全ての現実が終わりを告げるとき
全ての者に夢と言う現実が始まる
全ての音色が一つの音に調律され
全ての人に死と言う音楽を聞かせた
人の人としての存在を奪う
甘いメロディーが世界を満たした
そして、全ての人が融け
赤い海へと還った
残ったのは白い十字架と
紫の巨人
そして、絶望

『サードインパクト』
その出来事を知る人は
そう呼んだ

しかし、それが人為的に起こされたがために
それは何処かで歪んだ

人為的には起こしてはいけない事態が
この世に究極破壊(アルティメットディストラクション)をもたらした。
そう、夢と言う現実すら始まらない究極の破壊を・・・

そして、全ての儀式が終わった後
生贄となった少年の魂は地の底に沈下していった
彼だけが、この世に生き残った。
いや、この世から生きて還った。
『魔界』と称される世界に。

その少年と堕天使達によって
全てが仕組まれた世界が終焉を迎え
新たな世界が作られようとしていた

彼らは戦い続けた
彼らの統治者の息子となった
一人の堕天使のために







堕天使リリムの記録 〜究極破壊の先に見たもの〜

プロローグ

presented by BlackCherubim様







「うっ、ここは?」

ベッドに一人の少年が横たわっている。
その顔には滝のような汗がにじみ出ている。
その部屋は中世貴族風の装飾を施されており、その部屋の主が相当な人物であることを示していた。
窓からは朝であることを示す淡い陽光と、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

「あれは、夢だったのだろうか?」

彼が最後に見たあの強烈な真紅の海。
全てが融けて消えたあの世界。
彼は最後に真紅の海を見ると共に、彼の母の声を聞いた。
『ゴメンね、ゴメンね、シンジ』と・・・
その後、彼の視界は奪われた。
その世界と別の世界との境界線に入ったのだと彼は知るべくも無かった。
その暗黒の境界に、彼は時の感覚もわからぬままに漂いつづけた。
そして、再び光に満たされた彼の視界に入ってきたのは、緑の生い茂る世界であった。
彼はそのまま呆然としていたが、数分が経った後めまいがして倒れたのである。
そして、気付くとこのベッドに横たわっていた。

「(誰が助けてくれたんだろうか?)」

ガチャッ ギイィィ

彼の思考を遮るようにして一人のヒトが入ってきた。
背に六対の漆黒の翼をつけたヒトが。
彼こそが、この館の持ち主である。
この『魔界』においての権力者であり、つい最近起きた第三次両界大戦において
魔界軍を指揮し勝利に導いた人物である。
シンジは、何処かでこの人物に出合った気がしたが、
何処でどういう風に出合ったのかは思い出せなかった。
彼が少年の時にかけた記憶の封印は、前世の記憶をも厳重に封印したのである。
彼が加持リョウジに諭され現世の記憶を解いた後も、
前世の記憶は封印されたままであった。

「気が付いたか?リリムよ。」

そのヒトが問い掛けてきた。
その眼には、人を気遣う光が宿っていた。
それと共に、何処かで鍵の外れる音がした。

「あ、貴方は!!」

「私か?私はこの『魔界』の統治者ルシファーだ。」

「やっぱり」

ルシファーの言った「リリム」と言う名が彼の記憶の封印を打ち破った。
その時、膨大な前世の記憶が流れ込んできた。
アダム達に先立ちエデンの園を離れ、魔界へと流れて行った事。
魔界に攻め寄せてきた天使達に対して、軍の陣頭に立って天界に追い返した事。
第一次両界大戦の後にルシファーの養子になった事。
第二次両界大戦において、天界軍から南部の都市ルシェレムを解放するべく出陣した時
無念の戦死を遂げた事。
その後、彼の魂は天界、魔界とは異なる地上界において漂い続けた事。
そして、セカンドインパクトの衝撃で碇シンジに転生した事。
そこまで思い出したとき、彼の眼には冷酷な光が灯った。
何処かに優柔不断さを残す冷酷な光が・・・

「リリンは?」

「死、いや滅した。愚か者の愚かな策謀によってな。」

「そんな・・・」

その言葉を聞き、シンジは呆然となった。
彼の親友が消えたことを意味するそれを聞いて、呆然とならない人間がいるはずが無かった。

「復讐したいか?」

復讐、現在のシンジにとってこれほど魅惑的な言葉は無かった。
『サードインパクト』のもたらしたコンプリートディストラクションは、
サードチルドレン・碇シンジの人格すら半ば破壊していたらしい。
今彼に宿っているのは、堕天使リリムの人格と、碇シンジの人格の残りが融合したものである。
堕天使リリムの持つ冷酷性、碇シンジの持つ優柔不断、人の良さは
奇妙な融合を遂げることとなった。

「当然だ、あの紅い世界を創った人間が憎い。
この僕から全てを奪った人間が憎い。
そして、僕を裏切った人間が憎い」

「この『魔界』をあげて復讐を助けてやろう。(ちょうど『天界』との争いも終焉を告げて暇だったからな)」

この時新しい世界の行く末は決まった。
魔界のオーバーテクノロジーを持ってすれば、平行世界に飛ぶ必要性など無い。
もっとも、飛んだ瞬間にその世界は、元の世界の平行世界になるだろうが。

プロローグ完







To be continued...


(あとがき)

どうも始めまして。BlackCherubimと言います。
初めて他サイトに投稿させていただきますので、
慣れない所もありますがよろしくお願いします。
今回の作品は自分が、サイトを始める時にまず書き上げた
大量の案のうちの一つを使わせていただきました。
基本的な構図としては、エヴァ世界に『魔界』が介入することになります(シンジ自身にとっては逆行)。
自分の他の作品を呼んだことのある人はわかると思いますが、
場合によってはゼーレよりになるかも知れません(今回は予定していませんが)。
それでは、今後も宜しくお願いします

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