第参話
presented by かのもの様
「碇シンジです。よろしくお願いします。」
第3新東京第壱高校三年A組に転校した蔵馬は自己紹介をしていた。
「「「キャーーーーーーーーーー。」」」
女子の黄色い悲鳴が聴こえた。
肩まで伸びた長髪。女性と見間違えるほどの美形。物腰の柔らかさ。まさしく絶世の美少年の蔵馬にクラスの女子はみんな注目した。
(かっこいい。これは久々の当たりよ。)
(素敵な笑顔。私だけに微笑んで。)
(絶対、彼と仲良くなって見せる。そしてあわよくば……。)
対して男子の反応は。
(なんでぇ。女みてーな顔しやがって。)
(けっ、男は顔じゃない。ハートだよ。)
(…俺はホモじゃない……俺はホモじゃない……俺はホモじゃない…。)
(男の写真なんてあんまり撮りたくないけど、こいつは売れるぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。)
と、やっかみだらけである。(約一部違うけど)
「碇君は前の学校では学年首席だった優秀な生徒です。君達も彼に刺激を受け、大いに勉学に励んでください。」
「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」」」
教師の説明にまたもため息がもれた。
(きゃっ。頭もいいんだ。勉強教えてもらって、そしてその後……うふふ。)
(顔が良くって、頭もいい。まさに天は二物をってカンジ。)
(ふん。男は頭じゃない。ハートだよ。)
(気にいらねえな。後で締めるか。)
そして、蔵馬の転校初日は幕を開けた。ちなみに、蔵馬を締めようとして男子学生はあっさり返り討ちを食らったそうである。
☆ ☆
「綾波、入るよ。」
今日は私の退院の日である。思ったより早い治りにドクター達も首を傾げていた。
「……碇君。」
碇君が来てくれた。でも……。
《……お前は人間ではない。その事をシンジが知れはお前から離れるだろう。》
あの人に言われた言葉。私の正体を知ったら碇君は私から離れてしまう。
「綾波、約束を交わそうか。」
「……約束……。」
「そう約束。綾波が拒絶しない限り、俺は君との絆を大切にする。という約束だ。」
……本当に私が望めば、碇君は私との絆を大切にしてくれるの……人間じゃない私の……。
碇君の目を見ていると暖かくなる。ああ、この人は本当に絆をくれる。
あの人は、私を見ながら他の人を見ている。碇君が指摘したことはわかっていた。でも、あの人は私を必要としてくれるから、他に頼れるものがなかった私はそれに縋るしかなかった。でも、碇君が新しい絆をくれる。……でも……。
「……どうして。」
私は不思議に思った。
「どうして、そんなことしてくれるの。」
会って間もないのに、どうして碇君は暖かいのだろう。私を気遣ってくれるのだろう。
「…理由などない。」
碇君は静かに答えてくれた。
「誰かと友達になることに、複雑な理由などいらない。君と仲良くしたいという俺の気持ちと、綾波の絆が欲しいという気持ち。これだけで充分なはずだ。」
……あの人が私に絆をくれるのは、あの人の目的に私が必要で、それに従わせる為……。
碇君は、私と仲良くしたいから。絆をくれる。
暖かい。
これが本当の人の絆。
「約束。」
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妖狐だった頃は、本当に打算と策謀に満ちた人生(狐生?妖生?)だった。心を許したのは二人だけだった。しかし今は、母さん、シオリさん、ユウスケ、桑原君、飛影、ゲンカイ師範、ぼたん、コエンマ、ケイコちゃん、アツコさん、シズルさん、雪菜ちゃん、海藤、城戸、柳沢、御手洗、鈴駒、酎、陣、凍矢、死々若丸、鈴木。それに綾波が加わる。
仲間、友、という存在がここまで俺を充実させる。
碇シンジとして生まれ変わって知った喜び。
綾波にも知ってほしい。
☆ ☆ ☆
翌日、レイは学校に登校してきた。
席は蔵馬の隣である。
「おはよう。」
蔵馬はレイに挨拶する。
「………おはよう。」
レイが返答する。このとき、クラスメイト達は唖然とした。
(綾波さんが……挨拶した。)
(俺達が挨拶しても無視されるのに。)
皆、蔵馬の元にきて、関係を聞いてくる。しかし、蔵馬は微笑んで何も言わなかった。ちなみにこの微笑で女子のハートを鷲掴みした。
☆ ☆
「目標をセンターに入れてスイッチ。」
レイの退院後、蔵馬はエヴァの訓練に参加していた。シンクロテストはシンクロ率88.9%を記録していた。その後インダクション・モードによる訓練を行っていた。
「でもシンジ君、よく乗ってくれましたね。」
伊吹マヤは少し意外だったようだ。
「そうね。でも、会ってみてわかったけど彼は底が知れないわ。こちらで把握していた彼に関するデータは諜報部の怠慢だったようよ。」
「諜報部の怠慢。」
ミサトが聞き返した。
「ええ、戦闘後、いままでシンジ君を担当していた諜報員達とは違う人達にシンジ君の調査をさせたの。そしたら、まったく違う人物像が出て来たわ。」
成績は学年トップ。これは知っていたことだが、確かにあまりクラスメイトと馴れ合わなかったが世の中を悲観している風には見えなかった。碇シンジが姉のように慕った畑中(旧姓南野)シオリの夫によれば、
『人当たりがよく自分というものをしっかりと持っている優しく強い少年という印象を受ける。』
皿屋敷中学の卒業生で不良で名を知られる少年に勉強を教え、彼には難関だった骸工大付属に補欠とはいえ合格に導くほどに面倒見もいいとのこと。皿屋敷中学の竹中教諭の話では、
『碇君がいなければ桑原はあの骸工大付属には合格できなかった。彼には教師として感謝している。』
とのこと。
「件の諜報員達は必死に自分はちゃんと調査したと言っていたけど、ここまで違うとなると彼等がサボっていたとしか考えられない。懲戒免職になったそうよ。」
「やっぱり、実際に会って話をしないとわからないものね。」
この諜報員達は蔵馬によって記憶操作されていたのだが、蔵馬の知ったことではない。蔵馬は自分に有害なものには非情なのであった。
……哀れ。
☆ ☆
第3使徒襲来より三週間後。
授業中。何時の間にか、教師の話はセカンド・インパクトの話になっていた。
「20世紀最後の年、巨大隕石が南極に衝突したのは皆さんもご存知だと思いますが………。」
クラスの皆は教師の話を聞き流していた。
蔵馬は今後の行動予定を考えていた、その時、端末にメッセージが届いた。
【碇君があのロボットのパイロットってホント? Y/N】
蔵馬はため息をつき、
【N】
と、返信する。
【嘘でしょう。碇君がパイロットだって話だもん】
【そう思うのなら、聞いて来ないでください】
授業終了。
「ねぇ、碇君。君があのロボットのパイロットなんでしょ。」
「クラスメイトの俺達には知る権利があると思うぜ。」
口々に蔵馬に語りかける。
「はいはい。そうですよ。俺があのロボットのパイロットですよ。」
蔵馬も仕方なく、白状した。
クラスは騒然となった。口々に蔵馬に質問を浴びせる。そのとき、ジャージ姿のクラスメイト、鈴原トウジが蔵馬に近付き、
「転校生、話がある。屋上まで来い。」
蔵馬を睨みつけ、眼鏡をかけた友人、相田ケンスケと一緒に教室を出た。蔵馬も少し興味を持った為。後に続いた。
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屋上に到着早々、蔵馬にトウジが殴りかかってきた……が、蔵馬はあっさりとかわした。まさか、避けられるとは思わなかったのだろう。一瞬、呆気に取られた顔をしたが、二撃、三撃と続いて拳を放つ。しかし、どれも当たらない。
「いきなり、何をする。」
「ワシは、お前を殴らんとあかんのや。」
そう答え、次々と拳を繰り出すがやはりすべてかわされた。
「前の騒ぎでこいつの妹さんが怪我しちゃてさ。ま、そういうことだから。」
ケンスケが説明した。
(そういうことか。)
蔵馬はかわすのを止め、トウジのパンチをうけた。霊撃力のこもらないパンチなど蔵馬にとって、多少痛いというだけである。
パンチが当たったのでトウジは殴りかかるのを止めた。
「今度戦うときゃ、足元よお見てから戦えや。」
そのときレイがその場に現れた。
「碇君。非常召集。」
「ああ。」
蔵馬は何事も無いかのようにレイとその場を後にした。
「……なんか転校生、トウジのこと相手にしてない風だな。」
「うるさいわ。」
その時、サイレンが鳴り響いた。
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「なぜ、彼は貴方を殴ったの。」
「ああ。彼の妹が前の戦闘のときに怪我をしたらしい。そして、それはパイロットである俺の責任……ということで殴ってきたのさ。」
「貴方は、何も悪くないわ。」
戦闘記録を見ていたレイは、何故そんな結論になるのか不思議だった。
「あれは、八つ当たりさ。大切な家族が痛い目に遭った。それが悔しくてな。」
蔵馬にも経験がある。
母が初号機に取り込まれたとき、たまたま襲い掛かってきた妖怪をいつも以上に叩きのめし、シオリが病魔に侵されたとき、そこらの妖怪を八つ当たり気味に襲撃した。だからトウジの気持ちも理解し、一発殴られてやったのだ。
しかし、レイにはよく理解できなかった。
「まっ、人の心とはそういうものさ。」
蔵馬はレイの頭を撫でた。レイは心地よさそうに目を細めていた。
☆ ☆ ☆
「目標を光学で捕捉。領海内に進入しました。」
「総員第一種戦闘配置。」
「第3新東京市、戦闘形態に移行します。」
「兵装ビル、対空迎撃システム稼働率48%。」
戦闘準備が着々と進められる。
「……それにしても碇司令の留守中に第四の使徒襲来か。思ったより早かったわね。」
「前は15年のブランク。今回はたったの三週間ですからね。」
「こっちの都合はお構いなしってことね。女性に嫌われるタイプだわ。」
そのとき、レイが発令所に入室してきた。
「あら、レイ。どうしたの。」
レイは答えず、ただスクリーンを見つめていた。そんなレイの態度にも慣れている為、ミサトも気にせず自分もスクリーンに視線を戻す。
「税金の無駄遣いだな……。」
ゲンドウ不在のときの責任者、副司令の冬月は効果をみせない通常兵器による攻撃に呆れていた。
「葛城一尉。委員会からエヴァンゲリオンの出動要請が来ています。」
「煩い奴らね。言われなくても出撃させるわよ。」
☆ ☆ ☆
第334地下避難所。
ここに、新東京第壱高校の生徒達が避難していた。
「ちっ、まただよ。」
「なにがや。」
ケンスケの呟きにトウジか応えた。
「また文字ばっかし、僕ら民間人には何も見せてくれないんだ。こんな、ビッグイベントだって言うのに〜〜。」
そして、ケンスケはトウジに外に出るよう誘った。拒むトウジを蔵馬を殴ったことを引き合いだし説得する。
「トウジだってあの転校生の戦いを見守る義務があるんじゃないのか。」
「なんや、それ。」
「こないだの時だって、結局あいつのロボットが俺たちを護ったんだぜ。それをよく考えもせず殴ったりして。いわゆる『借り』ってモンがあるんじゃない。」
しばし、悩んだトウジだが、
「お前、ホンマに自分の欲望に素直なやっちゃな。」
と、結局ケンスケに同意する。
「委員長。僕らトイレね。」
「んも〜〜。ちゃんと済ませておきなさいよ。」
委員長、洞木ヒカリは呆れながらも承諾した。
☆ ☆
「ちっ。速い。」
蔵馬は少し驚いていた。第4使徒のあまりにも速い動きに。シンクロ率89.5%とはいえやはりタイムラグが出る。生身で戦っているのなら問題の無い相手だが、EVA越しだとどうしてもタイムラグがでてしまうのである。
「シンジ君。ライフルを使いなさい。」
ミサトがわめく。しかし、蔵馬は聞く耳を持っていなかった。
「シンジ君。命令を聞きなさい。」
「拒否します。」
「なぁんですって〜〜。」
ミサトがキレかかっている。
「先ほどの通常兵器での攻撃を見ていなかったんですか。」
流石に蔵馬も頭にきていた。
「このバレットライフルと先ほどの攻撃。威力は対して変わりません。この弾は劣化ウラン弾でしょう。弾着時に爆煙で視界を悪くするだけ。この素速い敵相手にそんな自殺行為にも等しい真似ができますか。以上の理由で拒否します。」
使徒の『光の鞭』をかわしながら説明する蔵馬。結構余裕そうであるが、実際は苦労している。タイムラグを計算しながら動いているからである。そして、使徒の『光の鞭』は初号機の側面から襲い掛かるが蔵馬はそれを見切りかわす。もちろんタイムラグを計算して。しかし、その鞭の先にトウジとケンスケがいた。
「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」」
「なに。鈴原君と相田君。」
「シンジ君のクラスメイト。」
「何故こんなところに民間人が。」
予期せぬ存在に焦るミサトとリツコ。
二人を庇った為、アンビリカルケーブルが切断された。
「初号機。活動限界まであと3分30秒。」
「シンジ君。EVAを現行モードでホールド。二人をエントリープラグの中に収容して。」
「了解。」
「葛城一尉。越権行為よ。」
蔵馬は今回は、ミサトの命令に従い、トウジとケンスケをプラグ内に入れる。
「……ゴホゴボ……なんやこれ、水やないくあ……。」
「……ゴボゴボ…カメラ、カメラ。」
発令所ではリツコとマヤが焦っていた。
「神経系統に異常発生。」
「異物を二つも挿入したからよ。神経パルスにノイズが混じっているんだわ。」
更に動きの悪くなった初号機。それでも、それなりに戦っている蔵馬。
初号機のケリで体勢を崩す使徒。
「今よ、後退して。回収ルートは34番。山の東側へ後退するのよ。」
「いい加減にしてください。」
蔵馬の叫びにミサトが一瞬黙るが、直ぐに反論する。
「なんでよ。」
「先ほどよりも更に動きが鈍くなったんですよ。敵の速さなら後退している間に追いつかれ、下手をすれば本部にも被害がでます。」
「じゃあ、どうするのよ。」
ミサトが何だかふてくされている。
「こうなれば『肉を切らせて骨を断つ』しかありませんね。」
蔵馬は『光の鞭』が一直線に伸びてくるとEVAの腹を貫かせた。
「……ぐっ……。」
異物を入れた為に下降したシンクロ率だが、それでも57%である。蔵馬に激痛が走る。
「碇君。」
レイが叫ぶ。
その様子にリツコが驚愕した。
(あのレイが……。)
初号機はそのまま使徒の動きを封じ、コアを破壊した。
「早く、神経接続を切ってください。」
レイが叫ぶ。
「えっ。」
オペレーターの青葉シゲルは呆然としていた。
「神経接続切断。」
ミサトの命令にシゲルはようやく実行した。
☆ ☆ ☆
私は発令所を後にし、ケイジに向かっていた。
初号機に使徒の『光の鞭』が刺さったとき、私は恐怖した。私と絆を結んでくれた碇君がいなくなることを。
そして、そんな状況に追い込んだあの二人を許せなかった。
私はケイジに辿り着くと既に初号機から降りてきていた碇君の傍に駆け寄った。碇君は笑顔で私の頭を撫でてくれた。最近私は碇君に頭を撫でられるのが気持ちいい。
その時、私は戦闘の邪魔になった二人の顔を見た。私は二人に近付きその頬を叩いた。
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レイに頬を叩かれた二人は呆然としていた。いままでクラスでも喋らないどころか感情を見せなかったレイ。そのレイがいきなり自分達を叩いたのだ。しかもうっすらと涙を浮かべていた。
蔵馬もまさか、レイがそこまでするとは思わず驚いていた。しかし、すぐ笑顔になる。
(どうやら、この三週間で綾波の心は少しづつ成長しているようだ。)
二人は保安部員に連行されていった。
☆ ☆
「何故、命令に従わなかったの。」
ミサトはかなり立腹していたが、蔵馬は冷静に応えていた。
「説明は戦闘中にしたはずです。リツコさん。あの状況でミサトさんの命令を実行していたらどうなります。」
リツコはすぐに答えた。
「先ほどMAGIに解答を求めたわ。シンジ君の言ったとおりになる確率は91%。ほぼ間違いなく本部はかなりの被害が出ていたわ。」
「ぐっ。」
ミサトは悔しそうに唇を噛んだ。
「……ミサトさん。俺は貴女が嫌いなわけではありません。ですが、言いたいことは言わせて戴きます。言いたいことも言えない関係では家族とは言えませんからね。たとえ、戦闘中でも、いや、戦闘中だからこそ間違いは正さなければなりません。」
蔵馬の台詞にハッとなるミサト。そして、表情が緩んだ。
「……ありがとう。シンちゃん。」
家族と言ってくれた事に、ミサトは喜んでいた。使徒への復讐。それを忘れることはできない。でも、同時に家族が欲しかったのも確かなのだ。
結局、ミサトが自分の指揮が不味かったことを認め、蔵馬へのお咎めはなかった。
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その夜、レイを伴って家に帰った蔵馬は、三人で夕食を摂った。蔵馬に連れられたレイに驚いたミサトだったが、今まであまり人と係わらなかったレイが蔵馬に心を許しているのを見て、少し安堵した。
☆ ☆ ☆
翌日。
登校中に、トウジとケンスケに鉢合わせした。
「転校生。ワシを殴れ。」
いきなりトウジは切り出した。
「わしは、お前が必死に戦っとるのもわからんと、自分の言いたいことだけ言ってお前を殴った。妹にも怒られたわ。『私達を救ってくれたのはあのロボットなのよ』ってな。助けてももろたし、このままではワシの気も済まん。」
蔵馬が呆気にとられているとケンスケが、
「こういう奴なんだよ。まっ、一発殴ってやったら。」
等と言い出す。そこへ、
「お〜い。蔵馬〜〜。」
手を振りながら蔵馬たちに近付いてくる、この人物は。
「ユウスケ。もう、来たのか。」
浦飯ユウスケであった。
「ああ。とりあえずしばらくこの街で屋台引くからよ。用があったら連絡してくれ。」
霊界からの依頼を受けたユウスケは、蔵馬の要請をいつでも受けれるように第3新東京市に引越ししてきたのだ。そこで、蔵馬は閃いた。
「鈴原君。殴るのではなく、今度、このユウスケのラーメン屋台でラーメンを奢ってください。それでチャラということで。」
「おお、それはええけど…。」
「大丈夫。ユウスケのラーメンはおいしいですよ。」
「ほな、それで手を打とう。」
トウジも喜んだようだ。
「ところで碇。蔵馬って。」
ケンスケが疑問を呈してきた。
「あだ名ですよ。……そうですね。鈴原君と相田君も俺のことをそう呼んでもかまいませんよ。」
「ええのか、碇。」
トウジは感激していた。あんなことをした自分を許し、しかもあだ名で呼ぶことも許してもらえるとは思ってもいなかったのである。ケンスケも喜んでいた。
「それじゃ、い……蔵馬。これからもよろしゅうな。」
「よろしくな。蔵馬。」
三人は握手をした。蔵馬は新たな友を得た。
〈第参話 了〉
To be continued...
(2009.04.18 初版)
(2009.04.25 改訂一版)
(あとがき)
第参話終了。うーん。やはり、蔵馬を使うと原作のシンジとはまったく違う展開になるな。
ちなみにこの話、ミサトは無能ですがアンチミサトではありません。ゲンドウも外道ですが、断罪というわけではありません。まあ、罰は受けるとおもいますけどね。
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