碇シンジの合法ロリルートへの道 (not18禁)

エピローグ

presented by 紫雲様


2025年、第3新東京市―
 『次のニュースです。第○○回衆議院選挙の告示が本日から開始されました。有識者によれば、政権与党である自民党が過半数を獲得できるのか?が今回の焦点になるという事です。と言うのも、前回の選挙において野党第2党となった連合政党が、今回の選挙において他を引き離して野党第1党となる事がほぼ確実視されている為です』
 テレビから流れるニュース。その画面に映っていたニュースキャスターの姿が消え、次の瞬間には金色の髪を靡かせる、やや子供じみた面影を残す美女が画面に映っていた。
 『連合政党党首を務める草日華凜氏は、前回、自ら結成した連合政党を率いて初出馬初当選を成し遂げました。女性ばかりの政党、そして全員が初出馬という状況に、厳しい意見が相次ぎましたが、国会においてその存在感を強烈に印象付ける事に成功。他政党から選挙協力の要請も受けていたそうですが、今回はそれら全てを断り、あくまでも単独政党として戦っていく、との宣言を行っています』
 「ふうん?華凜ってば、相変わらず頑張ってるわねえ?」
 カランと音を立てて、ガラスコップの中に注がれた琥珀色の液体を一気に飲み干した美女が、楽しそうに画面を眺めていた。
 「確か、桃華達も協力していたのよね?」
 「そうですよ。一言で言えば蜀魏連合軍ですからね。間接的にとは言え、あの臥竜の協力も得られるとあって、華凜さんは上機嫌でしたけど」
 連合政党党首華凜。副党首桃華。その下にかの2国の名だたる軍師達が要職に就き、采配を振るっているのである。覇王の血が滾るのは、ある意味当然と言えた。
 「でもまあ、平穏な生活を望む人達は、距離を置いているみたいですけどね」
 「ふふ、貴方の所に引っ越してきたんでしょ?噂には聞いてるわよ」
 「まあ誰もが戦いに血を滾らせる訳じゃありませんから。そういう生き方が有っても良いとは思ってますよ」
 目の前の美女に付き合う様に、グラスを軽く打ち合わせる男の影。
 「・・・一つ良いかしら?」
 「何でしょうか?」
 「麦茶で付き合うのは止めなさいよ」
 「・・・いや、だって酒臭い息吐きながら、子供の相手をしろ、と?」
 そこへ『バン!』と音を立てながらドアが開く。
 「お姉様!またシンジをお酒に付き合わせてるの!?まだ朝よ!?」
 「いや、朝から酒と言うのも乙な物で。それに天の国には美味しいお酒が山ほど」
 「問答無用です!少しは働いて下さい!」
 グイッと首根っこを掴まれて、ズルズルと引きずられていく雪蓮である。とは言え、ウイスキーの瓶を手放そうとしないのは、さすがと言うべきなのかもしれなかった。
 「冥琳!お姉様はここよ!」
 「え!?ちょ、冥琳!?ごめん!・・・いや、だから・・・」
 瞬く間に小さくなっていく声。そこへクスクス笑いながら、新たな顔ぶれが姿を見せた。
 「相変わらずね、雪蓮さんは。あれでも彼氏が出来たと聞いていたんだけど」
 「天化さんの事ね。その内、崑崙山に引っ越すんじゃないかしら?そう思わない?叶」
 蓮華の前に現れたのは、スタイルで互角の勝負を挑みうる美女―叶であった。
 「本人が幸せなら、それ良いと思うけど。みんなはどう思う?」
 クルッと振り返る叶。そこにいたのは、やはり10年と言う時間の間に、美しく成長した元・少女達―現・美女の集団であった。
 「雪蓮さん、幸せになれそうですね。そう思わない?詠ちゃん」
 「月の言う通りだとは思うわよ?崑崙山でも、あの小覇王なら生きて行けそうだし」
 「崑崙山はサバイバル前提なんですね」
 「琉瑠ちゃん、それは違うと思いたいな。蒲公英ちゃんもそう思うでしょ?」
 「雪蓮さんなら、とんでもないパワーアップして戻ってきそうだよね、雛里ちゃん」
 実に賑やか極まりない御一行である。
 「ねえ、時間は大丈夫なの?」
 「あ、そろそろ移動しないきゃいけないな」
 エプロンを外し、手慣れた手つきで手荷物を纏める。そして準備を整え終えると、男は女性陣を引き連れて外へと出た。
 燦々と降り注ぐ日光が、一行を少々手荒に出迎える。
 「今日も暑くなりそうだな」
 そう呟いた男―碇シンジは真夏のアスファルトに一歩を踏み出した。

 カランカランと音を立てて開くドア。まだ『CLOSE』と書かれた板がぶら下がっているが、そんな事は全く気にしない。
 何故なら、ここが彼らの職場―喫茶店NERVだからである。
 主な客層は子連れの若奥様を中心としており、バイキング形式のスタイルも概ね好評なお店であった。
 「おまたせ。手伝うよ」
 「掃除はもう終わってますから、仕込みをお願いしますね!」
 エプロンをかけて、箒を片手に声をかけてきたのは先に出勤―日替わりの当番制である―していた明命である。その肩越しに相変わらず眼鏡をかけたままの亞莎が口を開いた。
 「果物が若干足りないようでしたので、10時に配達をお願いしておきましたよ」
 「ありがとう、亞莎。それからあの子達の朝御飯は」
 「もう恋さんが終わらせてますよ。今はあそこに」
 スッと窓の外を指差す亞莎。そこには小さな子供達と、見慣れた顔触れの動物達に囲まれながら、ノンビリと時間を過ごす恋の姿が有った。
 ちなみにその脇には、彼女を主と慕う音々々の姿も存在している。
 「それから、いつもの注文がもう入ってますよ?」
 「了解、じゃあ早速取り掛かろうか」
 全員で仕事を分担しつつ作業を進めていく。やがてオーブンレンジから熱々のクッキーが取り出された頃に、壁時計が10時を告げた。
 「よし、じゃあ届けて来るから。お店は頼んだよ」
 エプロン姿のまま、クッキーを手土産に店外へと出ていくシンジ。顔見知りとすれ違う度に会釈をしながら、蒸し暑い路上を歩く。
 目的地は近くの保育園である。
 「おーい!おやつ持ってきたぞ!」
 その声に、子供達から『おやつだあ!』と歓声が沸き起こる。続いて、保育園の事務室から見慣れた顔触れが顔を見せた。
 「おお!待っておったぞ、シンジや!」
 「甘い物には目が無い美羽様も可愛いですわ♪」
 「Danke!ほら、こっちよ!」
 「・・・ありがとう、碇君」
 おもにNERV職員の子供達を対象に預かる保育園。それがこの建物である。そしてここで働いている保母役は、美羽、七乃、アスカ、レイの4名であった。
 そして―
 「警備ご苦労様。一息ついたらどう?」
 「・・・そうだな」
 「有り難い。ちょうど小腹が空いてきた所だったんだ」
 施設の専属警備員として勤務しているのが思春と雅であった。そしてその背後には部下らしい黒服が数名姿を見せている。
 「そちらの分もありますから、交代で食べて下さい」
 「「「「「「ハッ!」」」」」」
 そこへ子供達の中から、トテトテと近づいてくる人影が複数。その人影をまとめて抱き上げるシンジ。
 「「「「「「ぱーぱ?」」」」」」
 「おやつの時間だから、手を洗っておいで」
 「「「「「「うん!」」」」」」
 パタパタと一斉に手を洗いに走り出す子供達。
 そう、保育園児達の中には、シンジが実父という子供が複数名存在しているのである。
 世間からの厳しい視線も注がれてはいるが、とりあえず『幸せ』と言えるぐらいには家族間の仲は良好であった。
 「それじゃあ、御昼頃になったら昼食持ってくるからね」
 「期待してるわよ!」
 「偶には奥さんが作ってくれた食事を食べたいんだけどね?」
 シンジの発言にドッと上がる笑いの声。そのまま笑い声に背中を押されるようにして、シンジは保育園から立ち去った。

 「・・・やっぱり、私って、影、薄いのかな?」
 保育園の事務室最奥で経理仕事をしていた白蓮がコッソリ溜息を吐いていた事は、雅だけが知っている事実である。

夕刻、喫茶店NERV―
 「母さん、子供達の面倒お願い!」
 「はいはい、その分、しっかり働いて来なさい」
 一人息子に孫の面倒を頼まれ、上機嫌に返したのはユイである。こちらの世界へ帰還後、崑崙山の協力も得て肉体を取り戻した彼女は、科学者として働きつつ孫達の面倒を看る事を日課としているのである。
 とくに喫茶店NERVは夕刻以降は喫茶店ではなく、美人揃いのBARとして有名な店に切り替わる為、どうしても小さな子供達の面倒を看てくれる人材は必要不可欠なのである。
 ただし、この日は通常営業では無い。
 入口には『本日貸切。また宜しくお願い致します』の札が架けられているのである。
 そこへカランカランと音が鳴り、人影が姿を見せた。
 「おや、他のメンバーはどうしたの?愛紗さん」
 「みんなは後から華凜さん達と一緒に来ます。私は先行して、その旨を伝えに参りました」
 「・・・携帯電話は?」
 瞬間、タラーッと愛紗の後頭部を大粒の汗が流れ落ちる。
 「愛紗はまた壊したのだ」
 「鈴々!それは内緒にしてって言ったでしょ!?」
 背後からの妹分―かなりの美女に成長した―のツッコミに、咄嗟に言い返す愛紗。だが周囲は笑うだけで一切取り合おうとはしなかった。
 「鈴々さん、望はどうしたの?大学から一緒に来るんじゃなかったの?」
 「・・・鈴々は望の事なんて知らないのだ!」
 おや?と眉を顰める一同。当事者はといえば、かなり険悪な表情である。そこへ遅れて入って来た人影があった。
 「鈴々、待ってってば!何でそんなに怒ってるんだよ!」
 「知らないのだ」
 「だから、さっきの女の子はゼミが同じで、ゼミの飲み会に誘われただけなんだって!お願いだから信じてよ!」
 こちらも美少年から美青年へと移行しつつある望が拝み倒さんばかりに鈴々に謝り続けるが、当の鈴々は頬っぺたを膨らませて視線を逸らすばかりであった。
 事の真偽はともかくとして、さすがに助け舟を出してあげようかと思案するシンジ。彼にとっても望は弟分である為、多少の贔屓はしてあげたいのである。
 「望、こっちおいで」
 「シンジさん?」
 「鈴々さんへの献上物を作ってあげよう」
 名案だとばかりに、すぐに厨房へと駆け込む望。一方の鈴々はといえば『私は食べ物なんかで釣られないのだ!』と言いつつも、チラチラと望の背中に視線を送る。
 そんな微笑ましいカップル―と言いつつも、実際には朱里も含めて付き合っているのだが―の光景に、小さな笑い声が向けられた。
 そこへ更にドアのベルが鳴り、本日の主役が姿を現す。
 「や、時間ピッタリだね」
 「当然よ。私を誰だと思っているのかしら?」
 傲然と胸を張りながら、華凜が入店する。その横には警備チームの責任者を務める一刀が並び、後ろには魏の軍師将軍を務めた者達がゾロゾロと続いて入って来た。
 「あれ?そういえば桃華さん達は?」
 「後から追いかけて来るわよ。崑崙山の恋人から連絡が入ったみたいだったわ」
 「それじゃあ、邪魔をするのも野暮って物ですね。先に始めていましょうか」
 ワイワイガヤガヤと銘々が好きな酒や食べ物を手に取る。そんなメンバーを前に、音頭を取るのは一刀である。
 「では、これから慰労会を始めます。グラスはあるよな?じゃあ乾杯!」
 澄んだ音とともに始まる無礼講のどんちゃん騒ぎ。シンジ達お店側は料理や酒の準備に忙しく立ち回る。
 やがて30分ほど経った頃、遅ればせながらにドアが開く。
 「ごめんなさい!遅れちゃった!」
 「別に堅苦しいパーティーじゃないから良いですよ・・・って、師匠!?」
 「久しぶりだな」
 そこにいたのは、第3の目を帽子を目深に被る事で隠していた聞仲その人であった。
 「そこでバッタリ会ったのでな、同行させて貰った」
 「それは構わないですよ。こちらへどうぞ」
 思わぬ来客に面喰いながらも、キチンと客対応を熟すシンジ。共に働く女性陣達も阿吽の呼吸で無駄なく仕事をこなしていく。
 そんな弟子の働きぶりから目をそらす最強仙人。
 会場の片隅では、酒豪である雪蓮を中心に、呉陣営のサポートの下、呑兵衛最強決定戦と銘打って激しいバトルが繰り広げられていた。
 参加者は祭、桔梗、星、霞を中心とした各陣営の酒豪達である。ただし魏陣営だけは『文字通り政治的な理由』からこの決定戦だけは参加を辞退していたりするのだが。
 別の場所では望を挟む様にして、鈴々と朱里がテーブルを1つ占領していた。つい先ほどまでは鈴々が優勢だったのだが、朱里の登場により焼き餅を焼くのを止めたらしく、今は2人で望に手ずから料理を食べさせようとしていた。
 更に別の場所では一刀を中心に、魏陣営の美女達が本音を口に出しつつ激しいバトルの真っ最中である。この光景をスクープされたら大問題は間違いないが、喫茶店NERVはそこらへんは抜かりはない。盗聴も盗撮も鉄壁の防御を貫く事等不可能であった。
 一方で蜀陣営に目を移せば、いつのまにか桃華を中心にシンジの子供達が群がっている状況であった。もともと優しい性格と子供好きな桃華である為、お店に来るたびにシンジの子供達が群がってくるのである。
 そんな光景を眺めながら、蜀の将軍軍師達は微笑ましくその光景を眺めている。
 彼女達の中には崑崙山のメンバーと良い仲になっている者達も複数いる為、将来的な光景を脳裏に浮かべているのかもしれなかった。
 「・・・ふむ」
 ウイスキーを一気に煽り、喉を焼いていく感触を楽しむ聞仲。
 「シンジ」
 「どうしました?師匠」
 「幸せか?」
 キョトンとするシンジ。だがすぐに満面の笑顔を浮かべてみせた。
 「当たり前じゃないですか」
 「そうか、それは良い事だ」
 弟子にグラスにウイスキーを注いで貰いながら、聞仲は満足そうに頷いてみせた。



Fin...
(2016.04.16 初版)


(あとがき)

 紫雲です。今回も最後までお読み下さり、ありがとうございました。
 終盤になるにつれ、粗が目立っておりますが(笑)すべては私の実力不足です。申し訳ございません。
 今回もシンジ君はハーレムEDだったので、さすがに次回はヒロイン1人にしようと考え中です。
 で、次回作ですが連載開始は少し後にしようと思います。ぶっちゃけ、充電期間と言うか、他にやりたい事があるので、執筆の時間が取れない為です。
 ・・・全てはロードス島戦記が悪いのです・・・MMOなんて見つけちゃったからw
 一応ネタはあるしプロットも出来ているので早めに執筆開始したいなあ、とは思っております。

 それでは、今回もお読み下さり、ありがとうございました。



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