新世紀エヴァンゲリオン アストレイア

第壱話

presented by 伸様


 シノ達は、愚者達の街、第三新東京市に降臨する。

 

(ガチャン)

 シノは、公衆電話の受話器をフックに掛け、肩を竦めながら頭をゆっくり二度三度振った。
 
 そして、形の良い唇から言葉を紡ぎ出す。
 
「携帯も駄目、公衆電話も駄目ですね」

BGMの様に市内放送が常に無い事態を告げていた。

 

 

≪緊急警報、緊急警報をお知らせします。

 本日十二時三十分、東海地方を中心とした関東中部全域に、特別非常事態宣言が、発令されました。

 住民の方々は速やかに指定のシェルターへ、避難してください・・・繰り返しお伝えします・・・≫

シノは、聞くとはなしに聞きながら、シナリオ通りですね、と呟き、御付として付いて来た二人の少女の方に歩み寄った。

「マスタ〜、もう一時間も指定の場所でまってるですよ〜。それに熱いです〜」

「楓、少し熱暴走気味ですか?言葉が幼児退行してますよ?

 国連軍極東方面軍にヘリを出す様に、連絡を入れて下さい」

ブーたれている、楓と呼んだ薄桃色の髪を持つ少女の顔を覗きこみながら、シノは静かな口調で、タクシーでも呼ぶかの様に命じた。

「しかし、主様(はぁ〜)

 報告通りですね。葛城ミサト一尉は(はぁ〜)

 手紙には、自分で迎えに来ると書いておきながら(はぁ〜)」

一泊置いて、艶やかな黒髪を持つ少女は、自分が記録している葛城ミサトなる人物のデータを読み上げる。

 

 

「『葛城ミサト

  ネルフ本部作戦部作戦課所属。肩書きは作戦部部長で兼務で作戦課課長、階級は一尉。

  研修先の戦略自衛隊とドイツ国防軍での評価は、略同じ。

   戦略全般参謀能力E−

   戦術全般参謀能力E+

   全般指揮(司令官)能力E−

   地上戦指揮官能力E+

   白兵技能Bランク

   射撃技能B+ランク

  (しかし、SからE−までの評価の中で、最低のE−評価が多いです(はぁ〜))

  作戦癖は、外連味(けれんみ)のある作戦を好む。

  しかし、外連味倒れになる事は毎回の如く。

 

  両軍で行った性格診断の結果も略同じ。

  診断結果は、何事にも中途半端。自分の欲望にだけ忠実。

  自分の失敗を他人の所為にしたがる。

  (さぁいてぇぇ、自己中中の自己中じゃないですか)

 

  兵士としては、そこそこ有能。指揮官としては、班も任せられない無能。

  事務処理能力も低い。書類を書かせれば、誤字脱字は当たり前。

  日常生活の方では生活破綻者、ずぼらでがさつ、たとえ仕事中でもビールなどのアルコールを摂取している。

  家事能力は最低を通り越して最悪、掃除もせず、誰でも不味く作れないハズのレトルト料理を作れば、バイオハザードを起す』

 

 

 でも、何で国連の非公開組織でありながら、階級の呼称が自衛隊式なんですかねー(はぁ〜)」

「紅葉、その様に溜息ばかり漏らしていると、魂も抜けますよ。

 ですが、今は敵生体が接近しているので作戦部長として席を外せないのは判りますが・・・

 代理の人を寄越す位の知恵も回らないのですかね?」

紅葉と呼んだ艶やかな黒髪を持つ少女に答えながら、可愛らしく首を傾けるシノ。

頬に右手の人差し指を突けているのがチャームポイントだ(笑)

「マスタ〜、付近を飛んでる予備の観測ヘリを回すそうでしゅから〜。後十分でしゅ〜」

熱さで、更に幼児退行が進んだか?楓・・・

「(ふーぅ)それでは紅葉。MAGIにハッキング。発令所にでもメールを送って下さい。

 『これから、ヘリで行きます』と」

勿論、この内容は嫌味以外のなにものでもない。

「判りました、主様。

しかし、葛城ミサト。

寝坊して、更に道に迷っていたりとか、しているのではないでしょうか?(クスッ)」

それ、大正解!

 

 

 ネルフ本部発令所

MAGIのモニターにメールの着信を告げるメッセージが流れる。

「何です?このメールは?」

高校生にしか見えない童顔のオペレーターが首を捻る。

「マヤ、私が処理するわ」

金髪黒眉の白衣を愛する赤木リツコ技術部長がコンソールを操作し始めた。

「ハイ、先輩」

マヤと呼ばれた童顔のオペレーター伊吹マヤ技術二尉が、コンソールから手を離した。

 

 その頃、発令所の上の方では・・・

「ゲンドウさん、早くシンジに会いたいですわね」

ウキウキした顔色の短い茶髪に茶色の瞳を持つ女性。六分儀ユイ、ネルフ副司令。

「そうだな、ユイ」

薄赤いサングラスをかけた、どう見ても犯罪者な顔付きの髭男。六分儀ゲンドウ、ネルフ総司令。

二人のウキウキした顔を見て、シンジと呼ばれた人物の現状を知っている初老の男は苦言を呈する。

「ユイ君、ゲンドウ。余り期待しない方が良いぞ。

理由はどうアレ、あんな仕打ちを、あの子にしたのは、判っているだろう?」

ゲンドウは顔を少し顰めるが、ユイは気にしていない。

「判っています。今まで、碇の父が邪魔していましたが、今度は大丈夫。

シンジも話せば判ってくれますよ。冬月先生」

やれやれと頭を軽く振り、考え込む、冬月。

(シンジ君の事になると、途端に判断力が低下するな、ユイ君は。

 11年も会っていないからかも、知れないが。

 今のあの子は、シンジ君ですらないのに。

 それに、あの子がああなったのも、元はと言えば、ユイ君達の浅慮が原因でもあるんだぞ?)

 

「ウィルスは無し、と。どれどれ・・・」

ウィルスチェックを行い、メールを読む、リツコ。どんどん、顔色が悪くなっていく。

「あ、あの馬鹿・・・」

額に“怒り”の四辻が浮かんでくるリツコを見て、彼女を慕うオペレーターのマヤはオロオロ(笑)

「日向君っ、ミサトに戻ってくる様に連絡してっ」

ビックリした表情の眼鏡のオペレーター。

「どうしたんですか? 確か、サードチルドレンを迎えにいっている最中ですよ?」

日向と呼ばれた眼鏡のオペレーター日向マコト二尉は、リツコの剣幕にちょっと腰が引き気味に答えた。

「そのサードチルドレンから連絡なのっ。

指定の時間から一時間、指定の場所で待っても迎えが来ないので、ヘリでコッチに来てくれるそうよっ」

その騒ぎを聞きつけた発令所のユイ。

事の顛末を聞き、額に“怒り”の四辻がクッキリスッキリ浮んでいる。

「リっちゃん、シンジを迎えに行ってあげて。

 それとマコっちゃん。ミーちゃんの連絡に付け足して。減俸3ヶ月って」

 葛城ミサト、ドイツより異動してきてより、1ヶ月。累積減俸7年目に突入した瞬間だった。

葛城ミサトは、この時、発令所にゲンドウが居なかった事を感謝するべきだろう。

居たら、減俸6ヵ月は固い所だったのだから。

 そのゲンドウは、冬月と共に第二発令所で国連軍として敵生体と対峙している戦略自衛隊の応対をしていた。

「15年ぶりだな」

「ああ、間違いない。使徒だ」

 

 

 シノ達を乗せたヘリは、戦自の航空管制を受けて、大回りする事になってしまった。

通常の戦力では対応しきれなくなった戦自が、N2兵器の投入を決意したのだ。

「主様、N2の投入を止めないのですか?」

と紅葉がインカム越しにシノに疑問を呈する。

「法的にも、今の私には、ココでの戦闘を指揮する権限はありませんよ」

それに、と続ける。

「足止め、してもらいませんと」

(どうせ、アレに乗せるつもりで、呼んだのでしょうに。

ならば、早目に呼ぶとか、ちゃんと時間通りに迎え位寄越してもらいませんと。

 無駄な人死にが出てしまうじゃないですか。

 それにしても、国連軍・・・

 

 戦略自衛隊でしたか、今の指揮は・・・

 N2を使用するのが遅いですね。

 海岸から、敵生体が今いる街までに、N2を落しても問題が無い土地が広がっていましたのにね。

 水際陣地が抜かれた際に、決断していれば、街一つ無駄死にさせずに済んだものを)

 

 

 

 

 熱さで逃げ水が見える、ネルフ・ヘリポート。

 着陸したヘリから、ヘリのダウンウォッシュで乱れる髪を押えながら、降りて来るシノ達三人。

待機所にいたリツコがガラス越しに微笑みながら、軽く右腕を挙げ出迎える。

 大気の熱さを避ける様に、待機所に早足で入るシノ達。ドアを開けて入ると、冷房の冷気が心地よい。

 三人の姿を見ると、微笑を浮かべながら、リツコは久闊を叙した。

「お久しぶり、シノちゃん。それに楓ちゃんに紅葉ちゃん」

「(にこっ)久しぶりです。リツコさん(ぺこり)」

シノも綺麗な笑顔を見せながら、見事なお辞儀を返す。

「リツコさん、元気でしゅたか〜(ヘタレ)」

今だ、幼児退行中の楓(笑)

「リツコさんも、御元気そうで。MAGIも元気にしていますか?」

と此方は、マイペースの紅葉。

「この間、アメリカでナオコさんとも会いましたよ。御元気そうでした」

「そう、母さんも元気そうでなによりね。本当に良いの?シノちゃん」

リツコが心配そうに聞いてくる。

「先ずは、親の責任を放棄して、息子を殺した愚か者達に会ってからですね」

「・・・・・・」

「ところで、迎えに来ると書いてきた、葛城ミサトさんは?」

「それが・・・(怒)」

「「「それが?」」」

「寝坊して、遅刻して、道に迷って・・・」

「私の予測通りですね、主様(エッヘン)」

胸を張る紅葉の微笑ましい姿があった(笑)


「それで、六分儀司令達に会う前に、見て欲しいものがあるの」

リツコは切り出すと、シノも、良いですよ、と言い、リツコの後を付いて行くのであった。

 

 

 

 

 N2兵器も効果が無く、万策尽き、戦自統幕からも帰還命令が来た。

 戦自の指揮官が悔しげにゲンドウと冬月の方を見る。

ゲンドウは、何時もの様に手を組んで口元を覆い、肘をデスクに着けている形で、戦自の士官達を睥睨していた。

 戦自の指揮官は、ゲンドウの不遜な態度に、嫌味の一つも言ってみたくなったのだろう。

「六分儀君。我々の所有する兵器では、目標に対し有効な損害を与えられなかった事は認めよう。だが君達なら勝てるのかね」

「そのためのネルフです」

 

 

 ネルフ本部・ケージ

エヴァ初号機の頭部を見上げるシノの目に、ナノマシンの残光が人知れず仄かに光る。

「機動兵器? 生体部品を大々的に使用していますね。

 これが、ネルフが誇った専用人型局地戦兵器エヴァンゲリオン?」

「(ふっ)貴方には、バレバレね」

と苦笑しながら答えるリツコ。

「(あははっ)まぁ、私に従わない電子機器は有りませんから」

こちらも苦笑しながらシノも答えた。

 

 

 そして、ケージを見下ろす管制室から響いてくる愚か者の声。

「久しぶりだな、シンジ・・・って、シンジは何処だ?赤木博士」

戸惑うゲンドウ。

「何を言っているのです、ゲンドウさんっ。シンジ・・・シンジは何処?リっちゃん」

キョロキョロ見回し“男の子”を探すユイ。

少し躊躇いながら、リツコは答える。

彼女が碇シンジ君であった人です

「「えっ?」」

 

 

 先程まで、リツコと話をしていた人と同じか?と思うほど、シノが纏う気が変わってくる。

 今、シノが纏う気は、闇。全くの闇を纏い出す。

シノは愚か者二人を見上げながら玲瓏たる声で、二人の疑問に答える。

貴方達が知っている、碇シンジは死にました

「「何を言っている(の)」」

再び、シノは玲瓏たる声で呪詛の言霊を紡ぎ出す。

「貴方達が知っている、碇シンジの魂は死にました。

 自分を棄てた、見殺しにした両親と、その原因となった女の子を怨み妬み嫉み呪いながら」

 

 

「私は、碇シノ。碇シンジが絶望に喘ぎながら育てた魂」

「「どう言う事だ(なの)」」

 

 

 揺れるケージ。パラパラと構造材の破片が落ち始める。どうやら、直上都市に使徒が接近した様だ。

「ここに気がついたか」

焦り気味のゲンドウ。

「シンジ、乗って。人類の切り札に。貴方でないと、そのエヴァは、初号機は動かないの」

今だ、母親なつもりのユイ。

「鬼札の間違いでしょう(ククッ)

 母親を慕う気持ちが無いとシンクロしない、プログラムコアにどうシンクロしろと?

 面白い事を仰ります」

(まぁ、私なら直接シンクロと言うか、エヴァを従わせてしまうでしょうけどね)

 

 一際、大きな振動と共に落ちてくる天井の照明や構造材。

シノの頭上に、天蓋の様に手を翳す初号機。

「シンジを守ったと言うの?」

ユイは、信じられないものを見たという目をしながら呟く。

「何で?エントリープラグも挿入していないのに・・・」

唖然とするリツコ。

 騒然とするケージの中、シノは悠然として初号機を見つめる。

 そのシノを見下ろしながら、更に拘束具を外し、恭しくシノに礼を捧げる初号機。

その光景を見ながら、

「しょっ、初号機が、シノちゃんを主人として認めた、とでも言うの?」

リツコは呟く。

 

 

 ケージのモニターに、発令所の冬月が映し出された。

「シノ君。君宛に、国連事務総長から、秘匿回線で通信が入っている」

そして、御繋ぎしてくれ、と言う冬月が指示する声が聞こえた。

 モニターの画面が変わり、60代後半位の混血っぽい男性が映しだされる。

「これは、これは、国連事務総長。ご機嫌よう」

芝居がかった仕草で、モニターに夜会で使う様な礼をするシノ。

ゲンドウやユイとの対応の様な闇の気配は無く、親しげだ。

 モニターに映った国連事務総長は、時が時なので単刀直入に言うが、と前置きした上で、一拍置いて用件を言い出した。

「お嬢。済まないが、ネルフに出向してくれないかね?」

「これは、これは。また急な話ですね(くすっ)」

軽く微笑むと、真顔に戻り、

「国連事務総長、それは命令ですか?私は既に“あそこ”に所属しているのですよ?」

「U.N.SPACY唯一の実働部隊指揮官である事は重々承知している。

 しかし、大型機動兵器を用いた大規模地上戦を経験した者は、現在の地球上では、君しかいない」

「ほぉー、宇宙はどうする御積りで?」

「ストレイカー卿とも話を付けた。さし当って、今現在、宇宙は静かだ。

 哨戒任務に、全艦艇を引き連れて行く訳でもあるまい?

 任務群司令官連中に任せても問題無い、と思うがね?

 兼務でも問題あるまいと言う訳だ」

「兼務ですか・・・」

国連事務総長は威儀を正すと、シノへ命令を下した。

「碇シノ准将。ネルフ本部への特別査察官としての出向を命じる。

 U.N.SPACYは、基本的に少将までしか階級が無いので、今まで通りに、出向先での待遇は、中将勤務と言う形になる。

 併せて、緊急事態も想定して、私の一部権限の代執行権も付与する」

シノもこうなる事は、予め心積もりはしていたので即答する。

「ハッ、お受けします」

ケージに設置されているモニターに向かって、海軍式の色気のある敬礼を贈るシノ。

「書類は、明日にでも届けさせる」

 

 

 ゲンドウとユイは、何も口を挟めず、唖然としているままに事態は進行していく。

 

 

 シノは、リツコへ振り帰ると、気負うでも無く質問した。

「それじゃ、リツコさん。エヴァの操縦方法を教えて下さい」

「え、えぇ。そうね(この子なら、知っていそうだけど)」

「楓と紅葉を使って良いですよ、リツコさん」

 そして、再び頭上の管制室を見上げ、唖然としているゲントウとユイへ、又闇の気を纏いながら言い放つ。

「総司令と副司令が、発令所に居なくても宜しいのですか?(ニヤリ)」

 

 

一通りの説明が終わり、発令所に戻ってきたリツコは、マヤ達を促して、エヴァの起動を始める。

「冷却終了!」

「ゲージ内全てドッキング位置!」

「停止信号プラグ。排出終了」

「パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!」

 

 

シノは、パイロットシートに座ると、アンバーな瞳にナノマシンの残光を仄めかせ、一人でエヴァの起動を始めてしまった。

『エントリープラグ、挿入・・・』

『プラグ固定完了・・・』

『L.C.L、注水開始・・・』

注水され始めたL.C.Lを手で掬って舐めてみると、血の味。L.C.Lの量が増えてくるに従って、血の香が充満してくる。

そして、顔の辺りにまでL.C.Lが注水されたのを見計らって、肺の中の気体と入れ替わりに、L.C.Lを肺に充填させる。

(情報として知ってはいましたが・・・気持ちの良い作業では、ありませんね(ウヘェ))

顔色には出さないが、内心大いに顔を顰めているシノだった。

『思考言語は日本語をフィックス・・・』

『神経接続・・・第一次接続開始・・・』

『主電源接続・・・』

『全回路動力伝達・・・』

『第二次コンタクト・・・』

そして、スクリーンに映る情報を読み出す。

『A10神経接続、異常なし・・・』

『初期コンタクト、オールグリーン・・・』

『双方向回線、開く・・・』

その頃、発令所では・・・仕事を盗られたマヤがオロオロしていた(笑)。

「えっ、何で?・・・如何して。起動方法を知っているの?

 えっ、私の仕事が・・・何でぇ?・・・せっ、先輩〜(泣)」

シノのこの悪戯に、シノとの付合いが長いリツコは、ヤレヤレと首を振りながら、マヤに仕事に戻る様に促した。

「マヤッ、起動は?報告がお留守よっ」

「シンクロ率0%・・・し、しかし、エヴァ初号機、起動」

このマヤの報告にざわめく発令所。

(そりゃ、そうでしょうね。A10神経接続じゃないのだから)

訳知り顔で一人頷くリツコ。

 

 

 リツコは、今この場に居なければ、ならない人物を思って、一人愚痴る。

「一体、どこに居るの、あの馬鹿は?」

 リツコの罵りを余所に、戻ってきたは良いが、本部施設見取り図を片手に、今だネルフ本部内をさ迷う葛城ミサト。

尤も、見ている見取り図は別のフロアーであり、45度程横方向にずらして見ていたのだが。

「ここは、何処?」

 迷いの森で永遠に彷った方が人類の為かもしれない。

 

 

 リツコに従って発令所に入ってきた楓と紅葉は、先程の件以来、オロオロしてオペレートが手に付かないマヤをリツコの許可を得て、押し退け、敵生体の情報を纏めていた。

そして、纏めた情報をシノへ連絡しようとして、リツコに許可を求めた。

リツコは、マヤ以外のオペレーターの青葉シゲル二尉や日向マコト二尉を見るが、初陣の為、敵生体の情報を纏めてパイロットに伝達する様な気は回らない様な雰囲気を見て取った。

リツコは、私も始めての癖に随分落ち着いているわね、と思いながら、楓と紅葉に、シノへの連絡の許可を出す。

「マスター、使徒の攻撃方法は、目と思われる部分からビーム兵器が発射されている事が確認されています。後、手と思われる部分から槍らしき物体を出し、攻撃する事も確認されています」

「主様、都市部への侵入を許していますので、早急に都市部から排除する事が必要です」

何気に優秀?シノ御付の少女達。

 

 

 シノは、モニター越しに発令所を見ながら、静かに問質した。

「それを踏まえて、作戦はどうするんですか?」

 忽ち、慌てるリツコ他一同。

「アハハ(脂汗)、シノちゃん。その作戦を立てる人間が、葛城作戦部長が、未だ来てないのよ」

 焦りの所為で、言葉が途切れ途切れになるリツコ。

無様である。

「・・・馬鹿?」

モニター越しに、ジト目で発令所を睥睨するシノ。

 

 

 シノの発案で、ダミーバルーンを使徒正面に放出し、初号機を使徒背後にリフトオフさせると、ATFを一気に破壊し、第三使徒を瞬殺するのであった。






To be continued...


(Postscript)

 本編第壱話です。
 本作のヒロインである碇シノですが、今からみるとかなり強引な設定ですね(笑)。雰囲気的には、黒アキトと黒ルリを足した感じでしょうか(苦笑)。
 この世界は地球にもあった“遺跡”を発掘したお陰で、宇宙関連の技術は突出しています。
 その為に外宇宙の勢力とドンパチをするハメに陥っていたりしています。ただ、この宇宙戦争は、国連や国家がトップシークレットでの機密事項となっており、一般には流布していません。
 その辺は、U.N.SPACYの母体となったイギリスの映画会社を隠蓑にして宇宙戦争をしていた某組織からの伝統と思って下さい(笑)。

 尚、アストレイアの補足ですが、正義と天文を司っていた女神で、神々が人間を見捨てた際も、最後まで一人、人間に正義を教えていましたが、結局は争い断えない人間を見捨てたと言われています。
 シノにもそう云う所は有ったりします。尤もシノは自分を正義だとは、1ミクロンも思ってはいませんが。


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