21世紀に大きな戦争がありました



それは、人類と使徒との戦争でした



言葉では到底語りきれない激しい戦いの末、勝ったのは人類の方でした



月日は流れ2018年になりました



そして人々は、真の英雄を忘れていったのです











エヴァンゲリオン交響曲

第二部 第壱高校編

第三話 第壱高校

presented by 黒き風様











第三新東京市

ここはかつての使徒との戦いの場でもあり、迎撃を目的とした要塞都市でもある。

使徒との戦いが終わり、世界中の支援を受け復興を成し遂げた後第三新東京市は世界で最も有名な都市になったのである。



雲ひとつない青空の中、出勤、通学時間には道路には学生やサラリーマンの姿が多く見受けられる。

ここは“第三新東京市立第壱高等学校”、通称“第壱高校”

第三新東京市で最も有名な学校と言ってもいいだろう。

それは現在、世界で6人しか確認されていないエヴァンゲリオンのパイロット、“チルドレン”が通う学校なのだからである。

もちろん、この高校は裏でネルフが管理しており、チルドレンは皆同じクラスに集められている。


尚、この高校はチルドレンの入学後、次年度受験者数が定員の20倍以上に達したのは言うまでもない。
(国外からも受験者が来たらしい。)






〜第壱高校〜


ここは2−A。

チルドレンが席を置いているクラスで、第壱高校で最も注目されているクラスである。

当然チルドレンは人気者で彼らの周りには常に人が集まるのだが・・・

今日は特に、1人のチルドレンの所に人だかりができ、注目されていた。











「すごいじゃないか、ボッカ!」






「やっぱチルドレンはすごいよな〜!!」






「流石ね〜どっかの誰かさんとは大違い〜」












そう、8thチルドレンこと芹名ボッカである。



戦闘記録の公開で流された映像にはボッカが駆るエヴァ10号機見事に敵を殲滅したのが映っているのである。

映像公開後には記者会見も行われ・・・





『新人チルドレン初出撃で初勝利』




『8thチルドレン芹名ボッカ君、見事に使徒を撃破』







などとマスコミに大々的に取り上げられたのである。





「よっ、今日はまた随分と人気者ぶりねぇ〜」


本日のヒーロー、芹名ボッカに近づく金髪でショートカットの女子生徒が言った。


「やぁ、おはよう。小夜子。」


ボッカも普段通りの挨拶を交わす。



彼女の名は月乃森小夜子

この第壱高校でボッカがメロスのエージェントであること知る唯一の少女である。

とは言ってもメロスの正式な構成員ではなく、リーダー黒船の関係者でメロスの仕事を手伝っているのである。

そして彼女は現在チルドレンが在学している第壱高校にボッカのサポートとして潜入している。



「小夜子は良いよねぇ〜旦那様が素敵なヒーローでぇ〜」


「な、何言ってんのよ!私達はそんなんじゃないわよ!」


一人の女子生徒がボッカと話している小夜子を冷やかし、それを小夜子は否定する。

まぁ実際、この二人はそんな関係ではないのだがこれから如何なるかは分からない・・・・



「全く・・・あ、そうだ・・・ボッカ、後で黒船さんの指令があるからいつもの所でね。それから・・・・

「ああ、わかったよ。」

小夜子は冷やかしに呆れつつも大事な指令のことを思い出し耳打ちでボッカに用件を伝える。

無論その後、その様子を見た他の生徒達から更に冷やかされるのだが・・・





話は戻って記者会見のことだが・・・

この記者会見では“一般の民間人が使徒の力でロボットを動かし人類を攻撃している”ということが公にされたのでマスコミや中継を見ていた人々に大きな衝撃を与えた。

記者会見で“ミッドナイトひよこ”こと浜野けいこに関する情報が流れたので、某岬には暴徒と化かした人々が大挙してきた。

モンスターユニオンの関係者はネルフによって事前に殆ど確保されて逝ったのだが、ごく僅かに生き残りがいたので、即座に私刑決行。

負傷者は100名を越えたが、中にはなんら関係ない一般人もいた・・・・・
(死者は奇跡的に出なかった。)





因みに、そのこと以外にも記者会見を見ていた者に衝撃を与える事件が会見場で起こった。

その原因と言えるのがネルフご自慢の作戦部長、葛城ミサトである。

衝撃を与えたと言っても決して恥を振り撒いたわけではない、寧ろ何も事情を知らない人にとっては賞賛を浴びることを成したのだが、事情を知る一部の人間からは滑稽や猜疑といったものを感じさせるものだったのだ・・・・・






〜記者会見〜




この記者会見にネルフは冬月、リツコ、ミサトにチルドレンは出撃したボッカにアスカ、トウジが出席。



だが、アスカとトウジの表情は暗い。

彼らは先の戦闘では大した戦果を上げれず、成す術も無く敗退したようなものだからだ。

戦闘後、ケイジに収容された6号機と7号機から降りてきたアスカとトウジが見たものは、先に回収されていた10号機から降りてきたボッカが整備員達等からの歓声と賛辞の声を浴びている光景だった。

そして自分達には誰も声をかけてはくれない状態。

それもそうだろう、この2人とケンスケは常日頃から自分達がエヴァのパイロットであるというステータスにいい気になってネルフ本部内でも傍若無人な振る舞いをしてきたのだ。


例として挙げるなら、平時において近くにいる一般職員を捕まえてパシリや荷物持ち等は当たり前。

酷い時には訓練後にマッサージ等をさせたりなど勝手気ままに命令している。


勿論、職員達も最初は反抗していたが、




『私達はエヴァのパイロットなのよ!!』




『俺達が居ないとお前等なんか役立たずなんだぞ!!』




『わいらしか世界を守れんのやぞ!!』











『『『それくらい、素直に・・・』』』















『やりなさいよ!!!』

『やれよ!!!』

『やらんかい!!!』










等と言って無理矢理命令をしているのである。

(3年前の真実を知っている職員、知らない職員両方にである。)

このことを司令部に訴えたところミサトが



『貴重なチルドレンなのよ、あんた達こそ何考えてんのよ!普段サポートぐらいしか出来ないんだから、そんくらいするのが当然でしょうが!!!』



などと暴言を吐いたのである。

その結果彼らは更に増長するのは当たり前・・・。


それにより、チルドレンではアスカ、トウジ、ケンスケは一般職員達の評判が思い切り悪い。
(レイ、マナ、ボッカはそのようなことをしないし、寧ろ常にサポートして貰っているということ自覚しているので評判は良い。)







よって、2人には誰も労いの言葉を掛けてはいないのは当たり前。

辺りからは『役立たずめが・・・』と言わんばかりに白い目で睨まれ続けらていたのである。








だが、そんな2人の事情を知らない記者は己が職務を遂行しようとする。




「それでは今回、初出撃を見事勝利で飾った芹名ボッカ君。今戦闘の勝因は何だったんでしょう?」




一人の記者が今戦闘の最大の戦労者であるボッカに質問をする。






「はい、今回の戦闘は・・・『私の指示による日頃からの訓練と、戦闘時における私の先を見る洞察眼で瞬時に練り上げた敵に対する作戦、それを忠実に遂行できるように逐一に適確な指示を出した私の指揮能力の賜物です。』・・・・」



ボッカが記者の質問に答えようとしたところ、ミサトがいきなり横からしゃしゃり出て来て有りもしないことを声高々に言い放ったのである。







「おおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!」





インチキ作戦部長の虚偽満載の発言の後マスコミは歓声を上げた。

そして牛女こと葛城ミサトはこともあろうか、その後も今戦闘の勝利を自分がの作戦と指揮によるものだと大々的に演説しやがったのである。


「私の無駄の無い、効率的な作戦で・・・・」


「その場、その場で臨機応変に指示を出したおかげで・・・・」


「常日頃からチルドレンの状態を見極め・・・」






オイオイ、全部嘘だろ・・・・

前回の戦闘で出したあんたの作戦でアスカとトウジが敗退したんだし、臨機応変な指示なんて出してなかったじゃないか。

そもそも常日頃からチルドレンの状態を見極めるなんて、勤務中にビール飲んでる輩にできるのか?

しかもミサトはボッカのことを毛嫌いしているのであまり顔を合わせない、そんなので見ていることになるのか、おい!



勿論、ミサトの演説を聴いたネルフ側と記者会見を見ていたメロス側も一同唖然。


発令所内の記録が公表されていないことを良いことに、全部自分の功績にしているのだ。(どうやら頭の中では使徒を倒したのは自分の功績だと信じているらしい。)

ボッカはミサトのデタラメ演説に顔を引き攣らせ、ここで真相をぶち撒いてやろうかと考えるが先のココの取引のことを考慮し踏みとどまる。

ココはこれをネタにネルフをどうやってイビろうか内心嬉しそうにしている。


冬月とリツコはボッカやココの心情でも察したのか冷や汗一杯である。

アスカとトウジは悔しそうに俯いている。

2人は記者会見前にリツコから


「組織の体面上、あなた達の立場が少し悪くなるわ。それくらい我慢して頂戴ね。」


と釘を刺された。

『無様に負けたんだから、身を弁えて、記者会見では静かにしていなさい。』というものである。
(負けたといっても役立たず作戦部長のせいだが・・・)











次にマスコミは最初に出撃した6号機と7号機の苦戦というより敗退のことを突いてきた。

さてこれにインチキ作戦部長は如何出るか。

先程の演説でミサトが戦闘の指揮を執っていたのは明白、ボッカが駆る10号機が敵を殲滅したが、6号機と7号機は見事無様に敗北。

これだと自分の指揮で6号機と7号機が負けたことになるのだが・・・・・・




「はい、これに関しては2nd、惣流・アスカ・ラングレーと4th、鈴原トウジ両名が作戦部長たる私の命令を聞かずに起こってしまった悲劇としか言いようがありません。
特に2ndに限っては、自分のエースパイロットという名誉に溺れての独断専行としか言いようがありません。作戦部長として2度とこのような事態が起きないよう、努める所存であります。」








「ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ・・・・・・・・・・・」





マスコミ達は一気にざわめき始めた。

それもそうだろう、人類を守るエヴァのパイロットが戦闘中に独断専行したうえ、敗退。
その内の1人がエースパイロットとして有名な惣流・アスカ・ラングレーだからだ。









(((((・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)))))



アンビリーバボー・・・・

この牛女、記録が公表されていないのを知ってのことか、それとも自分の脳内で自己保身のためのシナリオが組みあがり、それを己が真実としたのであろうか?

忠実に命令に従ったアスカとトウジを命令に従わず勝手に自滅したと言い放ったのである。

これにはネルフ側とメロス側も唖然、自分たちの目と耳を疑った。

ココは今ここで記録を暴露してやろうと試みたが周りにいた部下から止められてしまう。






「ちょっと、ミサト!何勝手なこと言ってんのよ、私達はちゃんとあんたの命令通りに戦ったのよ!明らかにあんたのミスでしょ、私に責任擦り付けないでよ!!」



アスカは先程まで、自分が切り捨てられたと悲愴感に包まれていたが、流石に命令どおり戦ったのに非難されてはキレてしまう。

だがこのアスカの反論がネルフにとって非常にマズイ、矛盾している。

これを皮切りに発令所内の記録のことをマスコミに突かれたら・・・・




バッチーーーン






ホールに景気の良いビンタの音が響き渡る。

これには皆が驚いた、記者会見の場でミサトがアスカをぶったのである。

「アスカ!あんた、いい加減にしなさい!自分の非を認めないで関係のない私に責任を転嫁するなんて・・・人として恥ずかしくないの!?」

マスコミも息を呑んで事態を見守っている。

記者会見という公の場でエースパイロットであるアスカにビンタを喰らわせ正論で(何も知らない人にとって)叱責しているのだから・・・



因みにこのときの作戦部長の心の中では

(ああ〜〜〜〜見られてるわ、私・・・。みんな私のことを時には部下を叱る優秀な上司って思ってるわ、うふふふふふ・・・・・。まあ、当然よね、私の命令に従わず勝手に負けたんだから。)



という感じにこの女は全ての責任をアスカとトウジの責任と決め付けていたらしい。(脳内で改竄済み)

だが、発令所内の記録が国連に提出され上層部や、国連軍や戦自のほうにも流れていることを知っているのだろうか。

そのことを知っている冬月とリツコは冷や汗一杯になりつつもそれを顔に出さないよう必死に耐えており、後で国連にどのように弁明、対応をするかを考えている。
(ご愁傷様デス。)


そんなわけで、この記者会見の映像を国連はミサトとネルフに不審を抱き始め、議会でも取り上げるのだが、それは後の機会に。




ちなみにミサトはこの後、自分の手駒でいさせる為にアスカとトウジを説得するのだが、その内容は・・・・
(自主的ではなく、リツコから『このままでは貴女の思いどうりに動く駒が居なくなるわよ』と言われて、慌てて実行。)

「ゴメンナサイね。あなた達が優秀なのは私が一番よく判ってるの。一番悪いのは私の命令を聞かなかった8thだって事はあなた達も判ってるでしょ?だけど組織の体面上ああするしかなかったの、今度は頑張って頂戴ね♪」

という、思い切りゴマを擂ったものだった。
(一度脳内で改竄されたシナリオを更に改竄し、一番悪いのをボッカにした。)

アスカは渋々了解。
(立場などを弁えている。)

トウジは鼻血を出しながら嬉々として了解。
(弁明中にミサトが後ろから抱きつき、胸をワザと頭に押し付けた為。つまり色仕掛けにやられた。)














とまぁ、こんな感じの記者会見の翌日に芹名ボッカがヒーローになるのは当然である。

(まいったな・・・こんなに注目されるなんて。)

彼は監査機関の人間なので目立つのには慣れていない。

しかもメロスは時に、諜報機関としての活動が主になることが多いので尚更であった。






しかしこれを快く思わない人物達がこの2−Aのクラスにはいる。

(クソー!新参者くせに先輩の俺より先に目立ちやがって!!)

(なんや、ちやほやされとってからに、今に見とれ!!)


相田ケンスケ鈴原トウジ。

ご存知、ネルフに所属するチルドレンの内の二人である。




鈴原トウジは使徒大戦のバルディエル戦で右足を失ったものの、サードインパクト後にはその右足は元通りに戻っていた。

そして彼はネルフからの命令でシンジの裁判で嘘の証言をすることになる。

トウジがこれに応じた理由の1つに自分が4thチルドレンとして登録されていることがあった。

サードインパクト後、世界中はこのような事態が起こった真相、原因など全て白日の下に晒すよう躍起になって活動しており、その矛先は当然の如くネルフにあった。

もし、ネルフがサードインパクトの実行機関だとわかれば4thチルドレンとして登録されている自分にもどのような仕打ちが待っているか分かったものではない。

2つ目に委員長こと洞木ヒカリが戻ってこなかったことがある。

トウジも鈍いながらも入院中にお見舞いに来てくれていたヒカリにそれなりの感情は持っていたらしかった。

その恐怖と怒りからからトウジはシンジを生贄にするための計画に身を投じたわけなのだが、彼の元々の直情型単細胞人間としての資質だったのかネルフから説明を聞くに連れて段々、“シンジが全ての悪の根源だったんだ”と脳内で都合よく修正(改竄)されていったのである

今ではシンジのことを



『アイツは臆病で根性なしで関係ない奴を苦しめるだけがとりえのとんでもない奴や!!』



等といっている。

とても当時シンジのことを『センセ』などと言い、親友であった人間の言えることではない。





ケンスケもトウジと同じく裁判のために協力をしたのだが、彼がネルフに協力した理由、それは・・・・


『俺をエヴァンゲリオンのパイロットにしてください!!!』


を条件としたらしい・・・・

その表情は嬉々としており、目はお星様を散りばめたかの如く輝いていたという。

この男、そんな理由かつての親友を世界への生贄にする手伝いを行ったのである。

まぁ、元々ケンスケがシンジの親友として付き合ったのは“うまく自分をアピールしエヴァのパイロットに推薦してもらう”や“神秘的な美少女、綾波レイと御近づきになる”(更に写真を撮ってボロ儲け)がその理由である。


それにパイロットという都合上、レイの近くにいたシンジには常に嫉妬しており、裁判の話は彼にとっては一石二鳥、うまくすれば一石三鳥(邪魔なシンジを消し、パイロットになり、さらにレイと・・・・)でもあった。




・・・・・・頭痛感じるな、特に後者は。



ケンスケはシンジと親友の関係だったので、その証言は重要、これにネルフは2つ返事で承諾。

元々ネルフ側も裁判後は各国の調停機関としての活動やエヴァによる都市の復興(一応、汎用人型決戦兵器なので)を視野に入れていたのでパイロットは必要であったためこれは渡りに舟であった。

更に、チルドレンになれば共犯者として後々脅迫などの面倒も起きずに済むからである。









勿論、壱中の生徒全員(特にコード707)がシンジを悪者にしようとは考えてはいなかった。

中には良心から真実を訴えようともしたがこれは髭の命令により黒服が即刻消去、勿論家族もだ。

ちなみに男子生徒が有無を言わさず即消去で、女子生徒は多少の選別のあと拉致と消去に分けられ、拉致された生徒はそのまま暗い地下室に閉じ込められ髭や黒服の餌食になったのは言うまでもない。





ケンスケの思う通り、ボッカはチルドレンの中では新参者である。

普通に考えてぽっと出の新人が良い目を見るのは誰もが嫌悪感を示すもので、二人がボッカに対して不機嫌なのは仕方が無い。

しかしトウジに限っては先の戦闘で出撃し、見事に敗北を味わったので・・・




「全然たいしたことないな、鈴原の奴。」



「真面目にやれよな、俺達の命が掛かってんだから・・・」



「作戦部長の言うこと聞かずに何やってんだよ・・・」







と、あちらこちらで陰口を叩かれているのでトウジは物凄く不機嫌である。

彼ならそんなことを聞いた時点で暴れだすのだが、ここでそんなことをすると益々自分の立場が悪くなるとケンスケが必死に抑えている。


さて、少し話を戻して、他のチルドレンのことに焦点を移してみる。




霧島マナ、彼女に関してはボッカのヒーローぶりを見て、『まあ、しょうがないよ』と割り切って考えている。

このところは元戦自の経験からきているようだ。

彼女はN2で溶けてしまったのにも関わらず、サードインパクト後に還ってきた人である。

しかしそんな彼女が還ってきても誰も彼女のことを気には留めない。

彼女自身も何のアテもツテもないのでこのまま終わってしまうのかと思っていたところを偶然ネルフ保護された。

そこで彼女は裁判で戦自の人間としてシンジのスパイをしていたことを話し、彼がどれだけ悪人だったのかを証言してくれと言われたのだ。

これにはマナも悩んだ。

しかしここで断れば自分は何のアテも無くただ野垂れ死ぬだけ、いや、この場で口封じに殺されてしまうかもしれなのである。

これらが瞬時に頭の中で巡り、ネルフに協力したのである。




う〜〜〜ん、仮にも愛していると言った少年をこのような打算で切り捨てるとは・・・・

先の二人に比べればまだマシなのかもしれない。







さて、ここでチルドレンの中で最もこの状況を見過ごす事ができない・・・もとい、暴れてでもこの状況を打破したいと考えていらっしゃる方がいる・・・・

そう、先の記者会見でデタラメ作戦部長に大々的にビンタされ、非命令遂行者として世間の株価を暴落させられた2ndチルドレン。

紅蓮の女神こと惣流・アスカ・ラングレーである。

ここでヒーローとして賞賛を浴びているボッカに『いい気になってんじゃないわよ』とでも言いたいのだがその様なことを言えば自分の立場が悪くなるのは目に見えている。


先程からクラスの女子生徒も




「何よ、今まで散々威張り散らしちゃってさ、役立たずじゃない。」



「NO.1なんて嘘っぱちじゃない。」



「化けの皮が剥がれてきたって感じぃ?」





等など、アスカにわざと聞こえるように陰口を言っている。

アスカはそれを聞いて顔を赤くしながらひたすら耐えている。


ちなみに男子生徒はこれを期に、『傷心の彼女を優しくフォローして親密な関係になろう』などと画策しているとないとか・・・



ちなみにアスカが大学卒業しているのにも関わらず高校に通っているのは、シンジの裁判後にドイツに帰ろうとした矢先に裏死海文書の解読が進められ、新たな使徒襲撃が判明した為日本に残ることになり、他のチルドレン達が第壱高校に進学するため、半ば済し崩し的なものである。


アスカはシンジを陥れる裁判にチルドレンの中で最も協力的だったといえる。

その動機が人類を守るエヴァのパイロット、そのエースとしての栄誉、それはアスカのエヴァパイロットに任命された当初の夢でもある。

しかし事実どうりに世間に真相が明らかになれば使徒を多く倒してきたのは自分ではなくサードチルドレン、碇シンジが駆るエヴァ初号機であることが公になってしまう。

はっきり言って自分だけの力で倒した使徒なんてサンダルフォン1体ぐらいなのだ。(シンジのアドバイスで勝てたのだが・・・)

それを恐れたアスカは証拠の捏造や証言内容の打ち合わせ等を積極的に協力していた。

そして裁判も終わりネルフが使徒との戦いの記録(偽造)を公開したときには見事にエースパイロットとして自分の名を馳せていた。








そして最後のチルドレン、1stチルドレン 綾波レイ

彼女はというと殆ど無関心だった。

彼女にしてみれば使徒を誰が倒そうが構わないと考えており、むしろ新入りで他のチルドレンに比べ訓練時間も短かったボッカが初出撃で見事に敵を倒したことにある種の期待感のようなものを抱いていた。




だが、それと同時に少し不安も感じていた。

芹名ボッカの状況が少し似ているのだ。

初出撃で見事に勝利を収めたチルドレン。




何の訓練もなしにオーナインシステムの初号機を起動させ使徒を殲滅。

3年前の碇シンジの状況と少なからず似ている箇所がある。


そして一抹の不安が脳裏をよぎり、ボッカを見つめてしまう。




彼も、芹名ボッカも碇シンジのように捨て駒になってしまわないかと。











「そうだ、綾波さん!」










レイに見つめられていたボッカが何かを思い出したかのようにレイに話しかけた。

「な、何・・・」

レイも先程まで自分が見つめていた人物からいきなり声を掛けられ少し同様している。


「実は、メロスのココさんに今日訓練が終わった後に綾波さんに話があるから、その旨を伝えておいてくれって頼まれたんだ。」

「そう、分かったわ・・・」




綾波レイ。

彼女は碇ユイの細胞と第2使徒リリスの細胞を掛け合わせて造られた人と使徒のハイブリットの存在であった。

しかしサードインパクト時にシンジが再び人類が群体として生き続けること願った際に彼女はリリスの因子が取り除かれてしまったのだ。

後にリツコが調べたところ、レイのDNAには碇ユイとの近親関係を示すDNAパターンすら検出されず、レイが一個の独立した人間であることが分かったのである。

かつては自分が人間ではないことにコンプレックスを抱いていた彼女にとって、この事実はとても喜ばしかった。

レイはこれをシンジの遣ってくれた事だと思っている。

それを確かめる前にシンジは処刑されたが・・・・・・・






現在、クラスでも女子生徒たちとお喋りをするようになり、中学時代と比べるとコミュニケーション能力が格段に上がったのである。

そして今では少しづつではあるが、自分なりに新たな絆を築こうと模索し続けている。


しかし、彼女はネルフの関係者には決して絆を求めようとはしない。


彼女にとってネルフは自分に希望を与えてくれ、そして最も深い絆を求めようとした少年を殺した組織なのだから。



(わたしはどうしてネルフにいるの・・・・・)



そのような思考をしながら表情が暗くなっていく蒼銀の少女、綾波レイ。


そして彼女は気づいているのだろうか。

そんな自分を不敵に見ているメガネの眼光に・・・・・・・










〜????〜




ここは第三新東京市から少し離れた場所にある山林地帯。

そこには“田舎”という言葉がよく似合う、村があった。

そして山の斜面に生い茂る木々の向こうには巨大な水面が夕日を浴び赤く染まっている。

その巨大な水面はダムに貯水である。

深い山間にひっそりとある静かなダム。

そのダムから少し離れたところに所謂“成金趣味”という言葉を具現化させたようなお屋敷があった。


その屋敷の一室

室内には豪華な調度が並んでいるがどこか少女趣味が抜けきれない感がある。

部屋の窓からは先程のダムも見える。

そこにはゴージャスなドレスを着た一人の女性とその女性を世話をする初老の執事の姿あった。


「みり様、岬に連絡を取ってみましたが岬のモンスターユニオンは全て確保されたようです。」


執事がみりと言う女性にお茶の準備をしながら話している。

「ふ〜ん、そうなの・・・・・私には関係ないわ。“ミッドナイトひよこ”なんて所詮、観光興行で資金調達してるようなエージェントの中でも下っ端だしね。」

みりは別段気にせずにソファでくつろいでいる。







『アルコトナイコト、アルコトナイコト♪』

突如部屋に甲高いインコの声が響き渡る。

『アルコトナイコト、アルコトナイコト♪』

2人が見上げると一羽のインコが飛んでおり部屋に用意されている留まり木にとまる。





「待っていたぞ、“アルコトナイコトインコ”・・・モンスター様からの指令だな。」

ソファでくつろいでいた、みりは立ち上がって姿勢を直す。

『残念ながら違う、秘密通信だ。相手は同志“ディスカウントうりぼう”である。』

“アルコトナイコトインコ”は留まり木にとまりながら、みりの予想を否定し、用件を言う。


「わかった、着替えるから少し待っていろ。」


そう言うとみりは部屋を出て衣装部屋へと入る。

時間にして数分するとミッドナイトひよこと同じメタリックなコスチュームを身に纏ったみりが現れる。


みりとアルコトナイコトインコは大きな鏡の前に出る。

アルコトナイコトインコは鏡の中へと入ってしまう。

すると鏡は光だし通信相手、コスチューム衣装に身を包んだ少し太った女性の映像が映し出される。

どうやらこの女性が先程アルコトナイコトインコが言っていた“ディスカウントうりぼう”のようだ。

「ビバ、モンスターユニオン!」

『ビバ、モンスターユニオン!』




二人とも敬礼しながら言い放っている。


「お久しぶりね、ディスカウントうりぼう。あなたの華麗な怪獣ぶりはこちらでも耳に入ってるわ。」


怪獣ぶりというのはモンスターユニオンのエージェントが操るロボット、ロボット怪獣の操縦ぶりである。」


『お世辞はいらない、早速だがミリオネアびーばー、お前に我らがモンスターユニオンのリーダー“チャイルドどらごん”からの指令がある。』


チャイルドどらごんの命令を聞くだと?」


みりこと“ミリオネアびーばー”は多少困惑している。


『そうだ、“チャイルドどらごん”はモンスター様よりこの度のネルフへの攻撃の全作戦の指揮を委ねられている。そう3年前、ネルフの使徒殲滅の裏側で苦行を強いられてきた我らの代表としての命令だ、文句はあるまい。』


そう、モンスターユニオンの構成員は3年前にネルフが使徒迎撃の為の準備をする段階で、ネルフの活動に邪魔な存在を特務権限や裏工作(保安、諜報部)で排除された者たちである。

主にネルフの動向を探ろうとする諜報組織、情報公開を要求したりするマスコミや一部市民団体である。



3年前のネルフは非公開組織でかなり胡散臭い。

しかもエヴァを造る為に国連に莫大な予算を請求、しかもその使途の詳細などを特務権限などで不透明にしていたのだから。

それにより世界各国も経済的に非常に大きな痛手を受けるのは当たり前。

しかも某国では2万人の餓死者を出す始末、これは誰でも探りたくなるものである。

諜報組織に関してはその手の世界に居るのでしょうがないと思うが、マスコミや市民団体にはご愁傷様とでも言っておこうか・・・

彼らは黒服によって家族と共に仲良く物理的消去。


他にも2004年に承認された第二次遷都計画(第三新東京市の着工)に基づき、謂れ無き住民の強制退去などもある。

これに関してはネルフの特務権限、その住民の勤め先や通学先等に圧力を掛け無理矢理追い出させたり、酷い場合には一家揃って夜逃げや蒸発などに見せかけて全員殺されてしまう始末である。

まぁこの他にもゲンドウの趣味である美女狩りもとい、拉致監禁の揉み消しや証拠隠滅。

葛城ミサトの道路交通法違反(飲酒運転は当たり前、破損事故や人身事故も平時であるのにも関わらす特務権限で揉み消し、保険金をクスねて車の修理、改造に当てている。)



しかも葛城ミサトに関しては現在進行形でこの凶事を行っている。

それでもバレないのはネルフが警察に圧力を掛け(賄賂などで)、必要なら対象の周りの人間全てを消し、事件の存在自体を消した。

ネルフがそこまでミサトを庇うのは、3年前は某事情によるゼーレの庇護、現在はこの無能な作戦部長を世間に晒させない為のケツ拭きである。



「そう、私はネルフの重役が起こした事故によって父を亡くし、それを不問にされた・・・・私はネルフを憎んでる。」



“ミリオネアびーばー”こと金谷みりはどうやらネルフが誇る有害作戦部長殿の被害者のようだ。

ちなみに彼女の父親はミサトの飲酒運転による信号無視で車同士が追突する事故で亡くなっていた。

ミサトはまずいと思い急遽車をバックさせ(そのせいで横断歩道を歩いていた通学中の児童5人に衝突、3人が軽傷で2人は重体だった。)あさっての方向へと逃げたのだ。

この時、後部座席で比較的軽傷であったみりは車のナンバーを覚え警察に訴えたが何時までたっても犯人は捕まらずじまいだった。

そして、たまたま刑事達の立ち話を聞いてネルフの重役が揉み消したことを知ったらしいのだ。

なお、この後何故か比較的裕福だったみりの父親に何故か借金があることが判明し、質の悪いサラ金業者が悪質な取立てを行い一家は夜逃げするはめになったそうだ。




『・・・・ハッスルもんきーから数日中に届くであろう新しいロボット怪獣のパーツを装備し、第三新東京市を攻める、これが“チャイルドどらごん”の指令だ。』

ディスカウントうりぼうミリオネアびーばーが納得したようだと感じると指令を伝える。

「新しいパーツだと?」

『そうだ、どうもそのパーツには第11使徒の力が備わっているらしい・・・それプラス、お前のロボット怪獣の能力で攻撃しろとの事だ。』



「了解した、ビバ、モンスターユニオン!!」


『ビバ、モンスターユニオン!!』










〜コンフォート17〜



今ここに一人の少女が自分の部屋へと帰ろうとしている。

1stチルドレン綾波レイ、蒼銀の天使の異名を持つ少女。

彼女はネルフでのシンクロテストを終え、帰宅してきたところである。

レイはいつも通り自分のIDで扉を開け部屋に入ろうとしたが・・・



「待てよ、綾波!」



部屋に入ろうとしたところを誰かに呼び止められてしまう。


「なに・・・・・・・?」


振り返ってみるとそこにはメガネの少年相田ケンスケがいた。

「いや何、最近綾波の様子がおかしいなぁと思ってね・・・大丈夫?」


「別に・・・・・何もないわ。」

様子がおかしいと言われるが彼にそんなことを言われる筋合いはないとレイは内心思った。



「そんなわけないよ、俺はいつも綾波のことを見てるんだ。今の綾波がいつもと違うこともわかるよ。」

ケンスケはそう言うとメガネをクイッと上げ、光らせる。

「そう、それじゃ・・・」

レイはケンスケの言動と態度に不快感を感じ早々に自分の部屋に逃げ込もうとする・・・がケンスケはレイに掴みかかり、そのまま部屋の中へと入りレイを押し倒す。


ドサッ


「イヤ、離して!」

レイは普段より感情を露にして拒絶する。


「知ってるんだぞ、お前が最近あのボッカって奴を見ていることが。大方あいつにシンジの奴を重ねてみてるんじゃないのか!!」


それを聞いたレイは身体を強張らせた。


確かに自分はこのごろボッカを見ている。

チルドレンの中で唯一真実を知らない人。

もしかしたらシンジのように身に覚えの無い罪をネルフの都合で着せられてしまわないかと、危惧していた。


それを肯定と見たのかケンスケはニヤリと表情を歪ませる。


「やっぱりな、もうシンジのことなんて忘れろよ。あいつはなるべくして俺達の為の生贄になったんだ。お前もちゃんと証言しただろ?」


レイは怒りを露にする、かつてシンジの親友の振る舞いに。



「わ、私は・・・・・好きであんなことを言ったんじゃない・・・・・・・」



レイは否定を口にするが



「本当のことを今更言っても誰も信じやしないさ。それにいいのかぁ?バラしたらバラしたで、後が大変だぜ?お前が昔人間じゃなかったこともバレるぞ!!」



レイは顔を青くした。

自分が人間ではなかったこと、昔の自分のコンプレックスを突きつけられたのだから。

「こんなことが知れちゃあ、全人類がお前を殺そうとやってくるぜ。・・・でも俺は大丈夫、綾波のことを愛してるから・・・」


ケンスケはそう言いながら、鼻息を荒くしレイの制服のボタンへと手に掛けようとするが・・・・







ピンポ〜ン







突如インターホンの音がする。

それに慌ててケンスケがレイから離れ、レイも立ち上がる。


ドアが開くとメロスのエージェントであるココ金髪の青年、ヒカリが立っていた。



「どうも、メロスの者で〜す。今日は綾波レイちゃんにお話があって来たんだけど・・・・お邪魔だったかな?」



ココはワザとらしく尋ねる。

どうやら二人の会話を表からこっそり聞いていたのだろう。

ココの後ろに隠している手には聴診器が握られている。


「チィ、・・・そ、それじゃあ俺はお邪魔みたいだから」


そういうとケンスケは足早に部屋から出ていく。

それを見ているココとヒカリ。


(あらら、話を聞こうと思ってたのに、こうも簡単に知りたいことが分かっちゃうなんて・・・)


ココは少しだけ仕事が楽になりそうだと思い、レイの部屋に入っていった。










To be continued...


次回予告

私は3年前、欲しいものを手に入れた・・・・。

でも、自分から手放してしまった・・・・。

私は何故ここに居るの?何故・・・・。

次回、『綾波レイ』。

鳴り響け・・・・・私のメロス?




(あとがき)

どうも〜黒き風デス。

ここで報告がありマス。

最近プライベートが忙しく、どうも月1更新が確定してきたみたいデス。 申し訳御座いまセン。

・・・・時間が無いんデス。


“F●12”もクリアしてないし、“P●Pのエヴァ”も出るし、“.●ack”も出るし、本業も忙しくなるし・・・・・・・とにかく時間が無い!!!


すいません、愚痴ってしまいまシタ。


しかもこの期に及んで、新作のアイデアも脳内で湧き上がって来てるんですよね・・・・

はぁ〜〜〜もっと早くこのサイトを見つけていレバ・・・・・



話は本編に移って、ケンスケの綾波に対する所業・・・・アヤナミストとしては許せませンネ!

綾波好きの読者様、必ずや無慈悲の鉄槌を下ろしますので安心してくだサイ!!

それでは短いですが今日はこれまで・・・

次回はヒロイン綾波レイを中心に話を進め、3年前の真実を詳細に迫ります。

それでは次回第4話『綾波レイ』をお楽しみだサイ。

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