無垢なる刃金を纏う者

第一話 覇道到来

presented by sara様


辺りは静寂に包まれ、周囲に人影は無い、そんな駅の前に黒い高級車、それこそ一台で土地付きで一軒家でも買えそうなほどのものが止まり、車内に数人の人影が写る。

それは異様だった、誰もいないゴーストタウンに鎮座した鉄の玉座を思わせる。

かれこれその場所に30分そこにあり、じっと位置していた。

車内はそれなりに騒がしかったけど。



「ウィンフィールド、彼是どれぐらい待っていますの」

運転席に座る、タキシード姿の青年ウィンフィールドに苛々した声で問うのは、豪奢なドレスを着たアジア系の10代後半と見て取れる美女、特徴はツインテールとその美貌だろう。

「はい、お嬢様、手紙に記された時間より30分が経過しています」

ウィンフィールドと呼ばれた青年はそれを実直に返す。

「ふぅ、私をここまで待たせるとは、ネルフは私をそして、私達を見縊っているようですね、不愉快ですわ」

「それは在りません、ネルフは我等の介入には気付いていない模様です、さもなくばこのような手紙でシンジ様をお呼び出しするとは思えません」

手紙とは「来い」とだけ書かれた、某髭司令、直筆の息子にあてた手紙だったりする。

息子への手紙というよりは召集令状だろうが。

というか完全に、こんな手紙で人を呼び出すのはまともな人間はしない。
でも出した本人は相手が誰だろうと同じものを送りつけようとするかもしれない。
いや、絶対送りつけてくる。

「このような手紙、失礼の極みですが。
どうやらネルフは礼も知らない輩のようですわね。」

そして女性が隣に座る少年に目を向け向かいに座る者を指差し。

「それとシンジさん、至極痛切な問題です、其処の貴女の保護者代理を名乗る○○○○を諌めて下さいませんでしょうか、私そろそろ、護身用の拳銃でそこの○○○○の頭を吹き飛ばしそうですわ」

お嬢様と呼ばれた女性、面倒臭いので紹介するが(態々名を伏せて紹介するのが面倒くさい)覇道瑠璃は、怒りのためか少し逝った表情で隣に座る少年、中学生くらいのシンジと呼ばれる少年に、(逝った)笑顔で告げる。

少年は困った顔で。

「無理です」

それでもきっぱり言い切った。

「無理でもやりなさい、この車を血で汚したくないのです、あれの生死はどうでもいいのですが」

ついでに議論の対象はというと。

無駄に、狭い(普通の車に比べれば勿論広いが)車内でギターを掻き鳴らしている、緑色の髪、何故か跳ねた髪がハートマークを形作っている、それに白衣を羽織り、それはもう全身から○○○○という感じの雰囲気をプンプン撒き散らしている、そりゃもうベスト・オブ・○○○○という名でも与えたいくらいに。

「はぁーっはぁぁぁぁっ、暇である、暇である、暇であるぞぉ、我輩暇なのである、何ゆえこのせまっくるしい所に押し込まれなければならんのであるか、我輩の時間は金よりも価値があるのであるぞ、その時間を浪費させるなど恐怖の極み、汝テロリストであるか、この世界に対して稀有で貴重で、博愛の(わけが判らん)大・天・才・ドクタァァァァッ、ウエストッッッの貴重な時下を奪うルパァァァン三世であるか、ンッ、言うてみ、なのであーる」

とさっきから、瑠璃の神経をアイスピックで突っつくが如く、刺激しまくっていた。

「博士ー、暇ー、何か芸でもするロボ、暇すぎてエルザ死んじゃいそうな感じ、だから体張ってエルザのために芸でもするロボ、希望はパントマイム」

とその○○○○の隣に座っている、やっぱり緑色の髪になんかけったいな服を着た美少女。

○○○○同様これまた喧しい。

「エルザァァァッ、我輩に向かって何を言うであるか、製作者であるぞ、親であるぞ、パーパであるぞ、もっといたわって欲しいのである、しかし暇であるなぁ」

と、二人揃ってなかなか喧しかった、防音効果がやたら高い車内で、つまり音が響く。

「シンジさん、では言い換えましょう、貴方のパートナーの保護者を黙らせなさい、パートナーごと、手段は問いません、黙らせなさい、この車内を快適にしてくださいませ」

この時点でもう断る手段なんて無かった。

シンジはエルザと呼ばれている、少女に。

「それ、黙らして」

とだけ言って。

エルザは「判ったロボ」といい、嬉々として手にしたトンファーで、自称保護者を殴り倒していた。

ウエストと呼ばれた○○○○は頭から血を流して、昏倒していた、誰も気にしてないが。

シンジにとっても、自称保護者代理であるんだが「いいよ、瑠璃さんにやって(保護者)もらうから」、さいですか。

「手早く済んだではないですか、何が無理なのです」

「後で恨み言、言われるのが嫌なんで、前なんて一晩中どこに仕込んだのか、僕の部屋に隠しスピーカー設置して一晩中、アレのギター演奏強制的に聞かされたんですよ、しかも歌付きそれも恨み言ばっかり、しかも周到に本人は隠れて」

それはかなり嫌だ、この○○○○無駄に技術力は高いのだ、その技術力を無駄なところに関して遺憾なく発揮する。

なお発見するのに5時間かかり、丁重にボコッテ差し上げた。

「まぁ、被害を受けるのは私ではないのですし、いいとしましょう。
チアキを差し向けてもいいわけですし、なにがいいんですかねこの○○○○が、それはさて置き、シンジさんのお迎えいらっしゃらない様で」

「こんな手紙を送ってくる輩ですからね、時間なんて守らないでしょう、これでも遺伝子上の父親らしいですが」

どうやらここのシンジ君、自虐的な駄目少年ではないようだ。

「ふぅ、30分待ったのですしもういいでしょう。
ウィンフィールド、ネルフ本部に向かってこちらから行きましょう、そろそろここらも慌しくなるようですし」

瑠璃がそう命じ、その車は音もなく静かに発進した。

「やっといくロボか?
シンジ、でもこの女来てないロボよ?」

エルザが手にした写真、いわなくても分かるだろうが、某作戦部長の水着写真である、何故か細切れにされているが、それを繋ぎ合わせていた、それを指している。

「その迎えが来ないようなので、先に向かうのです、もう待っていられません」

そしてその高級車は値段に見合った乗り心地でその場を後にした。





その約一時間半後、青いスポーツカー、アルピーノ・ルノーA310がスピンターンで駅周辺に急停車するも。

ついでに周囲は瓦礫があり、空には戦闘機が飛び交っている。

「シンジ君、乗りなさいって、何で誰もいないのよ、この私が態々迎えに来たってーのに、シンジ君、出てきなさい、お姉さん怖くないわよー」

ついでにこの女、遅れた理由は、忘れていたからである、完全無欠に、疑う余地なく、それはもう澄み切った水晶のごとく、忘れて自宅で寝こけていたのである。

しかも、一応は国際公務員の特務機関作戦部長が、この有事に先ほどまで眠りこけていた、実力が知れるというものである。

なお軍事組織で遅刻は厳罰対象である、たとえどんな理由であろうと。

作戦時に遅刻ではお話にならないからだ、だから普段の遅刻にでも厳罰をかすのだが。

そして規律を保つ。

軍隊というのは公正に暴力を振るうことを認められた組織であり認められた理不尽だからだ。

故に、規律があり、重い罰があるはずなのだが。

こんなのが作戦部長をしている、ネルフの愚かさが垣間見えるというものだ。

組織の人間一人を見ても、組織の程度など知れるものである。

「出てこいっつーの、私が迎えに来たのよ、さっさと顔出して、とっとと出てこないと・・・・・・・・・・・」

しかもその作戦部長、つまり幹部の一人からしてこれなのだから。

と車のすぐ横に、瓦礫が落ちる。

「シンジ君も、シェルターに向かっているわよね、じゃ其処からは保安部の仕事よ、今日ここに来た使徒が悪いんだし」

といってあっさり、車を出していってしまう、二時間遅れて、しかもその対象を探そうともしない、無責任の極みである。

しかも理由は自分の身に危険が降りかかりそうだという理由で。







さあさぁ、ここで少し語らおうか。

ああ、僕は語り手だ、面白おかしく、語り合おう。

愚者たちの演劇も幕を開けようとしているようだ。

主演男優、六文儀ゲンドウ。

主演女優、葛城ミサト。

助演、冬月コウゾウ、加持リョウジ、日向マコト、ほか多数。

そうそうたる顔ぶれではないか。

ああ僕は震えが来そうだよ。

期待に、興奮に、悦楽に、これから始まる喜劇に、悲劇に、残酷なるショーに。

愚者は自分たちが喜劇のヒールであることを知りはしない、出演者であることも、勿論その結末を知らずシナリオを嘯いているだけだ。

問題ないと呟き、自分のおろかな考えに、傲慢たる欲望に忠実たる男。

自らの悪逆たる行為すら、正義と嘯き、己が思うままに振舞う女。

そしてそれを取り巻く愚者、愚者、愚者。

ああ、楽しみだ、楽しみだよ、こんな面白いショーは久方ぶりだ、見せてくれ、僕を酔わせておくれ、退屈なんだ、喜劇で、悲劇を見せてくれ。

あまりにおぞましく、欲望に忠実な、悪魔すら卑下するシナリオを描き、外道へと落ちた者達が。

どのように蠢くのかを。

救いの無いストーリーを。

無垢なる刃が、無垢なる怒りが、無垢なる憎悪が、君達を攻め立てる。

では喜劇の幕を開くようだ。

ただし演出家は。

僕もよく知っている。

憎悪の空より来た、正しき怒りを胸に抱いて、無垢なる刃をふるうもの。

其は、魔を断つ剣、捕らわれた絶望、永劫なりし闘争。

僕のお気に入りだ。

では喜劇は始まった。

ともに楽しもうこの愉快で残酷な物語を、劇を。

さぁ、開幕だ

僕を楽しませておくれ、このナイアを。

愚者の饗宴で。







ネルフ本部、正面ゲート。

ジオフロント前にて守衛に事情を話し、上に連絡をさせここまで案内させた瑠璃一行、ウエストはいまだ気絶しており。

エルザが荷物のように引き摺っている、扱いが悪い、一応君の生みの親、製作者なんだがね。

ついでにエルザ、ウエスト謹製の人造人間であるとても、そうには見えないぐらい人間らしいが。

がその、人ではありえない鮮やかな緑色の髪がそれを表している。

この引きずられているキの字、一応実力はあるのである、アレだけど。

まぁ、そんな過程で思いっきり目立ちながらジオフロント内のネルフ本部に到着したしだいである。






「あなたがシンジ君?」

迎えに出てきたのであろう金髪で白衣を纏った女性、赤木リツコがシンジに声をかける。

「ええ、そうですよ、えーと」

「赤木リツコ、ここの技術部の部長をしているわ、それとこの人達は、ここから先は部外者を入れるわけにはいかないんだけど」

まぁ、不審者が約一名いるから入れたくないと思うのかもしれないが。

「僕の保護者代理の人です、一応この今伸びている人がそうなんですけど、その代理ということで、僕は未成年ですから、保護者は必要でしょう」

まぁ、正論ではあるな、中学生だし。

「でも、ここにはあなたのお父さんに呼ばれた・・・・・・・」

「一応、言っておきますが、アレは遺伝子の提供者に過ぎません、社会的にアレは父親ではないんです、よって保護者ではないそうですよね」

ついでに、髭はすでに碇ではなく六文儀、碇家より断絶処分を受けている、親権も放棄されているので父親ではないのだ。

ここに態々来たのは、まぁそれは後ほど。

で、当のリツコはというと、内心混乱していた。

彼らのシナリオでは、シンジは気の弱い内向的な少年になっているはずで無ければならず。

このような初対面の人間に対してはっきり、このような言葉をしゃべる人物であってはならない。

だが、このシナリオ、どっかの馬鹿がそう願っただけだ、この馬鹿、シンジが幼少の頃、子供の心にトラウマが残るように仕向け、捨て。

確かに本来なら、そのままその馬鹿が金で雇った人間が、シンジを拾い叔父として、ゲンドウの注文通りに調教するはずであったが。

このときおきた、イレギュラー、当のシンジのロスト。

これより約十年間少年は行方知れずとなり、先日アメリカで発見、実はそのかなり前に連絡が行っていたはずであるが、この馬鹿それを見落としていた。

碇家からの告訴による裁判所からの出頭命令だったが、内容も読まずに捨て、ついでにそれはシンジの親権に関することで来ない事で、あっさりゲンドウは親権をなくし、碇の姓も失った。

完全に馬鹿である。

この通知が来たとき、この馬鹿が愛してやまない妻との絆が断たれたと怒り狂ったのだが、後の祭り。

ついでに碇家は日本経済の一柱を担う名家の為、表立って争うことも出来なかった。

つまり、シンジが現在どんな性格で、どんな人物であるかの情報がまるで無い。

つまりどんな人間であってもおかしくないのである。

馬鹿はそんなこと気にせず、手紙を送りつけシナリオ通りだと嘯いていたが。

つまりこの計画初端から躓いているのだ。

まぁ、どんなやつが来ても、心を壊して廃人にするつもりなのかもしれないが。

それならば問題無いのだろう、この馬鹿にとっては。




「後、保護者の同伴を認めないならば、ここで帰らして頂きます。僕たちは日本に用事があってそのついでに来たんですから、それなのに待っていても迎えは来ない、さらに非常事態宣言です、来ただけでも感謝してもらいたいぐらいなんですが。」

帰られて困るのは、ネルフである、今変えられては計画以前の問題だからだ。

さらに。

「私、シンジさんの、保護者代理となっている瑠璃と申しますが、六文儀ゲンドウ氏に大変失礼な書面での召喚に応じたのです、これ以上無礼を働くというならば」

しばらく時間を置いて。

「アメリカに帰り、二度と其方とは断絶させていただきます」

その少女といってもいい年齢のはず、彼女から見たら何でもない筈なのに気圧された。

何か逆らいがたい、圧力を伴って。

これが少女の力、彼女の対場が与えた年齢にそぐわない威圧感、カリスマとでも言おうか。

その不可視の圧力に先に折れたのはリツコだった、所詮只の研究者、狂気も修羅も知る瑠璃の敵ではない、彼女では役者不足だ。






結果、リツコは彼女たちを認め、なにやらウエストには変な目を向けていたが。

それは当然として。

まぁ、もしかしたら世間的には稀有な部分で分かり合えるのかもしれないが、マッドとして。

リツコは、少しでもシンジの情報を得ようとでも言うようにシンジらに話しかけていた。

「そういえば、シンジ君、アメリカに居たそうだけど、どうして、司令、つまりあなたのお父さん・・・・・・・・・・」

息を呑んだ、あまりの視線に。

「もう一度言います、アレは父親ではなく赤の他人です」

そう、表情を変えず視線だけで。

それでも、内心の動揺を隠そうと、彼女のプライドでは14の子供に気圧されたのだということは認められなかった。

「御免なさい、つまり司令から、あなたは行方不明だと聞いたから」

それをシンジはあざける調子で。

「行方不明、確か僕は捨てられたと思っていましたが、丸一日、全身を殴打したまま放置していったんですから、あのゴミは」

そう、シンジにゴミと称された男は、当時5歳の自分の息子を全身打撲にいたるまで殴りつけ、そして路地裏に放置したのだ、その後一日その場で身動きも出来ずにいるシンジは放置され。

予定では、シンジが通りかかった人に助けられる2時間後に、金で雇った人間が拾っていくはずだった。

ついでにリツコ、その辺の事情は聞いていない。

あまりの内容と、少年の出す雰囲気に呑まれ、それ以上言葉を出すことも出来ず。

喜劇の舞台、エヴァケージへとたどり着いたのだ。







さぁ、始まりだ、面白い面白い饗宴を見せておくれよ、シンジ君、そして九郎君

君たちの手で僕を、僕を楽しませてくれ。

悠久の長きに渡り、僕は退屈しているんだ。

それに僕は語り部だ。

さぁ、第一幕は始まった。








扉を開けた先には、真っ暗な空間。

「暗いですね」

「ええ、今付けるわ」

すぐに、光がともり、その光の先には、紫色の異形、あまりに巨大な人形、鬼の化身。

「これは」

ついでにウィンさんである。

「これは人造人間エヴァンゲリオン、その初号機よ」

こっちの人造人間は物珍しそうに、エヴァを眺めており、ついでに手に持っていたはずのウエストはすでに放り出されていた、少し痙攣しているので、そろそろ目覚めるだろう。

おいしいところはそれなりにとって行くはずだから。

だが、しかし驚くといったような表現は無く、淡々と見ていた、そう前からこの存在を知っているように。

予定通りにことを進める人間のように。

その態度にリツコは疑念を抱いたが。

「で、これを私たちに見せてどうしようと言うのです、今は非常事態、このようなものを拝見している暇は無い様に思えますが」

目の前にある異形、エヴァの存在には一向に構わず、瑠璃がリツコに問う。
そう、有事の最中、客人たる瑠璃たちにかまう暇は本来あるはずが無く、これこそが予定に組み込まれたシナリオの一端。

だがそれをそのまま言うわけにも行かず、適当ないいわけも見当たらない。

だがリツコが答えるより前に。

「久しぶりだな、シンジ」

シンジ達のいる、ケージの遥か上方、ガラス越しにサングラスを掛けこちらを見据える髭面の男

しかしシンジは一瞥し、吐き捨てるようにゲンドウに言葉を浴びせる。

「ええ、久しぶり、六文儀ゲンドウ」

本来、男の予定では、歯牙にもかけず自分の視線におびえていなければならない少年が。

その言葉にゲンドウの眉が僅かに上がり、予定との違いに僅かな困惑を浮かべるも。

「出撃」

単語で、文章とか、会話とか、言語としての意味性とかを完全に無視した、恐らく身内でも判らないであろう命令を下す。

その、言葉に対する反応は。

「えーと、あそこのボス猿が何か言っているんですけど赤木さん通訳してくれませんか?
どうも人間の言葉を喋れないようですし」

と、隣のリツコに聞いていたりする。

「あ、すみません、アレがボス猿ということはあなたはお猿さんですね、僕の言葉なんてわからないよね、すみません無茶を言いました、サルに人の言葉を解れなんて無茶は言いませんよ」

かなり辛辣だった。

このときリツコに青筋が出ていたがその対象は何故かゲンドウに向かっていたりする。

幾らなんでも、それはと思ったらしい。

そして、それを押し付ける上司に腹がたったようだ。




ついでに、瑠璃達は。

「やはり大十字さんのところで生活していると人間ゆがむんでしょうか、ちっちゃい頃はあんなに可愛らしかったのに」

「朱に交われば赤くなるといいますし」

「最近シンジあんな風ロボ、ダーリンに似てきたロボよ」

ついでに小声で、ウエストにも似てきたというのはあったがこれは秘密、シンジの精神衛生のためにも。





さて、ここで登場する不協和音。

少し僕が語ろう。

舞い込んだ異分子、葛城ミサト、主演女優さ。

舞い込んだ異分子は、異分子としての役割を果たそうとする。

偽りの善、ああおかしいよ、愉快だよ。

一度は守ろうとして直ぐにそれを捨て、自分が正しいというんだ、この女。

ああ、滑稽だ。

少年の運命など当に知っていたくせに、自分をよく魅せる為か、それとも都合のいい駒の為、それとも自分の悦楽のためだろうか。

ああ、どれでもいい、そのどれでも僕は愉快になれる。

そして、己が信じる都合のいい欲望という名の正義の下に今度は少年を乗せようとするんだ。

乗らないことは逃げであると、逃げることはいけないんだと。

笑った、こんなに笑ったのは久し振りだ。

自分はどうなんだい。

自分を悪と認めず、偽りの善、偽りの立場、偽りの心。

逃げるのがいけない、なら君は何なんだろう。

少女を生贄に捧げ、無垢な子供に戦いを強制する。

いいよ、愉快で傲慢だ、君は最高だ、僕を愉快にさせてくれる。

だから見せてくれ、その愚かな欲が潰える瞬間を。

ああ、イッテしまいそうだ、そうもっと僕を感じさせてくれ、子宮が疼く様な快感を。








「待たせたわね!!」

大声で叫んで、ケージに入ってくる、赤いジャケットを着た、ミニスカートの女。

これで主演はそろった。

饗宴を奏でよう。

本人としては颯爽と入室したつもりなんだろうが、遅刻しているのがもろバレなので、視線は冷ややかだった。

それでもこの女は。

「零号機は凍結中です、初号機を使うお積もりですか?!」

ゲンドウを見上げ叫ぶミサト。

そうこれは儀式、彼女の中の正義を作り上げるための、ゆえに喜劇となる。

それを操るものがいると知らず。

「ほかに方法が無いわ」

「ちょっとレイはまだ動かせないわ、パイロットがいないわよ!!」

「さっき届いたわ」

「まさか」

「マジなの」

「でも、レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ!! 今きたばかりのこの子にはとても無理よ」

「座っていればいいわ、それ以上は望みません」

続く、続く、喜劇が続く、己が心をだます偽善の宴、愉快な愉快なショーのうち。

愉快な儀式。

「しかし!!」

「今は使徒撃退が最優先事項です。
その為には誰であれエヴァと僅かでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしかないわ
解っているはずよ、葛城一尉」

「そうね」

さぁ儀式は終わるようだ、これでこの女は自分の信じる正義の僕となった。

欲という名の正義に。






ところでシンジ達はというと。

お猿さんの会話など無視して、いつの間にか起きていたウエストを囲んで。

「じゃ、予定通り頼みますよ。
先生(ウエストのこと、怪しげな知識の摂取源であるから)。」

「うむ任せるのであーる、交渉とは重責であるが何心配要らないのである、この大天才。
愉快に、面白くプリティーに交渉するのである。
どうせどうなってもいいのであろう?」

交渉には絶対必要ない要素であろう。

「まぁ、そうですわね、大十字さんからは先ほど配置についたと言っていましたし、どうでもいいですけど、あの人も目立ちたがりですわよね」

「お嬢様、それは男のロマンです、認めてあげてください」

「そうなのかロボ、エルザよくわかんないロボ」

と雑談、というか計画というか、まぁ落ち着いてはいた。

なにやら一人かなり迷惑な人物が張り切っているようであったが。

なおウィンフィールドの意見は男子には満場一致で受け入れられた。




そして大義名分を得た女が囀る。

「そうね、シンジ君乗りなさい」

「座っていればいいわ、それ以上は望みません。
もう一度言うわ、シンジ君あなたが乗るのよ」

それに拍車を掛けるリツコ。

で、それに答えたのが。

「やっとこっちの出番であるか、待ちくたびれたのである」

ウエスト。

「シンジ君、乗りなさい」

あっさりブッチされた。

「無視するなである、我輩シンジの保護者であるからして、シンジがこのようなものに乗るかの許可は我輩がするのである、勿論シンジが嫌がれば駄目であるが、これでも我がライヴァル、大十字九郎により任されたのであるからして、我輩その責を放棄するなどインポッシボ〜〜なのである、そんなことする可能性、トースト齧った女の子と朝ぶつかって、それから始まるラブストォーリーが起こるくらい、ナッシングであーる」

つまり無い。

「うっさいわねー、シンジ君と話してんのよ、黙りなさいよ」

やっぱり発言はブッチされている。

「大体我輩を誰だと思っているのであるか。

1000年に一人と言われた大!!天!!才!!
ドクターウエストであるぞ。
+シンジの保護者」

ちょっとムカついたのか、大声で名乗っている。

「そこの髭、こっち向くのである、そら髭、むさくるしい髭、向かんか髭、無視するなである髭」

髭コールである。

ついでにゲンドウかなり頭にきているのか青筋がかなり目立つ。

それでも無視を決め込んでいたが。

どうもウエストの雰囲気からまともに取り合いたくないらしい。

気持ちはわからんでもない。

「シンジ、乗れ」

やっぱり意思疎通する気の無い声で命じるが。

「そこの先生がいいって言ったらいいよ、だから交渉はそっちで」

と優雅にお茶を飲んでいた。

ウィンフィールドが持ち込んだものらしい、執事の鑑である。

どうやら是が非でもウエストと交渉をさせたいらしい。

ついでに理由は愉快だからと髭と会話しても意味が無いから。

「冬月。
予備が使えなくなった、レイを起こせ。」

内線をとり二言三言で切る。

ミサトがシンジに直接声を掛けるが無視、ウエストは持ち込んだアンプでギターをかき鳴らし叫んでいた。

主に髭に。

「へーイ、そこな髭、いい加減会話するのである、やはりシンジの言うようにおサルなのであるな、しかしシンジよ、おサルは霊長類に準じるのである、なんと人の言葉が簡単ならわかるであるぞ、意思疎通が可能なのである。
それを同列にならべるは何たる無礼、先生として言うのである、訂正しないと、メッ、と。
お猿さんに失礼なのであるぞ、あれは原始生物あたりである」


ゲンドウ、こぶしが震えている。

「おっ、怒ったのであるな、短気である、やっぱり本能で動いているのであるな、人間ではないのが確実視、これ我輩により規定。
学会報告である
『脅威髭面の珍獣、服を着る異形生物、子供は見ちゃ駄目よ、なんか卑猥だから』、というタイトルでいくである」

ウエスト本領発揮、人の神経逆なでする才能、これは神が与えたであろう大天才であった。

いや、勿論科学者としても優秀なんですけどね。

ついでにゲンドウ全身がブルブル震え、切れ掛かっている。

その短い堪忍袋でよく耐え切ったであろうと賞賛しよう。

でも話の本筋とはあまり関係なかったりする。




綾波レイを乗せたストレッチャー到着。




再び僕が語ろうかな。

今度が僕だけが語ろう。

余計なもの(作者主観の文)無しでいくよ。

さぁ、さぁ。

ヒロインが入場したようだ。

舞台にヒール、ヒロイン、有象無象(ウエスト)、と来ると後必要なのはヒーローじゃないか。

来ておくれ、来ておくれ、二人の主人公よ、二人のヒーローよ、古の書を、魔道所を携えたヒーローよ。

外道の知識を持って、正しい怒りを持つ者よ。

劇場を盛り上げておくれ、観客である僕を楽しませてくれ、君もそうだろう。

ここからだ、酷く愉快なコメディがここから始まるんだよ。

役者はそろったんだ。

ここからだよ。

さぁたのしもう、耳を澄ませよう、この傲慢なる調べが僕を酔わせるのさ。

あの女はこういった。

立つことも苦しそうな、その白磁のような白い少女が立ち上がろうとするさまをみて。

「あんな状態の女の子を乗せても平気なの!!」

乗せようとしているのは自分たちなのに。

それに、少年が自分の命を捧げることをさも当然のように思っている。

そうここで、彼女が望むのは、少女の苦しむさまを見せてそれを自分のせいだと思い込ませる。

何たる手法だ、言の葉を誤魔化して、少年の心を苛ませ自分の心を癒している。

何たる甘美だ、甘いよ、美味しいよ、この女はなんて甘いにおいがするんだろう。

はぁ、でもそれは僕のお気に入り達が怒る手法だ、それはそれで美味しいものを作り上げてくれるのだろうけど。

さぁ、どうなることやら。

はは、主演男優も参加するようだ。

臆病者、誰がだい、シンジ、ノー、それは男自身だ絶対者という立場が無ければ、権力という鞭を持たなければ、蹂躙することでしか人を見れない男のことだ。

この男もだ僕を酔わせる、楽しみが増す。

どんな風に苦しんでくれるんだい。

長くゆっくり苦しんでおくれ、僕の退屈を癒してくれ。

さぁ、語り部は退場しよう。

覇道のお姫様、出番だろう、その力存分に振るうがいい。

君の懐刀、魔を断つ剣は息吹いているよ。

その刃をふるうときを心待ちにしているよ。






「さて、ウィンフィールド、もう茶番はいいでしょう、はじめますよ」

「御意に、お嬢様」

「機械人形、貴女は、私が相手をしているうちにあの少女を保護してくださりませんか。
連れ帰るとしましょう」

「判ったロボ」

瑠璃は携帯電話を取り出し、何事かを告げた、ついでに相手は国連事務総長であった。






「さて、六文儀ゲンドウ特務二将、そろそろ茶番は終わりと行きませんか」

いまだ言い争っていた、ゲンドウ、ミサト、リツコ、ウエスト。

シンジは無視を決め込んでいた。

そこに響き渡る鈴を鳴らしたように響き渡る声。

「今だ、指揮権はネルフには無い、そうですわよね。
戦略自衛隊は大敗を喫し、何故か、その指揮権は国連軍に移譲され、いまだこの第三新東京市には使徒は侵入していない」

朗々と語り続ける。

「では何故、国連軍は効果が無いと思われる波状攻撃を繰り返しているのですか、疑問ですわね、戦争を知らない戦略自衛隊ならいざ知らず、百戦錬磨の国連軍、それを判断できぬほど愚かな集団でも、面子に拘る人間もいない筈ですのに」

「何が言いたい」

そう、ここもこの男のシナリオから外れた、予定以上の国連の介入。

ドス聞いた声で瑠璃を睨み付ける。

悪鬼のような、威圧感だけで交渉を乗り切ってきた男の睨みなどどこ吹く風といった風にあしらい。

「ええ、国連には切り札が残されています、シンジさん、そうですわよね、我等覇道財閥が資金提供を行い作り上げた国連軍特務部隊“ブッラク・ロッジ(黒き聖域)”の一柱、“アンチクロス(逆十字)”が一人、大十字シンジ特務少佐」

そして今まで沈黙を湛えていた少年が顔を上げる、強い意志を秘め。

「どういうことだ、シンジ」

「どういうことよ」

「つまり、現在の指揮権は私たちにあるということです」

いまだ理解し得ない愚者に瑠璃が言葉を放つ。

「「なっ!!!!!」

「幾らあなた方が、国連所属の対使徒特務機関といえど完全非公開、使途不明金はすでに看過できない額となっているのですよ、やりすぎたようですわね。
事態を重く見た国連は我等覇道と共に、保険を掛けたというわけです。
そして私たちはその最終監察官、貴方達は直前にその決戦兵器とやらのパイロットを収集する不始末。
よって私、国連軍元帥覇道瑠璃の名において、現時点においての特務機関ネルフの交戦権を凍結、同機関の設備を一時徴収、特務部隊、“ブラックロッジ”へと貸与されます、なおこの命令に対して国連事務総長より白紙委任状を頂いております、拒否は銃殺刑として対処いたしますのでお気をつけを」

その言葉が終わるかどうかというところでケージに雪崩れ込む、ネルフ陸戦部隊。

「貴様ら、この小娘を捕らえろ」

と、命ずるが、動こうとしない。

「どうした貴様ら、逆らう気か」

その中で隊長と思われる人物が瑠璃の前に進み出て。

足を揃え敬礼をする。

「元帥閣下、ご命令を」

そう、陸戦部隊はゲンドウが手ずから組織した保安部や諜報部とは違い、国連軍からレンタルしただけ、所属こそネルフとなっているが、その実、籍はいまだ国連軍、しかも元帥である瑠璃はゲンドウの上官に当たる、まともな軍人の陸戦部隊は瑠璃の指揮下に入ったのである。

所詮軍隊、縦割り社会、上の命令は絶対である。

それに何企んでいるんだか判らんおっさんより。

まだ年若い女性のほうが指揮下に入るのはマシだった。

覇道の名を冠するならば、従わぬ道理はない。

そうそれだけ、覇道の姓は力を持つ。

どうせゲンドウも学者上がりの、戦争シロートにはかわりない。

それに扱いも悪いてきている、どうもないがしろにされがちの陸戦部隊は、作戦部や保安部などとは仲が悪かったのも原因だろうが。

そしてわずかに微笑んだ瑠璃が下した命令は。

「発令所を確保を、抵抗者は射殺しても構いません、また六文儀ゲンドウ二将を凍結が解けるまでの監視を」

凛とした声で命ずる。

「後、先ほどの発言は後ほど国連議会で糾弾されうるものと思っておいてください六文儀総司令閣下、なおそのような発言が続くとなれば貴方といえど射殺いたしますので」

この脅しは効果覿面だったようだ。

人が十億死のうと自分が生き残ればいいと信じている男である、何より自分の命が大事なのだ。

瑠璃を憎悪に染まった目で睨み付けるも、それ以上する度胸も無いのだ、ただ睨み付けるだけ。

対抗できるわけが無い、それがわかっているから。

所詮、ゲンドウが雇った、保安部諜報部は戦闘部隊ではない、色々後ろぐらいことをやらせてはいるが、戦争のプロではない。

陸戦部隊は戦争のプロなのだ、そして下された銃殺命令。

確実に実行される、抵抗は無意味、それでもこの度量の狭い男が認められるはずが無い。

暗い怨念を宿し、瑠璃を睨み付けていた。

そしてさらに囀る愚かな女。






愉快、愉快だ、さぁ我らの女優が叫びを上げるよ。

甘美で愚かな叫びを、喉を枯らし、その思いのたけをぶちまける。

ああ心地良いなんて美しい調べだろう、なんて心騒ぐメロディーだろう。

ぴったりの演奏曲じゃないか。

女優は叫ぶ。

レディ・ジェネラルに。

「勝手に何やってんのよ、こちとらネルフなのよ、国連の有象無象がしゃしゃり出てて来るんじゃないわよ」

それを往なされ、さらに叫ぶ。

「出て行けって言ってんでしょうが、このビッチが!!!」

ああ、己の復讐のために吠える、ああ滑稽だ、偽りの立場が与えた偽りの力、それに縋るんだね。

ああなんて愉快なヒールコメディアンだろう。

「さっさと指揮権を私に渡せつってんのよ、このクソ餓鬼が!!」

ほらもって囀っておくれ。

おっと銃を取り出した、ああ出てきたね、颯爽たるナイト、ウィンフィールド。

その銃で脅すのかい。

ああ、愚かだどうにかなるはずなんて無いのに、巨大な白熊に、豆鉄砲が効かぬように。

その銃口を僕の膣に入れてくれ、それだけで僕は絶頂に達せれるよ。

九郎君は詰まらないんだ、抱いてくれないんだから。

ああ、甘美だ、愉快だ、その銃口から僕に、鉛の弾丸という精液を注いでくれ。

愚者の甘美な苦痛というスペルマを。

ああ、お姫様、命じたね。

何だ、拍子抜けだ、もっと囀らせてくれ、僕がおき上げれないくらいに感じるまで。

お預けは酷いじゃないか。

「あんた達、何裏切ってんのよ、離せ、離せ、使徒は私の指揮じゃないと倒せないのよ、あんた達人類を滅ぼす気、このテロリストが、腐れビッチが、離せーっ」

ああ、退場か。

足を撃たれて、のたうっているよ、ああ醜い、醜悪だ言葉を理解できないとは愚かだ。

自分を見れないというのは愚かだ。

誰が優秀なんだい。

ネルフにそんな人材いるわけ無いじゃないか。

忠実な、無能な駒しかいない。

僕を楽しませる、人形劇の人形しかいないんだ。

だったら楽しませてよ。

ああ、タイムリミットだ。

来るよ、来るよ、無垢なる刃が。

さぁ、お出ましだ。







発令所。

自らの兵士に制圧され、さらにそこに座すオペレーター達が、本来と異なる指揮者の命により操作する。

目標、使徒の監視。

それを睨む、愚かな男、それに付き従う老人。

そして科学者、足を撃たれた無謀なる指揮者。

周囲を取り囲まれながら、瑠璃のシンジの背中を憎悪をたたききつける。主演達。

それを意にも介さず、モニターを見つめる5対の目。

瑠璃が通信機を取り。

紡ぐ。

「大十字さん、出番ですわ。」

その言葉で席に着いたウエストが操作するモニターには一組の男女が写る。

長身の男性は、黒髪で引き締まった体付きに、世間的に見て十分見栄えのする容姿の二十歳をいくらか超えたであろう男。

女性は、まだ女性という年齢にも達していないであろう、銀髪の少女、翡翠色の神秘的な目を持ち、その幼い肉体にも年齢不相応の魅力がある。

モニターに写る二人が口を動かす。

その声が通信に繋がっているのだろう。

こちらに届く。

「了解、姫さん、行くぞアル」

「応っ!!」

そして歌いだす、魔を断つ剣を呼び出す祝詞を。

どこまでも住んだ二人の声が唱和する。



憎悪の空より来たりて

正しき怒りを胸に

我等魔を断つ剣を執る

汝、無垢なる刃−デモンベイン−



そして空間に描かれる、巨大なヘキサグラム(魔法陣)、暗雲が垂れ込め雷鳴が響く、空間が爆砕する。

そして何も無いはずの空間から現れるは、鋼の巨人。

機械仕掛けの神。

魔を断つ剣。




さぁ、再び語り部だ。

やっと来た、お待たせだ。

無垢なる刃、神殺しの刃、純粋なる殺意。

さぁ、神に、天使を冠する襲撃者を撃退してくれ、そして主演達を驚き、恐怖に染めてくれ。

その恐怖は僕のオードブルだ、舌も蕩ける、脳髄に響く甘美なソースだ。

まだまだ僕は飢えている。

おおっと、語り部の仕事をしないとね。

魔を断つ剣、それは機械の神、鬼械神(デウス・マキナ)、神の模造品。

外道の知識、魔術の集大成。

刃金を纏う神、人が作りし神。

そう。

そして魔を断つ剣は、こういうものだ

You’re innocent rage.

You’re innocent hatred

You’re innocent sword

You’re DEMONBANE

汝は、憎悪に燃える空より生れ落ちた涙。

汝は、流された血を舐める炎に宿りし、正しき怒り。

汝は、無垢なる刃。

汝は魔を断つ剣(デモンベイン)

嗚呼っと、九郎君、もう決めてしまうのかい。

焦らないでいいのに。

ああでも、一瞬で吹き飛ぶ天使、その肉片を血のシャワーを浴びるのも悪くない。

ああ、聞こえるよ破壊の弔辞が。

ああ、お姫様、君もせっかちだ。

九郎君はすぐさま、アレの使用許可をお姫様に求める。

そう、第一種近接昇華呪法、レムリア・インパクト。

ああ、恐ろしい、幾ら僕でも、これには滅びてしまう。

「ヒラニプラ・システム発動。

言霊を暗号化。

ナアカル・コードを構成せよ

ナアカル・コード送信」

それを伝えるは、アーカムの地、彼らの本拠、お姫様の言葉と、かの地にある技術を持って、デモンベインの封印が解ける。

ああ、始まるよ、すべてを消し去る破壊の炎。

さぁ、後は語り部の仕事ではない。

今回はこれで退場だ。

僕は傍観者になろう







モニターに写る異形の機械。

それはモニターを睨む愚者たちにとって、脅威だった。

それでも自分たちでしか倒せないという、愚かな思い込みにより、自分たちを保つ。

だがすぐさま崩壊するだろう。

モニターに写るデモンベイン。

デモンベインが光ぬ包まれ、後光の如くその背から光り輝く五芒星、エルダー・サイン、邪悪を退ける結印が。

そして響く男の声。

「光射す世界に、汝ら暗黒、住まう場所無し
渇かず、飢えず、無に帰れ!!
レムリア・インパクト」


そしてデモンベインの右手が使徒に叩き付けられる。

「昇華!!」

少女の咆哮。

そして生じる、すさまじい光の爆発。

その光が晴れたときには使徒はすでにおらず。

ただただ、すさまじいクレーターが残っていただけだった。




第三使徒殲滅。












To be continued...


(あとがき)

この度、このサイトに投稿させて頂くことになりましたsaraというものです。
以前からここの捌かれる世界を読んでいたのですが、私もアンチ物は好きなんですが、書くのは初めてでした。
本格的に髭、牛、眼鏡が弄られるのは次回以降ということで。
なお現在、アスカ、リツコ、マヤの扱いを決めかねています、ご意見がありましたら参考にさせていただきたいので、真に勝手ながらお願いします。
また文章がおかしいなどのご指摘、以下変なところがございましたらご指摘ください。参考にさせていただきます。



(ながちゃん@管理人のコメント)

sara様から「無垢なる刃金を纏う者」の第一話を頂きました。しかも初っ端から大作です。
EVA+斬魔大聖デモンベインのクロスオーバーとのことですが、実は管理人はデモンベインは未プレイなので、登場人物のことは詳しくは知りません。
尤も、思うところがあって、一月ほど前にWin版を中古で買ってはいるのですが、現在積みゲー状態に陥っています(汗)。

いえ、なかなかやる時間がないもので・・・。
でも・・・すごく面白いですよ、コレ!思わず惹き込まれました!ホント、個人的にも続きが楽しみです!
シンジの性格も、第二特務機関モノという設定も、実に管理人好みです。
果たしてシンジは初号機に乗るのか?
レイはどうなるのか?
鬚や牛はどんな風に無様な地団駄を踏むのか?(笑)
いや〜、見どころ満載ですな〜♪
皆さん、作者様に応援・感想メールを送って、次作を遠回し(?)に催促しましょう〜♪
作者(sara様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで