因果応報、その果てには

第三十一話

presented by えっくん様


 シンジは亜空間転送で、以前に使用していたネルフ本部内のユグドラシルUが設置されたエリアに来ていた。

 案の定、以前にシンジ達が使っていたエリアの電源は切られていた。

 封印されているエリアでもあるし、当然だとシンジも思う。その事について、文句を言う筋合いでは無かった。

 さっそくユグドラシルUを起動しようと、隠しておいた小型の核融合炉を起動させた。

 ネルフにばれる訳にはいかないのでブロック全体に通電は出来ないが、ユグドラシルUを動かすには十分な電力を供給出来る。

 早速ユグドラシルUの中に入り機器の動作が問題無い事を確認すると、ネルフの重要機密エリアがどんな状況かの確認を始めた。


(司令室は誰もいない。副司令室も同じ。赤木博士の部屋も同じ。発令所は……やはり人がいるな……何? 赤木博士がいない!?

 何処に? ……休憩室に一人!? しかもMAGIの操作が出来ない状態か! ……これはMAGIを落とすチャンスか!?)


 MAGIへは優先して電源供給されているが、万全の状態では無い。しかもオペレータは青葉で、今は停電の状況把握に動いている。

 これなら何とかなるかも知れない。いざとなれば電源供給ラインに干渉して、MAGIを不調にさせる事も可能だろう。

 重要機密エリアに盗聴システムを仕掛ける事で得られる情報も重要だが、MAGIを落とせればネルフの機密情報全てが得られる。

 咄嗟にシンジは判断して、MAGIを落とそうと動き出した。

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 ネルフ:発令所

 停電の時に何処に居たのか不明だが、自動ドアが開かない状態にも関わらず、ゲンドウは発令所の指揮所に居た。

 自力で自動ドアを開けて来たのだろうか? それとも通風孔を通ってか? それは本人に聞かないと分からない事である。


 発令所の下の方の職員は慌しく動いていた。事故原因の確認。被害状況の確認。復旧の目処の確認。やる事は山ほどあった。

 だが、報告が上がってくる前のゲンドウと冬月は特に仕事は無い。報告が上がってくれば、それに対しての指示が出せるが、

 状況確認と最低限の指示を出した今は、報告待ちで手持ち無沙汰の状態である。つまり考える時間はたっぷりとあった。


「やはりブレーカは落ちたというより、落とされたと考えるべきだな」

「原因はどうあれ、こんな時に使徒が現われたら大変だぞ」


 三系統の電源回線で運用されているネルフ本部である。それがこんな長期間停電するなど、普通では考える事が出来ない。

 蝋燭に火を灯した冬月の頭に真っ先に浮かんだのは【HC】の事だった。だが、直ぐに打ち消した。

 【HC】が動いたなら、こんな中途半端で済ませる訳が無い。

 そうなると、対立している内調か戦自あたりの仕業と考えるのが妥当だろう。

 ゲンドウが何を考えているかは分からないが、冬月は自分なりに今後の対応について考え始めた。

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 戦自:府中司令部

 司令部に居る指揮官の目は、レーダーに反応しているポイントに注がれていた。


「索敵レーダーに正体不明の反応あり。予想上陸地点は旧熱海方面」

「恐らく、八番目の奴だ」

「ああ、使徒だろう」

「目標は第三新東京か。間違い無いだろうな」

「どうする?」

「政府とネルフに……いや、政府だけに連絡だな。それと偵察機は出しておこう」

「ネルフに連絡しなくて良いのか?」

「この前の使徒戦に支援を依頼してきたくせに、うちからの請求分の十分の一しか払ってないんだぞ。ネルフに連絡する必要は無い。

 使徒に気がつけば、勝手に迎撃するだろう。俺達のする事は何も無いさ」

「そうだな。【HC】はどうする?」

「どうせ、あちらはネルフから依頼が無いと動けないんだ。技術供与要請も断られたと聞いている。そこまでする義理は無い」


 今までの使徒戦で戦自が攻撃しても、一切使徒にダメージを与えた事は無かった。ミサイル、爆弾等を相当量使ってである。

 当然、ミサイルや爆弾は戦自の予算から購入する。備蓄の相当数を使用したにも関わらず、戦果がまったく上がらなかったのだ。

 これでは当然、やる気も失せる。ネルフか【HC】から依頼があった場合には、使用した燃料と弾薬の請求は出来るが、戦自の判断で

 攻撃したのでは、経費は当然戦自持ちになる。成果が上がらず、予算だけ消耗するのでは、誰もやる気になれはしない。


 こういう経緯から、戦自は単独で使徒を攻撃するのは諦めていたのである。

 使徒迎撃において【HC】は自己判断で使徒戦に介入出来るようになっていたが、それはネルフと【HC】との間の通達であり、

 戦自には届いていなかった。そして、シンジの目がMAGIに向けられている現在、使徒の上陸を【HC】が知る事は無かった。

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 ネルフ:発令所

 実験管制室から移動してきたマヤと他の技術部スタッフは、無事に発令所に辿り着いた。


「タラップなんて、使う事無いと思っていたのに……」

「でもまあ、こうして発令所まで来れたんですから」

「それはそうだけど、先輩が心配だわ。後で見に行かないと」

「伊吹君、赤木君はどうしたのかね?」

「は、はい。赤木博士は体調不調の為に倒れて、休憩室で休んでいます。それに車椅子ですから、ここまでは来れません」

「む、そうか。仕方が無いか。君達はこの停電の原因確認を早急に行ってくれ」

「了解しました」

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 ネルフ内:通路

 自分がリーダーだと宣言したアスカは、先頭になって通路を進んでいた。その事について、トウジに異論は無かった。

 口煩い女ではあるが、自分より能力がある事は認めていた。不安を紛らわせようと、無理やりにでも二人の会話は続いていた。


「まったく、ネルフが停電なんて、どうなってんのや?」

「あんた、馬鹿っ!? これだけの停電よ。大きな事故があったに決まってるじゃない!!」

「事故? どんな事故や?」

「あたしが知る訳ないでしょう!! それを知る為に本部に向かってるのよ!」

「それもそうやな」

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 エレベータ内

 ミサトは密閉されたエレベータからの脱出を図ったが失敗して、床に座り込んだ。だが、まだ目は諦めてはいない。

 チャンスを待とうと思い、気分を切り替えて【HC】の事を加持から聞きだそうと考えた。

 これからの事も考えれば、情報は多いほど良い。


「あんたは【HC】の事は公になっていない事で、何か知ってる事ある?」

「【HC】の事か。今の俺の知っている事は、葛城も知っている事と大差は無いさ」

「何よ、使えないわね」

「おいおい、そんな言い方は無いだろう。今は別口で忙しいが、これが落ち着いたら【HC】の事を調べる予定なんだぜ」

「本当!? だったら、何か分かったらあたしにも教えなさいよっ!」

「葛城。俺達諜報員は命を張って、情報を集めるんだぜ。報酬無しって訳じゃあ無いだろうな」

「うっ。そ、それなら今度、酒に付き合ってあげるわよ」

「おっし。その条件、忘れるなよ」


 加持が予想していた以上に、エレベータの中には熱気が充満していた。こんな状況では、色気のある話しなど出来そうには無い。

 だったら、次の機会を待とうと考え、加持はミサトの出した条件を呑んだ。

 もっとも、【HC】の事を調べると言っても、容易な事では無い。

 今までネルフの諜報部から何名も【HC】の基地に潜入しようとしたが、誰一人として帰ってきたメンバーはいなかった。

 しかも、あそこにはシンジも居る。シンジの事を思い出したら、加持に悪寒が走った。

 頭を振り払い、シンジの事を忘れて目の前のミサトに集中しようと、加持はミサトに向き合った。

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 ネルフ:ユグドラシルU内部

 以前に使用していた時、ユグドラシルUからMAGIへの回線はあったのだが、現在はネルフ側の手によって切断されていた。

 その回線復旧作業を終え、シンジはユグドラシルUの制御ルームに戻ってきた。


(これでMAGIへの回線が繋がったか。発令所のスタッフはまだ原因調査中で、MAGIは見ていない。

 チャンスだ。これで一気にMAGIを落とす。姉さんの協力が得られないのは残念だけど、今は仕方無いからね)

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 戦自:府中司令部

 スクリーンには第三新東京に近づく使徒の姿が映し出されていた。

 使徒への動きがまったく無い事に対して、スクリーンを見つめる視線に苛立ちが混じっていた。


「何故、ネルフは動かない? 今までなら、もう迎撃態勢に入っているはずだ」

「ネルフとは連絡がつかないのか!?」

「何度も呼びかけていますが、何の応答もありません!」

「くっ。政府の回答は?」

「【HC】に緊急要請をかけたとの連絡が入りました。こちらにはネルフに連絡しろとの命令が出ています」

「まあ【HC】に連絡したなら良いか。ネルフはどうする?」

「直接、行くしかなかろう」

「そうだな。よし、航空機を第三新東京に差し向けろ!」

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 休憩室

 空調が止まって空気が澱んできた。リツコは暑さを感じて、白衣は既に脱ぎ捨てていた。

 今のリツコを支えているのは、車椅子に備え付けられたバッテリィで動いているファンが送り出す冷風だった。


(車椅子のファンのお陰で少しは涼しいけど、何時まで持つかしら。こんな状態が長時間続いたら熱中症になるわね。

 ここには飲料水も無いし、残ったのは失敗だったかしら。でも、この状態じゃあ動けないし……

 マヤは無事に発令所に行けたかしら?)

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 第三新東京:市街

 遅番であった日向は第三新東京全体が停電である事に気づいて、慌てた様子でネルフ本部に向かっていた。

 この第三新東京で停電が起きる事などまずありえない。何か異常事態が起きている。

 対応するにはネルフ本部に行かなくてはならない。まったく、遅番で運が良いのか、悪いのか?

 日向の心の中のボヤキは途絶える事は無かった。


 戦自の司令部からの命令を受けた航空機は、第三新東京に到達すると大音量で放送を行った。


『こちらは第三軍管区航空部隊です。現在、正体不明の物体が第三新東京市に接近中です。住民の皆様は速やかに避難して下さい。

 繰り返しお知らせします。こちらは…………』


「やばい! 何とか本部に知らせなくちゃ! でもどうやって伝える?」


 こんな非常時に使徒が攻めて来た。多分、本部に詰めている職員は使徒の事など知る事は出来ないだろう。

 自分が伝えるしか無いと考えた日向に、場違いな声が聞こえてきた。


『こういう非常事態にも動じない高橋。いつも冷静沈着な高橋を宜しく御願い致します』


 日本名物の一つである選挙カーだった。まったく、非常事態で聞く人も居ないであろうし、避難義務を忘れているとしか思えないと

 考えた日向だったが、ネルフ本部に行く足が出来たとニヤリと笑った。

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 エレベータ内

 ミサトは上着はとうに脱ぎ捨てて、シャツだけになっていた。


「暑いわね……」

「空調も止まっているからな。暑けりゃシャツも脱いだらどうだ? 今更恥ずかしがる事も無いだろう」


 加持の言葉を聞き、自分の今の格好を見たミサトは慌てて脱ぎ捨てていた上着を着込んでいた。

 確かに男の前でする格好では無いだろう。嘗ては肉体関係のあった仲だが、暑さより羞恥心の方が勝ったのだ。


「こういう状況だからって、変な事を考えないでよ!」

「はいはい」


 こんな暑さでは、加持も変な気を起こす元気も無い。だが、少しは目の保養をしても良いだろうぐらいは考えていた。

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 ネルフ:発令所

 職員は復旧作業で忙しく動き回っていた。

 空調が停止した為に室内気温が上がり、不快指数も上昇の一途だ。殆どの職員が汗を浮かべていた。

 非常用の団扇を使って暑さに耐えている。

 そんな職員達を見ながら、最上段に居るゲンドウと冬月は上着も脱がずに、何時もの態勢で構えていた。


「日本政府かな」

「おそらくな」

「日本政府は【HC】を支持した。ネルフは不要というか、邪魔だと思っている訳か」

「報復はする」

「本気か? 証拠が出ればともかく、証拠が無い状態で報復すれば、次の破壊工作もありえるぞ」

「問題無い」


 日本政府が【HC】を支持した今、ネルフが日本の土地を専有している事に不満を抱いていた。

 出来る事なら出て行って欲しいが、国連総会で議決された事であり日本政府単独の意思ではネルフを追い出す事は出来ない。

 最後の切り札(A−801)は持っているが、明確な理由が無ければ発動は出来ない。

 ならば、ネルフの秘密を少しずつでも暴いて、日本政府の有利なように持っていこう。

 そんな日本政府の思惑を、ゲンドウと冬月は読みきっていた。

 そして、非合法活動さえ抑えられれば、日本政府の行動など何とかなると考えていた。


「しかし……温いな」

「ああ」


 ゲンドウと冬月の足元を見ると、水が入った防火用と書かれたバケツに足を突っ込んでいた。

 まあ、この暑さだし、少しでも涼しいだろう事は理解出来る。だが、どこから防火用のバケツを持ってきたのか?

 近代科学の粋を集めたネルフにおいて、火事が発生した時、バケツリレーを行うつもりだったのだろうか?

 消火器か消火栓なら理解出来るが、どうもバケツというのは理解出来そうにも無い。

 タラップが装備されていた事もある。意外とネルフは温故主義の思想が強いのだろうか? それとも冬月の趣味なのだろうか?

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 ネルフ:ユグドラシルU内部

 シンジの本業では無いとは言え、ユグドラシルUに繋がるネットワークを利用すれば、MAGIを落とす事は困難では無かった。

 供給される電気は不十分な為にMAGIは100%の能力を出せなく、オペレータは誰もMAGIを監視していない状態である。

 あっという間にシンジはMAGIを陥落させた。

 今はどんなデータが収容されているか、分類毎の確認を行っているところだ。これが済めば、一気にデータの吸い上げを行うだけだ。

 思いがけぬチャンスに、長年望んでいたネルフの機密データが得られると思ったシンジは笑みを浮かべていた。

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 【HC】不知火の執務室

 シンジから工作完了の連絡が来るのを、不知火とライアーンは雑談をしながら待っていた。

 ネルフの重要機密エリアに盗聴システムが設置出来れば、ネルフに対して優位に立てる。

 他の職員に知られる訳にはいかないので、副官兼秘書のセレナも遠ざけて、二人きりでシンジの報告を待っていた。


 突然、内線がコールされた。

 シンジなら直通回線だから別件かと軽い気持ちで不知火は電話を受けようとしたが、表示されている内線番号(戦闘指揮所)を見て、

 顔を顰めた。何せ、戦闘指揮所から連絡が入るという事は、何らかの異常事態が発生したという事だからである。


「私だ。………………何だとっ! それは本当か!? ………分かった。基地内に第二級戦闘配置を発令してくれ」

「第二級戦闘配置? まさか、使徒が?」

「そういう事だ。日本政府から連絡が入ったそうだ。私は戦闘指揮所に戻って指揮を執る。

 君はロックフォード中佐にすぐ戻るように連絡を取ってくれ」

「まだ中佐がネルフに行ってから、そんなに時間は経っていません。工作は中止ですね」

「ネルフに対して優位に立てるチャンスだったがな。勿体無いが、仕方無いだろう。

 こちらの自主判断で特務権限が行使出来るようになった今、使徒を放置してネルフに工作を仕掛けるなど、許される訳では無いからな。

 【HC】としては、準備が出来次第、EVAを出撃させる。どうせネルフは停電でEVAは動かないだろう。

 うちが速やかに動かなければ、被害が拡大するだけだ」

「了解しました」


 不知火の顔には不満の色がありありと浮かんでいた。だが、直ぐにその表情を消して、戦闘指揮所に向かっていった。


「やれやれ。中佐も間が悪いな。まあ、納得してくれるだろうが、後で荒れるな。少しは覚悟しておくか」


 連絡を受けた時のシンジの様子が、脳裏に浮かんだ。苦笑いをしたライアーンはシンジに連絡しようと、自分の執務室に向かった。

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 第三新東京:市街

『軍管区内における非常事態宣言に伴い。緊急車両が通ります。道を通りますって………あ、あのう、行き止まりですよ?』


 選挙カーは日向に徴発され、日向の命じるままにネルフ本部に向かっていた。

 そしてマイクを握っていたウグイス嬢は、ネルフの入口ゲートが封鎖されている事に気がついた。

 だが、この一刻を争う非常事態に、そんな些細なことに日向は構っていられなかった。


「良いから、突っ込め!! 何せ、非常事態だからな」

「了解!」


 日向は焦りの為か、何時に無くハイテンションである。その日向に感染したのか、選挙カーのドライバーは勢い良く頷いた。

 ウグイス嬢の悲鳴を撒き散らしながら、選挙カーは停止バーを突き破ってネルフ本部に突入した。

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 ネルフ:通路

 通路をかなり進んだが、音もせずに誰とも会わない。顔には出さないが、心細くなった二人の会話は延々と続いていた。


「そういやアスカは【HC】の事は何か知っとるのか?」

「【HC】の事? TVで見たのと、リツコから聞いた事ぐらいよ。そんな詳しい事は知らないわよ」

「碇と綾波があそこにおるんか。いつか見返したるわい」

「はいはい、頑張んなさいよ。でも、あたしとの組み手に五分以上は耐えられるようになんないとね。そこ分かってるの?」

「わ、分かっとるわい」

「リツコが言ってたけど、弐号機と参号機を少し出力が上がるように改造してるんだって。改造が終われば、少しはマシになるかもよ」

「ほう、それは楽しみやな」

「まあ、あんたはEVAの動かし方を、もうちょっとうまくならないとね。戦場では役に立たないわよ」

「ふん。ワシの底力を見せたるわ」

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 ネルフ:ユグドラシルU内部

 あと数分でMAGIに隠されている情報分類のリストアップが終了する。

 そうなれば優先順位をつけて、機密情報を片っ端からダウンロードすれば良いだけだ。

 暗示を受けた加持から工作規模の連絡を受けていたシンジは、まだまだ電源回線が復旧出来ない事を知っていた。

(念の為、加持からの情報通りの破壊工作が行われている事は確認してある)

 機密情報をダウンロードした後は、MAGIへの侵入の痕跡を消せば完璧だ。時間的余裕は十分にあった。


(………よし、リストアップ終了。………念の為に再確認するか)


 MAGIを落としている今、一番の懸念はリツコにMAGIの様子を確認される事だった。

 管理者であれば、MAGIが落された事は直ぐに分かるだろう。休憩室のリツコの様子を再確認した。


 ………リツコは熱中症に掛かっていた。このまま放置すれば、生命の危険になる可能性もある状態だ。


(両足切断で体力が落ちていたところに、この環境だからな。熱中症にもなるか。放置しておくと危険だが、見捨てる……か。

 まだ余裕があるとはいえ、時間がもったいない。まったく再確認なんか、しなきゃあ良かった。

 さっそく、ダウンロードを…………ええい、くそ! 今回だけだ!!)


 MAGIの隠された機密情報を取るか、熱中症で倒れたリツコを助けるか、重要度は当然MAGIの機密情報である。

 自分とは異なる倫理観を持ち、ネルフ・ゲンドウの為に働くリツコは、シンジにとって排斥の対象になっていた。

 とはいえ、見殺しにするのも後味が悪かった。手向かってくれば容赦無く叩き潰すだろうが、病人とあっては気が引けてしまう。

 結局、まだ時間に余裕があると自分の良心に従ったシンジは最低限の処理をリツコに行った。

 ………………

(さて、余計な事で時間を潰してしまったけど、まだまだ時間はある。さっそくダウンロードを……何だと! 緊急呼び出し!?)


「ボクです。………使徒!? ………………くっ、分かりました。でも、侵入の痕跡を残す訳にはいきません。

 痕跡を消してから戻ります。何としても時間を稼いで下さい。御願いします」


 はあ


 シンジは深い溜息をつき、制御パネルに思いっきり拳を叩き付けた。(手の痛みは当然我慢)


(まったく使徒が絡むと、何でこう問題ばかり発生するんだ! 太平洋艦隊の時も準備を無駄にしてくれるし!!

 それに赤木博士を助けなければ、少しは機密データをダウンロード出来たのに! 御馳走を前にお預けかよ!!

 …………はあ、愚痴っても仕方無いか。遅れればレイに負担が掛かる。仕方無い、痕跡除去を始めるか。でも一つぐらいは……)


 ライアーンからの連絡で使徒が来ている事を知ったシンジは、MAGIへの工作を中止する事にした。

 もっともMAGIに潜入した事を知られるのはまずい。完全にMAGIへアクセスしたログを除去しなくてはならない。

 管理者であるリツコにも見破れないようにログを除去するには時間がかかる。でもやらなくてはならない。

 シンジが戻るのが遅れれば、零号機だけの出撃もありえると言われている。それはシンジにとっては認められない。

 結局、期待した成果が上げられなかったと気落ちしつつ、撤収の準備をするシンジだった。

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 ネルフ:発令所

 主要な電源回線の復旧はまだだが、旧回線のいくつかは復旧が出来て、僅かではあるが電源事情に余裕が出てきた。

 ゲンドウ、冬月、マヤは今後の対応を協議していた。懸念される内容はいくつもあるのだ。


「このジオフロントは、外部から隔離されても自給自足できるコロニーとして造られている。

 その全ての電源が落ちることなど理論上ありえない」

「誰かが故意にやったということですね」

「恐らく、その目的はここの調査だろう」

「復旧ルートから本部の構造を推測するわけですね」

「しゃくな連中だ」

「MAGIにダミーのプログラムを走らせます。全体の把握は困難になります。

(本当なら先輩の方が詳しいけど、これくらいならあたしにも出来るわ)」

「頼む」

「はい」


 冬月からの命令を受けて、マヤはさっそくMAGIの操作に入った。

 リツコがここに居ないのは残念だが、MAGIの操作ならマヤでもある程度は期待出来る。

 一瞬、冬月はリツコを強制的に連れてこようとも考えたが、車椅子では移動は困難だろうと断念した。

 まだ復旧の見込みはたっていない。この破壊工作による被害総額を予想した冬月に愚痴がこぼれた。


「本部初の被害が使徒でなく、同じ人間にやられるとは、やり切れんな」

「所詮、人間の敵は人間だよ」

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 ネルフ内:通路

 アスカの勘に従って、二人は通路を進んでいた。ここ本当に通路なの? と思えるようなところだったが、

 トウジの抗議もアスカの怒鳴り声によって掻き消されるだけだ。

 二人の話し声しか聞こえなかったが、ふと何かが聞こえてきたので耳を澄ました。


『使徒接近中! 繰り返す。使徒接近中!』


 選挙カーのスピーカから流している日向の声が、微かに聞こえてきた。


「使徒やて!?」

「使徒なのっ! 急がなきゃ!」

「でも、どこを行けば行けるんや? さっきから迷っとるんじゃないか?」

「男の癖に、ゴチャゴチャ煩いわよ! あんたはあたしの後ろに付いてくれば良いのよっ!」

「はあ、任せるわ」

「そうよ、あたしの勘を信じなさい!」

「…………」


 脱力したトウジを一瞥すると、アスカは元気良く走り出した。

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 【HC】戦闘指揮所

 既に第二級戦闘配置が発令された事もあり、不知火が戦闘指揮所に入ってきた時は、全てのオペレータが席について、状況確認と

 戦闘準備体制の指示を出していた。


「初号機と零号機の発進準備は?」

「アーシュライト課長からの連絡で、あと五分で完了するとの事です。キャリアの準備には八分かかります。

 後はパイロット待ちです。ワルキューレ第一、第二中隊は直ぐに発進可能です」

「うむ。パイロットは事情があって、少し遅れる。パイロットが到着次第、EVAを発進させる。準備を進めるように。

 それと無人偵察機を五機発進させろ。衛星軌道上からの監視はどうなっている」

「了解しました。無人偵察機五機を発進させます。制御は全てユグドラシルUに移します。

 ……準備出来ました。衛星軌道上からの撮影映像をスクリーンに出します」


 戦闘指揮所の大型スクリーンに衛星軌道上から撮影された使徒が映し出された。もっとも、垂直方向からの映像なので詳細は不明だ。

 だが、長い蜘蛛のような足を使って、ゆっくりと進行している様子が分かる。

 無人偵察機が現地に到着すれば、もうちょっと鮮明な画像が得られるだろうが、今はこれで我慢するしかない。

 不知火は使徒の周囲が、やたらと静かだと感じた。

 何時もであれば、戦自か国連軍の航空機が飛び交っているはずなのに、今回は何処にも見えない。


「戦自はどうした? 偵察活動もしていないのか? それと国連軍は?」

「どうやら戦自は予算不足で、自己判断での攻撃を断念したそうです。

 こちらからの依頼があれば、攻撃を行っても良いとの連絡が入ってます。国連軍はまだ戦自から依頼が無いので、動いていません」

「……分かった。国連軍では距離的に間に合わないか。仕方無い。戦自に私の名前で威力偵察を依頼してくれ。

 経費はこちらで持つとちゃんと伝えてくれ」

「了解しました」


 どの道、偵察もしないでEVAを発進させるつもりは不知火には無かった。

 戦自が予算不足なら少しこちらから予算を回して、戦自とのパイプを太くした方が、今後はやり易くなるだろう。

 技術供与は出来ないが、予算面で戦自を【HC】の味方につけられればと考えたのだ。

 予算は当初のネルフ予算の二割だが、人数面で比較した場合、【HC】にはかなりの余裕があった。

 威力偵察程度の燃料、弾薬代など、高が知れている。問題無いと考えていた。

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 戦自:府中司令部

 スクリーンに映っている使徒を忌々しげに見ていた指揮官だったが、【HC】からの通信内容を聞くと表情が一変した。


「何だと!? それは本当か!?」

「はい。【HC】の不知火司令より、正式に使徒の威力偵察の依頼がありました」

「よし! 第三新東京の近郊基地の全航空戦力を出せ!

 戦闘機にはありったけの対地ミサイルを装備。爆撃機には巡航ミサイルと残っている貫通爆弾を装備させて出撃させろ!」

「ちょっと待って下さい。【HC】からの依頼は威力偵察です。全面攻撃の依頼ではありませんが?」

「構うな。どうせ使徒には普通の攻撃は通用しない。近郊基地の航空戦力全部を出しても、威力偵察が出来るか、分からん」

「では何故、そこまでの戦力を?」

「経費は全て【HC】が持つと言ったのだろう。少しは割り増しして請求するが、小規模攻撃では割り増し額も早々増やせん。

 大規模な部隊を出せば、請求金額の割り増し額も増やせるだろう。この際、在庫は全て使い切る。装備を一新させるチャンスだ。

 早く命令を出せ!」

「は、はい」


 不知火は戦自に威力偵察を頼んだが、まさか近郊基地の全航空戦力を出してくるとは想像もしていなかった。

 割り増し請求に関しては、ある程度は認めるつもりである。偵察を依頼したとはいえ、人命が失われる事もありえるのだ。

 そんな命を掛けた行動に対し、値切るような事を不知火は行うつもりは無かった。

 だが、何事にも限度という物はある。戦自のこの威力偵察に出された戦力によって、想定外の結果が齎される事になるのであった。

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 ネルフ:発令所

 各職員が電源復旧作業を行っている最中に、いきなり車が飛び込んできた。


『使徒接近中! 直ちにEVA発進の必要ありと認む!』


 日向が選挙カーのスピーカを使用した放送は、発令所の全員に聞こえてきた。

 こんな非常時に使徒が来襲? その事を知ったほとんどの職員が狼狽し、顔を青褪めた。

 そんな中、ゲンドウはゆっくりと立ち上がって、何時もの口調で冬月に話し掛けた。


「冬月。後を頼む」

「六分儀? 何をする?」

「私はEVA発進の準備をする」

「手動でか?」

「緊急用のディーゼルがある」

「しかし………」


 ゲンドウは冬月の言葉を聞くつもりは無かった。タラップを使って、手際よく降りて行った。

 そんなゲンドウを見ながら、冬月は一人で呟いた。


「パイロットがいないぞ」

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 ネルフ:EVA格納庫

 ゲンドウの指示の元で、弐号機と参号機の発進準備が人力によって進められていた。


「停止信号プラグの排出作業終了」

「よし。二機ともエントリープラグを挿入開始」

「しかし、まだパイロットが………」

「作業続行だ」

「二人に期待するしかありません」


 何もしなければ、使徒にやられるだけだ。確かにマヤの言う通り、アスカとトウジが自力でここに来てくれる事を期待するしかない。

 無駄骨になるかもしれないが、努力を怠っては成果は期待出来ない。マヤの言葉を理解した作業員は、勢い良く頷いた。


 一般の作業員に混じって、ゲンドウも汗まみれになって作業していた。そしてエントリープラグがEVAに挿入された。


「プラグ固定。準備完了」

「後はあの二人の到着を待つだけね」

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 ネルフ:ユグドラシルU内部

 シンジはMAGIへの侵入の痕跡を完全に除去すると、ユグドラシルUからMAGIへの回線を以前の切断状態に戻していた。

 後はユグドラシルUと核融合炉を停止させれば、【HC】に戻れる状態になる。

 その二つの停止処理を行っている間、シンジは左目を使って現在の状況を確認した。


(使徒は第三新東京市に侵入するも、未だ破壊活動は無しか。現時点でネルフも戦自も迎撃活動は無し。

 こっちはボクの帰りを待っているところか。間に合うな。ん……周辺の戦自の基地から航空機の大部隊が第三新東京に向かっている。

 戦自が迎撃に動いたのか。じゃあ、こちらも早く動かないと)


 ユグドラシルUと核融合炉の自動シャットダウンが終わるのを待って、シンジは【HC】に戻る為に亜空間移動装置を起動させた。

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 【HC】戦闘指揮所

 シンジが帰還したので、初号機と零号機の緊急発進準備が行われていた。

 EVA二機と同時に出撃する戦力は、ワルキューレ第一、第二中隊の二十四機。当然、【ウルドの弓】も支援戦力に含まれる。

 今回はプールからの出撃シーンを披露するような余裕は無かった。

 時間が勝負の分かれ目と、【HC】の職員全員が慌しく動いていた。

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 戦自:府中司令部

 スクリーンには戦自の各基地から第三新東京に向かう、多数の航空機が示されていた。

 だが、これだけの規模の部隊を編成しても、確実に使徒を仕留める事が出来るなどとは言えない事を、戦自の指揮官は認識していた。

 もっとも、無駄なだけの攻撃を行うつもりは無い。


「各航空部隊に通達。各部隊は第三新東京上空で、態勢を整えろ。準備が出来次第、第一波は使徒の真上に対地ミサイルの集中攻撃。

 第二波は使徒の真横に巡航ミサイルの集中攻撃。第三波は使徒の真上から貫通爆弾を投下せよ。以上だ」


 戦自の指揮官は第五使徒の戦闘記録を思い出していた。使徒はATフィールドを攻撃時には張れない。

 であれば、違う方向からの攻撃は使徒にダメージを与えるかもしれない。

 確実に仕留めるとは口が裂けても言えないが、これで使徒にダメージを与えられれば、戦自の予算が増えるかもと考えていた。

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 ネルフ内:通路

 使徒来襲の報を聞いて、焦りながらもアスカとトウジは通路を進んでいた。だが、途中で行き止まって、一瞬判断に迷った。

 ここまで来て、諦める訳にはいかない。狭いダクトが目に入ったアスカは、トウジと一緒にダクトの中を這いつくばって進んでいた。

 自分がリーダーだと言った手前、トウジを前にする訳にはいかない。

 いかないが、トウジの視線が自分のお尻に向いている事を感じたアスカは、羞恥で頬を染めてトウジを威嚇した。


「こら! こっちを見るんじゃ無いわよ! 見たら殺すわよ!」

「見ちゃあかんといわれても、ぐふっ」

「今見たわね。殺すって言ったのが分かんないの!? あんた馬鹿っ! 下を見て進むのよ!!」


 狭い通路をアスカが先頭で、その次にトウジが進んでいる。トウジが顔を上げるとアスカのお尻が見えてしまう。

 アスカの蹴りを顔面に受けつつ、理不尽さをトウジは感じていた。

 そしてアスカの蹴りを受けて余分な負荷をダクトにかけた結果、突然ダクトの下の部分が外れて二人は下に落ちていった。

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 ダクトの蓋が外れてアスカとトウジは落下したが、高さがあまり無かったので、軽い打ち身だけで大きな怪我をする事は無かった。

 待望するアスカとトウジの姿を見た職員は、希望が見えたと目を輝かせていた。

 ただ、ゲンドウだけは動じる事無く、静かに命じた。


「エントリー準備」

「了解。手動ハッチ開け」


 ゲンドウの命令の元、職員は慌しく動き始めた。

 アスカとトウジは近くに居るマヤに状況を確認した。


「EVAは?」

「スタンバイ出来ているわ」

「停電で何も動かないのに?」

「人の手でね。……司令のアイデアよ」

「…………司令の?」


 アスカとトウジは、一般の職員に混じって汗をかきながら作業しているゲンドウを不思議なものを見るかのように見つめていた。

 普通は発令所の高所に居るのを見るぐらいで、ほとんど話した事も無い相手だ。

 命令するだけで、汗をかくような人間には見えなかったのだろう。二人がゲンドウを見直した瞬間だった。

 数人掛かりでエントリープラグのハッチが開けられようとしていた。


 アスカとトウジはエントリープラグに乗り込んだ。キーを操作して、エントリープラグがEVAの中に入っていった。


「エントリー問題無し」


 この後は補助電源によってEVAが起動すれば、発進するだけだ。拘束具はEVAに自力で外させれば良い。

 顔には出さないが、内心ではほっとしたゲンドウの耳に、アスカの怒鳴り声が聞こえてきた。

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 江戸時代に『風が吹けば、桶屋が儲かる』という諺があった。これは、単なる風でも次々に連鎖的に発生する内容により、一見は

 関係無いところにも影響が出るという意味を表す諺である。最近では、同じような事を『バタフライ効果』と言う場合もある。


 ネルフでの出来事を一言で表現出来る言葉だ。原因はリツコの両足を失った事故。それと浅間山のマグマに潜る観測機を弁償した事か。

 本来、使徒の来襲は解読された古代文書によって予言されており、その概略予定に従ってネルフの上層部は動いている。

 弐号機と参号機が破損したとしても、その来襲時期までに修理出来れば良いという考えがあった。

 今回、リツコの両足が失われた事で、ネルフ技術部の作業効率は低下した。

 それに加え、リツコは弁償する観測機を製造するのに忙しく、弐号機の修理に十分な時間が取れなかった。

 リツコは残った部分の修理を速やかに完璧に終わらせたが、リツコ以外のメンバーが修理した箇所の不備までは手が回らなかった。

 そのような経緯から、アスカが弐号機に乗り込んだのだが、起動シーケンスでトラブルが発生した。

 もっとも、弐号機の被害(左足切断)が参号機と同等レベル(装甲板破損)だったら、こんな事態にはならなかっただろうが。


「シンクロに異常が出ているわよ。どういう事!?」

「ワシの方は大丈夫やけど」


 マヤを始め、弐号機の修理を行った技術スタッフはアスカの怒鳴り声を聞いて、顔を青褪めた。

 リツコは過労になるほど睡眠時間を削って、弁償する観測機や弐号機の修理を行ってきた。

 ここでリツコの修理が問題だったか、リツコの前に修理を担当したスタッフが問題だったかを議論している暇は無かった。

 弐号機が起動しない原因追及は後にするしかない。今は動ける参号機だけでも出撃させるしかないだろう。


「司令。申し訳ありません。これから弐号機の緊急点検に入ります」

「………参号機だけで出撃する。弐号機は直ぐに緊急点検に入れ!」

「了解しました」


 弐号機が動かない事を知り、内心では怒りまくったゲンドウだったが、表面上は怒りを抑えて、速やかな参号機の出撃を命令した。

 ゲンドウの雰囲気に気後れしたマヤだが、血の気をなくしたような顔で直ぐに頷いた。


「ちょっと、参号機だけ出撃ってどういう事なのよ!? 弐号機はどうしたのよ! 早く直しなさいよ!」


 アスカは怒鳴りまくったが、こればかりはどうしようも無い。

 マヤと弐号機の修理を担当したスタッフは緊急点検に入り、残りのスタッフは参号機の出撃のフォローを行った。


 かくして、参号機に搭乗したトウジは自力で拘束具を外し、狭い通路に入っていった。

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 参号機

 トウジは初陣を前回済ませていたが、たった一人の、しかも援護する戦力さえ皆無の状態の出撃は初めてだ。

 不安がトウジの脳裏を過ぎった。アスカという口煩いが実力を伴った同僚、いや先輩か、一緒の出撃では無いのだ。

 狭い通路を一人寂しく黙々と進んでいた。だが、トウジはふと気がついた。


(一人やけど、ワシが使徒を倒せれば、アスカもワシの事は認めるやろ。前回は無かったけど、今回は飛び道具もあるさかい。

 それに成功すれば、あの碇にも一泡吹かせられるっちゅうもんやしな。よし、やったるわい」


 そんな考えをしながら進んでいくと、扉があった。この先が縦坑になっていると聞いている。

 トウジは気合を入れ、目の前の扉を蹴り破った。

 その先には確かに縦坑になっていた。情報に間違い無いとトウジが思った時、何かが上から落ちて来た。何か液体のようなものだ。

 近くにあったパイプを上から落ちて来た液に翳すと、煙を上げて溶け出した。


(これは溶解液っちゅうやつか。特殊スライムみたいなもんか。じゃあ、この上に使徒がおんのか? やるっきゃ無い!!)


 RPGで溶解液を使う敵の難易度はそう高く無い。一般的では無いかもしれないが、トウジがやった事のあるゲームではそうだった。

 トウジは興奮の為に冷静さを失っていたかもしれない。右半身を縦坑に乗り出し、パレットライフルを上に向けた。


「目標をセンターに入れて…………スイッチ」


 トウジはパレットライフルを、上に向けて撃ち出した。

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 初号機と零号機はキャリアに搭載されて、第三新東京に向かっているところであった。

 使徒は第三新東京に侵入していたが、まだ破壊活動を行ってはいない。

 初号機と零号機の到着まではまだ少し掛かるが、深刻な被害が出る前には使徒との戦闘に入る事が出来るだろう。

 間に合った。それがシンジの本音だった。これが出動が遅れて第三新東京に深刻な被害が出れば、独自の判断で特務権限の行使が可能に

 なった【HC】に非難の目が向けられるかもしれなかったのだ。

 まだ戦自の威力偵察は開始されていない。だが、初号機と零号機が到着するまでにはやってくれるだろう。

 威力偵察の結果を早急に判断して、使徒攻略の糸口を見つけなければならないのだ。

 現在、衛星軌道上からの映像と無人偵察機の映像が初号機のモニタに映し出されていた。

 第三新東京への到着までの時間、戦自の威力偵察の結果をじっくり確認しようと、シンジの目はモニタに釘付けになっていた。

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 第三新東京:使徒周辺

 近郊基地から発進した戦自の各航空機隊は、第三新東京の上空で編隊を組み直すと、直ちに攻撃態勢に入った。


 まず第一波。戦闘機に装備された対地ミサイルが一斉に発射され、使徒の上方に着弾。派手な爆煙と轟音を撒き散らした。

 使徒はATフィールドを常時纏っている。

 使徒への被害は無かったが、使徒は上方からの攻撃を感じて、上方のATフィールドを強化した。

 奇しくも、参号機が身を縦坑に乗り出した瞬間だった。


 そして第二波。僅かなタイムラグの後、低空を飛んできた巡航ミサイルが使徒の側面に着弾した。

 使徒のATフィールドが薄くなっていた側面にである。使徒に被害は出なかったが、使徒の注意を引くには十分だった。

 そして次の瞬間、使徒の身体を下から発射されたパレットライフルの弾が貫通した。

 ただ、銃弾の軌跡は垂直方向では無く、兆弾の為か四方に散っていたが。

 まあ、参号機の照準がずれたのか、そもそもパレットライフルを構えている参号機の不安定さがあったのかは不明だが、

 参号機の発射した銃弾は使徒のコアを直撃せず、縦坑の側面に当たりながら兆弾となって使徒を貫いていた。

 MAGIのフォローが無い状態では、上等の結果かもしれない。何せ、パレットライフルで使徒のコアにダメージを与えたのだ。

 よろめく使徒。完全に息絶えていないのか、僅かにピクピクと動いていた。


 戦自の航空機による第三波が使徒に襲い掛かった。

 ATフィールドは張られておらず、まだ微かに動いている使徒に爆撃機から投下された貫通爆弾が直撃した。


 直後、十字型の閃光が走り、大きな衝撃ともに爆風が周囲に撒き散らされていった。

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 参号機

 使徒爆発の爆風は当然下の方向にも向かった。右半身を縦坑に乗り出していた参号機は爆風を受けて、縦坑を落下していた。

 どこかのシーンのように、縦坑の両端に手を当てて落下速度を抑えて停止する事も、10点満点のような着地も出来なかった。

 まあ、手足を伸ばして落下速度を抑えた為か、そんな深刻なダメージは無かったが。

 トウジは狂喜していた。パレットライフル発射直後の爆発。これは使徒の殲滅しか無いだろう。

 ビギナーズラックかもしれないが、戦果は戦果だ。これでアスカにもシンジにもデカイ顔はさせずに済むかもしれない。

 何より、ミサトからご褒美があるかもしれない。


 真実を知った時、どのような判断をするかは不明だが、今のトウジは初戦果に酔い痴れていた。

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 ネルフ:発令所

 使徒の爆発した衝撃は、地下の発令所にも届いていた。参号機を出撃させた後のタイミングで、この衝撃。

 これは誰しもが使徒殲滅に成功したのだろうと思い、大きな歓声があがった。

 何しろ、参号機が使徒を倒したのなら、ネルフとしては初戦果になるのだ。

 直後、停電の復旧作業が終了して、次々に照明が点きはじめた。

 監視システムも復旧して、第三新東京の状況が次々に大型モニタに映し出された。


「現在、第三新東京市内に使徒を認めず。中心エリアにかなりの規模の爆発の痕跡があります。

 これは使徒が爆発した時の痕跡では無いかと推測されます」

「参号機はどうなっている?」

「……現在、参号機はバッテリィ切れで停止中です。縦坑の底にいます。パイロットの心拍は高めですが、異常はありません」

「よし、参号機の回収を急がせろ。それと停電中に他に異常が無かったか、早急に確認しろ」


 大型モニタに映し出される第三新東京の状況。そして参号機の状況。これは参号機が使徒を殲滅したと判断して良いのだろう。

 苦労した甲斐はあった。弐号機が出撃出来ず、参号機のみの出撃はゲンドウに大きな不安を抱かせていた。

 だが、指揮官たる者、不安を顔に出す訳にはいかない。そしてこの結果だ。

 ゲンドウは安堵した事を顔には出さず、淡々と復旧に関しての指示を出し始めた。

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 戦自:府中司令部

 信じられないといった表情の指揮官が、大声で連絡を入れてきた士官を問い質していた。


「何だと、それは本当か!?」

『はい。我々の第三波攻撃で使徒を殲滅しました。撮影映像がありますので、転送します』


 第三新東京へ派遣した航空機部隊の指揮官から連絡を受けた司令部は、戦自の攻撃により使徒が殲滅されたと聞き、色めきたった。

 何せ、今まではいくら攻撃しても効果は出ず、使徒を攻撃する事は予算の無駄使いと陰口を散々言われてきたのだ。

 国軍としての誇りはあるが、効果が出ない攻撃を行う事は出来ない。予算の無駄使いは避けなければならない。

 まあ、特務機関からの要請があれば攻撃を行うが、その時は特務機関の指揮下という立場である。

 ともあれ、実際の映像を見なければ、納得は出来ない。司令部のメンバーは攻撃隊から送られてきた映像に見入った。

 ……………………

 ……………………

「おい、これはどうする?」

「第二波の攻撃の後に、地下から何らかの弾丸が使徒を貫いている。あれが致命傷になったのだろうな」

「ネルフのEVAか?」

「そうだろうな。【HC】のEVAは移動中である事は確認済みだ。ネルフしか無いだろう」

「だが、第三波目の攻撃が使徒を殲滅したのだぞ。我々の攻撃で使徒は殲滅されたのでは無いか?」

「共同作戦による使徒殲滅か」

「期せずしての共同作戦だな。だが、ネルフとの共同作戦で上が納得するか?」

「今のネルフとの関係じゃ無理だな」

「うまく行けば、うち(戦自)の単独の戦果になるかもな」

「【HC】の要請で威力偵察してだろう。【HC】に費用を請求したら、戦果は【HC】のポイントになる」

「うっ………名を取るか、実を取るかか。名を取れば、【HC】に費用は請求出来ないが、使徒殲滅の戦果はうち(戦自)のもの。

 実を取れば、【HC】に費用は請求出来るが、戦果は【HC】のものか。どうする?」

「これを俺達だけの判断で決めては、後で揉める元になる。この映像資料と状況を幕僚本部に転送してくれ」

「了解しました」

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 初号機

 シンジは脱力していた。嘗て無いほどに気が抜けていた。

 使徒の弱点を探ろうと、戦自の攻撃をくまなく見ていたのだが、通常弾のみで使徒があっさりと倒されてしまった。

 別に使徒はEVAで無くては倒せないというつもりは無いが、通常弾のみで使徒が倒されるとは想像もしていなかった。

 もしこの結末が分かっていたなら、シンジは基地に戻る事無く、MAGIの工作活動を続けていただろう。

 目の前のご馳走(MAGIの機密情報)を放り出して基地に戻り、慌てて初号機で出撃したのに、この結末とは。

 別に、全ての使徒を【HC】で倒さなくてはならないとかは思ってはいない。いないが、ここまで苦労したのに、この結末とは。


 今回、レイからは出撃に関しての特別報酬の依頼が出ていた。まあ、旅行と旅行先でのデートなので、その事に問題は無い。

 無いが、今回の件に関しては、自分の得になる事は一切無かったなと考えつつ、基地に戻るように指示を出した。

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 【HC】戦闘指揮所

 不知火も脱力していたが、シンジほどでは無かった。【HC】の主目的は使徒を倒す事では無く、サードインパクトを防ぐ事である。

 別にどこの組織が使徒を倒しても構わないと考えていた。ネルフが使徒を倒しても、少し残念に思うであろうが、特に反発は無い。


 だが、戦自の幕僚本部から連絡が入って、今回の使徒戦の費用を【HC】に請求しない代わりに、使徒戦の戦果が戦自のものであると

 証明して欲しいと言われたのだ。戦自が使徒殲滅の戦果を欲しているのは理解出来た。出来たが、費用請求無しの代わりに

 ネルフと戦果の取り合いになるのに協力してくれと言われて、はいそうですかと頷く訳にもいかない。

 結局、戦自の費用に関しては、戦自の判断に委ねた。(戦自が費用を請求すれば、【HC】は費用を支払う)

 ネルフと戦自の間の戦果の交渉に関しては、【HC】は消極的ながらも意見を表明するだけという事に落ち着いた。


 今回の使徒に関して、徒労だけが目立ったなと感じている不知火だった。

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 エレベータ内

 尿意を感じてエレベータから脱出しようと、加持の肩の上で悪戦苦闘していたミサトだったが、突然電源が復旧した事で

 バランスを崩して加持の上に倒れこんだ。だが、直ぐに立ち上がった。


 エレベータが動き出し、扉が開くとミサトは化粧室に駆け込んだ。

 他の職員は停電復旧後の確認で忙しく、ミサトが焦った表情でトイレに駆け込むのを見た人間は誰もいなかった。

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 普通の照明は切られて、薄暗い灯りだけが点いている部屋で、五人の老人の立体映像とゲンドウの姿が浮かび上がっていた。


『六分儀。この度の使徒殲滅の件だが、ネルフが使徒を倒したとの報告書は正式に却下し、戦自との共同作戦の成果とする』

「何故です!? あれは参号機の銃撃で使徒が倒れたのです! ネルフの戦果です」

『その前に戦自の攻撃が無ければ、使徒は倒せなかったというのが実情だろう。あまり欲張るものでは無いぞ』

『さよう。公正に判断すれば、七対三で戦自の功績の方が多い。五対五に持ち込めただけでも良しとしなければな』

『まったく、我等をこんな下らない論争に巻き込まんで欲しいものだな』


 一般には公表されないが、使徒戦に関して、誰がどのように倒したか明確にする必要があった。

 国連というのはお役所であり、曖昧な表現での結果報告書は認められない。

(もっとも天武が倒した時は、倒した結果だけで手段と方法等は不明という事にしてある)

 少なくとも、どの組織が倒したかを明確にしておかないと、功績が明確に出来ない為でもある。

 今回、戦自は日本政府を通じて、正式に戦自が使徒を倒したという報告書を国連に提出した。

 ネルフが白星をあげていない手前、補完委員会としては、それは認められない。ネルフ不要論に繋がる為である。

 だが、日本政府が提出した使徒への攻撃映像と、添付された【HC】の見解も無視する訳にはいかない。

 結果、補完委員会はネルフの功績を拡大解釈し、戦自との共同作戦にするという事で日本政府を納得させていた。

 まあ、予算が絡む事は無い。ただ使徒殲滅の名誉だけであるが、組織ともなると建前を重視しなくてはならない場合もある。

 本来の業務では無い、つまらない内容ではあるが、これも補完計画を進める為と割り切って、補完委員会が動いたのだ。

 何時もとは違う、疲れたような雰囲気を五人のメンバーは漂わせていた。


『弐号機の修理は終わったのかね』

『まったく、参号機が功績をあげたから良かったが、弐号機が起動しなかったのは無視出来ぬな』

「………」


 ゲンドウから見て、弐号機の修理が完了していなかったのは痛恨事だった。結局はリツコの両足喪失と浅間山の弁償する観測機の製造が

 影響しているのだが、それを言えば管理者たるゲンドウの管理能力不足を指摘されるだけだ。ここは黙るしかなかった。

 それから約一時間程度、五人の老人の愚痴は延々と続いていた。

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 五人の老人の立体映像が消えるのと同時に、照明が点いた。ゲンドウの側に立ちっぱなしだった冬月は、疲れた様子で話し出した。


「今回はやたら長かったな。足が棒になったぞ」

「……未だ停電工作を何処が仕掛けたのか不明だ」

「日本政府も馬鹿では無い。迂闊にばれるような証拠は残さんだろう」


 今回の原因である停電工作に関しても、日本政府がやっただろうと言える証拠は何も出てこなかった。

 しかも使徒は爆発し、使徒のサンプルも入手出来なかった。

 【HC】を責めようにも、【HC】のEVAが出撃した事は確認済みで、怠慢とかは言い出せない。

 まあ、使徒殲滅の功績の半分は得る事が出来た。これで以前から考えていた事が実行出来るとゲンドウは思案していた。

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 二−A:教室

 停電があった翌日、トウジは学校を休んでいた。まあ、参号機落下による軽い打撲であり、念の為である。

 だが、そんな事情を知らないヒカリは、何故か不機嫌そうな顔のアスカにトウジの事を尋ねた。


「アスカ、鈴原はどうしたか知ってる? 学校に来てないけど、連絡が入って無いのよ」

「……あいつは入院してるわよ」

「入院!? 昨日の停電と関係あるの!? 容態は?」

「軽い打撲で検査入院よ。そんなに騒ぐ事無いわよ」

「そ、そうなの。良かった」


 親しい間柄のヒカリであったが、今のアスカはトウジの事は考えたくも無かった。

 だが、このままヒカリと話していると爆発するかもと考え、アスカは今日は休む事にした。


「ヒカリ、ごめん。あたしは調子が悪いから、今日は欠席するわ。先生に伝えてくれる」


 ヒカリに伝えるとアスカはカバンを持って教室を出た。こういう時は気分転換でもしないとやってられない。


(弐号機が動けば、あたしが使徒を倒せたのに! 弐号機が動かないばっかりに参号機に使徒を倒されるなんて、なんて事なのよ!

 あたしがまだ使徒を倒していないのに、あたしに劣るトウジが使徒を倒したなんて、認められないわよっ!

 まあ、弐号機が動かなかったのは、あいつのせいじゃ無い事は分かってるけど、釈然としないわ!

 弐号機が動かなかったのは、リツコの前の技術スタッフの修理分だとか言ってたわよね。でもリツコが最終責任者よね。

 まあ、過労と軽い熱中症で入院してるって聞いたけど、責任は…………ああ、もう、この気持ちを何処にぶつければ良いのよ!?)


 自分より先に使徒を倒したトウジに文句を言いたいが、トウジの非は無いから言い出せない。

 弐号機の修理をミスった技術スタッフと責任者たるリツコに文句を言いたいが、リツコは過労で入院で、文句を言える状況じゃ無い。

 アスカは不満を発散させようと、昼間ではあるがゲームセンターに向かっていた。

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 【HC】居住エリア内のマンションの談話室(宴会)

 国連軍から出向で来ているメンバーの居住しているマンションの談話室で、恒例と化している宴会が行われていた。


「今回の使徒殲滅は戦自とネルフの共同作戦の成果か。うちの出番は無かったか」

「仕方無いさ。初号機と零号機が出撃して、現地に行く前に倒されたんじゃな」

「そうそう。不知火司令も言ってたけど、別にパーフェクトスコアを狙ってる訳じゃ無い。結果が良ければ、全て良しだってさ」

「でも、出撃して戦う前に使徒が倒されたって聞いたけど、出撃したメンバーは荒れて無いのかね」

「知らないの? かなり凄かったみたいだよ」

「どうなったの?」

「不知火司令が出撃メンバー全員を集めて慰労会をやったらしいんだよ。もちろん、ただ酒を準備してさ。

 そしたら不満を溜め込んだワルキューレのパイロット達が悪酔いしてさ、どんちゃん騒ぎになったみたいだぜ」

「あっ、それ俺も聞いた。でもって、途中から第三中隊の美女達が合流して、えらい騒ぎになったんだってさ」

「第三中隊って、全員が金髪碧眼の美女揃いのあそこか」

「そうそう、第一、第二中隊だけ慰労して、第三中隊を除け者にするのかって、怒って乱入したらしいぜ」

「そういえば、不知火司令も悪酔いして腹踊りを披露したとか」

「嘘だろう?」

「嘘だよ。でも中佐の方はもっと凄かったって聞いてるぞ」

「中佐? ああ、ロックフォード中佐か。でも未成年だろ。どうなったんだ?」

「中佐は宴会には出ないで、樹海に入って行ったのさ」

「樹海? 危険じゃないのか?」

「……お前は当番じゃ無かったから知らないんだろうがな。中佐が入った樹海の場所を知ってるか? 今はかなりの荒地になってるぞ」

「ま、まさか、あの荒地か? 倒された木は五十本じゃ済まないぞ! 今まで何が原因でああなったか知らなかったぞ」

「ああ、中佐の八つ当たりらしい。あれで気分転換したってさ」

「……中佐は怒らせない方が無難だな。じゃあ、今じゃ機嫌も直ったのか?」

「今は中佐は家族と一緒に旅行中さ」

「旅行? 聞いてないぞ」

「ああ。司令に無理やり捻じ込んで休暇を取ったらしい。今頃は家族一緒で旅行だってさ。行き先は教えてくれなかったけどさ」






To be continued...
(2011.11.20 初版)
(2012.06.30 改訂一版)


(あとがき)

 偶然と偶然が重なったというシーンを書いてみました。まあ、停電と使徒来襲が偶然重なるのもありですしね。

 まあ、某弐号機パイロットには不本意な結末でしょうが、リツコの足の件や弁償するマグマの観測機とを絡めました。

 ネルフの扱いが若干変わったと思われる方もいるかもしれませんが、当初からの予定通りの展開です。

 まあ、倫理観、価値観が納得出来ないと思ってますので、交渉の為(譲歩を引き出す為)に本音を言う事はありません。

 これに関しては、納得していただくしか無いと思っていますが。(笑)

 今回はすっきりとしない終わり方です。書いていて、自分も不満が溜まりました。

 この不満は次回に発散させたいと思っています。



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