リターンズ

第十四話

presented by ハンドメイド様


※第3東京市郊外にある訓練学校※

訓練学校の講堂には、訓練生の制服を着た子供たちが、てんでバラバラに雑談している。
その中に混ざるように、ネルフ制服を着た一団がいる。
顔ぶれを見ると、赤服の牛こと作戦部長の葛城ミサト、その部下の日向マコト。
司令部からお目付け役なのか副指令まで来ており、あとはボディガードの黒服たち。

指定された時間が迫ってくると、何時の間にやら雑談していたグループが2つに分かれている。
ひとつは、正面に対して長方形になるように整列を行なっているグループ。
もうひとつは、確かに並んではいるが、雑談し続けるグループになっている。

「 これは意識の違いだろうな 」
「 何がです? 副指令? 」
「 日向くんなら判るだろう。 あの子供たちのグループが。 」
「 まあ、そうですね。 キチンとしているのは碇学園の子供たちですね。 もともと親たちの職業柄なんでしょう。 」
「 そうだな 」

結局、あの会議室での終わりは無く、子供たちが連れ去られた事を親たちが聞きつけ、怒鳴り込んできたので終わった。
普通にネルフ職員の親たちだったら、司令部からの命令で黙るが、国連軍や財団側は停まらない。
もともと命令系統が違うので、命令を受け付けない。
親によっては哨戒任務中だったのもいた為に、搭乗機のままネルフのゲート前へとやってきた。
車や人だったら、ゲート前の警備員たちで対応できるが、戦車などの重火器付きで来られては、もう、お手上げ。

事態の収拾がつくまでは、ゲート前に戦車を含む戦闘車両の列ができるわ、空には航空機が飛び回るわで、大騒ぎになっていた。
とうとう第2東京市にある本部からの命令により、強制的に解散はしたのだが、3つの上層部での協議。
子供たちは監視を付けられ、宿泊施設に逗留。
親たちが一応、譲歩しあう条件へと落ち着き、全員が訓練生となることになった。

まあ、問題を引き起こしたネルフ関係者には、均等に減俸処分。
作戦部長である葛城ミサトは、今まで溜まりまくった降格処分もあり、大尉から軍曹に急降下。
一応、軍側で定めた訓練生の訓練期間が終了するまでは、訓練教官の末席に収まりネルフ側との連絡役も行なう。
この処置については、ネルフ側の文句が付いた。

非常事態宣言が発令された時は、どうするのか? …という内容である。
また上層部で協議して、使徒による非常事態宣言が発令されれば、大尉待遇となり作戦部長に戻る内容へと変更された。

そんなこんなで定刻となり、訓練学校としての式が始まった。
式としては簡略的なこともあり、すぐに教官紹介となった。

子供たちの前に並んだ教官たちの末席には葛城ミサトが立っている。
葛城ミサトが立っている位置とは反対の側には、赤木リツコが立っている。
まあ、いっしょに並んでいるのは気にしていないが服装に気付いて単細胞は噛み付く。

「 リツコ! なんで国連軍の制服なの? 」
「 まぁた書類読んでいないのね。 ネルフの技術部って、どこに異動したのか覚えていないの? 」

覚えていないのか、見ていないのか、首を傾げて悩んでいるネルフ作戦部長。
その様子を見て、血圧があがり、コメカミを押さえるネルフ副司令。
副司令の影では、頭を抱える作戦部オペレーターがいる。
子供たちの正面に並んでいる教官たちは理由を知っており声が出ないように我慢していた。

「 判っていないのは、子供たちを外したら、あなただけよ。 ミサト! 」
「 なんでよぉ 異動先って国連軍。 それとも戦自。 」
「 まあ、カスッているけど、国連宙軍に異動しているわ。 」
「 なあんだ〜 ネルフからの異動だから同級でしょ。 」
「 そっちは大ハズレ♪ 階級章見て判らないの? 」
( ゲッ 少佐の階級章じゃないの・・・ )

リツコの階級章を見て、呆然としている状態のまま、教官の挨拶が進む。
ミサトとリツコの問答は、教官たちの裏側でやっていたので、教官たちの紹介には影響が無かった。
その教官たちの紹介が進んでいる最中に、ケンスケは周辺を見回している。

「 相田訓練生! なにをしているか!! 」
「 ( うわっ 失敗した ) はい! すみません! 」
「 まあ初回だから、見逃してやるが、本当なら腕立て100回は覚悟しておくように! 」
「 はい! すみません!! 」 (視線がウロウロ)
「 ん! 何かあるのか? 」
「 はい・・・ 見知ったクラスメイトが居ないんですが? 」

ケンスケが気付くぐらいなので、他の面々も気にしていた。
あの会議室内にはいたのに、この講堂にはいない顔。
財団上層部の関係者であるシンジとレイは除外されるが、クラス委員長だった洞木ヒカリがいない。
教官の説明では、今期の練習生の中には入っていないと聞いた。
疑問に思いつつ、各小隊単位で部屋に戻り、明日からの訓練が、どうなのかと色々考える。


※数日後のPX※

テーブルのひとつを占領しているグループがいる。
よく見ると訓練生たちが疲れで伸びているみたいだった。
そのグループは、ミリタリーマニアが揃うケンスケグループと、体力馬鹿が揃ったトウジグループである。

訓練生たちは、4〜6名ぐらいで小隊になっている。
小隊単位としては人数が少なめになっているが、学力や特徴を分けてみると、この人数で収まった。
訓練生たちの日課は、午前が義務教育で、午後は訓練となっている。
夜は一応時間外という事もあり、自由になっている。

「 う〜 今日も疲れたのぉ〜 (ほんま…ほんま…)  」
「 トウジはいいよぉ〜 体力あるから… 基礎訓練だけでも疲れるぅ〜 」

担当教官が、あの単細胞なだけに、限度を知らない訓練を科してくる。
ほとんど鬱憤晴らしで訓練を強要している内容である。

そんなグループを押しのけるように、女の子グループが、食事のトレイを持ってやってきた。
こちらも元は同じクラスメートだったが、機器操作の能力があり、オペレーター訓練を受けているグループであった。

「 はい!はい!邪魔!邪魔! 」
「 ダレるんだった隅っこでやって! 」
「 そりゃないじゃろぉ わしらも飯の席取りでおるんじゃし 」
「 それでも邪魔! 」

そう言ってる最中に食事が載っているトレイを持ってきた男女混成がやってきた。
男子のグループは、2つのトレイを持ってきているので、ケンスケやトウジたちのグループ。
各自の席を決めると、食事が始まる。
自宅とは違って摂取量が決まっているので、すぐに済む。
あとは片付けて、御喋りタイム。

「 結局、各小隊に行って見たけど、委員長・・・ おらんかった。 」
「 そうだよなぁ 」
「 そうよねぇ〜 あの時のメンバー全員が訓練生になっているから、いるハズだけど。 」
「 なのに見付かんないだよねぇ〜 委員長 」

「 私が、どうしたって? 」

話題になってる人物が後ろに立っていた。
みんなと同じように上着を脱いでタンクトップになっており、左手には上着と書類ケース、右手にはコーヒーを持って立っていた。

「「「 委員長!! 」」」

「 どうしたの? 」
「 どうしたじゃないわよ 」
「 はい、はい。 言いたいことは判るから。 」

持っていたコーヒーを置いて、空いている席へと着く。
席に着いたヒカリの周りには、見知った面々が集まる。

「 委員長♪ どこ行っていたの? 」
「 どの小隊におるの? 」
「 今まで、ど〜したの? 」

今まで行方不明になっていたので、質問はいろいろ。
性格的なのか、1つ1つ丁寧に答えている。

もともと軍属として訓練を受けていたこと。
あの事件のあと、正式に所属が決まり異動したこと。
同じ訓練校内に部屋があるので、休憩でコッチへと来たこと。
話しのタネは尽きない。

しかし、この1名に対して不満というか何を考えているのか判らないのが約1名。
毎日、慣れない教官をして、不平不満を溜め込んでいたネルフ作戦部長である。
ちょうど、夜ゴハンを食べにPXへと来たのだが、自分をコッチへと移動させた原因たちが楽しく会話している。
その中に、今まで行方が判らなかった女生徒がいた。
もともと直情型の自己中、イッキに意味不明の言葉を喚き散らして突進。
固まりになっていた子供たちを掻き分け、目標に対して殴ろうとしたが…。

殴ろうとした姿勢のままで、停まってしまった。
押し退けられた面々も、その様子を見て、同じように様子見している。
その注目を浴びている中心には、ヒカリの胸倉を掴み、殴ろうとしているミサト。
その周りには、和気藹々と会話していたグループ。

「 み…な…さん… なんで、銃口がコッチを向いているのでしょうか… (大汗) 」

猛獣に対しての銃 … よく効いたのか、暴行魔となった単細胞馬鹿でも停まった。
停止したミサトの前方にはMPの腕章を付けた兵士から、小銃を向けられている。
ぐる〜っと見回すと、同じPX内にいるアチコチから銃口を向けられている。
よくよく見ると、PXのカウンターには、機関銃が据えられており、銃口はミサトを狙っている。

「 ミサト ( はぁ〜 ) よくもまあ 殴らなかったわね 」
( 殴っていたら 面倒がなくなって ラクできたんだけど )
「 リィ〜ツゥ〜コォ〜 」

まわりから向けられるプレッシャーなのか、もう涙目になっている。
いつの間にやら、掴んでいたヒカリは避難しており、制服を直していた。


※訓練学校内のPX※

PXの奥には壁を利用したスクリーンがあり、その傍にはリツコが立っている。
そして、スクリーン前には先程まで騒動を見守っていた面々がいる。
もちろん、そのグループの脇にはミサトがいるが、なぜかミノムシ。

暴走を恐れたMPが後ろ手に手錠をした状態からロープで、ぐるぐる巻き。
立っていても邪魔なので、リツコが転がして放置したのだ。

今回の騒動で、他の教官たちも集合。
騒動の基になったヒカリについては、書類が教官たちに配布されていたのだが…

書類嫌いのミサトは、当然のごとく読んでいない。
ネルフにいる時は、作戦部オペレータであるマコトが読んでフォローしていた。
しかし訓練校では、フォローする人がいないので、読んでいない。

ネルフ作戦部長の問題情報を知っていた教官がメインとなって色々な質問をすると、とんでもない返事が返ってくる。
まだ訓練を始めて、少ししか経過していないが、教官ごとに割り当てられた各小隊の能力が違っている。
普通なら、個性が出た程度で終わるのだが、小隊能力自体に差が出ている。
教官長の指示により、PXへと訓練生を集めさせ、臨時の講習を行うことにした。

教官長から、これからの講習の目的を話し、説明役はリツコが行う事になった。

「 まだ何日も経過していないのに各小隊で能力格差が出ています。 」
( そんなの当たり前じゃない。 個性があるでしょ!個性が )
「 私も感じていたのですが、現時点では個性による違いは出ますが… 」
( やっぱり、リツコは判っているんじゃない。 あのボケ教官とは違うわぁ )
「 …基礎能力の格差が出るのは可笑しいです。特に基礎知識の面で… 」
( んんん? 基礎知識ってのは学校で教えているんでしょ? )
「 …訓練生になった時の予備知識に関する面が各小隊によって格差があります。 」
( ん〜っと 一応、教えたから、覚えているでしょう。 私の担当小隊は。 )

スクリーン前で、各小隊が教えられる基礎内容を確認する為に、リツコが復習させる。
もともと応募段階で説明をしなければならない項目があり、その部分を暴走牛により省略。
そのため、各小隊に別けられた時に、担当教官が説明を行うようになっている。

段階別にしてみると、基礎不足がハッキリと判る。
応募から適応試験前の段階で、ミサトが省略した部分。
特に、適正に関する部分はミサトが書類を読まずに説明しているので、勝手解釈もあり虫食い状態。

「 ほへぇ〜 神経接続って、なんじゃろ? 」
「 レバーなどの操作じゃないって情報掴んでいたけど、本当だったんだぁ〜。 」
「 言えば聞くんじゃろうか? 」
「 なに言ってんだよ。 頭で考えれば、操作できるって事だよ。 」
「 ほぉ〜 そうなんか 」

「 あんたら知らなかったの! 」
「 おぉ 初めて聞いたわ 」
「 訓練生になった最初の講義で聞いたわ 」
「 それ 無かった ( すごすぎるぅ〜 ) 」

「 聞いてない… って事は欠点も知らないの? 」
「 欠点なんてあるのか? 」
「 ありまくりよ 決戦兵器って言っているけど、説明聞いたら、欠陥兵器に思ったわ。 」
「 なんで? 」

説明を聞いてみて、格差が出ている小隊は、ミサトが担当している小隊のみ。
虫食いだらけの知識で講義しているので、教えられる訓練生たちは、虫食い状態のまま覚える。
上層部から教本として教えられる内容を覚えている小隊の子たちが、覚えている内容を教える。

神経接続って簡単に説明されているけど、問題になる箇所は色々ある。
頭でイメージするが、実際に身体で覚えてできる内容しか操作できないこと。
シンクロ値が基準になっているが、精神的に鍛えないと、なかなか数値がでないこと。
最大の欠陥は、ダメージを受けると、その感覚が操縦者に伝わること。
その欠点について理解した面々は驚く。

「 ダメージを受けると、感覚で返ってくる。 」
「 そう 」
「 痛みとかも 」
「 そういうこと 」
「 シンクロ値が高いほど、伝わりやすくなるから… 」
「 (真っ青) メインパイロットは 」
「 現実の感覚で操縦している事になるわ 」

教えられていない小隊員たちは説明を聞いて真っ青。
もちろん、教える立場のミサトも、、教えられていなかった事で憤慨している。
( 渡された書類には書いてあったけど、読んでいないから…ねぇ )

訓練生たちが持つ階級は、特務階級であること。
これは非常事態宣言が発令されている期間しか有効でないこと。
追加としてネルフ施設内しか適用されないこと。
普通にある特務とは違っており、目をキラキラさせたケンスケ小隊は聞き惚れていた。
少し知恵を付けたトウジ小隊は適用されない範囲について他小隊と意見交換している。

「 やっと気付いたのね。 」
「 うちの教官が街でやっていた事なんかは? (汗) 」
「 もちろん 特務の範囲外 」
「 立派な問題行為だった訳かぁ 」
「 そういう事 だから階級が違うでしょ 」
「 最初に聞いた時は一尉って知っていたけど、今は軍曹じゃし… 」

「 あれ…知らなかったの? あの教官、軍では少尉だったのよ。 」
「 ネルフじゃ大尉って聞いたぞ 」
「 また混同しているわ。 軍では学校出たてなので少尉。 ネルフでは特務大尉って訳。 」
「 ネルフの中と外で階級が違うのか ( 難しいのぉ ) 」
「 混乱しやすいけどね。 通常は少尉で、宣言の間だけが大尉って事よ。 まあネルフ内では大尉だけどね。 」
「 じゃあ 今の階級は? 」
「 問題を起こして降格処分で軍曹。 宣言があったらネルフ内のみ特務大尉。 だったわよ♪ 」
「 ほうかぁ ( 難しいこっちゃ ) 」

説明をする時点までの色々な項目を復習させてから、各小隊を解散させた。
ただし、ミサトが監督する小隊だけは残して。

「 さてミサト、何か言うことある? 」
「 なんで教えてくれなかったのぉ〜 」
「 教えているわよ! 書類でね。 」
「 そんなの回っていた? (汗) 」
「 あなたがネルフに来てからの書類を読み直して見なさい。 」
「 何年分もあるし〜 古いのはないでしょう (てへっ) 」
「 ちゃんとマギが記憶しているわ。 」
「 手伝ってくれない ( お願い ) 」
「 あなたのパスで見れるから、自分でしなさい。 」
「 判ったわよぉ ( 眼鏡君に手伝って貰おうっと ) 」

ミサトの所から離れるときに言い残した言葉を真っ青な顔で反芻しているミノムシ。
その内容はミサト自身が着席した端末でパスを使わないと読めないようになっている事である。
要点だけを眼鏡に頼もうと思い付いたが、パスが無いとネルフ内は自由に動けない。
ミサトの執務机に眼鏡を着席させパスを利用するのだが、パスが無いと部屋の扉も開かない。
つまりは自分でやらないと読めないようになっていた。

ミサト監督の小隊員たちは教官長から不足知識に関するレポート提出課題を追加されて部屋にいる。
ミノムシになったミサトは、訓練学校の外壁に吊るされて放置状態。


※ミノムシ放置事件※

各教官たちも罰則として晒し者にしたのだが、誰も期間を決めていなかった為、長時間、放置された。
危険状態になっているのを発見し、医務室へと放り込んだ。
今まで色々な経験をした教官たちが考えた入院期間は1〜2週間。
しかし、頭のネジが何本か抜けているミサトらしく、1週間もたたない内に退院してきた。
(本人曰く、エビチュが飲めないから…らしい)


※さらに2週間経過

退院しても技術部主管からの通達で、執務室缶詰で書類の再確認(の刑罰)。
一応、全部見終わるまでは出て来れない(らしいが…覚える訳ないよなぁ)
そんなこんなで終了し、報告した所で、(友達なのか)リツコからの伝言を聞いてハンガーへとやってきた。

ハンガーに到着して中にいる親友へと声を掛けるが気付いていない。
それもそのはず、ハンガーと言っても、馬鹿広い。
このハンガーは両方向にある大扉を開放しているので、倉庫というより、屋根があるだけの状態。
さらに直線でも100m以上あるので、出入口で叫んでも聞こえるとは思えない。

聞いてないと判ると、ドンドンと歩いて行くが、途中で横風に流されてしまった。
流されていく時に目に付いた固定物に捕まり、流される方向を見ると、そこには飛行機の吸気口。
そこに吸い込まれては、いくら頑丈が取り得の牛でも必死になるだろう。
叫び声も挙げているみたいだが、まわりの人たちは気付いていない。

まあ人の気まぐれ、操縦席に居る作業員が気付いてくれたのは感謝するしかないだろう。
調整を済ませたのか、吸い込まれそうになる風も収まり、静かな状態に戻る。
ハンガー内は、いつも通り。
引き込まれそうになったミサトだけが、息も絶え絶えになって大汗をかいていた。

「 あら、ミサト。 面白い遊び、やってたわね。 」
「 ( こんのぉオバンがぁ ) 誰が好きでやってないわよ 」
「 だって出入口に書いてあるでしょ。 」
「 未許可出入禁止だけだったわよ 」
「 ミサトが入ること 誰が許可したの? 」
「 あんたが呼んだんでしょうが〜ぁ〜 」
「 出入口の歩哨に用件を告げて来たの? 」
( ??? んなの、いたっけ ??? )

しっかりと歩哨はいたのだが、ミサトはズンズンと入っていた為、気付いていない。
歩哨の方は、あの暴走牛と知っていたので、何も言わずに放置したらしい。
こんな事が前にもあり、質問したら拳骨が返ってきて伸された為、知らん振りを決め込んだ。

「 書類は読み終えたのね。 」
「 まあね。本気を出せば、こんなモンよ。 」
「 だったら 今日の予定にある準備は終っているのね。 」
「 準備ぃ〜って、また訓練でしょ。 あの坊主たちの。 (楽勝〜楽勝〜) 」
「 また読んでいないのね。 ( はぁ〜 ) 机上に置いていたのよ。 今日の朝。 」
「 ( ゲッ まじゅい〜ぃ ) あぁ アレね。 なんだっけ アハハハ 」
「 まあ荷物などの準備があるから部屋に戻るでしょうから、そこで読みなさい。 」
「 教えてくれたって 」
「 書類を読んだら判るわ。 それと各小隊には通達済みだから、そろそろ集合で集まり始めているわ。 」

リツコの視線の先には、荷物を担いだ訓練生たちが集まり始めている。
勿論、教官たちもチラホラと姿を見せており、ミサトは急いで自分の部屋へと駆け出した。

「 ( はぁ〜 ) ちゃんと読んでれば良かったんだけどねぇ。 」
「 無理でしょうね。 」
「 確実に読んでいない。 」
「 端末の書類も流し読み…みたい。 ( 端末の記録を読みながら ) 」
「 ( 後が面白いし ) そういえばヒカリちゃんの機体って調整終ったの? 」
「 えぇ 一応、終っています。 」
「 もう少し、スロットルあけて、吸い込んだら、面倒なかったのに。 ( 惜しい ) 」
「 過激な発言ねぇ、 レイは… 」
「 一部分しか注意していなかったから、僕達のことなんで気付いていなかったし… 」

ミサトが走り去ったハンガー内には、作業員たちを外すと、4人いた。
作業員たちを指示するリツコと、それぞれの機体を確認していたシンジ・レイ・ヒカリの3人。
作業に熱中していた為、発見が遅れたが、ミサトを吸い込みかけた機体の操縦席にはヒカリが座っていた。
ミサトが読んでいる(はずの)書類には、今日の予定で使用する機体と操縦者の名前が記載されている。
ちゃんと読んでいれば気付くのだが…。

「 ミサトは知らないでしょうねぇ。 そろそろなんだけど。 ( うふ 楽しみ ) 」
「 そういえば、そろそろ(?)なの、シンジ君。 」
「 記憶通りなら、1週間以内だろうねぇ。 」
「 どうするのかしら、あの地下にいる人たちは? 」
「 作戦部長がコッチの予定をネルフに連絡する事になっていたけど、あの様子じゃあ。 」
「 間違いなく! していないわね。 ( 確信 ) 」
「 どこに行ったのか探すことになるだろう…ね。 」

「 それも楽しみなんだけど、シャトルの重力調整。 どうしようか? ( ミサトだけ切っておこうかしら ) 」
「 はい♪ ミサトさんだけOFF。 」
「 それも面白いけど。 みんな一律で調整しといて。 まあ、ある所は、リツコさんに御任せします。 」

リツコはスキップしながら、シャトル内部へと消えて行く。
あとに残ったレイは、自分の機体へと向かう。
シンジは、ヒカリの調整具合を確認するために、ヒカリといっしょに機体へと向かう。




To be continued...
(2009.09.05 初版)


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