ストレーガ Scarlet Strega

第八回 The Segmentation

presented by ぶるー・べる様


(1) 


 アスカの不良統一は結局1ヶ月ほどで完了した。ある程度配下ができてからは、アスカの指揮官としての能力が遺憾なく発揮された結果だ。もちろん普通の戦いとは違う特殊事情は、元助番スケバンの村雨二尉から詳細な説明を受けた。例えば伝説を作っておくとやりやすい。アスカの1対5で勝った戦いと、シンジ、レイとのトリオで10人以上の敵を倒した2度の戦い。この3回の戦いで誕生した不敗伝説は統一を早めた重要な要因と思われる。いずれの戦いも勝負自体に偽りは無かったが、アスカと村雨二尉の周到な準備がされており、シンジも恐怖を覚えることはなかった。敵の埋伏部隊や増援部隊は所属不明の戦力によりどこかへ消えた。

 登校中は、いつものようにレイとシンジは並んで歩く、アスカは少し……いや、かなり前方を歩いている。ミチコがすぐ後ろについてくるためだ。声は聞こえてこないが2人の会話をシンジは簡単に想像できた。

『アスカ様ぁ〜。』
『わかったから、少し離れなさいよ。』
『はい。』
『はいって言って、腕に抱きつくじゃないわよ!』
『はい。』
『ぐがっ。』
『どうされました?』
『首絞めてどうするの。』
『腕がだめとおっしゃるからぁ〜。脚にしましょうか?』
『あんた、ばかぁー! 転倒するじゃない! 一人が、好いぃ〜〜〜〜〜〜!』

「どうしたの?」
「え?」
どうも1人でニヤニヤしていたらしい。
「ああ。アスカ、大変そうだね。」
「ええ。でも楽しそう。」
「え〜? そうかなあ。」
「アスカと私は、対照的なところもあるけど似てるの。」
「相違点があるのは、確かだね。」
「私はエヴァのテストパイロットとして、10年前からほとんど人工進化研究所そしてネルフの内部ですごしたわ。現行のエントリープラグが完成した昨年から、中学に通学して初めて外の世界に出たようなもの。」
「じゃあ、前はもっと忙しかったの?」
「初期の頃は私がいないとできない実験が、ほとんどだったの。」
「……。」
「アスカは実戦に向けての訓練などを中心とした生活をしていた。教育などは外でうけたけど、飛び級でクラスメートは、はるかに年上ばかり。それに訓練に時間を割かれて、結局私と変らなかったと思う。」
「というと。」
「友人は居なかったでしょう。」
シンジは、普通に暮らしてきた自分に友人がいなかったことを少し恥ずかしく思った。
「で、でも、今は僕や綾波が居るじゃないか。」
「そうね。」
「ちがうの?」
「私たちの指導者、上司として振舞おうと努力しているように見える。」
「…… ああ。でもクラスメートは? 洞木さんや鈴原は?」
「ヒカリは友だち、アスカの一番の友達と思うわ。でもヒカリには他にもたくさんの友達が居る。」
「そうか。」
「わかるの?」
「そのー、独占したいっていうか、自分だけをっていうか、たぶん今まで付き合いに慣れてないからだよね。」
「そうかもしれない。それに出会い方は良くなかったけど、アスカはミチコさんを守ってあげられることが嬉しいんだと思う。大人の中にずっと居たから、そんな立場は初めてでしょう?」
「ふーん。アスカ、男子はどうなのかな。でも女子はみんな男子を子供っぽいって言ってるから、アスカから見たら、も〜っとガキなんだろうなあ。」
「そうね。  でも、碇君なら……。」
「え?」
「碇君は?」
「アスカのこと? 好きだし尊敬してるよ。少し恐いけどね。でもアスカだけを一番に見て無いから、さっきの条件外だよ。」
「一番?」
「目の前に…… 一番。」
「……。」

 話に夢中だった2人は、立ち止まって待っていたアスカとミチコにぶつかりそうになった。
「なにかいい雰囲気ね。お二人さん。」
「な、何言ってんの、アスカ。」
「……ぇ。」
「アスカ様ぁ。私たちも負けずに!」
「うぎゃ! だから、抱きつかないの! 暑っ苦しい。」


(2)


 東ミチコの扱いに苦労しながらも、アスカは訓練と使徒戦の準備を進めていった。ミチコの行動にアスカ自身は不満そうだが、レイの説明を聞いたシンジの目から見ると楽しんでいる風でもあった。

 エヴァ部隊の主な変更点は、航空戦力が加わったこと、その無人機と兵装ビルのコントロールがバルダザールを介してエヴァから可能になったこと、レンとハルナそれにレンの部下のバルタザール担当官がエヴァ部隊所属になったことである。レンとレンの部下の所属が変っても平時の彼らの仕事内容が変るわけではない。MAGI自体はリツコの監督下であり、各員もその指示で普段の任務を行っている。戦闘時エヴァ部隊だけで動ける体制をアスカが望んだ結果だ。出撃までと作戦自体の決定権が司令にあることを改めて強調して碇司令は許可した。

 エヴァ部隊が新体制になり再調整のために訓練が増えている。若干登校日数が減るのは気になるが、シンジは苦もなく訓練をこなしていた。(僕も進歩したってことかな。体力がついたこともあるが、これまで苦手だった格闘技やエヴァのシミュレーション訓練が楽々こなせるようになった。ひょっとして不良との喧嘩が役に立ったのかなあ。)
 今日は午前中の格闘訓練と訓練後のインストラクターの指導を終えたあと、3人で町へ食事に行く予定でいる。MAGIの定期検査のため午後のエヴァシミュレーションが無いためだ。着替えの早いシンジがロビーで待っているとレイとアスカがやってきた。2人とも学校の制服を着ている。特に必要が無い限りレイはいつも制服だし、レイと出かけるとわかっているときはアスカも制服だ。
「お待たせ!」
「私が遅れたの。」
「うん、平気だよ。行こうか。えーと、バスかな?」
緊急時以外は護衛隊の車や輸送ヘリは使用しないので移動手段は限られている。もっともゲートを選べば徒歩でもさほど時間はかからない。
「それとも遠回りだけど地下都市までリニアでいく?」
「んー。天気はどうなの?」
「午前中は快晴、南の風風力1、午後の降水確率は0%。」
「ひぇっ、すごぉ。天気いいなら歩いて行こうか。」
「うん。」
「わかった。」
別にレイは天気予報が趣味では無い。楽しみにしていたので調べたのだ。その様子を見て取ったシンジは何か嬉しかった。


 地上に出て予約したレストランに向かうが、いつも多弁なアスカは一度電話した後は沈黙している。店へ行く途中で東ミチコが現れたからだ。まさに神出鬼没、シンジとレイも驚いた。

「アスカ様ぁ、どうされました? でも、私の席まで追加予約していただいて、本当にありがとうございます。本当にいいお天気で、気持ちよいですね。
 あのぉー。ねえ、碇さん、綾波さん、アスカ様はだいじょうぶなんですか? お元気、なさそうなんですけど。」
レイと顔を見合わせたあと、シンジが話す。
「東さんこそ、学校は休みみたいだけど、どうしてここがわかったの?」
「あのー。」
ミチコはシンジとレイを押し留めて話し始めた。アスカは、そのままとぼとぼと歩いている。
「レストランの予約からです。私は、そのぉ、いわゆるハッカーという……もので、本名は明かしてませんが、その世界では有名なんですよ。でも今回は偶然です。惣流さんをスパイしてたわけじゃないんです。
 惣流さんには迷惑でしょうけど、私、友だちがいなかったし、今まで。付き合いといっても、いじめられるくらいで。それで嬉しくって。でも、じゃまなんでしょうね。」
シンジには、答えられなかった。
「そんなことない。アスカはどうしていいか戸惑っているんだと思う。」
「そうなの? 綾波さん。どうすれば?」
「アスカも同年齢の友達は少ないの。抱きつかれるのに困惑したのかも。どんなこと話しているの?」
「助けてもらったお礼を何度も。他になにを話せば。」
「アスカもコンピューター好きだから、わからないところとか聞いてみれば?」
「やってみます。」

 ミチコは嬉しそうにアスカに駆け寄って行った。
「いいの? アスカは極秘事項の塊だよ。東さんがスパイとは思わないけど。」
「守秘に関しては、私たちの中で一番心得ているから問題ないと思う。」
「綾波の言う通りかも。仲良くなるといいね。」

 食事は和やかに進んだのでシンジたちは安心した。4人で学校の話題を話したし、ミチコがおずおずする質問にアスカは機嫌よく答えていた。食事の終わる頃には、アスカがミチコを避けるような仕草をすることはなくなっていた。


(3)


 シンジたちの平和な学園生活に水を差す存在は、第5使徒の片づけが終わる前に襲来した。

『to エヴァパイロット:非常招集。
 紀伊半島沖海中にに使徒と思われる未確認敵性体が確認された。本部は既に第一級戦闘配置になった。
 パイロットは各自、標準手順で本部に集合せよ。
ネルフ司令代理  副司令 冬月コウゾウ 』


 幸い、アスカとレイはネルフ内であり、地上にいたシンジも護衛隊の車で送ってもらい作戦会議に間に合った。

 会議開始までにシンジは、各部門の提案に目を通した。作戦部は使徒上陸直後を叩く水際作戦をとなえた。技術部は新開発のポジトロンライフルの使用を提言している。この銃の電力消費が大きいため、兵装ビルの稼働率は低いが電源がつかえる第三新東京市か、最終防衛線が推奨されている。アスカは基本的には偵察後の強襲といつもどおりだ。中心は直上での迎撃戦だが、それ以外にも作戦案をいくか出している。連日レンが作戦立案のために、がんばっていたのをシンジとレイも見ている。会議では作戦部の出す案が、中心に検討される。技術部やエヴァ部隊の立てる作戦は、議論のたたき台あるいは資料に過ぎない。そして最終決定は、今回司令が不在なので冬月副司令が下す。

 会議は、作戦実行場所の検討でいきなりもめた。作戦部の提案の根拠が兵装ビルの稼働率の低さであることに、リツコが疑問を呈したのだ。
「第3使徒のとき、私たちに選択の余地はありませんでした。第4使徒戦では、この地での作戦を選択しました。」
「リツコ!」
ミサトは友人の反撃が意外らしい。
「ええ。もちろんその時の兵装ビルの稼働率の数字は今より良かった。第5使徒は、記憶にまだ新しいですけど、空中移動速度が思ったより早く、直上まで到着された後の戦闘でした。その被害から地上はまだ立ち直っていない状況です。」
「なによ、一つおきに繰り返すって言いたいの?」
「最後まで聞きなさいよ。付け加えておくと作戦部は兵装ビルの復旧率26%という数字で実戦での稼働率は無と判断しているけど、ランダムに修理してるわけじゃないわ。確かに火力は落ちるけど、工夫して修理順を決めてるから使徒を誘導してくれれば十分な砲火を集められる。」
「ふむ。赤木博士、要旨はわかった。もうあまり時間がない。惣流君は何か?」
「阿賀野三尉作成の意見書に考えは載せました。今回、水際作戦を取るなら、偵察後チャンスがあれば攻撃ですね? では、その場では、倒せそうに無い場合は、どうするのですか? あるいは、その場では、エヴァ部隊が負けた場合は? 往きはリニアじゃなく輸送機をつかえるから早いですけど、帰りはリニアしか無いと思います。使徒をどうやって止めるのですか?」
冬月がコメントする前に、ミサトは返答していた。
「あぁのぉねぇ! 水際で勝つのよ! アスカらしくも無い。3機のエヴァを擁して、戦う前に敗北宣言ってわけ。 どうなの!?」
さすがに冬月もリツコも鼻白んだ。普段は似たもの同士で仲の良いミサトとアスカは、最近使徒相手だと敵同士のようになる。
「副司令。残念ながら、作戦部長殿は冷静とは言い難いと思います。善処をお願いします。」
「な!」
アスカの他人行儀なセリフにミサトは、切れそうになった。
「待ちたまえ。葛城君、作戦部とエヴァ部隊の指摘に答えてから、有効と思われる作戦を提案しなさい。無理なら、日向二尉に引き継げ。」
ミサトは、しばらく周りを見回してから返事をした。
「水際にて、零号機と初号機による偵察と攻撃を提案します。撤退して直上に引き込む場合は、まずN2兵器、だめなら本部に待機させる弐号機で使徒を足止めして態勢を立て直します。」
一見良い案だけど、リツコは判断に迷っている副司令を見ながら考える、使徒に各個撃破される可能性を上げるだけかも。しかし、作戦部の最終案を今から完全にひっくり返す時間は無い。妥協案でアスカが満足できるかしら。
「副司令。」
「なんだね、赤木博士。」
「エヴァの当地への撤退方法の件です。海岸近くの戦闘でもリニア施設自体に損害出る可能性は大きいと言わざるを得ません。エヴァ1機だけなら、損傷時の輸送用ハーネスをつけて大型VTOLを全て使えば運べます。使徒を大きく避けて飛ぶことを考えると、ピストン輸送でも2機は不可能ですが。」
「わかった。作戦部の水際作戦の場合、弐号機1機にて実行する。使徒の反応によっては偵察から殲滅作戦へ移行させる。零号機、初号機は本部待機だ。水際で倒せない場合、弐号機が無事なら帰還を待ってポジトロンライフルを用いた赤木博士の作戦を考慮せよ。いいかな、葛城一尉。」
「単機での出陣は初号機にして、指揮官アスカの弐号機は本部待機がよいと思いますが。」
「んー、偵察は弐号機がよいように思うが。惣流君は、どう思うかね?」
「シンジが怪我でもしたら、零号機は使い物になりません。」


(4)


 会議は予定時間ぎりぎりまでかかったので、その後の準備はあわただしいものになった。アスカは、弐号機と自分が帰る場合、自分だけが帰る場合、戻れない場合の大雑把な指示を出して、レンとハルナに後を任せることにした。
 そして残りの時間を移動指揮車に乗るオペレーターの担当者との打ち合わせに使った。日向とマヤに協力する青葉の代わりは、レンの次席の由良カエデ三尉になった。能力に問題は無いがカエデは経験不足と緊張で上ずっている。それでもアスカはエヴァ1機しか運用しない指揮車にレンを置く気はなかった。
「アスカちゃん?」
「大丈夫です。カエデさん。MAGIと切り離して運用するのは安全のためで、連絡はちゃんと取れるし、バックアップもしてくれます。それに指揮者にはマヤさんも日向さんもいるんですよ。」
今まで使徒はジャミングをかけていないが、次も無いとは限らない。作戦中のラグは命取りになる。
「そうよね。あはは。」
いつも元気に撥ねている毛先のカールも元気なく少し伸び気味だ。
「とりあえず、もっていく回転翼機のコントロールをお願いします。」
「まかせて、ヘリくらいなら楽勝よ。」
「それなら大丈夫。私も、大きな声ではいえないけどミサトさんも、結局使徒が来てから行き当たりばったりに戦うのが今回の作戦なんだから。」
「そ、そうよね。あわてず落ち着いて指示通りすればいいにね。」
「そうそう。指揮車の位置が上陸予測地点に近いのが心配だから、使徒が近かったらヘリで少しでも気をそらせてね。」
「え? 弐号機は?」
「指揮車よりは堅いから大丈夫よ。」
「わかった。」
これで、万一使徒が指揮車向かっても、仕事があるからカエデのパニックは避けられるだろう。

「アスカ、さすがにもう搭乗してよ。」
「はい。ミサトさん。」
「それにしても、ソニック・グレイブはとも角、あの竹やり爆弾はなに? 負けたらUNに頼めばいいじゃない。」
「共同作戦は、取らないんでしょう?」
「そりゃね。だいたい負けた後の弐号機は処理できる状態にあるって限らないじゃない。」
「的確に、判断します。」
「まあ、期待しているわ。」
ミサトの言う竹やり爆弾は、長柄の先にN2爆弾をつけただけの簡単な構造なのだが、アスカはATFを使って周辺への被害を減らせないかと期待している。


 ほとんど全てを空輸したため、時間的に余裕がある展開ができた。ミサトはモニタで全てを確認して満足している。ミサトはエヴァ搭乗者としてのアスカの気持ちは判っているつもりだ。でも、どうしろと言うのだ。子供に戦わせるのは可哀想だけど、エヴァに大人が乗れればさせるつもりは無い。アスカが立てるシンジやレイを傷つけ無い作戦で、負けたらおしまいではないのか。パイロットが、しかも子供が立てる作戦など自然に身の安全を計るものに違いないのだ。
 とにかく、リツコがアスカよりの発言をしたのが気になる。これからはリツコともう少し緊密にコンタクトを取っておかないといけない。
 ミサトが出した何度か目のチェックをオペレーターたちが終わったとき、使徒が到着した。

「アスカ、偵察開始よ。パレットガン撃って!」
『上陸まで待たないのでしょうか?』
「そんなことしたら、指揮車に近すぎる。撃って!」
ミサトの非難は自分には及ばない。身の安全を計るのは、子供だけじゃ無いらしい。
『  了解。』
アスカは回り込みながら上陸してくる使徒に攻撃を加え続けた。徐々に海から姿を現した使徒は久しぶりの人型だ。
『ミサトさん、ATF中和してもほとんど効果ありません。コアは無傷のようです。それと、コアと顔が変です。』
「確認している。アスカ、あの万歳野郎をソニック・グレイブで大きく切ってみて、偵察の試し切りよん。両断してもいいわ。」
『はい。偵察ですね。』
偵察は、完全に作戦部の管轄なので、細かい指示が可能だ。
「そうよ。」
軽やかなステップで、使徒に近づく弐号機は現時点では零号機初号機のペアより強いかもしれない。ミサトは半ば勝利を確信した。
 最後の間合いをジャンプで詰めた弐号機は、そのまま使徒をコアのある正中で両断した。
「やったー、すごいわ。アスカちゃん!」
カエデの歓声が指揮車に響いた。アスカは後ろへ跳び下がって戦闘態勢のままだ。
「アスカ、ご苦労様。攻撃終了、下がっていいわよ。」
『消えたんですか?』
「なに?」
『使徒のパターンですよ。気配が消えていない気がします。』
「真っ二つよ。何言ってるの。」
『確認を、青葉さ……。くそ! あっ、攻撃だったんですね。惣流二佐、二次攻撃に入ります。カエデさん!』
「あ、はい。」
使徒は、切られたそれぞれが完成体になった。
「なによあれ。海星か、あいつは。アスカ、右のコアを試しに切って!」
『マヤさん、赤い方を。日向さん、黄色い方を。カエデさん、データ取る間、指揮車の警護を!』
「了解よ。」
「わかった。」
「は、はい。」
「ちょっと、アスカァ〜。」
『攻撃中です。お静かに。』
「なんですってぇー!」

 口は悪いが、アスカの戦闘は見事なものであった。薙刀の型を見せているようでもあり、踊っているようでもある。それでも浅いとはいえ海上で戦っている不利は、明らかだ。使徒の間合いまで、詰められる事が多くなってきた。
『データは?』
「集まったけど、解析は直ぐには無理よ。」
アスカの不利を見て取ったマヤの叫びに、カエデは驚いた。私が……。
ATFを中和しあい接近した使徒とエヴァは、ノーガードで殴り合っているようなものだ。ヘリのミサイルが、エヴァ後方の赤い方に集中した。
『ありがとう。』
黄色い方を投げ飛ばし、2体をお団子状態にして弐号機はいったん下がり、竹やり爆弾を持った。
「ちょっと、全滅しちゃうわよ。」
『ミサトさん。考えがあるので、試します。』
「神風は嫌よ。」

 弐号機が再び使徒2体に近づいたとき、全ては一瞬に起こった。起き上がりかけた使徒のATFを中和し先の爆弾を近づけた弐号機は、指令車などを背負った位置でしゃがんで、爆弾を爆発させると同時にATFを展開したのだ。



To be continued...


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