幽☆遊☆世紀 エヴァンゲリオンYu☆Yu☆ GENESIS EVANGELION

第壱話

presented by かのもの様


「少し、早く着きすぎたな。」

待ち合わせ場所に着いた蔵馬は壁にもたれながら、こちらに来る前のことを思い出していた。

☆    ☆

「碇。学校を辞めるのか。}

クラスメートの海藤ユウが蔵馬に問いかける。

「みたいだな。はた迷惑なことに父さんが勝手に転校手続きを取ってしまったらしい。」

「お前に実力で試験の成績で勝てなかったのが、悔しいよ。」

「勝ってるじゃないか。」

一度、海藤は学年トップになっている。

「あの時は、浦飯君と飛影君との戦いの為だろう。俺の実力じゃないさ。」

「プライベートの事だ。理由にならないさ。」

「碇、元気でな。」

「まあ、向こうが気に入らなかったらこっちに復学するさ。」

二人は握手を交わした。

☆  ☆  ☆

「なんですかこの写真は。不真面目ですね。」

雪村ケイコが葛城ミサトという人の写真を見て憤慨していた。

「馬鹿みてーな女だな。」

浦飯ユウスケも呆れている。

「この方は、どういう人なんでしょう。」

「こんな恥じらいのない女。雪菜さんと比べたら月と鼈。象と蟻。いや、恐竜とバクテリアですよ。」

雪菜は不思議そうに、桑原カズマは雪菜賛美の道具に使っていた。

「あたしと歳が近いけど、いい加減な奴みたいね。」

「お袋にいい加減と言われたらお終いだな。」

ユウスケの突っ込みに彼の母、アツコは拳骨を見舞う。

「それより、蔵馬君の父親の手紙。こちらもふざけているわね。」

桑原シズルは手紙の文面の方が気に入らないようだ。

「おい、蔵馬。何なんだよお前の父親は。」

カズマも、憤っていた。

「ユウスケには言ったことがありますが、俺は母には愛情と感謝があります。しかし、父には特に何の感慨も沸きません。時折、父の手のものが俺を監視していましたので、そいつらの記憶を操作して、平凡で内向的な性格と思い込ませていますけどね。」

「けっ。蔵馬の父親もどーしょーもねぇな。」

ユウスケが顔を顰める。彼は魔族としての父、雷禅にはそれなりに敬意を持っているが、人間としての父親には愛情のかけらも持ち合わせていない。

「平凡って。進学校の盟王高校で学年トップの蔵馬君が、平凡とは思えないと感じないのかしら。」

「成績が良くても、父親に捨てられ、友達も少ない暗い感じの少年。そんな風ですね。」

ケイコの疑問に蔵馬が答える。

「まあよ。これが根性の別れじゃねえからよ。元気でやれよ。」

「ありがとう、ユウスケ。ちなみに『根性』じゃなく『今生』ですよ。」

「うっせ。」

場は笑いに包まれた。

☆    ☆

待ち合わせの時間は大幅に過ぎた。

《緊急警報。緊急警報をお知らせします。本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください。繰り返しお伝えします……………………。》

「ちっ。電話も通じない。こんな時に遅刻とは。父さんの関係者はいい加減だな。まあ、いい加減な奴には慣れているが。」

蔵馬は呟き何気なく周りを見ていると、ふと、少女の姿を見た。どこかの学校の制服を着ているアルビノっぽい少女。瞬きの一瞬で消えてしまった。

「なんだ、幻覚か。」

突然、すさまじい騒音が聞こえてきた。そちらの方に目を向けると戦闘ヘリと戦車に囲まれた奇妙な巨人を見た。

「何だあれは、妖怪か。いや、妖気を感じない。いったい奴は。」

巨人に目を向けていると、車が近付いてきた。

「お待たせシンジ君。こっちよ。早く乗って。」

写真の女性が現れ、蔵馬を車の助手席に乗せた。

戦闘ヘリと戦車は、次々と巨人に墜とされていた。

「ごめんね。遅れて。」

「いえ。」

挨拶を済ませミサトは車のスピードを上げた。

「国連軍の湾岸戦車隊も全滅したわ。軍のミサイルを何発撃ってもあいつにダメージを与えられない。」

「いったいなんですかあれは。」

「状況の割に落ち着いているのね。」

「慌ててなんとかなるのなら、いくらでも慌てますが。」

「…そうね。あれは、『使徒』よ。」

「もう一体出てきた。あれは……。」

反対側から紫色の巨人が出てきた。蔵馬の顔色が変わった。

(あれは、あの時母さんがいなくなった時の。)

「シンジ君。あれは味方よ。」

『使徒』と呼ばれる巨人と味方だという巨人の戦いは、味方の巨人が敗退し撤退という結末を迎えた。

☆  ☆  ☆
時系列は少し戻る。

「正体不明の物体。海面に姿を現しました。」

「物体を映像で確認。メインモニターに回します。」

手で口元を隠し肘を付いて座っているサングラスと髭の男とその後ろで立っている老紳士がモニターを見ながら、

「19年ぶりだな。」

「間違いない。『使徒』だ。」

待機していた戦闘ヘリ、戦車が砲撃する。しかし、『使徒』は小揺るぎもしない。

「やはり、『A・Tフィールド』か。」

「通常兵器では『使徒』には通じんよ。」

☆    ☆

「皆、巨人から離れていく。」

「顔を引っ込めて、ショックに備えて。」

巨人を起点に爆発が起こった。NN地雷が炸裂したのだ。

蔵馬とミサトを乗せた車は爆風で車体ごと転がっていった。

☆  ☆  ☆

「わはははははは。」

「見たかね碇君。これが我々のNN地雷の威力だよ。」

「これで君の新兵器の出番は、もう二度とないというわけだ。」

得意になる軍高官達。

「電波障害の為、目標確認まで今しばらくお願いします。」

「あの爆発だ。ケリがついてる。」

しばらくして。

「爆心地にエネルギー反応。」

「なんだと。」

「映像回復しました。」

「おお。」

映像には多少傷ついた程度の『使徒』が映っていた。

「我々の切り札が。」

「街を1つ犠牲にしたんだぞ。なんて奴だ。」

「化け物め。」

結果に絶望する軍高官達。テレフォンが鳴り、応対する。

「……はっ。わかっております。…はい。失礼します。」

髭の男、碇ゲンドウが席を立った。

「……碇君。本部からの通達だよ。今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを拝見させてもらう。」

その場にいたものは軍高官達に向き直った。

「我々国連軍の所有兵器が目標に対し無効であった事は認めよう。だが碇君。君なら勝てるのかね。」

「ご心配なく。そのための『NERV』です。」

☆    ☆ 

「特務機関NERV。」

「そう国連直属の非公開組織。私もそこに所属しているの、貴方のお父さんと同じよ。」

「それで、貴方は父の何なんですか。」

「気になる。」

少し、人の悪い顔をするミサト。

「父の再婚相手ですか。」

ずる。
ミサトが心底嫌そうな顔になる。

「なんで、そうなるの。」

「違うんですか。こんなふざけた写真を送ってくるものだから、てっきり色気をアピールして認めてもらおうとしているのかと思いました。」

と、送られてきたミサトの写真を見せる。

「ふざけたって。悩殺の写真じゃないの。」

「ですから、色気をアピールして、と言ったじゃないですか。ちなみにこの写真を見た友人すべて、心の底から呆れてました。」

「ぐっ。」

ミサトは調子が狂っていた。碇シンジについては、父親のゲンドウから何も聞かされていないので、自分で調べていたのだ。学校の成績はいいが、内向的な少年。というのが調査の結果だった。無理もない。父親に捨てられたも同然の少年なのだ。覇気のないというのも止むを得ないと。
しかし、実際に会ってみると目は強い光を発していて、接してみるととても内向的な少年には見えなかった。
ミサトは知らなかった。それが蔵馬によって偽られたデータだということを。

「ところで、葛城さん。」

「ミサトでいいわよ。」

「では、ミサトさん。父は何で俺を呼んだんですか。」

ミサトと再婚するわけではないのなら、何故。

「それは、お父さんに直接会って、聞いたほうがいいわね。」

「そうですか。そうします。」

(さっきのロボット。あれは間違いなく10年前のあれだ。俺から母さんを奪った。父さんは何故、まだ母さんを死に追いやったものに関わっているんだ。)

☆  ☆  ☆

「EVA初号機、回収完了。パイロットは重症。脾臓破裂の可能性があります。」

EVA初号機。それに乗っていたパイロットがストレッチャーに乗せられ運ばれていく。

「もう一度、初号機を起動させる。」

「だが、パイロットがいないぞ。」

「問題ない。たった今、予備が届いた。」

モニターにはミサトに連れられてきた、彼の息子が映っていた。

☆    ☆

「いつになったら、父のいる所に着くのですか。」

ギクッ。

「うるさいわね。貴方は黙って付いて来ればいいのよ。」

(迷ったな。)

蔵馬は呆れていた。ここの職員だろうに。
そのとき、二人が通り過ぎた扉が開いた。

「どこに行くの。二人とも。」

白衣を着た女性が二人に声をかけた。

「遅かったわね。葛城一尉。」

「あっ、リツコ。」

「あんまり、遅いんで迎えに来たわよ。」

「ごめ〜ん。迷っちゃったの。まだ不慣れでさ。」

ちらっ。
白衣の女性は、蔵馬を見た。

「彼ね。マルドゥック機関から選ばれた『三人目の適格者〈サードチルドレン〉』って」

「碇シンジです。(なんだ。『サードチルドレン』って。)」

「私は技術一課E計画担当博士、赤木リツコ。よろしく。リツコでいいわ。」

言葉は友好的だが、その目は見下しているように見えた。本人は気付かれていないと思っているが。

「いらっしゃい、シンジ君。お父さんに会わせる前に見せたいものがあるの。」

☆  ☆  ☆

「司令、使徒前進。強羅最終防衛線を突破。」

「進行ベクトル5度修正。なおも進行中。予測目的地 我が第3新東京市。」

「よし、総員第一種戦闘配置だ。」

「はっ。」

オペレーター達は、ゲンドウの命令に機敏に動く。

「冬月。後を頼む。」

「ああ。(久しぶりの息子との対面か。)」

☆     ☆

「これは、さっきのロボット。」

「厳密に言うと、ロボットじゃないわ。人の造り出した究極の汎用決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン。我々人類、最後の切り札。これはその初号………。」

リツコの説明は最後言葉にならなかった。蔵馬が鋭い目で初号機を睨んでいた。その眼光に傍目でも気おされてしまったのだ。

(何、この子。)

「これも、父の仕事ですか。」

「そうだ。」

初号機の上から声が発せられた。

「久しぶりだな。」

「父さん。」

父、碇ゲンドウと息子、碇シンジ。数年ぶりの再会であった。

「……出撃。」

ゲンドウの言葉にミサトが慌てた。

「出撃って。レイはもう無理でしょう。パイロットがいないわ。」

「さっき届いたわ。」

「マジなの。」

リツコが、蔵馬を促す。

「碇シンジ君。貴方がこれに乗るのよ。」

蔵馬は反応しない。

「待ってください。レイでさえEVAとシンクロするのに7ヶ月かかったんですよ。今日来たばかりのこの子にはとても無理です。」

「座っていればいい。それ以上は望まん。」

「しかし。」

「葛城一尉。今は使徒撃退が最優先事項よ。それとも他にいい方法でもあるというの。」

リツコの言葉にミサトが黙り込んだ。そして、それまで沈黙していた蔵馬が言葉を発す。

「父さん。何故、俺なんだ。」

「お前以外に乗れんからだ。お前が戦わなければ人類すべてが死滅する。お前の双肩に人類の存亡が懸かっているのだ。」

「嫌だ。と言えば。」

「そうか。お前など必要ない。臆病者に用はない。帰れ。」

ゲンドウは近くのモニターに話しかけた。

「冬月、レイを起こせ。」

「使えるのかね。」

「死んでいるわけではない。こっちに寄越せ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

しばらくして、ストレッチャーが運ばれてきた。そこには包帯だらけの少女が寝かされていた。

「レイ。予備が使えなくなった。もう一度だ。」

「………はい。」

無理をして立ち上がろうとするレイという少女。蔵馬はそんな少女を見つめていた。

(茶番だな。俺への当て付けか。)

こんな傷だらけの少女が戦えるわけがない。何もできずやられるだけだ。
そのとき、地響きがした。

「奴め。ここに気付いたか。」

ズ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!

天井都市が崩れてきた。

その時、巨大な手が蔵馬たちを護った。蔵馬も一瞬にして動き少女を庇った。

「貴方は。」

息も絶え絶えでレイが呟く。

「休んでいるといい。君が目を覚ましたときには終わっている。」

蔵馬は優しく微笑み彼女の口に薬草を含ませた。彼女はそのまま眠りに墜ちた。

「プラグを挿入していないのに。まさか、あの子を護った。初号機が。いける。」

リツコは確信をもったようた。

その間、蔵馬たちにミサトが近付いてきた。

「シンジ君。私達は貴方を必要としているわ。でも、EVAに乗らなければ貴方はここでは用のない人間なの。わかる。」

蔵馬は俯いたまま、聞いていた。

「貴方が乗らなければ傷ついたその娘がまた乗ることになるのよ。自分を情けないとは思わないの。」

「もういい、葛城一尉。放っておけ。……シンジ。帰るのならグズクズしてないで、さっさと帰れ。」

「……茶番は終わったか。」

顔を上げた蔵馬はその場にいる三人を見渡した。その目は鋭く三人を射抜いていた。

「「「うっ。」」」

「さっきから黙って聞いていれば、ここまで茶番を続けられるのもいい加減、うっとうしくなってきた。」

「茶番ですって。」

「こんな状態の少女が戦えると本気で思っているのなら、貴様らはただの誇大妄想家の集団だろう。俺への当て付けのためにこんな重症の少女を利用するとは。葛城さん、貴女たちの方がよっぽど情けないと思わないのか。」

ミサトが黙り込んだ。

「上から命令するばかりで、誰一人、俺に頼むことはしないのだな。」

「「えっ。」」

「俺は、乗らないとは一言も言っていない。『嫌だといえば』と聞いただけだ。なのに貴様らは乗れと命令するだけで、誰一人俺に乗ってくれと頼むものはいないのだな。高校生に頭を下げるのは屈辱か。人類の存亡より己のプライドを守る方が大事な貴様らに情けないと言われる筋合いはない。」

「「「…………。」」」

蔵馬の指摘に誰も反論できなかった。確かに蔵馬は乗らないとは言っていなかった。冷静に確認していただけだったのだ。
ゲンドウもリツコも蔵馬が乗らないと拒絶すると、最初から思っていたのだ。だから、シナリオどおりに進めていた。しかし、茶番だとはっきり見破られていたのだ。

「で、どうするんですか。赤木さん。」

「えっ。」

「頼む気にはなりましたか。」

「………ええ。お願いするわ。」

「了解。」

気を取り直したリツコが蔵馬を連れて行った。その時ゲンドウと目が合ったが睨みつけた蔵馬の視線に目をそらすゲンドウだった。

☆  ☆  ☆


「冷却終了。ケイジ内、すべてドッキング位置。」

「パイロット。エントリープラグ内コックピット位置に着きました。」

「了解。エントリープラグ挿入。」

「プラグ固定終了。第一次接続開始。」

EVAに乗り込んだ後、蔵馬はゲンドウのことを考えていた。一瞬見せたあのおびえた表情。

(人のことを、臆病者扱いするくせに、サングラス越しでしか俺の目を見れない。どっちが臆病者だ。)

「エントリープラグ注水。」

足元から水が湧き出てきた。さすがに蔵馬も少し驚いた。

「何です。この水は。」

「心配しないで、LCLというものよ。肺がLCLで満たされれば直接酸素を取り込んでくれます。」

「…………血の味がする。」

「我慢しなさい。直ぐ慣れるわ。」

ミサトの叱咤にさすがにむっとなる。

「では、貴女もこれが終わった後、俺と同じくらいの時間、このLCLの中に潜っていてください。」

「うっ。」

さすがに嫌だったのか、黙り込んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「主電源接続。全回路動力伝達。起動スタート。」

「A神経接続異常なし。初期コンタクト問題なし。」

「シンクロ率。えっ………そんな。」

オペレーター、伊吹マヤか驚愕した。

「シンクロ率、85.3%。」

「何ですって。」

マヤの報告にリツコも驚愕した。

「計測器は。何か異常を確認できる。」

「すべて正常です。」

「すごいわ。まさか、初シンクロで80%以上なんて、レイはおろか、ドイツにいるセカンドチルドレンのシンクロ率を上回るわね。」

「ハーモニクス、すべて正常。暴走ありません。」

「いける。」

☆    ☆

起動したとき、蔵馬は不思議なそれでいて懐かしい暖かさを感じていた。

(これは、まさか。母さん。)

蔵馬にとって、かけがえのない、もう二度と触れることのできないと思っていた母の温もりだった。
母の命を奪ったEVA。しかし、母、碇ユイの魂を今、はっきりと感じることができる。

(母さん。貴女は死んでいないのか。)

LCLに蔵馬の涙が溶けていった。初号機の中の魂も蔵馬の強い気配に目覚めたようだ。
すでにゲンドウたちの予想から大幅に外れている。本人達は気付いていないが。

(これが終わったら、霊界に確認をとるか。)

蔵馬は己の迂闊さを笑っていた。何故、母のことをコエンマに聞かなかったのかを。

☆  ☆  ☆

「発信準備。」

ミサトの号令が発令所にこだました。

「第一ロックボルト解除。」

「解除確認。アンビリカルブリッジ移動。」

「第一、第二、拘束具除去。」

「一番から十五番までの安全装置解除。」

「内部電源充電完了。外部電源コンセント異常なし。」

「EVA初号機射出口へ。」

「進路クリア。オールグリーン。発信準備完了。」

「了解。碇司令、かまいませんね。」

ミサトが確認をとる。

「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない。」

コク。

「発進。」

射出口から発進する初号機。直ぐ目の前に『使徒』の姿が見える。

「いいわね。シンジ君。」

「はい。」

「最終安全装置解除。エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ。」

安全装置が解除された。

「シンジ君。まずは歩くことだけを考えて。」

「考えれば、動けるということですか。」

歩くイメージを浮かべると、確かに歩いた。

(しかし、そういうことは発進準備中にレクチャーするべきだろ。)

どうも、このNERVという組織。戦闘のプロフェッショナルとは違うようだ。基本的に素人の集まり。蔵馬の第一印象はそんな感じだった。
そのとき、『使徒』からビームを撃たれた。

「ちぃっ。」

蔵馬はそれを避け、戦闘態勢に入った。思ったとおりに動くのなら、そのように動くまでだった。蔵馬はその適応力でほとんどコツを掴み、戦闘を開始した。高シンクロ率ゆえ、EVAの動きは滑らかだ。もっとも蔵馬にしてみれば、違和感ありまくりだが。

「すごいわね。初めての戦闘の動きじゃないわ。彼、戦いなれている。」

ミサトは驚嘆していた。

A・Tフィールドが、EVAの攻撃を防ぐ。ところがそれを初号機が中和した。初号機からA・Tフィールドが確認された。

「初号機から、A・Tフィールド確認。」

「なんですって。」

いまだ、原理のわからないA・Tフィールドを蔵馬が使用した。そのことに驚愕するリツコ。
蔵馬は、ユイの気配を感じながら戦っていた。適応力の高さで、完全にEVAを操っている。偶然発動したA・Tフィールドも直ぐに使いこなした。

「この赤い部分が弱点のようですね。赤木さん。これの武器は。」

「肩のウェポンラックにプログレッシブナイフがあるわ。」

「了解。」

力の発生源を感じ取った蔵馬。プログレッシブナイフを取り出した初号機は、あっさりと『使徒』のコアを貫いた。

「パターン青、消滅。使徒殲滅を確認。」

「初号機、パイロット共に異常なし。」

あまりにもあっさりとした戦闘に、発令所は静まり返っていた。

〈第壱話 了〉






To be continued...
(2009.04.18 初版)
(2009.11.28 改訂一版)


(あとがき)

 とりあえず第壱話終わり。蔵馬なら原作のシンジと違いサキエルくらいなら簡単に倒すだろうということで、自爆すらさせませんでした。
 まあ、「こんなのEVAじゃない」という意見は飲み込んで暖かく、私の駄文にお付き合いください。



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