使徒と死徒の邂逅

序章

presented by 焚音様


夜の公園を一人の少年、【碇 シンジ】が佇んでいた。
綺麗な満月がシンジを照らす。
「僕はいらない子だったんだね・・・」
シンジは先日、父の【碇 ゲンドウ】に捨てられ、そのまま全然知らない親戚の叔父夫婦に預けられた。そこでのシンジも厄介払いで、ただ多額の養育費のみを詐取する為だけの存在でしかなかった。それに耐え切れずシンジは叔父夫婦の家から逃げ出した。
「はぁ、これからどうしよ・・・・・・」
公園のベンチに座り、しばらくぼーっとしていると、突然前の方から声が聞こえてきた。
「こんばんは。隣よろしいかしら?」
「え、なに?」
シンジが顔を上げると、目の前に、黒いドレスを着た少女が白く大きな犬を従えてシンジを微笑みながらシンジを見つめていた。
その少女は満月と相俟ってとても幻想的だった。
シンジはやっとの思いで口を開いく。
「・・・・・・えっと、あなたは?」
「私?私は【アルトルージュ・ブリュンスタッド】。長いから【アルト】でいいわ。そして、私の横に居るのが【プライミッツ・マーダー】よ。」
そう言って、アルトはシンジの横に座る。
「それで、あなたの名前は?」
「【碇 シンジ】です」
と、アルトに自分の名前を教えた。
「そう、シンジ君ね。でも、子供がどうして夜遅くにこんな所にいるの?」
アルトの問いにシンジは俯いてしまう。
しばらくして、意を決し、シンジは堰を切ったかのように語り出した。親に捨てられた事、預けられた先の家での事を・・・・・・
「そう、辛かったのね。ねぇ、シンジ君強くなりたくない?」
「強くなりたいです・・・・・・」
弱々しくシンジは答える。
「人間じゃなくなっても強くなりたい?もしかすると死ぬかもしれないわよ。それでも?」
「強く・・・強くなりたいです!」
今度は力一杯答える。
「いい返事ね」
「今の僕に帰る場所ないですから・・・・・・」
「そう・・・それじゃあ、始めましょうか?と、その前にプライミッツ?周りに居る出歯亀共適当におっ払といて」
「ワウン!」
アルトの言葉にプライミッツは鳴く(肯定の意)と一陣の風となって闇夜に消えて行った。
そして何処からともなく叫び声が響き渡った。
「それじゃ、始めるわよ。かなり辛いけど頑張って耐えてね・・・・・・」
そう言って、アルトはシンジの首筋に口をもっていき、歯を立てた。 その行為にシンジは驚きと戸惑いの表情を見せる。
すると、自分の体の中に何かが入ってくる感覚を覚えた。しばらくすると、どんどんと体中が熱くなっていく。まさに、血が沸騰する様な、マグマの中にでも浸かっているかの様な、今にでも体が燃え尽きそうな感覚だった。
「うぐっ・・・あつ・・・い・・・体が・・・・・・」
シンジはかつてない苦しみに、悶え苦しむ。そしてシンジはプツリと糸が切れたかの様に意識を失っていった。



「ん、ん〜」
知らない天井だ・・・・・・
「あら、起きたみたいね。気分はどう?」
「頭がボーっとします・・・」
そう言って、シンジは起き上がると周りをキョロキョロ見渡す。
「あの、ここは?」
「私の住む千年城よ。ちなみにここドイツだから」
「そうですか・・・それで僕はどうなりました?」
「成功よ。それも、私の予想を遥かに上回る程ね。君はもう死徒となった。もう人間ではないわ」
聞き慣れない言葉にシンジは首を捻る。
「あの、しとってなんですか?」
「そうね。まずはそれを説明しないといけないわね」
一人頷き、説明を続ける。
「シンジ君は吸血鬼についてどれだけの知識を持ってる?」
「吸血鬼ですか?えっと・・・不老不死で人の血を吸って、吸われた人は吸血鬼になって、にんにく、日の光、銀の十字架に弱いとか聞きますけど」
「大抵そう言われているわね。だけどそれはあまり当たりではないわ。まず、吸血鬼には真祖と死徒の二つの種類があるのよ。違いは最初から吸血鬼であったものとか途中から吸血鬼になったものの違いかな?そして、あなたが聞く吸血鬼の不老不死。正確には不老不死であって不老不死ではないの。真祖は別だけど、死徒は血がないと生きていけないのよ。血を飲み続ければ確かに不老不死だけど、完全とは言えないわ。これは人間が食事をするのと同じ事。次に吸われたって吸血鬼にはなれないわ。自分の血を相手に与えて吸血鬼になれるのよ。私があなたにやったようにね。
吸血鬼の弱点は確か日の光には弱いけど、ニンニクが弱点なんて空想でしかないわ。銀の十字架は十字架自体には効果ないけど銀になら多少の効果はあるかもね。魔除け程度にしかならないと思うけど・・・大体こんなところね」
アルトの言葉に聞き入っていたシンジはゆっくりと口を開けた。
「それじゃあ僕は・・・・・・」
「そう、あなたは死徒(吸血鬼)になったのよ。でも、あなたみたいのは極まれだけど・・・・・・」
「どういうことですか?」
「本来はね死徒になれるのって極一部しかいないのよ。それに死徒になれてもそれまでに数百年はたたないとなれないものなの。たまにあなたのみたいのが居るのよ。シンジ君の場合は特別でね、あなたは肉体的、霊体的ポテンシャルが異常に高いおかげで、死徒になれるまでの過程を吹っ飛ばして、数日だけで死徒になれた。これははっき言って異常なのよ」
「・・・・・・」
自分の置かれている状況にシンジはイマイチ理解出来ないでいた。
「まぁ、いきなり言われてもピンと来ないか・・・・・・でも、我慢して聞いてね。あなたに関する事だから・・・・・・それじゃ続けるわ。あなたのポテンシャルは二十七祖にも匹敵する。これはかなり想定外だったわ・・・そうなると、他の死徒や協会が黙っていない」
「あの、二十七祖とか協会ってなんですか?」
至極当然な質問をするシンジ。
「あ、ごめんなさい説明してなかったわね。二十七祖というのは死徒の中でも特別強い死徒二十七人の事を指す。ちなみに私は死徒二十七祖の九位を張ってるわ。今じゃ二十七祖といっても二十人程度しかいなけど・・・・・・それで協会というのは、私達吸血鬼を狩る欧州最強の戦闘集団よ。あまり関わらない事をお勧めするわ」
と、そこえ黒い服を身に纏い、腰に黒い大剣をつけた男が現れた。
「姫様、ゼルレッチ殿がお見えになりました」
「そう、通して頂戴」
「はっ!」
そしてそそくさと黒を統一した男は去っていった。
しばらくして、シンジの周りに数人がやってきた。
「それじゃ自己紹介するわ。まず右から、私の護衛をしている二十七祖の第六位【黒騎士】こと【リィゾ=バール=シュトラウト】左に居るのが二十七祖第八位【白騎士】こと【フィナ=ヴラド=スヴェルデン】そして、フィナの横に居るのが二十七祖の第四位【万華鏡】
【魔道元帥】こと【キシュア=ゼルレッチ=シュバインオーグ】そして常に私のそばにいるのが二十七祖第一位【霊長の殺人者】こと【プライミッツ・マーダー】」
「えっと・・・碇 シンジです」
軽く会釈をする。
「リィゾ=バール=シュトラウトだ」
無表情に答える。実に簡潔な自己紹介だ。
そして、今まで黙っていた全身白一色の男がシンジに近付いて行く。
「やぁ、君がシンジ君かい・・・ぐはっ!!!!」
突然フィナはアルトに殴られて吹っ飛んでいった。
「姫様、酷いです突然人を殴り飛ばすなんて・・・・・・」
「フィナ、死ぬ?どうせどさくさに紛れてシンジ君の血を吸う気だったでしょ?この変態騎士!!」
アルトは冷めた眼でフィナを睨む。
「ご、誤解ですよ姫様・・・」
目を逸らしながら答える。全くもって説得力がない。
「まぁ、これは後で制裁を加えるとして・・・それで、どぉ?お爺様?
一旦、フィナの事は置いといてゼルレッチに話しを振った。
「ふむ、君の事は伺っている。私はキシュア=ゼルレッチ=シュバインオーグと言う」
そう言って、ゼルレッチはシンジをよく眺める。」
「ふむ、シンジ君はどうやら素晴らしい才能を秘めている。数年もすれば、他の二十七祖にも匹敵する力を持っている。天賦の才というやつじゃな。シンジ君、君の修行は私が見よう。修行に付いてこれるかは君次第じゃがな」
「はい、頑張ります。宜しくお願いします師匠!」
迷いのない返事だった。

こうしてシンジは辛くも楽しい生活を送る事となった。後にシンジは【紅騎士】の二つ名を持つ程の実力者となるのであった。



To be continued...


(あとがき)

はじめてまして焚音です。
エヴァ+月姫のクロス再構成ものです。スパシン系であります。
ネルフ参(三)謀+ミサトの扱いは悪いです。擬人化させようと思っています。
アルトVS使徒擬人娘達のシンジ争奪戦とか考えてます。
それでは以後よろしくお願いします。

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