第七話
presented by かのもの様
第28放置區域(旧東京都心)
その上空を蔵馬、レイ、ミサト、リツコを乗せたNERVのヘリが飛んでいた。
「ここがかつて、花の都と呼ばれていた大都会とはね。」
「着いたわよ。」
「なにもこんなところでやらなくてもいいのに……で…その計画、戦自は絡んでいるの。」
「戦略自衛隊。いいえ、介入は認められずよ。」
「どおりで好き勝手にやってるわけね。」
ミサトとリツコの会話を聞きながら、蔵馬は考えていた。
(EVA以外の対使徒用兵器か。まあ戦力はあるに越したことはないが……果たして使えるモノなのか……。)
日本重化学共同体。
そこが、NERVのエヴァンゲリオンに対抗する為に、通産省と防衛庁と共同で対使徒用陸戦兵器ジェット・アローンという人型ロボットを開発し、それのお披露目に出席するのが今回の目的であった。
リツコはこのイベントに蔵馬の背後にいるかも知れない組織が参加しているかも知れないと思い、蔵馬を連れてきた。蔵馬に接触するところを押さえるつもりなのだ。そのための諜報員も用意していた。
最も完全な見当違いなのだが……。
会場のある国立第3実験場に到着し、四人はヘリから降りた。
ミサトの服装は正式な軍服姿である。普段のだらしなさはなりを潜め凛々しい姿である。
(いつもこうなら、俺も楽なんだかな。)
リツコも白衣ではなく、紫色の礼服である。
レイは、昨日買った礼服を着ている。店の人に見立ててもらった服で、既製の礼服だがそれなりに似合っている。もっとも最初は服の着かたが解らなかったレイは店員に呆れられたが……。
蔵馬はどちらかというと平凡な礼服を着ていた。しかし、その控えめな服装が逆に蔵馬の容姿を引き立てていた。
会場に向かう美男美女に皆の視線が集まっていた。
『祝 JA完成記念披露会』という看板が立ったホールに到着し、指定の席に着いたときミサトの青筋が立った。
「舐めてるわね。」
テーブルの真ん中に『ネルフ御一行様』と書かれた札と手が届きそうにない数本のビールがあった。他のテーブルを見ると様々なご馳走が並べられていた。
「……いかにNERVが嫌われているか、よくわかりますね。」
蔵馬はこの幼稚な嫌がらせに呆れ返っていた。
☆ ☆
「本日はご多忙のところ、我が日本重化学共同体の実演会にお越し戴き真にありがとうございます。」
JA開発責任者、時田シロウ氏が司会進行を始めた。
蔵馬はJAの説明を聞いていたが、動力源に核分裂炉を使用していると聞いて彼らの正気を疑った。
確かにEVAより活動時間が大幅に増えるだろうが、メルトダウン等現行の原子炉と同等の危険も抱えている。
「……皆様には後程管制室の方にて試運転をご覧戴きますが、ご質問のある方はこの場でどうぞ。」
「はい。」
リツコが早速手を上げた。
「これはご高名な赤木リツコ博士。お越し戴き光栄の至りです。」
丁寧な口調だが所々に厭味が見え隠れしていた。
「質問をよろしいですか。」
「ええ、ご遠慮なくどうぞ。」
余裕がある。よほどの自信なのだろう。
「先程、リアクターを内蔵とありますが。」
「ええ。本機の特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております。」
「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵する事は、安全性の点から視てもリスクが大き過ぎると思いますが。」
「5分も動かない決戦兵器よりは、役に立つと思いますよ。」
「遠隔操縦では緊急対処に問題を残します。」
「パイロットに負担をかけ、精神汚染を起こすよりは、より人道的と考えます。」
「人的制御の問題もあります。」
「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは安全だと思いますが……制御出来ない兵器など、まったくのナンセンスです。ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません。」
「そのためのパイロットとテクノロジーです。」
「まさか科学と人の心があの化け物を抑えられるとでも……本気ですか。」
「ええ、勿論ですわ。」
「人の心などという曖昧なモノに頼るべきじゃないでしょう。そしてその頼るべきは、まだ思春期の少年達と来ている。」
「おまけにあの化け物を動かす為に国連は莫大な追加予算を迫られ、某国では二万人を超える餓死者を出そうとしているんです。せめて、責任者としての責務は全うして欲しいものですな。良かったですねぇ、NERVが超法規的に保護されていて。貴女方はその責任を取らずに済みますから。」
「なんと仰られようと、NERVの主力兵器以外、あの敵生体は倒せません。」
「A・Tフィールドですか。それも今では時間の問題に過ぎません。何時までもNERVの時代ではありませんよ。」
時田とリツコの舌戦に蔵馬が割り込んだ。
「いいですか。」
「おや、これはこれは、EVA初号機パイロットの碇シンジ君ですか。」
EVAのパイロット……この言葉に会場中の視線が集中した。
「……ほう、機密のはずのパイロットのことを何故ご存知なのかそれも聞きたいですが、それはともかくとして、俺からの質問もよろしいでしょうか。」
「いいですよ。パイロットの貴重な意見として受けさせてもらいます。」
時田の顔はいかにも『子供が戯言を』という雰囲気だった。
「『役に立つ』や『より人道的』以前に、質問の返答をもらっていないのですが。」
「……えっ……。」
「先ほど、リツ……赤木博士のリアクター使用について安全性を、遠隔操作について緊急対処を問題視したのに役に立つだの人道的だの、全く関係ない返答のように聞こえたのですが。」
「………失礼しました。安全性は問題ありません。あらゆるミスを想定し、すべてに対処できるようプログラムが組まれております。」
「では、それでも起こった場合は。」
「…はあっ……。」
時田は呆けた顔になった。
「人の想定には限界があります。未知の出来事が起きたらどうしますか。……起こってしまったでは困りますが………。」
「………。」
「被爆の危険性があるのにパイロットの精神汚染を気にするというのも、放射能汚染のほうがよほど深刻だと思いますが。」
蔵馬の問いに答えられない時田。
「……では遠隔操作での緊急対処に関する問題のほうはどうですか。」
「操作するのは熟練の軍人だ。問題なく対処できる。」
そう返答する時田に蔵馬はため息をついた。
「確かに、現場から離れていれば冷静に対処できることもあります。しかし、現場にいなければ対処できない場合もあります。遠隔操作では相手の気配や殺気を感じ取れない。むしろ熟練者ほど、そういったものに頼る傾向にあります。果たしてうまくいきますかね。」
「そんなことは、やってみなければわからん。」
時田は既に余裕を失っていたのか、声を荒げた。
「それこそ曖昧なことではありませんか。……貴方は先程、曖昧なモノに頼るべきではないと仰いませんでしたか。」
「………。」
揚げ足を取られ、更に沈黙する。
「最後にA・Tフィールドはいずれ解明できるそうですが、解明されて実用化されるのは何時になります。今の所、A・Tフィールドがない兵器では使徒にダメージを与えるのは容易ではありません。JAに内蔵されたリアクターの出力だけでは、A・Tフィールドを貫けるだけのエネルギーは無理です。それで、どうやって使徒に勝つつもりですか。A・Tフィールドの実用化ができない限り、完成とは言えないと思うんですが……JA完成というのは嘘ですか。」
「……それでは、質問はこれまでとさせていただきます。後ほど試運転を行います。」
これ以上、蔵馬に喋られるのは不味いと感じ、時田は強引に質疑応答を中断した。
☆ ☆ ☆
「いや〜〜〜、痛快だったわ。やるわよね、シンちゃん。」
ミサトは機嫌が良かった。
「………。」
リツコの返答はない。自分が時田を言い負かした訳ではないからだ。
「それにしても、あいつはむかつく奴ね。どうせ、うちの利権からあぶれた腹いせでしょうけど。」
「そうね。自分を自慢し褒めてもらいたがっている。大した男じゃないわ……。」
リツコはそういいながら、パンフレットに火をつけた。
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蔵馬とレイは自動販売機の前で、コーヒーを飲んでいた。レイは紅茶だが……。
蔵馬が辺りを見回しているのにレイが気付いた。
「……どうしたの…。」
「……レイ。ちょっとトイレに行ってくる。ここで待っていてくれ。」
蔵馬はレイを残しその場を離れた。
そんな、蔵馬をさりげなく後を付ける一人の男。自分の後を付ける男に気付いている蔵馬は、挙動不審な行動を取り始めた。
男はそれに釣られ、蔵馬の後を追う。
通路の角を曲がったとき、蔵馬の姿が消えていた。
男は慌てて駆け出そうとしたが、後頭部に衝撃を受け意識を失った。気配を絶って後ろに回りこんだ蔵馬が当身を喰らわせたのだ。
蔵馬は、近くのトイレの個室にその男を放り込み、その男の身分証明カードを抜き取った。
この男はNERVの諜報部の人間だった。
カードを自分のポケットに仕舞い込んだ蔵馬は、何食わぬ顔でレイのところに戻った。
「……蔵馬君、お帰り。」
レイは、嬉しそうに蔵馬に駆け寄った。
☆ ☆
試運転が開始された。
招待客達は管制室の展望窓で双眼鏡で見物していた。
蔵馬、レイ、ミサト、リツコはその集団から少し離れた壁際に固まっていた。
「テスト開始。」
「全動力開放。」
「圧力、正常。」
「歩行開始。」
「歩行、前進微速。右脚を前へ。」
「了解。歩行、前進微速。右脚前へ。」
JAが動き出した。
「へぇ〜、ちゃんと歩いた。自慢するだけはあるみたいね。」
ミサトも感心しているようだ。しかし、リツコは顔を背けていた。その顔は何か含むところがある顔をしていた。それに気付いた蔵馬は妙な胸騒ぎを感じていた。
突然、スタッフが騒ぎ出した。
「変です。リアクターの内圧が上昇していきます。」
「一次冷却水の温度も上昇中。」
「バルブ開放。減速剤を注入。」
「駄目です。ポンプの出力が上がりません。」
JAはそのまま、ドームに向かってきていた。このままで進めばドームが破壊されてしまう。
「いかん。動力閉鎖、緊急停止。」
「駄目です。停止信号も受信されず、完全に制御不能です。」
「そんな馬鹿な………。」
慌てて逃げようとする他の招待客たち。JAはそのまま屋根を踏み抜きながら前進を続けた。
「造った奴と同じで礼儀知らずね。」
突然見えるようになった青空を眺めながら、ミサトは呆れた声を出した。
ちなみに、蔵馬はレイを抱き上げその場を離れた為、被害を受けなかったがミサトとリツコは小さな瓦礫を浴び、埃まるけになっていた。
「大丈夫ですか、二人とも。」
「ええ、大丈夫よシンちゃん。」
蔵馬に答えたミサトは、蔵馬がレイを俗に言う『お姫様抱っこ』をしているのを見て、にやついた顔になった。
「……やるわね〜。シンちゃん。」
からかおうとするミサトだが、直ぐにそんな場合ではないことに気付きにやついた顔を引き締めた。
「このままでは炉心融解の危険もあります。」
「…信じられん。JAにはあらゆるミスを想定し、すべてに対処できるようにプログラムか組まれているのに……。このような事態はありえない筈。」
時田は呆然と呟いた。
「……先程、質問しましたね。未知の出来事が起きたらどうするのか、と……起こってしまいましたね。」
蔵馬の突っ込みに悔しそうな顔になる時田達にミサトがきつい声で問う。
「それより、炉心融解の危険が迫っているわ。」
「こうなったら、自然に停止するのを待つしか方法は。」
「自動停止の確立は。」
「0.00002%。まさに奇跡です。」
「奇跡を待つより、捨て身の努力よ。停止手段を教えなさい。」
「方法はすべて試した。」
「いいえ。まだすべてを白紙にする最後の手段が残っている筈よ。そのパスワードを教えなさい。
「全プログラムのデリートは最高機密。私の管轄外だ。公開の権限はない。」
「だったら命令をもらいなさい。今すぐ。」
ミサトの怒鳴り声にビクッとした時田は、受話器を取った。
「わたしだ。第2東京の万田さんを頼む。そう、内務省長官だ。」
しかし、上の連中は危機感がないのか、盥回しのごとく他人に押し付けて言った。
ようやく、目処がたったが……。
「今から命令書が届く。作業は正式なものだ。」
「それじゃ間に合わないわ。爆発してからじゃ遅いのよ。」
《ジェットアローンは厚木方面に進行中。》
「時間がないわ。これから先は、私の独断で行動します。あしからず。」
ミサトの言葉に時田は俯いたままだった。
☆ ☆ ☆
「無駄よ、お止めなさい、葛城一尉。だいいちどうやって止める気なの。」
「人間の手で止めるのよ。とりあえず日向君に初号機の手配をしてもらって……。」
携帯を取り、連絡しようとするミサトを蔵馬が止めた。
「……ミサトさん。初号機を待つのは時間がかかりすぎます。ここは、俺に任せてください。」
「任せるって……。」
「ミサトさんではなく、俺が止めにいくと言っているんです。」
蔵馬の台詞にミサトとレイの顔が青くなった。
「……そんな、危険よシンジ君。」
「蔵馬君。」
レイは蔵馬の袖を掴む。その顔は泣きそうな顔をしていた。そんなレイをリツコは不快そうな顔で見つめていた。
(……人形が、いつからそんな顔をするようになったのかしら。)
「大丈夫だ、レイ。」
蔵馬は優しくレイの頭を撫でた。
「ミサトさんがなんと言おうと俺がいきます。少し確かめたいことが在りますし……。」
蔵馬の有無を言わさぬ眼光を受け、ミサトは押し切られてしまった。
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「本気かね、内部は既に汚染物質で充満している……危険すぎる。」
防護服に着用した蔵馬が内部に入って止める旨を伝えられた時田は反対した。
「他に方法はないでしょう。うまくいけば、皆助かります。」
「しかし、君のような子供が……。」
「俺はEVAのパイロットです。危険は慣れています。」
蔵馬は日重のスタッフ全員を見回した。蔵馬の眼光に射抜かれたスタッフ達は彼が只者ではないことを感じた。
「ここの指揮信号が停止すると、ハッチが手動で開くようになりますから、バックパックから内部に侵入できるようになります。」
そう言って、斧で機械を壊し始めた。
蔵馬はスタッフ達に頷いた。
「……“希望”……プログラム消去のパスワードだ。」
時田は蔵馬に背を向けながらパスワードを教えた。
「……ありがとうございます。」
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蔵馬たちは乗ってきたヘリでJAに追いついた。
「しかし、どうする気なのシンジ君。」
「とりあえず、JAの上に着けてください。」
JAの頭上に来たヘリはそのまま並行する。
「下がってください。」
そう言うと蔵馬はヘリのハッチを開けた。中に突風が入ってきた。
「……ワップ…。シンちゃんなにを……。」
ミサトたちが瞬きする間に蔵馬の姿がなくなっていた。
「蔵馬君!!!」
驚いたレイたちが下を見ると蔵馬はJAのバックパックの上に立っていた。
「……うそ。」
ミサトとリツコは目を疑った。歩行しているロボットの上に無造作に飛び降りて着地するなど普通できるものではない。
「……何なのあの子……。」
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俺はJAのバックパックから中に進入した。中は凄い熱気だった。
俺は奥に入り込み操作盤のあるところに到着した。
もし……俺の予想どおりなら……。
操作盤を開けパスワードを入力した。しかし、出たのは“ERROR”。ひらがな、カタカナ、ローマ字、英語と試したが、結果は同じだった。
「……どうやら、俺の予想どおりのようだな。」
プログラムが変更されている。
やはり、これはミスではなく人為的に引き起こされた妨害工作だ。黒幕は恐らく……。
俺は妖気を発し、直ぐ横にある制御棒を押し込めた。
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「内圧ダウン。すべて正常値。」
「「「「やった〜〜〜。」」」」
JAが停止したことで管制室は歓喜に包まれた。
時田も安堵した。
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「停止したの。」
葛城一尉が呟いた。
私もホッとしていた。
よかった。蔵馬君が無事で……。
何気なく横を見たら、赤木博士の顔が歪んでいた。
……なに。どうしてそんな顔をするの………。
「……どうしました、赤木博士。」
「……な…なんでもないわ!!」
私が訪ねると赤木博士強い口調で返答してきた。
何故、私が怒られるの……。
釈然とせず、下を見たらJAから蔵馬君が出てきた。
私たちを乗せたヘリは停止したJAの傍に着陸した。
☆ ☆
蔵馬はヘリの中で着替え、防護服をJAの足元に置いた。そして、そのまま第3新東京市へと帰路についた。
「とりあえず、シンジ君のお蔭で大惨事は避けられたわね。」
ミサトが安堵の表情になった。
「……リツコさん。今回の件はNERVの陰謀ですね。」
「「なっ……!!」」
蔵馬の一言に、ミサトとリツコは絶句した。ミサトは驚愕し、リツコの顔色が青くなった。
「……どういうこと、蔵馬君。」
レイが不思議そうに蔵馬に聞いた。
「今回の件は発生からしてもあまりに不自然だし、リツコさんが余りにも余裕な感じだったからな。」
「……どういう意味かしら。」
リツコが挑むような顔で蔵馬を睨んだ。
「昔から言うでしょう。犯罪が起こって一番得をした者が真犯人だと。今回はその典型的なものですよ。JAがこんなことになって一番喜ぶのは他でもないNERVですからね。」
「……偶然よ…。」
「では、何故パスワードが変更していたんですか。誰かが故意に変更したとした考えられませんが。」
「………。」
リツコは沈黙した。穏やかな口調だが、蔵馬の追求の眼光はリツコを圧迫していた。ミサトも不審な目でリツコを見つめていた。
「多分、あのまま放っておいても勝手に停まったでしょうけどね。暴走プログラムを仕込み、適当なところで停まるようにするくらいの細工は簡単でしょう。それを確認したくて中に入らせてもらいました。」
「……証拠があるのかしら。」
リツコは震えながら言った。
「証拠はありませんが……リツコさんの今の態度で確信しました。」
レイはリツコを睨んだ。下手をすれば蔵馬が危険だったことに思い至ったからだ。レイにこんな風に睨まれるのは初めてのリツコは一瞬怯んだが、負けじとレイを睨み返した。
☆ ☆ ☆
「JAの件はほぼシナリオどおりです。しかし、シンジ君は今回の件に疑いを持っているようです。」
「……放っておけ。奴ごときに何ができる。」
相変わらず息子を侮っているゲンドウにリツコは呆れ果てていた。
(……私は何故、こんな男に愛情を抱いているのかしら。)
司令室で今回の件をゲンドウに報告しているリツコは醒めた目でゲンドウを見ていた。
〈第七話 了〉
To be continued...
(2009.05.16 初版)
(あとがき)
さて、第七話が終了しました。今回はコエンマ様も小兎さんもいませんので私ひとりで後書きを担当させていただきます。
次回は、皆さんお待ちかねのもう一人のヒロイン、惣流・アスカ・ラングレーさんが登場します。蔵馬さんとレイちゃんの仲にどう割り込むのか。どうかご期待ください。
ジョルジュ・早乙女がお相手でした。ではごきげんよう。
作者(かのもの様)へのご意見、ご感想は、または
まで