―人を殺すのはそんなに難しかないさ。血の流れてるところに穴を空けりゃいい。
―きついのはその後よ。絶対に吐いちまう。まあ自分と同じ生き物殺すんだ、しゃあないな。
―それを乗り越えれりゃあ、戦争で飯を喰える。
―それでも狂っちまうやつは多いがね。ま、俺たちゃ所詮豚野郎だ。
―でもな嬢ちゃん、たま〜に居るのさ、なんとも思わないやつが。
―そいつらは決まって同じ目をしてる。・・・自分の命すら気にしない、死んだ魚のような目を、な。
傭兵 ケイン・平賀へのリポートのメモ
第二劇 『さあ、戦争をはじめよう』
presented by Bonze様
―NERV本部内、司令室
「以上が諜報部からの報告です」
サーティに関する報告を憎憎しげに聞くゲンドウ。まるで子供のような彼に比べ、冬月とリツコはいたって冷静だ。
「ふむ。どうも思うかね、赤木君。彼は非常に優秀なようだが」
「同感ですわ、副司令。少なくとも司令直属の黒いダイコンどもよりは礼儀をわきまえているようですわね」
「ふむ、やはり碇の言うとおりにエヴァの件を秘密にしたのはまずかったようだな」
「全面的に同意しますわ。さし当たって彼の行きつけの喫茶店に交渉に赴きたいのですが、許可をいただけますか?」
「ふむ、そうだな。それが良かろう。すぐに経理にそ「必要ない」・・・碇?何を言っている?」
「保安諜報部に命じてつれてこさせれば良い」
そのあまりに短絡的な返答に、他の二人と同席していた保安諜報部部長代理、山田太郎(仮名)はため息をつく。
「碇、お前は何のつもりでそんなことをほざいている?子供と侮った結果がこれだろうが」
「司令、そもそも司令がエヴァのことを、せめてものNERVの目的ぐらいは伝えるようにしておけば、面倒くさい事態にならなくて済んだかもしれないんですよ?」
「失礼ですが、諜報の面からも賛同できません。橘君は一流に手をかけ損ねたぐらいのエージェントなんです。その橘君を威圧感だけで失禁させるような者を相手にNERVの保安諜報部の二流三流で何とかはなりません」
ぼろくそに言われぐうの音も出ないゲンドウに三人はさらに追い討ちをかける。
「そもそも碇、お前がもう少し彼を気にかけていれば彼は今ここにいたかも知れんのだぞ?」
「サード・チルドレンの診断書を見ましたか?見てないでしょう?左目の失明に右目の視力低下。いじめで内臓破裂まで起こしたことがあるそうじゃないですか。少しは気にしたらどうだったんです?ほおって置いたからこそこの事態なんですよ?」
「諜報員を片手間でまいて軍事衛星の監視から逃げるような人物をどう捕らえるんです?そもそもいかにNERVといえど何の理由もなく他人を拘束は出来ないんですよ?チルドレンになれ、と言うのならその説明をする権利を部員に与えてくださればよろしかったのに。特務権限で拘束するにしても、ちゃんと事務総長他二名のサイン入りの許可書が必要なんです。当然ご存知でしょう?それとも用意してあるとでも言われるので?」
マッチロに燃えつきかけているゲンドウを、もうほとんど無視した感じで三人は会話を続ける。
「ああ、赤木君、構わんよ。こんな阿呆は気にせんでいいから交渉に行ってくれたまえ」
「はい、了解しました。ではこれから山田(仮名)部長と予定を組みますので、これで失礼します」
「副司令、私も赤木部長と折衝に向かいますので、これで失礼します」
「うむ、行ってきたまえ。出張ボーナスも用意しよう」
二人が司令室を出た後、マッチロを通り越して透け始めた感じのゲンドウに冬月は声をかける。
「おい碇、本当に赤木君とは何も無かったのだろうな?明らかに嫌われておるぞ。おい、碇?碇?」
⇒へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「ふんはあ!」
「ごふぁはあ!」
⇒ふゆつきのメガトンパンチ!
⇒きゅうしょにあたった!
⇒ゲンドウは609のダメージをうけた。
⇒ゲンドウはたおれた。
「ところで赤木さん」
「何かしら?」
「私の名前はいつまで山田太郎(仮名)なんでしょうか?」
「・・・たった今私が受け取った神(筆者)の電波メッセージによると、残念なことにそのままだそうよ」
「そんな!何故!?」
「何でもほとんど使わなくなるからだって」
「ひ、ひどい!橘君には名前があるのに!」
「野郎の名前なぞ考えても面白くない、だそうよ。まあいいじゃない。他の作品なんて、原作で本名があるのにメガネとかロンゲとか言われてる人もいるんだから」
「・・・誰のことです?」
「・・・誰だったかしら?」
メガネ&ロンゲ「「ひどい(っす)!」」
―翌日、ルーマニア
いつものように、シンジはカフェで紅茶を飲む。今日はセイロンティーといつものスコーン。知り合いの売春婦によるとイザベラは里帰りをしているとか。ああ、紅茶美味しいなぁ。
取り留めの無い思考を、鍛えられた野性の勘と紫の右目が停止させる。すぐさま情報解析をスタート。
「NERV、か。しつこいなぁ」
誰かのとこにしけこんじゃおうかしらん。などと不届きな思考をしてみるも、一応待つことにする。
何のために接触しようとしているのか、それを知るために。
「依頼、かな?いや、違うだろうな。NERVなら連絡手段を知る伝があるだろうし」
右目の解析結果を見る。
「一応その道の人間が二人、武器は昨日と同じ。一人は女性。彼女は・・・、素人か?武器はデリンジャーだけか。だとすると二人は護衛で話をしに来たってとこか。ふむ、服からコーヒーのにおい成分。コーヒー党か」
机の反対側を開け、注文をする。
「すいません。キリマンジャロを一つ。ブラックで。あとスコーン二つ追加」
さて、用意は整った。
リツコはサードを視界に入れる。
彼の対面に置かれたコーヒー。それを見て唖然とし、足を止める。
「どうされました?赤木博士」
足を止めた保安部員に命令を一つ。
「あなたたちはここで待機。何があっても動かないで。たとえ私が危なくなっても」
「な、何故です!?」
リツコは入れたてであろうコーヒーを指差す。
「この距離で飲み物が用意されてるわ。彼は私たちが来たことだけでなくその内容が交渉であることも既に認識してる」
その指摘に言葉を飲み込んだ保安部員に再度念を押し、彼女はサーティの正面へ座った。
「はじめまして。もう分かっているとは思うけど・・・」
「NERVの方ですね。はじめまして」
「ええ、昨日は失礼したわね。私はNERV本部所属の技術部長、赤木リツコよ。リツコでいいわ」
「心のこもらない謝罪など結構。リツコさんでよろしいですか?」
「え、ええ、それでいいわ。ええと、シ「これだけは言っておきますが」な、何かしら?」
「僕を本名で呼ばないでください」
「・・・どうしてかしら?」
疑問を投げかけるリツコ。だが
「それも話をする条件の一つと考えてください。守らないなら帰るまでです」
「わ、分かったわ。じゃあええと・・・」
「サーティと。サーティと呼んでください。みんなはそう呼びます」
「わかったわ、サーティ君。あなたに会おうとしていた理由について、説明しても良いかしら?」
「どうぞ、質問は最後にしますから」
リツコは嬉々として説明する。どうも白衣に金髪の科学者は説明が好きになる傾向があるらしい。
それはおいといて。
NERVの前身が“GEHIRN”という研究組織であったこと。
その所長が父親の碇ゲンドウであったこと。
使徒という生命体がセカンド・インパクトを起こしたこと。
NERVはその使徒を相手に戦う組織であるということ。
使徒を倒せなければサード・インパクトが起こってしまうと言うこと。
使徒に対抗するためにEVANGELION、通称エヴァを作ったこと。
現在そのエヴァのパイロットが二人しかいないこと。
そして彼にエヴァのパイロットの素質があるということ。
すべて話し終わり、心なしか恍惚とした表情のリツコを、覚めた目で見るシンジ。
「質問いいですか?リツコさん」
「え、ええ。構わないわ」
「では」
と一拍措いて
「失礼ですが、NERVに戦争経験者は何人いらっしゃるので?」
「へ?」
素っ頓狂な声を出し、赤くなるリツコになおも畳み掛けるように重ねる。
「ですから何人、戦争に従事した兵士か指揮官はいらっしゃるんですか?と聞いてるんです」
「え、ええと・・・」
そこで思い出そうとし、答えが一つしかないことに気づく。
「保安部の一部と、作戦部長、及び作戦副部長だけね」
「はぁ!?」
今度はシンジが、素っ頓狂な声を上げた。
「マジですか?」
「ええ、マジだけど・・・何か問題が?」
やれやれとばかりに首を振り、
「話になりませんね。そんな組織に所属するわけにはいきません」
「・・・どうしてかしら?」
「どうして?そんな質問が出る時点でもうダメダメですね」
大きなため息を一つ、シンジは語りだす。
以下、二人の会話のやり取りをご覧ください。
「いいですか、リツコさん。戦争の仕方、つまり戦術が分からなければ、殺し合いなどもってのほかです。なぜか?それはそのエヴァとか言う兵器のパイロットが素人だからですよ」
「どういう意味かしら?」
「リツコさん、そのエヴァとか言う欠陥兵器はパイロットを選ぶんでしょ?」
「そうだけど・・・欠陥は止めてほしいわね」
「何を馬鹿な。兵器とは拳銃のように【誰が使っても同じ攻撃力の出る戦争の道具】のことですよ?パイロットを選ぶ時点で兵器として欠陥品です」
「う・・・」
「つまり、けんかもしたことが無いような子供が選ばれてもおかしくないということなのでしょう?そんな人間にどんな戦い方を教えてるんです?」
「ええと、その・・・」
「武器は何です?まさかナイフとか銃じゃないでしょうね?ナイフなんて鍛錬の必要なものを使わせてることは無いですよね?」
「・・・銃のほうはインダクションモードがあるから問題ないわ」
「つまりナイフを使ってるんですね?馬鹿ですか?あなた方は。で、そのインダクションモードって?」
「・・・機械制御により自動で相手に照準を合わせるシステムよ」
「それこそ阿呆の極みです。パイロットの意思でエヴァは動くんでしょう?そのエヴァの両腕の制御をパイロットから奪ってどうするんです?とっさの判断が出来ないじゃないですか」
「・・・それは、その、あの」
「まさか反乱防止?ばかばかしい。維持にすごい費用がかかりそうな欠陥兵器、誰が盗むんです?」
「いや、そのね、その」
「何相手に訓練されてます?まさか人間?愚かのきわみですよ。どんな形か分からないんだから、ワニとか犬とかそういうのと訓練すべきでしょう?違います?」
「ああ、ううあ」
「うう、じゃないです。トップは、うちの父は何してるんです。もっと戦闘のスペシャリストを戦自なりUNなりから招くべきです。ていうかリツコさん、兵器周りと戦闘周りを科学者で固めて戦争がうまくいくとでも思ってるんですか?ろくに殴りあいも出来なさそうなあなたが?」
「・・・・・・」
「シビリアンコントロールが戦場でうまくいくとでも?馬鹿も休み休み言ってください。戦争できる人間だけが前に出て、科学者はバックアップに徹する、それが理想の戦争組織です」
「・・・・・・・・・」
「まさか、たかが科学者に過ぎないうちの父が実戦に口を挟んだりはしないですよね?いや、そんな権限は与えてはいないですよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「まさか与えてるんですか?大きく見積もっても喧嘩ぐらいしかしたことが無いだろう科学者が実戦に口を挟むんですか!?阿呆ですか?阿呆でしょう?阿呆なんでしょう?いや、阿呆に違いない!そんなんで勝てるとでも思ってるんですか?ゲームじゃないんですよ?現実ですよ?リアルですよ?手元にリセットボタンも電源ボタンも無いんですよ?ポーションもエーテルもフェニックスの羽も無いんですよ?ベットで休んでも全快なんてしないんですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ていうか素人を戦場に出すんですよ?その素人にナイフ持たせて勝って来い?馬鹿です。馬鹿のきわみですよ。素人に一番適した武器は鈍器ですよ?スコップを用意しろとはいいませんけど棍棒は?棍棒は無いんですか?殴るのはまさか拳だけ?超々長距離から攻撃する敵が来てもおかしくないのに手段がナイフと豆鉄砲と素手?殺す気ですか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「銃といいましたが弾丸は何です?何?劣化ウラン?何考えてるんです?あんな放射能満載な物体を市街地でばら撒く?脳みそはついてますか赤木博士?ええ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何で武器を作ってないんです?何故作るときにプロの意見を聞かないんです?全部自分たちで何とかなるとでも?それとも赤木博士、あなたいきなりナイフ渡されてワニやゴリラを倒せるんですか?出来ないでしょ?子供ならなおさら出来ないに決まってるじゃないですか!?もういっそこの場で死ぬのはいかが!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぼろくそに言われ、リツコはすごすごとその場を立ちさたった。
―NERV本部司令室
「以上が彼との交渉の結果です」
交渉と呼べるのか?な報告を、リツコは苦渋に満ちた声終えた。
その報告を、ゲンドウは苦々しげに、冬月とミサト、そして保安部長山田(仮)は感心したような顔をする。
「ふむ、葛城君、山田(仮)君、彼をどう思うかね?」
「ぜひとも彼を引き入れたいですね。理にかなった指摘ばかりです。14でこれだけの意見を言えるなら、使徒戦でも大きな戦力となるでしょう」
「(もう山田(仮)で決定か。はあ)私も葛城部長と同意見です。彼は今戦争に必要不可欠です。さらにサード・チルドレンとしてうちに来てくれるなら、現場でのチームリーダーになりえます。より一層効率のいい戦果を上げられるでしょう」
まあもっともエヴァを動かせるなら、ですが。と付け加える。
「何としても引き込みたいが、どうあっても無理なのかね?」
冬月は考える。彼がいれば勝率は一層高くなるだろう。計画にしても、生き残れなければ意味は無い。
「無理、でしょうね。私たちが所詮は学者の集まり、という状態では相手にしてくれ無さそうですし。拘束するにしても捕まらないので」
無言になる司令室。何でこの髭はなにもいわんのよ?って感じの冬月他三名。
沈黙を破るためか、ミサトは手を上げた。
「あの、よろしいでしょうか?」
「なにかね?」
もはや司令としての立場すら無視されている。他のメンバーも気に留めない。
「先ほどのシン・・・っとダメなんでしたね。サーティ君の指摘した点を、作戦部から正式に上申させていただきます」
「というと?」
「エヴァの武器とチルドレンの訓練の件です。使徒戦に有効な指摘ですから、今すぐにでも採用し、実行に移したいのです」
「つまり戦自やUNから協力者を招くと?」
「はい、アドバイザーや訓練要員として何人か招きたいのですが」
「ふむ、そうだね。確かに使徒に勝利することは急務であるし、彼が言っていた『超々長距離攻撃手段を持っている可能性がある』という指摘も大いにうなずける。もしかしたら大気圏外からの攻撃、などという可能性も否定は出来んしな。いいだろう葛城君、人選は卒らに任せるから早速「必要ない」・・・・・・碇?お前正気か?」
もはや狂人扱いである。まあ、妻への愛に狂っているともいえるが。
「協力者を招く必要はない。武器の方は赤木博士と協力して開発を「お言葉ですが!」・・・む、何だ?」
「司令はどうやって、どのような手段で使徒を倒せばいいとお考えでしょうか?」
「それはエヴァを使って「ですから!」・・・ぬ」
「エヴァを動かすのは子供です。人間相手ならともかくどんな動きをするかも分からない相手にボクサーのセコンドのように『殴れ』だの『蹴れ』だので戦わせることが出来るとでも思ってるんですか?ボクサーにしたって長い訓練を必要としているんですよ?」
「それはなんとか・・・」
「何とかできればやっています!なんとも出来ないから、なんともしようとしないから先の戦いでレイは、ファースト・チルドレンは大怪我を負ったんです!」
「あ、そのだな・・・」
「訓練がそもそも間違っている上に足りないと前々から申し上げていたはずです!相手は使徒です!人間ではないのですよ!?銃で撃っても死なないんです!」
「ああ、いや・・・」
「だから基本的にエヴァで接近戦をするか、エヴァでATフィールドを中和して、その間に別の兵器で攻撃するしか無いんです!」
「だから君が・・・」
「私は“作戦”指揮官です!銃の腕や一対一の戦闘、作戦の立案にならそれなりの自身はありますが、特殊戦闘に関しては門外漢です!だから前々から人手が足りないと申し上げているではありませんか!!」
「葛城君、少し落ち着きたまえ」
冬月の言葉に自分が机に身を乗り出していたことに気づき、ミサトは姿勢を正した。
「失礼しました司令。ですがこの上申は飲んでいただきます」
「もちろんだとも葛城君。人選は君に一任しよう。そのまま進めてくれたま「おい、冬月!」・・・碇、ちょっとこっち来い」
ゲンドウを部屋の隅に連れて行き、冬月は小さな声で話し出す。
「いいか碇、よく聞け。彼女の言うことはもっともだ。俺も飲むべきだと思う」
「だが冬月、エヴァの機密や計画の・・・」
「だから、このままではその計画にたどり着く前にすべてを失ってしまうのだぞ?」
「ぬ・・・」
「それにエヴァの機密にしたって葛城君では奥までは行けんし、戦争屋の彼らに技術のことがわかるものかよ」
「それは確かに・・・」
「だろう?まずは勝ち残らねばならんのだぞ、使徒にもSEELEにも。それを良く考えろ」
「・・・・・・そうだな、確かにそうだ。分かったよ冬月」
話が終わり、二人が定位置に戻る。
「葛城君、先ほどの上申はすべて飲もう。すぐにでも取り掛かってくれたまえ」
「は!了解しました!」
ミサトは振り返り、何かを思い出したかのように向き直る。
「もう2・3、よろしいでしょうか?」
「うむ、何かね?」
答えるのは冬月。なんていうか腹話術師と腹話術人形のようだ。だとしたら趣味の悪い人形だが。
「サーティ君の指摘にありました、司令、副司令、および赤木博士をはじめとする科学者の指揮権の剥奪をお願いします」
「「な!」」
さすがの大問題に二人は声を上げた。リツコと山田(仮)は、何故騒ぐのか分からないという顔をしている。
「葛城君、それはさすがに・・・」
「いえ、飲んでいただきます」
それでもミサトはきっぱりと断言した。
「司令、副司令、赤木博士、失礼ですがフォーメーションの指示などはできますか?」
「む」
「それは・・・」
「出来るわけないわね。私は指揮権なんて無くても問題ないと思うけど」
反応はすべてNo。まあ当然である。所詮は学者であり戦争屋ではない。
「しかしだね、葛城君。君がいない場合はどうする?」
「日向君がいます。彼は堅実さでは私よりもずっと優秀です」
「彼も動けない場合はどうするねその場合はさすがに・・・」
「その場合は、これから招き入れる戦自やUNの方に指揮を任せます」
「いやしかしだね、使徒に関してはNERVにだね・・・」
「失礼ですが司令たちの素人の指示では被害を増やすだけです。専門家に任せた方がいいです」
そこで息を一つつく。
「司令、副司令、我々NERVの仕事は使徒を倒すことです。使徒戦の名誉や利権をむさぼることではありません」
「う、いやしかしだね・・・」
「負けてしまっては元も子もないのです。最善な手段を取る義務が、NERVにはあるはずです」
「ぬう・・・」
「 もうご存知かとは思いますが、私は復讐のためにここにいます。ですがNERVのものは大体がそうではないでしょうか」
「む、それは・・・」
「二度と起こしてはならないのです、あのセカンド・インパクトのような惨劇は。そのための最良の手段です。餅は餅屋。けだし名言だと思いますが」
「ふむ、そうだな・・・」
「加えてそのような事態に陥った場合、戦自やUNの指揮官が指揮を執ったということで、それぞれへ恩を売ることも出来るかと」
「・・・なるほどな」
冬月は息をゆっくりと吐いた。
「いいだろう、その件も認めよう。後で書類を発令所のメンバーに私から回しておく。「冬月!いくらなんでもそれは!」碇、聞け」
再度深呼吸。
「碇、葛城君の言い分はもっともだ。それともなにか?お前は軍人よりも的確な指揮が取れるのか?軍人よりも的確な作戦が立てられるのか?」
「む、それは・・・」
「無理だろう?私だって無理だ。それにな碇、例の件にしてもとりあえず戦争に勝たねば始まらん。違うか?」
「・・・そうだな」
「そうだ、では納得したな?すまんね葛城君。さっきも言ったが書類は後で碇の名で発令所のメンバーに渡しておくよ」
「は!確かに!」
振り返り、ドアの前でもう一度向きなおる。
「では、失礼しました!」
ミサトは一礼をし、司令室から出て行った。
「では、私はこれから打ち合わせがありますので、失礼します」
山田(仮)も退室する。
静寂が戻った司令室。リツコが口を開く。
「司令、シンジ君、いえ、サーティ君に関してですが、報告が」
「なんだ」
「ルーマニアを出たようです」
「なに?ならばどこに?」
少しの沈黙の後、驚きの事実。
「日本です。空港での発見報告後、見失いました」
To be continued...
(2006.08.12 初版)
(2006.08.20 改訂一版)
(後書きって必要なのか?)
本文内に出てくるリツコへのマシンガントークは私の疑問でもあります。
実際不完全すぎるんですよね、NERVはすべてにおいて。
まあ、所詮は科学者ってことでしょうけど。
優秀な指揮官には優秀な補佐官が必要です。
そういった意味では日向マコトは副官としては失格もいいところでした。
上司の作戦のミスの穴埋めをするのが副官の仕事のはずなのに、意見をかけらも言わない。
まあ、かなわぬ恋に尽くす自分に酔ってるんでしょう。
今作品では真面目に各人の立場を考えてみました。
たとえば、ミサトは原作のように無能で本当に作戦部長になれるか?
まあ、無理でしょう。いかにSEELEとはいえ、所詮は裏の組織。表にしても成金の集まりに過ぎないのですから。
他の軍人が納得するとは思えません。
まあ、そんな感じでマコトにせよ加持にせよリツコにせよ誰にせよ、真面目に考えると原作のひどいことひどいこと。
きっちり考えてキャラを組みなおしました。
で、下が結果。
おばかなおとな編
碇ゲンドウ
基本スタンスは臆病者。色つきのサングラスと顔を覆う髭から考えて、対人恐怖症の兆候がうかがえる。
碇ユイにこだわったのはおそらくコンプレックスのため。「人に愛されない」と思い込み、唯一受け入れた碇ユイにこだわった。
他人を理解しようとせず、自分を受け入れないものを極端に排除しようとする傾向あり。
典型的なオトナコドモ。方向性は違うが、碇シンジに非常に似通った性格をしている。
冬月コウゾウ
碇ユイへの横恋慕、ではさすがに説明が出来ない。ゲンドウの思惑に乗ったのはおそらく好奇心から。
『天才』碇ユイの研究の結果に興味があったのだと思われる。
研究を最優先事項にすえる典型的な偏差値人間。
葛城ミサト:
作戦立案能力はおそらく高い。しかし作戦指揮能力は低く、SEELEによるマインド・コントロールの可能性あり。
単体戦闘力は高め。公私の区別を付けにくい性格。
赤木リツコ:
彼女がゲンドウを愛していた可能性は低いと考えられる。おそらくは洗脳の賜物。
愛情と憎悪は正反対なので、ある程度の洗脳と条件付けで反転は可能。
愛、ではなく母親へのコンプレックスを愛人をすることで満足させていた節がある。
彼女がNERVにいたのはMAGIのためと思われる。
NERVから離れられば、赤木ナオコを超える可能性あり。
なお、プライドの高い人間ほど洗脳はかかりやすい。
加持リョウジ
能力は二流ぐらい。評価は三流ぐらいと考えられる。
停電事故への関与や戦自のNERV侵攻のための地図などを提供していた可能性あり。
SEELEや内調にとってはおそらく目をひきつけるためのおとりか道化だったと思われる。
NERVでの評価は微妙。学者に過ぎないゲンドウがトップなので、おそらく一流だと思われていた。
好奇心で死ぬタイプ。
こんな感じでは、と考えています。他は次回。
作者(Bonze様)へのご意見、ご感想は、 または まで