―愛などという不確かなものに頼る無かれ
―血のつながりに頼るのは愚者の極み
―最も重要なのは、己をどこに置くかだ
奴隷王 ルベド・オスカーのノート
プロローグ 『あの咲き誇る野の花のように』
presented by Bonze様
古びた、誰も来ない神社の裏。
そこは少年のお気に入りの場所だった。
野犬がいるためか、いじめっ子も近づかない。
そこは彼にとっては唯一の安らげる場所だった。
“先生”からの虐待。同級生からのいじめ。見てみぬ振りをする教師。『人殺しの息子』というレッテル。
少年は、すべてをあきらめていた。
すべての希望をあきらめていた。
パーン!ドサッ
ほほを平手でたたくような高い音。続いて聞こえる重いものの倒れる音。
虐待で角膜剥離を起こし失明した左目と、いじめの影響で視力の下がってきている右目を、傷だらけの顔と共にそちらへ向ける。
男がいた。
圧倒的な存在感。
刈り込んだ黒髪。太めの黒い眉。真っ白なスーツと、その上からでも分かるしっかりと鍛え上げられた体。
そしてその右手に握られた、異様な存在感を放つ黒い鉄の塊。
それなのにまるでいないような気配の希薄さ。
視線を落とすと、足元に赤い服を着た男。いや、“血で服を真っ赤に染めた男”。
ぴくぴくと痙攣し、少しずつその痙攣が止まってゆく。命の終わり。
それだけを確認し、少年は視線を前に戻した。
男は少年の目を知っていた。自分にも他人にも興味を示さない、“価値を持てない目”。非日常を気にも留めない感情のゆれ幅の少なさ。
それは過去の自分の目。
目撃者は消さなければならない。それはこの世界の鉄則。ゆっくりと右手の銃を少年に向け、撃鉄を上げる。
パーン!
弾丸が少年の鼻先を掠める。それでも少年は瞬きすらしなかった。
男は老いていた。見た目以上に老いていた。引退も近い。だからこそ代わりが必要だ。自分の代わりが出来る人材が必要だ。
そんな時男は見つけてしまった。もしかしたら自分以上の逸材を。
自分の死にすら興味を示さない少年に、男はプロになって一度も破ったことのなかった自分への戒めをはじめて破った。銃を懐にしまい、“右手”を少年に差し出した。
「少年、この手を取れ。私にはお前が必要だ」
少年は男を見上げる。暗く深い、宵闇のごとき瞳。
少年はその手を取った。
自室で手を組み、己の狂気におぼれる男に最悪の知らせが届く。それは男の10年越しの計画を、無に帰すような絶望的な知らせ。
―サードチルドレン・ロスト―
少年―碇シンジは、その後7年姿を消した。
To be continued...
(2006.08.12 初版)
(2006.08.20 改訂一版)
(後書きって何書くんでしょうか?)
Bonzeの半分は、毒電波で出来ています。
とりあえず内容の簡単な説明。
これはクロス・オーバー作品です。設定にオリジナル的なものはありますが、クロス・オーバーです。
白いスーツの男、ですが別の有る作品に登場する方です。もう大好きで大好きで。かっこいいから!
両目がダメダメですが、気にしないでください。
エヴァは魂とシンクロするから、最悪植物人間でも戦える蝶・非人道的兵器では?と思ったのがきっかけです。
あと言っとくと、文頭にある誰かの言葉は創作です。実在しません。実在してもたまたまです。
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