エピローグ
presented by 紫雲様
〜3年後〜
NERV本部―
「キョウコ、この前の実験データだけど」
「ユイ、あれなら技術部へ送っておいたわよ」
使徒迎撃のという役目を終えたNERVは、蓄えてきた技術力を平和利用するための研究機関へと姿を変えていた。
碇ユイ―現世への復帰後、新生NERVの最高共同責任者に就任。生命工学技術を発展させ、臓器や四肢の培養・移植技術を実用化させる。
惣流=キョウコ=ツェペリン―新生NERVの最高共同責任者に就任。ユイとはライバル兼相棒として、生命工学史・医療技術史にその名を残す。
「シゲル、お昼だけど、ジオフロントで食べない?」
「ああ、いいとも。行こうか、マヤ」
「俺もお昼にするか・・・って、何で毎日見に来るんだよ、君達は」
二人を見送る日向は、自宅から持参してきた弁当に手を伸ばす。そこに桜澱粉で♥がデザインされているのを、女性職員達にひやかされている。
青葉シゲル―使徒戦役後、総務部部長に就任。階級は三佐。伊吹マヤと結婚し、子供はまだいないが、幸せな結婚生活を送る。
伊吹マヤ―使徒戦役後、技術部部長に就任。階級は三佐。現在は青葉マヤと名乗る。リツコに追いつこうと、現在も技術の向上に余念がない。
日向マコト―保安部部長に就任。階級は三佐。作戦部が保安部に統合されたので、現在は保安部所属。マトリエル戦の際のウグイス嬢と同棲中。実は子供が一人いる。
「やれやれ、いつになったら、農作業に専念できるんだか」
「だったら、ちゃっちゃと仕事やりなさいよ!」
ミサトの叱咤に、加持は首を竦めながら、モニターのスイッチを入れる。映った相手は国連事務総長である。精一杯真面目な顔を作ると、加持は流暢な英語を喋り出した。
加持リョウジ―使徒戦役後、新生NERVの副責任者兼諜報部部長に就任。階級は一佐。スパイとしての情報網を活かして、NERVを裏から支える。
葛城ミサト―使徒戦役後、新生NERVの最高責任者補佐に就任。階級は一佐。加持と結婚し、公私ともに息の合うパートナーとなる。
「おい、六分儀。差し入れだぞ」
「・・・」
NERVに残された過去の遺物―営倉。そこに冬月は来ていた。面会相手はかつての上司ゲンドウ。だがゲンドウの両目には、かつての光は宿っていなかった。
六分儀ゲンドウ―ユイから正式に離婚を言い渡されたショックで、精神に異常をきたしてしまう。現在は営倉の外へ一歩も出ずに、食事にだけ反応する。
冬月コウゾウ―栗林に対して提出されていた総務部職員の連名による嘆願書のおかげで助命される。現在は第1中学校で教職に就いている。
第3新東京市―
「はい、抱いてあげてください」
「おお、可愛い子だ。名前は何て言うのかね?」
「大きい方がリサ、赤ん坊がエミです」
今日は日曜日。日当たりの良い一戸建ての家は、夫婦となったウィリスとリツコの自宅である。そこへ栗林が2人の娘の顔を見に、遊びに来ていた。
ウィリス三佐―使徒戦役後、いくつかの役職を経て、現在はUN太平洋方面軍参謀長に就任。階級は准将。現在は第3新東京市に在住している。
赤木リツコ―使徒戦役後、NERVを辞めて第3新東京市総合病院へ就職。少しでも罪を償おうとした結果である。2人の娘、リサ・エミをもうける。
栗林司令―使徒戦役後、UN太平洋方面軍最高司令官に就任。階級は中将。だが体力の衰えを理由に引退。現在は第3新東京市でノンビリとした余生を送っている。
「レナさん、あの3人は?」
「昨日からドイツへ行ってるわ。向こうの経済界の著名人相手に、お披露目するんだって」
「ふーん、センセも大変やな、いつかは巨大財閥のトップになるんやもんな」
「まあ、惣流と綾波がいるんだ。問題はないと思うぜ?」
「ああ、シンジ君。どうせなら僕も連れて行って欲しかったなあ、パートナーとして」
第1高等学校2年A組。誰が言った訳でもないのに、5人はお昼を一緒に食べようと屋上へ向かっていた。
洞木ヒカリ―第1高等学校へ進学。将来は大学進学予定。トウジの鈍感さにヤキモキする毎日を送る。
碇レナ―碇ユイの養女として引き取られ、碇レイの妹として生活する。現在は高校生活を満喫している。カヲルに片想い中。
鈴原トウジ―第1高等学校へ進学。将来は体育教師を目指して、ヒカリを家庭教師に勉強に励んでいる。シスコンは治らずじまい。
相田ケンスケ―第1高等学校へ進学。将来はジャーナリストを目指しており、使徒戦役についての記事を発表するのが夢。
渚カヲル―使徒戦役後、使徒としての力を封じ、人間として生きる事を選択する。現在は高校生モデルとして活躍中。男女を問わない交際履歴の持ち主である。
ドイツ―
「リィゾ、フィナ、プライミッツマーダー、準備は良いわね?」
「万全でございます、姫様」
「ああ、今度こそ、この想い」
がぶ。
ドイツのハンブルクにある、魔術で隠された城から出発しようとする者達がいた。彼らは末弟との再会を、心の底から喜んでいた。
アルトルージュ―シンジが記憶を部分的に取り戻したことで、姉弟の関係に復帰。シンジの華燭の典を取り仕切る野望を秘めている。
リィゾ―シンジの記憶が戻りつつある事に喜びは覚えているが、対外的には、相変わらずポーカーフェイスで過ごす日々。
フィナ―シンジの記憶が戻りつつある事に、喜びを覚えて行動に移そうとするが、毎回プライミッツマーダーに邪魔される日々。
プライミッツマーダー―シンジの記憶が戻りつつある事で、今まで以上にシンジの所へ遊びに向かうようになる。今はレイとも仲が良い。
「そんな急がなくても、いいだろうに」
「何よ、志貴は楽しみじゃないの?」
「真祖、もう少し落ち着いてください。人目が集まっています」
「やれやれ・・・」
ベルリンのメインストリートを歩く4人。そのチグハグな組み合わせは擦れ違う人々の視線を集めている。そして紫の髪の美女だけが、頭を抱えていた。
志貴&アルクエイド―二人の仲は相変わらず良好。シンジの女性関係に触発されたアルクエイドの要求に、志貴は頭が痛い毎日を送る。
シオン―アトラス院の最高代表者として多忙な毎日を送る。たまに、シンジの様子をこっそり見るため、来日している。
ゼルレッチ―使徒戦役後、今まで以上に時計台へ顔を出すようになる。シンジに代わる愛弟子候補が欲しいのだが、なかなかいない様子である。
「2人とも、少しは落ち着きたまえ。一応、仮にも、まがりなりにも淑女であろうに」
「そんなに念押ししなくても、私は淑女です!」
「・・・その言い方が問題だと自覚しなさいよね」
「全く、ブラコンもほどほどにな」
豪華なVIP専用控え室にいた4人は、紅茶を嗜みながらお喋りに花を咲かせていた。もっとも一人だけは、紅茶ではなくワインであった。
ヴァン―使徒戦役後、財団自身も被った経済的・信用的損害を回復すべく、更に多忙な毎日を送る。JA量産型は、その原動力となる。
リタ―シンジの記憶が戻りつつある事で、現在は『シンジのお姉ちゃんは私よ決定戦』を企画し、激しい争いの日々を送っている。
スミレ―リタとは相変わらず喧嘩するほど仲が良い関係。今はリタだけではなく、アルトルージュとも、同じような関係になりつつある。
トラフィム―暗黒街の支配者として権力を保持するフィクサー―なのだが、現在の野望はシンジの子供の名付け親になる事である。相変わらず爺馬鹿。
「お兄ちゃん、何か飲む?」
「シンジの分は、私が準備してあげるの!これでもお嫁さんなんだから!」
「・・・婚約はしてるけど、まだ婚姻届は出してないよ?アスカ」
豪華なVIP専用控室。苦笑するシンジに、アスカがムッとした表情を浮かべる。
「怒らないでよ、アスカ。今日はお披露目なんだから、ね?それに姉さん達も来ている訳だし」
「そうね。未来のお義姉さん、お義兄さんに失礼のないようにしないと!」
「もう手遅れなのね・・・」
「どういう意味よ!レイ!」
噴火するアスカを見て、レイがクスクスと笑う。使徒戦役から3年、レイは感情を表に出すようになっていた。
「ところで、アスカ。どうしてアスカは死徒にならないの?吸血鬼は嫌なの?」
レイの質問は、シンジも思っていた事であった。
「あのさ、死徒になったら、子供が産めるかどうか分からないでしょ?だから子供を産んでから、死徒になろうと思ったのよ」
「ふーん、それじゃあ、あとはお兄ちゃん次第、ってことね?」
「レ、レイ!そう言う事は・・・」
顔を赤らめるシンジに、レイとアスカが屈託のない笑いを浮かべる。
「そうね、死徒になったら、私も吸わせてもらうからね、シンジ」
「だそうよ、お兄ちゃん」
「・・・お手柔らかにね」
碇レイ―シンジ=ブリュンスタッドの妹として、長い生活を送ることになる。その身に宿った使徒としての力もあり、数年後に27祖の一角を担う事になる。通称は『蒼の姫君』
惣流=アスカ=ラングレー―シンジ=ブリュンスタッドの妻として、これから5年後に死徒となる。通称は『紅の姫君』。
シンジ=ブリュンスタッド―記憶の部分的な回復は、代償として固有結界を失うことであった。死徒の王たる権能も失ったが、それでも彼は、その事を後悔した事は無かった。
Fin...
(2010.05.29 初版)
(あとがき)
紫雲です。まずは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
約5カ月間、連載させて下さった管理人のながちゃん様、ありがとうございます。
感想を下さった多くの方々、ありがとうございます。直接メールを下さった丸与様と、もう一人の方もありがとうございました。何故、もう一人なのか?実は私のパソコンがウイルスのせいで初期化せざるをえなくなり、保存しておいたメールが吹っ飛んでしまったからです。お心当たりのある方、せめて紫雲が喜んでいた事だけは信じて下さいw
感想掲示板にカキコして下さったYuika様、Hexi様、たあぼ様、ais様、胼胝様もありがとうございました。特に胼胝様、JA以来、毎週欠かさず感想をありがとうございました。
私とあなたの仲は(←問題発言)明日のジョーのセコンド役となった時田博士のおかげといっても過言ではございませぬw
初めてのSSということで手さぐり状態でしたが、最後まで書き続けられて安堵しております。ホント、途中でリタイヤしなくてよかったw
もし『俺のHNが漏れてるぞ〜!』という方がおりましたら、ご連絡をお願いします。決してわざとではありません。それだけは信じて下さい。
このエピローグをもって堕天使の帰還は終了となります。これ以上、番外編を書く予定も、ジュニア世代を書く予定も無いので、堕天使の帰還は本当に終わりとなります。
ですが、次回作の構想はありますので、もしよろしければ、そちらを応援していただければ、本当にうれしく思います。
こちらの予定としては、6月の最初の土曜日に次回作の基本設定と予告編をアップさせていただく予定です。ながちゃん様の倫理基準に通ればという条件付きですがw本編連載時期は現在不明ですが、遅くとも7月最初の土曜日までには開始します。
今度のSSは本編再構成クロスオーバーとなります。何とクロスなのか?それについては来週アップまでお待ちください。新ジャンル開拓、アンチ・シンジ・・・良いのか、主人公アンチにしちゃってw
まあ、アンチというのは言いすぎですが、今度のシンジ君は当社比400%級の不幸属性の持ち主です。皆様、可愛がってあげてください。
それでは、皆様、また次回作でお会いできる事を願っております。
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