2013年の布石
T
presented by えっくん様
注意:これはフィクションです。一部の方は不愉快になる可能性があります。
読んでいて不愉快さを感じた場合は、即座に中止される事をお勧めします。(苦情は御遠慮下さい)
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2013年
北欧と呼ばれる地域の政府施設で、ある会談が行われていた。
会談の出席者は全部で五名。三名が日本人で、二人が北欧連合の担当者だった。
そこでは日本から派遣された官僚の、力のこもった説明(説得)が為されていた。
もっとも説明を受けている北欧連合の二名は、やる気など見受けられず、ぼんやりと聞いていただけだったが。
ちなみに、日本からは局長級のメンバーが派遣されていたが、北欧連合の担当者は二名とも係長級だった。
「このような我が国の状況ですので、是非とも貴国との技術供与協定を結びたいのです」
日本から派遣されてきた経済産業省の局長の熱心な説明が終わり、北欧連合の二名の担当者に協力を要請した。
北欧連合と技術供与協定を結ぶ事で、懸案となっているエネルギー問題を解決したいと考えていた。
一通り説明を終えた経済産業省の局長は、側に置いてあった飲み物で喉を潤し、北欧連合の二名を熱い眼差しで見つめた。
だが、日本側の熱心な説明を受けていた北欧連合の二名は、態度を変える事なくゆっくりと話し始めた。
「御存知のように、我が国は他の常任理事国との関係は良くありません。険悪と言い換えても良い。
その関係が良くない国と太いパイプを持つ貴国への技術供与は難しいのが現状です。御理解頂きたい」
日本の状況は説明を受けるまでも無く知っている。元々、資源もエネルギーも無い国だ。
現在では世界各国から核融合炉の技術供与の要請が入っており、北欧連合として日本を優先すべき理由は無い。
むしろ五年前の事件の為に、日本に怨みさえ抱いている程だ。日本の要請など受け入れる必要性は無かった。
「そこを何とか御検討願いたい。世界的には慢性的な石油不足の状態です。どの国もエネルギー不足に悩んでいます。
我が国もそうです。貴国が開発して量産した核融合炉の技術供与を御願いしたいのです」
「……そう言って、以前に貴国に輸出した核融合炉技術が中国に渡り、中国政府が模造品を造りましたね。
あの時は、我が国の王族と貴国の皇族の友誼を重要視してのプロジェクトでしたが、結果はどうでしたか?」
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約六年前の事だが、日本に一基の核融合炉を設置した事があった。
政府同士が主導したプロジェクトでは無く、北欧連合の王族と日本の皇室の主導によるものだった。
それまで北欧連合の核融合炉の輸出は、同盟国である中東連合のみだった。
当時、ヨーロッパ各国が輸出、又は技術供与を北欧連合に強く申し入れていたのだが、安全性を盾に断っていた。
それを一基だけだが、日本に核融合炉を輸出する運びとなった。まだそこまでは良い。問題はその後だ。
日本に設置された核融合炉は順調に稼動を開始した。当然、守秘義務とメンテナンス契約は結んだ上での事だ。
問題はその後に発生した。
運用は日本側に任されている状態で、核融合炉発電所に勤務していた中国人技術者が、核融合炉の技術資料を職場から
自宅に持ち帰り、隠し持っていた事が発覚した。守秘義務違反である。
ある程度の騒ぎにはなったが、中国人技術者を逮捕し、日本政府が北欧連合に謝罪し、その場は一段落した。
だが、中国人技術者が持ち出した技術資料は既に中国に渡っていた。そして一年後に大惨事が起きた。
持ち出した資料を元に、中国で密かに製造された核融合炉が暴走したのだ。
持ち出した資料が不完全だったのか、製作精度の問題があったかは不明である。
重要なのは、核融合炉が暴走して無制限の核融合反応を起したと言う事だ。
核爆発は二種類ある。核分裂と核融合だ。原子爆弾はウラニウムかプルトニウムを用いたもので原理は核分裂だ。
そして水素爆弾の原理は核融合だ。大型の水素爆弾は100メガトンクラスのものがある。
だが、中国で起きた核融合反応は、今まで地球上で起きた中では最大規模になってしまった。
核融合は恒星である太陽で行われている事を、地上で限定制御するものである。
燃料である重水素を超高温下で融合させる事で発生する熱を利用する。
燃料の補給を中止すれば反応は止まるはずなのに、中国の場合は何故か無制限に核融合反応処理が始まってしまったのだ。
中国での爆発は、これまで人類の手で起きた爆発現象とは規模が違っていた。
億を超える中国の住民が被害を受け、放射能被害を受けた地域面積は日本の総面積を遥かに超えてしまった。
爆発地が中国の北東部にあった為に、中国国内に止まらずにロシア連邦や朝鮮半島にも被害は及んだ。
放射能の一部は偏西風に乗って、日本にも届いている。もっとも何故か予想されていた放射能レベルよりかなり低かったが。
勿論、中国国内だけの隠し通せる規模の被害では無い。
そして”中国で核融合炉が爆発”というニュースが、あっという間に世界中に広まった。
北欧連合は中国に核融合炉を輸出した事は無い。だが核融合炉を実用しているのは、北欧連合のみである。
その事から、『北欧連合の核融合炉が中国で爆発した』という風評が、世界中のネットを駆け巡った。
ここで慌てたのが、中国政府、日本政府、北欧連合政府だ。
中国政府は北欧連合の核融合炉を不正コピーしたとも言えず、自主開発した核融合炉だとも発表せず、
ただ『核融合炉が爆発した』とのみ報道した。これが大きな誤解を世間に与えた。
北欧連合の核融合炉が爆発し、中国と周辺国に甚大な被害を与えたとの意見がネット上で大勢を占め、
中国国内と周辺国で北欧連合への抗議デモが発生した。そして北京にある北欧連合の大使館がデモ隊に襲われた。
又、ネットを駆け巡る風評を聞いた北欧連合在住の華僑が、ロックフォード財団の本社の前で抗議デモを行った。
北欧連合国内だけで無く、華僑がいる各国で似たような光景が見受けられた。
繰り返して言うが、北欧連合は中国に核融合炉を輸出した事は無い。
中国政府が日本にある核融合炉の技術を不正コピーし、不完全品を製造して稼動させたのが原因だ。
だが、そんな理屈は中国の民衆には通じなかった。中国政府と日本政府が、積極的に情報を公開しなかった事も原因の一つだ。
慌てて中国政府がデモ隊に介入したが、北京の北欧連合の大使館は襲われて、放火された後だった。
炎で焼け死ぬ者。大使館から逃げだしたが、デモ隊に暴行され死亡した者。
色々な死亡原因があったが、大使館に居た全員の死亡が確認された。
当然、大使館職員のみならず、大使館職員の妻や幼い子供などの家族も同じ運命を辿った。
北欧連合は中国政府に対してデモ隊首謀者の引渡しと賠償を求めたが、中国政府に拒否されてしまった。
北欧連合は国連総会で中国政府を非難したが、常任理事国特権を振りかざして中国は無視した。
これに激怒した北欧連合は、中国と国交を断絶。中国における大使館は封鎖され、再開される事は無かった。
そして国内には詳細事情を説明した上で、北欧連合の中国大使館の閉鎖を命令した。当然、中国大使は追放処分だ。
国内にいる華僑にも通達があった。
北欧連合は中国政府と国交を断絶した。今、国外退去するなら、財産は政府が買い上げると。
中国本国が北欧連合と国交断絶した事を知った華僑のほとんどは、北欧連合を出国した。
以後、中国政府は賠償もせず、北欧連合とは国交断絶状態が継続する事となってしまっている。
又、これに乗じて中国政府の影響が強い数カ国も、北欧連合と国交を断絶したという余波もあった。
もっとも、別の機会(国連軍の北欧連合への侵攻事件)に、中国への報復はきっちりと済ませてあるが。
そして、中国人技術者の技術資料漏洩事件の当事者である日本政府も慌てた。
日本で稼動している核融合炉は、メンテナンス契約もあって問題無く稼動していた。今まで事故や故障は一度も無い。
一年間の稼動実績を見て、追加導入をしようかと検討している矢先の出来事だった。
日本の市民にも、北欧連合の核融合炉が中国で爆発して、大惨事になっているというニュースが駆け巡った。
一部の人間が中国に不正コピーされた核融合炉の爆発と言っても、核融合炉が爆発した事には変わりはない。
政府は技術資料漏洩事件の事は何も具体的に説明もせずに、マスコミは確たる証拠も無いままに北欧連合を非難するだけだった。
この結果、核融合炉への懸念が高まり、追加設置の話しは立ち消え、たった一基稼動していた核融合炉も稼動停止が決定された。
日本政府が積極的に情報開示をせず、遠まわしながらも中国政府を庇う様な発言を繰り返すと、自然と北欧連合と日本政府の
繋がりは疎遠になった。それは北欧連合の王室と日本の皇族の関係も同じだった。
それに伴って交易の量も減少の一途を辿った。そして、現在は交易自体が行われていなかった。
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だが、事件から五年も経過すると状況が変わっていた。
北欧連合と中東連合では、核融合炉は一度も事故を起す事無く稼動していた。
原油の産出量はある程度は回復したが、それでもセカンドインパクト前のレベルまでは戻っていない状況である。
そんな中で、各国が力を入れたのは原子力発電だった。
海底資源は地軸変動の影響による地盤の緩みの為に採取が困難になっており、火力発電は環境とコストを考えて現状維持が精々だった。
太陽光発電、風力発電、地熱発電、潮流発電の各種プラントが建設されたが、技術的・コスト的な問題が多く、
小規模タイプのみで都市電力を賄うレベルにはならなかった。(但し、離島や僻地などの小規模集落には最適だった)
自動車などはガソリンから水素エネルギータイプへの移行が進んでいたが、今問題になっているのは生活と産業を賄う
大規模な電力供給源である。
そんな状況の中、原材料であるウランの価格が高騰し、原子力発電所の事故が日本で発生した。
事故原因は、震度六強レベルの地震が原子力発電所のある地域で発生した為だった。
九州にあったその発電所は、耐震設計はされていた。安全装置もあった。だが扱うのは人間である。
杜撰な管理の為に危うくチェルノブイリの二の舞かと思われたが、作業員八名の犠牲の下に何とか致命傷は回避出来た。
大量の放射能廃棄物が出て、発電所を全面閉鎖する事になったが、それ以上の被害はかろうじて免れていた。
この事故は原子力発電の危険性を、今まで以上に世間に周知させる事になった。
だが化石燃料の供給は減少傾向にあり、代替エネルギーは遅々として進まず、かと言って原子力発電所を封鎖すれば、
電力不足で日本の産業や市民生活の維持が出来なくなる。そこで再度見直されたのが、核融合炉だった。
ランニングコストも安く、発電能力の調整も効き、大出力の発電が可能。そして北欧連合製の核融合炉の事故はゼロ。
燃料の重水素は海水から抽出するので、石油のように海外から輸入する必要も無い。莫大な燃料費の節約が可能になる。
そして厄介な核廃棄物を出す事は無い。そして決め手は北欧連合で行われた稼動中の破壊テストだ。
稼動中の核融合炉にミサイルを撃ち込み、炉心破壊をしても核融合爆発を起こさない事を確認した映像が、北欧連合政府の
HPで公開されていた。安全性も十分だ。まさに日本が望んだスペックを、北欧連合の核融合炉は持っていた。
五年前に稼動停止した核融合炉の再稼動と、追加設置を含んだ技術移転の依頼をする為に、日本からメンバーが派遣された。
経済産業省から局長一名、財務省から局長一名、外務省からは次官一名の、計三人だ。日本側の本気が垣間見える人選である。
北欧連合の立場で見てみよう。
六年前、世界の主要国とあまり交流を持たない北欧連合にしてみれば、王族と皇族とのつながりがある日本との関係は、
ある意味貴重なものと考えられていた。だからこそ経済メリットを除外視して、TOP交渉で核融合炉を設置したのだった。
同盟国である中東連合以外では、初めての設置だった。
だが、日本のお粗末な機密保持の為に設計情報が中国に漏れ、中国で製造した核融合炉が爆発した。
中国の被害は甚大であり、被害を受けた人々に哀悼の意を表する事には問題無い。(産業スパイをした事は非難されるべきだが)
だが不完全な情報開示の為に、中国国民の怒りは、本来は機密を盗まれた被害者側である北欧連合に向ってしまった。
おかげで北京の北欧連合の大使館は放火され、大使館職員は家族諸共全員が惨殺された。
中国政府は今に至るまで賠償に応じていないので、国交断絶状態は続いている。(報復は済ませたが)
その煽りで日本は核融合炉を見放した。こちらの王族との付き合いも無くなっている。
それに風評被害の為に北欧連合は経済的大ダメージを受けて、ブロック経済体制を敷く事で何とか持ち直していたが、
世界外交レベルで見ると、外交力の低下は誰が見てもはっきりと分かる程だった。原因が何処にあるかは国民は知っている。
だが、四年前に国連軍が北欧連合へ侵攻したのを単独で殲滅。当時の国連常任理事国全ての国に報復を行った。
その後、北欧連合が国連の常任理事国に加わってからは、近寄ってくる国家も増えた。国際バランスもかなり改善されている。
今更、日本に核融合炉を設置するメリットは無い、と北欧連合の上層部は考えていた。
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「そ、それは………」
五年前に日本が一方的に望み、一方的に見放した事を突付かれ、経済産業省の局長は沈黙した。
当時の事はマスコミがかなり騒いだ事もあり、鮮明に覚えている。
「あの当時は世論を抑え切れませんでした。こちらから望んだのに、こちらの都合で使わなくなってしまった。
不義理である事はお詫びします。ですが、我が国の窮状を救うのは貴国しか無いのです。御検討頂けませんか?」
外務省の次官が席から立ち上がり、頭を下げた。
「不義理を詫びると言われても、五年前には無くて今詫びられてもね。意味が無いとは思いませんか?
それに貴国の窮状は知っていますが、それを我が国が救う義務など、どこにも無いですね」
北欧連合の外務担当が皮肉を言った。今でこそ無事故の実績もあって核融合炉はどの国も欲しがるが、あの当時は
中国の事故の為に、北欧連合の核融合炉をどの国も敬遠した。守秘義務を守る事を怠った日本も敬遠したのだ。
それが今更詫びを入れて来ても、こちらが困った時は知らん振りでは誠意は感じないだろう。
「…………」
外務省の次官は黙り込んだ。自分達が図々しいという自覚はあった。あの時はTOP交渉で無理やり導入を決め、
中国の責任なのに、北欧連合の核融合炉に非難が集中した為に、ある意味切り捨てた。
あの時は日本政府を始め、橋渡し役を務めた日本の皇族も北欧連合をフォローしていない。
「そんな訳でお帰り下さい。そちらが希望しても、信用出来ない国に技術供与は出来ませんから」
北欧連合の担当者が、素っ気無く日本から派遣された三人に通告した。
北欧連合は現在の世界主要国とは関係は悪い。だが、保有する技術は世界主要国を上回る。
その技術力を生かして中東を含む、南米・アフリカの諸外国に援助を行い、良好な外交関係を維持している。
そして国連の常任理事国であり、国際的にも協調国の数は多い。一時期は衰退するだけと思われていたが、見事に復活していた。
六年前と比較すると、北欧連合の経済力と外交環境はかなり改善されている。
今更、日本と無理をしてまで友好国になるように努力する必要は無かった。
「ま、待って下さい。費用は割り増しで構いません。どうか検討を御願いします」
財務省の局長が必死の形相で頼み込んだ。
以前の設置の時は格安だったが、今回はそれでは済まないと思っている。以前の五倍の費用までは覚悟していた。
「割り増し? 我が国はそれほど予算に困っていませんよ。そこまで言うなら、日本の国家予算の十年分でどうですか?」
「国家予算の十年分!? そんな無茶な! 我が国が破産してしまいます!」
「別に我々としては、日本が破産しようと関係ありません。その金額が嫌なら交渉決裂という事ですね。
お帰り下さい。我々も暇な訳じゃないですからね。無駄な時間を過ごしたくは無いですよ」
「くっ!」
最初から技術供与をする気が無い北欧連合の二名の担当者に、日本から派遣された三名は臍を噛んだ。
元々、この会談でさえ北欧連合は当初は拒否していた。それを第三国経由で拝み倒し、やっと会談に持ち込めたのだ。
あっさりと交渉決裂など、認める訳には行かない。
だが、北欧連合の信用を回復出来る妙案がある訳でも無く、北欧連合にメリットを提示する事も出来なかった。
信用とは獲得するには時間は掛かるが、失うのは一瞬で済む。
もし五年前の時に日本政府が中国政府を非難し、北欧連合の立場を弁護していれば状況は違っていただろう。
だが日本政府は為すべき事をしなかった。何故か中国に配慮した。それによって北欧連合の信用を失ってしまった。
このままでは絶対に話しはまとまらない。このまま日本に帰国すれば、どうなるだろうか?
核融合炉が無くても、ある程度の石油の輸入が確保出来ていれば、今のところは凌げる。
だが、十年、二十年先はどうか?
石油の産出が減少傾向にある現在、先の対応をしていかなければ必ず日本の産業は破綻する。
しかも、日本の石油の大部分は中東からの輸入に頼っている。北欧連合の同盟国ではないか。
ここで北欧連合との関係を少しでも改善しておかなければ、日本の将来の展望は開けない。
技術供与は諦めて交易の再開の話しをしようとした次官だったが、話し出す前に、北欧連合の担当者の通告があった。
「そうそう。日本にある大使館もそろそろ閉鎖する頃合かと、上層部は話していましたよ。
どうせ御互いの交易は無く、大使館の維持費が無駄ですからね。その時は、我が国の日本大使館も閉鎖して貰う事になりますね」
「そ、それは我が国と国交断絶すると言う事ですか!?」
「おや、それ以外の内容に聞こえましたか? まだ検討中の内容ですがね」
「そ、そんな……貴国は日本を……そうですか……」
外務省の次官は肩を落した。セカンドインパクトの影響で国交が回復していない国は多い。
だが、国交がある国と国交を断絶するのでは、話しがまったく違う。
普通、国交断絶は戦争レベルの国家間紛争の時ぐらいしか発生しない。もしくは永遠に決別を決意した時ぐらいか。
まあ、宗主国の意向に従って国交断絶した国はあるが、一握りの国だけだ。
外務省の次官は、北欧連合が日本を完全に見放したと判断したのだった。ここまで来ると、次官レベルではどうしようも無い。
「日本に居る大使も暇だと言っていましたしね。早ければ一ヶ月以内には上層部の結論が出るでしょう。
我が国から日本に行っている人間は、大使館職員を除いて他には居ませんからね。閉鎖しても何の問題も無い」
会談は合意に達しないまま終了した。
日本に対する北欧連合の冷たさを実感した三人は、失意の中で大使館に帰って行った。
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日本から派遣された三人は、日本政府の用意した特別便に乗って帰国の途についていた。
六年前は日本との定期飛行便があったのだが、旅客数の減少で廃止されている為である。
「あそこまで冷たく扱われるとは、予想外だったな」
「やっぱり五年前の事を怨んでいるのだろうな。まったく中国に配慮して真相を公表しなかった報いか」
「まったくだ。折角、皇室経由で核融合発電所の設置が出来て、稼動も問題無かったのにな。
あの中国人技術者の資料盗難事件でさえ、公式に発表していない。それどころか、今でも中国に援助金を出してるぞ」
「援助金と言えば、中国だけじゃ無く朝鮮半島にも支援している。
だが、我が国が支援している事を、彼らは国内には知らせていない。それどころか、我が国にもっと支援しろと要求している」
「完全な『たかり』だな。言いなりになる我が国も情けなくなるが」
「日本を自分達のサイフだとか、平然と言った政府高官もいる。日本海の名前を勝手に変えようと国際的に動いている。
ミサイルを衛星だと言い張って、我が国の領海に発射した事もある。それらに抗議さえしていない」
「それを言えば、毒物入りの食料を輸出しておいて、日本に被害が出ても謝罪をしていない。
それどころか、毒物が日本で混入された可能性もあるとか言ったりもしている。完全に嘗められているな」
「日本の大使館の前で我が国の国旗を焼いたり、我が国の国鳥を殺す国に援助か。普通なら国交断絶ものだぞ。
知ってるか? 朝鮮の議員は我が国の国旗を踏みつけている写真を公開しているぞ」
「それらを日本で報道しない我が国のマスコミも問題だ。偏向報道も昔からだしな」
「それらを放置した報いが、今となって跳ね返って来ている訳か」
「今までの事を悔いても仕方ない事だ。それより、これからどうするかだ」
三人の顔に暗い表情が漂った。だが、思いつめても状況は改善しない。
機内サービスのアルコールを飲みながら、話す話題を変えた。
「クリーンエネルギー系は規模とコストの問題が解決されていない。大規模発電は無理だ。原子力発電は国民の反発が強い。
同じような原発事故が起きれば、内閣は吹っ飛ぶぞ。海底の大陸棚の資源は地盤の緩みがあるから、技術的に困難だ」
「まだ原油の価格は安定しているが、若干の上昇傾向を示している。いずれは枯渇する資源だからな。
火力発電も採算面で出来なくなるのは時間の問題だ。問題解決の糸口が見つからない状態だ」
「まったく、北欧連合への外交ルートを残しておけば良かったんだがな」
「無理だ。今でこそ北欧連合は勢力を伸ばしているが、あの事故の直後は北欧連合は本当に危なかったんだ。
他の常任理事国から、北欧連合と手を切れと圧力があったくらいだ」
「だが、他の常任理事国は北欧連合に侵攻して負けた訳だ。北欧連合の技術を奪うつもりだったらしいがな。
日本が見放した国が、今や飛ぶ鳥を落とす勢いか。つくづく日本は選択肢を間違えたな」
「我が国との国交断絶を検討中か。原油輸入を考えると、中東連合の同盟国である北欧連合との国交断絶はまずいだろうな」
「待て! それどころじゃ無い。万が一、北欧連合の牙が日本に向いたらどうなると思う?」
アルコールを飲みながら話すうちに、ふと思いついた疑問を財務省の局長が口に出した。
それを聞いた二人は、一瞬にして顔色を変えた。そんな事態になれば、日本がどんな状況になるかが容易に想像出来たのだ。
何しろヨーロッパ方面の国連軍の半数以上が、北欧連合一カ国に瞬時に殲滅させられた。
日本では蚊が刺した程度の抵抗も出来ないだろう。そもそも衛星軌道上からのビーム兵器を防ぐなど、どの国でも不可能だ。
「……だ、だが、北欧連合が日本を攻撃する理由は無かろう」
「会談で分かったろう。彼らは日本に良い感情を持っていない。むしろ遺恨があると思った方が良い。
口実なんて、いくらでも用意出来る。今のところ日本を攻撃するメリットは無いだろうが、逆を言えば、
日本を潰してメリットがあると判断されれば、攻撃を受ける可能性は高くなる」
「……そうだな。その危険性も報告しておこう」
北欧から日本への飛行時間は十時間を超える。三人はアルコールの酔いもあり、眠りに落ちた。
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北欧連合へ派遣された三人は特別便を降りた後、休む間もなく官邸に直行した。
そこには会談の内容を確認する為、首相と数人の大臣が待っていた。三人が入室すると、首相は早速状況を聞きだした。
「電話で会談は失敗したと連絡を受けているが、詳細を聞きたい。疲れているだろうが、休息はこの後にしてくれ」
「はい。身体の方は大丈夫です。北欧連合との会談ですが、彼らの出席者は二名。係長クラスでした」
「こちらからは、次官クラスを出すと連絡してあったはずだが?」
「彼らはそれを承知の上で、係長クラスを出してきたのです。我々の説明も嫌々聞いている態度でした」
「何だと!?」
「それと五年前の事を持ち出されました。今更、日本に技術供与するメリットは何も無いとはっきり言われました。
それだけではありません。現在、北欧連合との人的交流・交易ともにゼロの状態です。
彼らは大使館を閉鎖、つまりは国交断絶も検討中だと仄めかしていました」
「……やはり怨んでいるのか?」
「恐らくは。そうでなくては、あのような態度は取らないでしょう。しかも国交断絶にも言及していますから」
「では、エネルギー危機の改善は当面は無理か。リスクはあるが、海底の大陸棚の採掘を優先させるしか手はないか」
首相を含めた全員が溜息をついた。現在のエネルギー危機は、それほど深刻なレベルだ。
一縷の望みをもって送り出した交渉団だったが、結果は失敗だった訳だ。
「お待ち下さい。エネルギー危機より危険な兆候があります」
「エネルギー危機より危険な兆候だと? 何だと言うのかね?」
「国交断絶の危険性です。彼らは一ヶ月以内には結論を出す予定だと言っていました。放置は出来ないでしょう」
「五年前の中国での事故を契機に、彼らとの関係は冷え切っている。政府ルート・皇室ルートともに、関係は途絶えている。
実際問題として、北欧連合以外にも国交が途絶えた国もある。その中の一つに入るだけだろう。
遠隔地でもあるし、無理して国交を維持する必要は無いだろう」
「彼らの武力が、日本に向けられる可能性があってもですか?」
「!! だ、だが、彼らが我が国を攻撃する理由など無かろう」
首相は驚愕の表情を浮かべた。今まで考えた事も無かった事だ。
日本が北欧連合に戦争を仕掛ける事は絶対に無い。あるとすれば戦争を仕掛けられる事だが、その理由が思いつかない。
何より遠いヨーロッパにある国であるし、殆ど利害関係が存在しない。
「ええ、今はありません。今まで我々が忘れていただけですが、彼らは日本に怨みを持っていると分かったのです。
無理矢理にでも口実を作って事に及ばないと誰が保障出来ますか? 旧常任理事国六カ国は北欧連合一国に敗れたのですよ。
彼らの牙が日本に向けられれば、我々は一瞬で滅亡です。可能性は低いと思いますが、リスクは回避すべきかと思います」
「……確かにな。我々は彼らの事を忘れていたが、彼らは忘れていなかったという事か」
「そういう事です。彼らの怒りを受けた中国がどうなったかは、ここに居る全員が御存知でしょう」
四年前、北欧連合へ国連軍を侵攻させた旧常任理事国六カ国は、北欧連合の報復を受けていた。
衛星軌道からの粒子砲の砲撃を防げるはずも無く、六カ国は文字通り蹂躙された。
中国を除く五カ国は、政治と軍事施設が破壊されたが、一般市民にほとんど被害は出なかった。
だが、中国に関しては違う。北欧連合は中国に関しては、政府・軍事施設を狙わずに、発電施設を徹底的に破壊した。
核融合炉の技術盗難、中国に在った北欧連合大使館の襲撃、大使館職員の家族を含めた虐殺の報復という事を含めてだ。
電気が無ければ、機械は動かず生活に支障が出る。それが中国全土に波及した。
当然、工場の操業は停止して産業は大打撃を受けた。そして農業生産にも影響し、食料生産量は大幅に下落した。
そして市民生活を直撃した。電灯は点かず、電話は使えず、水道も停止し、冷蔵庫も動かない。
輸送ルートもダメージを受けたので、食料が都市に届かない状態が継続した。
中国政府は軍を出動させて事態の収拾に努めたが、被害範囲があまりにも大きい為に多数の死者が出ていた。
発電施設の復旧に力を注いだが短期間で復旧出来るはずも無く、四年経過した現在でも電気の通じていない地域は多い。
そして中国政府の要請を受けて、日本は多額の資金援助を行っていた。
かつて中国は眠れる竜と評され、凄まじい経済成長を遂げていた。だが、現在の中国に当時の面影は無い。
首都周辺は復旧したが、まだ広大な国土の大部分の復興は済んでいない。
中華主義による高いプライドを持ち、国連の常任理事国であり、経済は疲弊している。それが現在の中国だった。
「……そうだな、分かった。ご苦労だったな。後は我々が検討する。下がって休んでくれ」
「はい。では、失礼します」
報告が終わった三人が退出した後も、数人での打ち合わせは続けられた。
打ち合わせの結果、日本の北欧連合大使館に特使を派遣する事になった。
交渉内容を決めて派遣人員の選定が終わったのは、午前二時の事だった。
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「こ、ここが北欧連合の大使館なのか? 間違いでは無いのかね!?」
北欧連合の大使館に向かった三人が見たのは、廃屋寸前の屋敷だった。周囲に家屋は無く、田舎の屋敷という風情だ。
あちこちの壁が壊れ、ペンキも剥げている。草木が生い茂り、外からは人が住んでいるとは思えない。
「はい。規模の縮小の為に五年前に大使館を移転するとの連絡があり、移転先がここになっています。
事前に確認しましたが、電気と水道は使われております。電話でアポイントも取ってあります。
門は開けておくから、玄関まで勝手に入ってくれとの事でしたから」
車を運転している秘書が答えた。周囲に注意を払い、安全確認は怠ってはいない。
本来はSPが同行すべきだが、相手に威圧感を与える可能性があると指摘されたので、
副総理たる鳩沢、秘書の小森、冬宮の三人だけが派遣されていた。
「ここまで大使館が酷くなっているとはな。大使館を封鎖するというのは本気なのか」
「恐らくは本気なのでしょうね。それと冬宮様は予定通りに最初は話さないで頂きたい。
交渉がある程度うまくいった時には御願いしますが、それまでは自重を御願いします」
「分かっています。皇室の不義理を詫びる必要がありますが、いきなりでは彼らを刺激する可能性もありますからね」
「どうやら玄関に迎えが出てるようです」
玄関には執事らしき人間が、ほっそりと立って待っていた。
執事に案内されて、三人は大使館の中に足を踏み入れた。外観とは異なり、内部は清掃が行き届いていた事に少し安堵する。
そして会議室らしき部屋に通された。そこには大使が待っていた。
「私が大使のロムウェルです。我が大使館へようこそ。と言っても、閉鎖寸前のボロ屋敷ですがね」
「……本日は、いきなりの訪問で失礼しました。私は副総理の鳩沢。この二名は随員です」
大使は挨拶を済ますと、いきなり本題に話しを向けた。通常は社交辞令が行き交うのだが、その手順は飛ばした。
「まあ、お座り下さい。ところで本日は、どのような御用件ですか? この大使館に来客など三年はありませんでしたからな」
「……我が国が御願いした核融合炉の技術供与交渉がまとまらなかった事は御存知ですな。
その事は残念な事ではありますが、それ以上の問題を耳にしまして本日は伺いました」
「技術供与の件は連絡が入ってます。しかし、それ以上の問題とは分かりませんな。
そもそも、日本と我が国の関係は希薄なものになっています。この状態で、それ以上の問題とは思いつきませんが」
「その希薄な関係が問題です。貴国がこの大使館を閉鎖する予定だと耳にしました。
本日は、その確認と今後の対応について協議しようと考えて伺いました」
「はて? 来訪者も無い寂れた大使館を閉鎖して何の問題がありますかな。影響は無いはずですが?」
「では、やはり大使館を閉鎖するという予定なのですか?」
「そうです。私が本国に申請しました。するべき仕事も無く、大使館の維持だけで疲れましたからな。
まだ隠居するには早いですから、本国に転勤申請を出しました。その時に、この大使館を閉鎖する予定です」
「代わりの大使が来られるという事は無いのですか?」
「する仕事も無いのにですか?」
「そのお話しをする為に、本日は伺いました」
「……では、こちらも一人追加しても宜しいですかな。ここに居ないので、通信回線経由で参加させたいのですが」
「ええ、構いません」
「では準備をしてきます。数分で戻りますから、そのままでお待ち下さい」
そう言って、ロムウェル大使は席を立った。残されたのは三人の日本人だ。
「一人追加とは誰なのだろうか? しかも通信回線経由だと?」
「分かりません。もう少し様子を見ませんと」
「そうだな」
五分後にロムウェル大使は戻ってきた。
「待たせて申し訳ありませんな。さて、通信回線は大丈夫ですか?」
『ああ、聞こえている。そちらはどうか?』
壁に設置されたスピーカから声が聞こえてきた。音声変調がされていると、はっきり分かる声だ。
老齢さを感じさせ、声からある程度の威圧感が感じ取れる。
「こちらも大丈夫です。では宜しいですかな」
『では、始めに名乗らせて貰おう。私はシン・ロックフォードだ。
核融合炉技術を開発し、その関連技術に関しては責任者の立場にある者だ』
「「「!!」」」
政府から派遣された三人に緊張が走った。核融合炉を開発したロックフォードと言えば、三賢者の一人の魔術師しかいない。
北欧連合と交渉しに来た訳だが、いきなり三賢者の一人が出てくるとは想像もしていなかった。
しかも中国の核融合炉事故の為に、当時は世界の非難が集中した事もある。日本に怨みを持っている事は、容易に想像出来た。
だが逆を言えば、彼を説得出来れば核融合炉の技術供与も締結出来る可能性が出てくる。
今回の訪問をこれから続く折衝の第一段階と考えていたが、いきなり正念場を迎えたと三人は感じた。
『ロムウェル大使から話しを聞いたが、この大使館を閉鎖する事に関して話しがあるらしいな。私も話しを聞かせて貰おうか。
私は民間人の身分だが、それなりに国政に意見出来る立場にある。異存は無いな?』
「構いません。通信のみとはいえ、ロックフォード氏と話しが出来る事は光栄な事ですからな」
『世辞は結構だ。日本政府の人間に褒められても、嬉しく無いからな。話しを進めたまえ!』
「……まず、核融合炉の技術供与の依頼の為に、三人の官僚を貴国に派遣しましたが断られました。
これには貴方の意向は入っているのですか? 再考は願えませんか?」
『当然、私の意向も入っている。今更日本に援助しても、我が国のメリットは何も無いからな。
我が国が日本と技術供与協定を結んだ場合は、情報漏洩の危険性が極めて高い。そのリスクは看過出来ない。
それに直ぐに裏切る国など、誰も信用はしない』
「わ、我々は貴国を裏切った事などありません! 世論に押されて行動が消極的であった事は認めますが」
『ほう。中国に配慮して情報漏洩の件も公表しなかったのにか? 日本の皇族の要請を受けて、国内の反対意見を押し切って
核融合炉を設置したにも関わらず、情報漏洩を起こして中国の核事故の時は一切の事情説明しなかったのにか?
おかげで我が国の国王陛下の立場は、一気に悪化したのだぞ。私もTVや新聞、そしてネット上でも、かなり罵倒されたな。
私は日本に内政干渉する気は無い。日本に対して、あれをしろ、これをしろなど指図する気は無い。
ただ、我が国に要請をして後は知らぬ振りをして、犯罪と事故を起こした中国を重要視する日本を、
我が国は信用出来ぬと言っているだけだ』
「……あの時の事は、確かに責められても当然の事です。ですが、我が国にも事情はあるのです!」
『日本の事情がどういうものかは知らぬが興味は無い。重要なのは結果だ。そして日本が我が国を裏切ったという結果がある』
ロックフォードの日本への信用がまったく無い事を、鳩沢は痛感していた。
つくづく事件のフォローが悪かったと後悔するが、今悔いても始まらない。
この件は少しづつでも、信用を回復するしか手は無いのだ。そう考えて、話題の方向性を少し変更する事にした。
「あなたの考えは理解出来ました。これに関しては時間をかけて、誤解を解きたいと思っています。
それに付随する事ですが、この大使館を閉鎖すると聞きました。翻意は願えませんか?」
『人的交流も交易も無く、大使館は業務を行っていない。強いて言えば、大使館の維持だけが業務になっている。
無駄な費用がかかっているだけだ。この御時世では我が国も経費削減を求められているからな。
付け加えて言うなら、信用の置けない国家と国交を維持する必要さえ無いと考えている』
「そ、それは、あなた個人の考えでしょうか? それとも貴国全体の考えでしょうか?」
『我が国の上層部の総意であると言っておく』
「しかし、いきなり国交断絶とは行き過ぎではありませんか!!
貴国が日本を信用していないのは理解しましたが、我々は信用を取り戻す努力をしたいのです。
ですが国交断絶になると、その機会も失われてしまいます」
特使である副総理の鳩沢は熱弁をふるった。
ここでロックフォードを翻意させないと、本当に国交断絶しか無いと悟ったのだ。
『……本来なら不要なのだが、もう少し詳細説明をしようか。……私もお人好しだな』
「時間は大丈夫です。御厚意に感謝します」
『まずは三人の本名を言って貰おうか。下の名前も含めてな』
「私は鳩沢ナオトです。隣は秘書の小森イチロウで『通名では無く、本当の名前を言いたまえ!』……何故それを!?」
鳩沢と小森の顔に驚きの色が浮かんだ。今まで、誰にも指摘された事は無かった事だ。
紹介されなかった冬宮の眉毛が僅かに動いた。
『副総理は日本人だが、秘書は日本人では無いだろう。通名で日本名を使っているが、本名はキム某だろう。
国籍は日本では無い。俗に言う在日だと言うのは分かっている』
「……確かにそうですが、彼は有能です。国籍を問うのは差別につながります」
『はっきり言おうか。五年前の事件の時の日本政府の対応には、私を含めて上層部全員が怒りを覚えた。
四年前の中国への攻撃のドサクサに紛れて、日本も殲滅すべきだと声が上がった程だ』
ロックフォードの話しを聞いて、三人の身体が強張った。それこそが懸念されていた内容だったのだ。
気が付くのが遅くなったとはいえ、日本滅亡の危機が四年前にあったと言うのだ。
実際には日本への攻撃は無かったが、あった場合は日本という国は無くなっていた可能性が高い。
『地理的な理由で、日本が中国と朝鮮と深い関係である事は承知している。
第二次世界大戦で日本が敗北した事が、問題を複雑化させている事も知っている。
そして約70年前の事で、いまだに賠償と援助を行っている事もな。
世界を見渡しても70年前の出来事に関して国家レベルで謝罪と賠償と言っているのは、その二カ国ぐらいだ。
本音を言わせて貰えば、そんな国と良く付き合えると感心する。私ならとっくの昔に縁を切るがな。
まあ、そこら辺は日本の事情だろうから、とやかく言う気は無い。
肝心なのは、反日政策を国是としている国に抗議もしないで、日本が延々と援助をしている事だ。
大使館の目の前で、国旗を焼かれて国鳥を惨殺されたな。我が国がそんな事をされたら、即座に国交断絶する。
中国と朝鮮は日本から援助を受けている事を国内には知らせずに、反日報道をして日本には援助を要求している。
それらを報道すべきマスコミも、中国と朝鮮の影響が強いから、そんな内容を報道しないだろう。
確か、ある英語サイトでは日本女性を貶める偏向報道があったが、マスコミは責任を取っていない。
教育と宗教関係でも、中国や朝鮮に有利なように誘導されているではないか。
学校の教科書にもあれこれ口を出していたな。完全な内政干渉なのに、日本政府は正式に抗議もしていない。
日本に住むなら日本の利益になるように行動するのが普通だろうが、国内を後回しにして国外を優先させている。
日本も財政事情は苦しいはずなのに、何故その二カ国に援助をしているのかね? 敵に塩を送る余裕が日本にあるのかね。
我が国が日本を支援した場合、日本の利益がその二カ国に流れ込むと理解したのだ。
これでは砂漠に水を撒くのと同じだ。仮に旧怨を忘れて支援しても、我が国の支援は無駄にしかならない。
以上の理由から、我が国が日本と関係を深めるのは好ましく無いという結論に達している。
これが国交断絶を決めた我が国上層部の認識だ。何か言いたい事はあるのかね?」
鳩沢と小森は困惑した表情になった。
細かい説明を始めれば一日がかりでも終わらないし、ロックフォードが納得するとも思えない。
北欧連合の日本の認識も確認出来た。彼らが納得出来る条件を提示しなければと考え、この場はいったんは退去する事にした。
だが、反論せずに退去は出来ない。
「第二次世界大戦の時に我が国は中国に侵攻してしまったのです。中国と朝鮮を敵国扱いは少々不快になります。
ですが貴国の考えは分かりました。検討して後日に伺わせて頂きます」
「待って下さい。私は皇室の人間です。残って少し話しをしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「冬宮殿下!?」
「五年前の不義理をお詫びしたい気持ちに変わりはありません。お詫びするのに無様な姿をあなた達には見せたく無いですからね。
帰りは迎えを来させますから、二人はお帰り下さい」
「し、しかし……」
鳩沢と小森にしてみれば、冬宮と北欧連合の密談は好ましく無い。
そこに、ロムウェル大使が口を挟んできた。
「ボロ車で宜しければ、大使館の車で送りますよ」
「……分かりました。では、失礼させて頂きます」
思うことがあって、鳩沢と小森は呼ばれた執事と一緒に部屋を出た。あまり反対しても変に勘ぐられるだけだからだ。
部屋に居るのは、冬宮とロムウェル大使の二人だけだ。冬宮はロムウェル大使に向き合うと、微かな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。五年前の事をお詫びしたいので、ロックフォード氏に会わせて頂けませんか?」
「最初に言った通り、大使館には居ませんが?」
「私の勘に過ぎませんが、この大使館内に居ませんか?
段取りの良さと反応のタイムラグを感じさせない事から、近くにいらっしゃると推察しますが」
『……ほう、鋭いな。だが謝罪なら不要だ。既に君の謝罪だけで許せるレベルでは無い。無用な事だ』
「ええ、私一人の謝罪で償えるとは思っていません。ですが、あなたの手助けは出来ると思いますが?」
『手助け? 私が君の手助けを必要だと思っているのかね?』
「あなたが何をしているかは知りません。ですが、北欧の三賢者と呼ばれた人が隠れて日本の大使館にいらっしゃるのですから、
何らかの理由があるでしょう。それに日本語がお上手ですね。敵に塩を送るなんて、今時の日本人は使いません。
三賢者の全員が養子と聞いています。もしや日本人では?」
『……だとしたら、どうする?』
冬宮は一筋の光明を見た気持ちになった。そして、失敗は許されない事も理解していた。
ここで交渉が失敗すれば、二度と話し合いなど出来ないだろうと判断した。故に、出し惜しみはしなかった。
「あなたには、あなたなりの立場と考え方があるでしょう。それは私も同じです。
そして皇族の一員という私の立場では、日本を見捨てる事は出来ません。権限も無い私に出来る事は、この程度なのです」
そう言って席を立ち、腰を九十度曲げてテーブルに両手と頭をつけた。
「この通り、お願いします。どうか日本に協力を御願いします。この身を差し出せと言えば、差し出します!」
『………報酬は君自身か。たったそれだけで、今までの怨恨を流して日本に協力しろと言うのか!?』
「今の私では、あなたが満足する報酬は渡せないでしょう。そして将来の事など約束しても意味は無いでしょう。
腹を切れと言われれば、切りましょう。どうか御願いします!」
冬宮は頭をテーブルに押し付けたまま、懇願した。言った言葉は心からの叫びだった。
『……その身を差し出すと言ったな。本当に覚悟はあるのか? 人体実験のモルモットになっても良いと言うのだな。
その身をメスで切り刻まれ、薬物の試験投与をしても良いと言うのだな。内臓を摘出され、改造手術を受けてもいいのだな?
後で否だと言っても、その時は手遅れだ』
仮○ライダーのように自分が手術台に固定され、改造されかかっている光景を冬宮は想像して身震いした。
だが、ここで嫌だと言えばその時点で交渉は終わり、二度と交渉出来ない事も理解していた。
正直、逃げ出したい気持ちだったが、自分の責務を思い出して無理矢理承諾の言葉を口にした。
「……そ、それで日本が救われるのなら、この身を捧げます!」(冷汗)
『震えているじゃ無いか。可愛い子ならともかく、男なんぞに身を捧げられても嬉しくないがな。いてっ』
「??」
『ああ、失礼。最後にもう一度だけ確認する。私が協力する代償として、その身を差し出すと言うのだな?』
「……はい。覚悟は出来ています」
『……良いだろう。これから、そちらに向かう。席に座っていてくれ』
ピッと言う音がスピーカから聞こえてきた。向こう側のマイクが切られたのだろう。
冬宮は溜息をついた。何とか協力して貰える方向に持ってこれたのだ。安堵の溜息だった。
「ロックフォード博士を翻意させられるとは、思ってもいませんでしたよ」
「ありがとうございます。しかし、正念場はこれからだと覚悟しています」
「……まあ、そうなりますね。さて、あなたの手腕を拝見させて頂きますよ」
ガチャ
ドアが開いて、二人の人間が部屋に入ってきた。その二人を見て冬宮は声を荒げた。
「き、君が、いえ、あなたが三賢者の魔術師なのですか!?」
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その部屋には、十二歳の少年と十六歳の少女が居た。ベットが二つあり、大使館で用意してもらった部屋だ。
十二歳の少年は黒髪に黒目………いや、左目は紫だ。顔つきは典型的な日本人である。
十六歳の少女は金髪碧眼。綺麗な白い肌を持ち、スタイルも良く、可愛らしい顔立ちである。
少年は少女に殴られた頭を擦っていた。
「あー、痛かったな。ミーナ、いきなり殴るなんて酷く無い?」
「どこがよ! 可愛い女の子に身を捧げて欲しいんでしょう! この浮気者! あたしを弄んだだけなのね!」
「だから、あれは話しの流れで言っただけだよ。ボクにはミーナがいるから、満足してるよ」
「ほんとに?」
ミーナの顔が嬉しそうに微笑んだ。ちょっと前の不機嫌さは、少年の一言で吹っ飛んでしまっていた。
「ほんとだって! 待たせても悪いから、会議室に行くよ。飲み物の準備は?」
「出来てるわよ」
「じゃあ、行こうか」
そう言って、二人は会議室に向かった。
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二人が部屋に入ると、冬宮の驚愕した声が二人を出迎えた。
冬宮の顔には驚きの表情が浮かび上がり、立ち上がって少年を指差している。
ちなみに、少年の服装は白いシャツに黒ズボン。少女はメイド服を着用していた。
「まあ、驚くのも理解出来ますがね。座って下さい。ミーナ、飲み物を」
「分かってるわ」
ミーナはコーヒーが入ったカップを全員に配り、少年の隣に座った。
「さて、自己紹介しておきましょうか。ボクが『シン・ロックフォード』です。あなたの自己紹介は不要ですよ。冬宮殿下」
「博士、少々脅しが過ぎましたかな?」
冬宮は呆気に取られた顔をして、まだ復活していなかった。それだけ、衝撃が大きかったのだろう。
「そうみたいだね。でも、あれで逃げ出すようでは協力は出来ないよ」
「仰る通りです」
「あ、あなたが北欧の三賢者の魔術師なのですか?」
冬宮はまじまじと少年を見つめた。顔つきは確かに日本人だ。だが、小学生高学年ぐらいに見える。
まさか名高い北欧の三賢者の魔術師が、こんな子供だなどと想像さえしていなかった。
だが、何時までも呆けている訳にはいかない。気を取り直して、話し出した。
「年齢もあって、今まで公式の席には一度も出た事はありませんけどね。ロムウェル大使が証人ですよ」
「ええ、間違いありません。私が保証させて頂きます」
「で、では、今までの応対も?」
「ええ。慣れない口調で話すのは結構疲れますね。ですが、さっき話した内容は本気ですよ。あなたの身体を差し出して貰います」
少年は威圧感を込めて冬宮を見つめた。年齢に似合わぬ威厳を少年に感じて、冬宮は見た目で判断する愚かしさを実感した。
そして気を取り直し、少年の目を正視した。視線には覚悟が込められている。
「……覚悟はしました。ですが、どんな事をされるのかを教えて下さい」
少年は大使とミーナに目配せした。二人は頷いて部屋を出て行った。残されたのは、少年と冬宮の二人だけだ。
ドアの閉まる音を聞いた直後、少年の左目が赤く輝きだした。
冬宮は少年の左目の色が違う事には気がついていた。だが、いきなり赤く輝くなど思ってもいなかった。
不思議な光景に目を奪われ、次の瞬間、冬宮は意識を失った。
***************************************
冬宮は意識を取り戻した。テーブルに伏しているが、さっきまで座っていた席に居る。
何で意識を失ったか分からず、少し狼狽する冬宮に少年の声がかかった。
「気がつきましたか」
「あ、あなたは! いったい私に何をしたのですか!?」
「まずは話しの前に、少し意識を集中させて下さい。あなたの脳裏にある映像が浮かび上がるはずです」
少年の有無を言わせない口調に冬宮は少し動揺したが、少年の言うがままに意識を少し集中させた。
すると不思議な事に、冬宮の脳裏に今まで見たことの無い映像が浮かび上がってきた。
「な、何だこれは! 何でこんな映像が見えるんだ!? どういう事なんだ!? 私に何をしたのだ!?」
冬宮が見たのは、紫色の大型ロボットに乗って戦う少年の映像、特殊なフィールドに覆われて人間が液化していく映像、
海が真っ赤に染まり地球全体が廃墟と化した映像、そして、廃墟に座り込む少年の映像だった。
映像の少年は目の前の少年と酷似している。少年の兄だろうか?
「あなたが見た事を説明しますから、落ち着いて下さい」
少年の冷静な言葉を聞くと、冬宮の興奮は不思議と治まった。
覚悟を決めたと言うより、開き直ったと言う方が正確だろうか。冬宮は少年の言葉を聞く為に、視線を正面に向けた。
「全部説明しますから、ゆっくり聞いて下さい」
「……分かりました」
「まず、あなたが見た映像ですが、予知によって得られた未来の映像です」
「未来の映像!? あれが!? では、人類は滅ぶというのですか!?」
「それを防ぐ為に、我々は活動しています。今から約二年後の日本の第三新東京が舞台です」
「二年後の日本で!? 第三新東京という事はネルフが!?」
「そうです。ゼーレという組織を知っていますか?」
「……噂を聞いた事はあります。中世の時から存在する秘密結社だとか。聞いた時は、笑って聞き流しましたが」
「ネルフの上位組織は、人類補完委員会。そしてゼーレの表の顔でもあります。
そしてゼーレは旧常任理事国を牛耳り、サードインパクトを企んでいるという訳です」
「サードインパクトを!? 何故そんな事をする必要が?」
「我々の分析も終わってません。まず結果が分かっているから、動いているのです。
無理矢理、理由をこじつけても仕方ありませんからね。彼らの動機に関しては、調査中と理解して下さい」
「……納得するしか無いという訳ですね。それと、あの映像ですが本当に未来の映像なのですか? 信頼性はあるのですか?」
「予知能力者が数十回見ても、同じ映像でした。これに関しては信用して貰うしかありません。ボクの師匠にあたる人です。
セカンドインパクトが起こる前に、セカンドインパクトの事を予言した事もあります」
「セカンドインパクトを予言したのですか!?」
「当時、世間に公表しても、誰にも信用されなかったでしょうけどね。ですが、それを信じたロックフォード財団の総帥は、
セカンドインパクトが起きる事を想定し、準備しました。財団の急成長が証拠にはなりませんか?
そして、ボクもその類の能力を持っています。あなたにさっきの映像を見せた事で分かると思いますが」
少年の言った内容に冬宮は混乱した。それはそうだろう。
いきなり二年後には人間が絶滅するかもしれないと言われれば、誰もが混乱する。
だが、不思議と少年の言葉を疑う気持ちは湧いてこなかった。
「………正直、話しが突飛過ぎて、ついていけないというのが本音です」
「まあ、そうでしょうね。そちらに関しては、我々が動いています。そしてあなたに望むのは、この日本における勢力造りです。
先程は日本に関知しないと言いましたが、サードインパクトを防ぐ為には日本で一定の勢力を持つ必要があります。
その一環として、核融合炉の再設置と資金援助も行います」
「核融合炉を! では、あなたに協力して貰えると言うのですね」
「日本で一定の勢力を持つ組織を造る為には、必要な事でしょう」
「ならば、さっきは何故あのような事を言ったのですか? 副総理に協力する事を伝えれば、事はスムーズに進みますが?」
「……今の日本政府は五年前と同じ体制ですよね。本音を言わせて貰えば、ボクは今の日本政府を信用する気にはなれません。
特に今の政権中枢部は民族派は少数派で、親中国派と親朝鮮派が多数を占めていますよね。
先ほど言ったように、自国の利益を追求せずに他国に有利なように動く今の政府では、何時裏切られるか分かりませんからね」
「では、どうするのですか?」
「だから、我が国の応対窓口をあなたにして貰います。本国に連絡して網を張って待っていた甲斐がありましたよ」
「網ですって!?」
「そうです。本国での会談が成功しなければ、この大使館に特使が来る事になると思っていましたしね。
音声変換装置も前もって準備していました。正直、あなたが来てくれてほっとしていますよ」
「北欧連合での交渉の失敗も、あなたの指示だったのですね!
今までの事は、全てあなたの手のひらの上の事だったと言うのですか!?」
冬宮の声が一オクターブ高くなった。北欧連合での交渉の失敗も、この少年の指示と知って唖然とした。
ましてや、特使が大使館に来る事を予測していたとは思わなかった。冬宮の少年を見る目の色が変わった。
「手のひらの上とは言い過ぎです。先ほど言った通り、本国での日本の評価は最低レベルと言って良い。
実際に日本に恨みを抱いている人間も多いのですよ。その本国の意向は無視出来ません。
ですが、サードインパクトを防ぐ為には、日本に足場を作る必要がある。
技術を安売りせず、高く売りつける努力をしたと思って欲しいですね。もっとも交渉出来る人材が派遣されてくるまで、
かなりの時間がかかると思っていました。あなたが初回から来てくれて助かりましたよ」
「何という事だ……」
「そうそう。あなたが意識を失っている時に、防諜対策を取らさせて貰いました。ボクが居るところでは機密に関する事は
話せますが、ボクが居ないところでは、あなたは機密に関する事は話す事は出来ません。
嘘と思うなら、帰ってから試してみても結構ですよ」
「そ、そんな事が出来るのですか!?」
「先程の予知の能力と合わせて、我々はこういう能力を持っていると言う事です。
最後の質問です。サードインパクトを防ぐ為に、我々に協力してくれますか?
協力してくれるのなら、あなたを窓口にした核融合炉設置の協力を行います。
皇族のあなたなら、政治的・経済的な影響力も大きいでしょう。ボクとしても願っても無い人材だと思います。
ですが、どうしても我々への協力が嫌なら、今までの記憶を消して帰って頂きます。判断はお任せしますよ」
少年は冬宮が協力を断る事は無いと考えていた。だが、今後の事を考えると強制するのは禍根を残す事になる。
あくまで冬宮が自主的に協力するように仕向けていた。まあ冬宮が断れないように話を持って行った手腕は褒められるべきか?
冬宮は脱力感に捕らわれていた。勝てない。この少年には、どうやっても勝てないと内心で気がついてしまった。
だが、少年の提案する内容は、冬宮にとっても日本にとっても有益な内容だ。
さらにはサードインパクトを防ぐ為の協力と言われれば、無視も出来ない。断る理由はどこにも無かった。
強いて言えば、冬宮の意見や主張がまったく通用せずに、少年の手のひらの上で動かされているというのが引っ掛かるくらいだ。
だが、自分のプライドなど、日本の将来との引き換えに出来るものでは無いと冬宮は決意した。
「分かりました。喜んで協力させて頂きます」
ゼーレやネルフに対抗する為に、少年の所属する組織は体制つくりや準備を行っている。
いくつかの計画があり、そのうちのひとつのプラン『F』を実行するには、舞台となる第三新東京にある程度の勢力を
準備する必要性があった。いや、第三新東京のみならず、日本全体に影響力の行使が出来る組織が望まれている。
今回の日本からの核融合炉の技術供与協定の要望は、北欧連合にとって渡りに船だった。
そしてこの機会を逃さないように、計画が立案され実行された。
正直言って、冬宮ほどの人材が派遣されてくるとは予想外の事だった。北欧連合にとっては嬉しい誤算だ。
そして、これを機に北欧連合は日本での足場を着々と固めていくのであった。
To be continued...
(2010.01.23 初版)
(2011.02.26 改訂一版)
(2012.07.08 改訂二版)
(あとがき)
書いてしまいました。(汗) これはあくまでフィクションです。
この外伝に関しての苦情は、御遠慮願います。
作者(えっくん様)へのご意見、ご感想は、まで