ストレーガ Scarlet Strega

第二回 The Beginning

presented by ぶるー・べる様


(1)


 シンジは時間を確認しシャワーを使っておくことにした。まだ左手に力が入らないので不便だが、清拭だけではさすがに臭う気がしたのだ。最初は見舞目的だったアスカの来室は、レイが退院しシンジがエヴァンゲリオンに搭乗をする決心をしてからは、シンジの教育とチルドレンの会議を兼ねた集まりになっている。エヴァに乗った時の恐怖を思えば、いくら同年齢のレイやアスカが戦うとはいえ、チルドレンを引き受けたのは自分でも意外だった。使徒戦でのレイの様子を見たことや、アスカにいてくれるだけでも心強いと言われたのがきっかけなんだけど、ちょっと単純かなあ。

 シンジが着替えを終え30分ほどで2人がやってきた。今日はアスカも中学に登校したので2人とも中学の制服だ。対外的なトラブルを避けたいネルフの意向でアスカは中学生となった。もっとも大学を卒業したアスカは日本語と日本史関連以外受講する気はないで押し通し、週2日ほどしか登校していない。

「レイ、アスカ、いらっしゃい。」
「シンジ、退院できるんだって?」
アスカは、いつものように珈琲を淹れながら聞いた。レイは無言のまま手際よくテーブルの用意をしている。
「うん、2−3日中にね。ネルフ内の宿舎なら良いってさ。部屋、探してくれた?」
「3人で同じ区画を頼んだので既婚者エリアになったの、広いので助かるわ。」
「同じ区画? 既婚者?」
「独身者エリアは、男女の区画が離れてるからね。」
「レイもアスカも地上に部屋借りてるんでしょう?」
「しばらくの間、訓練以外にも弐号機の調整したりするから、本部泊り込み予定、私は。レイも零号機の調整で忙しいはずよ。帰って寝るだけなら本部に宿舎あったほうが楽よ。レイ用意できた?」
「ええ、アスカ。」

 公式日程ではチルドレン会議になっているこの集まりは、堅苦しいものではない。シンジはこの時間を楽しみにしている。なんといってもレイもアスカも、学校で全員の注目を集める美少女なのだ。親しく話すだけでも、とりあえず嬉しい。今日は特に議題はないらしく、学校の様子から話は始まった。レイとアスカが交互に話し、シンジの質問に答えていく。これは、お互いを知るためと場合によっては一種の集団心理療法を兼ねている。シンジも前回の使徒戦の話をすでに何度かしている。極秘事項のためスーパーバイザーは呼ばず、大学で必要な訓練を受けたアスカがその役を兼ねた。最後の時シンジは、かなり冷静にすべてを振り返ることができた。それにしても2人の話は面白い。

「それで、盗撮していた生徒をどうしたの? アスカ。」
シンジは、学校で女生徒を盗撮していた男子がいたのに少し驚きながら訊ねた。
「ふん。お縄にして指導部へ引き渡したわ。」
「え〜、大丈夫かなあ、その子。」
「望遠レンズも持参してたし、写真を販売していた形跡もあった。同情の余地なしよ。」
「今まで見つからなかったの?」
「さあ、写真を買ってた男子は知ってたと思うけど……」
「知ってたわ。問題ないと思ってた。」
「レイ……」
「あら、シンジ。指導部にはごく一部しか渡さなかったから、レイの写真ならいっぱいあるわよ。水着姿とか水着姿とか水着姿のやつが…… 欲しい?」
「え、えぇ〜! なに言うのさ。」
「レイ、良い?」
「問題ないわ。」
「じゃあ、5000円で。」
「え、えぇ〜!」
「安いわ。」
 

 2日後、シンジは退院した。シンジの部屋にはレイ、アスカとミサトが手伝いに来ている。
「あら、シンジ君。美少女2人と美女1人を退院と引越しの手伝いに集合させるなんて、やるわね。」
「手伝ってくれているのは、美少女2人だけのようですけど、ミサトさん。」
「ええ! 心外だわ。何をすればいいのかしら?」
「そこ、どいてください、葛城一尉。」
「あ、ああ、ごめんなさい、レイ。」
シンジたちの部屋は尉官の既婚者用のため狭いながらも間取りは2LDKだ。佐官・将官用にも空きはあったがアスカが間取りと周りの環境を調べて決めた。
「シンジ、衣料の箱は寝室にそれ以外はもう一つの部屋に入れておいたわ。」
レイの包帯もまだ残っているので、力仕事はアスカが率先してやっている。
「ありがとう、アスカ。」
「シンジ、パネルはどこに掛ける?」
レイが梱包を開けながら訊ねる。
「パネル?」
本の箱を調べながら、シンジが聞き返した。
「私とアスカからの引越しの記念品。」
「え? 何々? それなに?」
後ろでアスカがいやに済ました顔をしているのを見て、それまで退屈していたミサトが急に興味を示した。
「私たちの写真をパネルにしたものです。」
「見せて、レイ。」
「はい」
パネルは三枚あるようだ。1枚目は第壱中学の制服姿の2人の全身像だった。レイと違いいつも着替えて本部に来るアスカの制服姿をミサトは初めて見た。
「あら、アスカ。日本の学校の制服、似あうじゃない。」
「当然! というか、制服も似合うと言って欲しいわ。」
腰に手を当てて自慢げなアスカは、いつもと違い子供っぽい。しかし次のパネルを見てミサトは噴出してしまった。同じポーズのプラグスーツのアスカだった。
「もう、このポーズだったのね。シンジ君、これは寝室ね!」
ミサトの盛り上がりをシンジは不思議に思い近くによってきた。
「なな、アスカぁ〜」
「ほらほら、シンジ君。アスカの美しいボディラインがさあ。」
「ミサトさん、からかわないでよ。」
極薄の素材で出来ているプラグスーツ姿のアスカの写真は、目のやり場に困る。
「シンジ、写真くらいで、おたおたしていては困るわ。打ち合わせはプラグスーツですることも多いんだから慣れておいて。」
アスカの口調は冗談ばかりでもなさそうだ。
「あ、うん。」
ちっ、もっと盛り上がらないとつまらないじゃない。ミサトはちょっと拍子抜けして次のパネルを……。
「お、おお〜〜!」
ミサトの嬉しそうな声。
「レイ、ちょっと。」
シンジの困った声。
「どうしたの? 怪我で最近プラグスーツ着てないので、写真がなかったから……」
レイは2人の反応に困惑気味だ。レイのパネルは学校での盗撮からアスカが選んだ水着姿だった。

 お昼に近くなり引越しの片付けは、ほとんど終わっていたので、シンジはそのままミサトの相手をすることになってしまった。アスカは笑いながらレイを呼び、食堂に頼んであった蕎麦を運んできて欲しいと頼み、自分は自室のキッチンへ行った。
 レイが蕎麦を持ってきたのとほぼ同時に、アスカもお茶や自分で揚げた天麩羅、フルーツそれにミサト用のビールをワゴンに乗せシンジの部屋に戻ってきた。
「ミサトさん、ドイツで気にいってたビールよ!」
「うほっ、ダンケ、アスカ!」
「勤務中でしょう? 私たちは今日は休暇扱いだけど……。作戦部に連絡してから飲んで下さいね。」
「わかったわよ。」
ミサトは内線でかなり強引に日向に仕事を押し付けるとアスカにビールを注いでもらい……。
「ぷはっー! 美味い! これ、好きなんだよね。それにしてもアスカ、蕎麦まで頼んであったの?」
「当然、完璧でしょう。」
「アスカ、どうしてお蕎麦なの?」
「ああ、レイ。『おそばに参りました』の洒落なの。」
「よく知ってるのね?」
「日本語が話せるといっても、私はクォーターだし、初めての来日だからさ、日本関連の情報を詰め込んできたのよ。」
「そう」


 昼食兼用の引越し蕎麦を食べた後、驚くほどの量のビールを飲んだミサトをアスカは仮眠室に連れて行き、シンジはレイと2人で荷物の整理を続けた。まだ元どおりに動かないとはいえ両腕が使えるシンジに対しレイの右腕の包帯はまだ残っている。改めてそれに気付いたシンジは、思い切って話しかけた。
「ねえ、レイ。あと少しだし、手、不自由そうだから、なんだったら後は一人でするよ。」
「いい、手伝う。あとは小物ばかりだから片手で出来るし、15:00に赤木博士のところに出頭するまで今日は予定がないの。」
これをきっかけに、作業をしながら、ゆっくりとだが2人の会話が始まった。本当にのんびりしたやり取りでたいした内容ではなかったのだが、シンジはレイに感じていた垣根が少し取り払われたと思った。今までたくさん会話をしてきたつもりだったが、いつもアスカが側にいた。もちろんシンジはアスカと2人で話したことも少ない。レイは先に退院したのでアスカとは、よく話をしたらしい。もっともシンジがアスカに話しかけても遅れているパイロットカリキュラムの話になりそうだ。使徒との戦いが始まった今、アスカやレイが経験した訓練を行う暇はないためアスカの依頼でリツコが中心になり計画した簡略型のものだ。簡略型といってもシンジがチルドレンを引き受けたことを後悔しそうな密度なのだが。


(2)


 来日してから足場固めで忙しかった加持リョウジだが、どうにか本格的活動を開始できるところまで来た。
 やっと、これで一段落か、正式に特殊監察部所属になったので、かなり時間に自由が利くのがありがたい。ドイツには結局たいした秘密はなかった。まあ量産機建造計画とか極秘事項がないわけではないが、ゼーレの単なる下請けなんだろう。結局使徒戦の現場、ネルフ本部で探るしかない。とりあえずゼーレのたくらんでる計画と、彼らが探ろうとしている碇司令の計画を探らないといけない。やれやれ、ちょと面倒だな。いまさら自分の命を惜しむ気はないが、真実をつかむ前に死ぬのは願い下げだ。秘密を知ってそうなのは司令と副司令か…… 聞いても教えちゃくれまい。うーん、次は赤城とMAGIか、これも身持ちは堅そうだ。葛城は何も知らないだろうなあ。さてそうすると、本部の最下層への侵入が手っ取り早い。チャンスがあれば実行できるように準備を進めよう。それと赤木の部下の……マヤちゃんを徹底マークしよう。かなり秘密に近いところにいるはずだ。直接本人は知らなくても重要情報を扱っている可能性が大きい。彼女の端末の情報採取と本部内での諜報活動は俺自身でやらないといけないが、外は業者でも良さそうだ。
 他に一人、秘密に近づいている奴がいる。アスカだ。俺とは違い、危ないお仕事はしていないようだが、明らかに普通以上のことを知っている。ガードが固いから大変だが少し探っておこう。できれば危険なところには居て欲しくない。といっても、エバのパイロットの方が危険といわれれば言い返せないがね。まあ日本での知り合いは俺と葛城くらいだ。ドイツに居た時よりはアプローチしやすい。アスカは今いずこに? 俺の権限でも監視システムのMAGIでの検索が可能なはずだ。まあ足跡は残るが、かまわないだろう。

 リョウジはアスカが自室へ向かっているのを確認すると途中の通路で待つことにした。可動式の監視カメラ1台でしかカバーしていない場所を選ぶ。
「よぉー、アスカ!」
「あら、加持さん。待ち伏せ?」
「人聞きの悪い、偶然さ。俺の執務室は、この近くなんだ。この自販機が近いのでね。」
「へぇー」
「何か飲むかい。おごるぜ。」
「無糖の紅茶、冷たいのがいいわ。」
「了解、お任せを。」
「ありがとう加持さん。それで?」
「おやおや、懐かしくて声をかけた旧知に冷たくないか?」
「まあ、いいけど。それで?」
「どうだい、チルドレン諸君は?」
「シンジも退院したし、レイの包帯ももうすぐ取れるから、来週後半から3人での戦闘訓練を始めるわ。」
「おいおい、零号機の再起動実験はまだだろう?」
「格闘技の訓練よ。」
「なるほど。しかしアスカ、それ以上強くなると嫁の貰い手がなくなるぞ。」
「集団戦の練習よ。それに嫁って……。」
「それで他の2人は、どんな感じ?」
「さあ、一応極秘事項だから……」
「うーん、世間話程度のつもりなんだけどな。」
「直接会えば? ミサトさんの側に居ればきっと会えるよ。」
「わかった、そうするよ。」
 予想以上にアスカのガードは固いなあ。エヴァ部隊の隊長も真剣に続けるつもりのようだ。とにかくアスカを子ども扱いするのは止めないといけない。俺はつい子供扱いしてしまうので、よけいアスカの反発を買う。


(3)


 シンジは途方にくれてしまった。アスカは訓練、レイが定期検査に行っている間にミサトが訪ねてきた。これは最近珍しくはない。作戦部とエヴァ部隊の親睦と称して、チルドレン部屋と化したシンジの小さなリビングダイニングに毎日のように来るのだ。今日はアスカの知り合いの加持リョウジと言う妙になれなれしい男性と来たのだが、そのためか特効薬のビールを出してもミサトの機嫌が悪いのだ。
「どうだいネルフは、? えーっと、碇シンジ君。」
「加持さん、シンジでよいですよ。碇だと父さんと紛らわしいから、言い難いでしょう。」
「いやぁー、そりゃ助かるなあ。その通りだよ。それで、どうだいサードチルドレンとしての仕事は?」
「さあ、一度乗ったきりで後は入院生活ですから、なんともいえません。」
シンジはリョウジをどこまで信用してよいか判らないので、確答を避けることにした。
「加持ぃ、あんた妙なところに首を突っ込んでないで自分の仕事をしなさいよ。」
「作戦部ほどじゃないけど、俺だってチルドレンを知っておく必要はあるさ。」
「ふん、屁理屈こねないでさあ。あ、シンちゃーん、もう一つお願いね。」
「あ、はい。何かつまみ作りましょうか?」
「ありがとん。」
「ほぉー、それが作戦部の仕事か?」
「うるさい! あんたが居るから、仕事にならないの!」
「やれやれ、俺のせいかよ。シンジ君悪い、俺もビールもらえるかな。」
「はーい、つまみと一緒に持っていきます。」
「ああ」
シンジはリョウジにビールとグラスを渡し、手早く作ったつまみをテーブルに載せた。
「いやぁ、シンジ君。枝豆はともかく、ほかも美味そうだな。」
「これは、アスカに教わったんです。海老のビール蒸しとマグロの一口ステーキです。ミサトさん機嫌直して、ちゃんと2人分作りましたから。」
「別に不機嫌じゃないわよ。それにしても、アスカは遅いわね。もう訓練終わってるでしょう?」
「来週から僕たち3人で始める訓練の練習相手をしてくれる保安部の人と打ち合わせをしてるはずです。」
「おお! シンジ君。これは美味い。あとで作り方教えてくれ。」
「ぶぁーか。ねえシンジ君、要らぬお世話かもしれないけど。アスカさあ、がんばりすぎじゃないの? 作戦部で手伝うわよ。」
「ありがとうございます、ミサトさん。でも、格闘技の訓練といってもエヴァパイロットじゃないとわからない感覚的なものが多いそうです。ミサトさんには作戦でお世話になると思いますよ。」
「技あり一本、シンジ君!」
「うっさーい!」

 帰ってきたレイとアスカは、テーブルのビール缶のピラミッドを見て呆れている。
「お帰りなさい、レイ、アスカ。」
「ただいま。」
「シンジ、今日はチルドレン会議は無理そうね。」
シンジとレイに、アスカから《リョウジに注意》のサインが出る。やっぱりか、シンジは慎重な自分の態度が正しかったのでちょっと誇らしく思った。
「よぉー、アスカ、おつかれさまー。わるいな、おじゃましてるよ。」
「加持さん、食事一緒にどうですか?」
アスカはシンジ単独のところを狙われるよりはと、リョウジを誘うことに決めた。
「そりゃ助かる。最近ネルフの食堂ばかりで厭きてたんだ。まあ、不味いわけじゃないんだがな。」
「ちょっとアスカ! こんな奴より、私は?」
「かまいませんけど、こう毎日では、ミサトさん後で困りませんか?」
「ん? アスカ、どういうことだ?」
先に、リョウジが訊ねた。
「作戦部には、意図を文書でも提出しました。私たちが隣り合わせの部屋で生活して調理も食事も一緒にしているのは、1人の食事より楽しいし、合理的でもあるからですけど、お互いを知るという目的もあるんです。一種の合宿ですね。ですから食材は食堂出入りの業者から、うちの部隊の経費で分けてもらっているし、今日の加持さんの場合などは他部署の方との親善や情報交換が名目になります。ミサトさんは、ここのところ毎日なので……」
「なるほど。葛城、今日は諦めろ。」
「しょんなぁ〜。加持ぃ、何とかならないの?」
「アスカ、俺に免じて今日だけでも……。」
「じゃあ、加持さんの同伴者ってことでなら良いと思いますが?」
「背に腹はかえられぬか…… 我慢する!」
「おいおい、葛城。そりゃないだろう。」

 あきれた視線をものともせずビールを飲み始めたミサトを残し4人は食事の準備を始めた。狭いキッチンでリョウジはじゃまなのだが、おつまみレシピをシンジに聞きたいと引き下がる様子はない。とりあえず男性軍には携帯端末のレシピデータの転送をしているようにアスカは指示し、鶏肉のから揚げと工夫した豆腐料理を幾つか作り、レイにサラダとデザートの準備を任せた。
「さて準備終了。男性諸君、火、あいたわよ。」
「ありがとうアスカ。加持さん、作りましょう。」
「どれどれ、やってみようか。」

 料理を作る楽しそうなシンジとリョウジの声を聞くと、ミサトは面白くない。ビールと料理にも引かれたが、チルドレン特にシンジと親しくなるのがミサトの計画だったのだ。レイが苦手で、アスカのほうが階級が上のための苦肉の策なのだが……。ちっ、使徒戦本番で傍観者は耐えられない。
「おまたせぇ〜。さあ、シンジ大先生の指導で俺が作ったんだ。試食したら感想を頼むぜ。」

 大人2人の思わくはともかく。食事は楽しく始まった。ご飯を食べているのがシンジだけなのにリョウジが気付く。
「おやおや、アスカたちはパスタか、和食派はシンジ君だけかい?」
「レイはお肉きらいだから、お米よりたんぱく質の多い小麦をすすめているの。私はまだ炊いたご飯のにおいに慣れなくて……」
「ああ、ご飯のにおいは、きついかもな。」
「リゾットやパエリアはいいんだけど。」
「アスカは、時々ご飯も食べるてるわ。」
レイがはっきり発言したので、ミサトは少し驚いた。
「へぇー、そうなんだ。それにしても、つまみも美味しいわね。」
「おほめに……」
「加持じゃないわよ。単純なメニューなんでしょう。シンちゃん、地上での住居だけど私のところに来ない? アスカと同じマンションだよん。」
「え? 僕はここで充分ですけど。」
シンジ以外の3人にはミサトの狙いが見えた。
「だってさあ、訓練が一段落したら、シンちゃ〜んを地下に閉じ込めておくのは問題よぉ〜ん。ねぇ〜、アスカ?」
「残念ながら、独身のミサトさんの所にシンジを預けるのは許可できません。」
「なんでよ! 私がシンジ君を襲うとでも言うの!」
「戦闘能力からみれば心配ですけど、それはないでしょう。そんなことで言っているのではありません。狭いアパートでミサトさんが平均的日本の男子中学生に与える影響を考えれば当然の帰結です。」
「どういうことよ!」
「シンジが希望しても、ミサトさんが例えば加持さんと同居してくれなければ許可できません。」
「なぜ?」
「綺麗なお姉さんは、思春期の男性の精神を不安定にするんですよ。どうしてもと言うなら、リツコさんの賛同を得てください。」
「あぁ〜ら、やっぱりそうなの!」
ミサトは嬉しそう。やれやれという、リョウジのため息が子供達には聞こえた。



To be continued...


作者(ぶるー・べる様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで