因果応報、その果てには

第四十七話

presented by えっくん様


 対空ミサイルの直撃を受けて空中で爆発したVTOLの残骸に、暗殺部隊の五人の男が近づいていった。


「最初は拉致して洗脳だったから面倒だと思ったが、途中から抹殺命令に切り替わったから、楽な仕事だったな。

 これなら俺達三十人を集める意味は無かったろう。魔術師もこれで死んだな。化け物と聞いていたが、あっさりしたもんだ。

 態と搬出ルートの復旧を遅らせて、ジオフロントの天井の大穴を通るように誘導した甲斐があるってもんだな」

「油断するな。まだ生きているかも知れないぞ」

「おいおい。この有様を見ろよ。火を噴いて機体の原型さえ止めていないんだ。これで生きていたら、それこそ化け物だぞ」

「奴は肆号機の起動試験の時の爆発事故でも生き延びたんだ。

 後から確認したが、どう考えても距離的に生き延びるはずも無いところにいたのにだ。それに奴の護衛の事もある」

「あの灰色の狼の事か。あれは本部内に居る事が確認されている。大丈夫だ」

「護衛があれ一匹だけだという保証は無い。魔術師の遺体を確認するまで油断するな」


 そう言って、まだ火が燻っているVTOL機の残骸を確認し始めた。

 暗殺部隊は全部で三十人いるが、五名は【HC】の使用エリアに陽動攻撃を仕掛けていた。

 そして残りの二十人は用心の為に周囲に散開しており、万が一の場合に備えていた。


「パイロットと護衛らしい二人の遺体はあったが、魔術師の遺体が無いな」

「瀕死でも生きていれば、そのまま洗脳処理だ。死んでいれば遺体を持ち帰って解析するそうだ。どの道、見つけなければな」

「こっちは機体の前半部分の残骸だ。魔術師は後ろ部分にいたのかもしれん。あっちの残骸を探すか」

「ちょっと待て! これは車椅子の残骸だ! 魔術師の遺体が見つからないとはどういう事だ!?」

「まさか、あの攻撃でも仕留められなかったと言うのか!? あの一瞬で逃げ出したとでも言うのか!?」


 シンジの使用していた車椅子が見つかったが、シンジ本人の遺体が見つからない事に五人は狼狽していた。

 次の瞬間、青白い光が五本走って五人の眉間を貫いていった。

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 シンジはミーシャ達が攻撃を受けた事に気を取られ、周囲を警戒していなかった事もあって、ミサイルの直撃を許してしまった。

 機体は爆発して、パイロットと護衛二人は即死。だが、シンジは指輪による物理障壁で一瞬の時間を稼いでいる間に亜空間に避難した。

 亜空間ではシンジを脅かす存在は無い。もっとも時間が無いので、直ぐに体制を整える必要があった。

 まずはミーシャ達三人の身の安全を確保する事が優先だ。探ると、五人の黒ずくめがバズーカ砲などで攻撃している事が分かった。

 【HC】の使用エリアに踏み込んでいないところを見ると陽動らしい。ならばと考えて、シンジは最終防衛システムを起動させた。

 人目につかないように五人を処分か拘束しろと命令を出した後、ジオフロントに展開している襲撃者を確認した。


 五人がVTOLの残骸に近づいてくるのが分かった。シンジは亜空間にいるので、五人からはシンジを認識する事が出来ない。

 だが、シンジは亜空間からでも五人の存在を確認出来た。そして知覚を拡大させた。周囲に潜伏している二十人も確認出来た。


(このボクを洗脳か抹殺かとは、舐めたまねをしてくれたな。それにしても、この前の会談でボクが切れた事に対する報復か。

 意外とあの議長も老人の癖に気が短いな。それにしても、こんな事をしたと言う事は、初号機が無くても大丈夫と判断したのか。

 どの道、ここまでやられては今までの関係も全てご破算だ。その覚悟も済んでいるという事だな。

 しかし、ジオフロントで待ち構えているとは考えたな。確かにここなら【ウルドの弓】は使えない。

 だけど、ボクの奥の手がそれだけだと思った事が運のつきだ。絶対に後悔させてやる。

 幸いにもジオフロントのこの周囲一帯はこっちの管理エリアで、立ち入り禁止だ。人目につく事は無い。

 この前の使徒戦直前にボクを襲撃したのも、この連中だろう。命令を出した人間にも、きっちり報復させて貰う。

 目の前の二十五人以外にも気配を感じる。第二波攻撃もありえるか。だったら、こうする!)


 シンジは指輪による物理障壁の出力を最大にして、その内側に魔術によるシールドを展開した。

 これでシールドは二重になり、ミサイルの直撃でも被害は受けない。外部からは白っぽい膜でシンジが覆われているように見える。

 さらに個人用の装甲スーツを呼び出して、瞬時に装着可能状態にした。万が一の場合の為である。

 ここまでの準備を行ったシンジは、二十五人の包囲網の外側に姿を現した。

 そして左手のリストバンドを外し、銀色の円盤から青白い光を撃ち出した。

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 隠れて包囲網を敷いていた二十人は、VTOLの残骸を調査していた仲間五人が瞬時に倒された事を知ると、直ぐに体勢を変えた。

 ミサイルの直撃を受けて空中で爆発したVTOLから、どうやってシンジが脱出が出来たかを疑問に思ったメンバーも居たが、

 考えるのは後でも出来る。今はシンジを迎撃するのが先だ。何より、隠れて準備した包囲網の外からの攻撃だ。

 どうやってシンジがそこまで移動したかは分からないが、二十人からの攻撃に耐え得るはずも無いと考えていた。

 暗殺部隊の二十人は、青白い光が放たれた地点に銃撃を加えた。二十人からの銃撃は凄まじい。

 中にはバズーカ砲を撃ち込んでいるメンバーも居た。そこに人間がいたら、あっと言う間にミンチになるだろう。

 だが、返ってきたのはシンジの断末魔では無く、最初に光が放たれた方向とはまったく違った方向からの青白い光だった。

 瞬く間に、五人の眉間が撃ち抜かれた。残るは十五人。反射的に光が放たれたポイントに銃撃を叩き込むが、反応はまったく無い。

 何故、シンジはこうも的確に銃撃が出来るのか、残されたメンバーは理由が分からずに動揺が走っていた。

 何せ、暗殺部隊からはシンジの居場所が特定出来ない。その時に仲間を奮い立たせようと、リーダーが声をあげた。


「魔術師の左手にあるのは携帯タイプの粒子砲だ。発射数に限りがあるはずだ! 今までの発射数は10発だ。もう少しで弾切れになる。

 報告では最大でも20発が上限という予測だ。出来る限り、奴に無駄弾を撃たせるんだ。そうすれば勝機が見えてくる!」


 リーダーの声に返ってきたのは、また別の方向から放たれた青白い光だった。今度も一瞬にして五人の眉間が撃ち抜かれた。

 残りは十人。光が放たれたポイントに幾ら銃撃を加えても、一切の反応は無かった。

 今までに何人もの標的を暗殺してきたが、ここまで翻弄された事は無かった。動揺を隠し切れずに、喚き出す者も出てきた。


「何処から撃っているんだ!? 全然気配が無いぞ。俺達は化け物でも相手にしているのか!?」

「何でこうも正確に撃てるんだ!? 奴の目は特別製なのか!?」

「黙って集中しろ! 狙撃されるぞ! 今までの粒子砲は十五発だ。そろそろ弾切れになる!」


 さらに青白い五本の光が走り、五人が倒れた。残ったのは五人だけだ。光が放たれたポイントに幾ら銃撃を加えても反応は無い。

 携帯用の粒子砲の最大発射数が20発だというのは、あくまで予測だ。違う可能性だってある。

 このまま為す術も無く全滅するしか無いのかと絶望に捕らわれた時、変化が起きた。

 土を踏みしめる音を立てながら、シンジが姿を現したのだ。遠目だが、うっすらと白っぽい膜に覆われているのが分かる。

 何故、今になってシンジが姿を現したのか? その理由に思い当たった残りの五人は、歓喜の表情を浮かべていた。


「へっ。やっと弾切れか。殺された仲間の恨みを晴らさせて貰おうか。両手を叩き切ってやる!」

「俺は両足を斬り落してやる! どうせ、洗脳されてその後は処分されるんだ。産まれてきた事を後悔させてやる!」

「待て! 奴は右足は骨折していたはずだ。何で普通に歩いているんだ!? それにあの白っぽい膜はシールドだ。油断するな!」

「へっ。いくらシールドがあっても弾切れじゃあ、俺達を攻撃出来ないさ。ゆっくりと甚振ってやるぜ」

「上に渡す前に、お前に知らない世界を見せてやるさ。お前の後ろの初めては俺が貰うぞ!」


 リーダーだけは油断はしていなかったが、他の四人は仲間の敵討ちをすると息巻いて、シンジを睨みつけていた。

 だがシンジは口を開く事も無く、左腕を突き出しただけだった。そして生き残っていた暗殺部隊の五人全員の眉間を青白い光が貫いた。

 何故、自分達が全滅するのか? その理由も分からぬまま、五人は即死した。陽動の五人も全て処分している。

 これで暗殺部隊は全滅した。だが、まだシンジを見ている者がいる。その事を知覚しているシンジは初めて口を開いた。

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「援護もする事無く、仲間を見殺しとは良い趣味だな。四人とも、そろそろ出てきたらどうだ?」

「ほう。我らの事を分かっていたのか。暗殺部隊の二十五人を僅かな抵抗も許さずに倒すとは、さすがだな。

 右足の怪我も偽装だった訳か。用心深い事だ」

「気をつけろ! さっきまで魔術師が何処にいたのか、俺の透視能力でも分からなかったんだ。

 こうして対峙しても、奴のシールドの内側は全然見えない。奴には何かがある。油断するな!」

「逃げ回るのが上手いだけだろう。こうして目の前に姿を現したからには、俺達の敵では無い。

 その自慢のシールドが何処まで耐えられるか、俺達が試してやるさ。それにお前の粒子砲ごときでは俺達に通用しない」

「お前が基地を破壊したのか!? だったら妹の敵だ! 絶対に俺がきさまを殺す!!」

「『104』。名誉挽回のチャンスをやる。この場で魔術師を洗脳出来るのはお前だけだ。

 奴を洗脳出来れば、今までの不始末は帳消しにしてやる」

「やってやるぜ!!」


 『104』は一人で前に進み出て、シンジを憎々しげに睨んで両手を掲げた。そして強烈な精神波をシンジに向けた。

 ネルフの職員三十人以上を瞬時に洗脳してシンジを襲撃させた事から分かるように、『104』の能力は非常に強い。

 単純に比較して、セレナの『魔眼』以上の威力がある。

 事実、後ろにいて精神波の余波を浴びている『012』『067』『068』の三人にも軽い影響が出ている。

 銃弾を弾く程度のシンジの薄いシールドなどでは抵抗さえ出来ないと『104』は考えていた。

 だが、シンジは何も言わずに精神障壁を強化すると、左手から青白い光を撃ち出した。

 その光は『104』の頭部に伸びていったが、当たる直前に光は不可視のシールドに当たったかのように四散した。


「何っ!?」  「へえ?」


 『104』は自分の精神波攻撃に耐えて、シンジが反撃してきた事に驚愕していた。今出している精神波攻撃は最大出力だ。

 これに耐え得る事など有り得ないと思っていた。

 一方、シンジも左手から撃ち出した光線が防がれた事に感心していた。成る程、大口を叩くだけの事はあるかと考え直した。

 シンジの左目が赤く輝いた。今のシンジの脳裏には、後ろに控えている二人の力が、精神波攻撃を行っている『104』の前面に

 シールドを展開している有様がはっきりと浮かび上がった。おそらくサイコシールドの類だと思われた。

 そして弱点を直ぐに見つけた。シールドは『104』の前面だけであり、側面や後方、上には展開していない。

 確かに粒子砲なら直進しかしない。自分と標的の間にシールドを張れば、普通の粒子砲なら弾き返す事が出来るだろう。

 そう、普通の粒子砲なら。そう考えたシンジはニヤリと笑った。


「ふん! お前のご自慢の粒子砲とやらも、我々の力の前には通用しない。もう良い、『104』は退け!

 魔術師にお前の精神攻撃が効かないと分かれば、お前は不要だ。邪魔にならないように下がっていろ!」

「ま、待ってくれ! くそっ! これでも喰らえっ!!」


 『104』はES部隊に所属しており、使徒細胞を摂取した事で特殊能力(この場合は精神感応能力)に目覚めており、

 同時にサイボーグ改造を施されている。『104』は両腕に小型ミサイルを内蔵していた。

 そしてそのミサイルをシンジ目掛けて発射した。だが、そのミサイルも容易くシンジに迎撃された。

 ミサイルの爆風が『104』を襲おうとしたが、前面のシールドで防がれた。

 次の瞬間、『104』の横に向けて放たれた青白い光は途中で方向を変えて、『104』の頭部を横から撃ち抜いた。

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 サイコキネシス能力を持つ『067』と『068』は、前衛の『104』の前面にシールドを展開していた。

 その効力は通常のミサイル攻撃など容易く防げる力がある。シンジの放つ携帯用の粒子砲を防ぐなど、造作も無いと考えていた。

 粒子砲とは弾丸の代わりに光の粒子を撃ち出す兵器であり、直進しかしない。だからこそ『104』の前面にシールドを展開したのだ。

 だが、今回のシンジの攻撃では青白い光は途中で方向を変えた。その事は『012』『067』『068』の三人の動揺を引き出した。


「な、何で粒子砲が曲がるんだ!? あれは粒子砲じゃ無いのか!?」

「ま、まさか反射衛星砲みたいに、空中に反射するようなものが浮遊しているってのか!?」

「いや、あの軌跡は曲線を描いていた。あれは反射されたものでは無いぞ!」

「だったら、何なんだ!? それに携帯用の粒子砲だったら、そろそろ弾切れになる頃だろう。絶対におかしい!」

「今まで一度もこれが粒子砲だって言った事は無い。勝手に決め付けるのはそちらの自由だがな」

「じゃあ、それはいったい何なんだ!?」

「……これはボクの精神エネルギーを撃ち出している。精神力が続く限りは弾切れは無いし、意識した標的を外す事も無い。

 だからこそ、威力も軌道も標的も全てボクの意識一つで自由に変えられる。障害物など意味は無い。残念だったな」

「そ、それってサイ○ガンじゃ無いか!? そんなものを作れると言うのか!?」


 ES部隊員にはサイボーグ改造の時に監視装置が組み込まれており、暗殺部隊が全滅した有様はゼーレの監視組織に伝えられていた。

 そしてその事はシンジは左目を経由して知っていた。

 態と通信封鎖しなかったのは、自分達が仕出かした事がどんな結果を招いたかを警告する為である。

 だからこそ、暗殺部隊の最後の五人を始末する直前に姿を現した。だが、この左手のサイ○ガンの事まで教えるつもりは無かった。

 『104』を攻撃したのは、戦闘を行っている一帯の通信電波遮断を行ってからだ。

 一人として生かして帰すつもりはシンジには無かった。だからこそ、言う必要の無いサイ○ガンの事も話したのだ。

 (ES部隊のメンバーがサイ○ガンの原作を知っていた事を意外に感じたが、それを突っ込む事は無かった)

 ここ最近は右足の骨折の為に、満足に動いていなかった。運動不足解消には絶好の機会である。

 既に結界を張った事もあり、負けるはずの無い戦いに向かうシンジの目は、獲物を狩る猟師の目になっていた。

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 シンジは残った三人の攻撃を受けるつもりはまったく無かった。素早く動いて、目標の四方からサイ○ガンを撃ち込んだ。

 生き残っている三人の目には、四方から軌道を変えながら襲い掛かってくる無数の青白い光が見えていた。

 これの直撃を受ければ死ぬしか無いが、むざむざ攻撃を受けるつもりは無かった。

 サイコキネシス能力を持つ二人は、シールドを前面だけの展開から半球での展開に瞬時に変更した。

 これにより下を除く全方位から襲い掛かってくる攻撃は、全てサイコシールドで受け止められた。

 だが、その負荷はシールドを張っている二人に容赦無く戻ってくる。


「くっ! 何て威力だ。このままではジリ貧になるだけだ!」

「俺達兄弟の『ダブルサイクロン』が当たれば魔術師だって倒せるが、移動が速過ぎる。あれじゃ撃っても避けられるだけだ!」

「分かった。俺がチャンスを作る。魔術師が立ち止まったら、俺と一緒に魔術師を吹き飛ばせ!」

「死ぬ気か!?」

「このままでは三人とも死ぬだけだ。だったら、被害は少ない方が良いに決まっているだろう」

「……分かった。『012』の犠牲は無駄にしない」

「後を頼む。……何だと!?」


 三人が話しをして『012』が覚悟を決めた直後、四方からの攻撃が止んで、三人の前方にシンジが立っていた。

 少し呆れた表情でES部隊の三人に話し掛けた。もっとも、直ぐに対応出来るように身構えている。


「へえ、『ダブルサイクロン』ねえ? やってみれば」

「何だと!? 俺達を舐めているのか!?」

「舐めるも何も、お互い殺し合いをしているんだ。遠慮は不要。お前らを絶望させてから始末してやるよ」

「くそっ、俺達兄弟の必殺技を喰らえっ! 『ダブルサイクロン』!!」


 シンジが三人に攻撃のチャンスを与えたのは、このままサイ○ガンの威力をあげれば、直ぐに三人を始末出来ると感じた為だ。

 どこぞの少年マンガのノリのように一人が犠牲になって、二人が必殺技で決着がつくと思い込んでいる事も癇に障った。

 普段の冷静なシンジなら考えもしなかった事だが、連続した戦いに感情が高ぶった事も影響していた。

 如何に力を備えて知識があっても、若い肉体に影響を受け易い感情を完全に制御する事は困難だ。この場合のシンジがそうだった。


 一方、シンジから情けを掛けられたと勘違いした三人の顔は、屈辱で真っ赤に染まっていた。

 シンジがここまでの戦闘能力を持っているとは思わなかったが、遥かに年下であり最初は楽な獲物と思っていたシンジから

 見下されていると感じた三人の感情は爆発した。

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 『067』と『068』は腕を組み、全力全壊の『ダブルサイクロン』をシンジに撃ち出した。後先考えないパワーであった。

 これがシンジに通用しなければ死ぬしか無いという事もあり、撃ち出した後は数時間は動けなくなるかも知れない程の力を注ぎ込んだ。

 凄まじい竜巻が二つ発生して、シンジに向かった。その竜巻の間では空気摩擦で雷光が光り、その間に挟まれたものはあっという間に

 引き裂かれるしか無い。かつて、アフリカにある反ゼーレの戦闘集団を一瞬で壊滅させた実績もある。

 指揮官である『012』も二人を援護した。両腕のミサイルと腹部に組み込んであるマシンガンで、二人と同時にシンジを攻撃した。


 『死亡フラグ』という言葉がある。これは勝利を確信した攻撃側が油断をして、相手の攻撃を受けて敗北するという内容であろう。

 だが、この言葉の前にはある前提がある。相手の攻撃力が、攻撃側の防御力を突破出来るレベルであるという条件である。

 例えば、猛犬の牙や爪で人間の喉を噛み切るような反撃の危険性がある場合には適用される可能性はあるが、蟻程度の存在で、

 どうあっても一撃で相手の防御力を突破出来ない場合は、そもそもが『死亡フラグ』という言葉そのものがありえない。


 シンジは二人が撃ち出した『ダブルサイクロン』を見て、秘かに感心していた。

 確かに速度が遅いという欠点はあるが、威力は十分だろうと感じたからだ。

 一瞬見た感じでは、確かに現在のシールドで耐え得るかシンジにも判断は出来なかった。そして身構えた。


 『012』は『ダブルサイクロン』を見て期待していた。目の前のものは今まで何度も見ている中で最大のものだ。

 あれなら、如何にシンジと言えども直撃を受ければ、ただでは済まないと感じていた。だが……


「「「何だとっ!!?」」」


 シンジは『ダブルサイクロン』が当たる直前に、素早く移動して直撃を避けていた。

 『ダブルサイクロン』はシンジが寸前までいた場所を通り過ぎ、暗殺部隊のメンバーの死体の大半を引き裂いて消えていった。

 繰り返して言うが、シンジには相手の最大の攻撃を味わって喜ぶような『M』の趣味は無い。

 相手の全力を引き出せないようにする事が最善だと考えている。

 そのシンジが『ダブルサイクロン』をまともに受け止めると考える方が認識が甘いと言えるかも知れない。

 事実、シンジは攻撃を受け止めるとは一言も言っていない。出してみればと言っただけだ。


 一方、攻撃した三人はシンジが『ダブルサイクロン』を避けた事を唖然とした顔で見ていた。

 今までのノリで言葉には出していないが、絶対にシンジが攻撃を受け止めると確信していたのだ。だが、避けられてしまった。

 「詐欺」と言うのが内心を言い表すのに一番適した言葉だろう。

 だが、『ダブルサイクロン』を全力全壊で放った二人は力尽きて、文句も言えないまま、その場に崩れ落ちた。

 一人、精神的疲労はあるが、肉体的疲労の少ない『012』がシンジに顔を真っ赤にして抗議した。


「あれじゃあ、あんまりだ! あそこまで言っておきながら攻撃を避けるなんて、何を考えている!?

 ジャパニメーションなら、普通なら攻撃を受け止めるシーンだろう! お前には常識が無いのか!?」

「別に攻撃を受け止めるなんて一言も言って無いし、言ったところで戦闘中に相手の言葉を信じる方が間抜けだろうに。

 そもそもゼーレの狗が何を文句を言っているんだ」

「!! お、お前は何故、その名前を知っている!? まさか、全部知っているのか!?」

「まだ全部じゃ無いけど、『人類補完計画』の一部のシナリオも知ったさ。

 さて、ES部隊の本拠地でも得られなかった情報を知ってそうだな。そこの二人と一緒に、洗いざらい話して貰おうか」

「!! やはり我々の本拠地を攻撃したのはお前だったのか!?」

「EVAのキャリアを落された報復さ。当然だろう。さて尋問の時間だ。抵抗するならしてみるんだな」


 左目が赤く輝いて、『104』とは桁がまったく違う強さの精神波がシンジから放たれた。

 『012』はもはや絶望しか感じられなかった。それは力尽きて地面に横たわっている『067』と『068』も同じだ。

 まったく抵抗する事も出来ずに、自分の精神が侵食されていくのを感じるだけだ。自爆装置を起動させる暇も無かった。

 そして頭の中から何かが抜け出していくのを感じた。やがて三人の意識は薄れていき、そして息絶えていった。


 自分以外に生存者が居ない事を確認したシンジは、大きな溜息をついていた。


(さすがに加持二尉から連絡があった『人類補完計画』以上の内容は知っていなかったか。

 連絡があった情報も不完全で方法論とか、具体的方策を知りたかったんだがな。それと命令先の居場所も分からないとはな。

 でも、残る使徒があと三体だと分かっただけでも助かる。これで少しは先手が取れる。

 さて、自分達の仕出かした事がどういう結末を招く事になるか、ゼーレにも思い知って貰おうか。

 一先ずは、ミーシャ達を連れて姿を隠すか)


 シンジが戦闘をした時間は僅かであった。それに戦闘をした場所は【HC】の管理エリアだったが、陽動部隊の襲撃を受けたので

 復旧処理に手間取り、編成された救出チームが現地に行った時、残っていたのはES部隊と暗殺部隊の多数の死体。

 それと微かに煙が残っていたVTOL機の残骸と、パイロットと護衛二人の遺体だけだった。

 最優先保護対象のシンジの姿を救出チームが見つける事は無かった。

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 シンジは不知火に襲撃事件で被害を受けたが生きている事を伝えただけで、北欧連合の山奥の別荘にミーシャ達と引きこもっていた。

 勿論、フランツ首相や義兄であるミハイル、冬宮にも同様の連絡は入れてある。敵を欺くにはまず味方からと言う。

 シンジは右足も完治して怪我はまったく無かったが、対外的には襲撃を受けて重傷の為に治療中という形をとっていた。

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『臨時ニュースをお知らせします。昨日、【HC】基地内で記者会見を開いたシン・ロックフォード博士が乗るVTOL機が、

 ジオフロントでミサイル攻撃を受けて撃墜されました。尚、撃墜後に約三十人もの武装勢力と戦闘に入りましたが、襲撃側の全滅が

 確認出来ています。襲撃側の顔写真は公開されており、海外から不法入国してジオフロントに潜伏し、博士を襲撃した模様です。

 同時期にネルフ本部内にいた【HC】のメンバーに対しても、攻撃が行われたそうです。

 特に、襲撃者の四人はサイボーグ改造手術を受けているとの事で、現在は【HC】で襲撃者の正体を調査中との事です。

 【HC】の不知火司令官は、襲撃者のジオフロントへの潜入の責任はネルフが負うべきものとの声明を出しています。

 シン・ロックフォード博士は先のネルフの新型兵器の起動実験で重傷を負って車椅子を使用していましたが、今回の襲撃でさらに

 重傷を負って、現在は場所は不明ですが治療中との事です。記者会見で日本からの撤退の事に言及した事もあり、博士の今後の状況に

 注目が集まっています。お待ち下さい…………新しいニュースが入りました。

 日本政府から、博士が攻撃を受け重傷を負った事は誠に残念であり、日本政府としては【HC】の調査要求に対して全面的に協力する

 との発表がありました。現在はネルフからは一切の発表はありません。今後の動向が注目されます』


 記者会見の後、シンジが搭乗していたVTOL機がジオフロントでミサイルにより撃墜された事はあっという間に全世界に発表された。

 同時期にネルフ本部の【HC】エリアに攻撃が行われた事と、VTOL機に搭乗していたパイロットと護衛の死亡も公表された。

 墜落現場には多数の銃を持った人間の遺体が多数あった事から、激しい戦闘があったとも報道された。

 サイボーグ兵士らしき遺体四体が現場で発見された事も、写真込みで報道されている。


 使徒戦の事は一般には公表されていない為、シンジが重傷を負った事による経済への影響を懸念する人が大多数を占めていた。


 使徒戦に絡んだ不安を抱いているのは、各国の政府と軍部を中心として一部の範囲に止まっていた。

 だが、その真相と影響を知る組織にとって、シンジの不在は大きな不安要素となっていた。

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 第十四使徒:ゼルエルにほとんど抵抗出来ずに倒されたアスカとトウジだが、何時までも休んでいる事は許されなかった。

 結局、ダミープラグの件でアスカはリツコを問い詰めたが、司令の命令との一点張りで、まともな回答は貰えなかった。

 かと言って、アスカはゲンドウに面会してまでも問い質す気は無かった。

 アスカのネルフへの不信感は増していたが、今までの精神誘導もあって使徒を自らの手で倒す事を諦めきれなかった。

 トウジは前回の使徒に瞬殺された事もあり、己の能力に疑問を抱いていた。

 シンジに対抗するつもりでパイロットになったが、妹はシンジに救われていた。

 今までの自分は何だったのかと自問自答を繰り返していた。

 二人の精神状態が回復したという訳では無いが、身体を動かしていれば、少しは気が紛れる。

 ミサトとアスカ、トウジの三人は訓練場で保安部のメンバーに混じって、格闘訓練を行っているところだった。


「そういや、碇が襲われて重傷って聞いとるが、綾波もなんかいな?」

「綾波? ああ、レイの事ね。そうよ、二人とも重傷で、現在は零号機と初号機も動かせないわね」

「何をやっているのかしら。今、使徒に攻め込まれたら、何も出来ないじゃ無いの!?」

「まだまだ、弐号機と参号機の修理には時間が掛かるからね。【HC】に頼るなんてしたくは無いけど、そうせざるを得ない状況なのよ」

「……あいつを襲った連中の正体って分かったの? 報道じゃあ、サイボーグもいたとか言っていたけど。

 それに、ネルフのお膝元のジオフロントで襲われたんでしょう」

「襲撃した奴らの遺体は全部【HC】が回収したからね。ジオフロントへの侵入ルートを保安部が捜査しているけど、まだ分からないわ。

 ミサイルやバズーカ砲まで持ち込んだから、直ぐに分かりそうなもんなんだけどね」

「まだ分からんか。あいつの右足の怪我がまだ治って無かったからな。無事ならええが」


 一般報道はされていないが、零号機のパイロットであるレイも重傷の為に治療中という事になっていた。

 つまり、零号機と初号機はネルフ本部にあるが、そのパイロットが両名とも不在と言う事である。

 上層部にはある程度の情報が伝わっているらしいが、その情報はミサトまでは降りてこなかった。

 結局、今のネルフに出来る事は弐号機と参号機の修理を特急作業で行う事ぐらいだ。

 EVAの修理が終わるまで使徒が来ない事を、三人は内心で祈っていた。

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 ネルフの技術部は総出で弐号機と参号機の修理にあたっていた。とは言っても一日中、側に居なければならない訳では無い。

 その激務の間の休憩時間にリツコとマヤはコーヒーを飲みながら話し合っていた。


「先輩。ドイツから回して貰った部品のおかげで修理が早く進みますけど、修理完了まではまだまだ掛かりますね」

「それは仕方無いわ。ドイツからの部品が無ければ、さらに二週間は余計に時間が掛かった事を考えれば、有難いと思わなくちゃね」

「零号機と初号機の部品を使えれば、もっと早く修理出来たんでしょうけど」

「パイロットが居ないとは言っても、あの二機の所有権は北欧連合にあるのよ。そんな事が出来る訳無いでしょ」

「それは分かりますけど。でも、あの二人はどうしているんでしょうかね?」

「……ネルフ職員の襲撃事件のビデオでもあったように、灰色の狼が白っぽい膜で銃弾を弾き返した事は見たでしょう。

 何か科学的に証明出来ない不可思議なものが中佐を守っているみたいね。

 それに右足を怪我していたとは言え、ミサイルで撃墜されたVTOLから脱出して、三十人もの襲撃者を全滅させたのよ。

 無事に決まっているわ。恐らく、次の襲撃の危険性を感じて、身を隠しているってところかしら。それと報復の準備よ」


 シンジを襲ったメンバーの中にサイボーグが含まれたと報道されていた。

 その事からゼーレの手の者が襲ったのだろうとリツコは推測していた。だが、それをマヤに話す必要性をリツコは感じなかった。

 襲撃者の遺体は全て【HC】に回収されていた。補完委員会から引渡し要求があったが【HC】は拒否している。

 襲撃者がジオフロントに侵入したのは、ネルフの怠慢であるとの指摘が【HC】からあったが、まだネルフは正式に回答していない。

 どの道、ゼーレの手の者なら保安部にも内通者はいるだろう。従って、この事件も有耶無耶になる可能性が高い。

 現在の技術部はEVAの修理が最優先課題だ。シンジ達の事を考えても自分に出来る事は無い。

 そう考えたリツコは修理の指示を出そうと、マヤと一緒に格納庫に向かって行った。

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 ネルフ:司令室

 ゲンドウと冬月、そして珍しい事に加持もいて、今回の件に関して協議していた。


「サイボーグ兵士の遺体の引渡しは断られましたか。仕方無いですね」

「このタイミングで彼を襲撃するなんて、ゼーレは何を考えているんだ!? これでは【HC】との関係が拗れるだけだぞ!

 襲撃者がゼーレと分かれば、休戦協定の破棄と判断される事だってありえる。ここで北欧連合と全面戦争をするつもりか!?」

「それを私に言われて困りますね。ですが今は指示が混乱して、大慌てのようです。さて、どうやって収拾するのやら」

「弐号機と参号機の修理には、まだまだ時間が必要だ。逆に零号機と初号機は機体は無事だが、パイロットが不在だ。

 現時点のEVA戦力はゼロなんだぞ。まあ、次の使徒が来るまでは時間はあるが、万が一でも来襲時期がずれたら大問題になる」

「幸いと言って良いかは分かりませんが、【HC】からの要求は意外と低いものだけですね」

「ああ。襲撃者が日本人では無いと分かっているから、襲撃者がネルフと関係無いと分かってくれているのは助かる。

 だが、ジオフロントへの侵入を許した事はネルフの責任だからな。

 今はそこを突っ込まれているところだが、ゼーレが真犯人では何も言えん。頭の痛いところだ。

 弐号機と参号機の修理完了を待たずに、零号機と初号機を引き上げたいと言ってきたが、必死に引き止めているところだ」

「パイロットが不在だから、構わないのでは?」

「そうもいかん。逆に言えばパイロットさえ戻って来てくれれば、零号機と初号機は出撃が可能なのだ。

 人心安定の意味でも引き上げは認められん」

「シンジは必ず動く」

「そりゃあ、あの性格だから動くとは思いますが、どう動くんです?」

「報復だ」

「……ゼーレと正面からやりあうつもりって事ですか?」

「それは無かろうが、ゼーレの拠点の幾つかが消滅する程度の報復は十分ありえるだろう。

 それに重傷だと聞いているが、ミサイルの直撃を受けて墜落したVTOL機から脱出し、三十人からの襲撃者を全滅させたのだ。

 あの灰色の狼のような存在が彼を守っているのだろうな。治療中というのは、恐らくは偽装だろう。

 彼の性格から言って、万が一の時は、直ぐに戻ると信じている」


 シンジとレイが不在なのは三人とも重大視していたが、何も出来る事は無かった。

 それよりも、【HC】からはジオフロントに襲撃者達がミサイルまで持ち込んで侵入した事への責任追及が激化している。

 ジオフロントへの出入り口の管理はネルフが受け持っているので当然の事であるが、ゼーレの意思だと言えるはずも無い。

 その為、【HC】への弁解に四苦八苦している冬月だった。

***********************************

 冬宮は理事長室で腹心の部下二名と話をしていた。冬宮の立場では使徒戦は関係無いが、財団が日本から撤退する事は大いに影響する。

 記者会見直後に襲撃され、シンジが重傷を負ったと聞かされた事もあり、冬宮は今後の対応の件を決める必要に迫られていた。


「博士は無事だが、しばらくは身の安全を図る為と治療の為に身を隠すそうだ。どこに居るかは教えて貰えなかったがな」

「無事が確認出来たのは良いですが、あの記者会見で国内は大荒れです。まだ北欧連合からの輸入が維持されている事から企業の活動には

 支障は出ていませんが、民心が動揺しています。デモもかなり頻繁に行われています。警察の方は大忙しです」

「偏向報道をして、生き残っていたマスコミの不買運動が広がっています。その広告主の企業も含まれています。

 政府は国営放送局にもメスを入れ始めました。少々手遅れになっていますが、やらないよりはマシですね。

 それと前政権への糾弾が凄まじいですね。友愛を謳って日本は日本だけのものでは無いと言った元首相は、徹底的に叩かれています。

 一部の暴徒化したデモ隊が、元首相の家に押しかけて騒ぎを起こしたようです。それと国税局が本格的に動き始めています」

「……移民の件は予想出来なかった。もし、本当に移民の募集が掛かれば、応募は殺到するだろうし、国内が滅茶苦茶になるぞ」

「そうでしょうね。ですが、博士が日本の事を憂いてあの発言をしたのでは無いかという憶測もあります。

 だからこそ、株価の下落も少なくて済んでいます。だとしたら、まだ手遅れにはなっていません」


 記者会見の時のシンジの発言を受けて、日本中が大きく揺れていた。シンジが若干十四歳でありながら極東エリア総責任者であり、

 日本に対して否定的な意見を持っている事に危機感を抱いたのだ。財団の日本に対する貢献は安定電力供給という一分野だけである。

 だが、生活の基本となる電力供給が途絶えたらと考えれば、どれだけ大きな被害が出るかは分かりきっている。

 日本の国力は北欧連合と比較すると遜色無い。だが、軍事的にも技術的にも、そして資源が無い事から対抗出来ない事は分かっていた。

 もちろん、批判者も存在した。シンジを前時代主義者と決めつけ、嘲笑する人間も多く存在した。

 だが、批判するだけで何も代案を提示出来た訳では無い。それらの批判勢力と将来を憂えている勢力の対立が激化する傾向があった。


「女の子を一人送り込めたが、効果は無かったのか」

「いや、効果はあったぞ。山岸嬢の事は礼も言われたしな。だが、公私は分けるという事だろう」

「では、博士の日本への期待度を上げるには、やはり大掃除しか無いと言う事ですか」

「……そうだろうな。大掃除しなければ日本の発展は無いと考えれば、せざるを得んだろう。大事になるぞ」

「民間企業が赤字続きで支援しているというのもおかしな話しだが、将来に発展して利益が回収出来ると見込めれば別という事だな」

「分かった。首相に極秘会談を申し込む。ここが正念場だ。これで方向が変わらなければ、日本に待っているのは衰弱死だけだ」


 シンジが身を隠しているので、今は直接連絡を取る事が出来なかった。だが、シンジの本意はある程度は冬宮は理解していた。

 何としても財団の日本からの撤退を回避させる為に、何が良いのかを必死になって考えている冬宮だった。

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 ネットの某掲示板  (特定の固有名詞があった場合、MAGIにより強制消去される為に名前は一切出てこない)


『記者会見を見たか? 財団が日本から撤退する可能性を言ってたけど、そうなったら俺は移民しようかな』

『北欧連合に協力してきた人を優先にして、後は技術を持っている人間を審査するって言ったんだぞ。お前なんかパスするものか』

『政治家、マスコミ関係、宗教関係、教育関係者は最初から駄目だって言ってたな。批判勢力を受け入れる気は無いという事か』

『それは差別じゃ無いのか!? 移民を募るなら平等にすべきだろう!』

『だったら、発言者がやるんだな。力の無い者が理想論を叫んでも無駄だ。第一、差別と区別の意味も分からないのか!?』

『あちらにしてみれば、騒動の原因になる連中は排除したいと考えている訳か。こりゃ本気だな』

『潔癖症と視野の狭さか……耳が痛いな』

『人の資質は有限か。そして全てを兼ね備えたスーパーマンなど滅多にいないか。確かに正論だ』

『それを求める事は悪い事なのか!? 理想を追求して何が悪い!?』

『現実を見ろ。そんな人がいないのに、理想を追求したら誰も為り手が居なくなる。その結果が今だろう。理想と現実を混合するな』

『やっぱりマスコミに責任を取らせるしか無いな』

『そのマスコミを支持していたのも俺達だって忘れるなよ。今までやってきた事を忘れて、正反対の事を言い出すのは見苦しい』

『恥は知っているつもりだが、死ぬよりはマシだろう』

『屈辱に耐え忍んでも生き延びれば未来は開けるか』

『あれは言い過ぎだ! 内政干渉と同じだぞ!』

『だけど、個々で判断しろって言ってたろう』

『言う事を聞かなければ見捨てるって強制しているんだ。立派な内政干渉だろう』

『馬鹿か!? あちらからしてみれば、赤字で日本を支援する義務は無いんだ。そんな権利ばっかり主張した結果が今だぞ』

『私は日本人だが、北欧連合は切り捨てて、中国と南北朝鮮の四ヶ国で大アジア経済圏を創った方が良いと思う!』

『黙れ!! 勝手に日本人と名乗るな! G社の記者を買収して記者会見に潜り込んだのは何処の国の新聞社だ!?』

『毎回毎回、支援の要求だけか。支援を受けて当たり前と思っている国と付き合えるか!』

『そうだ! 何時までもお前達の主張が通ると思うな! 日本人だって怒る時は怒るんだ。それを思い知れ!』

『やめろよ。一々釣りに引っ掛かる事は無い。ああいう輩は無視するのが一番だ。日本人と騙って誘導するのは頭にくるがな』

『しかし、十四歳でロックフォード財団の極東エリア総責任者か。まったく普通じゃ無いな』

『実績と実力があるからだろうな。普通なら、記者会見であんな事は言えないぞ』

『批判は覚悟の上なんだろう。他の匿名ネットでは前時代主義だと結構批判されているらしい』

『前時代主義ね。自由にものが言えるのは結構な事だが、それで社会システムが崩壊して生活レベルが下がったらどうするんだ?』

『無駄だ。好き勝手に批判する連中が責任なんか取るものか。自分さえ良けりゃ満足なんだよ』

『でも、何であそこまで言ったんだろう。嫌いなら何も言わずに撤退すれば良いのにさ。俺だったらそうするが』

『それもそうだよな。まさか……』

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 シンジの記者会見で最後通牒とも言うべき事を言われた政府は悩み、各党との党首会談を秘密裏に行っていた。


「シン・ロックフォード博士の日本不信は根深い。前政権を担当したM党の為だ。どう責任を取るつもりだ!」

「J党の責任は無いと言うのか!? 富士核融合炉発電施設に治外法権を与えたのは現政権の責任だろう。

 その電力差額の収入を利権にしているのは誰だ!? 腐敗政治の根源だろう!」

「それとこれとは話しは違う。博士の不信の根本は2008年の中国核事故の時の政府の対応に根ざしている。その責任は誰だ!?」

「その前にマスコミの事も言及していたな。これまで長期に渡ってマスコミを放任してきた責任はどうするつもりだ!?」

「マスコミを押さえつけようとした時、言論の自由を縛るのかと反対したのはどこの党だ!? 忘れたのか!?」

「政治家、マスコミ関係、宗教関係、教育関係者は駄目だと言ってたが、宗教関係は含めるように働き掛けよう」

「勝手な事を言うな! 今は日本全体の事を協議しているんだ。自己都合を優先させる発言は控えろ!」

「そもそも、財団が撤退して核融合炉が停止しても日本は大丈夫でしょう。【HC】の特別宣言【F−05】でも被害は無かったはず」

「馬鹿な女だ。まったく先が見えないのか!? 財団が撤退しても直ぐには日本は潰れない事は分かっているんだ!」

「だったら「黙って聞け!!」……」

「財団の設置した核融合炉が停止しても、各地の火力発電所で代替は可能だ。だが、その燃料費は掛かるんだ。

 核融合炉ならば海水から燃料である重水素を抽出出来るから、燃料費は掛からん。精々が抽出プラントの稼動費用ぐらいだ。

 実際に各地で核融合炉が稼動し始めてから、原油や天然ガス、石炭の輸入は激減していてかなりの輸入代金が浮いている。

 だが、火力発電所は間違いなく燃料費が掛かる。それでも数年程度は持つかもしれないが、経費が莫大になるんだ。

 その費用負担をどうするつもりだ!? 燃料費だけで年間数兆円もの金が掛かるんだぞ!

 それに博士と中東連合の関係は、名誉中佐を贈与した事から分かるようにかなり深い。

 その中東連合が石油の価格を上げるか、輸出を停止したらどう対応する!? 輸入の海上ルートを封鎖されたらどうする!?

 海底のメタンハイドレートが採掘出来れば状況も変わったが、セカンドインパクトの影響で海底地盤の緩みがあるから駄目だ。

 さあ、核融合炉が停止した後はどうするんだ!? 何処から燃料費を捻出する!? お前の腐った頭では答えられないか!?」

「何たる侮辱! 訴えますよ!」

「勝手にしろ! お前達のバックの為に今の苦境があるんだ。責任も取らずに自己の権利だけ主張して通るつもりか!?」


 党首会談は深夜にまで及んだが、全員が納得する対策案が纏まる事は無かった。

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 暗い部屋で白衣を着た三人の男(オーベル、キリル、ギル)と一人の女性(セシル)が、落ち込んだ表情で話しこんでいた。


「……まさかES部隊と暗殺部隊三十人が全て返り討ちに遭うとはな。俺達は魔術師をとことん甘く見ていた訳か」

「ミサイルで撃墜されたVTOL機からどうやって脱出したかは分からないが、暗殺部隊の最後の五人を倒す時に姿を見せている。

 その直後に電波障害が発生して通信が途絶えた事から察するに、全て魔術師の仕業だろう。態々姿を見せたのも警告、いや挑発だな」

「間違い無いだろうな。普通の人間がES部隊に勝てるはずも無い。やはり灰色の狼のように、何らかの存在が奴を守っているのか。

 それとも魔術師が化け物を超える化け物なのか?」

「ES部隊の遺体が回収出来れば、何があったのかを解明出来るのに。それにサイボーグ技術が奴らに渡るのは痛いわね」

「サイボーグ技術だけなら良い。それに本拠地が攻撃される前に、奴らに拘束された可能性がある。今更だ」

「それもそうね」

「報道では重傷を負って治療中とあったが、恐らく擬態だろう。

 右足骨折も治っていたみたいだし、暗殺部隊三十名をあっと言う間に処分したんだ。ES部隊さえも、通用しなかったと言う事だろう」

「完全に対応を間違えたな。上からの命令があったとはいえ、拉致・洗脳は問題無しと回答した責任は免れないだろうな」

「ああ。今は上も大騒動中だ。いずれ、俺達にも沙汰はあるだろう」

「量産機の生産計画は出来た。今は準備中だが、これが発動すれば俺達の仕事は少なくなる。最悪の時は、俺達が出されるぞ」

「ちょっと待ってよ。何であたし達が戦闘しなくちゃならないのよ!? あたし達は頭脳労働者よ。そんな事は下っ端にやらせるべきよ」

「上から命令があれば、従うしか無いだろう。俺達はそういう洗脳を受けている。お前もそうだろう」

「そ、それはそうだけど、死ぬのは嫌なの」

「ドイツの使徒細胞の培養工場は全滅した。後はイギリスとアメリカ、アフリカの培養工場がどれだけ早く立ち上がるかだ。

 サイボーグ工場も同じだがな。そっちで戦力補充が出来なければ、最悪は俺達が指名を受ける可能性があると言っただけだ」

「改造も頭脳だけの改造だったら、戦闘を命じられる事も無かったろうにな」

「……そうね。あたし達が出撃する事を想定して、対魔術師戦の作戦を考えておいた方が良さそうね」


 四人はES部隊とは少し異なり、使徒細胞の摂取はしていない。

 だが、組織の頭脳としての働きを期待されて、脳の働きを活性化する改造処理。それとサイボーグ化の弊害確認の役割を負っていた。

 頭脳明晰な四人に不都合があれば、自分達で容易に対応は可能だ。それが改造につぐ改造で最新技術の実験体の役割も担っていた。

 現在のゼーレが準備出来る最高レベルの技術傑作品とも言える。それを四人は交互に改造する事により、己の技術を磨いていた。

 そして四人はシンジに直接、牙を向けようとしていた。

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 ゼーレの会合

 シンジの襲撃失敗の報を受けて、ゼーレの緊急会議が行われていた。


『ES部隊と暗殺部隊による魔術師の拉致・洗脳をする作戦は失敗した。この責任は四人組に取らせる事とする』

『……直前になって、抹殺命令を出した責任はどうする?』

『拉致・洗脳と抹殺。どちらもあまり変わらん』

『ふむ、良かろう。後は魔術師がどう出てくるかだ。ドイツ国内の五箇所の施設を破壊された事もある。

 またドイツ、いや欧羅巴各地やアメリカの秘密施設が標的にされる可能性は十分にある』

『今は量産機の製造プロジェクトの最終検討段階にある。まだ補完計画に直接影響がある施設に被害は出ていないが、

 これから行われるであろう魔術師の報復に重要施設が含まれれば、補完計画自体を見直す必要も出てくる可能性もある』

『魔術師を襲った部隊の背後には補完委員会がいるとは知られているだろう。休戦協定の破棄だと言い出したらどうするつもりだ』

『それは拙い。ネルフが【HC】から責任を追及されている事もある。何とか妙手が無いものか?』

『魔術師の行方は?』

『【HC】には戻っていない。重傷だとあったが、偽装だろう』

『情報は出せないし、金もこれ以上は出したく無い。だが、【HC】と魔術師の追及をかわさねばならない』


 シンジの襲撃が失敗した事で、ゼーレは一部のシナリオの修正を迫られていた。

 北欧連合が補完委員会の手の者が干渉してきたと騒いでいないのは幸いだが、何時追及してくるかは不明だ。

 それに使徒の来襲への対応もある。現時点では四機とも動ける状態に無かったのだ。

 ネルフの弐号機と参号機の修復を急がせる必要があった。


『幸いだが次の使徒まで時間的な余裕はある。ネルフのEVAの戦力復帰は間に合うか』

『零号機と初号機はこのままか?』

『……それが良かろう。これ以上拗れては、流石に拙い。

 二機を無効化出来るチャンスだが、目の前のご馳走に飛びつく程切羽詰っている訳では無い』

『北欧連合に動きは? 休戦協定の件には言及していないのか?』

『今のところは無い。機を伺っていると見える。ここまで来れば、奴らも全面戦争は避けたいと考えているかもしれん』

『ならば放置だ。魔術師は表面上は出てこれない。【HC】の追及をかわせれば良い』

『提案がある』


 01のナンバーがついたモノリスの発言に、他のモノリスの視線が向けられた。

***********************************

『VTOLがジオフロントで撃墜され、自分以外の搭乗者は全て死亡。襲撃者は全て殲滅したが、重傷を負いました。

 次の襲撃の危険性もあるので、しばらく身を隠して療養生活に入ります。緊急時にはユグドラシルUを経由して呼び出しを。

 VTOLと搭乗者の遺体の回収。それと襲撃者の身元の確認を御願いします』

 とのメールがシンジから不知火に来ていた。

 慌てた不知火は救出チームを派遣させたが、残っていたのはVTOL機の残骸と三人の遺体。それと襲撃者達の死体だけだった。

 それらを全て回収させると、不知火はマスコミを通じてネルフの責任追及を行ったところだった。

 因みに、サイボーク改造処理がされている死体の検査はアーシュライトに頼んである。

 そんな状況で副司令であるライアーンと今後の事で協議していた。


「ジオフロントでVTOLが落されるとはな。しかもレイ君にまで被害が出ている。

 二人が無事だったのは幸いだが、しばらくは零号機と初号機もあてには出来ないのか?」

「彼等の怪我の状態は不明ですが、襲撃者を殲滅した事から考えるに、そう深刻になる必要は無いかと思われます。

 今問題にすべきなのは、ネルフの対応ですね」

「ああ。他の職員の安全の件もある。早急に零号機と初号機を引き上げて、職員を戻さねばな」

「そうですね。ネルフはごねているようですが、こちらの職員の安全を確保出来ないようでは、派遣もさせられません。

 速やかに戻す事が重要です。怪我も調子が良くなれば、彼から連絡を入れてくるでしょう。そう大騒ぎする必要は無いかと」

「襲撃者をジオフロントに潜入させたのはネルフの責任だが、ネルフが責任を認めると思うかね?」

「多分、認めないでしょうね。前回のネルフ職員の襲撃事件のように有耶無耶にされる可能性もあります」

「……その件も中佐に一回は相談したいな。他にも話を聞きたい事もあるし、呼び出してみるか」

「財団の事に関する件なら、止めて下さい。公私混同をしていると思われますよ」

「拙いか?」

「中佐の場合は、以前は軍からの出向という形で軍から給与が出ていましたが、軍を退役した今は無給。

 顧問をやって貰っていますが、言わばボランティアの扱いです。その為、博士としての個人発言も許されますが、司令官は違います。

 司令官の立場で『私』の部分である日本の立場からの発言は問題になります」

「分かった。注意する」

「理解して頂いてありがとうございます」


 不知火は【HC】の司令官であるが、雇われの身である。能力と人柄、それと国連軍などに関する人脈もあって任命された。

 だが、立場を超えて北欧連合の不利益になるような発言は許されない。

 そこには公平さでは無く、スポンサーの意向を重視する事が要求される。国際政治とはそんなものだ。

 使徒を倒し、サードインパクトから人類を守る為に不知火は此処にいる。

 だが、その立場を利用して自己の利益を図る事は許されていないと感じる不知火であった。

***********************************

 ロックフォード財団の総帥であるナルセスは、ハンス、ミハイル、クリスの三人を書斎に呼び出していた。


「あれからシンから連絡はあったのか?」

「いえ、しばらく療養生活をすると連絡があったのが最後です。あれからは無いですね」

「昨日オルテガ様のところに行った時に聞かされたのですが、近々シンが彼女達を紹介する為に連れて来ると言っていました。

 シンの場所はオルテガ様も知らないとの事でしたが、来訪を心待ちにしているとか」

「ふむ。それくらいなら怪我もそんなに悪いという事は無いのだろう。ひょっとして偽っているのか?」

「それは分かりませんが。それはそうと前回の襲撃事件は特許と資源で手を打ちましたが、今回はどうするんですか?」

「フランツ首相から連絡があったが、シンと協議中だそうだ。だが、今回は賠償などで済ませずに、報復処理を行う。

 流石に今回の事はシンも怒っているらしい。色々と案はあるが、どれにするかで調整中だ」

「分かりました。そう言えばシンが記者会見で、財団の極東エリア総責任者である事をばらしましたが、問題は無いですね」

「本当の事を言ったんだし、日本の事はシンに任せてある。問題は無いだろう」

「支援と言っても、大部分は海底地下工場で用意したものだし、財団の資産が減った訳では無いですからね」

「変われば良し。変わらねば引くだけ。後は日本側の問題だ」


 ロックフォード財団は北欧連合国内に多数の生産拠点を持ち、それを販売して利益をあげている。

 工業製品、重機械、医薬品、食料など生産品目は多岐に渡る。そのキーポイントになっているのが、バルト海の海底地下工場である。

 高度な加工技術が必要な部品や、高性能部品、一部の食料、そして本来なら国内で調達出来ない資材も供給が可能だ。

 そして、日本の核融合炉発電施設の支援資材のほとんどが、この海底地下工場で生産されたものだった。

 対外的には財団の私財を使った支援に見えるが、実際には財団の私財は使用していない。

 だからこそ、シンジは極東エリア総責任者になっている。これを知るものは財団でも極僅かである。

 そしてその秘密を一般公開するはずも無かった。

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 シンジは北欧連合の山奥の山荘に、ミーシャ、レイ、マユミの三人を引き連れて篭っていた。

 肆号機の起動実験で使徒に寄生された事による爆発事故で重傷を負い、不自由な思いをした事に対する反発があった。

 アーシュライトがいるから、使徒が来ない限りは【HC】で対応不可という事態には為らないだろう。

 北欧連合にはミハイルとクリスがいる。少しぐらいは自分が不在でも、大きな問題にはならないだろう。

 既に今回の件の報復内容に関してのフランツ首相との協議は済んでいた。後はフランツ首相の行動を待つだけになっている。

 そんな状況だから、次の使徒の来襲までは時間がある程度空いていると知った事もあって、長期休暇を取るつもりだった。


 シンジは湯船に浸かっていた。五人程度は入れる大きさであり、深深度から温泉を引いている。

 温泉をゆっくりと味わいながら考え事をしていた。


(マユミと関係してから、ミーシャとレイとの関係も一気に進んだ。

 加持二尉から『人類補完計画』の一部の資料が届くし、最近はラッキーな事が多いな。もしかして、マユミってあ○まん?

 ミーシャとレイも凄く良いし、夜の生活も充実している。このまま順調に事が進めば楽なんだけどな。

 休暇の最後の方は『師匠』に三人を紹介しないとな。八年ぶりの再会だけど、お土産は何が良いのかな)


 この山奥の別荘にはシンジを含めた四人しかいない。そして邪魔する者は何も無かった。

 それ故に休暇と割り切って、シンジは自分の欲望を解放していた。ミーシャ達三人も異論は無かった。

 四人とも若さ故の暴走で、満ち足りた日々を過ごしていた。

 だが、予定していた休暇を後三日残したところに連絡が入ってきた。

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 北欧連合の首相であるフランツは、国内外の報道関係者も集めて大々的な記者会見を開いた。

 ネルフ絡みの不祥事が続出している状況で、内外の注目は北欧連合に集まっている。

 予想を超える人数が集まる中、フランツの記者会見は始まった。

 フランツが用意させた大画面には、宇宙に浮かぶ二基のスペースコロニーの映像が映し出されていた。






To be continued...
(2012.04.14 初版)
(2012.07.08 改訂一版)


(あとがき)

 サイ○ガンネタは、最初から考えていました。本当にあれば、便利な兵器でしょうねえ。

 精神力が続く限りは弾切れは無く、弾道も変えられるなんて、一対多の迎撃戦には凄く有効です。

 実を言うと、左目の義眼も同じ作者の作品を参考にさせて頂きました。

 作品名は忘れましたが、人工衛星を制御して、公園にいた女性の妊娠と胎児の血液型判定まで行っていた記憶があります。

 しかし文才が無いのをつくづく実感します。戦闘シーンにリアルさが出ていない。

 それに今時なのに、昔ながらの必殺技なんてのを登場させてしまいました。

 27話で書いた『箱舟プロジェクト』が開始されます。


 これを書いている時点で、静岡の大学と複数の企業の共同研究チームが、爆縮高速点火の手法を使って、レーザー核融合炉の

 100回連続反応実験に成功したというニュースがありました。同手法による核融合反応では、世界初という話しです。

 技術は着々と進歩しています。個人的な意見ですが、多額の予算をつけて国家プロジェクトに格上げして早く実現して欲しいですね。



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