第三十三話
ゴジラの退屈と、アダムの行方
presented by 蜜柑ブタ様
元武装ビルの瓦礫と残骸が散らばる荒れ地となった第三新東京に、赤黒い血が飛び散った。
ゴジラの顔の左側が切り裂かれたのだ。
ゼルエルは、ペラペラの両腕をヒラヒラさせてまるで挑発している。動かない顔の表情もあって、かなりムカつく感じだ。現にゴジラは苛立ったのか、唸っている。
シュンッと残像が見えないほどのスピードでゼルエルの腕が迫ると、ゴジラは爪を立ててその腕を切り裂いた。しかしペラペラのゼルエルの腕はすぐに修復された。
その直後、ゴジラの右肩辺りから血が噴き出た。先ほど引き裂いたゼルエルの腕が先にゴジラの肩を切り裂いていたのだ。ゴジラの右肩の出血はすぐに止まる。
さすがのゴジラもこの一撃には驚いたのか、ゼルエルを見ている目が少し見開かれている。
だがやられてばかりのゴジラではない。
続けて振られたゼルエルの腕を掻い潜り、ゼルエルに突撃する。
分厚く、何枚も重ねられたATフィールドが阻み、割れる音と激突する音が響いた。
ゴジラは、ATフィールドを掴むようにして破くが、何枚も重ねられたATフィールドはすぐには突破できない。
ゼルエルの目が光り、凄まじい爆炎がゴジラを包んだ。
だがすぐにゴジラが顔を出し、残りのATフィールドに喰らいつき破る。
ゴジラの顔がゼルエルに接触するかしないかの距離に迫り、ゴジラの口に熱線の光が込められた時だった。
ゼルエルのずんぐりした体が“ほどけた”。
そのためゴジラの熱線はその隙間から回避され、ゼルエルは上へ逃れた。
足が無くなり、胴体が黒いが腕と同じヒラヒラの体の組織に変わる。白い肋骨のようなものに囲われた赤いコア、そして特徴的な顔だけがあるその姿は、更に不気味と言わずしてなんと呼ぶというような姿であった。
ゴジラがハッと上を見上げた途端、何十枚ものATフィールドが放たれ、ゴジラを押し潰して土煙が大きく立った。
土煙が晴れた後には、ゴジラがうつ伏せになって地面にめり込んだ姿があった。
ゼルエルは宙に浮いた状態で更にATフィールドが発生させ、倒れているゴジラに放った。何度も何度も。
そのたびにゴジラはますます地面にめり込む。しかしゴジラもやられてばかりではないと言わんばかりに、ATフィールドを押し戻すように立ち上がろうとする。放たれたATフィールドがゼルエルの方に押し戻されそうになったり、押したりを繰り返す。
押し戻した一瞬をついて、ゴジラが上を向いて太い熱線を吐いた。
赤い熱線がATフィールドを貫き、ゼルエルに迫る。
ゼルエルの姿が熱線に飲まれるが、直後、ゴジラの左太ももが抉れた。
ゴジラが悲痛な声を上げた時、ゼルエルがずんぐりした体に戻りゴジラの背後に立った。ゼルエルの体は、熱線で焼かれたためか湯気が立っているが、元々の体が硬いことと、ATフィールドで威力を殺したためほとんどダメージになっていないらしい。
ペラペラの両腕がゴジラの体に絡みつき、その巨体を持ち上げて後ろへ頭から叩きつけた。
そしてもう一度持ち上げ、前方へ放り投げられるゴジラ。
ゴジラが立ち上がろうとすると、ゼルエルの両腕がトイレットペーパーのように巻かれ、二本の棒状の形になりゴジラに向かって伸ばされた。
真っ直ぐ伸ばされたゼルエルの腕がゴジラの首の横とわき腹を抉った。
大きく出血したゴジラが後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。
ガフッとゴジラが血を吐く。どうやら気管まで抉れたらしい。
ゼルエルは、腕を上へ伸ばすと、その先端でドスドスっとつつくようにゴジラの胸の上を突いた。突かれるたび、ゴジラがビクンビクンとなり、たまにガフッと血を吐いた。
地球防衛軍側にも、ネルフ側にも絶望が広がる。
その時、ミサイルとメーサー砲が飛んできてゼルエルに着弾した。
ゼルエルが振り向くと同時に、ドリルがゼルエルの顔に突き刺さった。
素体から噴出した赤黒い液で汚れた機龍フィアが、くっつけた右腕から展開したドリルでゼルエルの顔を突き進む。
ドリルがゼルエルの顔を貫き、胴体をも貫通しようとした時、ゼルエルのペラペラの両腕が機龍フィアに巻き付いた。だが巻き付いた端からジュッと音を立てて焼けて溶けていった。機龍フィアの素体…つまり赤黒い液はツムグの細胞なのだ、使徒が触れればたちまち焼ける。
ゼルエルは、グズグズに焼けた腕を切り離し、新たに腕を精製。そして新しい腕を巻いて、二本の筒状にし、機龍フィアを貫こうとしたが、寸前で横へ避けられ、顔に突き刺さっていたドリルが抜けた。顔に空いた穴は塞がり、目が光る。そして光線が発射されると同時に、機龍フィアの手がゼルエルの顔の下を掴んで上向かせたため、光線は斜め上へと発射された。
ゼルエルはペラペラの両腕をまっすぐに伸ばし、振り回した。ガキンガキンっと機龍フィアがドリルの先端でその鋭いペラペラ腕を弾く。
直後、ゴジラの目に光りが戻った。
このまま嬲られてばかりかと思われたゴジラだったが、不意に起き上がり、ハッとしたように振り向いたゼルエルが見たのは自分を睨むゴジラだった。
その目は、『いい加減にしろよ、テメー』って言ってるような気がした。次の瞬間、ゴジラの背びれが光った。
体内熱線。ゴジラを中心に爆発するように熱線のエネルギーが放たれ、ゴジラに掴まれていたゼルエルの両腕が焼けて消滅し、ATフィールドでも相殺しきれなかった衝撃波がゼルエルを襲い、ゼルエルの体が吹っ飛んだ。あと機龍フィアも。
後ろへ倒れ込み仰向けになったゼルエル。素早く起き上がったゴジラがペッと唾と血を吐いて、ゼルエルに馬乗りになった。
ゴジラが腕を振り上げ、ゼルエルを殴る。殴る、殴る、殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る!!
形を失うゼルエルの顔と肩と一体化した顔周り。そしてコアを守っていた肋骨のような部位。そして肋骨が壊れてコアが露わになると、慌てるようにゼルエルの他の体組織がコアを守るように集まった。ゴジラは構わずコアを破ろうと攻撃を続ける。
ゼルエルのペラペラの両腕が再び棒状になり、ゴジラを貫こうとしたが、それをゴジラは牙と爪で引き裂いた。ゴジラの体は、体内熱線と怒りにより血管のような赤い筋が走っていて凄まじい熱を持っていた。先ほど傷つけられた首と脇腹の傷も、太ももの傷ももう癒えている。
シュルリッと、新たに作られたゼルエルの両腕がゴジラの首に見えぬ速度で巻き付いた。
ゴジラは、そのペラペラの両腕を再びの体内熱線で焼き尽くし、ゼルエルの体を焼いた。
体内熱線の後、ブスブスと焦げるゼルエルは、再び体をほどかして無数の布みたいな体になってゴジラの下から逃れた。
その布状の体の一部をガシッと掴み、ゴジラはゼルエルを地面に叩き付けた。
叩き付けられ地面にめり込んだゼルエルは、ピクピクとしばし動かなかった。その顔をゴジラが思いっきり踏みつけた。
使徒の様子がおかしい。それは中継を見ていた者達が思ったことだ。
圧倒的な力と耐久力を見せたゼルエルだったが、ゴジラに散々殴られ抉られてから妙に勢いが無くなっていた。
『物事には、限界ってのがあるからねぇ。』
ツムグからのコメント。
ツムグしか知らないことであるが、ゴジラは、アンチATフィールドが宿っている。しかし、その力そのものに自覚が無いためか、ロンギヌスの槍に比べると弱めだが、その弱めの力が元々の、更にパワーアップした力に混ざることでゴジラは使徒に対して絶対的な力を発揮できた。
簡単に言うと、ゼルエルは、ゴジラというロンギヌスの槍に近い力でボコクソに攻撃されているのだ。RPGなどのゲームで言うと、毒攻撃をずっと食らわされているようなものだ。
ATフィールドとは、すべての生命体が持つ存在を維持する力でもあり、それを反転させ、存在を維持できなくさせる力がアンチATフィールドである。
このアンチATフィールドによってATフィールドを失うと、失った生命体は、たちまち生命のスープであるLCLになってしまう。
なお、ゼーレが目論む人類保管計画とは、このアンチATフィールドを世界中に広げて、すべての人類と生命をLCLにし、ひとつにまとめることである。
が…、まさかゴジラがアンチATフィールドを宿すことになるという、イレギュラー・オブ・イレギュラーを起こすなどとは誰が想像した?
まあ、ゴジラの封印が南極にあって、そして南極で使徒・アダムの永久機関を起動させる実験をして、セカンドインパクトを起こしてしまったのだから、とにかく色々と悪いことが重なったとしか言いようもないが……。だいたいセカンドインパクトの大破壊で死ななかったゴジラがおかしいと言ったらそこまでであるが……。
そして、今、最強の拒絶型である力の使徒ゼルエルを追い詰めつつあるゴジラ。
アンチATフィールドを持つ度重なる攻撃を加えられ、いくら永久機関を持っていても、永久機関を持つコア以外の部分が限界が迫ってきていたのだ。現に再生が上手くいかなかったのか形がおかしく再生した部位がある。
何度も何度も踏みつけられる。そしてゴジラは足の下にいるゼルエルの布状の体を掴みあげる。踏まれて形がおかしくなったゼルエルの顔。しかも顔から変な液を吐いていた。目とか口から。
その様は泣いているようにも見え、まるで『やめてください…。これ以上は…』っと訴えているようにも見えなくもない。
しかし、それで許すゴジラではない。やる気が失せて無視することはあれど。
すると。
もう飽きた。
そう言わんばかりに、ゴジラが無慈悲にゼルエルのコアを掴んで引きちぎった。
ブルブルと大きく震えるゼルエルが奪われたコアに弱々しく腕を伸ばすが、それよりも早く、ゴジラはコアを握りつぶして破壊した。
その瞬間、石になったようにゼルエルはそのまま動かなくなった。
ゴジラは、そんなゼルエルを蹴飛ばして転がし、フンッ!と鼻息を吐いた。体に走っていた血管のような赤い筋は消えた。
『ゴジラさん。不完全燃焼なら、遊ぶ?』
ツムグがそう言うと、ゴジラは、機龍フィアを見た。
しかし、フンッと再度息を吐くと、もう用は済んだとばかりに海へと帰っていった。
『……ふーん。そうなんだ。』
『おい! 椎堂ツムグ! ゴジラは何を?』
『サイキョーの使徒だから楽しめるって思ったんだって。まあまあ、だったみたい。』
『………それだけか?』
『それだけ。ゴジラさんってば、使徒との戦いを楽しんでるだけみたいだけど、あんがい歯ごたえがないからやる気なくなってきてるみたいだけど。』
『歯ごたえがないって…、最初アレだけやられていたのにか!?』
『うん、そーだね。だからちょっと本気出したらさ、あんがいあっさりだったから拍子抜けしたみたい。使徒って、コアに依存してるからコアを狙うと脆いからだって。』
『……。』
もうノーコメントである。
本気じゃ無かったゴジラに敗退した最強の拒絶型であるゼルエル。
っていうか、今までもゴジラは本気じゃ無かったということである。
そう言えば、体に走っていた血管みたいな光りは、なんとなくメルトダウン状態のゴジラを彷彿とさせた。
もしかしてゴジラは、セカンドインパクトを経てメルトダウン状態すらも操れるようになったのか!? そんな不安が過ぎる。
『ともかく、ゴジラさん、とってもヒマしてるみたい。よーし、こうなったら、俺がその埋め合わせしてあげないと! 機龍フィアの改良よろしく!』
『お前な〜!』
マイペースなツムグやゴジラに振り回される地球防衛軍であった。
***
ゼルエルは退けられ、大破したエヴァンゲリオンは、まだ使徒が残っているということで修繕費は出された。
だが、問題はチルドレン達だ。
ケンスケは、完全に戦意喪失。首を切られた時の衝撃により生死を彷徨ったのも大きい。死の恐怖がこれまで有頂天だった彼を蝕む。
アスカは、裏コード・『ザ・ビースト』を発動した事による後遺症が残っており、怪我の治療も含めてすぐに復帰は難しい。
けれど、次のチルドレンを見繕う余裕は無く、使徒は待ってくれないし、ゴジラはもっと待ってくれない。
冬月は、このままエヴァンゲリオンを封印し戦闘をしないという方向に転換しようとしていることをアスカが耳にし、病院を脱走する勢いで自分はまだやれる!っと主張し、怪我を悪化させる事態が起こったりもした。
ところ変わって。
相変わらずの、どこだか分からない薄暗い場所で。
『……………誰か何か言わんか。』
ゼーレの面々はお通夜状態のように静まり返っていた。そんな中、そのうちの一人が呟いた。
『最強の拒絶型の使徒が……。』
『ゴジラが本気じゃ無かっただと?』
『つまり…、最強の拒絶型は、本気じゃないゴジラに合わせた力しかなかったと?』
『議長、このままでは…。』
『……。』
話を振られたキールは、腕を組み、黙っていた。
『残る使徒は三体、ゴジラにすべて退けられてしまうのか…。』
『まだ敗北が決まったわけではないだろう! 諦めるな!』
『エヴァもない、使徒も残り少ない、どう勝てと…?』
『おのれゴジラめ! 貴様さえいなければすべてがうまくいっていたというのに!』
『ゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければ…。』
ついにはブツブツとそんなことを言う者さえ現れ始めるほどゼーレは追い詰められていた。
「ことは一刻を争う。」
キールが口を開いた。
『議長?』
「最終手段を取るしかない。」
『ぎ、議長! しかし!』
「ならば良い案があるのか?」
『っ…それは。』
『……。』
黙ってしまう面々にキールは、深く息を吐いた。
「我々人類はこのままゴジラに滅ぼされるわけにはいかんのだ。だがしかし、奴を滅ぼすには、もうこれしかあるまい。」
『ゴジラを滅ぼすため…。』
『そのために我々は進化の道を捨てなければならないか…。』
『セカンドインパクトでも死ななかったのを、サードインパクトで殺せるのか? フギャっ!?』
その疑問を出したら、もう本当に方法が無くなってしまう。これを言った構成員は、キールが電流を流してお仕置きをした。
「ゴジラを滅ぼさねば人類の進化もクソもない。我々が取るべき道はほとんど残されていないに等しいのだ。これも人類のため…。覚悟を決めよ。」
キールの静かな言葉に、他の構成員達は見えないが深く頷いた。
***
ゴジラが海に帰還した後、轟天号が機龍フィアを助け起こすためにしらさぎや他の船隊と第三新東京に着艦していた。
そんな中、ネルフにいるリツコのもとにある人物が訪ねた。
「これはこれは大佐さん、何の御用かしら?」
ゴードンだった。
「アメリカから運ばれて来た荷物があるって聞いたもんでな。」
「あら、そんなものあったかしら?」
「とぼけるな。」
「ご気分を損ねたかしら?」
ゴードンの言葉に、リツコは、クスクスと笑った。
リツコは、席から立ち。
「マヤ、しばらく席を空けるからMAGIの方をお願いね。」
「はい、分かりました。」
マヤにMAGIを任せ、リツコは、ゴードンの近くに来た。
「こちらですわ。ついてきてください。」
リツコの後ろにゴードンがついていった。
最低限しか機能していないネルフの中を歩いて、やがて辿り着いたのは総司令室だった。かつてここでゲンドウが座っていた席がある。
司令の席に設置されているキーボードをリツコが操作する。
すると広い司令室の中央辺りの床が開き、何かがせり上がってきた。
「これですわ。」
それは頑丈なトランクを乗せた台だった。
「こいつは?」
「あら、内容は聞いていないのですか?」
「開けてみてからの楽しみだとか言ってたな。」
「そう。」
そう言いながらリツコは、トランクのパスワードを解いていく。
そして開けられたトランクに詰まっていたのは…。
「あの男の企みにどうしても必要だったモノ。今となっては無用ですけれど。」
「おい、どういうことだ?」
「これは、卵。かつてアダムと呼ばれていたモノが還元された姿。」
トランクの中で胎動するそれは、半透明な殻に包まれた何かの胎児のようなモノ。
リツコは、それをアダムだと言う。
「セカンドインパクトの元凶ってわけか。」
「あら、そこまで知っているの?」
「とある男から聞いた話だ。誰がやったのかは知らねぇ。」
リツコは、ゴードンの言葉から、ゴードンがセカンドインパクトの事実は知っていても、ゼーレやミサトの父親達のことは知らないことを察した。
「これをどうするのです?」
「預からせてもらう。」
「そう。でも気を付けてください。これがあると使徒がそちらに行きますわよ。」
「どういうことだ?」
「使徒の目的はアダム。アダムの波動に魅かれ、そこを目指す。もし使徒がアダムと接触されば…。」
「サードインパクトが起こる。」
「そこまで知っているのなら気を付けてくださいね。」
「それだと妙な話だ。」
「といいますと?」
「これが運ばれたのはあの魚みたいな使徒の時だ。だったらそれ以前の使徒は何を目指してここ(第三新東京)に来た? ココにはまだなにかあるんじゃないのか?」
「…お見通しなのね。でしたら…。」
リツコは、観念したと言いたげに大げさに肩をすくめて見せた。
そして、彼、ゴードンをある場所へ案内した。
「これで、ネルフが隠す物は、もうありませんわ。」
そう言って見せた物は。
「これは…。」
「これはリリス。黒い月に乗ってやってきた私達人類の祖先と言うべきかしら。」
十字架に磔にされ、槍で串刺しにされた白い巨人だった。
地球には二つの月がやってきた。
白い月には、アダム。
黒い月には、リリス。
アダムは、生命の実を。
リリスは、知恵の実を。
それぞれが生命の起源となる果実を持っており、本来なら一つの月しか来ないはずの惑星に二つの月が来たことで、両者は対立する宿命となった。
彼らがどこからやってきたのかは分からない。
だが彼らは、使徒を含め地球の全ての生命の起源となった。
アダムは、自らの眷属である使徒と共に白い月のある南極で眠り、地球には知恵の実を持つ生命で溢れることとなった。
やがてリリスの子孫である知恵の実の集大成と言える、人間という種族がアダムに干渉しようとした。
生命の実であるS2機関を起動し、自分達の物とするために。
そして起こったのがセカンドインパクトと呼ばれる大災害。
ロンギヌスの槍という槍でアダムが砕かれ、卵に還元されたその余波であるという。
地球はどうしようもないほど破壊され、多くの人類と他の生命も死滅した。
人類と対立してきた怪獣達も姿を消した。
それでも生き残った生命は、意地でもこの地球で生きている。
そんな中、使徒が現れ、アダムを目指し、サードインパクトの危機がおとずれようと、ゴジラが復活しようと。
それでも戦い、生き残る。戦うために生き、生きるために戦う。それを繰り返す。
***
アダムとリリス。
その存在が、リツコにより開示され地球防衛軍は騒然となった。
どちらも使徒であるし、しかも地球上の生命の起源であると言うのだから信じられないし、アダムに至ってはセカンドインパクトの元凶ともいえるのだから。
アダムの卵については、加持の情報によるものだが表向きはゲンドウが隠していたのをリツコが見つけたということになった。
使徒が第三新東京を目指して行動する理由が、アダムと接触するためであることも明らかになった。
だが実際には、第三新東京にはアダムはなく、リリスが代わりにいるのであり、アダムは、魚型の使徒(ガキエル)の襲来の時にアメリカから運ばれて来たということらしい。魚型の使徒が轟天号を狙ったのは、轟天号が運んでいたのが四号機だけじゃなく使徒アダムも一緒に運んでいたためだったそうだ。
こうしてネルフは、隠していたほとんどすべての重要な情報を出したことになる。
「できればMAGIは残しておいてほしいわ。これは私の母の忘れ形見だもの。」
使徒が第三新東京を目指す理由が分かった以上、ネルフがある意味も失われたも同然だった。
だが使徒とゴジラの決戦の地としては、第三新東京以外にないため、引き続き最低限の維持を命じられた。
回収されたアダムについて地球防衛軍の科学研究部で解析をと言う声が多々あったが。
「またセカンドインパクトのを起こしたのかよ。いや、次はサードインパクトか。」
ゴードンの鶴の一声でアダムを研究しようという声はピタッと消えた。
セカンドインパクトのあの惨状から、アダムに手出しするのは臆され、だがそのままではアダムが成長しサードインパクトの引き金になるということで…。
「なんでまた、俺に?」
ツムグに一任された。
「おまえがこの手のことには適しているんだよ。」
と言われて、アダムの入ったトランクを渡される。
「そんなこと言って、何をするかはもう決まっているのにさ。」
「こっちだってコレ(アダム)を処分するのは、勿体ない限りなんだ。他の連中が勘付く前にとっととやれ。」
「はいはい。」
ツムグは、やれやれと肩をすくめて、トランクを開けた。
胎動する卵を取り出し、そして。
「あーん。」
一口でいった。
「…うわっ。マっっっっズ!」
口と腹を押さえて、ツムグは、嫌な顔をした。
その後もマズイマズイと連呼しながら涙目。
アダムを持ってきた人も嫌そうな顔をしている。
「ねえ、吐いちゃダメ?」
「吐くな。そのまま腹に入れてろ。アダムの波動を出さないようにするには、そこ(ツムグの腹の中)が一番なんだとさ。」
「赤木博士が言ったの?」
「使徒にとって、おまえの細胞は天敵だからだとさ。」
「だったら俺の胃袋なりを摘出して、それに入れたら?」
「胃袋程度でアダムの波動を防げたら喰わさないわ。」
「あっ、そう。…うぇ…。」
もう吐きそうと言わんばかりに、ツムグは気持ちの悪いという顔をした。
こうしてアダムは、ツムグの腹の中で保管(?)されることになった。
リリスの方は、とにかくでかいのと、磔にされているのと、地下深く過ぎて運び出せないということで、ネルフの地下に残っている。
それにまだ現時点で使徒にアダムがリリスだということがバレていないはずなので、引き続き使徒を引き寄せるためというのもあった。
To be continued...
(2020.09.26 初版)
(あとがき)
ゼルエルとの戦闘描写は、かなり悩みました。
リメイク前は、ゼルエルが何故かゴジラの細胞を食べて怪獣に変異してしまい自滅するという展開だったので。
使徒は、前の戦いに合わせて戦闘スタイルや形態を変えるというどこかの設定を参考にしました。
なので、ここでのゼルエルは、『本気じゃないゴジラ』に合わせてしまったため、本気を少し出したゴジラに敗退したという結果にしました。
この後に続くアラエルは、物理的な強さのイタチごっこだと悟ったということで精神攻撃系にします。
ツムグは、アダムを食べたけど、ゲンドウみたいに体に融合されたとかいうわけじゃありません。腹の中に入ってるだけです。
ツムグの体細胞は、使徒にとって毒なので融合は不可能です。
(ながちゃん@管理人のコメント)
ツムグ君&ふぃあたんペアがスプラッタな状態に陥るも、結局、絶対無敵怪獣王ゴジラ様がゼルエルをフルボッコ。シナリオ崩壊危機にお達者倶楽部の面々は大慌て。あとケンスケざまぁwww
原作ではゲンドウが暗躍する回でしたが、本作ではツムグ君がキッチリ(嫌々)介入、美味しく頂きました(アダムを)。
さあ物語は終盤、使徒もあと三体、ツムグ君とゴジラさんはどう動くのでしょうか、楽しみです。
追記。そっかぁ、ツムグ君は主人公じゃないのかぁ。だとしたら誰だろ。トリックスターたるゴジラさん?はたまたイチャラブ真っ最中のシンジ君?それとも???さぁ期待しつつ待て次回。
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