第十九話
イロウルの事後処理と、風間の災難?
presented by 蜜柑ブタ様
機龍フィアが元のボディの色を取り戻した頃。
「パターン青。消滅…。」
「勝った…のか?」
微生物の集まりの使徒が死んだという反応が確認されても全く安心できなかった。
なにせ微生物。一つ一つがコアを持つ使徒と判明してしまったことが大きい。
だから油断できない。
イロウルが殲滅されたという報告がされても、緊張は解けれない。
そんな中、ゴジラが雄叫びを上げた。
喉がやっと治ったらしい。完治とは言い難いがそれでも鳴き声を出せるほどには回復したようだ。
だがその直後。
機龍フィアに、ゴジラは、ビンタ、された。
しかもビンタの強さは、ぺちんっという程度である。
ゴジラも、地球防衛軍もみんなポカーンである。
しかしすぐに我に返ったゴジラは、怒りを露わにして機龍フィアに殴りかかろうとしたが、それよりも早く機龍フィアが両腕を上から下へ振り上げゴジラを殴打した。傍から見ると、それは子供が駄々をこねて両手を振り回すそれだ。
機龍フィアが爆発させられそうになった危機を脱したはいいが、今度は機龍フィアに起こった別の異変で地球防衛軍は慌てた。
連続で叩いてる割にはダメージはとても低いらしく、ゴジラは、なんなんだ?っという感じに眉間を寄せている。
その時。
『ツムグのバカーーーー!』
「喋った!?」
電子音混じりの子供のような声が機龍フィアから出た。
口が動いているわけじゃないのでスピーカーか何かから出ているのだろうが、喋れるようにしてはいなかったはずだ。パイロットが操縦席から外に向かって声を向けることはあれど。
いきなり子供の声を発したことは、機龍フィアの開発に関わった科学者達や技術者達を混乱させた。
ゴジラもちょっとびっくりしていた。
『バカバカバカ!! いっつもゴジラ、ゴジラって! ツムグのバカ!』
操縦席にいるツムグに向かって怒鳴っている。
『ツムグは、“ふぃあ”のだもん! “ふぃあ”のだもん! ゴジラのじゃないもん!』
「…微妙に発音が……。」
「科学部からの報告で、音声の解析結果、平仮名で“ふぃあ”って言っているとのことです。」
「機龍“フィア”だから、“ふぃあ”なのか?」
「つまりあの声は機龍フィアのDNAコンピュータということか。」
「自我意識が芽生えただと? それじゃあ3式と同じ…。」
「いやいやいやいや、3式機龍とは明らかに違いますって! 資料で見てますけどあんなんじゃなかったですって。」
『あげないもん! あげないもん! ツムグは、あげないもん!』
「椎堂ツムグが好きなんだな…。」
「あいつの遺伝子細胞から発生した意識なら普通なんじゃないか?」
「ハハッ、あいつモテんじゃねーか。」
「違うと思うぞ!? むしろ兄弟とかそんな感覚だと思うぞ!?」
「司令部はさぞかし大騒ぎだろうな…。」
「そうでしょうね…。」
「あっ」
前線部隊が基地にいる司令部の混乱を心配していると、事は動いた。
黙って叩かれていたゴジラは、我慢の限界をむかえたのか呆れたのか、機龍フィアを強烈な張り手で倒すとくるりと背中を向けて海の方へ去っていった。
「帰りましたね…。」
「使徒もいなくなったしな…。」
「喉の怪我も治り切っていないようだし、無理して来たってのもありそうだな。」
「というか、呆れて怒りも治まったんじゃないか?」
『ウゥ〜〜、ツムグ、起きてよ〜!』
「って、あいつ(ツムグ)起きてないのか!?」
「そもそも意識がなくなっていたなんて初耳だぞ!」
「仕方ないだろ、内部の情報が入ってこなかったんだから…。」
「どーすんだ、これから? 司令部からの指示はまだか?」
「仕方ない。俺達は俺達でできることをやればいいだろ。」
「それもそうだな。」
「尾崎少尉が見つかりました!」
「そうか! ん? 何かあったのか?」
「それが……、数十キロ離れたところからテレパスで近寄るなと言っていて…。」
「? ……まさか。科学部に指示を仰げ! 全軍に伝達、尾崎をSS級危険物として警戒しろ!」
「は、はい!」
「どーした熊坂!?」
「使徒につかれてた機龍フィアに直接触ったんだ…。発信機が途中で途切れたのは使徒に捕まったか何かされたに違いない。あいつのことだ…、それに気付いて味方に近寄らないようにしてるんだろう。」
「あっ…。」
『ツムグ〜〜。う〜、ん? だぁれ?』
「なんだ? 様子がおかしいぞ?」
『えっ? ほんとう? ツムグだいじょうぶ? ほんとにほんとに? うん。分かった。』
機龍フィアがキョロキョロと首を振りながら誰かと会話をし、やがて大人しくなった。
自我が芽生えたことで勝手に動いていた機龍フィアが大人しくなったため、その隙にと回収することになった。
暴れるかと思われたが、嘘みたいに大人しかった。
後で分かったことだが、機龍フィアに話しかけて大人しくするよう説得したのは、尾崎だった。テレパシーを使ったらしい。
機龍フィアが回収されるのと同時に、問題の尾崎の方も回収となった。
微生物の使徒に侵されている可能性に、尾崎と親しい者達は不安の色を浮かべた。
***
「……ん?」
ツムグが目を覚まして最初に目にしたのは、手術室の強烈なライトだった。
「やっとお目覚めか。」
「おはよ〜。」
頭がまだボーっとするが、目をこすりながらツムグは、起き上がった。
マスクをして白衣を着た自分の管理者の一人がカルテを片手に持って立っている。
「脳の活動は若干にぶいが、事情聴取だ。」
「大丈夫。大体把握してるから。」
寝たままヒラヒラ手を振ると管理者は呆れたように息を吐いた。
それからは使徒サハクィエルが殲滅された直後に機龍フィアをなぜ飛ばしたのか。いつ使徒イロウルにやられてしまったのか。硬質な繭みたいに変化したイロウルに強制的に眠らされていた状態についてなどを話した。
「普通なら脳死ししているか、運が良くても脳に重大なダメージを受けるがな。G細胞の力だな。」
「尾崎ちゃんは?」
「…なぜおまえが知っている?」
「夢の中で尾崎ちゃんと会った。」
「そうか…。おまえには説明が必要ないな。」
「自分でも便利だなぁって思うよ。でさ、尾崎ちゃんの様子は?」
「かなり参っているみたいだ。無理もない。いまだに得体のしれない化け物に身体を侵されているかもしれないからな。」
「検査中ってこと?」
「今回の使徒は微生物だ。少しでも残っていたら復活する可能性が高いからな。」
「その心配はないよ〜。」
「はっ?」
ツムグは、むくりと起き上がり、ニッと笑った。
「尾崎ちゃんのところ、連れてって。」
そう言われて管理者の一人は、言葉を失った。
***
科学研究が行われたり、検査といったことも行われる特別な実験所がある。
恐らく世界で1、2を争う防護、防菌の場所であろう。
怪獣がいた頃からフル稼働のそこに、尾崎はいた。
正確には…、監禁されていた。
簡素な病人服の恰好で、室内の外が見える窓にソッと手で触れる。
機龍フィアのリミッター解除装置を使うために出動したはいいが、目前のところで使徒に捕まった。
使徒は微生物の集まりだったことをあの時はまだ判明していなかった。少なくともこれまで現れた使徒と生態が全く異なるとは分かっていたがどのような生態を持つ使徒なのかは分からなかったし、何より機龍フィアを奪還することを優先しなければならず、機龍フィア自体がミュータントの強力な超能力をほとんど受けつけない仕組みだったのもあり仲間の力を合わせても接近できるのが尾崎しかいなかった。
アメーバのように変態した使徒に捕まり、その液体を口にしたうえに、精神攻撃まで受けたのだ。体の中に使徒が入り込んで生き延びている可能性は非常に高いということだ。
尾崎は、壁に背を預けてその場に座り込んだ。
清潔すぎる白い部屋はあまりいい気分にはならない。
正式にM機関への戦士になる前、尾崎には実験動物も同然の扱いを受けた時期がある。
初めのうちは他の者達と同等の扱いだったが、検査や訓練を受けるにつれ、自分だけが違う場所に移動する機会が増え、やがて引き離された。
尾崎でも、シンイチでもなく、割り振られた番号でもなく、“カイザー”という名称で呼ばれるようにもなり当時は混乱した。
普通の人間ではないという自覚はあり、同じ力を持つM機関に保護された仲間達との出会いを通じてそれを理解したし、その力の扱い方や高め方などを学ばなければならない理由だって理解した。
なのになぜ自分だけが違う場所に連れてこられたのか。子供に分かるわけがない。
あのままだったら尾崎真一という存在は実験体として終わっていたかもしれないし、尾崎自身が現在の尾崎として精神を保てていたか怪しい。
膝に顎を乗せてあの時のことを思い出す。
金色の混じった赤色と、なぜか奇妙に見えた笑みを思い出した。
そう、実験室に閉じ込められていた尾崎を解放したのは、ツムグだった。
しかし正確なところは解放したと言えるのかどうか今思うと微妙なところではある。
何をやったかというと…、ツムグが、襲って来たのである。
…殺すとかそういう意味の方である。
子供時代の尾崎は当時出せる全力で抵抗したので軽症ですんだ。普通ならトラウマになりそうだが、奇跡的にトラウマはならなかった。っというよりは、戦っている間に記憶が飛んでてしまったのでトラウマが残らなかったというのが正しいかもしれない。子供の身体で強大な超能力を多用して負担がかかりすぎたせいだとカルテには残っている。
能力の高いミュータントより、そんなミュータントを遊び半分に殺そうとしたG細胞完全適応者の方の対処の方が優先となり、尾崎は解放されたのだった。
セキュリティ厳重で病原菌が入るのも困難な場所に音もなく入り込んだツムグの異常さは狂気の域だということらしい。
「今思うとツムグのおかげだったんだな…。」
結局は今逆戻りしているが、子供時代に出ることができたのはツムグのおかげだったのだと今更ながら思う。
あとで聞いた話だが、殺そうとしたのは単なるパフォーマンスであり、本気ではなかったらしい。なにせその後も遊びと称した突然のバトルを持ち込んできたり、覗きや盗聴の常習犯だったりして、もういちいち気にしてたらやってられないと周りの空気もありいつの間にか慣れてしまったのである。
そういえばツムグは、今どうしているだろうとも考えていると、実験室の窓を叩く音がした。
顔を上げて窓を見て、尾崎は目を見開いてすぐに立ち上がった。
「ミユキ!」
手足の先まで防護服で覆われているので人相が分かり辛いが一目で音無であることが分かった。
窓に手を添えると、その手に重ねるように音無が窓の外から手を添えてきた。
口が動いているが音は聞こえない。
尾崎は、胸をえぐられるような申し訳なさを感じて胸を抑えた。
「ごめん。心配かけて。」
彼女の泣きそうな顔に今すぐに彼女を抱きしめたいのを堪える。
自分の体の中にはまだあの使徒が潜んでいるかもしれない。使徒がもういないことがはっきりするまで外に出るのは不可能だろう。
もしかしたら一生…。その考えが過って尾崎は絶望した。
が、その時。
「それはない。それはないから。」
後ろからポンッと誰かに肩を叩かれた。
…昔、同じことがあったような…。
「で、デジャヴ?」
「空気ぶっ壊して悪いけど、手っ取り早く、ね?」
「どうやって入ってきたんだ!?」
慌ててツムグから距離を取る尾崎。窓の向こうにいる音無も驚愕している。シリアスの空気どこ行った?
「気にしない気にしない。」
ツムグは、笑う。
おかしい…、あの一件からセキュリティは強化されてツムグでも入り込めないようされていたはずだが…。
ツムグは、右手を前に出して、グッと拳を握った。すると拳から血が垂れた。
「今から証明するから観察よろしく。」
宙を見上げて、恐らくここの管理者達や研究者、そして事を観察していた上層部の人間達に向かって言った。
「しょうめい?」
「ようは使徒が残ってなければいいってことでしょ? 今から俺と握手して。こっちの血の付いた方で。」
「それで分かるのか?」
「なぜか知らないけど、使徒はG細胞に触ると火傷しちゃうんだよ。機龍フィアにとりついてた使徒もね、体を焼きながら耐えて耐えてたわけ。かなりしんどかったはずだよ。あれって微生物だからなんとかなってたんだろうけど。さすがに無理がたたってたと思うよ? でさ、もし尾崎の中に使徒が残ってたら俺の血を触ったら大ごとだ。残ってなかったらなんともない。簡単でしょ?」
「…うーん。」
「グダグダ考えても、ここから出られないよ?」
「いや…その…、ツムグの血って、死ぬんじゃなかったか?」
「あれは体内に入れた場合。注射しなけりゃ大丈夫! …な、はず。」
「不安になるだろ!」
「触っただけでダメなら、あの虫みたいな形した使徒の時に大変だったって!」
使徒マトリエル襲来時に、ツムグは、内臓から出血して吐血した。更にそのままゴジラと戦ったため操縦席は血塗れになった。いや、床が血の海なので開けた瞬間に…。
「あっ、そうか。」
「で、やる? やらない? ミユキちゃんと一生はなればな…。」
「やるに決まっているだろう!」
「良い返事。さっ、グッと。」
そうして、尾崎はツムグの血の付いた方の手を握った。
握って…、1分後。
『パターン青。確認できません。尾崎少尉の解放を承認します。』
っという、放送が聞こえ、部屋の鍵が開いた音がした。
「おめでとう、尾崎。晴れて自由の身だ…って、早っ。」
ツムグが言うが早いか、尾崎はすぐさま部屋から飛び出し、外にいた音無を抱きしめた。
ツムグは、その様子を見てから部屋から出ていき、二人を残して去っていった。
監視カメラで様子を見ていた側も外で待機していた側も赤面する甘い空気がたちこめていたが、このまま放っておくわけにいかないで、二人に話しかけ、実験室からの退出となった。
実験所の外で尾崎を出迎えたのは、M機関の仲間で、その中でジトッと見てくる風間がいたので心配をかけたことを話しかけようとしたら、まず拳が飛んできた。そのまま掴みかかられそうになったので仲間達が風間を抑えて、音無が間に入って、熊坂が落ち着けとチョップ入れたりしてなんやかんやあったが無事に戻ってこれたことを祝福されているのは嫌でも分かったので尾崎は涙した。
尾崎に泣かれて風間はプイッとそっぷを向いた。
それから、無事に戻ってこれたことを祝われて落ち着いてから言われた。
「戻る前にあの子らにも顔を見せとけ。」
「えっ?」
「シンジ君達の事よ。みんな心配してたんだから。」
「泣きつかれて面倒だったんだぞ。」
「すまない…。」
尾崎が大変だったことは、シンジ達にも伝わっていた。ただし詳細は明かされず、ただ二度と会えない可能性があることを遠回しに言われ情緒不安定になったシンジが泣き出してしまったのである。
本人は自覚なく尾崎を心の支えにしていたために不安定になり、泣き出してしまった彼を宥めようとした者達の声を聞いた途端、声を上げて泣くという事態にもなってしまい、尾崎の安否確認をしようと風間に縋ったり、相変わらず表情の乏しいレイが撫でたり抱きしめたりして慰めようとしたという。
食堂にいると聞いたので行ってみると、普段はM機関の者達が座る席にシンジとレイが並んで座っていた。その周りには二人を心配そうに見ている食堂の職員達がいた。
レイが尾崎の存在に気付いて振り向き、すぐにシンジの肩を叩いた。
シンジがゆっくりと泣き腫らした顔で後ろを向く。無表情だった顔がみるみる変わった。
「お、おざきさん…。」
「心配かけてごめん。もう大丈夫だから。」
尾崎は優しく笑って自分のもとへ駆けて来たシンジを抱留めてその頭を撫でた。
食堂にいたおばちゃん達もホッとした顔をしてその光景を見守っていた。
レイもどこか母性を感じさせる柔らかい眼差しでシンジと尾崎を見ていた。
食堂の入り口で背中を預けていた風間は、肩の荷が下りたというように長生きを吐いていた。しかしその表情はほんのりと明るい。
こうして恐怖の名を持つ使徒がもたらした恐怖は去った。
***
一方その頃。ネルフにて。
「基本は人間だけど、脳の発達に伴う身体能力の強化が見受けられるわね…。これがミュータント…。」
使徒マトリエル襲来直後位に風間から貰った(千切った)髪の毛から採集したデータである。
「ああ…、できればあの身体を直接触って計器にかけて、あれやこれ、あんなことやこんなこと、それからそれから…。」
リツコは、熱の篭った息を吐きながらそんなことを呟いた。その表情は実に色っぽい。
「あぁもう! 髪の毛だけで済ますんじゃなかったわ!」
ついにはそんなことまで言いだしてしまう始末である。
遠くにいる風間が肌をゾワッとさせていたとか?
「ああ! 辛抱たまらないわ!」
「あの……、先輩?」
「あら、マヤ、どうしたの?」
後輩のマヤがやってくるとキリッと切り替えるリツコであった。だがしかし、さっきの変な色っぽいが鼻息荒い醜態はバッチリ見られている。
「あの…調べ物をしろと司令が…。」
「なに? 見せて。」
よそよそしい彼女に無遠慮で書類とメモリカードを受け取り、パソコンにデータを映し出し、書類と照らし合わせる。
「……ミュータントの変異種“カイザー”の調査?」
「変ですよね? ……なんでこんな時に、ミュータントの調査なんて…。」
「……………これは、使えるわ。」
「えっ?」
「んん? なんでもないわよ。」
イヤイヤ、すっげ〜〜〜良い笑顔ですよ、赤木リツコさん?ってツッコミがどこからか聞こえてきそうなほど、リツコは笑顔だった。
「調査するにしても、肝心のカイザーは、M機関所属の尾崎シンイチ以外にいないわけだし……、地球防衛軍に依頼しても突っぱねられるのは目に見えてるわね。でも、それ以外のミュータントなら、この間の群体型使徒の調査を名目に身体を調べても……。」
「せんぱ〜い。ヨダレ。」
「あら、つい…。」
ジュルッとリツコは、普段の彼女からは想像も出来ない欲望のヨダレをハンカチで丁寧に拭いたのだった。
「そうと決まれば、突っぱねられる前提だけど、ダメ元でミュータントの身体調査をさせてもらうよう依頼してみましょうかしら。」
これで、風間が釣れればリツコ的には万々歳。
都合が良いことに、風間はM機関ミュータント専門組織の兵隊でもエースであるうえに、尾崎シンイチと同じ階級。聞くところによると前回の使徒(イロウル)との戦いの際に、前線での部隊を二手に分ける際にも、尾崎と分けられて文句を言ってミュータント兵達の教官に殴られたと聞いている。つまり風間はカイザーではないが、尾崎と並ぶだけの強い個体なのだ。まあ、カイザーである尾崎が予測データほどの力を出してないのは性格的な部分が大きいだろうが……。(戦闘狂であるかどうかの違い)
まあ、そんなこんなでリツコは、風間目当てでミュータントの身体調査の依頼をM機関に提出してみた。
「……………………断れないのか?」
依頼書を貰って目を通した風間の第一声がそれだったとか?
そして、心底イヤそうにしていたと、その場にいた同僚達と上官は後々語る。(たぶん、ミュータントとしての直感でリツコが絡んでいると感じたのかもしれない)
しかし、これで尾崎を調査対象として差し出すわけにはいかないということは、風間も十分承知しているため、自分や自分に次ぐM機関所属のミュータントが数名行くことになった。
そして。
「お久しぶりね。か・ざ・ま・くん。」(※語尾にハート)
「やっぱり俺が本命だったんじゃねーかよ…!」
「あら、予感しててくれたの? 嬉しいわね。」
「嬉しかねーよ!」
「イヤだった?」
「イヤに決まってるだろうが!」
「あん…、そんなに拒絶しなくても…、年上は嫌い?」
「いや、嫌いじゃ…、って何言わせやがる!」
「連絡先教えてくれたら加減してあげるわよ?」
「……。」
リツコに宛がわれている、ネルフの独立研究室(※ネルフ職員曰く、『赤木リツコ博士の秘密の研究室』)に順番最後(※わざとだ)で入った風間は、悪い予感的中よって、壁にガンガンと額をぶつけてやり場の無い怒りやらなんやらなのか分からない感情に苦しむことになるのであった。ネルフのマッドサイエンティストとはいえ、手を上げないところは彼なりの紳士さと言えるかもしれない。(それでも風間は、女子供関係なく敵なら殴るタイプなのだが)
その後、風間がどんな目に遭ったかは、調査対象として来ていた同僚達は知らないし、知ることも出来なかったが……、とりあえず研究室から出てきたとき、ゲッソリ、ぐったりするぐらいの目に遭ったのは間違いないだろうというのはすぐに分かったのだが、問題の風間自身がナニをされたのか語ってくれないため、謎のままである。
To be continued...
(2020.09.05 初版)
作者(蜜柑ブタ様)へのご意見、ご感想は、または
まで