使徒と死徒の邂逅

第肆話

presented by 焚音様


戦闘を終え、ケージに戻って来たシンジは早速ミサトに絡まれていた。



戻って来た時は、『よくやった!』『てぇした坊主だ!』とか『我らの英雄だぁあ!!』などと歓声に包まれ、シンジもに『いえいえ、適材適所です』と謙虚に答える。
すると、『おお、謙虚に答えるたぁなかなか出来た人間じゃねぇか』と更に褒められた。
しかし、そんな祝勝ムードを掻き消す人害が全力疾走してやって来た。
宛ら、牛追い祭りの牛とか闘牛の牛を思わせる走りだった。
そして、来るなり開口一番シンジを怒鳴りつけた。
「ちょっとアンタ!勝手に使徒倒すんじゃないわよ!!!」
そんな言い草にギャラリー達は一斉にミサトへ冷ややかな視線と殺気の視線を送った。
しかし、周りからの冷ややかな視線と殺気の視線を物ともせず(寧ろ気付いていない)、ミサトはシンジに怒鳴りつける。
「ちょっと、聞いてんの!?」
「・・・はっ?」
最初っからダメな奴だとは思っていたが、ここまでヘナチョコだと呆れを通り越して哀れに思えてくる・・・
こういうのは無視するに限るが、睡眠を妨害する蚊の如くうざったい。不本意だが相手にするしかないようだ・・・
その時、白衣を着た女性、赤木リツコが駆けつけたが時既に遅し、暴走牛は猛り狂っていた。
その光景に、今日は体調は万全な筈なのに、何故か立ち眩みを覚えた。
こうなってしまったら、暴走牛を止めるのは生半可な事じゃ駄目なのだ。
「はぁ・・・・・・」
リツコは深い溜め息をついた。



「親方!!あれじゃあの子が可愛そうですよ」
「そうですよ!『我らの英雄』に酷いですよ。大体なんですか?あの、ブタゴリラならぬウシゴリラは!!なんとかならないんですか?」
「ちくしょう、俺だって十七分割にして、マリアナ海溝に沈めてやりたいが、どうにもならんのが現状だ!」
「何を言ってるんすか!?義は我らにありっすよ。俺たち全員でメタメタに殺っつけちゃいましょうよ!!赤信号皆で渡れば怖くないっす!!」
「そうです、そうです。あんなのいない方が世の為人の為です!」
「・・・そうだな、あの坊主を支えてやるのが俺たちの務め、よっしゃ、野郎共付いて来い!!生きている事を後悔させてやろうぜぇ!!!」
「「「「「「「おおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」



周りが一致団結する中、シンジはミサトの身勝手な言い分に、反論するが・・・
好機チャンスに攻撃を仕掛けるのは常套手段でしょうが・・・適材適所という言葉を辞書で調べて出直して来い」
「そんな事はどうでもいいの!!アンタは私の命令に従う義務があるの!!」
自分に非はないと言わんばかりに怒鳴る。
「(どうでもよくねーよ・・・)ふぅ、貴方は命令なんて出していましたか?大体、あれが命令と言えるんですか?まだ巷のゲーマーの方が貴方よりは千倍は良い指示出せますよ。それに僕は、戦闘は自由にやらせて貰える契約でエヴァンゲリオンとやらに乗ったんです。貴方に言われる筋合いはありません」
「くっ、黙ってればいい気になって・・・巫山戯けるんじゃないわよ!!」
え?ちょっとまて、黙ってた事なんてあったか?喚き散らしてただけにしか見えなかったんだが・・・
などと考えていると逆上したミサトがシンジに殴り掛かってきた。
しかも、平手ではなくグーで・・・
しかし、シンジはその攻撃を軽く避け、ミサトを睨みつける。
「ほぉ、吾に攻撃してきたって事は敵対したって事だよな?」
突然の口調変わりに、先まで冷ややかな視線でミサトを見ていたが、はっと我に返り、先の戦闘の事を思い出したのか、不本意だが親友としてミサトを止めようとする。
「ちょっと、ミサト落ち着きなさい!」
しかし、リツコの静止をも振り切りまたシンジに殴り掛かる。
「遅いな・・・」
シンジに当たる筈もなく、シンジが避けると同時に足払いを掛ける。
そして、倒れてきたミサトの頭を攫みそのまま床に叩きつけた。
ぐしゃっ!!
ちょっとやばい音と共にミサトは泡を吹きながら気を失った。
「つくづく無能だな・・・お前」
そして、何時の間にやら待機していた医療班にミサトは病院へと担ぎ込まれていった。
実に手早い作業だ・・・
ちっ、アイアンクローに行きたかったが如何せん身長が足りなかった・・・
等と心の中で呟いていると、先まで事の成り行きを見ていたリツコが恐る恐る声を掛けて来た。
「ちょ、ちょっとシンジ君。ミサトは大丈夫なの?」
「へ?まぁ、大丈夫でしょう。前後の記憶はあやふやになっているかもしれませんが・・・」
シンジが本気でやったら今頃ミサトの頭は潰れて脳漿が辺り一面散らばってスプラッタ映画も真っ青な程の状況に陥っていたに違いないだろう。
「そ、そう。無事ならいいわ(ま、これもミサトにはいい薬ね。これで少しは冷静になってくれればいいのだけれど・・・)」
「それにしても、なんであの程度の指揮能力で、作戦部長なんてやってるでしょうか?あんなのが部長なら、まだ巷のゲーマーの方がいい指揮出すんじゃないんですか?そう思いません?」
「・・・ご免なさいね。葛城一尉も悪気はなかったのよ・・・ただ一生懸命で・・・それに普段は・・・・・・・・・有能だから(心にもない事言ってるわね・・・取り敢えずシンジ君の信用を得る為には仕方ないか・・・)」
「へぇ、あんなのがねぇ・・・本番に発揮出来なきゃ意味はないと思うんですがねぇ〜」
リツコの心情を見越したのか、冷笑しながら皮肉る。
「まぁ、ど〜でもいいですが・・・それより、体がベトベトなのでシャワーいいですか?いい加減ベトベト気持ち悪いんで・・・」
幾ら血が好きとはいえ、流石に何時までもベトベトなのは嫌なものである。
「わかったわ。着替え等はネルフで用意するから、クリーニングするものがあれば脱衣所のところにある籠に入れておいて頂戴。それと悪いんだけど、終わったら私の研究室に来てくれる?」
「ええ、いいですよ。それと、僕からもいいですか?」
「何かしら」
「赤木さんのところに行った後でもいいんで、碇ゲンドウに会わせてもらえないでしょうか?」
「悪いんだけど、私の一存じゃ決められないわ。指令に相談した後になるけどそれでいいなら・・・」
「ええ、構いません」
「悪いわね。それじゃあ、シャワー室に案内するから付いて来て」
「はい」



シンジはシャワー室に来るなり、すぐに溜め息を吐いていた。
(ふぅ、ヤレヤレ・・・フィナ(変人+変態)がここには沢山居るのかねぇ〜。耳と目が軽く二桁はあるね・・・取り敢えず、さり気なく目と耳をショートさせるか・・・)
そしてシンジは、指先を噛み血を数滴垂らすと、小さく言葉を発した。
I dance the blood(我が血潮よ、舞え)」
すると、小さな血溜まりが出来た床から血液が舞い上がり、不可視となってそれぞれの機器に銃弾の様に飛ばすと、監視器具を破壊した。
監視していた諜報員達は当然の事に訳が分からず慌てふためいていた。
「まぁ、こんなものか・・・」
そして、シンジは出歯亀共がいなくなったのを確認して気持ちよくシャワーを浴びる。
「ふぅ、やっぱり動いた後のシャワーはいいねぇ・・・」
シンジが一息付いたところに、今までずっと黙っていた、犬こと、碇ユイが話しかけて来た。
「ちょっと、いいかしらシンジ?聞きたい事が山ほどあるのだけれど・・・」
気持ちよく浴びているところに邪魔が入りシンジは少々不機嫌になる。
「・・・一つ言っておきます。好奇心は身を滅ぼしますよ。まぁ、それじゃあ納得出来ないでしょうから全部は話せませんが、貴方の質問に答えましょう。但し、(魔術師というわけではないが)等価交換としてこちらからも質問させて貰います」
「分かったわ。まずはこっちから質問ね」
「いいでしょう」
そして、犬の形のユイはここぞとばかりに質問を繰り出した。そしたらユイの質問は出てくる出てくる。そりゃもうたくさん。それと、何故だか、初号機のもう一つの人格であったミコトは目をキラキラさせながらシンジを見つめていた。
恐らくミコトはシンジについて色々と知りたいのだろう。
そして、そのユイ質問と言うのは・・・・・・
「エヴァでのあの動きとか、突然変わる口調とか、吸血鬼の事とか、貴方の能力の事とか、これからシンジはどうするのか、とか、さっきからシンジの背後からずっと付いて来てるのに周りは全然気付いてないみたいだし・・・」
ユイの繰り出す大量の質問に呆れながらも、律儀に答えた。
「随分と質問しますね。まぁ、順を追って質問に答えましょう。
まず一つ目、あの動きはとある一族の戦闘方法で、その動きをその一族の人に教えて貰い、惜しまぬ努力の結果、身に付いたものです。
次に、あの口調はさっき言った一族の受け売りで、取り敢えず士気を上げる為かな?(僕はね)
そして三つ目。僕が数年前にあの碇ゲンドウに捨てられたとき、とある人物(人じゃないけど・・・)に遇いその時に吸血鬼となった。ちなみに吸血鬼を死徒と呼んでいるが、貴方達が考える使徒とは違うのであしからず。
吸血鬼は厳密に二種類に分かれ、真祖と死徒の二種類になる。
真祖というのは、地球ほしが自衛の為に生み出したもの。つまり、最初っから吸血鬼だったもの。
そして死徒というのは、秘術の果てや噛まれて吸血鬼になったものが死徒という。因みに僕はその後者ね。(取り敢えず死徒二十七祖については話さなくていいよな)
あと、僕の能力は取り敢えずまだ秘密。
そして、僕のこれからの予定ですが、終わったらドイツに帰ろうと思ってたんですけど、何やらそうもいられなくなったっぽいんで様子を見る事にしてます」
で、次で最後ですね。貴方達の存在に気付いていないのは、僕が色々と細工をしているから。
ちょっとした光の屈折を利用して見えなくしているだけです。(つまり某風王結界みたいな感じです)
と、まぁ、こんな感じかな?もういいですか?」
長々と答えシンジは一息つく。
「まだ少し・・・私達が見えない理由は分かったわ。だけど疑問点が一つ。シンジが吸血鬼なら太陽光は駄目な筈よね?でも、シンジは太陽光が平気みたいな様だけど」
「へぇ、素晴らしい着眼点だ。確かに日光は苦手だ。だけど、僕が着て来た服には日光をある程度シャットアウト出来る様に作られている。それに、さっき死徒についてはさっき聞いたよね?普通の死徒では日光を浴びれば灰になっちゃったりするが、その死徒の中でも別格の死徒、死徒二十七祖というんだけど、その死徒達はの中には日光にある程度耐性が出来ている者もいる。それでも日中は歩き回るなんて事はしないけどね。そして、僕は死徒二十七祖の第十二位を張っている(結局二十七祖について話してしまったか・・・)」
「ん〜、俄かには信じ難い話しね」
「まぁ、そんなもんでしょう。では、今度は僕からの質問です。単刀直入に聞きましょう、貴方達は何がしたいんです?」
シンジ目を細めユイに軽い殺気を飛ばしながら質問をした。
「そうそう、はぐらかしても意味ないですよ。いざとなれば記憶を覗けますので」
ユイはシンジの質問に誤魔化そうとしていたが、先にシンジに先手を打たれ仕方なく答えた。
「分かったわ、ちゃんと答えるわ」
そして、ユイは細々と語り始めた。



ユイの話しを聞いていたシンジは、ユイの話す事実にシンジはブチ切れた。
「巫山戯るな!何が人類補完計画だ!!!くだらん!!」
シンジの怒声にユイは涙目になりながらも震えながら答える。
「だ、だって子供たちに明るい未来を見せようと思って・・・」
「はぁ!?子供たちに明るい未来見せるだぁ?そんな偽善居るか!!手前ぇの目指す未来を僕達に勝手に擦り付けるな!!!ヴォケが!!!!自分の未来は自分で切り開く、未来ってぇのは不確定だからこそ面白いんだろうが!」
追い討ち掛けるようにシンジの怒声はまだ続く。
「何が、神への道だ!何が、人類の歴史は罪の歴史だ!罪の意識があるのなら、生きて世界に貢献してこそ、真の冤罪!!そんなに無に還りたいのなら、直々に僕の手でやってやろうか!ああ!?」
「だ、だけどこのままじゃ、世界は滅びて・・・」
「だぁあああああ!!!!話しの分からんやっちゃな!んな、預言書モドキ信じるな!あほんだら!!そのバランスを保っている、魔術協会やら教会があるんだよ!それに僕達みたいな人外も居るんだ。そうそう世界崩壊なんて起こる分けないないだよ!!世界の修正力は確りしてるんだ。あってもどうせ人為的なものだろう?確かにそれなら滅びる可能性はある。世界ではなく人類はな。が、しかしそんな事、裏の世界の奴等が指咥えて黙って見ているわけないだろう。全く・・・」
シンジにあれこれ言われ、言葉を返す気力もなく茫然自失となっていた。
そして精神的にも身体的にも幼いミコトはシンジの怒声にウルウルと涙目を浮かべ、シャワー室の物影に隠れてブルブル震えていた。
それを見たシンジは「しまった!」と言いながら額に手を当てていた。
「ああ、ゴメンなミコト。ちょっと後先考えず怒ってしまった・・・」
そう言ってミコトの頭を優しく撫でる。
「・・・怒ってない?」
「もう怒ってないよ」
「もう怒っちゃ嫌だよ?」
「うん。約束する」
「約束だよ」
「さて、一通り話し終わったし、さっさと上がるか・・・ほら、碇ユイいつまで惚けている?さっさと出ますよ」
「・・・う、うん」
余程シンジの叱責が効いたのか、覚束無い足取りでシャワー室を出た。





――――ネルフ本部・赤木リツコの研究室――――
「来て貰って早々悪いんだけど、いくつか質問いいかしら?」
シンジはリツコに言われた通り、リツコの研究室へとやって来た。
近くにいろいろな重要施設が存在し、ある意味この研究室も重要度の高い場所である。
色々な薬品の匂いがするが、まぁ、某地下帝こk・・・ゲフンゲフン・・・流石にあのやばさはないだろうがここはそんな雰囲気を醸し出しているような気がする。まぁ、気にしたら負けだ・・・
よし、取り敢えず今は遥か彼方に払拭しておこう。
「質問ですか?答えられる範囲ならいいですけど・・・」
ちょっと、あの闘い方ミスったか?
「ええ。その前にちゃんとした自己紹介してなかったわね。最初に会った時も言ったけど、私の名前は赤木リツコ。ネルフの技術開発部の責任者で、E計画とMAGIシステムの責任者でもあるわ」
「E計画ですか?MAGIという単語もたった今聞きましたが、それはなんです?」
「E=エヴァンゲリオンの事。MAGIというのはここの中枢を担う最重要施設よ」
なんか、はぐらかされた気がするが、それは表向きで本当は人類補完計画というものだろう。まぁ、今は深入りしないでおくか・・・
「成程。それでは、僕もちゃんと自己紹介を。僕の名前は今のところは碇シンジ。そろそろ碇という苗字ではなくブリュンスタッドになりますので」
「ブリュンスタッド?それは、どういう事?」
因みにその事実にシンジの近くで聞いていたユイが猛り狂っていたが、シンジは綺麗さっぱり無視した。
「まぁ、婚約者?ですかねぇ・・・(まぁ、強ち間違ってないしね)」
「それは、おかしいわね。データによれば10年間ずっと叔父夫婦に預けられている事になっているのだけど。それに婚約者ってどういう事?」
「言葉通りです。あと、そのデータ間違っているんじゃないですか?確かにに叔父夫婦に預けられていましたが、あんなところすぐに出ましたよ」
種明かしをすると、シンジの師、ゼルレッチが記憶の改竄をして、更にそこにシンジが居たと思わせる幻を作った為、シンジは今までばれていないのだ。シンジへの手紙は直接千年城に来るよう仕向けてあったのだ。
実に細かい・・・
「そう。(調べる必要がありそうね)」
まぁ、調べようと思っても無理だろうけどね。科学者と雖も所詮人間。幾ら優秀な人間でも魔術師とか、裏の世界のファイアウォールを突破する事はまず出来ない。
「続けるわ。それじゃあ、今まで何処に居たの?」
「ドイツですけど」
「な、ドイツですって」
別にシンジがドイツに居たというのも他意はない。自分が暮らしていた千年城がドイツにあるってだけの話し。
「どうしたんです?そんなに慌てて」
「いえ、なんでもないわ(もしかしたらこの子何か知っているのかも)」
ふむ、ドイツに何かあるな・・・リィゾさん達に調べてもらうか・・・



「次の質問よ、エヴァの事に関してだけど、エヴァの中で何か感じなかった?」
「ん〜〜〜何か純粋でそれでいて温かい感じはしましたが」
ん?今赤木さんの目がキラリと光った様な・・・
案の定、ここぞとばかりに身を乗り出し訊いて来た。
「例えば、どんな風に?」
「そうですね。純粋に自分に甘えて来る様な感じです。それでいて自分も何とかしてその温かさを護りたい気持ちになりますね」
シンジの近くで聞いているユイが「まぁ!」と目を輝かせているが決してユイの事ではない。ミコトの方だ。
(やはり、私の睨んだ通りね。だけど、それにしてはシンクロ率が0%っていうのが奇怪しいのよね・・・)
「それが何か?」
「いえ、ちょっと上層部に報告書を送る為の調査よ」
「そうですか」
しかし、それは殆ど嘘で、一応ゲンドウには知らせるが、シンジに怪しまれない為の小芝居である。
(全く、頭が痛い事ばかりだわ。本当に科学者泣かせね・・・)



「それじゃあ、次の質問いいかしら?」
(やれやれ、さっきから質問ばっかりだ。寧ろ質問じゃなくて尋問だな。さっきのシャワー室の時といい、今といい・・・)
等と心の中で呟く。
「ええ、いいですよ」
「貴方は今までエヴァに乗った事あるのかしら?」
「いいえ、全くありませんよ。エヴァンゲリオンという固有名詞を聞いたのも初めてです」
「そう。なら、あの時のエヴァンゲリオンに初めて乗ったというのに、どうしてああいう動きが出来るの?」
リツコはかなり深い質問を繰り出す。科学者として意地でもあの戦闘の事を解明したいのだろう。
「それは、赤木さんが言ったじゃありませんか?自分の思った行動で、あのエヴァンゲリオンとやらが動くと」
「ええ、確かに言ったわ。だけど、どうやったらあの動きが出来ると言うの?例えば、あの時一瞬にして消え、死徒のすぐ傍に現れた事があったわよね?あの時、調べたのだけど解析不明と出たわ」
「へぇ、そうなんですか。あれは、とある一族に伝わる戦闘術です。永い年月を経た技は科学では説明出来ない事があるという事です。あの、消えたというのも、その一つです」
リツコの目がキラリと光った。
「それなら、あれはどういう戦闘術なの?」
「それは、教えられません。僕はあの戦闘術の正式な継承者ではありません。ですから、教える事は出来ません。強引に聞き出そうとしても無駄ですから。全力で抵抗します」
リツコが透かさず訊き出そうとしたが、先にシンジに釘を刺され、リツコは言い淀んだ。
その為、渋々リツコは質問の内容を変えた。
「そ、そう、分かったわ。最後にいいかしら?」
「ええ」
「その髪の色と瞳の色はどうしたの?」
シンジの髪と瞳の色は鮮やかな紅。10年前の報告書では日本人らしく黒だった(幻の方でも黒)。しかし、現在いまは紅。染めたような紅ではなく自然な紅。瞳の方もカラーコンタクトをしている形跡はない。その事が気になったリツコはシンジの容姿について訊ねた。
3倍ですから・・・・・・」
「はっ?」
「いえ、冗談です。本当のところはいつの間にかこうなっていました(まぁ、嘘は言ってないし。恐らく能力行使による体質変化だと思うんだけど・・・)」
「そう(有力な情報ではなかったわね。でも、興味深い事は聞けたわね)」
「もういいですか?」
「ええ、もういいわ。それと、指令との会談の件だけど、今日は忙しいから出来ないけど、明日なら出来るみたいだからそれでもいいかしら?」
「・・・いいですよ」
「悪いわね。それから、泊まるところは此方で用意するから、今日はそこに泊まってくれないかしら?」
「・・・わかりました(さっきのシャワー室の事も考えると恐らく監視されているだろうな・・・はぁ、厄介な事に巻き込まれたなぁ・・・)」




リツコに案内され、入るなり「やっぱりか・・・」と呟いた。
そこは、かなり狭く、殺風景で黴臭く、当然監視器具は完全装備。
丸っきり独房である。
(取り敢えず壊すか・・・)
シャワー室でやった時の様に、軽い傷を作り、血を滴らせ、詠唱すると部屋にある監視器具を全て破壊した。
「まぁ、こんなものだろう・・・ああ、そうそう、ミコト悪いんだけど、人間体に戻すのもうちょっと遅くなるけど、あとちょっとだけ猫のままでいいかな?」
「うん。大丈夫」
「おお、ミコトは偉いな」
そう言って、ミコトの頭を撫でる。
ミコトは嬉しそうな顔で「むふぅ〜」と吐息を漏らし気持ち良さそうにしている。
「よし、ご褒美に後でいいものあげよう。楽しみにしててね」
「うん」
そんな微笑ましい雰囲気の中、そんな和やかムードを掻き消すお邪魔虫が口槍を入れてきた。
「ちょっと訊きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「・・・・・・何ですか?つまらない質問は即潰しますから」
和やかな雰囲気を断ち切られ、シンジは少々不機嫌になっている。
因みに、ミコトの方もシンジとの馴れ合いを断ち切られ頬を膨らませながら不機嫌な表情になっている。
「さっき聞いたのだけど、婚約者だとか、叔父夫婦に預けられただとか、婚約者だとか、ドイツに済んでいたとか、婚約者だとか、そもそもドイツで何をしていたの?」
「随分と多い質問ですねぇ・・・。それも婚約者の事ばかり・・・」
「ほら、もしそうなったら嫁姑問題があるし・・・」
「敢えてここは無視します(というか僕も知らないうちに婚約者にされていましたが何か?人権や法律を訴えても、アルトに『貴方もう人間じゃないでしょ?』と言わればっさり斬られ、止めとばかりに『私じゃ嫌なの?』と上目遣いに泣き付かれ良心が痛みましたが何か?師匠には更に煽られましたが何か?リィゾさんには哀れみの視線を受け、ついでにフィナには迫られましたが何か?あ、だんだん涙が・・・・・・)」
さめざめと心の中で涙を流す。
「納得いかないけど、後でこの事はじっくりと話し合いましょう。それと、他の質問なんだけど・・・」
「いいでしょう、話しましょう」
気を取り直しキリっとした顔付きになる。
「但し、口外したら命は無いと思え・・・
シンジの放つ重圧に、ユイはビクビクしながらも、どうにか声に出す。
「わ、分かったわ。ぜ、絶対に口外しません」
「分かればいい。では、質問に答えましょう。
僕が10年前、貴方がエヴァンゲリオンの中に消えた後、僕は碇ゲンドウに捨てられ、叔父夫婦に預けられた。そこでの僕は叔父夫婦達にとってただの厄介払いだった。ただ、養育費を詐取する為だけに僕を引き取ったのだろう。
落ち込んでいた僕は、夜中にフラフラと部屋を抜け出し、近くの公園に佇んでいると、僕は其処で自分の運命を左右する人物(人ではない)に出逢った。その人(断じて人じゃない)がブリュンスタッドの者です。
その時に僕は吸血鬼となった。断じて言うが自分の意思で吸血鬼になったからね。
そして、僕はその死徒の住まいであるドイツに渡り、そして済し崩し的にブリュンスタッドの婿(予定)?になってしまったというわけです。そもそも碇という苗字嫌いでしたし・・・」
「そう・・・最後にドイツで何をしていたの?(ドイツには弐号機がある場所。何か知っているかしら?)」
「ふっ、聞きたいですか?」
「ええ」
「ふ、ふははははははは!!!!!!」
突然シンジは狂った様に笑いだし、心なしか、号泣している様にも見える。
そしてシンジはもうこれ以上ないってくらいにはっちゃけた。
「ふははははは!!!!今まで僕は何回死に掛けた事か!?貴様には分かるまい!!?師匠が修行と称し、死徒二十七祖の一角、第七位のアインナッシュのテリトリーであるアインナッシュの森に放り込まれ、死に掛けるわ、更に修行と称し、二十七祖の一角、十四位のヴァン=フェムの持つ『魔城』に放り込まれ、その扱いにちょこっと切れて『魔城』をぶっ壊してみれば、もっとアルトルージュ派が恨まれたりとか、更に更にただ単に面白いというだけで、師匠権限を無駄に大いに使ってあの破壊姉妹の喧嘩の仲裁に行かされてみれば、何故か僕の取り合いになったりとか、意味が分からん!!もう、某言葉を借りるとなんでさ!?と言いたくなる。どうせ僕には人権なんてありませんよっ!!!!」
はっちゃけたーーー。さぁ、息継ぎなしで言ってみよう!
今までの生活がシンジの心の叫びになって如実に表れている。
しかし、聞いていた当のユイは何を言っているのか、チンプンカンプンで理解出来なかった。
「えっと・・・どういう事?」
「五月蝿い!もう寝る!」
シンジはユイの言葉を無視し、ベッドに寝転んだ。
所謂不貞寝である。
そして、すぐにベッドから寝息が聞こえてきた。
因みに、シンジが寝静まった後、ミコトはシンジのベッドに潜り込んでいたりする。
ついでにユイも・・・
なにはともあれ、慌ただしい一日はこうして過ぎていった。



To be continued...


(あとがき)

どうも焚音です。久々の更新ですね。今回はシンジ君がかなりはっちゃけてますね。
次は、レイとの対面あたりですかね?あとその他諸々。
それではシンジ君のちょっとした能力表ですね。

真名:碇 シンジ
性別:男
属性:秩序・善
筋力:A
耐久:C
敏捷:A
魔力:B
幸運:E
宝具:B(血を吸って成長する剣なので、ランクが上がる事はある)
対魔力:C

固有スキル
再生力:―
固有結界:『紅き世界』(Bloody led world)
閃鞘:B
不死性:−
鈍感:EX(笑)

と、まぁ、こんな感じでしょうか?

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