劉備軍が西方へ移動をしていたのとちょうど同じぐらいの時。


東側でも多くの兵士が移動していた。


右と左に大きな岩壁がある道にその部隊はいた。


その兵士たちの前には3人の武将たちが馬に乗り、歩兵隊を先導しているという隊列のようだ。


前を歩いている三人の特徴を順に説明していこう。


左側の男は頭に一本も髪が無いスキンヘッド。


そして、大柄で筋肉質の体系をしており背中にとてつもなく巨大な斧を背負っている事により


より一層凄みが増し、雑魚の兵士なら見ただけでも尻尾を巻いて逃げ出すような大男だ。


右側の男は紺色のマントを羽織り、左腰に刀の鞘を付け、右目に眼帯を着けている事から


おそらく隻眼の武将だという事が予測できる。


そして、最後の一人は紫色の冠のような物を被り、鎧で身を纏った身長160cmで


首のところまで髭を伸ばした割と小柄な男だ。


ちなみに隻眼の男の名前は『夏候惇』。字は元譲という。


そして、スキンヘッドの男の名前を『典韋』。


最後に中央で馬を歩かせる男の名前は『曹操』。字は猛徳。


魏という大帝国を気付き挙げた、猛将だ。


だが、何回もしつこい様だがそれはこの世界の事実ではないのだ。


この歴史は既に変わってしまっているのだから。


はたして魏が大国になるという確証など欠片どころか、塵1つもないのだ。


それほどまでに以前の歴史とは食い違っている。


その全てがある一人の青年に齎されたものだと気付いている男がいるのだろうか?


いや、いないだろう。


いるはずがない。


そう言いたいところだが、それに感じているものも少なからずこの世界にはいるようだ。


おっと話がそれてしまったようだ。


私の世間話もこれぐらいで終いとしましょうか。


さて、西方の戦いをご覧になった皆様方。


次は東方の戦いをご覧になりましょうか。






違う場所で 〜三国の歴史〜

第五話

presented by 鳥哭様







本陣から出発してから5分ほどの所で典韋は曹操にあることを尋ねた。


「総大将。奴らの戦力ってのはどんなもんなんですかい?


俺は急に呼ばれたから、未だにそういう詳しい事はわかんねえんすよ。」


実は典韋は、つい先日まで別の任を曹操から受けており、1週間前に至急戻るようにとの伝令を受け


急いで帰還し、曹操と合流したのも昨日だったので、詳しい戦の内容、戦闘方法、作戦、兵力


敵の詳しい情報、地形、そういった戦闘で必ず必要になる重大な要素を未だ何ひとつ聞いていないのだ。


「そういえば言ってなかったな。敵の戦力は約4万人ほどだ。戦う相手の事ぐらいはお前も知っているだな?」


「ええ、あのイカレタ黄色頭巾している連中ですよね?あの、山賊やら盗賊やらが集まったっていう。」


「ああ、そうだ。名を黄巾党といい、その主の名を張角というらしいな。まあ、どちらにしても奴は間違いなく民の


恐怖の源となっていることは揺ぎ無い事実だ。奴はこの戦で始末しなくてはなるまい。どんな手を使ってもな。」


そう改めて決意を確認するように曹操は右手の手綱をより一層強く握った。


「惇よ。お前も今のうちに聞きたい事があるなら、聞いておけよ。しばらくしたら戦闘が始まるだろうからな。」


「じゃあ遠慮なく質問させて貰うか猛徳よ。聞きたい事は1つだけだ。淵はどうしたのだ?


奴も悪来と同等の武力は持ち合わせているはずだ。知恵は・・・・比べるまでもないか。」


「おい、元譲。喧嘩売ってんのか?」


夏候惇は典韋の言葉を無視して曹操の方を一度睨み、またさっきと同じように前を見た。


典韋は反応がなかった事がきいたのか、いじけてその後の会話には入ってこなかった・・・。


ちなみに『淵』とは夏候惇の弟の夏候淵の事である。


この人物に関しては後々登場したときに説明するとしよう。


それと悪来というのは典韋のあだ名でもある、『悪来典韋』から取ったものだ。


「ああ、淵の事なら心配するな。いずれ判るだろうからな。」


そう言って含み笑いをしながら馬は少しだけ速く歩かせた。


「この戦いから乱世が始まるのだ。悪来、惇よ我等が覇道を掴むまでは、この命惜しむことなく使えよ。


だが、死ぬ事を恐れる事は忘れるな。死にたくないと思う心は時には何よりも強くなるときがある。


それが覇道を掴むためにはどうしても必要だと儂は思うっている。」


夏候惇は驚いた様に片方しかない目を限界まで開きながら、曹操に皮肉を言った。


「猛徳。まさか、お前からそんな台詞がでようとはな。お前なら、死ぬ事を恐れるなと全く逆の事を言うと


思ったがな。」


さっきまで驚いていた顔を一変させ、今度はふざけた様に憎たらしい笑みを浮かべ


曹操を威嚇する目だけは鋭い眼光を残したままだ。


曹操の真意を確かめようと曹操の眼光の奥の奥まで覗こうとしているような感じだ。


「ふ。昨日の晩夢を見てな。ある小童の夢だ。最後まで足掻いて足掻いて足掻き続けていてな。


結局その努力は報われずに終わっていたがな。だが、そこまでの過程は目を見張るものがあった。


それの生き様というものを見て、死というものを改めて思い直されたわ。


小童の癖に最後にはいい目をしておった。」


いったん話を区切ると、まるでイマまでの自分を卑下するかのように鼻で笑った。


「だが、その少年の名だけが思いだせん。まことに夢とは不思議なものだな。」


そういって清々しい程に晴れている青空に手を伸ばした。


そして空を掴むようにグット手を握り、また話し始めた。


「いや、しかしあの世界は何だったのだろうな。難儀な世界だった。


紫の巨人、赤い海、巨大な化け物、高速で走る箱。儂の知らぬものばかりだったな。」


「猛徳、残念だがお喋りの時間は終わりのようだ。」


そう言って夏候惇は前を指差した。


前からは100人ほどの兵士がこちらに向かってきている。


「総大将!!後ろからも兵が!!」


後ろからは約500人ほどの兵士が詰め寄ってくる。


イマの地形は横幅50m程の両脇に6mほどの高さの岩壁があり、前後を塞がれると


完璧に逃げ道が塞がれてしまうのだ。


「戦況は良くない・・・・か。だが、決して勝てぬ数ではない。行くぞ!!!


悪来!惇!!部隊は二手に分かれよ!!なるべく後ろから攻めてくる部隊を潰せ!!」


その曹操の言葉で部隊が分かれようとしたその時だった。


「いまだ!!落とせ!!」


前の部隊の奴らの掛け声と同時に両側の岩壁から何人かの黄色い頭巾を被った兵士と


巨大な岩の群れが見えた。


「しまった。もう止められん!!」


気付いたとき既に遅し、もう弓矢でその兵士たちを倒す時間も残っていない。


今、曹操の部隊が取る手段は一つしかない。


「精一杯走れ!!!岩の届かぬところまで!!駆けるのだ!!」


悪来と惇は行動が素早かった。


曹操の命が出るよりも早く、前の部隊に突撃をかけ、奇襲に成功してそれぞれ手に剣と斧を持ち


何人かの命を散らしていっていた。





ガラガラーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!





岩が岩を蹴る音が当たりに響き渡り、地面目掛けて一目散になだれ込んでいく。





ズドオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!





そして岩が地面に当たると同時に、岩が奏でる轟音のほかにも「グシャ」という


肉の潰れる生理的悪寒を誘うような音と人間の内部に隠れている臓器、血、骨などがあたりに飛び散っていた。


その光景を見ても相手の兵士は怯むことなく、いや逆に俄然やる気になり分断した曹操の部隊を襲い始めた。


しかも、前の方に逃れてきたのは夏候惇、天韋、曹操の三人だけで、相手の兵士はおよそ百人という戦力差。


正に絶対絶命とはこういうのを言うのだろうか?


「どうする?猛徳?」


さっきまで奇襲をかけていたが、相手が冷静になったのを見計らって


退却してきた夏候惇がうすら笑いを浮かべながら曹操に問いただす。


「どうするって・・・んなもん決まってるぜ!!なあ総大将!」


そう言って、典韋は自慢の怪力で巨大な斧を持ち上げた。


「当たり前だ!これしきの修羅場を乗り越えれずして何が覇道だ!!


量より質!!その言葉と同じように我らの武が敵100人より越えればいいだけの事

いくぞ!!悪来、惇!!」


「「おうよ!!」


そうして三人は駆け出した。


その駆け出した瞬間に真ん中の岩山から凄まじき火柱が上がった。


それが西方の戦いの狼煙であった・・・。




















−同刻−


その頃中央の岩山では凄まじい戦いが繰り広げられていた。


それまではそこそこ良い勝負をしていたのか、二人ともあちらこちらに傷あとがある。


だが、一人の男が勝負をかけた。


なんと右手に持っていた杖から巨大な火柱があがったのだ。


少年はそんな攻撃が来るとは思うはずもなく、その火柱の海にのみこれていった。


「!!!!!!!!!!」


強烈な火柱に煽られたが、その俊敏な足で死は免れた。


そして、叫び声も上げなかったので、内臓を焼かれる心配もなかった。


だが、それでも既に戦える状況ではない。


焼けた肌のこげた臭いがそれを物語っているようだった。


「シンジ!!!!!」


「シンジ様!!!!!」


後ろから聞こえる2人の女性の声も少年の耳には届いていないのだろうか?


少年はピクリとも動かない。


まるで屍のようなその少年の格好、それが2人の女性をより一層不安にさせているのであった。


そしてもう一人の男のほうが両手を天に掲げ、妙な踊りをし始めた。


「ヒョ〜〜ヒョッヒョ。これぞ太平道よ。さて次は2人の女子か。


楽しめそうじゃの〜。」


その男の風貌は土色の顔をしており、髪はボサボサでしかも裸足の如何にも不潔そうな初老の男だ。


それにさっきまで持っていたはずの杖もどこかに消えている。


そして妙な踊りをやめ、先ほど少年を倒した男は二人の女性の方へ歩いていこうとした・・・その時だった。


男の頭に結構な速さで石がぶつかっていた。


「待て!!!!二人には手を出すな。」


先ほどの少年が最後の悪あがきとでも言うように投げたものだ。


しかも、少年は剣を杖代わりにして立っている姿が痛々しく見える。


それほどまでに酷いのだ。


だが火にやられた時間が一瞬だったのが幸いした。


皮膚呼吸ができないほどの火傷はしてないらしい。


だが、それも所詮悪あがきでしかないのだ。


男はさっきまで厭らしい笑みを浮かべていた顔を憤怒の顔に変え、シンジを睨んで、こう言った。


「どうやら余程死にたいらしいの、青年。では望みどおりにして進ぜようぞ。」


そして、つい先ほどまでは何も無かった右手には杖がしっかりと握られており


その杖の先が熱さでぼやけ始めていた。


そして2人の女性も「もう駄目だ!!」と思い目を瞑り、少年も必死で足掻こうとするが


足に力も入らずにまた火が発射されると思われたその時だった。


男の手に握れていた杖が何者かによって投げられた小剣により射抜かれ、男の手元から飛んでいった。


そして少年から見て左側から声が聞こえてきた。


「ったく。だらしねえったらありゃしねえぜ。」


その先には紫色の鎧に、黒色のバンダナらしきものをし、真白の刀を持った青年が立っていた。


そして、髪は青く、目は赤かった・・・・。


そうアカかったんだ・・・。






To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

鳥哭様より「違う場所で 〜三国の歴史〜」の第五話を頂きました。
ようやく曹操が出てきました。何かシンジ君(?)に同情しているっぽいので、彼とは敵対しないのでしょうか?
しかしシンジ君、いきなりの大ピンチです。
ここは一つ、シンジ君の抜本的な強化しかないでしょう!いえ、これはもう宇宙の意思ですよ!
特訓なり改造なりフュージョンなりドーピングなり、何でもいいからスパシン希望ッス!
だってこのままじゃ、ハーレムが・・・ハーレムが露と消えてしまうではないかぁ〜〜っ!(管理人の魂の叫び)
ま、まさか最後にノコノコ現れた黒バンダナの男に女性陣を掠め取られるなんてことは・・・ないですよね?(うるうる)。
コホン、失礼しました。・・・しかし誰なんでしょうね、この黒バンダナの男は。原作に出てきた人物なのでしょうか?
しかし紫の鎧で紅眼って、まさか○○○の擬人化?・・・ってアレ、♂だったっけ?
まあ、次でその正体が明かされることを期待して、次作を待ちましょう♪
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