使徒と死徒の邂逅

第壱話

presented by 焚音様


第3新東京市。
『本日12時30分、東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の皆様は速やかに指定のシェルターへ避難して下さい。繰り替えします・・・・・・』
けたたましく鳴り響く警報の中、駅前のベンチで少年が一人ポツンと座っていた。
暑い日だというのに、紅いトレンチコートを着た少年、碇シンジが駅前のベンチに座り、待ち人を待っていた。腰元には剣が携えられ(ルーン文字の書かれた布に包まれている)、手には輸血パックを持っておりそれをチューチュー吸っている。
とてもシュールな光景である。
容姿は端正で中性的な顔立ちで、瞳と髪の色が血のように紅く、幻想的な雰囲気を纏っていた。
「暑いし五月蝿いし。だいたい何故こんなところに居るのだろう」
それは数時間前に遡る。



千年城。
「シンジ様、お手紙が届いております」
彼女は千年城に住む使用人、メイドのメイファである。
エメラルド色の髪をポニーテールにし、容姿、スタイル、共に抜群のプロポーションを持った美女がシンジの元に現れる。
「うん、有難うメイファさん。それで差出人は誰です?」
「はい。碇 ゲンドウと書いてありますが・・・・・・」
「誰だっけそれ?」
すっかり自分の父親の名前を忘れていた。
シンジは手紙を読んでみるとそこには『来い』としか書いてなかった。おまけに手紙と一緒に添えられていた写真があり、そこには青少年には眼に毒な写真だった。
「なんじゃこりゃ?新手のイタズラか?それとも協会の差し金か?」
そう言って、その手紙をメイファに見せる。
最初は手紙と写真に顔を顰めていたが、気を持ち直し、メイファが口を開ける。
「僭越ながらよろしいでしょうか?ファミリーネームが『碇』と書かれていますから、シンジ様のご親族ではないでしょうか?」
「ああ、そうかもしれない。流石メイファさん」
シンジはメイファににっこりと微笑んだ。
その微笑みを見たメイファは頬を染めて一瞬気を失いそうになった。
シンジの持つスキル『天使の微笑み』である。
千年城の主いわく、「まるで天然魅了の魔眼(チャーム)の持ち主みたいね」と呆れていたが・・・・・・
「あれ?メイファさんどうしまいした?」
「い、いえ、何でもありません。無問題です。」
(おかしいなぁ、僕が微笑むとみんな(女性と約一名の白い男)似た反応するんだよな、僕の笑顔変なのかなぁ)」
本人は全然気付いていなかった。主人公のお約束である。
「なら、いいんですが・・・・・・それにしても僕の居場所よくわかったねぇ・・・人間じゃ気付く事すら出来ない筈なんだけど・・・・・・」
「それに関しては私にはちょっと・・・・・・」
「まぁ、なんとなく予想は付く、師匠かアルトが何らかの細工をしてあるんだろうけど・・・さて、あの糞親父が何を考えているか知らんが、そっちに行ってやろうじゃないの」
そう言って立ち上がると、そそくさと準備を始める。
「あの、シンジ様もしかしてここに行かれるんですか?」
メイファが捨てられた子犬のような表情でシンジを見つめる。
「(その表情はちょっと・・・)え、ええ。僕を捨てた父が何をしているのかチョット見てやろうとね」
手紙と一緒に添えられていた待ち合わせ場所の地図をヒラヒラさせながら言う。
「それに日本も久しぶりだし、旅行のつもりで行くのもいいからね。まぁすぐに帰って来ますって・・・・・・」
「わかりました。それでは私も付いていってよろしいでしょうか?」
「それでもいいんだけど、アルト達には何も行ってないからね。伝えておいて欲しいんだけど・・・・・・」
申し訳なさそうにメイファを見つめる。
「わかりました。アルトルージュ様にはしっかりとお伝え致しますので・・・」
しぶしぶ了承するが、やはり納得いってないご様子。
「まぁ、すぐに帰って来ますよ。それじゃあ、行って来ます」
そう言って、扉に手を掛ける。
「行ってらっしゃいませ」
そう言って、メイファはシンジを見送ったのであった。
その後、出掛けるところを丁度アルトにばったりと会いそこで一悶着あったのは言うまでもない。



と、まぁこれがここに来るまでの経緯である。
「暑い・・・そして遅い!吸血鬼にこれは地獄だぞ・・・・・・それになんか巨大な生物が居るし・・・・・・」
突然、海面から現れた巨大生物が街へ進行する。周りには巨大生物を倒すのUNの人達が巨大生物に攻撃を仕掛けるが全く効いている様子はない。
その光景をぼ〜っと見ていたシンジはふと呟いた。
「なんか、街を破壊しているのが巨大生物より人間達が出している被害の方が大きい気がするのは気の所為かな?巨大生物はただ歩いているだけのようにしか見えないし」
怪物が手を出しているのは自分に来る火の粉を振り払っているだけのようである。
そして、その巨大生物に打ち落とされた戦闘機がシンジの元に黒煙を巻き上げながらグングンと迫って来る。
「おいおい、あの戦闘機こっちにやってくるじゃないか。仕方ない・・・・・・」
するとシンジは腰元にある剣を取り出し、包まれていた布を解き放ち、鞘から剣を抜くと、そこには紅く輝く刀身の剣を外に曝け出した。
そして、落下して来る戦闘機を紅い剣で腕を二、三振るうと、紅い剣で切られた戦闘機が三分割し小規模な爆発を起こした。
シンジは予め纏っていた簡易結界魔術で爆風を防いでいた為、埃一つつかなかった。
再び紅い剣を鞘に仕舞い、布で覆うと、シンジは何事もなかったかの様に振舞っていた。



ネルフ本部 発令所
「使徒か・・・・・・15年ぶりだね」
「あぁ、間違いない。――――――使徒だ」
初老で白髪の男性――ネルフ副指令【冬月コウゾウ】が呟くと、その傍らにいるサングラスを掛けた髭の男性――ネルフ総司令【碇ゲンドウ】が相槌を打ちながら返事をする。
外ではUNの連中が使徒に攻撃を与えているものの、傷一つ付いている様子はない。
「やはりATフィールドか・・・」
「通常兵器では、使徒には効かんよ」
UNのお偉い方々が騒いでいるのを余所に、意味深な言葉を交わしていた。



シンジの目の前に青いルノーがドリフトしながら急停車し、中から美女?が出てきた。
「碇シンジ君ね?早く乗って!!」
シンジは素直に従い、車に乗り込んだ。
「飛ばすわよ。しっかり掴まっててね」
そう言うと、急ブレーキならぬ急アクセルを踏み込み、爆音を轟かせその場を後にした。
「ところで、あれ何ですか?葛城さん」
「あれは、使徒。人類の敵よ」
使徒を恨みがましく睨みつけながら答える。
(死徒?死徒じゃ昼間はまともに動けないハズなんだけど・・・なんか聞いてるとニュアンスが違うような・・・)
「人類の敵ですか・・・・・・」
「そう。ところで、コートなんて着てて暑くないの?それに腰にあるのとか・・・」
「暑いですよ。でも、着てないといろいろ大変なんで。腰にあるのは護身用の武器ですが、それが何か?葛城さん」
「ま、まぁいいわ。それと、私の事はミサトでいいわ」
「いえ、葛城さんのままで・・・ファーストネームは親しい人にしか使わないので」
「そう(可愛くないガキね。ホント指令にそっくりだわ)」
「それより、なんかUNの方々が引き上げて行きますけど・・・何かでっかい花火でも打ち上げそうな雰囲気ですね」
シンジにそう言われ、ミサトがUNの退散するところを見やると、焦った表情を見せる。
「ま、まさかあいつ等N地雷使うつもりっ!?伏せてシンジ君!」
ミサトがそう叫び、シンジを庇うように伏せた。
そして次の瞬間、街は閃光と共に大きな爆発が起きた。



「やった!!」
「見たかね?我々の切り札、N地雷の威力は」
地雷が爆発した直後、無駄に偉そうな壮年の軍人達が碇ゲンドウを嘲け笑っていた。
「残念ながら、君の出番はなかったようだな」
「只今、電波障害の為、目標確認の為しばらくお待ち下さい」
オペレーターの人が淡々と偉そうな軍人に告げる。
「なぁに、あの爆発だ!ケリは付いている!!」
余程彼等の切り札、N地雷に自身と信頼を寄せているようだ。
しかし、次の瞬間その自身と信頼は脆くも打ち砕かれてしまった。
「ば、爆心地に高エネルギー反応!!」
「映像回復します!」
回復したモニターには、体表を少々焼いただけの先程の使徒の姿が見えた。
「我々の切り札が・・・・・・」
「なんて奴だ!!街を一つ犠牲にしたのだぞ!!!」
「化け物め!!」
信じられない驚愕な事態に右往左往する軍人達に水を差すように、突然電話が鳴り響いた。
「――は、わかっております。――はい、了解しました」
電話を切ると、ゲンドウを忌々しげに睨み付けながら、彼等は忠実に命令を全うするべく、ゲンドウに告げる。
「・・・・・・碇君、上層部からの通達だよ。只今より指揮権は君に移った。お手並みを拝見させてもらおう」
「我々の持つ兵器は目標に対して無効だった事は認めよう。だが碇君!君なら勝てるのかね?」
「その為のネルフです」
「期待しているよ」
自衛官は苦々しげに言いいながら、退席していった。
「UNはお手上げの様だぞ。どうするつもりだ?」
「初号機を起動させる」
「初号機をか?レイは負傷中だ、パイロットがいないぞ?」
「問題ない。もうじき予備が届く」
(息子を予備呼ばわりか・・・ユイ君が聞いたら泣くだろうな)



その頃シンジ達は、N地雷によって破損した車の部品を、路上に放置?された車の部品を拝借し、そのままカートレインの入り口に来ていた。
「お父さんからID貰ってない?」
ネルフ内に入り、一段落付いた後、ミサトは開口一番尋ねてきた。
「ああ、そういえばそんなものありましたね。これですか?」
シンジは手紙を取り出すと、それをミサトに渡した。
「ありがと。それじゃこれ読んどいて」
そう言って、『ようこそネルフ江』と書かれた、パンフレットを渡す。
それをシンジはチラッと見ただけでパンフレットにはそれ以降見向きもしなかった。
「(あれ?反応薄いわね・・・)手紙呼んでもいい?」
「どうぞ」
シンジに了承を取り、手紙を読んで見た。すると、
「っげ!!」
「来い」の文字しか書かれていない手紙を読んで、ミサト女性らしからぬ声を発した。
空気が微妙に悪くなった所で、ミサトは慌てて話しを変えた。
「と、ところで、シンジ君が飲んでるそれ何?どうみても輸血パックに見えるけど・・・」
シンジは輸血パックをズズっと啜りながら、話し始める。
「これですか?これは・・・・・・トマトジュースです」
トマトジュースもとい、血を飲み、内心焦るシンジ。
「そ、それより、ここさっき通りましたよ。もしかして道に迷いましたか?」
同じところ何度も来ているのに気が付き、上手い具合に話しの論点を摩り替えた。
「ウッ、まだここ慣れてなくて・・・」
「全く、しっかりして下さい(ふぅ、あぶないあぶない・・・)」
「あはは・・・(ホントに可愛げのないガキね)」
あっちにフラフラこっちにフラフラ道に迷いながらも、ようやくエレベーターの前に辿り着いた。
「散々な道のりでしたね」
シンジはミサトに皮肉を言う。
「う、うるさいわね。着いたからいいでしょ!!」
と、その時、エレベーターの中から白衣を着た金髪の女性が出てきた。
「また道迷ったわね・・・・・・全く、時間も人手も足りないんだからグズグズしている時間はないのよ。それで、この子がサードチルドレン(おかしいわね、報告書と容姿が一致してないわね?)」
ミサトに呆れながら言う。
「そうよ、碇シンジ君よ」
「碇シンジです。えっと・・・」
「初めまして。私はここの技術部長をしている赤木リツコよ。リツコと呼んでもらって構わないわ。それとシンジ君、悪いんだけどここは武器の持ち込み禁止なんだけど・・・」
「ファーストネームは親しい人にしか使わないので赤木さんで・・・武器は護身用の武器なんで僕に何もしなければ不用意に武器は使いません」
「そう。まぁいいわ。それよりお父さんに会う前に見せたい物があるのだけど・・・」
「はぁ、見せたい物ですか・・・分かりました」
リツコに言われ、後を付いていくと一行はとある部屋に着いた。
部屋の中は真っ暗で何も見えない。
「暗いですよ」
「待ってて、今明かり点けるわ」
そう言って、リツコが明かりを点けると、目の前に紫色の巨人の姿があった。
「これは?」
特に驚く様子もなく、リツコに聞き返す。
シンジがあまり驚いていないのに、リツコは眉を顰める。
まぁ、シンジはこの程度で驚く事はない。常にそういった環境にある為、慣れてしまっているのである。
この程度なら、アインナッシュや黒翼公の方が遥かに大きい。
気を持ち直して、リツコは巨人の説明をしだす。
「人の造り出せし究極の凡用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオンよ。これがその初号機よ。私達が極秘裏に進めてきた、我々人類の最強にして最高傑作、最後の切り札よ」
「はぁ、そうですか。これが、あの陰険親父の仕事ですか・・・」
「そうだ!久しぶりだなシンジって、誰だお前は!」
シンジの言葉に返したのはリツコではなく、サングラスを掛けた髭面の男、碇ゲンドウだった。
しかし、姿が紅毛紅眼のシンジを見て、ゲンドウは叫んだ。
「は、あんたこそ誰だよ?僕は碇シンジだよ」
「シンジ君!あなたのお父さんでしょ!!?お父さんに向かってその言い方は・・・」
「え、マジっすか!?あの髭面が!?」
冗談抜きで驚いてる様子のシンジ。
「貴様がシンジならまぁいい。出撃だ」
「は、何が?」
全くもって意味が分からない。
「出撃!?零号機は凍結中の筈でしょ?まさか、起動させるつもり!?」
「おい、そっちで話しを進めるな。意味が分からんぞ」
シンジが口を挟むが誰も聞いていない。
「他に方法はないわ」
「でも、パイロットがいないのよ」
「おい、だから話しを聞け!」
やはり、シンジの言葉は届いていない。
「さっき着いたわ」
「マジなの?」
(話し聞かねぇし、こいつ等滅殺しようかな)
等と危ない事を考えているシンジ。
「シンジ君あなたが乗るのよ」
「いや、意味わかんねぇよ」
もはや、シンジは敬語で話すのを止めていた。
「待ってください指令!綾波レイでさえ起動するのに七ヶ月かかったのに、今来たばかりのシンジ君には無理です」
「座っていればいい。それ以上は望まん」
「しかし・・・」
そこにリツコが口を挟む。
「葛城一尉!!今は使徒殲滅が最優先事項よ!」
「な、何を・・・」
「その為には誰であれ、僅かでもシンクロ可能な人間を乗せるしか方法はないのよ!」
「そうね。わかったわ、乗りなさい、シンジ君」
あっさり掌を返して、シンジに冷酷に言い放つ。
「だから、意味が分からないから」
「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」
今度はゲンドウが高圧的に言い放つ。
「ああ、帰っていいの?じゃ、帰るね」
そう言うと、シンジは扉の方に歩き出した。
「冬月!レイを起こせ!」
「使えるのかね?」
「死んでいるわけではない。レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」
「・・・はい」
ミサトは慌ててシンジを引き留めた。
「シンジ君それでいいの?一体何しにここに来たの?逃げちゃ駄目よ、シンジ君。お父さんから、何よりも自分から!」
シンジは歩みを止め、ミサトの言葉に振り返った。
「何をしに来たかって?ただの旅行のつもりで来ただけですが、それとあれに帰れと言われたんで帰るんですが、それが何か?」
淡々と事実だけを述べるシンジ。
すると、扉が開きストレッチャーに乗せられた重症の少女が入って来た。
一瞬シンジは顔を顰めたが、すぐに変わらない表情に戻った。
「何をしている?お前など必要ない。さっさと帰れ!人類の存亡を賭けた戦いに臆病者は必要ない!」
ゲンドウはシンジに対し、追い打ちのように侮蔑の言葉を露にする。
その時、ドォンと大きな音と共に天井が崩れてきた。
ゲンドウは忌々しげに天井を睨み付けながら言った。
「奴め、ここに気付いたか」
そして崩れた瓦礫は綾波レイの元に落ちていく。
シンジは「ちっ」と舌打ちをしながらレイの元に駆け寄って行った。
そして、落ちてくる鉄骨を殴り飛ばそうとした瞬間、落ちてくる筈の鉄骨は落ちてこず、上を見上げるとそこには初号機の手があった。
周りは、あれやこれやと騒ぎ立てていた。
「そんな、インターフェースなしで反応したというの!?」
「シンジ君を守ったの?いける!乗りなさいシンジ君!シンジ君が乗らなければ、あの子が戦わなくちゃいけないのよ。女の子に戦わせて恥ずかしくないの!?」
などと、ミサトが喚いている。
「はぁ、戦わせようとしてるのはあなた達でしょうが。人の所為にしないで下さい。でも、怪我している女の子に戦わせるのは僕も目覚めが悪いんで、条件次第で乗ってあげるよ」
「言ってみろ」
「取り敢えず、報酬は5億5千万円頂きます。後、戦闘は自由に戦わせてください」
「ちょっと待ってくれないかねシンジ君」
ゲンドウに変わり、傍らに立っている冬月コウゾウが口を挟んできた。
「あんたは?」
「ああ、私は副指令をしている冬月という者だ。今の君の条件は簡単には飲めんよ」
そりゃ当然である。所詮子供であるシンジの我が侭でしかない。
「報酬は迷惑料込みでこの金額です。戦闘の方については問題ありませんよ。鍛えてるんで・・・・・・」
そう言われると、冬月は言い返せない。
「ちょっと、シンジ君!今は子供の我が侭に付き合ってる暇はないの!あなたは私達の命令に従えばいいの!」
突然、ミサトはシンジに突っかかって来た。
「嫌です。指示を与えている者と戦闘をしている者では明らかに感覚が違います。其方が指示を出している間に攻撃を仕掛けられてゲームオーバーでは本末転倒ですよ。第一、指示を出してから動いたんではタイムラグが生じ、僅かな時間でもそれが致命傷に成り兼ねないし、相手の僅かな隙が勝利に導く事だってあるんです。ですから、戦闘に関しては僕が自由にやらせて頂きます」
これがシンジの戦闘理論である。シンジが死徒になってまもない頃、まだ能力に目覚めていない時、シンジの戦闘主体は主に体術や剣術だった。純粋な体術だけでは死徒に打倒しえる筈もなく、敗北の毎日だった。そこで見出したのが相手の弱点を見極め、隙を見つけ出し、少しでも勝率を上げる為の眼力を身につける事だった。能力を持った今でも、力に溺れる事なく、今でもその戦闘理論は生かされているのである。
そんなことは露知らず、ガキの戯言だと思っているミサトはシンジに怒鳴る。
「ちょっとアンタ!素人が生意気な事言ってんじゃないわよ!!あんたは素直に私に従いなさい!!」
「嫌です。不了承です。却下です。すぐに頭に血が上る様ではあなたの命令なんて聞けません」
「このガキ!」
ついにブチ切れたミサトはシンジに殴りかかって来た。
しかし、シンジは慌てる様子もなく、ミサトの拳を悠々と受け止める。
そしてシンジはその拳を握り潰した。
「ギャーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりの痛みに女とは思えないような叫び声を上げた。
「ちょ、ちょっとシンジ君何をしたの!!?」
リツコは慌ててシンジに問い質す。
「何って・・・拳を握り潰しただけですが」
「だけって・・・どんな握力をしてるのよ」
「まぁ、100kgは楽に超えてますよ」
「ひゃ、100kgを軽く超えてるの!?」
リツコは驚きの表情を露にする。どう見てもそんなに力がある様には見えない。流石、吸血鬼の持つ強大な馬力である。
「それでどうします?碇ゲンドウ総指令?」
「・・・・・・分かった。お前の条件を飲もう」
「はい、毎度ありぃ〜。もし破ったらその鼻っ面に僕の拳叩き込みますから。それじゃ、赤木さん案内お願いします。そこの君、ここは僕に任せてね」
シンジはレイに優しく声を掛ける。
「・・・・・・・・・」
レイはレイで何を言っていいのか分からず何も言えずにいた。
そして、シンジはリツコの後に付いて行った。
「さぁて、戦闘開始と行きますか」
シンジはその呟きを誰に聞かれる事はなかった。



To be continued...


(あとがき)

シンジの持つスキルについてご紹介します。

・固有結界【紅き世界】
シンジは全ての血を操る事が出来ます。血から生物を生み出したり(結界の中では幻想種を生み出せる事も可能)、血で作られた武器を生み出す事が出来ます(宝具レベル)。結界内はサードインパクトが起きた海や空を思い浮かべて下さい。
・血液操作
固有結界【紅き世界】の賜物です。こちらは幻想種は生み出せませんが一般的動物は生み出せます。あと、少しの遺伝子さえあればクローンを作る事が出来ます。当然血の武器化は可能です。流石に結界内ではないので宝具レベルの物は出来ませんが・・・
・紅陣剣
シンジがいつも腰に身につけている武器。当然血で造られた剣。血を吸って成長する剣であり、シンジにしか扱えない。他の者が触ると血を吸われます。
・簡易魔術
魔術の素質はあまり無かった為、簡単な結界魔術ぐらいしか出来ない。
・戦闘理論
シンジの観察力や洞察力が異常なまでに高く、常に効率よく戦闘を行う理論。
・七夜暗殺技法
某、絶倫眼鏡君に教わった戦闘技術。閃鞘や閃走はできるが極死は出来ない。
・自己治癒
これは死徒であるなら誰でも持ってる能力。
・天然魅了の魔眼(チャーム)(笑)
本人は気付いていないが、微笑むと大抵はシンジの虜になる。

シンジは昼間は40%程度しか力を出せません。エヴァ内で50%程度です。ネルフ内部は日が届いていないので80%は力を出せます。

ちなみに、シンジが昼間出ていても大丈夫なのは、シンジが着ているゼルレッチ特製紅いトレンチコートの御蔭で日の光をある程度遮断してくれている為、昼間でも大丈夫なのです。

大体こんなものでしょうか?思いついたら付け足しますので・・・

今、固有結界【紅き世界】の詠唱を考えてるんですが、イマイチ浮かばないんで助力を求めようかと思ってます。いい案がありましたらメール等にてお願いします。ちゃんと自分でも考えます。出来れば英語付きもあると嬉しいです。固有結界をだすのは当分先ですが・・・

それではまた次回に

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