序章
presented by ミツ様
2000年9月
1999年、中東地域での民族紛争を機に勃発した第三次世界大戦は、意外な形で終結を迎える事となった。
月と地球の間、24万kmの距離に突然現れた”黒い月”。それに続く人類の”天敵”の出現である。
人類の敵…それを”使徒”という。
神話の時代の神の名を冠し、本来の世界には相容れない異形なるモノども。
ただ、人を狩る為の存在。
”虐殺者”
”断罪者”
この史上最大の災厄を巡り諸処様々な説が説かれたが、人はそれが何であるかと理解する前に…そして、人類同士の戦いの決着を見る前に…過酷な生存競争を余儀なくされることとなった。
それから15年…………戦いはまだ続いている。
2011年
2000年から繰り広げられてきた人類と使徒との戦いは、ユーラシア大陸での人類の敗退という形で続いていた。
核の炎で自らの街を焼き払いながら後退する焦土戦術を展開していたユーラシア連合軍は、東シナ沿岸まで追い詰められていた。
同年 4月 仁川防衛線
ユーラシア連合軍壊滅。
人類は、4,000万人の死者を出してユーラシア大陸から消滅した。
これにより人類の生存圏はアメリカとアフリカ南部…そして、極東の島・日本のみとなった。
同年 9月 使徒日本国侵攻
自然休戦期明け、ユーラシア大陸から人類を駆逐した使徒は、ついに日本に上陸を果す。
ここに、人類と使徒の幾度目かの防衛戦争が開始された。
2013年 5月 八代平原会戦
もはや恒常化した日本国内における使徒との戦争において、一つの事件が起きる。
記録的な惨敗である。
九州南部の八代平原において行われた防衛線で投入された日本軍の兵は、陸自のほぼ全力にあたる40万、一方使徒は1,400万。日本軍は生物兵器を使って同地の八割を焦土にした壮絶な死闘を繰り広げたが、30万以上の将兵を一気に失い、九州地方を放棄した。
この敗戦は、政府・軍首脳部に深刻なダメージを与えた。
以後、人はこの穴を埋める為に足掻き続けることとなる……。
2014年 1月
昨年の記録的な惨敗を受け、日本国国会において一つの法案が可決された。
それは、少年兵の強制徴兵である。
先の八代会戦において失われた兵力を補う為、14歳から17歳までの徴兵規定年齢に達していない少年・少女を学籍のままかき集めた。…その数10万人。
政府はこれを即席の兵士として、今や日本国全土に出現することとなった使徒との戦闘に送り込んだのである。
だが…このような学兵に戦果など期待できるはずもなく、実際、してもいなかった。これはまさに最終防衛の為の『大人の兵士』が練成される間の、いわば時間稼ぎの捨て駒だという事は誰の目からも明らかだった。
しかし、この法案は実行に移される事となる。
政府は、少年兵のほとんどが2014年中に死亡するものと考えていた。
これから始まる物語は、この少年達の戦いの記録。
学兵と呼ばれ、兵士でもなく、戦時急造部隊として配備され戦地に送り込まれた子供達。
これは、彼等の目を通して語られた真実の歴史である。
時は2014年3月4日。桜の咲く少し前……。
少年達はまだ、己に待ち受ける大いなる運命を知らないでいた……。
To be continued...
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