第四話
椎堂ツムグの影響力?
presented by 蜜柑ブタ様
地球防衛軍の兵器格納施設に収容された機能停止した機龍フィア。
機龍フィアの開発と整備に関わっていた科学者の一部が機龍フィアの酷い有様にショックで泡を吹いて倒れたとか。
使徒とゴジラが来るまでに前の戦いでの傷を修理しきれていなかったのもあるが、まだまだ改良中とあって戦闘にならなければ分からない問題点が多々ある機龍フィアは、ゴジラと戦うためとはいえ七つあるリミッターの内、二つを同時解除した途端に脳と繋がっているDNAコンピュータから逆流してきた信号でパイロットの椎堂ツムグがバーサーカー化してしまい、機龍フィアの機体の耐久性を無視して凄まじい近接攻撃でゴジラを攻撃し、赤い熱線を真っ向から浴びながらも戦えたのは、かなりの成果であったがリミッター二つを同時解除した反動による機体への負担と機体の損傷のためDNAコンピュータの判断で強制シャットウダウンがなされた。
ゴジラがあのまま追撃していたら機龍フィアは、パイロットの椎堂ツムグごと破壊されていただろう。悔しい話だが、見逃してくれたゴジラに感謝しなくてはならない。なぜ見逃したのかは謎であるが、過去にゴジラは、機龍フィア以外のメカゴジラに情けをかけたように今回のような行動をとったことがあったので、今回もそれに似た理由があったのかもしれない。
一つ以上リミッターの解除の問題と、パイロットの椎堂ツムグがバーサーカー化したことについて、技術部は、上層部からこってり絞られた。念のため追記しておくが開発担当者達がこうなることはちゃんと想定してそのための対策はとっていた。しかし頭の中で描いた予想図と現実は違う。いまだ未知数の椎堂ツムグのG細部と人間の細胞の融合した細胞で作ったDNAコンピュータが一つ以上のリミッター解除するとパイロットの椎堂ツムグにそんな影響を与えると予想していなかった。
3式機龍の時もそうだが実戦になって分かる部分があまりに多すぎる。
しかし使徒シャムシエルの襲来のこの一件で、機龍フィアは確かに機能停止する事態に陥ったが、同時に科学者や技術者も予想していなかった良い変化を起こした。
それは、損傷していて修理が必要だった機体の伝達回路が素体として使われていた椎堂ツムグの細胞によって生物と無機物が融合した形で修復され回路の修理が必要なくなったことだ。
また熱線で焼け焦げ、煙を吹いた関節部分も細胞の働きで自動的に再生を始め、修理する部分は表面の装甲と人の手が必要なジェットと射撃武器などの武装だけだった。なお外装部分も、一部細胞が浸食しておりその内装甲も修理がいらなくなるのではと予想された。
生体細胞が無機物と融合し、更に破損を修復する様は、機龍フィアの開発に携わった特にマッドだと言われるタイプの生物学者達を狂喜乱舞させた。彼らにとって機龍フィアの開発も、その材料として細胞を提供した椎堂ツムグも自分達の好奇心と研究意欲を満たすための足掛かりで道具にしか過ぎない。
機龍フィアの開発と改良、そして戦いの記録は、生物化学部門の糧にもなっていた。
G細胞の素晴らしい特性は、セカンドインパクト前から研究者達に知られていた。だがその副作用(怪獣化)ゆえにいまだにうまく利用する方法が見つからないままだった。
そんな時に現れたのがG細胞を取り込みながら人間の形と意識を保っているG細胞完全適応者である椎堂ツムグである。
椎堂ツムグの細胞は、怪獣化の副作用なくG細胞を活用できる光が見えたとして科学者達はこぞって彼の細胞を研究した。
しかし調べれば調べるほど、椎堂ツムグの細胞は、ゴジラと同じく持ち主に依存しており、他者に与えれば拒絶反応が起こることが分かってしまった。動物実験で末期癌に侵された病気の動物に椎堂ツムグの体液から採取した細胞を与えたところを凄まじい勢いで癌細胞を正常な細胞にしていったが、治癒の過程で凄まじい細胞の変異に耐えきれずその実験動物は死んでしまった。怪獣化はしなかったが、解剖したところ全身を侵していた悪性の腫瘍は綺麗になくなっていて、それ以外の体の不調も改善されていたという記録が残された。また投与されたツムグの細胞も死体を変異させず死体の中に僅かに残っている程度で治療の過程で消耗してツムグの細胞が消滅することが分かった。つまり酷い怪我や重い病気の体になら本物のG細胞と違い体内に残らないのだ。
結論として、怪獣並みの生命力がなければ医療目的に椎堂ツムグの細胞は使えないということが分かった。人間の細胞と融合した純粋じゃないG細胞とはいえ、そのパワーは凄まじくただの人間はおろか、ミュータントでも健康体になる代償に即死してしまう。隅々まで健康な死体…、まったく嬉しくない。
生物の細胞は、それ一つ一つが大なり小なりパワーを持っている。そのパワーの強さは個体により違うが、例えば電気ナマズや電気ウナギなどのように自らの体で放電という凄まじい現象を武器にするような体と細胞の並び方を持つ生物がいるが、彼らの放電は命をかけた武器である、つまり多用できない。それに比べて怪獣ともなるとデンキナマズなどが命がけで行う放電も息をするように簡単に行う。怪獣と普通の生物では、細胞のパワーが違いすぎることの表れだ。
どうにかしてG細胞のパワーを抑えられないかと試みる研究が行われているが、G細胞は制御しようとすればするほど、細胞が抵抗し、薬品などを使用した場合抵抗力をつけてより厄介なものに変異したため、危うくバイオハザードが起こりそうなったこともあった。
G細胞を活用する研究を熱心にやっている科学者達が、八方塞がりだと頭を抱えているということが科学者の卵達の間でもっぱら噂になっている。
研究そのものは国家の命令で行われているが、8割ゴジラを完全抹殺する方法を探す、残り2割が有効活用する方法を探すためみたいな割合である。
過去、個人的な目的のためにG細胞(ゴジラの)を利用し、ビオランテという怪獣を誕生させた科学者の一件もあるので、G細胞を扱うための規制はかなり厳しい。またビオランテのような怪獣を生み出せばゴジラを呼び寄せる要因にもなるからだ。
ともかくG細胞は様々な目的を達成するために毎日研究されているのである。
そしてG細胞の研究に一筋の光をもたらしたと一時期謳われたG細胞完全適応者の椎堂ツムグは、その頃…。
「…火傷、打撲、骨折などは収容された時にはすべて完治していました。ですが、脳へかかった負荷が大きかったらしく、まだ意識が戻っていません。」
青い顔をした医者兼科学者が椎堂ツムグの体の状態を記した書類を挟んだボードを両手で持って、司令部の面々に説明した。
ツムグは、ごっついカプセルの中で眠っている。強化ガラス越しに表情は苦しそうに歪められているのが分かる。
「やはりDNAコンピュータからの信号の逆流が原因なのですね?」
波川が聞くと、担当医は恐らくと頷いた。
「脳は、肉体すべての機能を司るもっとも重要な器官です。昆虫のように脳を持たない生物ならまだしも、椎堂ツムグは、怪獣並の生命力をG細胞から手に入れていますが、一応…“人間”ですからね。人間は、特に脳が多く発達している生物ですから、脳へのダメージは、ゴジラと比較したら遥かに大きくなるのでしょう。あとこれはあくまで推測なのですが、彼の脳の奥に埋め込んだ監視装置と自爆装置がDNAコンピュータからの信号で大きく揺らされた脳を圧迫したという見方もできます。」
「回復の見込みはあるのですか?」
「脳波は、随分と弱っていますが、時間を経るごとに徐々に回復に向かっています。目を覚ますまでそれほど時間はかからないと思います…。意識が戻ればあっという間に元通りになるでしょう。ただの人間なら間違いなく脳死していたでしょうがね。さすがG細胞と言うべきでしょうか…。しかし今までどんな実験でも気絶すらしなかった椎堂ツムグが意識を失うほどとは…、あの、私ごときが意見をするのもなんですが…、新型メカゴジラは、本当に使えるのですか?」
「……そのことは、技術部にすでに言っています。今回のことでDNAコンピュータの大幅な見直しを行うと報告を受けているわ。椎堂ツムグには、まだ死んでもらっては困るのよ。まだ椎堂ツムグ以外のパイロットでも十分な戦闘ができるように調整も次の対策もできていないのですから。」
「…はい。」
冷たさしか感じられない波川の口調と言葉に、担当医は、恐怖を感じながらもなんとか返事をした。
波川は、司令官としての立場があるため時に冷酷で残酷な決断を下さなければならないことは多々ある。
椎堂ツムグの件もそうだ。貴重な検体であり、ゴジラを倒すこととG細胞の平和利用に繋がるかもしれない希望。それと同時に最悪最強の人類の敵になりかもしれない危険すぎる可能性もある存在。
椎堂ツムグが発見されたのは、今から約40年前。
ゴジラとゴジラと敵対した怪獣との戦いで壊滅した街で、特に遺体の発見すら困難な場所で不自然に無傷な姿で発見されたたった一人の生存者。それが椎堂ツムグであった。どこが不自然だったかというと、彼は大きな瓦礫が散らばる場所の影で座り込んでおり、衣服は破れて半分以上焼けていて、その下の肌は火災による煤まみれになっていたのと、血だけじゃなく骨や内臓から出る特有の体液が彼が座り込んでいる場所を中心に大量に流れた跡がカラカラに乾いていたことだ。保護した時に汚れを落としてみると、傷は一切なく、精密検査をしても骨折も内臓に損傷もない健康体そのものだったのだ。発見した時の状況から見て明らかにおかしいということで細胞の検査をしたところ…、彼がゴジラの細胞で変異した人間だということが判明したのだ。そして彼は、G細胞完全適応者という名称を付けられ怪獣を研究する機関に送られた。
椎堂ツムグの名前は、彼の本名ではない。彼が発見された場所にあった看板などの文字を繋げて付けた適当な名前だ。
本名その他。一切不明なのは、彼が保護された時、自分のことについて何も覚えていなかったからだ。
ただ、漠然とゴジラのことと、ゴジラのおかげで自分の体に大きな変化が起こり生き延びたということだけを覚えていた。そのせいか彼は、ゴジラに対し、ある種の尊敬のような信仰のような感情を抱いている。ゴジラのことをわざわざ「ゴジラさん」と呼ぶのは、40年前から変わっていない。
人間でも怪獣でもない自分自身の立場や、監視下に置かれて様々な惨い実験をやられてもどこまでもマイペースで、当時の科学者達や地球防衛軍の者達を困惑させたと言われている。
発見された当時、10代後半か、20代前半ぐらいの外見はまったく変わっておらず、G細胞の不死の力が彼を本当に不老不死にしたのでは思われているほどだ。記憶がないので正確な年齢は不明だが、20代だったとしたら、今年でもう60は過ぎている計算になる。
外見は若いまま、すでに60歳を過ぎている彼の扱いは変わっていない。むしろ機龍フィアが開発されることが決定された時、恐らくもっとも過酷な実験に身を捧げなければならなくなった。
ゴジラを倒すための兵器を開発し、実戦でしか得られないデータを収集して彼以外でもゴジラと対等に、それ以上に戦うことができるようにするために機龍フィアに乗せて戦わせる。一歩間違えればツムグがゴジラの思考に侵されてしまう可能性も、彼に埋め込まれたナノマシンや機器によって管理され、もしもの時は体内のそれらの機器のセットされたもしもの時の保険と、機龍フィアもろとも自爆するようプログラムされている。データを取るためとはいえ人類の敵になる可能性を高めてしまうゴジラに接近させる機会を与えているのはいつでも殺せるよう(殺せるぐらいの痛手を負わせる)にされていたからだ。
二体目の使徒の襲来と二回目のゴジラ進撃とその戦いで脳へのダメージを受け、今までどんな実験でも気絶すらしたことがなかったのに意識を失う事体が起こった。
このことは、機龍フィアのDNAコンピュータを大幅に見直し、更なる改良がされる糧になった。
あと機龍フィアの素体になっている彼の細胞が機龍フィアに浸透し、生物と機械の完璧な融合による自己修復能力を機龍フィアが手に入れる結果を生み出した。
波川は、椎堂ツムグがいる施設から去った後、大きなため息を吐いた。
波川は若くない。椎堂ツムグのことはよく知っているし、対話だってしている。椎堂ツムグの扱いについては、超危険レベルの毒物か兵器を扱うような規定になっているが、組織の内部では椎堂ツムグのマイペースさがベテラン勢に浸透してしまったのかはたまた勝手に監視施設から自由に脱走しては気楽に組織の人間に話しかけてきたりする姿に慣れてしまったのか、組織の中で神出鬼没、勝手に脱走はするけど外界に影響を与えたり悪さはしたことがない椎堂ツムグの行動を一々咎めなくなってしまった。
大問題なのだが、その勝手な行動が思わぬ助けになることもあり、もう誰も問題視しなくなったのだった。
そうなれば椎堂ツムグのことを長年知る人間は、少なからず情を持ってしまうようになる。波川もそうだ。担当医の前でああは言ったが本当は心が痛かった。昏睡状態に陥った椎堂ツムグを心配していた。
しかし椎堂ツムグの犠牲がなければ手に入らない平和な未来のため、情を捨てなければならない。人間らしい優しさなどが欠如したマッドなタイプの科学者達はともかく、人間らしい心を持って下の者達を導いていかなければならない波川は、人間らしい良心と冷たい司令官として立場の間で苦しむ。
「ゴジラが人間を許さないのは、こんなことをずっと昔から続けて何も変わろうとしないからなのかしら…。」
波川は、迎えに来た車内で、窓の外を眺めながらそう呟いた。
ゴジラは、人類が作ってしまった最悪の兵器の炎とまき散らす毒を浴びて生まれた。
そして人類を断罪する、人類の罪そのもののように人類を蹂躙する。
もしもG細胞完全適応者の椎堂ツムグが人類の敵になったなら、それは自業自得だ。散々惨い実験に利用し、その細胞からゴジラを殺すために兵器を開発し、そしてその兵器に乗せて、彼にとって命の恩人、あるいは神に等しいであろうゴジラと戦わされているのだ。
はっきり言って、椎堂ツムグが人類のことをどう考えているのか分からない。いつ敵になってもおかしくはないのに、彼は、マイペースに人類に付き合っている。
終わらないこの繰り返しが、いつか終わる日を、ただ願うことしかできない。波川は、自分の机に積まれた書類に目を通しながらそう自虐なことを考えた。
半日ぐらいの時間が経過して、椎堂ツムグは、意識が戻った。
目を覚ました彼は、担当医や研修医達を見つけて目が合うなり、子供みたいに笑って。
「おはよう。」
っと元気に挨拶したそうだ。
***
機龍フィアが機能停止になったが、椎堂ツムグの細胞によって自己再生能力が付き、ほとんど人の手も、費用も掛からず万全な状態で次の使徒襲来でやってくるはずのゴジラに備えることができた。
地球防衛軍では、使徒はただゴジラに蹂躙されるだけの怪獣にも満たないが人類にとっては脅威に他ならない正体不明の生命体という認識だ。
使徒の研究を第一線で行っていたネルフに使徒についての資料の提供を呼びかけたが、赤木リツコがゲンドウとゼーレからの命令でMAGIのプロテクトで何百ものガードをさせたため、資料を出すことができなくなっていた。
頑なに彼らが極秘と定めているデータを地球防衛軍に渡したがらない態度に、地球防衛軍の上層部は、こめかみをピクピクさせて漫画なら沢山の怒りマークがつくほど怒った。
いっそN2地雷を落としたろうか?っとか危ない発言が出るほどだ。
するとギスギスした会議室に、波川のとんでもない発言が出る。
「エヴァンゲリオンとの共同戦線というのはどうでしょう。」
「波川司令!? 本気なのですか!?」
会議室にいる偉い人間各位が驚いて波川を見た。
「向こうがこちらに応じないのなら、反応を示す手をコチラがちらつかせてみるのです。喉笛を見せたところを噛み砕けばよいのです。」
「…噛み砕いたあとの肉と骨はどうするのです?」
「食べられるところだけ食べてしまえば良いのです。食べられなければ、野に捨てればいい。」
それは、喰えるところ(情報や技術など)さえあれば美味しく食べれば良いが、もし喰えなかったら簡単に滅ぼしてしまえということだ。食べちゃっても食べる部位が無くなれば捨てるより他にないのである。つまりどっちみちネルフには未来が無いのだ。
ネルフに少しでも情がある者は、せめて喰えるところがネルフにあることを祈るより他なかった。せめて喰えたら吸収という形ではあるが、ネルフの人間達がコチラ側に来れる可能性があるからだ。
「まあ、こう言っては何ですが、向こうもあわよくばコチラを喰らう気でしょうしね。ならば、向こうが何か言い出す前に、コッチが折れたように見せかけてみるのですよ。」
「なるほど。ならば向こうが簡単に喉笛を見せてくるでしょうね。あの男ならば。」
「良いですか?」
「喰えるところがあればいいですがね。」
「私が獣ならば、願い下げですが…。喰えるモノは喰っておきましょう。」
っということで、ネルフとの共同戦線という形が取られることとなった。
後日、そのことをネルフに伝えると、そりゃもう目をぱちくり、驚いている様子であったが、ゲンドウは内部から地球防衛軍を喰らうチャンスだとばかりにこの共同戦線話を受け入れた。
「分かっていたとはいえ、こうも簡単に食いついて貰えると、拍子抜けします。」
ところで、なぜ波川がゲンドウの思惑を知ったかというと……。
「目的のために手段を選んでられなくなったんだろうね。」
波川の執務室で、ツムグが机の上に座っていた。
「その目的とは?」
「秘密。」
ツムグが、ゲンドウの考えを読んでチクったからだ。
「またそれですか? あなたのその言葉は聞き飽きたわ。」
「まあまあ、これでも食べて落ち着いて。」
そう言ってツムグは、駄菓子を手渡した。
「懐かしいわ。」
「地球防衛軍の復帰のために毎日頑張ってるんだからさぁ。“使えそうなモノ”に、少しぐらい寄りかかってもいいと思うんだ。ま、それの強度が弱くって折れてもその時はその時だよ。折れようが折れまいがどっちでもいいんだし。」
鼻歌を歌いそうなほど楽しそうにツムグは、言葉を紡ぐ。
波川がエヴァンゲリオンとの共同戦線を提唱した背景には、ツムグのこの進言もあったのだ。
「ネルフが横暴を働いてたのは、背後にいるあの老人達の地球防衛軍への鬱憤もあっただろうけど、まあ、自業自得だし? 波川ちゃんの例え通り、食べられれば万々歳だけど、食べれなければ食べれないで捨てちゃえばいいんだし、どう転んでも別にいいんだもんね。今までネルフが好き勝手出来る特権を実質失っているんだからさ。」
「……ゴジラとの戦いは我々が。使徒との戦いは、エヴァンゲリオンが。表面上の役割分担はそうしたわ。彼らは果たして理解しているのか。戦えば戦うほどにコチラに旨味のあるデータを与えることになり、やがて味の無くなったガムのように捨てられることを。」
「怪獣との戦いで培った技術力と科学力を舐め腐ってる節があるからね〜。たぶん、赤木リツコ博士だけは分かってると思うだろうけど、たぶんそれを理解した上で共同戦線を楽しむんじゃない? 赤木博士は、コッチに興味津々みたいだし。」
「そうなの?」
「そういえば、地球防衛軍管轄の病院に移した病院の患者に、ファーストチルドレンの綾波レイって子がいるでしょ? あの子のことどーするの?」
「まだ何も。ただ、あの少女については何も情報が無いものですから。医療機関の調べでは、おそらくまともな出生の人間ではないということだけは分かっているわ。」
「登録情報が、名前以外に抹消されてるんだもんね。あの髪色といい、目の色といい、普通じゃないのは当たり前だけど。」
「怪我も完治してない以上、多くは干渉しません。尋問したとしても情報を持っていないと思いますし。」
「あ、そう思うんだ?」
「…あくまで憶測に過ぎませんが。あの少女は、エヴァンゲリオンに乗るためだけに存在させられている存在だと思うのですよ。そのような少女がネルフの機密を知っているとは思えませんので。」
「当たらずも遠からずかな?」
「なんですか? あの少女が何か重要な存在だと?」
「おおっと、口が滑った。じゃあね、波川ちゃん。」
「あっ。……もう…。」
一瞬にしてテレポートで消えたツムグに、残された波川は肩をすくめたのだった。
To be continued...
(2020.08.23 初版)
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