・
 え?・・・
 十歳の頃から、ゼーレのエージェントとの接触していた過去が?」(マ1)

「母親を自ら生け贄に・・・」(ヒ)

「最後の国連軍との戦いの時、かなりの銃弾を受けたのにもかかわらず、 引っ込んで行ったと思ったら、数時間後には平気な顔で、 何度も出てきたらしいわ」(レ)

「多少の大怪我じゃ、ゼーレの部下達を捨石にして、逃げていたらしいわね」(ア)

「それを、どうやって捕獲したの」(ヒ)

「最終的に、濃縮睡眠弾を、十数発打ち込んだと聞いたわ」(レ)

「それって、どれだけの量ですか?」(マ2)

「教えてもらったけど・・・
 1発で、大体、十数頭の大人の象が天に召される量よ、アレは」(ア)

「「「・・・・・・(汗)」」」(マ1、マ2、ヒ)

「自分こそ、人間じゃなく、使徒じゃない・・・」(ヒ)

「見てよ。
 あの女、高校も出ずに、ゼーレの力で経歴を作って、 大学に裏口で、無理やり入学したのよ」(ア)

「理由は東洋の女三賢者の1人、故赤木ナオコ博士の娘であるリツコに接触し、 将来の布石を作る為だって」(シ)

「実力で入学したって反論しているみたいだけど、 殆ど白紙や落書きで合格できるかってぇ〜の」(ア)

「うわ、食べ物で作れる毒物のレシピを、この頃から編み出していて、 教授や助教授を数名、入院させていたみたいよ」(レ)

「成績を正直に発表しようとしたから、脅す為だって」(マ1)

「当時の助教授で、生きている方が、 ゼーレのエージェントに脅された事を証言したって・・・」(ヒ)

「あ、ドイツの国連軍に所属していた時に作った功績も、 ゼーレを使った自作自演、更に、自分やゼーレに反抗的な将校を、 潰す為の姦策だったそうですよ」(マ2)

「うわ、当時、上司だった人の食事に毒を盛って、体調を不調にし、 テロリストを装ったゼーレの工作員に暗殺させたんだって」(ア)

「自分の出世の邪魔になる可能性があるなら、 民間人であろうとも、ゼーレの工作員を使って謀殺ですか・・・」(マ2)

「当時、ヨーロッパでの死亡原因、その八割以上に関わっていたって、どれだけよ」(ア)

「えっと、その後、ドイツゲヒルン、後のネルフドイツ支部に移籍。
 そして、ゼーレの力を使って、強引に本部に移籍させ、作戦部長とは名ばかりで、 人類に過剰な負担を強いる為に、使徒殲滅妨害および被害拡大する事と、 世界を救うチルドレン達の心を破壊する為、その尽力を尽くす・・・」(シ)

「そんなんに、尽力を尽くすなって言いたいわよね」(マ1)

 因みに、その証拠とばかりに・・・

 第三使徒での、無責任な叱咤や、動かした事もないし、動くかも分からなかったのに、 使徒の目の前に出してからの「先ずは歩け」発言・・・

 第四使徒での自分が命じたくせに「バカ、煙で相手が見えない」、 シンクロ率を下げ、不利にさせる為に、援護もせず、コックピット内に、 興味本位で外に出ていた子供を入れさせ、更に、一機しかおらず、 後が無いのに「撤退しなさい」発言し、 更に、自分の無茶な命令に逆らって、使徒を倒し、世界を救った功労者を、 独房に居れて虐待・・・

 第五使徒での偵察無しに相手の目の前にエヴァを打ち出し殺しかけ、 更に、無謀な作戦をさせるべく、他の意見をもみ消し、更に、 無理やり日本中の電気を徴収し、多くの病院の重態の患者や緊急の患者を、 ネルフの命令で殺させる。

 第六使徒では、太平洋艦隊の提督を怒らせ、 協力し辛い状況を作っておきながら、エヴァを使わず、 艦隊に多大の被害を出させた後、済し崩しに指揮権を奪い、 魚雷や、水中ミサイルを使わせずに、戦艦二隻とその乗組員を、 使徒に特攻させる。

 第七使徒では、まだ終わっていないのに、チルドレンの気を抜かさせ、 敗退させ、N爆雷で、国土を削る。
(アスカが油断したのも、ミサトの所為になっている・・・無論、前のも・・・)

 第八使徒では、捕獲を言い出し、A−17を発令させ、 世界経済に多大なるダメージを与える。
(実は捕獲の事を言い出したのはリツコであるが、 戦自や国連の邪魔が入らないようにA−17を言い出したのはミサトである)

 第九使徒では、ゼーレの工作員を引き込み、大規模な停電を起こさせ、 かなり不利な状況を作り、その時は一旦ネルフ本部から姿を消していた。
(引き込んだのはミサトではなく、加持だし、やったのは、ゼーレでなく、 内諜から命令を受けた戦自の特殊部隊であり、エレベータ内に加持と共に居たのだが・・・)

 第十使徒では、使徒を淡白壁に仕込み、ネルフの頭脳であるマギを、 物理的に消去させようとした。
(本当は、ゼーレの工作員がやった事)

 第十二使徒では、初号機を使徒に飲み込ませ、抹消を試みる。
(ある意味、事故である)

 第十三使徒では、参号機に使徒を仕込み、サード・チルドレンの友人をプラグに押し込み、 戦いづらくさせ、不完全で、欠陥だらけのダミープラグを、無理やり戦闘中に起動させた。
(使徒が感染したのは、アメリカ支部でか、運んでいる最中であるし、 トウジはリツコがスカウトし、ある意味、本人も納得して乗ったのだし、 ダミープラグを使用するようにしたのはゲンドウだ)

 第十五使徒では、調子の悪かったセカンド・チルドレンを弐号機に乗せ、 1人だけで打ち出し、精神汚染をさせた。
(リツコがアスカを始めとする事実を知るものに、 色々な事情があるからと、口裏を合わせるように頼み、証拠(の偽装)を固めた)

 第十六使徒では、態々、遅刻し、発令所内を混乱させ、 更に、零号機を無理やり自爆させる。
(したのはレイ自身の意思による)

 色々な罪が挙げられていく。

 何故か第十七使徒であるカヲルの事は詳しく出ていない。

 ただ、引き込んだ事にはなっているが・・・(ヘブンズドアの奥まで・・・)

 殆どでっち上げだが、状況証拠や、ネルフ所員が一丸となって捏造した証拠から、 全て真実と思われている。

「孤児を使って、トライデント開発を進める計画を立て、 戦自にやらせていたのも、実はあの女だったのね」(マ1)

 どうやら、戦自とかの汚点も、色々と押し付けられているようだ。

「ネルフが要求せざるを得なくなった追加予算の95%以上があの女の所為・・・」(レ)

 ある意味事実である。

「ねぇ、この女、シンジの給与も、着服していたみたいよ」(ア)

 これも、魔が差したらしく、やっていたのは事実である。
(印はココまで・・・)

「え?・・・そんなの、僕らに出ていたの?」

 不思議そうに、シンジはそう言った。
(おそらく誰かの耳に入れる為・・・)

「ボランティアであそこまで苛酷な事を強制するような組織は無いわ」

 レイがそう説明する。

「知らなかったなぁ〜・・・
 あ、それで、父さんが、すまなそうに、慰労金とは別に、 大金が入った通帳を、僕には渡してくれたんだ。
 そうか・・・あれは僕のチルドレンとしての給与だったんだね」

 無論、返された給与には、かなりの色がついている。

「知らなかったの?」

 マナが不思議そうにそう言った。

「教えてくれなかったし、月に一万円を渡して、今月はこれだけとか、言っていたし・・・」

「シンジって、そこから、お小遣だけでなく、みんなの食費も出していたんだっけ?」

 アスカがそう確認する。

「光熱費と、アレの酒代以外はね・・・
 でも、リツコさん達が、時々、食材をお土産にくれたしね。
 あ、時々、おつまみは自分で買ってきたかな?
(時々、おかずに流用したけど・・・)」

 それで遣り繰りしていたシンジの節約主婦レベルは相当なものである。
(因みに、光熱費は、ネルフの幹部寮と言う事で、一切かからない)

「げ・・・最悪ね・・・」

 アスカがそう言い、ヒカリが驚いた顔をしている。

「まぁ、それに、時々、アスカもハンバーグが食べたいって、言って、 自分でお肉を買ってきてくれたから、助かったよ。
(塊だったけど・・・)」

「それでも、すごいわよ」

 ヒカリは感心する。

 何せ、援助が多少あったとは言え、月一万円で育ち盛りの子供が2人に、 バカ食いするミサトの胃を満たしつつ、自分のお小遣いまで捻出していたのだ。

「わ、見てよ。
 第三新東京市で、あの女が起こし、個人でネルフ権限を持ち出し、 無理やり揉み消した事故の数・・・」

「死者も出ているわ・・・」

「いえ、ワザとのようです。
 ほら、“ゼーレがネルフに供給していたコアや、 最後の量産機のコアの材料とすべく”って出ています」

「しかも見てよ。
 事故を揉み消すくせに、保険金は確り取っていたんだって」

「しかも、保険に支払うお金は上げさせなかったどころか、滞納もしていたようですよ」

「詐欺も良いとこ・・・」

 マナが驚いたように言い、マユミがつけたし、レイが呆れたように言った。

同僚加持リョウジや、 部下日向マコトを色香で惑わせ、 色々な工作をしていたと・・・
 色香に迷って、こんな事をする人もいるのね・・・」

 ヒカリがテロップを読んで、ため息を吐いた。

「やっぱり、最初から国連軍にダメージを与える為に、
弾頭ミサイルを落としたんだね・・・

 判っていれば、もっと多くの人を助けられたかもしれないのに・・・」


「でも、仕方ないわ・・・」

「シンジは全力でアレだけの人を救ったんだから」

「シンジも、あのNが落ちてくるのに気付き、 付近の人達を助けるだけで精一杯だったんだから」

「そうです、言い方は悪いですが、そのお陰で、すんなり、国連の人達にも信じて貰えましたし」

 シンジを慰めるように、レイ、アスカ、マユミ、マナがそう言った。

 因みに、空にNミサイルの大群が見えた時、それを見た兵達は絶望したらしい。

 だが、一部の兵達は、シンジの力で助けられた。
(その街と入り込んでいた歩兵、離れたとことに居た司令部以外は、 付近の都市を含め、半径50km以上、その街を除いて、この世から消滅している)

 その後、街の住民達、それにシンジ、マナ、マユミから、 色々と話を聞き、薄々気付いていたミサトが発表した事の矛盾等を確信し、 シンジ達を捕まえる事を止め、国連軍上層部との繋ぎになったらしい。
(元々、その辺りの地域住民は、ネルフを快く思っていなかったらしく、 ネルフの発表を信じなかったので、仲はかなり良く、シンジ達を庇っていたらしい)

「そうです。
 今はあの女から、少しでも多くの人を救えた事を喜ばないと・・・」

「そうだね・・・」

 シンジは微笑みながらそう応えた。

「うわ、嘘の情報を流しシンジを抹殺しようと理由も、サード・インパクトを最小限に防いだシンジが、 今後、ゼーレが人類を支配するのには邪魔になりそうだからって・・・」

「あわよくば、フォース・インパクトの姦策を謀っていたらしいですわ。
 その最大の障害になりそうなシンジさんを前もって、人類自身に抹殺させようとしていたんですって」

 テロップを見たマナとマユミがそう言った。

「私達を売ろうとしたのも、その資金集め・・・」

 冷たい声で、レイがそういった。

「最後につかまった基地で、作りかけの量産機エヴァや大量のコアらしき物を発見したらしいね」

「インパクトの準備をしていたから、徹底抗戦をしていたんですね」

 シンジの言葉に続くようにマユミがそういった。

 ミサトが潜伏していたのは、ゼーレの最後の砦、しかも、秘密工場だったらしい。

 もっとも、ミサトは、その奥に量産機等の存在は、本当に、知らなかったようだが、 開発するのに、ミサトの逃走資金の一部が使われていたらしい。

 その為、益々、ミサトの言い分は誰も信じなかった。

「攫ってきたらしい、母子も数組見つかり、調べによると、 既に数十組の母子が、コアの材料に・・・」

 レイが呟く様にそう言った。

「最悪ね。
 こんなのに騙されて、家族ごっごをやっていたとは・・・」

 落ち込むようにアスカが呟く。

「こんなのに鈴原達が・・・」

 ヒカリは画面で必死に言い訳にもならないことを並べ立てたり、 誰かまわず、付近の人間を誘惑しようとするミサトを憎しみの目で睨んでいる。

 画面に映るミサトの罪の証拠を見ながら話している子供達の会話で、 ミサトが何をしてきたか、何をした事になっているかがお分かりになるであろう。

 もっとも、一部?、矛盾を起こさないため、捏造されたものもあるが・・・


 サード・インパクトを乗り越える事が出来、生き残った人類は、 一部の、そう、死刑の立場にあるゼーレ関係者以外は、この放送を完全に信じ込み、 ミサトに対して、憎悪を燃やしていたと言う。


 また、この放送は、世界中の全TV局が流していた。

 それゆえ、殆どの人類はTVの前にいる。

 TVの無いところはラジオを聴いている。

 もしくは会場にいる。

 これに関心を持っていないのは、 文明と隔離されたところに住んでいる原住民くらいなもので、 セカンド、サードの両インパクトの影響で現在は百人と、居ないだろう。

 受刑者達でさえ、特別に許可されて見ていると言う。

 その頃、共犯者として、捕らえられているマコトは、 拘束具と猿轡をつけられて転がされている独房中で、 特別に持ち込まれたTVで、それを見つつ、涙を流していたと言う。

 最初に出された証拠の中には、サードインパクト後、自分か関わっていた事も確り出ており、 疑いようが無かった。

 どの為、それ以降の捏造された証拠のテロップは涙で歪んで見えなかったので、
後は時折流れてくるリポーターの言う事を完全に信じていた。

 自分が、ミサトの色香に迷い、現実を見ず、 実際に戦っている子供達に負担を強い、被害を拡大させる事に協力し、 多くの犠牲者を出し、仲間を裏切り、世界の恩人を抹殺しようとするのを手伝い、 ゼーレの協力をし続けてきた事を自覚させられて・・・

 ある意味、幸せなのかもしれない。
(ミサトにだけ嵌められたと思って逝くのだから・・・)




 そして、画面に、あるテロップが流れる。



【これから、残酷なシーンが流れますので、心臓の弱い方、 小さいお子様はTVから離れるか、見ない事をお勧めします】

                 【これから、残酷なシーンが流れますので、心臓の弱い方、 小さいお子様はTVから離れるか、見ない事をお勧めします】

                                 【これから、残酷なシーンが流れますので、心臓の弱い方、 小さいお子様はTVから離れるか、見ない事をお勧めします】


 そのテロップは五分程流れていた。

 そして・・・

『構え!

 てぇ!!』


 その合図がかかった途端、無数の銃声が・・・

 ミサトの身体のあちらこちらから、赤い鮮血が飛び散る。

 ライフル弾は、腹部と足、もしくは腕に当たる。

 頭部にだけは当てない。

 その痛みに泣き叫ぶミサト・・・

 しかし、かなりの弾丸を受けているハズのに、なかなか死なない。

 既に、腹部からは腸等の内臓が出てきており、血もかなり溜まっている。

 それでも死なない。

 そして、等々、兵士達が、バズーカを持ち出してきた。

 画面には、はっきり、ロケット弾等が飛んでいくのが見えた。

 吹き飛ぶミサトの四肢・・・

 だが、死ななずに、頭部と胴体だけになっても、泣き叫んでいる。

 普通なら、確実に死んでいるハズである。

 拡大されて映った千切れた四肢も、よく見れば、ピクピクと動いて、 ミサトの元に向かっているように見える。

 暫くすると、赤い膜が出来、少しずつ、弾丸を防ぎはじめる。

 勿論、まだ、威力があるロケット弾は防げないようだが・・・

 それを見て、焦りだす兵士達とレポーター達。

 何故か、準備されていたミサイル車両がやってくる。

 兵士達やレポーター、カメラの人達が、慌てて車に飛び乗り、下がっていく。

 そして、放たれる対地ミサイル群・・・

 もう完全に対人ではなく、戦車の団体さんに対する攻撃だ。

 さらに、空から、戦闘機によるミサイル攻撃・・・

 はっきり言って、使徒に対しているような過剰な攻撃。
(実は、ゲンドウのアドバイスで、準備されていたらしい)

 そして、拡大された映像には、爆風で飛び散るミサトの肉片らしきもの・・・

 それでもかまわず、色々と飛んでいく。

 飛び散る肉片がアップで映り、グロかった。

 無論、途中で、ヒカリは目をそむけ、口に手をあてている。

 だが、なぜか、シンジや他の女の子達は目をそむけなかった。

 最後に、飛び散った全ての細胞片すらも、燃やし尽くすべく、 火炎放射器で辺りを焦がしながら、特殊防護服に身を包んだ者達が、 ミサトが縛り付けられていた所に近付いて行く。

 とはいっても、そこはクレーターのようになっているが・・・

 そして、重装備をした彼らは、そのクレーターの中心であるモノを拾って、 カメラの前に持って来た。

 それは紅いもの・・・そう珠だった。

 拳大の紅い珠、人間の器官には、肉体の中には、存在しないハズのモノ・・・

 だが、ミサトの罪状を挙げるときに流れたあるモノに似ていた。

 それは、使徒と呼ばれていた化け物のコアに・・・

 実は、アダムとの接触の時、アダムの細胞、コアの一部が、 ミサトの胸の中に入り込んでいたのである。

 更に言うなら、あの実験もいわば起こるべくして、起こったのではない。

 ミサトが引き起こしたのである。

 父や母に無理を言って、ミサトは、南極にやってきたのである。

 ココで判る通り、実はミサトの両親の仲は悪くなく、 父親も、研究で家族を省みないどころか、かえって、親ばかでもあった。

 そして、父親の仕事場にやってきたのは良いが、 当然、仕事で忙しい父は、思っていたよりも、自分にかまってくれない。
(これは最初から母親に注意されていたのであるが・・・)

 その為、悪戯心を出して、面白半分に機械の中、 アダムとの接触を行う装置の中核、エントリープラグの雛形とも言えるそれに潜り込み、 色々と弄った為、突然始まった事故である。

 中途半端な準備で、しかも、殆どの所員が休憩中に起きた突然の・・・

 そう、言わばミサトは自分から、最初の接触者、 使徒への巫女、いわゆるゼロ・チルドレンになったのである。

 もっとも、その装置のある位置を教えたのは、実験の途中経過を、 スポンサー(であるゼーレ)に中間報告する為に戻る前、 その機械を覗いていたゲンドウであるが・・・

 流石のゲンドウも、それが、あそこまで、大きな事故の引き金になるとは、 夢にも思わなかったらしい。

 なぜなら、ゲンドウが戻って、数週間後に、 別のゼーレのエージェントが、起こす予定だったのだから・・・
(そのエージェントは実験の直前に、身一つで、脱出する予定だった)

 大体、ゲンドウは、直前に、全資料のコピーを持って、帰ったら、怪しまれると思っていて、 “日本に残していた身重のユイが、心配だったから、 スポンサーに報告するついでに、一時帰省した時に起こった偶然”と言う理由にして、 怪しまれないようにする予定だったらしいが、ミサトの所為で、まさに直前になったのである。

 そう、あのミサトの傷は、プラグが強引に射出された為、 アダムとの接触点が強引に引きはがされ、出来た痕であり、 その後も、父親に脱出カプセルに入れられたのではなく、 ただ単に、最初のプラグに入ったまま、外に飛び出たに過ぎない。

 では、なぜ、父親と母親の仲が悪いとか、使徒の所為とか、 記憶が色々と違ったものになっているのか・・・

 それは、ゼーレの洗脳教育の影響だけで無く、ミサトが元々持つ、 自己弁護、自己忘却、自己更改の三大理論による記憶の書き換えの為である。
(自分が悪くないと常に弁護し、都合の悪いことは忘れ、記憶の書き換えまで行う)

 そして、ミサトの身体に潜り込んだアダムの細胞、 そのコアの影響で、ミサトはアレ程の超人的な肉体を得たのであった。

 無論、使徒を呼び寄せるアダムやリリスと同じ波動をより強く出しながら・・・

 この事を知っていたのは、ゼーレの老人会とゲンドウくらいなものであるが・・・

 また、この事実があったからこそ、ミサトに学歴を作らせ、軍属にさせ、 功績を作らせて、ネルフに所属させたのである。
(ミサトの能力では、看板くらいじゃないと、他の仕事は出来ないし、 作戦部長なら、能力はあるが、上には逆らわないような部下つければ、 無能でも、大丈夫と考えたからである)

 また、それゆえ、ミサトがアレだけ仕事をしなくても、組織にとって、 マイナスな事をしまくっても、放逐するわけにはいかなかったのである。

『見てください!

 アレは使徒のコアです!

 やはり、アレは人間ではなく、

ゼーレの作った人造使徒だったのです!』


 それは、アダムの細胞がミサトの中でコアになったもの。

 第三東京市に、太平洋艦隊に、使徒を呼び寄せていた波動のひとつ・・・

 それは月日が流れるほど強くなり、ミサトの身体に適合していき、 最後にはミサトに人間とは思えない能力を与えたのである。
(ゆえに、アダムとの融合のテストタイプとして、観察していた)

『十歳の頃、アレは

ゼーレと接触したとされていますが・・・

実は、その時に、本物の人間であった少女と、

入れ替わっていたのではないでしょうか?

 いえ、こうなると、やはり、あの化け物達も、

自然発生ではなく、ゼーレが作った・・・』


 司会者が興奮しながら喋っているうちに、特殊防護服を着た者達は、 そのコアを、かなり離れたある所に運んでいく。

『おぉ!

 今から、あの使徒のコアを完全に破壊します!

 コレは使徒の、アレの復活を防ぐ為です!

 ズームしてください!』



 司会者がそう言うと、画面がズームされるが、 映らないので、カメラがその機械の側にあるものに、切り替わる。

 モニターには特殊な機械の中に入れられ、全員がその場を離れると、 機械が動き出し、中で圧縮されていく、コアが映った。

 一瞬、そのコアに、ミサトの苦悶にゆがむ顔らしきものが見えたような気がした。

 音声が入っていれば、叫び声もあったかもしれない。

 その瞬間、コアにひびが入り・・・

 閃光が走り、次の瞬間、画像が途切れる。

 再び、カメラがリポーターの近くのに切り替わると、 遠くに、十字の炎が上がっていた。

 リポーターは、興奮しながら、実況を続けている。

 そして、見るものは終わったとばかりに、マナとマユミとヒカリが食器を洗うべく、 台所に運んでいった。

 そこには、グラスが残っているだけだった。

 リポーターが、

“最後の仕上げに、付近ごと、N爆雷で消滅させる為、

爆撃機が近付いている事と、二時間後、確認をする”


事を説明しながら、その場を離れていく。

 そこで、シンジがTVをきった。

「終わったね」

「えぇ・・・徹底してたわ」

「完全に、ミサトの細胞の一欠けらも残らないでしょうね」

 シンジのつぶやきに、レイとアスカがそういった。

中途半端な失敗的存在も消滅したし、その下僕の死も確定しているし・・・
 これで、僕らの復讐が終わったことにしますか」

「司令はどうするの?
 もう、終わったでしょ・・・」

 シンジがそういうと、レイがそう訊いてきた。

「う〜ん・・・これから次第かな?
 アレと違って、記憶力も確りしているし、今は、かなり、反省もしているしね。
 それに、色々と便利だしね・・・
 今の状態だと、初号機の母さんが、マギやコンピューターを通して、 自由に外を見ることが出来るって、 教えて釘を刺しておいたから、 下手なことはしないだろうし、ココ数ヶ月で、精力を減衰させて、EDにしておいたから、 女性を襲う事も出来なくなったしね。
 ま、また外道な事をやり始めたら、それなりの処置をとって・・・」

 シンジはそういって首を掻っ切るまねをする。

「そう言えば、ユイさんはいつサルベージするの?
 ママが会いたがっていたわよ」

 今度はアスカが訊いた。

「そうだねぇ〜・・・そのうちかな?
 もう少し、あの中に居たいらしいし・・・
 まぁ、出て来るのは、今後、三行半をつき付ける材料が出来るか、 父さんが死んでからかもね」

「ふ〜ん。
 まぁ、ママにも、十二分に時間があるから、 のんびり待つように言っておくわ」

 そんな事を話していると、マナが戻ってきた。

「どうしたの?」

「ん、これから、平和になるなぁ〜って話してたのよ」

 マナの問いに、アスカがそう答えた。

「そうですね、後は、力を失ったあの老人達の生き残りの始末だけですし・・・
 それは一般の人に任せてもいいでしょう」

 マユミも戻ってきてそういった。

 食器洗いはヒカリに任せたらしい。

「えぇ、直ぐに終わったら、娯楽が無いわ」

 レイがそう言った。

「だね。
 では、これから、僕らは悠々自適と楽しく暮らしていこう。
 僕らには、時間は沢山あるんだしね」

 いつの間にか、皆のグラスにジュースらしき物を注いでいたシンジが自分のそれを掲げる。

 すると、4人の少女達も、グラスを持って、それに倣う。

 よく見れば、レイやシンジだけでなく、アスカ、マナ、マユミの瞳も紅くなっていた。

「では、新しき世紀の神子達に・・・」

「「「「乾杯♪」」」」

 5人はそういって、それを飲み干した。










                                 完

(あとがき)

やっちまった。
アンチ・ミサトモノのエンディングっぽい話が・・・
無論デムパです。
マジでデムパの趣くまま、書き連ね、ちょこっと修正しました。
ゆえに、所々しつこいモノがあるかも知れません(^^;)
でも、こんなものを受信するから、 某所でアンチ・ファンメーカー作家って呼ばれるんですよね。
(メールで教えられましたが・・・どこの掲示板ですか?)
マナとマユミは、勿論、レイやアスカと同質の者、つまり使徒になっています。
まぁ、シンジに助け出された時に、引き上げてもらったんですけどね。
当然、キョウコや、サルベージされた後のユイも同じです。
因みに、シンジはその上の存在・・・
シンジ達が隠れていた街の住人達は、シンジ達を神のように崇めていたりします。
(兵達があっさりシンジの捕獲をやめた理由も分かるでしょう)
ただし、ミサトの暴走は素です。
その為、最初は逃げたんですが・・・
その後も、その追撃があまりにも酷く、
更に、N弾頭ミサイルを落とされた後、
それならと、復讐する事にしたんです。
レイ達の事件は、それで、精神誘導をして仕組んだらしいが・・・
あのミサトの三大理論は、勿論、Gガンダムのデビルガンダムのパロで、 他に自己欺瞞、自己陶酔、自己暗示、自己増長、自己顕示、自己主張、 自己完結など色々あります。
(皆さんも組み合わせを考えてみよう)
あの後の世界がどうなるかは、不明ですが・・・
きっとシンジ君中心に幸せになるのではないでしょうか?
彼はあの世界では英雄神になっていますし、ゼーレをほぼ壊滅させ、ゲンドウも引き込み、 確り、全使徒の力も持っていますから・・・
(因みに、パターン青は自分達では出ないようにマギの中のイロウルに命令しているのです)
では、またデムパであいましょう。

(*^―^)ノ~~☆・*マタネー*・☆~~ヽ(^―^*)


と言いつつ、改訂版です。
ながちゃんさんのコメントにより、一部、消していた部分をソフトにすれば、 載せてもOKっと思って・・・
チョッと新たな遊びを入れましたが、チャンと機能しているかな?
無論、一部、皆さんの意見を取り入れ、改定した分もありますが・・・
そんなわけで、(⌒0⌒)/~~~ またね



(ながちゃん@管理人のコメント in 初版)

とりもち様より、当サイトの50万ヒット(まだ少し早い?)のお祝いとして、ミサトの武勇伝(?)の第四弾を頂きました。
これはまた、かなりの毒電波ですな〜(笑)。ある意味、究極ともいえる断罪SSです。
まさに「とりもちワールド」の集大成ともいえる(?)作品ではないでしょうか♪
いやー、さすがにここまで断罪されると、清々しいものがありますよねぇ〜(笑)。
あと、マコトも共犯だから、当然極刑ですよね?(でないと、マヤが可哀想すぎますっ!)
しかし、まさかミサトが使徒だったとは・・・いろいろ納得です。
死に様もグッドですね。当然の報いです。
惜しむらくは、一瞬で刑の執行を終わらせずに、もっともっとミサトの苦しむ様子を見たかったです(おい)。
先ずは大口径ガンで軽く四肢を吹っ飛ばして、クソ女が苦しみ泣き叫ぶ中、次に小口径で死なないように内臓に数発ぶち込んで、そして仕上げにバズーカの連射でミンチ・・・これくらいはして欲しかったですぅ〜♪(笑)
あと余談ですが、原作の第三使徒戦で「今は歩くことだけ考えて」と言ったのはリツコです(漫画版ではミサトですが)。
・・・ま、どうでもいい話ですがね。
シンジ君はさり気なくハーレムを作っているし・・・ここまできたら、ついでにヒカリも入れちゃって下さい♪(笑)
ゲンドウへの仕打ちだけが意外でしたが、これはこれからということですね♪
しかもEDにされるとは・・・自業自得ですな(笑)。
いやー、すんごく面白かったですよ〜。さすがですね。是非、第五弾を読みたいですねぇ〜♪
・・・いや、あるのか?(笑)・・・まさか地獄からの復活編があったりして?(爆)
とりもち様、次の電波を待ってまーす。



(ながちゃん@管理人のコメント in 改訂版)

とりもち様より、改訂版を頂きましたので、差し替えました。
全体的に修正が入れられていますが、一番大きな変更箇所はというと、やっぱミサトの処刑シーンでしょうか。
あと若干のお遊びも入っていますね。グッドですよ♪
マコトの死刑も確定したことだし、もう言うことありませんね(笑)。
とりもち様、次の電波を待ってまーす。
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