因果応報、その果てには

第二話

presented by えっくん様


 備品が何も無い、殺風景な小部屋があった。部屋の四方の壁には不可思議な光を放つ発光物があり、点滅を繰り返している。

 前兆も無く、突然部屋の中央部の空間に裂け目が出来た。そしてその裂け目から、蒼銀の髪の少女を抱いた黒髪の少年が現れた。

 ネルフの格納庫から亜空間転移をしてきたシンジとレイだった。レイは気を失っていて、シンジの頭の上にはユインが乗っていた。

 シンジとレイが転移してきたのを受けて、不可思議な光の点滅が消えて通常の照明が点灯した。

 同時に白衣を着た看護婦が二人、ストレッチャーを押しながら部屋に入ってきた。


「お疲れ様です。予定通りに、国連軍から出動要請が入りました。『天武』の準備は出来ています。艦長が連絡を待っています」


 看護婦の一人が、シンジに状況を伝えた。

 シンジが亜空間転移してきたのは、太平洋の日本近海の海中にある潜水空母の艦内である。


「分かりました」


 そう言って、シンジはレイをストレッチャーに優しく横たえた。


「応急処置はしましたが、この子の治療と検査をして下さい。絶対安静の状態から連れてきたので、確認が必要です。

 半日は寝ていると思いますが、起きたら状況が判らずパニックになる可能性もありますので、念の為にユインを置いておきます」


 ネルフでの映像を見ていた看護婦は、シンジの言葉に頷いた。


<ユイン。頼んだよ>

<分かりました。マスター>


 部屋を出ると、シンジは『天武』の格納庫に向かって走り出した。


「艦長。ボクです。これから『天武』を起動します。発進準備をして下さい」

『了解です。『天武』の起動を確認したら、緊急浮上して『キャリア』と『ワルキューレ』四機を発進させます』

「御願いします」


 通路に付いているマイクとスピーカを経由して、シンジはこの潜水空母の艦長と話しをした。


 この潜水空母は、北欧連合では無くロックフォード財団に所属している。

 機動兵器『天武』とその運搬用航空機『キャリア』。そしてVTOL型戦闘機である『ワルキューレ』二十機を搭載している。

 水中用の兵器としては、『マーメイド』を三十機も積んでいる。この空母一隻で、一定エリアの制空権と制海権の確保が出来る。

 対外的には北欧連合の軍所属だが、実際にはロックフォード財団が運営しており、戦闘機パイロットも財団に雇われた傭兵である。

 そして、この潜水空母の管理者は”シン・ロックフォード”となっている。

 格納庫に着いたシンジは、パイロットスーツに着替える事無く、そのままの姿で『天武』に乗り込んだ。

(ネルフの格納庫から潜水空母に移動したと、ばれない為の小細工)


 『天武』 それは、シンジが所属する『ロックフォード財団』が開発した『対使徒秘密兵器』であった。

 開発責任者は”シン・ロックフォード”。テストパイロットも兼任。

 開発費用は北欧連合では無く財団が出しており、いわば財団の秘密兵器の扱いになっている。

 全長は二十m程度。人型をしており、搭乗人員は一人。ある能力が無いと、起動さえ出来ない。

 シンジは『天武』の胸の部分の操縦席に乗り込むと、体を固定させてヘッドインターフェースを頭にセットした。

 すかさず内蔵コンピュータがパイロットの識別を行い、自動起動シーケンスが起動した。


<思考制御システム起動。…………同調率80%>

 『天武』の内蔵コンピュータからの報告が、音声では無くパイロットの脳に直接入ってきた。


<霊力コンバータ起動。変換率10%……20%……30%。待機モードの為、30%で固定>

 自分の霊力が『天武』に流れ込むのを感じた。体調は良い。大丈夫と自分に言い聞かせた。

 『天武』での実戦はこれが初めてだが、十分な訓練は行った。不安を無理やり押さえ込んだ。


<亜空間ジェネレータ起動。霊力混合システム動作正常。亜空間ジェネレータのリミッタは現在20%>

 亜空間ジェネレータが起動し、亜空間位相差エネルギーが霊力コンバータの出力と混合、莫大なエネルギーを発生させた。


 水力発電は、高位の位置にある水の落下エネルギーを用いて電力を産み出している。

 それと同じで、高位の亜空間と我々の生きている空間とでは位相差がある。

 その位相差エネルギーを抽出し、動力源としているのが亜空間ジェネレータである。

 この世界だけに限定して表現すれば、永久機関と言える。

 さらに、亜空間ジェネレータの出力に搭乗者の霊力を混合する事により、エネルギー総量を数倍に高める事が出来る。

(そういう設定です。納得して下さい)

 シンジは”ある遺産”を受け継ぎ、その技術を研究して、この機構を完成させた。

 亜空間ジェネレータは完全なオーバーテクノロジーであり、最高機密に指定されている。

 内燃機関では無い為に、燃料タンク等は不要である。この為に体積の割には高いエネルギー供給が可能になっている。


<慣性中和装置、動作正常>

 慣性中和装置も、”ある遺産”に残されていたものだ。

 当然、現在の技術で製作出来る物では無い。オーバーテクノロジーに分類される技術だ。


<霊子シールドシステム、動作正常>

 『天武』は亜空間ジェネレータの莫大なエネルギーを使用する事で、体の周囲にシールドを張る事が出来る。

 N2爆弾の直撃はともかく、ミサイル等の通常兵器では被害を受ける事は無い。

 このシールドによる防御力が無かったら、人型の兵器など作る事はなかったであろう。


<粒子砲システム、動作正常>

 『天武』は人型という事もあり、通常は手に持つ武器で攻撃を行う事を前提としている。

 天武本体に唯一装備されている長距離用武器が粒子砲である。頭の部分と、両肩の三箇所にある。

 両肩の二つは出力が低い代わりに連射が可能な速射型であり、頭の部分には溜めが必要だが大出力の粒子砲が装備されている。

 エネルギー発射兵器の為に、発射数の制限は無い。


<亜空間制御システム、動作正常>

 シンジとレイは、ネルフの地下から潜水空母へ亜空間移動を行った。

 今回は潜水空母の亜空間制御システムを使用したが、同等の制御システムが『天武』にも搭載されている。

 亜空間制御は単なる空間移動に止まらない。応用で、どんな事が出来るのかは追々明らかになるだろう。


<飛翔システム、動作正常>

 天武は亜空間ジェネレータの出力を利用した飛翔システムを備えている。

 体型もあって高速移動には適さないが、飛翔システムにより機動性は格段に向上している。航続距離の制限は無い。


<制御システム。オールグリーン>

 内蔵コンピュータの起動最終報告がシンジの脳に伝達され、操縦席にある全方位モニタに情報が表示された。

 『天武』の起動が済むと、右手に槍、左手に大型の盾を装備してキャリアに乗り込んだ。


「天武の起動完了! 発進!!」


 シンジからの指示を受け、艦長が潜水空母を浮上させた。

 浮上後、甲板部分が左右に開き、『天武』を搭載した『キャリア』と『ワルキューレ』四機が垂直に上昇していった。

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 ネルフ:発令所

 マヤの操作で中央モニタが二分割され、右側に最大望遠で撮られた映像が映し出された。左側には地上の使徒が映っている。

 右側のモニタに映っているのは、一機の大型輸送機と四機の戦闘機だ。

 まだ遠くて輪郭がはっきりしないが、大きさは判断可能だ。周囲に他の機影は無い。


「あの輸送機の中に格納されているの? そうだとすると、どう見ても二十〜二十五m程度ね。どんな兵器が出てくるのやら」


 画面に出ている航空機を見て、秘密兵器とやらの大きさをリツコが推定した。


「どうせ使徒は、EVAじゃ無いと倒せないんでしょう。やられる為にやって来るだけでしょうに。

 それより、シンジ君はまだ見つからないの? 手遅れになるわよ!!」


 ミサトはモニタを一瞥したが、興味をあまり示さなかった。

 いつ天井を突き破って使徒がジロフロントに侵入してくるのかと、そっちの方を焦っているのだ。

 迎撃手段はシンジをEVAに乗せるしか残されていないので、シンジ捕捉の連絡を焦りながらも待っているのである。


「高度5000mで、輸送機から何かが分離して降下を開始しました!」


 マヤの報告が入って、輸送機から降下しているものに映像が切り替わった。


「人型タイプ? あの高さから降下するつもりなの?」


 モニタを見たリツコが呟いた。そして、モニタに映っている機体を詳細に観察した。

(右手に槍、左手に盾を装備か。まさか人型の兵器とは思っていなかったわね。やたらと甲冑をイメージしたデザインね。

 パラシュートらしき物は無いし、あの寸法ではジェット噴射機構を備えているとは思えない。どうやって降りるつもりかしら?)


 モニタに映っている機体は体を横にして、自然落下していた。

 だが、高度300mで機体の向きを垂直に変え、背中からウィングを広げて悠々と地上に降り立った。


「なっ! なんであれだけで、落下速度が落ちるの!? マヤ、解析は!?」

「……あの背中のウィングから、何らかの粒子が出ているのは確認できましたが微量です。

 何の粒子か解析は出来ませんが、あの質量の落下速度を抑えられる量では無いと思われます。

 使徒の後方約3000m地点に降下。使徒の反応はありません。不明機体の発生エネルギーは使徒の約1.8%です」


 画面には、右手に槍、左手に盾を持った甲冑を連想させる機体が映し出されていた。

 大きさを使徒と比較すると、大人と子供ぐらいの差はあるだろう。地上に降り立ってから初めて気が付いたのだが、

 両肩には北欧連合のマークが刻まれており、胸には『天武』と行書体で書かれていた。


「あの機体は国連軍じゃなくて北欧連合の所属なの!? 名前が『天武』!? なんで日本語で書かれているの!?

 マヤ、上空の航空機の国籍マークを確認して!」

「は、はい……確認出来ました。上空の輸送機と戦闘機にも北欧連合の国籍マークが確認出来ました。

 それと、輸送機の胴体側面に不明な長いパイプらしき物が確認出来ました。上空の四機は最新鋭機『ワルキューレ』です。

 間違いありません!」

「世界初の粒子砲装備のVTOL式戦闘機『ワルキューレ』か。使徒相手にどこまで有効かしら。

 輸送機の長いパイプは気になるわね。……まさかレールガン!?」

「そこまでは判断出来ません。まだレールガンを正式武器で実用化した国はありませんし」

「まあ良いわ。様子を見ましょう。あの『天武』と書かれた機体が、どこまでやるのか見物させて貰いましょうか」


 シンジを初号機に乗せない限り、ネルフに出来る事は無い。そして今は、保安部と諜報部が総出でシンジの捜索に当たっている。

 リツコとマヤは『天武』に興味を示し、解析を進めていった。


「何の冗談だ?」


 苦虫を噛み潰したような顔で、冬月が呟いた。地上に降りた『天武』を見て、昔の記憶が呼び覚まされていたのだ。


「何の事だ?」

「あの機体の外観だよ。あの外観は二十世紀末に流行ったあるアニメゲームに出てくる兵器とほぼ同じだ。

 大きさの違いはあるが間違い無い。北欧連合は冗談で作ったのか? しかも『天武』だと? 名前も似たようなものでは無いか」


 この非常事態に、なんでこんなボケた事を言わねばならぬのだと思いながらも、冬月は返事をした。


「アニメゲームだと?」

「ああ。搭乗者の霊力を動力源にするという、ふざけた設定の機体だったがな」


 ゲンドウと冬月が会話している最中に、画面の天武が煙幕を噴き出し始めた。


「煙幕? なんで煙幕なんか出すのかしら? ……まさか!?」


 天武が煙幕を噴き出すのを見て、リツコは訝しげに思った。だが、シンジが居なくなった時に煙幕があった事が連想されたのだ。

 それに”ネルフだけが、使徒迎撃の手段を持っている訳では無い”と、シンジが言った事も思い出した。


「煙幕にはセンサを無効化する成分が含まれているようです。あっ。煙幕の噴き出しが収まってきます」


 マヤの報告が続いた。

 突然、天武の頭に付いている目らしきものが赤く光った。それに伴い、マヤの前にあるモニタのグラフが急激に変化した。


「パターンオレンジを検出。発生源は画面の機体です。エネルギーレベルが急上昇。

 使徒の32%程度のエネルギーを発生させています」

「あの体積で、使徒の32%ものエネルギーを発生させていると言うの!?」


 マヤの報告に驚いたリツコは、引き続き天武の情報収集を続けるようにマヤに指示した。

 あの機体はリツコの科学者としての関心を惹くには十分なものだった。

 エネルギー値に反応したのか、使徒は天武の方を振り向いた。


「使徒が、上部装甲板への攻撃を中止しました。北欧連合の機体に反応したものと思われます」

「何ですって!!」


 日向の報告にミサトが叫んだ。使徒が攻撃を中止し、天武に反応した事に驚いたのだ。

 画面に映っている天武は、盾を正面に構えると使徒へ向けて走り出した。


「「「早い!?」」」


 無骨な外見からは想像も出来ない滑らかな動きで、天武は使徒に接近した。

 地表を走って移動しているが、ほとんど足が地に付かずに飛んでいる状態に近い。

 使徒まで約800mに近づいた時、天武は肩から粒子砲を三連射した。

 三連射された粒子砲は使徒を直撃するコースだったが、赤い六角形の形をしたシールドで遮られた。


「ATフィールド!? 目視が出来るなんて! でも、あれある限りは攻撃は一切効かないわ!!

 あの機体に使徒のATフィールドが破れるとは思えないけど、動きは素晴らしいわ。是非、資料を貰って研究したいわね」


 天武の動きを見て、リツコが正直な感想を漏らした。観察していながらも、天武のデータ解析は進めている。


「リツコ! どうせ、あのポンコツじゃあ、使徒は倒せないでしょう! そんな事より、シンジ君はまだ捕まらないの?」

「シンジ君は私じゃ無くて、保安部と諜報部に聞いてちょうだい。今は解析で忙しいの。邪魔しないでくれる」

「リツコ!?」


 ミサトの抗議を無視して、リツコは解析を続行した。

 あの機体では使徒にダメージを与えられないだろうが、使用されている技術に興味を引かれたのだ。

 うまくいけば、EVAにも応用出来るかもしれないと思っている。ここら辺は科学者としての性だろう。


 天武の粒子砲をATフィールドで防いだ使徒は、反撃に転じた。使徒の手から、光のパイルが天武へ伸びた。

 天武は盾を傾け、攻撃を正面から受けるのではなく、受け流す事で対応した。

 盾の表面に張られた霊子シールドに沿って、使徒の光のパイルが流れていく。

 使徒に接近した天武は右手の槍を突き出すが、これも使徒のATフィールドで弾かれた。


 天武の攻撃は肩の粒子砲と槍の攻撃の二種類だが、使徒のATフィールドで阻まれて届かない。

 使徒の攻撃は腕から伸びる光のパイルだが、天武の持つ盾で受け流されて届かない。

 天武と使徒。交互に攻守を切り替えながら攻防を繰り返した。

 大きさの違いもあり、使徒の攻撃は上から下へ向う射線であり、地上装甲板の被害は増加の一途を辿っていた。

 表面上は互角の戦いのように見る事も出来たが、リツコは盾の損傷に気が付いていた。


(あの使徒の攻撃を半分以上は回避出来るなんて、あの機体の動きは大したものだわ。

 でも、あの盾にはダメージが蓄積している。あと数回攻撃を受ければ、盾は持たないわね。

 そうなれば、あの機体は身を守るものは無くなり、決着が付くわ。

 でも使徒の攻撃をあれだけ逸らせるなんて、盾は何の材質で作られているのかしら? 興味深いわね)


「そろそろ終わりだな」

「ああ」


 リツコと同じ事を、ゲンドウと冬月も考えていた。

 だが、その後はどうする? シンジが見つからない以上、ネルフに出来る事は無い。


「まだ、シンジ君は見つからんのか? あの機体は良くやっているがジリ貧だ。もうじき撃破されるだろう。

 その後は、またここを狙ってくるぞ。どうするつもりだ?」

「…………」


 ネルフの戦力はEVAしか無く、パイロット二名共に行方不明の状態だ。迎撃する手段が無い。

 ゲンドウが答えられない事に、冬月は苛立ちを感じていた。その時、今までと違う動きが、モニタに映し出された。


「また煙幕!? 逃げようって言うの?」


 天武が煙幕を噴き出しているのを見て、ミサトは当然かという表情を浮かべた。

 使徒相手にここまで粘ったのだから、その実力は認めよう。だが、倒せないのであれば意味は無い。

 天武が逃げるのは当然だと思うが、その後はネルフはどうすれば良いのか? シンジが見つからないと、打てる手は無い。

 ミサトが考え始めた時、今までに無い衝撃が発令所を襲った。

***********************************

 天武の操縦席に座っているシンジは、少し焦っていた。

 こちらの攻撃は一切効かず、敵は予想を上回る出力で攻撃を仕掛けてくる。

 あの使徒と呼ばれる敵の発生エネルギーは『天武』の三倍以上だ。

 まだ粒子砲の高出力放射はしていないが、こう接近戦ではエネルギーを溜める時間が稼げない。

 肩の速射型粒子砲が効くとは思っていなかったが、牽制にもなっていない。

 槍の攻撃も不可思議なシールドで防がれた。槍にかなりの負荷がかかっており、槍が壊れる危険性も出てきた。


 それに、あの光のパイルの出力が問題だ。

 想像以上にエネルギーが高く、霊子シールドを盾に優先的に回しているが、そろそろ盾の限界が近い。

 敵は至近のN2の爆発にも耐えている。苦戦は覚悟していた。

 問題なのは、あの不可思議なシールドだ。あれさえクリアすれば、攻撃は当たる。

 ワルキューレの粒子砲や輸送機に搭載しているレールガンでは、使っても無駄と判断していた。

 こうなると、通用するのは最後の切り札のみだろう。

 今までの戦闘から、敵のエネルギー分布の解析は終了している。

 胸の赤い玉が最も高いエネルギーを持っている。そこが弱点かと考え、シンジは内蔵コンピュータに命令を出した。


<煙幕展開!! 敵のシールドの前後を亜空間接続!!>


 煙幕が噴き出されて視界が遮られるが、使徒も天武も気にもかけない。

 お互い、相手の存在そのものを感じて戦っているので、視界が遮られても戦闘は続行している。

 煙幕はネルフの目を誤魔化す為の手段に過ぎない。


 使徒は常時ATフィールドを張っている。

 そのATフィールドの前後が亜空間接続されたのを確認すると、天武は使徒に再接近して、槍を赤い玉目掛けて突き出した。

 今までであれば、その槍はATフィールドで遮られ、使徒まで届かないであろう。

 だが、ATフィールドの前後を亜空間接続されている今は違った。

 槍の先端は、ATフィールドの手前で姿を消した。そして亜空間接続されているATフィールドの奥側に姿を現した。

 そして使徒の赤い玉を槍が貫いた。槍の先端が使徒の背中から現れる。

 天武は槍を引き抜いた。引き抜くと同時に、後方にジャンプして使徒と距離を取った。

 次の瞬間、使徒は膝をついた。今まで何度攻撃してもATフィールドに阻まれたが、今度は確実に使徒にダメージを与えた。

 だが、これが敵の致命傷であるとは、誰も保証はしてくれない。まだ警戒は緩めない。


 使徒が顔をこちらに向けた時、天武の内蔵コンピュータから警告が入った。


<敵のエネルギーレベルが急上昇。危険!>

<最後の攻撃なのか!? まさか自爆!? 霊子シールド出力最大!!>


 シンジは内蔵コンピュータに指示をすると、危険を回避しようと慌てて後方に飛び下がった。

 次の瞬間、使徒は自爆して爆風と衝撃が周辺に撒き散らされた。

***********************************

 ネルフ:発令所

 画面に映っている煙幕の中を十字型の閃光が走り、大きな衝撃が発令所を襲った。


「どうしたの? あの天武とやらが爆発したの?」


 ミサトは素っ気無い口調で青葉に確認した。使徒を倒せるのはEVAだけだ。天武が負けるのは確定だと思っていた。


「違います!! パターンオレンジは健在。パターンブルーが消滅です!!」


 驚愕の顔で青葉が報告した。その報告を聞いた発令所の全員に戦慄が走った。


「まさか!?」


 ミサトが叫んだ。

 今までの戦闘を見て、天武の攻撃が悉くATフィールドで防がれているのを見ていた。

 敗北するのは天武と決め付けていた。そもそもEVA以外で使徒が倒せるなんて、想像さえしていなかった。


「どうやったの!?」


 リツコが叫んだ。

 天武のビーム兵器と槍の攻撃は、観測によって出力値が計算出来ていた。

 あの出力では、どうあがいてもATフィールドは破れないはずだ。


「「馬鹿な!?」」


 冬月とゲンドウが口を揃えて叫んだ。

 ATフィールドは、同じATフィールドでしか破れない。そう信じている二人は天武が使徒を倒す事など想像さえしていなかった。

 発令所のメンバーが呆然としていると、煙幕の効果が切れて画面に地上の映像が映し出された。だが、天武は見当たらない。


「天武は上空です。通信が入っています」

「繋いで、画面に出してくれ」


 日向が操作を行うと、格納庫で行方不明となったシンジの上半身が、画面に映し出された。

 服装は格納庫の時と同じで、シャツにはレイの血がついたままになっている。

 何らかの接続インターフェースだろうか、ヘルメットのような物を頭に付けている。

 戦闘に勝利した為だろうか、シンジは満足そうな表情をしていた。


「シンジ!!」 「「「シンジ君!!」」」


 ゲンドウ、冬月、リツコ、ミサトの四人の声が発令所に響いた。

 まさか初号機の格納庫で行方不明になったシンジが、北欧連合の『天武』に乗っているとは想像すらしていなかった。

 四人の脳裏に、『ネルフだけが使徒迎撃の手段を持っている訳では無い』と言ったシンジの言葉が思い出されていた。


『ネルフが使徒と呼ぶ敵は、国連軍から要請のあった北欧連合の秘密兵器『天武』が倒しました。

 ネルフの真上で戦ったから、一応は連絡しておきますよ』

「シンジ、貴様『北欧連合に所属してるボクを強制徴兵しようとした事は、ネルフの協定違反だからね。

 どうなるか、楽しみですよ。では!』
 ま、待て! レイをどうした!?」


 ゲンドウの台詞を遮って、シンジは言いたい事だけ言うと通信をカットした。

 画面には、背中のウィングを広げて飛翔している天武が映し出された。

 輸送機の下部扉が開いて天武を収納した。

 天武の収納を終えた輸送機は、四機のワルキューレの護衛を従えて、悠々と帰還の途についた。


「通信回線を繋げ!」

「駄目です。応答がありません」

「くっ。奴らがどこに行くか、最後まで追跡しろ!」

「り、了解しました」


 怒気に染まったゲンドウの声に返事をする日向であったが、太平洋上でその航跡をロストした。

 その日向の報告を、唇を噛み締め、拳を握り締め、内心の怒りに耐えながら、ゲンドウは聞いていた。

***********************************

 国連軍:参謀本部

「映像切れました。今までの映像は全て録画してあります。国連総会への中継も無事行えました」

「国連総会への放送妨害工作がありましたが、待機していた要員で排除しました」

「録画した映像は解析班に回せ。それと人類補完委員会の公開受付窓口に送っておけ」


 使徒との戦いとネルフの首脳部の対応を見終えたルーテル参謀総長は、オペレータの報告に頷いて指示を出した。

 その顔には微かな笑いが浮かんでいた。


(ネルフがここまで杜撰とはな。北欧連合の機体で、使徒とやらが倒せるとは予想外だった。

 これでネルフが言っていた”使徒はEVAでなければ倒せない”という事が無くなった訳だ。

 ネルフを擁護する補完委員会にも、かなりの突き上げがあるだろう)


 ネルフと補完委員会の事を考えると笑い出したかったが、部下の手前ではそうはいかない。

 必死で笑いを我慢しているルーテルの姿がそこにあった。

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 暗い部屋

 ほとんどを闇が占める薄暗い部屋。

 そこには五人の老人の立体映像と、ネルフ司令の姿があった。


『使徒再来か……あまりに唐突だな』

『十五年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく訪れるものだ』

『幸いとも言えん。我々の先行投資が無駄にならなかった点においてはな』

『それはまだ、分からんよ。役に立たなければ無駄と同じだ』

『さよう。今や周知の事実となってしまった使徒の処置。情報操作、ネルフの運用は全て適切、かつ迅速に処理して貰わねば困る』

「その件に関しては既に対処済みです。ご安心を」


 今回の使徒は国連軍の要請を受けた北欧連合の機動兵器『天武』が倒した。その映像は国連総会を含めて特定の組織に流れて

 しまったが、一般向けには情報を封鎖する事になり、既にその方針に沿ってTV報道は行われていた。

 シナリオ『B−22』。それが今回の欺瞞報道の処置だった。今まで仕事が無かったネルフ広報部だけが喜んでいた。

 それ以外の真実を知る人々は、これから起きる事を戦々恐々として見守り、滅びを回避すべく必死になっていた。


『結局、膨大な費用と時間を掛けて製造した初号機が役に立たずに、戦果は北欧連合に持っていかれた』

『一般向けに情報を隠匿するのは当然だ。だが、各国の政府や軍部に北欧連合の天武、そしてEVAの事が知られてしまった』

『ネルフの醜態が国連総会に流れてしまった。防諜体制はどうなっているのかね? 国連総会でネルフは役立たずと散々言われたよ』

『それだけでは無い。ファーストチルドレンへの洗脳が明らかになってしまった。

 さらには北欧連合所属の人間を強制徴兵しようとした事が、どんな結果になるか分かっているのかね?』


 前半はシンジの左目から、中盤以降は探査機器からの映像で、使徒戦の状況が国連総会に生中継されてしまったのである。

 映像の中には、パイロットの洗脳、司令の幼児虐待、直前の呼び出し、傲岸不遜なその態度、そして起動も出来なかった

 ネルフの決戦兵器等の内情が暴露され、ネルフと人類補完委員会の評判を著しく下げていた。

 もっとも補完委員会と各常任理事国の取り成しもあり、ネルフを批判的な勢力も抗議の声を下げていた。ある国を除いてだが。


『初号機を暴走させる為とはいえ、直前にサードを呼ぶなんて何を考えているのかね?』

『その通りだ。見つかった時点で迎えを出していれば、こうも醜態を晒す事はなかったろうにな』

『十年前にロストしたサードが、北欧連合の手の内とはな。最悪の組み合わせだ』

『碇。北欧連合には決して手を出すなと厳命してあるはずだ。何故、手を出した?』


 バイザーをかけた老人が、威圧感を込めてゲンドウを睨みつけた。

 ネルフのした事で北欧連合から補完委員会に厳重な抗議が来ている。

 無視すれば、北欧連合の矛先は旧常任理事国六ヵ国に向けられる。放置は出来なかった。


「ファーストチルドレンは重傷であり、初号機の起動は困難な状態でした。あの状態ではサードを乗せるしか、方法はありませんでした」

『その為に使徒が来る当日に呼び出して、初号機に乗せようとしたのか?

 北欧連合には一切干渉するなという、我々の通達を無視してか?』

「…………」


 ゲンドウは答えなかった。サングラスをかけているので、感情を伺う事も出来ない。


『結果を見れば、初号機を起動させる事も出来ず、使徒を倒した実績は国連軍と北欧連合に持っていかれた。

 しかもファーストを洗脳していた事を公表され、北欧連合へ干渉してしまった。これは明らかな失態だな』

『ファーストとサードは北欧連合の手の中にある。これではネルフ本部のEVAは起動出来まい。

 次の使徒は必ずネルフで倒す必要がある。弐号機の予定を早めるか?』

「ファーストチルドレンは彼らに拉致されました。返還要求を出します」

『……却下だ。洗脳していた事が公表されたのだ。返還要求は出せない』


 ゲンドウの返還要求を、老人は侮蔑の色を込めた顔で却下した。

 本音ではパイロットの人権など無視しても構わないと思っても、建前ではパイロットの人権を尊重しなければならない。

 如何に特務権限で人材の徴集権限があったとしても、洗脳までしたとあっては問題になる。


『北欧連合から、今回の件に対して謝罪要求が来ている。

 明日の午後一時までに北欧連合の在日大使館行って、お前と冬月、赤木博士と葛城の娘の四人で謝罪をしたまえ』

「……謝罪ですか? しかも四人で?」

『そうだ。謝罪をすれば、今回のネルフの干渉は無かった事にすると言って来ている。

 話しをうまくもっていけば、サードと交渉が出来るかもしれぬぞ』

「……分かりました。それと今回の日本政府の国連軍への出動要請の件ですが、何故抑え切れなかったのですか?」


 ゲンドウは暗に、日本政府を抑えきれなかった委員会にも責任があると言っていた。


『ネルフに指揮権が委譲されて、出撃しなかった為だろう。日本の皇室が危機感を持って、日本政府に要請したらしい』

『そうだ。速やかにネルフが出撃出来ていれば、問題無かったのだ』


 委員会への責任追及も、ゲンドウの責任に転化されてしまった。


『北欧連合関係の問題は微妙だ。サードと北欧連合の関係、北欧連合の秘密兵器が何故日本にあったのか、それらは我らが確認する。

 君の関知する事では無い!』

『使徒戦の中継を妨害しようと、君に連絡しようとしたが出来なかった。

 通信回線が遮断されていた事もあるが、国連軍の妨害工作もあった。中継は用意周到に準備されていた可能性が高い』

『情報が洩れたとは考えにくいが、北欧連合はある程度は我々の事を把握はしている。

 元々、ネルフの設立に批判的な立場だったからな。くれぐれも隙を見せないようにな』

『それと、あの『天武』とやらの性能を赤木博士に分析させたまえ。どうやって使徒を倒せたのか、早急に分析する必要がある』

「分かりました」


『明日の北欧連合への謝罪は必ず行え。北欧連合の介入とファーストの不在。EVAの起動実績が無い件。

 何れにせよ、今回のイレギュラーの修正は容易な事では無いぞ』

「……分かっております」

『しかし、碇君。君の仕事はこれだけではあるまい。人類補完計画。これこそが君の急務だ』

『左様。その計画こそが、この絶望的状況下における唯一の希望なのだ。我々のね』

『何れにせよ、使徒再来による計画スケジュールの遅延は認められん。予算については一考しよう』

『では、後は委員会の仕事だ』

『碇君、ご苦労だったな』


 会議が終了したので、立体映像の老人達が次々と消えていった。


『碇……後戻りは出来んぞ』


 最後に残った特殊なバイザーをかけた老人は、そう言い残し、電子音と共に姿を消した。


「分かっている。人間には時間が無いのだ」


 残されたのは、ゲンドウ一人のみだ。サングラスに為に、表情は一切分からない。

 ゲンドウの心の中を知っているのは、本人のみであった。

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 ネルフ:司令室

 呼び出されたリツコとミサトは、ゲンドウの前に立っていた。

 ゲンドウの横に立っている冬月が、二人を見ながら厳しい顔で話し始めた。


「今回の使徒戦では残念な事になったが、次の使徒に対応しなければならない。次の使徒は必ずネルフで倒すのだ。

 それと補完委員会から通達があったのだが、この四人で明日の午後一時に北欧連合の在日大使館に出向く事になった」

「何故、北欧連合の在日大使館に?」


 使徒戦の後始末に忙しい今、四人揃って北欧連合の大使館に行く必然性が、ミサトには思いつかない。


「シンジ君を強制徴兵しようとした行為の謝罪の為だ」


 苦々しげな表情をして、冬月が答えた。

 冬月も北欧連合に謝罪をする事に納得している訳では無い。委員会の命令で仕方なくだと思っている。


「なっ! 非常事態だったのにですか? ネルフの権限の範囲のはずでは!?」

「ミサト。北欧連合と中東連合には一切手出しをしないようにと、委員会から言われているの。

 上の方で何らかの協定があるのでしょうね。実際、その二国の研究者の徴集はやっていないわ。

 北欧の三賢者は、是非とも徴集したかったけどね」


 ネルフは国連所属の特務機関であり、様々な特権を有しているが万能では無い。当然、制約もある。

 リツコの本心では徴集したかった人材ではあるが、委員会からの命令では従うしか無かった。


「そ、そんな! ……北欧の三賢者って確か『ワルキューレ』を開発した奴がいるのよね?」

「そうよ。ロックフォード財団の総帥が、養子に迎えた三人の事よ。

 かつての東方の三賢者を上回ると言われて、兵器関係、コンピュータ関係、エネルギー関係で次々と新技術を開発しているわ。

 日本も核融合炉の設置で恩恵を受けているし、軍事的には衛星軌道上からの粒子砲の包囲網を作っているわ。

 北欧連合が衛星軌道上の制宙権を確保しているのも、彼らが原動力になっているわ。

 六年前にヨーロッパ方面の国連軍が壊滅したのは、彼らが原因よ。本当なら是非ともネルフに協力して欲しかったんだけど」

「そういう事だ。北欧連合は唯一、補完委員会と対立している国連の常任理事国だ。他の常任理事国と戦争をした事もある。

 ネルフの設立時に何らかの取引があったらしい。今回の謝罪はその為だ」


 リツコに引き続いて、冬月も説明した。冬月も内心では謝罪する事に不満があるが、それを口に出す事は無かった。

 やはり委員会の命令には逆らえない。それに使徒を倒した天武の情報も少しは手に入れられるかも知れないと考えていた。


「ふん」


 ゲンドウは手を口の前に組んだままで鼻を鳴らした。

 普段は感情を表さないゲンドウにしては、珍しく不機嫌さを隠そうともしなかった。


「しかし四人が出向くと、本部に何かあった時に問題では?」

「問題無い」

「そんな時間がかかるものでも無いだろう。ヘリで移動するから時間も節約出来る。夕刻には戻ってこれるはずだ。

 赤木君。忙しいだろうが、まずは確認をしたい。何故、使徒戦の状況が外部に流れたか、分かったのかね?」


 何故、使徒戦の映像が外部に洩れたのか? その映像漏洩の為にネルフは拙い立場になっている。

 同じ事を繰り返さない為にも、原因は解明する必要がある。

 国連総会に中継された映像はコピーされ、補完委員会経由でネルフに届いており、リツコはその内容の解析を進めていた。


「はい。前半の映像は、間違い無くシンジ君の左目から見た映像です。

 彼の左目は義眼と言っていましたので、左目にカメラを仕込んでいると思われます。

 ですが中盤以降は、彼も見る事がなかった映像が流れています。これに関してはMAGIしか管理していなかったはずです。

 実際、外部への通信回線は一部が断線しており、履歴にも残っていません。

 何故、映像が流出したかは不明です。ですが、シンジ君が絡んでいるのは間違いありません」


 リツコは悔しそうな顔をして報告した。

 使徒戦が終わった後にネルフから映像が流出したと聞かされ、最優先で確認したのだが、形跡さえも分からなかった。

 MAGIの全チェックは時間が無いので出来なかったが、映像を管理している箇所は優先して全てチェックした。

 それと外部との通信回線の一部、厳密には外部からネルフへの通信回線だが、使徒の攻撃で破損しているのが確認された。

(実際は北欧連合の工作なのだが、使徒の攻撃によるものと判断されている)

 使徒戦の最中にゼーレ配下の人間がネルフに連絡しようとしたのだが、通信回線が切断されて連絡が出来なかった。

 故に、リツコは通信回線の複数化、安全保護の強化を部下に指示していた。


「あの『天武』とやらが、ATフィールドをどうやって突破したかは分かったのかね。

 それとパイロットがシンジ君というのは間違い無いのかね」


 冬月の質問は続いた。ネルフの主張していた”使徒はEVAでしか倒せない”と言う事が、間違いだと周知されてしまったのだ。

 ネルフの存在意義に関わる問題だ。放置は出来なかった。


「使徒が倒された時はセンサが無効化される煙幕がありましたので、解析は出来ませんでした。

 パイロットがシンジ君というのは、通信電波の発信位置が確認されていますので間違い無いと思われます。

 実際、あの機体が降りてきた時も煙幕が張られています。搭乗するのを見られたくなかった可能性が高いと推測されます」


「レイはどうした?」

「煙幕で見失ってから、レイの姿は確認出来ていません。状況から言って、シンジ君に連れていかれたと思われます」


 リツコの本心としては、ゲンドウが執着している少女が居なくなって良かったと思っている。だが、それは口に出せない。


「それって誘拐じゃない。司令、レイの返還要求を!」

「却下だ」


 ミサトの返還要求を、即座にゲンドウは却下した。自分も委員会に同じ事を言ったのに却下されたのだ。

 ミサトはゲンドウの視線に寒気を感じて、それ以上の発言を止めた。


「うむ。では明日の午前中にはヘリで出発する。葛城君は仕事に戻ってくれたまえ」

「はい。了解しました」


 冬月の言葉に頷いて、ミサトは使徒戦が行われた現場に向かった。責任者としての役目の為だ。

 ミサトが退出するのを確認して、残った三人は会話を続けた。


「赤木君。シンジ君がどうやって保安部員二十名を一瞬に倒したか、原因は分かったのかね?」

「いえ、まだそこまでは手を付けておりません。申し訳ありません」

「そ、そうか。いや、そうだな。優先順位の高い物は他にもあるしな。だが、忘れず原因究明をしてくれたまえ」


 リツコがしなければならない項目を頭の中で思い浮かべ、冬月はその多さに顔を顰めた。

 催眠術を受けて、レイの洗脳をリツコが自白した件は話題には出していない。

 リツコは優先的に解析すると考えている。ここで急かす事は無いだろう。


「はい。『天武』という北欧連合の機体のスペックは少しまとめてありますので、後で転送しておきます。

 移動速度と武装等の簡単なデータです。それとシンジ君の髪が落ちていましたので、DNA解析を行いました。

 彼は間違い無く『碇シンジ』本人です。データの裏づけが取れました」

「そうか。シンジ君が北欧連合の管理下にあるのはまずい。何とかして、切り離さないとな」

「所詮は子供だ。どうにでもなる」

「子供か? シンジ君のあの対応を見ると、かなり自我が確立している。シンクロ出来るか分からんぞ」


 シンジの行動は、大の大人でさえ出来ないようなものもあった。

 ゲンドウと冬月は、まだシンジを甘く見ていた。ただのパイロットなら、まだ挽回可能だと考えている。

 リツコは自白を強要された事もあり、ある種の苦手意識をシンジに感じていた。

 最初にシンジを実験体扱いした事が悪影響をしたのだろうか? シンジの自分に対する態度に悪意を感じていた。

 だが、シンジとの交渉をゲンドウと冬月が行うのであれば、問題にはならないだろう。


「初号機を覚醒させるには、シンジを乗せるしか無い」

「あの『天武』のパイロットがシンジ君という事は、それなりに深く北欧連合と関わっていると言う事だ。前途多難だ」

「矢は放たれた。我々はシナリオに沿って進むしか道は無い」


 サングラスをかけて視線を合わせないゲンドウの感情は、冬月には判らなかった。


 ネルフを罠に嵌める為に、北欧連合は数々の布石を打っていた。映像流出もその一つだ。

 ネルフ首脳部は、まだ事態を楽観視していた。シンジ個人を相手にすれば良いと思っている。

 ゲンドウがシンジの親である事を主張すれば、シンジをネルフに取り込む事は容易だと考えているのだ。

 リツコに精神的、時間的余裕があれば、北欧連合の罠の存在に気がついたかもしれない。

 だが、使徒戦の後始末やシンジ周辺の事件の解析に追われるリツコは、技術的疑問の解明に追われていた。

 従って政治的な策に関しては、リツコが気がつく事なく、ネルフに行使される事になるのだった。

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 第二東京:北欧連合大使館

 応接セットに二人が、向かい合って座っていた。

 一人は壮年の白髪が混じる金髪の男であり、この大使館の責任者であるロムウェルである。

 その真向かいには、天武を操縦していたシンジが座っていた。


「お疲れ様でした、ロックフォード博士。あなたが使徒を倒したおかげで、危機が回避出来ました。

 本国からの指示の為では無く、私個人からの礼を受け取って頂きたい」

「ありがとうございます。この状況に持ってくるまで、財団が総力を上げて八年以上の日数を掛けました。

 兄や姉を含めた色々な人の協力があって、ここまで来れたのです。失敗する訳にはいかなかっただけですよ。

 それに、サードインパクトを防ぐのは、一部の人間を除いた全世界の望みでもある訳です。当然の行為ですよ」


 ネルフで『碇シンジ』と呼ばれた少年が、この大使館の責任者であるロムウェル大使と会話していた。

 人類補完委員会とネルフがサードインパクトを計画している事を、北欧連合の上層部の一部には機密情報として伝えてある。

 目の前のロムウェル大使もその一人になる。本来は大使レベルには、この機密を知らされない。

 だが舞台が日本という事もあり、駐日大使には特別に機密を伝えていた。もちろん防諜対策は済ませてある。

 数は力である。委員会やネルフの物量には及べないが、対抗組織としては、ある程度の人数を揃える必要がある。

 故に、北欧連合の一定レベル以上の関係者は、人類補完委員会とネルフの秘密をある程度は知っていた。


「お疲れでしょうから、今日はゆっくりとお休み下さい。お連れの三人も休んでいます。

 部屋を三部屋用意しましたので、自由に使って下さい。入用の物があれば、遠慮無く言って下さい。

 本国からも全面支援するようにとの指示が出ています」


 シンジが戻る前に潜水艇で迎えに来たミーナに連れられて、レイは大使館に入っていた。

 用意された部屋には、ミーナとレイがいる。念話で確認済みだ。


「ありがとうございます。一週間程度の滞在の予定です。ところでネルフから連絡は入りましたか?」

「ええ、ヘリで直接来ると連絡がありましたので、ヘリで来たら撃ち落すと答えておきました。

 明日は車で来るでしょう。時刻通りに来るかは不明ですが」


 ロムウェルは苦笑していた。ネルフから電話を受けた時、ロムウェルはいきなりヘリで来ると言ったネルフに激怒した。

 大使館近辺は飛行禁止空域に指定されており、近づくものは無条件で撃墜すると怒鳴りつけていた。


「まったく謝罪に来るというのに、ヘリで直接来ようとするのだから、無礼極まります。

 私も使徒戦の映像は見ましたが、あれがネルフのやり方なのですね。明日が楽しみですよ」


 自分の子供ぐらいのシンジにも、ロムウェルは丁寧に接した。それは、シンジの実績を知っている為であった。

 祖国を襲ったセカンドインパクト直後の混乱と貧困。今でこそ混乱は収まって発展を続けているが、最初の頃はかなり酷い状態だった。

 それらを覚えているだけに、現在の繁栄の基礎を築いたシンジの所属している財団に、深い感謝の念がある。

 そしてシンジ自身の財団への貢献は大きい。

 シンジだけが貢献した訳では無いが、シンジの本国への貢献は誰であれ、否定は出来ない。


「監視衛星からの情報では、この大使館への監視体制が二チームから五チームに増強されています。

 見逃しが無いとは言えません。十分に注意して下さい」

「ええ。こちらも護衛チームを増強しています。安心して下さい」

「では、今日は休ませて頂きます。明日の段取りは、さっき話した通りで御願いします」

「分かりました。ゆっくりとお休み下さい」


 シンジはコーヒーを飲み干すと、ロムウェルに一礼して部屋を出て行った。

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 コンコン

 シンジはミーナとレイが居る部屋のドアをノックした。


「開いているわよ」


 聞きなれたミーナの声だ。シンジはドアを開けて部屋に入り、室内を見渡した。

 部屋にはベッドが二つあり、右側のベッドに蒼銀の髪の少女『綾波レイ』が、上半身を起した状態で横たわっていた。

 連れてきた時は、白いプラグスーツと血に染まった包帯を身にまとっていたが、今はパジャマ姿だ。

 治療が効いたので、出血は止まっており包帯は巻いていない。


 ミーナはベッドの側に椅子を置いて座っている。シンジが入ってくるまで、二人は話しをしていたようだ。

 シンジはミーナの隣に来て、蒼銀の髪の少女『綾波レイ』に話しかけた。


「綾波さんだったね。ネルフの出来事は覚えていないだろうから、改めて自己紹介させてもらうよ。

 ボクは『シン・ロックフォード』。日本では『碇シンジ』という名も持っている。

 君をネルフから連れ出して治療をしたのはボクだよ。体の調子はどう?」


 シンジは微笑みながら、レイに話しかけた。

 自分に話しかけてくるシンジの笑顔を見て、レイは既視感を感じた。

 会った事は無いはずだ。だが治療をしたという言葉に、今までの経緯を思い出した。


 身体を襲っている激痛に耐えながらも、司令の命令でEVAで出撃しようとした。

 司令の命令を実行しようとしたが、身体は動いてはくれなかった。その時に誰かに抱きかかえられ、暖かい感触を感じた。

 そして唇を通じて流れてきた暖かいもの。苦痛が和らいで体が楽になった事を、意識朦朧になりながらも覚えている。

 その後、赤木博士の”碇司令が洗脳を命令した”という言葉を聞き終わったら意識は途切れた。


 そして気がつくと、いつもの病室では無くて知らない部屋のベッドに寝ていた。(知らない天井だったわ)

 身体を襲っていた激しい苦痛は無かった。プラグスーツは脱がされ、パジャマに着替えさせられていた。

 起きた私に、赤木博士と同じ髪の色をした彼女(眉の色は違うわ)が話しかけてきた。

 初めは彼女の言う事などまるで聞く気はなかった。でも人形という言葉に不機嫌になってそこから話し出した。

 話しをして驚いたのは、彼女が純粋な人間では無いという事だ。人間以外の血が入っているという。


 私と同じなの。そう思った私は安堵して、金髪の彼女に興味を覚えていた。

 お互いに名乗ってから、少しづつ話しをした。

 話しながら食べたメロンという食べ物。甘くて美味しい。もっと食べたい。

 彼女は笑いながら自分の分を差し出し、もっと用意すると言ってくれた。

 そこに、少し年上に見える黒髪の少年が部屋に入って来た。

 少年は『シン・ロックフォード』と『碇シンジ』の両方の名を名乗った。碇?


「碇? 司令と同じ名。あなたは司令と関係あるの?」


 唯一自分との絆を持つ司令と同じ姓だ。ほんの少しだけ興味を持った。


「ネルフ司令と? まあ十年前は、ボクの父親だったけどね。今は何の関係も無いよ」

「関係無いって、あなたは自分から絆を捨てるの?」

「絆を捨てるって、最初に捨てたのはあっちの方だよ。十年前にね。

 それに君に洗脳をしていたのもネルフの司令だ。君がネルフの司令に絆を感じていても、それは偽りの感情だよ」


 自分が司令に感じている絆を偽りと言われて、怒りを感じた。自然と口調も荒くなった。


「そんな事は無いわ」


 金髪の彼女と違い、司令の息子だという事は純粋な人間のはずだ。私が人間では無い事を知れば、避けていくだろう。

 そんな人間に自分の絆を否定される訳にはいかない。そう、零号機の事故の時は、碇司令が助けてくれた。


「君を洗脳するように指示していたのは、ネルフの司令だ。君が従順になるように洗脳していたんだろう。

 赤木さんが催眠術にかかって、正直に答えてくれたよ。君も聞いていたろう。

 君がネルフの司令に絆を感じていたのは、君を洗脳したからだ。都合よく使える道具……人形としてね。

 君が初号機から出てきた事もボクは知っている。DNAが普通の人と違う事も分かっている。

 幼い君を自我が芽生えないように教育し、自分達の計画に都合良く使おうとしている事も知っている」


 リツコを精神操作した時に、リツコの記憶からレイに関する情報を読み出していた。

 もっとも時間が無かったので、読み出せたのはレイ関係の情報の一部だけだ。その中にレイの出生に関する情報は入っていた。


 私は少年の言葉を聞いて身体が強張った。赤木博士が”碇司令が洗脳を命令した”と言ったのを確かに聞いた。

 あの絆は嘘だったの。零号機の事故で、私を助けてくれたのは芝居だったというの?

 少年に自分が人間では無い事を知られてしまった。少年は私を化け物呼ばわりするのだろうか?


 そんな不安に包まれる私の頭を、少年の手が優しく撫でた。

 何故? 頭を撫でられるのが気持ち良い。初めて味わう感覚に陶酔した。今まで、誰も頭を撫でてくれなかったわ。

 私が人間で無い事を知っているのに、あなたは逃げないの?

 頭を撫でられる感触に心地良くなり、身体の強張りは次第に消えていった。


「聞いたように、ミーナは純粋な人間じゃ無い。ボクもそうだけどね。

 君だって、初号機から出てきたというだけで若干の遺伝子相違はあっても、こうして会話出来て意思疎通は出来る。

 何故避けるのか、ボクには分からないよ」


 少年は微笑みながら、私の頭を撫で続けた。気持ちが良いわ。


「人間は自分達と違う存在を受け入れないわ。この人は人間じゃ無いと聞いたけど、あなたも人間じゃ無いの?」


 司令の息子であれば人間のはずなのに、この少年は違うと言う。不思議に思ったので尋ねてみた。


「あの司令に捨てられた後にね。ちょっとした事があって、人間の範疇に入らなくなったんだ。後天的になったって事だよ。

 勿論、一般公開するような事じゃ無いから、限られた人しか知らないけどね。ボクの目を見て」


 言われた通りに少年の目を見た。右目は黒、左目は紫だ。見ているうちに、左目の色が紫から赤に変色した。


 シンジの左目は義眼であり、色が変わったぐらいでは人外の証明にはならない。

 だが、普通の人間の目は絶対に赤くはならない。手っ取り早く理解してもらう為に、左目を赤くしただけだ。

 ある意味詐欺である。シンジはレイに意識操作をするつもりは無かった。

 洗脳のレベルは低い。洗脳した証拠とレイが安心出来る環境を整えれば、洗脳は解けると判断していた。


 目が赤い……私と同じなの。だからこの人は、私から逃げないのね。そう理解した。

 ネルフに居た時には、孤独感だけを感じていた。

 だが、目の前の二人も人間では無いという。孤独感は消え、共感めいた安堵の気持ちに包まれた。


「それに、君はこんなに可愛いんだから、少し遺伝子が違うぐらいじゃ問題無いでしょう」

「な、何を言うのよ」


 私が……可愛い……の。少年の言葉を聞いた私は、何故か頬が熱くなるのを感じていた。

 少年の方を見ていられなくなり、俯きながら少年に答えた。何故、身体が熱いの?


「シン! あなた、この子のファーストキスを強引に奪ったんでしょう? まったく女誑しになるんじゃ無いわよ」

「あ、あれは治療の為だよ」

「嘘おっしゃい。最後の方は、本気でキスしていたのは見ていて分かったわよ」


 私のファーストキス? レイは二人の会話を聞いて、格納庫の時の事を思い出した。

 激痛に耐えている時に、今まで感じた事の無い感触を唇に感じた。

 暖かくて、力が流れ込んできた事を覚えている。体の痛みが減って、もっと欲しがった事も思い出した。

 あれが……キスだったの?

 キス……確か、好き合った男と女がするもの。

 男同士、女同士のキスは不潔なもの。でも男と女のキスは……絆かしら……それを私がしたの?

 あれが、キスの威力なの? 赤木博士の治療より遥かに効果があるわ。じゃあ、もう一度すれば……

 目の前の少年とキスをする事を想像した私は、頬がさらに熱くなるのを感じた。

 ふいに、私の頭を撫でる手が止まった。気持ちよさが消えていく。

 もっとして欲しいと言葉にする前に、少年の言葉が聞こえてきた。


「それにね、君はボクの母さんが溶けた初号機から出てきたんだ。間違いなく母さんの遺伝子を持っている。

 言わば、君はボクの妹に近い存在なんだよ。家族に間違い無いさ」


 少年の言葉を聞いて、私の身体に強い電気が走った。妹……家族……この少年との間に絆があるの?

 私が顔を上げると視界に少年の顔が入ってきた。


「君は母さんの遺伝子を持つ事は間違い無いよ。これだけ母さんに似ているからね。

 人間に無い遺伝子を持っていても、それは些細な事だよ。君は、いやレイでいいかな。レイは間違い無くボクの家族だよ。妹だよ」


 この人にレイと呼ばれると、司令や赤木博士に感じた事の無い、暖かい感じがする。……何故?


 私は初号機から産まれ、計画の為に生きている存在。計画の為に死ぬ存在。

 家族、いや同類など何処にいない孤独な存在。人間とは違う、人間に受け入れられない存在。

 そう思って生きてきた。その私に家族? 私が妹?


 気が付くと、私を妹と言った少年に、涙を流しながら抱きついていた。

 少年、いえ、碇君、シンジ君、何て呼べば良いの? 確か妹が兄を呼ぶ時はお兄ちゃんと……

 考えが変な方向に向っていると、背中に彼?(どう呼べば良いの?)の手を感じる。

 どうやら、さすっているらしい。でも……体温を感じる。落ち着く。気持ちが良いわ。


「レイは病気で、赤木さんから定期的に治療を受けているよね」

「ええ」

「ネルフは完全にレイの体を治していなかったんだ。治療に一週間程度はかかるけど、ボクが治療する。

 そうすれば、レイの体は健康体になるさ。そして家族として暮らそう。

 ここにいるミーナを初め、ボクには他の家族も居る。レイを紹介するよ。大丈夫、レイを受け入れてくれるさ。

 ネルフなんて関係無いさ。EVAなんて乗らなくても良い。レイは普通の女の子として、ボクの家族として生活すれば良いんだよ」

「そうよ。レイを歓迎するわよ」


 二人の言葉に、今まで感じた事の無い感情が湧き上がってきた。涙が止む事はなかったが、レイの心は安堵感で満ちていた。


 その後、ミーシャとユインが合流した。

 ミーシャも目を赤くする事でレイの不安を取り除いた。

 そして、他愛の無い会話をした。ネルフ関連の事は、一切話題にはしなかった。

 レイを普通の女の子として接した。それが、一番のリハビリになるとの判断があった為だ。

 レイはユインを抱きかかえ、食事を交えながらもシンジ達と会話を行った。もっとも、レイは質問の方が多かったが。

 会話は日付が変わる時刻まで続き、さすがに眠気に襲われて寝ようとした時、レイは一人で寝る事を嫌がった。

 一人になる事を嫌がったのだ。ミーナが同じベットで寝る事を提案し、それで落ち着いた。

 部屋はあと二部屋空いている。シンジとミーシャは、それぞれの部屋に向った。



(さて、少々強引な手を使ったけど、洗脳が解けたかな。でも、レイが血の繋がった家族である事は間違い無い。

 EVAがどう関係してくるかは、これからのレイの気持ち次第だ。しばらくはミーナに任しておこうか。

 まあ、変な方向にレイを教育しなけりゃ良いけど。しかし、妹か……可愛いよな。お兄ちゃんと呼ばれたらどうしよう?)

 少しずれた事を考えつつ、シンジはベットに入った。


 レイはミーナに抱きついて、一緒に寝ていた。ミーナの体温を感じて安心したのか、熟睡中だ。

 さて、どんな夢を見ているのか……良い夢だろうか?

 それはレイの安らかな寝顔を見れば、誰にでも分かる事だった。






To be continued...
(2009.02.07 初版)
(2009.02.21 改訂一版)
(2009.03.21 改訂二版)
(2011.02.26 改訂三版)
(2012.06.23 改訂四版)
(2013.08.25 改訂五版)


(あとがき)

 この作品は、再構成・アンチネルフになっています。ネルフの誰かがお気に入りの方は読まれないように御願いします。

 主人公のシンジ君は、生身で使徒は倒せませんが、対人間(個人戦)では最強レベルの設定にしています。

(弱いと書いてて面白くないし)

 強く、独善的で、正義の味方じゃ無くて、煩悩があって、狡猾。でも味方の女の子には弱いシンジ君を書くつもりです。

 EVAの二次小説は、読む方ばかりで書くのは初めてです。なのに、長編に挑戦してしまいました。

 今後とも宜しく御願いします。



作者(えっくん様)へのご意見、ご感想は、感想掲示板 まで