ストレーガ Scarlet Strega

第十回 It Aims What ?

presented by ぶるー・べる様


(1) 

 これまでの使徒戦の経過にミサトは大いに不満だ。自分が無視された上にそれなりの結果が出ているのは最悪といってよいだろう。このままでは主導権を握れない。
 使徒戦が終わったあと、ミサトは冷静に考えてみた。まず問題はアスカのこれまでの実績と階級だ。実績はもう仕方がない。階級も軍では覆しがたいかとあきらめかけたが、調べてみるとアスカにも弱点があった。
 アスカの高い階級はセカンドチルドレンとしての10年の経験、軍事関係の講座を中心にとって大学を出たこと、それに日本に来るに際してのドイツ支部長の政治的野望から来ている。大尉すなわち戦自やUN極東軍における一尉まではミサトのほうが早い。大学卒業と日本への栄転でミサトを追い越したわけだ。
 ところがアスカは未成年であり、直接戦闘参加は禁止されている少年兵に当たるのだ。無論UNは例外条項を作ったわけだが責任を取る『大人』が必要と定めていた。ドイツでは上司の女性将官が勤めていたが日本への派遣に伴い臨時に加持リョウジの名がそこに記載されていた。ミサトはここに目をつけた。リョウジへの移行はもともと女性を当てていた地位だけに一時的のはずである。言い立てれば本来ならミサトのところへ転がり込みそうなものだが油断はできない。リョウジがついた以上尉官でも階級に問題はないがそうなると他にも適格者はたくさんいるのだ。
 ミサトはリョウジに内心謝ってから次のような連絡をドイツの知人にした。
『リョウジを信用してはいるが最近二人でよく食事に行くことなどから間違いが起こらぬか心配している』
当然その知り合いはアスカの養父母の友人であり結果はすぐに現れた。

 司令室に呼ばれたミサトが出頭するといつものように二人は待っていた。
「葛城一尉。忙しい所呼びたてて申し訳なかった」
「副司令、何の御用でしょう?」
「じつはアスカ君のことなのだが……」
ミサトは作戦の成功を確信した。
「はい」
「彼女は、まあレイとシンジ君もそうなのだが、国際法で言う少年兵に当たるためいろいろ制限があるのだ」
「はい。理解できます」
「今は責任者を……」
「はい。加持……加持一尉が担当しているのを知っております」
「ああ、それなら話しが早い」
「はい!」
「実はアスカ君のご両親は事情を良くご存知でな」
「は?」
「まあ、アスカ君が加持君を信頼しているのは知っておるものの……、君には変に聞こえるだろうが男と女だから、その……」
「はい。ご両親のご懸念はもっともかと」
「うん。それなら良い」
ミサトは勝利を確信した。
「おまかせください」
「まあ、非常時でもあるから誓約だけでもということでな」
「はい?」
「碇?」
「ああ、入れたほうが良い」
「加持君」
司令室にリョウジとアスカが入ってきた。
「ちょっと、あんたたち何しに来たのよ!」
「なにって。なあ、アスカ」
「ええ。ミサトが私を心配してくれてるって両親から電話が来たんだもの」
「え?」
「いや、俺の昇進のことまでアスカのご両親は心配してくれてな」
「あ、いや。加持ぃ〜、疑ったわけじゃないんだよ」
「わかってるさ」
「まあ、加持さんも年貢の納め時ね」
「おいおい、アスカぁ」
「まあ加持君の方は私と赤木君が、葛城君の方は日向君と伊吹君が、代行して行うから安心しなさい」
「はぁ?」
「何言ってるんだ、葛城。アスカの軍事上の親権者を引き受けるんだろう?」
「そうよ! 私がね」
「それみろ」
「みんな、入って!」 とのアスカの掛け声で、作戦部と技術部の主だったメンバーとシンジとレイが入ってきた。
「おめでとう!」
「へぇ?」
「ご婚約おめでとう!」
「なんで?」
「ミサト、加持さんと二人で私の保護者になってくれるんでしょう?」
「ア、アスカ!」

 最初の計画とは大きく違ってしまったが、ミサトは目的をほぼ達成した。アスカの行動に対する責任者としてその行動に対して大きな発言権を得たのだ。


 アスカはかなり早期にミサトの動きをつかんだのだが、いかんせん子供に打てる手は少なかった。みなが善意で動いているのもアスカの果断な処置を抑制した。それにアスカは加持の気持ちを察しているだけにミサトとの間を取り持ちたかったのだ。
 加持は経過を後から知った。
「いいのか、アスカ? 俺たちに気を使っていて」
「あら、加持さん。迷惑だった?」
「まさか! 俺の気持ちを知っているだろう?」
「まあね」
「まあ、おまえを子ども扱いする気はないけど、アスカにも大人を子ども扱いする権利はないだろう?」
「まあ、許してよ。でもたいして打つ手は無かったの。それなら、こうしたかったってことよ」
「うん、すまない。ところでミサトのことだがな」
「え?」
「ほら、この前相談した」
「ああ、何かわかった?」
「いや、ドイツで葛城は治療を定期的に受けていたらしい。俺も聞いてなかったけれど、どうやらセカンドインパクトの後遺症の治療らしいぞ」
「どこで?」
「ドイツ支部所属の医師だ」
「ふ〜ん」
「薬物は使ってない。カウンセリングのようなものだろう」
「うん」
「これからどうするんだ?」
「今までと同じよ」
「まあ。俺は戦闘時の情報を知らないから使徒戦には無関係だが、あいつはアスカの意図に注文をつけるかもしれないぞ」
「私が危険を引き受ける時、止める権利だけよ」
「それでも問題はあるだろう」
「ねえ、加持さん。ミサトの作戦に私は疑問を持ったけど、パイロットをみすみす故意に危険に陥れるわけではない。それは信じてるの」
「ああ。そうだな」
「ところで、今度エヴァの海中装備の実験をするらしいんだけど……」
「もともと弐号機には準備されていたんだろう?」
「ええ、スクーバでの訓練はしていたわ、生身でだけど。加持さん、知ってるでしょう?」
「ああ」
「まだ実際に試したことはないの」
「それが完成したんで赤木が計画を立てたのさ」
「それで弐号機が?」
「その辺はアスカのほうが詳しいだろう」
「まあね」

(2)

 リョウジとミサトの婚約が正式に発表された数日後、ミサトは弐号機で水中装備を試すためにアスカと出かけた。リョウジはちょうど良い機会とリツコの話を聞くために部屋を訪ねた。
「赤木。おや、先客か」
「加持君こそどうしたの?」
リツコの部屋にはシンジとレイが来ていて熱心に弐号機の映像を見ていた。二人は挨拶もそこそこに画面に戻る。とりあえずリョウジもシンジたちに便乗することにした。
「いやぁ、俺もアスカと葛城が気になるんだけどね。ほら、俺のところで見ているのも変だろう?」
「まあ、関係ない部門だからね。まあ、いいわ」
「サンキュー」

 弐号機は護衛のUN極東軍艦隊所属の艦に乗船している。弐号機がいるのはどうやら旧式のワスプ級揚陸艦らしい。鮮明な画像で音声も入ってきている。
『ねえ、ミサトさん』
『アスカ、なに? 準備は良いのマヤちゃん?』
アスカは水着だ。レジャー気分なのだろうか。マヤへの質問はインカム向けでマヤの答えは聞こえなかった。音声は作戦部のものとは別の回線らしい。
『ミサトさん、この装備の名前は?』
『まだ決めてないはず。海中装備だから SM(SubMarine)装備とかじゃないの?』
『え〜。SMだって、リツコさん』
「却下します」 とリツコ。
「おい、赤木。アスカと回線つながるのか?」
「ええ。技術部のを別に確保している。現場に行っているマヤとも必要があれば連絡できるわ」
「そりゃまた用意のよろしいことで」 まあ非常時に備えてじゃなく専門的な内容の連絡なんだろうけど。 「ここから指示を?」
「あら。今回はマヤに任せたのよ。本来非常用の回線だけどアスカが退屈そうだからね」
「おやおや」
『加持さんも来てるの?』
マイクが良いのか耳ざといアスカは気づいたようだ。
「ああ、がんばれよ。ところで、どうして水着なんだ?」
『この艦のバカ艦長が子ども扱いするからよ』
「おい、アスカ。それは」
リョウジはアスカが楽しそうにしているのに気づいた。
『だいたい極東軍はくそ真面目すぎるのよ』
「まあ日本人はそんなものさ。お手柔らかにな」
『水兵さん達は私の仲間よ』
そりゃそうだろう。特にカメラマン役は役得って感じだな。
「もうファンがついたわけだ」
『まあね。じゃあ着替えるからカメラ禁止よ』

 画面が飛行甲板と弐号機を映し始めるとリョウジはシンジ話しかけた。
「なあ、アスカの様子が変わってきたようだけど?」
「え、ええ」 極秘情報には当たらないと思いシンジは説明した。「最近、学校でも変りました」
「あれが本当のアスカなんだと思う」
「そうなのかい、レイちゃん?」
「ええ。友達ができて変った」
リョウジもミチコのことは聞いていた。シンジ君やレイちゃんと仲が良いと言っても仕事がらみだからなあ。初めての同年齢の友人ってことか。あとはレイちゃんのようにボーフレンドを作れれば良いけどな。
 リョウジが学校の様子を聞いているうちにアスカはプラグスーツに着替えエントリープラグに搭乗した。リツコが作戦部の回線のモニターを開く。
 弐号機はスマートなカエルという感じでユーモラスに見える。リョウジが水中装備の機能を聞こうとしたとき警報が鳴り渡った。
「どうした、赤木」
「付近にいた対潜哨戒機からよ。水面下に未確認物体を探知したらしいわ」
「発令所に行かなくて良いのかい?」
「使徒と決まったわけじゃない。そうだとしても相手の動き次第ね。艦隊や弐号機に向かうならこちらからでは指示の出しようがない」
 作戦部にまわされたデータは仮想敵国の原潜の性能をはるかに上回る……いや、人間の手によるものとは思えない水中での速度と動きを示した。
「どうだい、赤木?」
「水中型の円盤{UFO}じゃ無ければ使徒ね」
「なぜだ! あ、くそ!」
しまった、リツコににらまれたぞ。
「どういうことかな、加持君?」
「い、いや、その……」
「レイとシンジ君なら、気にしなくて良いと思うわよ。本人たち自身も極秘事項の塊なんだし、気になるでしょうからね」
「まだ状況は分からないが、これって変じゃないか。使徒はここに来るんじゃないのか? なぜあの船の周りを旋回しているんだ」
「私には分からないわ。あなた、何か思いついたんでしょう? 『くそ、なぜだ』じゃなくて『なぜだ? あ、くそ!』だったもの」
興奮するミサトの指示のもと画面では弐号機が初の水中戦闘を始めた。レイとシンジはリツコたちの会話も気になるものの弐号機の動きを手に汗して見ながら応援を始めた。
「おい、いいのか?」
「良く無いわ。MAGIの支援が無ければエヴァの戦力は半減する」
「おい!」
「でも、ここからでは手のうちようがない。マヤとアスカに任せるしか無いわ」
「葛城の能力は無視か?」
「さすがに情報のない使徒に作戦も何もないでしょう。マヤの分析とアスカの果断にかかってる。ところで?」
「ああ、赤木だって気づいたろう? 使徒が艦隊を目指すとは思えない。弐号機か葛城かアスカを狙ったんだぞきっと」
小声で話したのは無駄だった。レイが意見を付け加えた。
「起動していないエヴァは使徒に無視されると思う。エヴァに乗っているときは私もそう感じるもの」
「レイ」
「そうなのか?」
「僕も綾波に賛成です」
おや、シンジ君。今日は『レイ』じゃなくて『綾波』かい? と思ったもののリョウジはからかうのは止めた。
「う〜ん。じゃあ、葛城かアスカが目標ってわけかぁ。ちょっと信じられないな」
「加持さん、アスカのはずありませんよ」
「どうしてだい? シンジ君」
「だって日本に来た順番はミサトさん、使徒そしてアスカですよ。使徒もドイツからきてたりして」
まんざらありえない話でもないとリツコとリョウジが顔を見合わせ、レイが珍しく声をあげたのでシンジの冗談は不発に終わった。
「アスカが勝ったわ」

 マヤがまとめた戦いの記録を見て感心しながらもリョウジはミサトのことを考えていた。使徒はターミナルドグマを目指しているのだとは思うが、葛城が標的の可能性があるのは否定できないな。とにかく葛城が日本に作戦部長として送り返されてきた以上、ゼーレはその可能性を考慮していたわけだ。裏死海文書に何か記載があるのか? くそ! 南極で何があったんだ。

(3)

 使徒との戦闘は見事な勝利に終わった。エヴァの水中装備の試用実験に付き合わされて不平たららだった艦隊提督と揚陸艦の艦長から手のひらを返したような賞賛を浴びてミサトは気分がよかった。共に評価を受ける権利のあるアスカが疲労のためかマヤと医務室に行ったままなのは気になるがミサトは協力的になったUNの軍人達の助けを借りて使徒戦のデータの収集を続けた。
「曹長使徒の処分はどうなってるのかしら?」
「はい。ネルフの赤木博士からの指示で口腔部を中心に残しました」
「あら、それだけで良いの?」
「はあ。あの大きさですから船腹に牽引するにしても全部は不可能です」
「まあ、そりゃそうだろうけどさ。ところで聞くのが遅れて申し訳なかったけど、艦隊の被害は最初に聞いただけだったのかな」
「はい。駆逐艦級の護衛艦2隻が中破しましたが他に取り立てて被害はありませんでした。惣流操縦士に感謝するとお伝えください」
「それはよかった! アスカも喜ぶわ」
ミサトは心のそこから喜んでいた。アスカを生意気と思うことはあるが、本当は二人は気の合う性格なのだ。ちょっと似すぎているのと年齢差で友人とはいかないし、部門は違うが階級が逆なのがネックになっている。
「はい!」 曹長は年令もあるが余りに白人ぽいアスカよりミサトがお気に入りだった。 「伊吹二尉からメッセージがあるようです。インカムをお願いします」
「あら、しまった。外したままだったわね」
曹長はUC軍なら減給ものだがネルフは違うのだろうと笑顔でうなずいた。
「マヤちゃん?」
『葛城さん、外していちゃ困ります!』
「ゴミン。で、どうしたの?」
『アスカちゃんのことです。外傷とかはないんですけど、疲労がひどいので私が付き添ってヘリで先に帰りたいのですが、会われますか?』
「ちょっと使徒の受け渡しの手続きなんかに手間取りそうだから時間なさそうなの。お願いできるかな」
『分かりました』


 見事に戦い終えたアスカを迎えたときマヤはかなり焦ってしまった。覗き込んだプラグの中のアスカがほうけた様子の心ここにあらずという風情で、エヴァか使徒から精神汚染を受けたのかと恐れたからだ。ミサトに通信が通じないので緊急に当たると判断してリツコに連絡し判断を仰いだ。リツコはアスカの様子の原因に心当たりがあるようでマヤはまたしても『 先輩 』 を尊敬してしまった。
 リツコの指示に従いアスカの緊急輸送の手配が終わる頃やっとミサトに連絡が通じ、帰還の許可を得ることができた。もっともリツコからは救急につき必ずしもミサトの許可の必要はないと言われている。マヤはトラブルが嫌なので許可を得てほっとした。
 ヘリに乗る頃にはアスカも普通に応対してくれるようになりマヤは本当に安心した。アスカもすぐにマヤに心配かけたことに気づいた。マヤの表情はそれほど正直なのだ。マヤにインカムを指差してからアスカは話しはじめた。
「マヤさん、心配かけてすみませんでした」
「あら良いのよ、アスカちゃん。じっとしてて」
「もう大丈夫ですから」
「でも先輩が安静にして指示した薬を飲むようにと」
「え? これですか」 アスカは眠気の少ないタイプのマイナートランキライザーなのを確認してから内服した。 「はい」
アスカが飲むのを几帳面に確認してから、少し安心してマヤは質問を始めた。
「答えたくなければ別にかまわないけど、いったいどうしたの?」
「海上で襲われて気が動転したんです。まさかこんな所で……。マヤさんは平気だったんですか?」
「そりゃ驚いたわよ」
「でしょう?」
「でもアスカちゃんは冷静に使徒をやっつけたじゃないの」
「長年訓練を受けてたから何とか体が動いたんです。実際とても冷静とはいきませんよ」
「そうなの?」
「そんなあ嫌だなあ、マヤさん。あれ見て平然としていられるのはリツコさんくらいですよ」
「そうねえ、先輩は冷静だもの」
「それに大きかったし」
「そうねえ、今までで一番よね」
「あれって食べられるのかなあ?」
「え、ええ?」
「だって、日本料理とか中華料理って海のもの何でも食べませんか?」
「そんなことないわよ。それにあれは、ちょっと臭かったわ」
「う〜ん。魚臭いだけの気もするけどなあ」
マヤは猛然と日本料理の擁護を始めた。中華調理を放置したのはマヤの愛国心なのだろうか。
 ネルフ中央病院の屋上へリポートに駆けつけたリツコとシンジたちは真赤な顔で何かを力説しているマヤと笑い転げるアスカを驚いて見つめるだけだった。

(4)

 リョウジはアスカと話し合いたいことがあるが、リツコに目を付けられたのでやむなく三者会談を提案した。ところが今度はアスカが色よい返事をしない。

 まさかアスカが大人の事情、いや情事に通じている可能性があるのかな? とは限らないなか、赤木が副司令並みに司令直属派なのはバカでも分かるかぁ。アスカならお見通しでも不思議じゃない。
 しかし赤木とMAGIににらまれたら動きが取れんぞ。かといって大学時代の友情を盾に碇司令と赤木の間に楔を打つってのも難しいかなあ。

 リョウジはアスカに相談を持ちかけてからリツコを訪問した。アスカのアドバイスは奇妙なものだった。
「ちょっと良いかな」
「加持君どうしたのよ? アスカも今はそれほど忙しくないでしょう?」
「まあな。しかし三人で話したことは個人的に胸に秘めてほしいんだが……」
「内容によるわ」
「分かった。ここで一つだけまず話す。それで決めてくれ……」 リョウジはドイツから運んできたアダムの胎児の話を知る限り正確に話した。 「これは司令は知っていることだから問題ないぞ」
リツコは長い時間沈黙したままだった。
「分かった。その条件をのむわ」

 その後婚約したリョウジとミサトそれに被保護者になったアスカの3人と共に過ごすリツコの姿が第三新東京市で良く見られるようになった。もちろんミサトが夜勤の時は三人になってしまう。

「さてお二人さん。この前の海中型使徒の時のことをそろそろ聞きたいわね」
「どうって言われても、赤木。使徒の調査はどうだったんだ?」
「今までの中ではコアの状態は良いほうだけどそれだけ。謎だらけよ」
「私が驚いた理由はリツコさんも加持さんも気がついてるでしょう? なぜ使徒が襲ってきたのか? これは大問題だと思うな。もちろん全ての使徒が同じ目的、同じ目標を目指すとは限らないにしてもね」
「あのとき私は加持君、レイとシンジ君と一緒にいたんだけど、消去法でミサトが目標っていう奇抜なアイデアのみが残ったの」
「加持さん、私たちのセカンドインパクトについての考えを」
「ああ。まあ赤木のも聞きたい所だがな」 リョウジは二人でした話を繰り返した。
「特に間違いはない。あれほどのことが起きるとは葛城博士はきっと思ってなかったとは思うけど、被害を最小にするためアダムを卵まで還元したの。その時のエネルギーの余波が世に言うセカンドインパクトを起こしたって私は理解している」
「地球への物理的被害だけを言うなら分かるけど、私は行ったわけじゃないけど今の立ち入り禁止の南極の状態はどうなんですか?」
「ずっと生物がいない状態よ」
「15年たっても……。ということはいまだに何らかの力が働いているんですね?」
「なるほどね。アスカの言うここのターミナルドグマにいるのがアダムでないと言う説を私も指示することにする」
「なぜだい、リッちゃん?」
リツコはターミナルドグマにも南極に似た風景があること、セカンドインパクトと呼ばれる規模の天災のあと南極の地下深くの卵を掘り返すほどの調査は経済的事情もあり行われていないことを話した。
「ってことは本物のアダムはまだ南極ってことか?」
「おそらく卵のままね」
「じゃあ、加持さんが運んだのは?」
「育て方によってエヴァになるか使徒になる胚でしょうね」
「うひゃ〜、どうする加持さん」
「どうするって、アスカ。俺はもう持ってないぞ」
「いいのよ、アスカ。私に気を使わなくても」
「ちょっと待て、なんのことだ。よければ俺にも教えてほしい」
「ちょっと加持さん。リツコさんは」
「私は碇ゲンドウを愛していた。うぬぼれじゃ無くゲンドウもある範囲では愛してくれたんだと思うわ。でも加持君の運んだ胚は本来ここには必要ないものなの。ゲンドウはアダムの胚を使って初号機に溶け込んだユイさんと合一する気だと思う。おそらくレイも巻き込んでね。まあ、私はそこまでの女というわけかな。三世の契りはユイさんとするってこと、滑稽で無様ね」
「リツコさん」
「赤木」
「大丈夫。母さんはMAGIに三つの自分を残した。科学者、母親、女のね。そして女として死んだわ。私は科学者として生きたいのよ」



To be continued...


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