前回わけわかんない少年と戦うはめになったクールだ。
いきなり襲い掛かられて無傷になっていた機体グラジオラスは両腕部損傷という有り様。
破壊じゃないだけましだと思いたいがそれでも鬱になってくる。
場所も先ほどの攻撃も何もかも不明、少なくともあの少年に
答えとなるべきこと、最低でもヒントとなるべきものは聞きたいものだな。
さぁて、俺のこれからはどうなるんだろうな



渡り鳥の異世界禄

第二話 「運命の出会い」……シンジ君性格変わりすぎ(汗)

presented by クール様




――――Side クール
「で、何でいきなり攻撃を仕掛けてきたんだ?」
俺はいま砂浜に直に立って少年と向かい合っていた。
何?何でACから降りたのか、危ないと思わなかったのかって?
思ったに決まってるだろうが!でも、この「相手とはしっかりと顔を見て話し合う」が
俺の信念だったんだから仕方ないだろ!?ついでにAC越しに見ても敵意はもうなかった
しな。てなわけで俺は少年と向かい合っているのだが。
いや、何ていうか気に入らないんだよな。こう、何ていうか人に絶望してるような
暗い眼をしてて、それなのに人に媚を売るような態度の少年とか。あたり一面が紅過ぎて
目が痛くなることとか!挙句の果てに血の匂いしかしないこの場所とかな!!!
で、俺から明らかに不機嫌だオーラを感じたのか
「本当にごめんなさい!!」
この少年は素直に謝っていた。でも何か本気で謝ってる気がしないんだよな。この子の
性格か?まぁ謝ってるからにはそれなりに大人を見せなきゃ面子が無いわけで
「いや、謝ってるなら良いさ。あ、俺のことはクールと呼んでくれ。レイヴンネームで
そう名乗っている」
体からあふれ出るオーラを抑えつつそう挨拶すれば、とりあえず体から流れでるものが
なくなって安心したのか顔を上げるんだけど俺の目を見ようとしないな。
ほんとに性格か?処世術のような気がしてきたぞ?感だけどな
「あ、ありがとうございます。僕はシンジ、碇シンジといいます。ところで
レイヴンネームってなんですか?」
………は?ちょっと待った。普通レイヴンネームといえば子供でもわかるのに
シンジ君は知らないといった。其れにこんな場所は少なくとも俺の知るところではない。
なんだ?何かが引っかかる。それにしても情報が足りないな。シンジ君に聞けば少しは
まともになるか?とりあえず今すべきことは
「まずはお互いに情報交換から始めようか。君の質問にはその後答えるから」
そう、情報をそろえることだ

シンジのほうから説明中

シンジのほうから説明中

シンジのほうから説明中

「…と言うわけなんですが」
今までの事を悲しそうな懐かしそうな表情で語ったシンジ君だが、俺にはそんな余裕は
無かった。と言うかそんな余裕が出来るわけが無い。
頭が混乱してイメージがまとまらない、答えを拒否している。それを考えてはいけないと
頭の中でアラームが鳴り響く。ただ、頭のどこかで確実な答えを持っている自分がいる。
「………あ、はは…ははは………はははははははは………」
口からは壊れたように笑い声しか出てこない。そりゃそうだ、こんなことは前代未聞だ。
そう、俺は間違いなく異世界と呼ばれる場所に飛ばされているのだから
俺は思考の海へと潜っていった

――――Side シンジ
「………あ、はは…ははは………はははははははは………」
僕のほうから此処で起こった事を全て伝えたら、クールさんは突然
壊れたように笑い出した。如何したんだろう?
「クールさん?如何したんですかクールさん!?」
肩を揺らして耳元で喋ってみるけどクールさんは壊れたようにしか
笑ってはくれない。如何しよう。僕はまた人を壊してしまったのかな…
綾波も、アスカも、トウジも、ケンスケも、委員長も、マナも。
マヤさんも、青葉さんも、日向さんも、加持さんも、ミサトさんも。
父さんも、冬月副指令も、リツコさんも、カオル君も。皆僕が殺してしまった!
そして、新たにクールさんまでも壊してしまった!僕は……!!
「僕は……ぼ、くは……!!」
僕は何て疫病神なんだろう。僕は何て罪深いんだろう!
何度死のうとしても死ねない体、使徒のような力、こんな物は欲しくは無かった!!
僕は人を不幸にしか出来ない…ならいっそこのまま時の流れに流されて、
消えてしまえば……
<……………>
……え?声……?いや、音が…聞こえる…?あの紅い、海から……?僕、をよん…デイル?
イカ…ナクチャ、よばレタなら、イカナくちゃ……
呼ばれるまま僕は歩いていく。紅い海の水が脚にあたってキモチワルイ。
でも、ヨバれてる。イカナクッ!!
「う、うわぁぁ!?」
ザブンッ
海のほうに入りすぎてたのか急に足もとが無くなり、僕は海の中に沈んでいった。
「ガ、ガバボアベオエンポアノイダ!?!?!?!?!?!?」
僕はカナヅチだから泳ぐことも出来ない。ああ、これから僕はどうなるんだろう……
あれ?息ができる。それに血の味……此れってLCLなの!?
――………………
そう思った矢先、頭の中に知らない知識が入ってくる。
此れは…なに?
――全てはゼーレのために
止めて、僕の中に入ってこないで!?
――生きていこうと思えば何処だって天国になります
痛い、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――シンジ、碇君、シンジ君、碇、サードチルドレン、妻殺しの子、シンジさん、碇さん
ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
――すまなかったな、シンジ

――――――――――――――――僕は、真実を知った―――――――――――――――

――――Sideクール

………数秒?数分?数時間?数日?数週間?数ヶ月?数年?
詳しくは分からないが時間が俺に失った余裕を取り戻させてくれた。
そう、此処は間違いなく異世界だ。俺のところとは歴史も時間帯も何もかもが違う。
そして俺がこっちに来たのは間違いなくパルヴァライザー戦後、その間に何があったかは
分からない。だがそれでも如何にかして帰る方法はあるはずだ。そのためには
どんなことも厭わない。
新たなる決意を胸に瞳に光を戻しシンジ君のいた方向を向けたんだが
「………は?」
俺はこんな間抜けな声も出せたのか。と心のどこかで感心しつつ俺はそう声を出さざるを
得なかった。いや、だってシンジ君が14個の光球とたむろってたんだよ?しかもシンジ君
の顔には少なくとも笑みが浮かんでるし。此れっていったい………?
シンジ君が俺の様子に気がついたのか笑みを浮かべたままこちらを向くんだが、あの、
ちょっと?性格変わってません?
「あ、クールさん。戻ってきたんですか」
そういって人懐っこい笑みを浮かべるんだけど…んん?何か違和感が。
まぁトリップしてたのは事実だけどさ。
「ああ、悪かったなずっと考え事してて。どん位待った?」
「そうですねぇ…大体一週間とちょっとぐらいでしょうか」
………………ストップ、今なんていった?一週間とちょっと?
「ハハハ、ヤダナァシンジクン。オトナヲカラカッチャイケナイヨ?」
はっきりと言える、今俺は絶対にカタコトで喋ってた。そんぐらい焦ってた。
だって一週間ちょっとだぞ!?冗談で言える時間帯じゃないんだぞ!?
頼む、うそだといってくれ。マジ頼むから!!
「からかってませんよ?まぁ気づかなくても仕方ないと思いますけど。
何せここの時間は全て停滞しているそうですから。かく言う僕も言われるまで
分かりませんでしたが」
そういってテヘッとしぐさをしてくるシンジ君、シンジ君自体中世的な感じなため
そう言うしぐさは俺も萌えなくは無いのだが、相手は男なのだ。呪詛のように呟いてから
俺は再びシンジ君のほうを向いた。ただ、頬が微妙に赤いのは突っ込まないでくれ。
後生だから。
「本当にごめんな。じゃあ今度は俺のほうから話そうか」
そう俺が言うと何故かシンジ君は困惑の表情を浮かべていた。何故だ?
「いや、あの、この周りの光の事とか時間のこととか聞かないんですか?」
ああ、なるほど。それで困惑を浮かべたわけか。納得。でもなシンジ君。
俺は始めに行った筈だぞ?
「質問とかは最後に一辺にやったほうが楽だろう?」
そう言えば俺も語り始めた。「デュアルフェイス」の存在していたころから、
「パルヴァライザー」破壊までの事を。そして俺のいた世界の歴史の事を……

クールから説明中

クールから説明中

クールから説明中

「と、俺のほうもこんな感じだな」
パルヴァライザー戦までの簡潔に、それまでの歴史とACの事は詳しく説明し終わった
頃には俺の額には汗…脂汗だか冷や汗だか分からないが…が浮かんでいて、俺はそれを
服の袖で拭い取った。んあ?何で汗が出たって?そりゃ話が長いのと………話してる
ときに思い出したんだよ。何回も死にかけたこととか、必ずといって良いほどACの損傷度
が酷くてオペレーターに愚痴られたりとか!デュアルフェイスに追いかけられたこととか、
エイミングホークに頭部破壊されて嬲られたりとかなぁ!!実際あれは死ねるんだぞ!?
だってなんだよ、デュアルフェイスのあの空中でのグレネードの命中率は!!
(かつてAC史上最強と呼ばれたレイヴン、損傷率95%オーバーのところでギリギリの
勝利)それにエイミングホークのあの連射は!もう雨みたいなもんだったぞ!!
あれは!!!………まぁ今は関係ないか
「……異世界ですか、にわかには信じがたいですが証拠も要りますし、本当なんですね」
そういってグラジオラス(以後長いのでグラ)の方を向くシンジ君、俺も釣られるように
そっちを……あれ?俺の見間違えか?何かグラの損傷が見当たらないんだが???
「シンジ君、グラジオラスになんかした?傷が見当たらないんだが??」
「いいえ、何もしてませんよ?其れにクールさんがトリップして五日位したら勝手に
直ってましたよ??」
シンジ君、お願いだからトリップしてたことはいわ…な……いで?
…………………まぁいいか、直ったんなら。後で調べときゃ良いし
「んじゃシンジ君、お互いに質問タイムと行こうか。まずそっちから良いぞ?」
本当は聞きたい事が多すぎるからそのための時間稼ぎなんだけどね。シンジ君からは
大人の対応に見えてるよな?きっと
「あ、はい。じゃあまずクールさんはどうしてこの世界に来たんですか?」
「事故だ」
うん、今俺即答したけどしょうがないじゃん!事故じゃなかったらこんな所こないっての
「じゃあ帰る方法とかは?」
「あったらさっさと帰ってる」
口調が単調になってるけど気にしない気にしない!てか考えれば分かるだろ!!
「じゃあどうするんですか?」
「探すさ、幸いにもグラジオラスがあるし」
そう、とりあえず新たに修復機能がついた(らしい、詳しくはまだ不明)グラがあれば
大概の事はできるし、何とかなるだろ。
「でもこの世界に僕以外の人は多分いませんよ?さっき説明した通り」
……Oh、シット!!どうしようもないじゃないか!!!ん?人がいないけど文献とかは
残ってるはずだよな、多分。てことは当分はそれを頼りにってことか
「まぁ、何とかするさ。他には何か有るか?」
「いえ、とりあえず今は有りません。次はクールさんがどうぞ」
ん?もう良いのか。まぁレイヴンとかについては特に詳しく教えたしな
「ああ、分かった。ん〜じゃあまずその周りに浮いている光球は何だ?
さっきからシンジ君の周りに浮かんでいる光球(14個)の一つを指差して言う俺。
何かさっきから光が点滅してるし本当になんだ?
「ああ、此れは使徒の魂です」
………………は?えと……使徒の魂?……って使徒ぉお!?!?!?!?
俺は一瞬で立ち上がるとバックステップで何が有ってもすぐに反応ができるように距離を
取り、懐のホルスターに入れてあるデザートイーグルへと右手を添えた
「シンジ君、君は先ほどの話で使徒は人類とは相容れないんじゃなかったか?」
俺は意識を通常から戦闘へとシフトし、いつでも拳銃を抜けるように構える
そんな俺のいきなりの行動に驚いた顔をしていたシンジ君だが俺の言葉に納得したかの
用に手を打った
「あ、それなんか間違いだったみたいなんです」
………へ?
「………え〜と、詳しく説明してもらえるか?」
「はい。
 カクカクシカジカ
……てな感じらしいです」
………え、何それって
「単に使徒はいきなり父親の気配が消えて、何時までたっても戻ってこないから驚いて
母親のところに聞きに行ってただけって事か?しかも人類、それもどっかの怪しい
秘密組織がそのこと使徒がをサードインパクトを起こそうとしているって感じで
嘘にして?で仕方ないから自己防衛?で、サードインパクトを起こしたのはお前の
実の父親とその秘密結社ってことか?ついでにセカンドインパクトもお前の親父と
その秘密結社、ついでに無能作戦部長が親への反抗として起こしたと。全部まとめると」
「はい、そうらしいですね。まったく、父親らしいことを一切しないでこんな事を
たくらんでるなんて……息子としてかなり恥ずかしいですよ。むしろ一族の恥ですね」
いや、一族の恥って言うか……いいのかなぁ?
「でも、何で急にそんな事が分かったんだ?それに使徒の魂と一緒にいる理由が無いぞ?」
「あ、そうでしたね。ん〜何ていえばいいのかな…呼ばれた、が一番近い気がしますね。
なんと言うか紅い海に呼ばれた感じがしたんですよね」
…………
「シンジ君、こんなところにいたから当然かもしれないが気をしっかりもつんだ。
大丈夫、俺がシンジ君をきっと元に戻してあげるから」
多分俺はこのときかわいそうな眼でシンジ君を見ていったんだと思う。
だっていきなり呼ばれたとか言われたら……電波?な人にしか見えないし
「……いや、まぁ何を言っても無駄そうなので先に行きますね。
で赤い海の中にざぶざぶと入っていったんですけどそう言えば僕って泳げなかったん
ですよね」
……おい、ちょっと待った。泳げ無かったって事はまさか
「はい、お察しのとおり溺れました。で死ぬのかなぁと思ったら息が出来たんですよね。
どうやらあれはLCLだったみたいで、焦ってそんしました」
「……いろいろと突っ込みを入れたいところが多いけど、LCLって何だ?」
「そう言えば其処らへんの説明は全部抜かしてましたね。LCLって言うのはあれです。
リリスって言う使徒の血ですね」
…………
「ごめんシンジ君。今俺はLCLがリリスって言う使徒の血だって聞こえたんだけど
俺の聞き間違いだよね?幻聴だよね??空耳だよね???」
「いえ、本当ですがそんなに驚くことですか?」
嘘だと言ってよバーニー………
「?おーい、もしもし聞こえてますか〜?」
俺、もう明日から笑えないよ………
「無視ですか?ならこっちにも考えがありますからね?」
あ〜空にパルヴァの姿が見える。いや、あれはパルヴァじゃないか。パルヴァはもっと
ぱーーと動くもんな。あはははははは。ねぇ、助けてくださいよ、ねぇ?
「いきますよ〜?それっ!」
ズガンッ!!!!!

「っは!?俺はいったい?」
「あ、気づきましたか。いや〜驚きましたよ、クールさんいきなり気を失ったんですから」
気を失った?はて、本当にそうなのだろうか??何か頭が痛い気がするんだが……
まぁいいか、シンジ君が気を失ったって言ってるんだし、特に掘り返す事でもないしな。
「で、そう言えば何の話をしてたんだっけ?」
「忘れちゃったんですか?仕方ないですね」
「いや、面目ない」
素直に頭を下げる俺、でもなんか頭の中にもやもやとした感じがあるような?
はて、なんだろう此れ?
「とりあえず僕が紅い海の中に入って溺れたところからです。でその中では呼吸が
出来たんですが、それと共にたくさんの知識が僕の中に入ってきたんです」
「たくさんの知識ってどんな知識なんだ?」
たくさんの知識?といっても知識にもピンキリあるしなぁ、何が入ってきたんだ?
「全生命の知識です。ついでに言えば使徒の知識もありました」
へ?しとのちしき?しとの知識??使徒の知識???………って使徒の知識!?!?
「ちょまてまてまてまて!!!何でそこで使徒の知識が出て来るんだ!?」
「だって全生命の意識ですから。だから殺した使徒たちの知識もあったんですよ。
ついでにこの周りの使徒の魂も紅い海で発見したんですよ」
………うん、もうこの世界は俺の常識で考えちゃいけないんだな。うん良くわかった。
もうなんでもありなんだ、きっとそうだ。グラに修復機能が付こうと紅い海の中で呼吸が
出来ようとその中に魂があろうと何でもありなんだ!!そうしとこう!!!
「判った、じゃあ周りに浮いてるのもシンジ君の知識も判ったとして、シンジ君、最後の
質問だ。君はいまどういった存在なんだ?人間のままか?」

――――Sideシンジ

「判った、じゃあ周りに浮いてるのもシンジ君の知識も判ったとして、シンジ君、最後の
質問だ。君はいまどういった存在なんだ?人間のままか?」
クールさんにそう聞かれたとき、僕は自分の心が揺れるのがわかった。
僕は人間ではない、人間の定義に当てはまることは無い。それは今までの生活からでも
容易に想像できたことだし、何より紅い海の知識がそれを決定づけた。でも使徒でもない。
僕の力はすでに使徒を超越してしまっている。今まで僕は何度も死のうと思った。
でも僕の体は死ぬことを許さなかった。どんなに傷つけても再生する、おかしいほどの
再生力。此れは体内にS2機関があったからだった。食事をしなくても生きていられた理由
もそれだった。知識から見るに僕の体はすでに使徒と同じモノらしい。僕は人間じゃなく
なった。そしてこうなったのもサードインパクトが起こったから。あの時僕が生きて
いられたのは僕が器としての役割だったから。全ての使徒のS2機関を収めるための器
としての役割。だから僕の体にはS2機関が17個入っている。だからクールさんとの
戦いの時に無意識にラミエルの荷電粒子も打てた。この時点で僕は使徒を完全に超えた。
心が壊れなかったのも心が一つに保管されていたかららしい。此れの意味は良くわから
なかったけどきっと人間ではありえないことなんだろう。それに何年経っても年を取る
ことも無かったし、何より全生命の知識をもつなんて人間でも使徒でも不可能だろう。
故に僕は使徒でも人間でもない、全くのUnknown。この世界で最も神に近い存在。
「………いいえ、僕はもう人間の定理には当てはまりません。今はこの世界の神……では
無いですがそれに近いものになっています」
そう、僕は神様に一番近いところにいる。人間という使徒の血の海が出来て、生命が全て
溶けて、全て僕の中に入り込んで、僕は神に近いところにいる。僕の意思など関係なく、
ただ傲慢な大人たちによって、僕はこの場所にいる……

――――――――ナニモノデモナイソンザイニナッテ、ボクハココニイル―――――――

ギュッ………
気が付いたら、僕はクールさんに抱きしめられていた。
「………クールさん?」
「…今までがんばってきたんだろう?どんなに寂しくても、どんなに孤独でも、それが
自分の罪であると考え、泣くことも無く、ただ耐えてきたんだろう?だけど、もう我慢
しなくていい。お前の罪は俺が許すから、だから心置きなく泣け」
何かクールさんが苦しそうな声で語りかけてくる。でも何で僕が泣かなきゃいけないん
だろうか。それに全然的外れなことを言われなきゃ?別に僕は悲しくなんて…?なんで
頬に涙が伝って…………?あれ?ボクハ……ボク、ハ………………ッああ、そうか………

――――――――――僕は許して欲しかったんだ。他の誰かに――――――――――――

「ぅぁ…ぁぁ」

――――――でも、ほかに生き物がいないこの世界で許されることなんて無くて――――

「ああ……ああああ……」

――――――だから、クールさんにそういってもらって、嬉しかったんだ―――――――

「あああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
全てが紅い世界、僕の罪だけが残る世界。そこで僕は初めて心の底から泣いた。
僕とクールさんの周りには今まで敵だった14の使徒の魂が、優しい光を放ちながら
回っていた。

――――Sideクール

「もう、大丈夫です。すみませんでした」
そういって俺から離れたシンジ君。正直言ってまだ心配だったんだが
シンジ君の瞳にとりあえず悲しみの色は無かったから納得しておいた。
「そうか………でこれから如何するんだ?」
シンジ君に話を聞いてから思っていたこと、それはこれからの事だ。
シンジ君の話と自分なりの考えではすでにこの世界は“終って”いる。
この世界ではもう人が生まれることが無いだろう事も、世界が直ることもないだろう
事も予想は簡単だ。故に俺はシンジ君にこれからの事を聞いた。
「……過去に行こうかと考えています」
過去、か。そりゃこんな結末なんか嫌だろう。でも問題がある
「だが、戻れるのか?幾らこの世界が何でもありだからって出きる事なのか?」
そう、問題は戻れるのかだ。確かにこの世界はいろいろと何でもありだった。
グラに修復機能がついたりシンジ君の手からビームが出たり挙句の果てには紅い海が
元全生命だったりと、はっきりいって無茶もいいところだ。しかし、それでも
戻れるかどうかなんて分かることは無い。
「……あくまで使徒たちの記憶からの推測ですが、僕が自分の力をしっかりと
使えるようなれば可能だと思います。その代わり僕は一時的に力を全て無くすでしょうが」
「力が代償だが可能、か。なるほどな」
確かにあれだけの力を完璧に操れれば………ストップ。
何か俺今おかしいことを聞いた気がする……
「なぁ、シンジ君。今自分の力を完全にって言ったけど、俺と戦ったときって
完全じゃなかったのか?」
だとしたら、シンジ君の力はいったいどれだけ!?いや、全力じゃないからって
それが一割二割とは限んないよな!
「あ、そうですね。あれで大体五%ぐらいです」
………あ、あはははははははははは。ありえねぇ、たった五%にあそこまで
やられたのかよ、俺。でもあれで五%だって言うなら出来なくは無いのか?
この世界は何でもありだし、どうだろうな…
「まぁいいや。それじゃあシンジ君の行く準備が出来たら呼んでくれ。俺も一緒に
ついていくから。それまでは世界中を回っていろいろと調べてくるからさ。
あ、でも呼ぶ方法が無いんだっけ」
「あ、はい…ってえ?クールさん??何で???」
何かシンジ君がいかにもへ?って顔してるけど、逆にその反応に俺がへ?だぞ?
いや、だってなぁ?
「何か俺おかしい事言ったか?」
いや、本当に俺おかしい事言ったか?自分で言ったこと思い出してみても
おかしい所なんて思い浮かばないぞ?
「ついてくるって何でですか……?あくまで僕達の世界の問題なのに」
ああ、そう言うことか。納得が言った。でも、その言葉は少しむかってくるぞ?
此処まで知り合っといていまさらハイさようなら、何てできるわけ無いのにさ。
だから、俺の答えはもう決まってるんだよ
「そんなの決まっているだろう、お前が心配だからだ。それ以上の理由なんて無いし
必要ない」
そう、俺はシンジ君が心配だから付いていく。それだけで充分だ。
もちろん帰りたいって気持ちはある、でも、シンジ君を放っておいてそのまま去るなんて
後味悪いことなんてしたくない。
「そんな理由で?そんな理由で僕について来てくれるんですか?此処で元の世界に
帰る方法が見つかるかも知れないのに?」
まぁ、シンジ君の言うことももっともだよな。普通はそう考えるだろうし。
でも俺はそんなこと出来ないんだよ…後味悪いからさ
「ああ、それにかえる方法が見つかったからってすぐに帰る必要も無いしな。いつでも
帰れるんだったらシンジ君の手伝いしてから帰ったほうが気分も良いし」
「っ………ありがとう、ございます」
瞳を潤ませて泣き笑いの顔で礼を言ってくるシンジ君、はっきり言って萌え……ゲフン
ゲフン。違う違う俺はショタじゃ無いアブノーマルじゃないノーマルだ。だから頬を赤く
染めようとするな俺!まだ俺は男として、何より人として駄目にはなりたくないぞ!?
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けぃ!!!!冷静になれ、俺!!!!!!
深呼吸だ深呼吸!スゥ〜ハァ〜スゥ〜ハァ〜……よし、落ち着いたな。それにしても
シンジ君また性格変わったか?何か妙に保護欲をくすぐられるんだが…?
「あ、ああ。気にするな、結局俺のしたい様にするだけだしな」
「それでも、ありがとうございます…」
……やっぱりシンジ君性格変わってるな。まぁいいけど。
ああ、頬が赤くなっていく…ってこのままじゃまずい!!
「ああ分かったからそれ以上言うなそれじゃあシンジ君過去にいけるようになったら
連絡をくれどんな方法でも言いからじゃあシンジ君訓練がんばってね」
「へ?あ!クールさん!?」
一口でそう言えば俺はグラに向かって駆け出す。後ろからシンジ君の声が聞こえるけど
気にしない、てか気にしたらヤバイ!何がやばいって俺がヤバイ!!
とりあえずグラの中に入ってハッチを閉めて!!!
「AI!システム起動通常モードで起動だ急げ!!!!」
<おはようございます、システム、通常モードで起動します>
よし、起動完了!あとは顔をシンジ君に向けて外部ボイスにつないでっと!!
「じゃあな、シンジ君!できるだけ早く合えることを祈ってるよ!!」
呆然とした顔をしているシンジ君を放って置いて、俺はブースターを使いその場から
急いで離脱した。

自分の後ろに使徒の魂を三つほどくっつけたまま。もっとも俺がそれに気がついたのは
三十分後の事だったが。

――――Sideシンジ
去っていくグラジオラスを眺めつつ、ちょっとからかい過ぎたかな?と後悔した。
でもこれ以上クールさんに甘えていたら僕はきっと前に進めない。この災厄を回避
できない。だから……
「僕が無事成長できたら、そのときまた会いましょう」
そのために、協力してね。僕の新しい仲間たち…………………………ってあれ?
「ねぇみんな?三人ほど足りないんだけど何処いったの?」
この使徒の魂たちとは何らかのラインでつながってる。といっても距離が離れてたら
使えないけど。だからそれに乗じて話し掛けたらとんでもない答えが返ってきた。
そう、三人ともクールについていったらしい。
「まぁ、クールさんなら悪いようにはしないでしょ」
能天気な考え方だけど、多分間違っていないと思う。だからあんまり心配しない。
僕は僕の事をやろう。そうしたら早くあの三人にも会えるし。だから
「それまで三人の事お願いしますね?クールさん」
僕はグラジオラスの消えてった方向にそう言い、紅い海の方向へと歩いていった。
――――――力の使い方を憶えるがために……





グラジオラスMK-Y、スキル追加
・自動修復=その名の通り自動修復を行うことができる。なお、此れはオートで行われる。
修理速度は半壊で二週間、全壊で約一ヶ月ぐらいである。此れには何か理由があるよう
だが…?



To be continued...


作者(クール様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで