因果応報、その果てには

第四十八話

presented by えっくん様


 超大型モニターに巨大な二基のスペースコロニーが映し出されており、それをバックにフランツ首相の記者会見が行われていた。


「私の背後のスクリーンに映っているのは実物の映像だ。一基のスペースコロニーには約三百万人が収容可能。

 回転する事で、遠心力により地球と同じ擬似重力状態を確保。地球と同じ1Gの重力環境を実現している。

 宇宙空間での太陽電池と核融合炉を併用しているので、適切なメンテナンスさえ行えば半永久的な稼動を保証。

 宇宙線や太陽フレア対策、宇宙塵対策として、有害なものを遮断するシールドを常時展開。

 既に大気や水、動植物を運び込んで、酸素供給を含めた生態系の循環維持環境を整備してある。食料生産も軌道に乗っている。

 つまり人間が住める最低限の環境は整備してある。現在は住宅や工場などの施設建設を急ピッチで進めているところだ」


 最近のネルフの不祥事に絡んで【HC】が被害を受けている事もあり、北欧連合の首相であるフランツが重大発表を行うという事は

 国内外の注目を集めていた。てっきり、ネルフ絡みの重大発表があると思い込んで来た記者達は、あまりの事に度肝を抜かれていた。

 だが、この程度で何時までもうろたえては報道記者など務まらない。気を取り戻した記者達の質問はフランツに殺到した。


「あのクラスのスペースコロニーの建設資材は膨大なものになると思いますが、あれを全て打ち上げたのですか?」

「それは機密だ」

「居住予定者はどうなりますか?」

「それはこれから選定する」

「居住希望者を公募するのですか?」

「その通り。それは一番最後に説明する」

「この時期に発表した理由は何かあるのでしょうか? そもそも、こんな巨大プロジェクトの話は今まで聞いた事がありません。

 政府の予算も、こんな巨大プロジェクトを極秘裏に進める程は余裕が無かったと思いますが?」

「それも最後に説明する」

「ではフランツ首相の説明を聞いてから質問させて下さい」

「ならば、プロジェクト推進者に説明させるのが良いだろうな。準備は良いか?」

『大丈夫ですよ』


 スペースコロニーを映し出している画面が二分割されて、右足を吊られてベットに横になっているシンジが映し出された。

 上半身を起こして、カメラを見ている。備品は一切無い、ただの広い部屋だ。周囲が丸くなっており、どこかのドームにいるらしい。


「シン・ロックフォード博士!? 身体は大丈夫なんですか!?」

『見た通りですね。VTOL機の襲撃で怪我が悪化しましたので、まだまだ完治には時間が掛かりますが、話す程度なら大丈夫です』
(本当は完治しているんだけどね)

「では質問ですが、博士がこのスペースコロニーのプロジェクト推進者なんですか?」

『そうです。ではこのプロジェクトの概要に関して説明します。宜しいですか?』

「御願いします」

『このプロジェクトは、ロックフォード財団の管理の下で進行しています。

 企画立案、建設資材と資金の調達、実行と運営は全て財団の第三技術部が取り仕切っています』(実際にはボクだけだけど)

「財団のみで計画を推進しているのですか!? これほどの巨大プロジェクトを民間企業が行っているのですか!?」

『そういう事です。現在の北欧連合としては、手間の掛かる宇宙進出をこの時期に行うメリットはあまりありません。

 予算が付かないのは分かっていましたので、財団のプロジェクトとして進めてきました。

 色々な問題が発生し、大量の資材と資金を掛けましたが、約八年の成果がこの二基のスペースコロニーです。

 正確に言いますと試作コロニーが後三基ほどあります』


 本当の事であった。作業用ロボットと工作機械を搭載した宇宙船を用意し、最初に適度な小惑星をくり貫いて加工工場を建設した。

 次々に小惑星を加工工場に隣接したところまで運んで使用可能な材料に分離して加工、時間を掛けてコロニーの建設を行っていた。

 勿論、作業は全て管理コンピュータ(ユグドラシル)に制御された作業用ロボットが行った。

 コロニーの建設には人手は一切掛かっていない。

 最初の資材にしても、バルト海の海底地下工場で準備されたものだ。作業ロボットは継続して送られて、全部で五千体を超えていた。

 コロニー建設だけに作業ロボットが従事している訳では無く、他の様々な業務にも携わっていた。

 財団の資産はコロニー建設には使われていない。だが、それを公表するつもりは無かった。


「八年前からこのプロジェクトを進行していたのですか!?」

『これほど大掛かりなプロジェクトですから、それなりに時間は必要です。企業秘密がありますから、あまり細かいところは言えませんが

 小惑星を引っ張ってきて原材料を取り出し、建設資材の節約に努めるとか、涙ぐましい企業努力の結果がこれです』

「小惑星ですか。そうなると推進機構は従来のロケットエンジンでは無く、もっと高性能なエンジンも開発しているのですね?」

『勿論です。そうでなければ、最初の建設機材なども宇宙には持ってこれなかったでしょうし、小惑星帯からコロニーの原材料になる

 小惑星を持ってくる事も出来ません。現在の地球の人工衛星は全て我が財団が打ち上げたものですよ』

「人類の居住空間が宇宙に繋がる素晴らしいプロジェクトである事は分かるのですが、それがロックフォード財団だけの手によって

 為された事は些か違和感を感じてしまいます。この時期に計画を発表した真意はあるのでしょうか?」

『セカンドインパクトで全世界が被害を受けましたからね。各国政府もこんな宇宙開発プロジェクトをやる余裕なんて無かったでしょう。

 ですが、我が財団はそれが出来たという事です。このプロジェクトは宇宙開発の足掛かりとなるべきものです。

 今は大きな事件が起きており、ネルフと【HC】が事に当たっていますが、先の展開を疎かにして良い筈が無いと考えています』

「確かに宇宙開発が進めば、人口問題やエネルギー問題、資源の問題なども次々に解決していくと思います。

 このスペースコロニーはその先駆けという事ですね。素晴らしい!」

『では、このスペースコロニーの管理運営については、フランツ首相から発表して下さい』


 ここでシンジはフランツに発言を譲った。これから発表がある事はシンジの権限の範疇には含まれていなかった。


「うむ。このスペースコロニーに関して、我々政府が財団から連絡を受けたのは約二週間前の事だ」

「に、二週間前!? では財団は政府にも内緒でこの計画を進めていたと言うのですか!?」

「その通りだ。国の資金を使わずに財団の私財で建設を進めていたから、黙っていたからと言って法律違反には為らない。

 そもそも宇宙開発など法整備はほとんど為されていないのが実情だ。正直言わせて貰うと、最初は閣僚全員が頭を抱えた。

 だが、建設完了間際であり、今更財団の財産であるコロニーを政府の管轄化に置くという訳にもいかない」

「それは分かります」

「そして出した結論だが、スペースコロニーを含む宇宙関連施設はロックフォード財団の自治権を持つ直轄領として認める事になった。

 これに関しては、閣僚会議の承認と国王陛下の認可も頂いている」

「民間企業が自治権を持った直轄領を持つのですか!?」

「実際問題だが、我々政府には宇宙の居住区を管理する事は技術的にも出来ない。事ある度に財団に相談など、手間が掛かり過ぎるしな。

 それに財団の先行投資を無駄にさせる訳にもいかないだろう。条件として小惑星資源などは、格安で国内に提供する義務を持たせる。

 それと居住民の管理と安全確保の義務を持つ。まあ当然の事だがな。これらを条件に、財団の自治領として認める。

 居住民の募集とかは我々政府は一切関知せずに、財団側が行う事も条件に入っている。

 最初の自治領主はミハイル・ロックフォードが為る事も決定済みだ」

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 ミハイルはリビングでナルセス、ハンス、クリスと一緒に、フランツのTV報道を見ていた。

 そしていきなり自分がスペースコロニーの自治領主だと指名されて、飲んでいた紅茶を対面にいたクリス目掛けて噴出していた。

 ミハイルの噴出した紅茶はクリスの顔面を直撃していた。


「きゃっ!!」

「ご、ごめん。大丈夫か!?」

「大丈夫じゃ無いわよ。昨晩に続いて顔にかけるなんて、あっ……」

「ば、馬鹿っ!」


 口を滑らした事に気がついて、クリスの顔が真っ赤に染まった。普段は冷静なクリスが真っ赤になるなど滅多に見れるものではない。

 ミハイルは焦ったが、クリスの言葉が聞こえていたナルセスとハンスがニヤニヤしながら二人を見つめた。

 これがクリスが顔を赤らめなければ、今と同じ事だと言い張れた。だが、顔を赤くする事で真実をばらしてしまったのだ。自爆である。


「あ、あたしは部屋で着替えてきます」


 真っ赤な顔のクリスは服を着替える為と言って、視線を誰とも合わす事無く、さっさと部屋に戻っていた。

 残ったのは男三人である。早速、二人の質問責めが始まった。


「二人はそんな仲だったのか。仲が良いのは分かっていたが、そこまでとは思っていなかった。

 そろそろミハイルの縁談を考えなければと思っていたが、これなら嫁探しも不要だな」

「クリスの顔に……意外とミハイルはマニアックなんだな」

「ち、違うっ! そうじゃ無くて、私が自治領主だなんて聞いていません! どういう事ですか!?」

「話しを逸らしたか。まあ良い。あのスペースコロニーは海底地下工場にあるオーバーテクノロジーを使用しているのだろう。

 そして全てを管理出来るのがシン、ミハイル、クリスの三人だ。

 シンが日本から離れられない以上、管理は二人のどちらかが行う必要がある。ミハイルしかいないだろう。年齢的にも妥当だ」

「……嵌めましたね。首相と会談した時に、私を祭り上げるように決めていたんですね」

「先に話せば絶対に断っただろう」

「当然です!」

「だから、フランツ首相から発表して貰ったんだ。全世界に生放送だから今更逃げられんぞ。覚悟を決めろ。

 それにしてもミハイルの趣味も一部が分かった事だし、楽しくなるぞ」

「それは忘れて下さい!!」


 二人の質問責めを必死の形相でかわそうとするミハイルだった。

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 スペースコロニーの事で相談を受けたフランツは、正直言って頭を抱えた。

 閣僚会議の議題で出した時も、かなり揉めたのも記憶に新しい。

 だが、スペースコロニーの目的が、万が一でもサードインパクトが起きた時の避難所、つまり箱舟だと言う事は閣僚全員が知っていた。

 使用する事に反対すべき理由は無い。使徒戦が終了した時は、宇宙開発の足掛かりになるのだ。

 そしてそれは北欧連合が世界の中で一国だけ、宇宙開発が行える国になる事を意味している。その利益を考えれば反対する理由は無い。

 だが、スペースコロニーが財団の私財で建設された事が微妙に影響を与えていた。財団の財産であるコロニーを買い取るか?

 賠償金で余裕があるとはいえ、八年掛りで建設されたコロニーの建設費は莫大な金額になるだろう。

 まだ先が見えない事から、今の時点でそんな巨額な買取は出来る訳は無い。そもそも技術が無い為に運営は財団に一任する事になる。

 財団が北欧連合に深く関わっている事から、財団の反発を招くコロニーの接収は最初から議論さえされていなかった。

 残るはコロニーの運営を財団に任せる事だった。この場合、暴走されては困るから何らかの鈴をつける必要がある。

 某小説であるように、スペースコロニーが独立して地球に戦争を仕掛けてくるなど、どの閣僚も考えたくは無かった。

 移住する人口の問題もあり、そんな事態が起きるとしてもかなり先の話しになるが、事前に規制出来ればそれに越した事は無い。

 結局、コロニーを運営する技術が無い事やロックフォード財団の重要性を考慮して、北欧連合に優先的に利益を齎す事を条件に、

 コロニーの自治権をロックフォード財団が持つ事を認めた。現在の社会状況下で、民間企業が自治領を持つ事など本来はありえない。

 だが、宇宙空間という今までの手法が適用されない場所では、イレキュラーを認めるしか方法は無かった。

 サードインパクトが回避出来るかという微妙な時期である事も大きく影響しているだろう。

 移住民は財団が募集する事も制約になっている。ある意味、移住民は財団の社員のようなものだ。

 税金の徴収権や警察権、裁判権などを全て財団が管理し、給与の支給も財団から行われる。

 つまり財団は移住民の生命や権利を保護する義務を負う事になった。

 こうしてシンジは、サードインパクトの避難場所と、宇宙空間での活動拠点の両方を同時に得たのだった。

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 北欧連合政府としてのスペースコロニーの説明は終わって、シンジが引き続いて説明を行っていた。


『……このように小惑星帯に近い火星軌道付近でコロニーを建設していますが、そろそろ完成が間近に迫りましたので、

 地球のラグランジュポイントへ移動を開始します。予定では二ヵ月後に到着する予定です』

「ちょっと待って下さい! それではコロニーの建設は火星軌道付近で行われているというのですか!?」

『そうですが、それが何か?』

「!! では火星にも到達しているのですね!? どんな移動手段を取られているのですか?」

『それは企業秘密です』

「……分かりました」

『先の日本で移住に関して発表して国内で物議を醸し出しましたが、移住先はこのスペースコロニーを予定していました。

 北欧連合の国内に、日本からの移住の拠点を設ける訳ではありませんから、安心して下さい。

 国内世論が日本に否定的なのは承知しています。その世論を無視する事はありません。

 さて、スペースコロニーへの移民希望者に関してですが、後で弊社のHPに募集要綱を出しておきます。

 今言える条件は、【HC】支持国の国籍を持っており、思想的な問題が無い事。犯罪歴が無い事。

 年齢は四十歳未満の健康な男女とします。出来ればペアか、家族単位でお願いします。住居と仕事は全てこちらで用意します。

 孤児とかの子供だけの応募も可能です。卒業したら一定期間は我が財団で働いて貰いますが、その前の学校等は全て面倒をみます。

 そうそう、我が財団の正社員として扱いますから、成人以上の人は希望の職業を含めた履歴書を提出して貰います。

 それと移住者に関しては、財団の名誉にかけて生命と権利の保証をしますが、逆に言うと財団が不要な人間と判断した場合は

 その人を追放する権利も持ちます。これは密閉空間でのトラブルを事前に回避する意味合いを含みます。

 そういう訳ですから、移住募集者は我が財団を信用出来ると思った人だけにして下さい。

 もっとも、我々に否定的な考えを持つ人達は、最初から移住を認めるつもりはありませんから安心して下さい』

「つまり、財団を全面的に信用しないと駄目という事ですね」

『自治領になる訳ですから、警察権、裁判権なども財団が持ちます。ある程度安定したら選挙なども出来るでしょうが、最初は無理です。

 移住民の生命と権利を含めて生活全般に責任を持つ訳ですが、こちらも選ぶ権利はあります。我々に否定的な人達は拒否します。

 特に過激な思想を持った人達は厳重に取り締まります。そういう人達の応募は最初から却下しますし、後からでも分かれば追放します』

「思想の自由を制限するという事ですか?」

『別に愚痴とかまで制限するつもりはありません。基本的には言論の自由は保障しますよ。

 しかし、権利のみを主張して義務を果たさない。ルールを守れないような人達を受け入れる気はありません。

 移住をするという事は、今までの国を捨てて我が国の国民になるという事です。国歌や国旗に敬意を払えない人は不要です。

 そういう人達は、自分達の主張が通るような環境で生活して下さい。無理に我々のところに来る必要は無いでしょう。

 我々は民間企業です。どこの会社も方針に従わない人達を無理に採用はしないでしょう。面接に落ちた人達の面倒までみれません』

「移住希望者は【HC】支持国だけですか? 問題が起きませんか?」

『フランツ首相、ボクから発表して良いですよね』

「構わん。任せる」


 使徒が残り三体である事は、フランツやナルセスを始め、主要メンバーには通達済みだ。

 最終局面が見えてきたが、まだ他のネルフ支持国との全面対決には時期尚早だという状況である。

 本国や同盟国、友好国の安全をまだまだ確保するには時間が掛かる。それまでは完全対立は避けたいというのが本音だった。

 だが、ゼーレの刺客を受けてシンジが被害を受けている事もあり、何もしないという訳にはいかない。

 面倒な事だが、嫌味を兼ねた報復処理を行う事にしたのだ。勿論、フランツの同意は得ている。


『ネルフの肆号機の起動試験の失敗でボクはまだ右足が負傷して歩けない状態です。(本当は治っているけど)

 その後、洗脳されたネルフ職員の襲撃やVTOL機の攻撃とかも受けていますが、これに関しての正式回答はまったく無し!

 ネルフは我々の安全を確保する義務があったのに、それを怠り、事態が発生した原因さえ究明出来ていない。

 そのくせ、我々に要求ばかり突きつけてくる。ネルフに対する報復も兼ねて、ネルフ支持国からの移住希望は一切認めません。

 このスペースコロニーを足掛かりに、宇宙の資源開発やエネルギー開発を進めていきたいと考えていますが、同じような理由から、

 ネルフ支持国の参加を一切認めません

「それでは、ネルフ支持国からクレームがつくと思いますが?」

『これは北欧連合の所有物では無く、ロックフォード財団の所有物です。当然、移住許可権限や使用許可権限も財団にあります。

 民間企業の判断に各国政府が文句を言ってくるのは、筋違いというものでしょう。

 仮に言ってきたとしても、基本的に我が財団はネルフ支持国との関係はほとんど無いですから、問題はありません。

 不買運動や輸入制限を掛けたければ、どうぞと勧めるだけです』

「そ、それはそうなのですが、これほどのプロジェクトです。参加したいと考えるのは当然かと思いますが?」

『宇宙の資源とかかなりの利権が見込めますからね。考えるのは当然です。ですが、許可は別です。

 参加したければ、それなりの対価を示すべきでしょう。この処置はネルフへの報復処理の意味を含んでいますからね。

 それにこれでも大分譲歩したつもりです。最初はもっと過激な事を考えましたからね』

「参考までにお聞きしたいのですが」

『それは内緒にしておきましょう。世界経済を破壊するつもりならともかく、その発動を示唆しただけで大混乱になるのは必須です。

 我が国とロックフォード財団は世界経済の混乱は望んでいません。さて、ここからはちょっと独り言を言わせて下さい』


 当初は中東連合の原油価格のUPか、輸出停止。隕石落しも可能な事を示唆しようかとも考えたが、影響の大きさに危惧して

 結局は嫌味がてらに宇宙からネルフ関係国を一切締め出す事に落ち着いた。

 最終局面ならともかく、現時点で派手な動きをして全面対決の原因をつくりたくは無いという思惑があった。

 そしてベットに横たわるシンジに注目が集まり、会場が静まり返った。


『若気の至りでボクも過激な事を言いましたが、老い先短い老人が少し挑発されたぐらいで切れないで欲しいですね。

 ボクを拉致・洗脳、出来ない場合は抹殺を指示したES部隊の四人は、情報を取り出してから処分しました。

 二つの襲撃事件の真相は既に分かりましたから、その件に対する報告は一切不要です。

 あの通信機は処分しますし、以後の定期会談は行いません。今までの関係は一切御破算です。

 その引き金をあなたは引きました。その責任は取って下さい。そしてこれ以降は我々の協力は一切望めないと覚悟して下さい。

 このスペースコロニーからネルフ支持国を締め出したのも、意趣返しの意味を含めています。

 ボクを拉致・洗脳しようなどと目論んだ組織を支持する国を参加させる訳にはいきません。敢えて誰かとは言いませんがね』

「博士を拉致・洗脳しようと企んだ組織があるのですか!? ネルフ支持国を締め出すという事はネルフの手によるものですか!?

 ES部隊とはあのサイボーグ改造された遺体の事ですか!?」

『独り言に質問されては困ります』

「し、失礼しました。今後の話しですが、博士は何時頃【HC】に戻るのですか? それと今は何処にいるのですか?」

『【HC】に戻るのは身体が完治してからです。現時点ではまだ正確な事は言えません。それとボクのいる場所は映像を見てください』


 シンジの姿が映っていた部分の映像がいきなり変わって、嘗ての月面着陸した時と同じような映像が映し出された。

 月の荒野の地平線の先に、青く輝く美しい地球が見える。そしてカメラはゆっくりと動いて、月の地表にある人工のドームを映した。

 そのドームを覆っていたものが徐々に開放されていく。そしてそのドームの中心には、ベットに横たわっているシンジがいた。


『御覧の通り、ボクは月にいます。たった今、偏光制御システムを切りましたから、高性能な望遠鏡なら月の施設が見えるはずです。

 ほとんどの施設が地下にあり、地球から見えるのはこのドームを含めた一部だけですけどね。

 身体が完治するまではこの施設にいますが、メールでの連絡は可能です。ああ、某議長に教えていたアドレスは使えませんから。

 ここには『天武』を持ち込んでいます。非常事態にはそれで対応します。それでは失礼します』


 そう言ってシンジの映像は切られた。フランツはこれで記者会見を打ち切ったが、記者達の興奮は醒めなかった。

 そしてこのTV中継を見ていた大半の人間が、戦慄と興奮に巻き込まれる事となった。

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 フランツとシンジのTV会見は、全世界に中継されており、それを見た人間で望遠鏡を持っている者はそれを月面に向けた。

 低倍率の望遠鏡では確認出来なかったが、一定以上の倍率の望遠鏡なら月の人工の施設が確認出来た。

 そして月面に人工の施設があるという事は、火星軌道付近のスペースコロニーも実在するという事の証明になるだろう。

 それは世界各地で報道されて、大きな騒ぎを巻き起こす事になった。


 まず、ネルフと【HC】はサードインパクトを防ぐ為に設立されたという事は知れ渡っている。

 具体的には何をしているかの報道は一切無い。だが、その重要性は誰もが認識している。

 セカンドインパクトを経験した世代では、北半球でサードインパクトが起これば人類は絶滅するかも知れないと考えている者は多い。

 そんな危惧を抱いている人間からしてみれば、宇宙での生活圏が確保出来ればサードインパクトが起きても生き延びれると考えた。

 ロックフォード財団の管理下に入らなければならないという制約はあるが、それでも生き残れるチャンスに繋がる。

 宇宙生活など本当に出来るのかという危惧は当然ある。今まで誰も住んだ事が無いところであり、不安に思うのも当然だろう。

 だが、現在の生活基盤が不安定な人間にとっては、就職先まで確保出来る魅力的な条件であった。

 ロックフォード財団に全てを管理されるという不自由はあるが、今までの財団の行動を知って信頼出来ると判断出来れば、

 まさに安定した衣食住を確保出来る事になる。財団が信用出来ない人達は二の足を踏むだろうが、それは当人達の自由だ。

 それに資源不足が継続的に発生する中、宇宙の資源を有効活用出来るのは各国にとってのメリットになる。

 将来的に宇宙に進出しなければと考えている人間にとって、スペースコロニーを拠点に活動出来るというのは大いなる展望になる。


 北欧連合でスペースコロニーに移住を望む者はあまり多くは無かった。

 理由としては、現在の生活が安定しており、新しい生活への不安が勝った事があげられる。先進国ならではの現象であった。

 移住を望むのは、ドロップアウトした人間に多かった。だが、性格的に先進性を持っている少数の人間は名乗りをあげた。

 それと孤児院関係者も移住を希望する者が多かった。衣食住が財団によって保証されている為である。

 同盟国や友好国では、移住を望む者の比率は北欧連合と比較して高かった。

 これは生活基盤がまだ安定していない事と、新天地で一旗上げようと考えている者が多かった事に起因していた。


 だが、ネルフ支持国ではこれらの参加が一切認められない事から、市民の不満が続出していた。

 企業も同じだ。宇宙の資源の有効活用は莫大な利益を見込める事から、参加を希望する企業は多かった。

 だが、ネルフ支持国という理由から締め出されるのは納得がいかない。

 シンジを拉致・洗脳しようと目論んだのがネルフの関連組織だというのも混乱の原因になった。

 特にネルフを名指しした訳では無く、どの組織がシンジを襲ったのか、市民の間ではかなりの数の噂が流れた。

 政府や軍の上層部では、ある程度は推測は出来ていたが、表立っては言えない事であった。そのような理由から、

 ゼーレ資本下の企業はともかく、独立資本の多国籍企業の一部は【HC】支持国に資本を移動させる動きが加速していった。

 そして市民の一部も移住を検討する動きが始まった。北欧連合の入国検査は厳しくて移住許可はまず下りなかったが、

 北欧連合との友好国なら移住許可は取り易い。そんな理由から友好国の大使館への問い合わせが段々と増えていった。

 直接的な報復は出来なかったが、このような間接的な手段によって、徐々にネルフ支持国の弱体化が進んでいく事になる。


 そのような動きを忌々しげに見ている集団があった。

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 ゼーレの会合

 フランツとシンジの記者会見は全世界にかなりの反響を及ぼしていた。

 まだまだ過熱状態だが、ある程度は状況が落ち着いたと見て、会合が行われていた。


『あんなものを建設していたとはな。しかも火星軌道付近で建設だと?。手出しが出来ぬでは無いか』

『あれに移住されてはサードインパクトを起こす意味が無くなる。断じてスペースコロニーを認める訳にはいかぬ!』

『忌々しい! 何処まで我等の邪魔をするつもりだ』

『魔術師の技術の底が見えぬ。甘く見過ぎたか』

『ES部隊から情報を取り出したか。拉致・洗脳と抹殺指令の事を言っていたから間違い無かろう。ES部隊の能力をも上回ったのか』

『あの超常能力を持ったES部隊を凌駕するなど信じられぬ。やはり別の守護者が魔術師を守っているのか』

『今、魔術師は月にいる。手出しは出来ぬ』

『だが、放置する訳にもいくまい。ES部隊の名前を知っていた事から、情報を聞き出したのは間違い無い。

 報告無用と言っていた事から、我等の事まで知っているかも知れぬ。何らかの手を打つべきだろう』

『魔術師の居場所には手は届かぬ。ならば手の届くところから順に追い詰めれば良かろう。手始めは【HC】だ』

『待て! 魔術師が不在と言っても、魔術師の手は届くのだ。下手な手出しは報復を招くぞ』

『何も我等が直接手を出す訳では無い。少し【HC】を揺さぶるのも良かろう』

『『魔眼使い』を切り捨てか。多少は惜しいが仕方あるまい』

『使えぬ駒に意味は無い。最後は我等の為に散って貰おう』


 ゼーレとしては補完計画さえ実行すれば、目標を達成出来ると考えている為に、時間の掛かる宇宙開発に表面上は興味は示さなかった。

 それより、人類補完計画の意義をぶち壊すスペースコロニーを忌々しく思っていた。

 だが、数人のメンバーの目的は少し異なっていた。その為にゼーレの主流と異なる考えを抱き、そして悩んでいた。

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 12個あるモノリスの中の、あるモノリスを担当する老人は一人で静かに考えていた。


(我等ゼーレが人類補完計画を進めていたのは、あのままではいずれ人類は自ら滅ぶしか無いと判断された為だ。

 人口問題、食料問題、エネルギー問題、人種問題、宗教問題、渇水問題、大気汚染問題、温暖化問題、etc。

 問題が多過ぎて、我等ゼーレでも対処は不能と判断され、このままでは人類は自滅の道しか無いと結論が出ていた。

 そこにあれの解読結果があがってきた。それをベースにして、碇ユイ発案の人類補完計画が計画された。

 このまま無秩序に滅びの道を歩むなら、秩序ある滅びの方が望ましいのは間違い無い。

 だが、宇宙開発が出来るのなら話しは変わる。セカンドインパクト前の状況では、絶対に破滅までには宇宙開発は間に合わないという

 判断だったが、今は目の前にその展望が開けている。

 全ての問題が解決出来るとは思わないが、半数の問題でも解決が出来れば人類の未来は開けるだろう。それを潰しても良いのか?

 我等ゼーレは人類の先導者として昔から君臨してきた。だからこそ、滅びも先導すべきと思っていたが、これはどうすべきか。

 迂闊に他のメンバーに相談は出来ぬ。洩らせば裏切り者として抹殺されるだけだ。さて、どうしたものか……)

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 人類補完委員会の議長であり、NO.1のモノリスを受け持つキール・ローレンツは一人で静かに考えていた。


(まさか『人類の滅亡が避けられない』という当初の前提が崩される日が来ようとはな。

 確かに人類の指導者として我々ゼーレは世界に君臨してきた。

 永遠に君臨出来るとは考えていなかったが、滅びるならそれも指導すべきと考えたのも事実だ。無秩序な滅びなど認める訳にはいかん。

 だが、我々でさえ解決出来なかった問題をあの若造は、あっさりと解決案を提示してきた。あの若造は何者だ?

 あの若造一人であれだけの事が出来るはずも無いし、何処からか技術支援でも受けているのか?

 いや支援出来る存在があるとは思えない。そもそも八年前から準備していたのであれば、補完計画の一部が洩れたと判断すべきだろう。

 そう判断すれば、あの準備の良さにも納得はいく。ならば六分儀への憎悪からというのは口実に過ぎぬか。

 あの若造の秘密を確かめたいが、今となってはそれも無理か。あやつらの技術レベルは我々を遥かに超えている。

 今となっては補完計画の修正も容易では無い。あの若造を組み込んだ計画など今更組めぬし、組み込んだら我等の組織が瓦解する。

 それは世界秩序の崩壊を意味する。世界の指導者としてそれを認める事は出来ぬ。

 ……良いだろう。我等が勝利すれば、我等が指導してきた世界もまた滅ぶ。それは指導者としての責務だ。

 あの若造が勝てば、次の世界はあの若造の指導の下で発展するだろう。

 新旧の指導者の立場を賭けた戦いだ。それにこの程度の試練に勝てなければ、次代の指導者には為れぬ。容赦はせぬ。

 セレナよ。ワシを怨むのも良いだろう。だが、この程度の試練に勝てねばお前は生き残る事など出来ぬ。覚悟をするのだな)

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 暗い部屋で白衣を着た三人の男(オーベル、キリル、ギル)と一人の女性(セシル)が、暗い表情で話しこんでいた。


「上からの命令が来た。イギリスとアメリカのES部隊の編成が済み次第、俺達が指揮官として訓練を開始する。

 アフリカの部隊は上の直轄部隊にするそうだ。今は様子見で、当分は出撃は無さそうだ」

「ターゲットは月だしな。さすがにあそこまでは行けない」

「……月か。ES部隊と暗殺部隊をあっさりと殲滅されて、魔術師を甘く見ていたと思っていたが、今回のスペースコロニー騒ぎで

 もっととんでもない奴だと認識したよ。ありゃあ、反則過ぎる」

「絶対にとんでも無い秘密があるだろうがガードが固過ぎる。月になんか気軽に行けるはずも無い。火星軌道なんて絶対に無理だ」

「こうなって見ると、あたしが前に言った彼らが空間移動技術を開発したかもしれないっていう疑惑が真実味を帯びてきたわね」

「確かに。だが、今はそれを立証する術も無い。今のところ出来るのは、移住を希望する人間の中にスパイを紛れ込ますぐらいだろう」

「そうね。新しいES部隊とサイボーグ兵士の数がある程度揃うまでは、情報収集に努めた方が良さそうね」

「【魔眼使い】の情報を態とリークさせて、【HC】を揺さぶる」

「ES部隊の試作タイプとしては十分役に立ったな。まあ、あの美女を切り捨てるのは惜しいが、仕方あるまい」

「……少し疑問なんだが、何でES部隊の女性は普通なんだ? 使徒細胞を摂取した女性は絶世の美女になるんじゃ無いのか?」

「馬鹿か。そんなの個人差があるに決まっているだろう」

「【HC】を揺さぶり、潜入員を送り込むチャンスだ。人員の選定に移ろう」

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 ネルフ:司令室

 第十四使徒の来襲とその直前の洗脳されたネルフ職員によるシンジへの襲撃。

 それとシンジの公開記者会見の後のジオフロントでのVTOL機への襲撃。そして今回のフランツとシンジの共同記者会見。

 これらを受けて、ゲンドウと冬月のシナリオは大きな変更を余儀なくされていた。


「事態がここまで動くとはな。これでは我々の出来る事など限られてくる。そもそもシンジ君と連絡さえ出来ないでは無いか!」

「…………」


 シンジの周囲の不可思議な力を見て、ゲンドウはシンジの『ユイは初号機の中に封印されている』という言葉を信じる事にした。

 対価としてシンジが欲していた情報の一部……『死海文書』の使徒関係の解読情報を引き渡す替わりに、ユイのサルベージを依頼する

 決心はついたのだが、肝心のシンジと連絡さえつかない状況だ。


 当初、ゲンドウはシンジを初号機のパイロットで都合良く使える駒として考えていた。

 だが、呼び出してみれば北欧の三賢者の魔術師であり、侮り難い相手であった。

 そして現在、シンジはネルフを殆ど相手にしていない。シンジの行動はゼーレを相手として考えて、世界規模で行動している。

 国連の特務機関であるネルフ。ゲンドウが心血を注いで造り上げた組織がまともに相手にされていない状態であった。

 『真の敗者とは戦って敗北する者ではなく、戦場に立つ事さえ許されない者である』という台詞がある。

 このままいけば、ゲンドウは真の敗者になるのでは無いかという疑心暗鬼に捕らわれ始めていた。

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 一連のシンジ関係の事態の変化は、ネルフの色々な部署にも影響を与えていた。

 技術部も大きな影響を受けている部署の一つであった。リツコとマヤはシンジの事で話をしていた。


「先輩、何かロックフォード博士が遠くに行っちゃった感じですね」

「まさかスペースコロニーを八年前から準備していたなんてね。地下で働いている私達がせせこましく感じてくるわ」

「同感です。でも、あたし達はEVAに頼るしか無いんですよね」

「弐号機と参号機の修理はまだまだ時間が掛かるわ。でも【HC】からは零号機と初号機を引き上げると通達があったのよ」

「そうなると一時的にでも稼動可能なEVAが無くなります。引き止められないんでしょうか?」

「無理ね。洗脳されたネルフ職員とVTOL機への襲撃の件があったでしょう。【HC】も職員の身の安全を優先したのよ」

「でも【HC】が全て撤退すれば、第二発令所が使えるんですよね。今の発令所を騙し騙し使う事は無くなりますよね」

「それはそうだけどね。中佐が何か置き土産を用意しているんじゃ無いかって、少し不安なのよね」

「今は月に居ますし、そんな余裕は……記者会見で言ってましたけど、博士を拉致・洗脳か抹殺する事を命令した組織って……」

「マヤ。それ以上は止めなさい。ネルフじゃ無い事は断言するけど、その事を追及して良い事は何も無いわよ」

「……分かりました」

「でも宇宙か。機会があれば行ってみたいわ。もっとも、あたしじゃ許可は出ないでしょうけどね」

「何でですか? 技術があれば歓迎するって言ってましたし、【HC】支持国の日本の国籍を持っているじゃあありませんか?」

「それを選択するのはロックフォード財団。そして極東エリア総責任者である彼よ。今までの経緯から考えて、絶対に許可は出ないわ」

「……あたしもそうですよね」


 休憩が終わった二人は作業に戻った。EVAの修理だけで無く、設備の修理関係でも二人の能力を必要としているところは多い。

 二人が十分な休暇が取れるのは、何時になるのだろうか? それは誰にも分からなかった。

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 シンジのTV報道はアスカとトウジにも影響を与えていた。身体の負傷は癒えたが、精神的にはまだダメージが残っていた。

 そしてシンジに問い質したい事を抱えている二人はシンジと連絡を取れない事に苛立っていた。

 そこに来てシンジが療養の為に月に滞在すると知り、余計に荒れていた。


「碇が月におるなんてな。聞きたい事があるんやが、どないすりゃええんや?」

「聞きたい事? トウジもなの?」

「アスカもか? そうや。ちょいと妹の事で聞きたい事があったんやが、連絡さえつかんしな」

「月……か。遠いわね。以前は同じラインにいたつもりだったけど、何時の間にかこんな距離が開いちゃったのね」


 トウジがパイロットになったのは【HC】が設立された直後だった。シンジとレイと一緒に戦った事は無かったが、アスカは違った。

 【HC】とネルフ。所属は違ったが、太平洋艦隊を襲った使徒や分裂使徒に対して一緒に戦ったという気持ちがあった。

 勿論、反発からまともに話した記憶は無い。同じパイロットで同格だという思いがあったのに、現在は距離を感じるだけだ。

 今の自分の辞書に、月だとか宇宙とかの単語は無い。世界に対して発言出来る立場でも無い。

 そしてまともに話す事さえ出来ない立場になってしまった。アスカは薄っすらと虚無感を感じていた。


 トウジはシンジの真意を確かめたかっただけだ。何故、祖父や妹を助けたのか? シンジは何を考えているのか?

 それをシンジの口から直接聞きたかった。

 ヒカリの義足は出来上がって、今は病院でリハビリ中である。定期的にトウジはヒカリの病室を訪れていた。

 使徒に敗れたショックは、ヒカリのある行動で癒されていた。退院したら……という約束もある。

 下がったり上がったりと、トウジの精神状態は不安定だったが、取りあえずは少々機嫌が悪い程度のトウジであった。

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 冬宮は首相と政府の主要閣僚との秘密会議を行っていた。

 内容は日本の対応をどうするか、北欧連合との関係改善にどう努めるかであった。

 フランツ首相の記者会見で北欧連合がスペースコロニーの所有と稼動を正式発表した事により、世界の動きは加速していた。

 ここで日本も乗り遅れる訳にはいかない。出席者の顔色は優れなかったが、まだ絶望的な状況になった訳では無い。

 事態打開に向けて、活発な議論が行われていた。


「ではロックフォード博士の不信感を取り除くには、大掃除をしなくてはならないと言う事か」

「しかし、一個人の機嫌を取る為に、そこまでする必要があるのか? 人権侵害だとか弾圧だとかで騒がれるのは目に見えているぞ。

 それよりロックフォード財団の総帥と連絡を取って直談判した方が良いのでは無いか。そもそも我が国が一個人を重視するのも問題だ」

「こちらからはロックフォード財団の総帥に連絡する事さえ出来ません。

 一度、副総帥と電話で話させて貰いましたが、日本への対応はロックフォード博士に一任しているからと通告されています」

「とんでも無い外圧だな。嘗ての江戸時代の黒船に匹敵するんじゃ無いのか。もっとも、外圧が無ければこの国は変われないのか?」

「……日本の技術は優れているはずだ! 仮にだが、財団が撤退したとして、核融合炉に代わるものを用意は出来ないのか?」

「太陽光発電は導入コストが高過ぎるし、発電量は天候に左右される。それに夜間は絶対に無理だし、我が国での設置場所は限られる。

 風力発電は設置場所の選定が難しい事もあって、大規模は無理だ。それでも改善効果はあるから、洋上での設置の検討を進めている。

 波力発電も設置場所が難しいのは同じだな。地熱発電も同じだ。特に地熱発電は温泉が枯れたら責任問題にもなってくる。

 どれも小規模なら良いんだが、大規模レベルともなると導入コストと設置場所の選定が問題になる。

 現状では核融合炉に代わるものは火力発電しか無い。莫大な燃料費が必要になるがな」

「我が国で独自の核融合炉の開発は出来ないのか?」

「一時はセカンドインパクトの影響で各国の開発が止まりましたが、今では北欧連合での成功例を見て、世界各国で核融合炉の

 開発は進められています。我が国でも既に連続した核融合反応を作り出す事には成功しています」

「だったら、財団が撤退しても問題が無いだろう」

「核融合反応で発生した超高温を安定して閉じ込めておくのに、各国が技術的に試行錯誤しているんです。

 それを商用化するにはさらに十年以上は掛かります。それに商業化出来たとしても、財団の核融合炉の効率は出せないでしょう。

 試算してみましたが、財団が設置した核融合炉の大きさで現在の我が国が核融合炉を実用化したとしても、発電量は十分の一以下です。

 それでも財団の撤退が問題無いと言えますか?」

「…………」


 自然エネルギーを使った発電は、導入コストは高いが維持費は比較的安く済む。発電量の問題はあるが、導入する事は良いだろう。

 だが、大規模レベルともなると、やはり核融合炉か火力発電所に頼らざるを得ないというのが実情だった。

 やはり独自開発では時間的に間に合わないのか? そう結論を出した閣僚の顔が暗くなっていった。


「財団が日本から撤退する場合は、使徒戦が終わった後でしょうから、その後に日本との国交断絶も可能性が無いとは言えません。

 そうなった場合、スペースコロニーを有して堂々と宇宙開発を進める北欧連合と我が国が対立するという事になります。

 そんな事態になったら、どうなるかは分かりきっていますよね」

「あの国と対立なんて、とんでも無い事だ。争って良い事など何も無い」

「戦争になれば、あっという間に抵抗さえ出来ずに殲滅される。それに今は原材料や食料の一部も輸入しているんだ。

 それが途絶えたらどうなる? それに北欧連合と対立するという事は、中東連合も敵になるという事だ。

 原油の輸入が完全に停止するな。そんな事態になるくらいなら、協力関係を維持した方が良いに決まっている。

 その前提条件が財団が日本に留まる事。その為には財団の、いや彼の信用を勝ち取る事という訳か。良くも誘導されたものだ」

「こちらからの申し込みに乗じて、都合よく立ち回ってくれたな。しかも富士核融合発電施設内に【HC】の基地まで建設してくれた。

 まったく何時から計画を立てて、我が国を巻き込んでくれたのだ?」


 日本の閣僚から見ても、今の日本の状況は北欧連合に上手く誘導されていたものと認識されていた。

 勿論、【HC】支持国となった事で追加拠出金は無くなり、核融合炉発電施設がある事で安定した電力供給体制が整えられたという

 メリットはあった。しかし、電力事情に関しては、北欧連合に命綱を握られてしまったのと同じ状態になってしまったのだ。

 冬宮は約束もあって、その辺の事情は口にしなかった。


「結果的に見て、現状では北欧連合の存在は我が国のメリットになっている。それを否定するつもりは誰にも無いでしょう。

 各国の動向はどうですか? ロックフォード博士の発表で完全に宇宙から閉め出される各国が黙っているとも思えませんが?」

「スペースコロニーで本当に生活出来るのかという疑念はあるが、宇宙開発があれをベースに進められる事は間違い無いだろう。

 その為に、北欧連合と国交が無い国で、一般市民から政治家、企業家が騒ぎ出している」

「一部の政治家や企業家が北欧連合政府と直談判しようと乗り込んだが、税関で入国を拒否されて、強制送還されているとの話しだ。

 不法入国して強制送還される民間人も増える傾向があると聞いている」

「あそこは外国人の入国を厳しく取り締まっているからな。中華街が無い国なんて、あそこと中東連合ぐらいだろう。

 外国人の土地の買収にも厳しい制限がある。ブロック経済体制の影響がかなり強い。日本には真似が出来んな」

「本社を【HC】支持国に移す事を検討し始めた多国籍企業も出始めた。一部の一般市民も移住を進める動きがある。

 この流れが加速すれば、ネルフ支持国の経済力は衰退するぞ」

「ネルフの後ろ盾である補完委員会を糾弾する意見もあるな。博士を拉致・洗脳しろと指示したのも委員会だという噂も出ている」

「世界各地のネルフ支持国の北欧連合の大使館前で、かなり過激なデモが行われているところがあるらしい。

 デモを取り締まろうとした現地の警察と揉み合いになったと聞いているぞ」

「我が国でも北欧連合の大使館の前でデモを行った人間がいる。

 指を切ったり、北欧連合の国旗を燃やしたりして抗議してくれたな。おかげで、警官隊を出動させるはめになった」


 一般的に、どんなに関係が悪くても、相手国の国旗は尊重すべきものであろう。

 それを大使館の前で堂々と燃やすなど、喧嘩を売っているに等しい行為だ。国交断絶に繋がる可能性さえある。

 そもそも同じ事をやられたら、彼らはどう反応するのだろう? 絶対に侮辱されたと怒り狂うに違いない。

 自分達が先に侮辱した事を忘れて、自分達が被害者だと主張するだろう。

 デモで相手国の国旗を燃やす行為を行うような人は、相手の都合を考えずに自分の都合だけを主張するような人だろう。

 そんな人達であっても人権は持っている。そんな非難行為だけで争うのは馬鹿げた事だろう。

 そして、そんな人達との共存を目指すのか、区切ってお互いが干渉せずに暮らすのかは各自の自由だ。


「大掃除するにしても法整備が必要になる。人権弾圧とか差別だとかで言ってくるのは分かっている」

「別に投獄する事など考えてはいないぞ。特別扱いを止めて、法の下に平等に扱うだけだ。

 それで不満が出るなら、祖国にお帰り願うだけだ。同調する日本人の移住を勧めても良いな。

 我が国の国籍取得の条件の厳格化を進める事も必要だ。こんな状況になったからと言って、気軽に日本国籍に変えられても困るからな。

 それと報道機関の株主の国籍比率の厳格適用だ。今度は広告機関などを含めた、マスコミ周辺の企業も国籍比率を適用しなくてはな」

「幸いかも知れんが、総選挙は近い。ここで一気に過半数の議席を確保すれば、法改正も進むだろう」

「大和会の傘下のマスコミを使って、特定国に肩入れする政治家は徹底的に追及します。違法献金など付け入る隙は十分にある。

 現在は国税局の協力もあります。裏資金などの証拠が出れば、それを一気に公表しましょう」

「それは御願いする。最悪の場合は、汚職したり売国行為を行った政治家を選出した選挙区にペナルティを与える事を検討する。

 自分達に利益が還元されるからと言って、モラルに反した政治家を選んだ責任は、選んだ投票者に負って貰わねばな」

「現在は国営放送の職員を選別中だ。特定国の強い影響がある職員を一気に外して、放送内容を再編する。

 民間のマスコミに本格的にメスを入れるのはそれからだ。かなり潰れたところがあるが、まだ数は十分に多い。

 免許制を導入する事も内々で検討させている。勿論、言論の自由は保障するが、その前提となる国の安全を優先させなくてはな。

 国が無くなったら、言論の自由も無くなる。その事に気がつかない輩が多くて困るがな」


 首相と各主要閣僚、冬宮の秘密会談は夜遅くまで続けられた。十人十色と言うように、人は色々な意見を持っている。

 ある特定国と日本の仲を良くしていく事が、日本の、そして自分達の利益になると考えている人間もいる。それは当人達の自由である。

 だが、冬宮を始めとする現在の政府は、ある特定国より北欧連合を選んでいた。

 どちらを選んだ方が正解かは、結果を見なくては分からない。

 お互いの組織は、自分達が良いと考える日本の未来の為に、水面下で激しい駆け引きを行い始めた。

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 友人の結婚式に二人して出席しなかった後、二人で会う回数は次第に増えていった。その夜、ミサトと加持は某ホテルで密会していた。

 ミサトにしてみれば、縋れる相手を見つけ出したのかも知れない。自分の指揮で使徒は倒せず、【HC】との関係も徐々に悪化。

 精神的にも追い詰められているミサトにとって、加持の存在は救いになっていたのかも知れない。

 事実、最近のミサトは以前と比較すると、暴走する程度が小さくなってきている。

 加持との逢瀬が精神誘導の効果を薄めているのかも知れない。


 (投稿規程は『18禁は絶対に駄目』というルールなので、省かせて頂きます)


 第一ラウンドを終えたミサトは、加持の上で余韻に浸っていた。

 嘗ての学生時代の事を思い出し、取り留めの無い会話から核心部分へと会話は移って行った。


「で、人類補完計画は何処まで進んでいるの? 人を滅ぼすアダムを何故地下に保護されているの? 北欧連合の最終目的は?」

「それが知りたくて俺と会っているのか」

「それもあるわ」

「ご婦人に利用されるのも光栄の至りだが、こんなところじゃ話せない」

「今はあたしの希望が伝われば良いの。ネルフと六分儀司令の本当の目的は何? この時期にスペースコロニー計画を発表した真意は?」

「こっちが知りたいよ」


 加持にとってミサトはどういう存在だったのだろうか?

 情報収集の為なのか、本来の性がそうさせたかは分からないが、加持は節操無くミサト以外の複数の女性にも手を出していた。

 『ネルフの種馬』、『節操無し男』、『抱きつき魔』等、色々な二つ名で呼ばれる事になった加持にとって、ミサトはどんな位置だった

 のだろうか? それは加持にしか分からない。シンジなら無理やり聞きだせるが、そんな悪趣味は持ってはいない。

 学生時代を知り本音を語り合った事はあるが、ミサトは加持の心の奥底に住んでいるのだろうか? それとも仕事の一環なのだろうか?

 それはともかく、加持の上に乗っているミサトはそれなりの美人であり、スタイルもそれなりに良かった。

 事実、ミサトの双胸は加持に心地良い感触を伝えている。

 肌は学生時代ほどの張りは無いが、ミサトの吐息と合わせて加持にかなりの刺激を与えている。

 第二ラウンドの準備が出来た加持は、早速ミサトに手を伸ばした。


「ちょっと、こんな事で誤魔化さないでよ。……あ、あんっ……そ、そこっ……そこは違うっ! 後ろは止めて!

 きゃっ! 変な物を入れないでよ。こんな時にもう! 何?」


 ミサトが自分の身体から取り出した物は、小さなカプセルだった。ミサトは不審な目で加持を見下ろした。

 だが、加持はニヤリと笑うだけだった。


「プレゼントさ。八年ぶりのね」

「えっ!?」

「最後かも知れないがな」


 加持は無表情であり、ミサトも加持が何を意味して話したか、その時は分からなかった。

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 人間は誰しも欲望を持ち、自分の幸せを追求する権利を持っている。それは世間一般の悪評高い人物であっても同じである。

 ゲンドウはゲンドウなりの、リツコはリツコなりの欲望と幸せを追求する権利を持っている。それを否定する事は誰にも出来ない。

 それが二人の中だけで完結する分には、誰にも迷惑を掛ける事も無く、誰の邪魔も入らないだろう。

 だが、他者を自分の欲望と幸せの追求に巻き込むと事情は異なってくる。

 力の無い者は二人の事情に翻弄されるだけだが、力のある者は逆に二人を排斥しようとするだろう。だからこそ諍いが起きる。

 話しは逸れたが、ゲンドウとリツコにも欲望はある。そして二人は欲望を解放し、その余韻を味わっていたところだった。


 セントラルドグマの爆発事故に巻き込まれ、リツコの両足は失われて現在は義足である。

 裸になると違和感がありまくりである。その為に、リツコはゲンドウから捨てられる事を恐れていた。

 だが実際にはゲンドウのリツコの扱いに変化は無かった。定期的に逢瀬を重ねている。

 レイ本人とレイのクローンがネルフからいなくなった事もあり、現在のリツコを苛立たせる存在はいない。

 そんな理由から、二人はどっぷりと関係を深めていった。


 現在のゲンドウに打てる手はほとんど無い。唯一、ゲンドウの望みを叶えてくれるのはシンジだが、連絡の取りようが無い。

 自然とリツコに無茶を要求する事はほとんど無かった。そんな理由から二人の関係は今は安定していた。


 ゲンドウはまだ現役である。第一ラウンドが終わっても、時間が経てば回復する。その回復にリツコが協力すれば、尚更早まる。

 そして二人の第二ラウンドが始まった。


 (投稿規程は『18禁は絶対に駄目』というルールなので、省かせて頂きます)

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 ミハイルは全世界のTV報道でスペースコロニーの自治領主に指名されてから、多忙な日々を送っていた。

 シンジが計画して実行したプロジェクトであるが、ユグドラシルネットワーク上に全てのデータは揃っている。

 これを閲覧出来るのはシンジ、ミハイル、クリスの三人だけであり、当然ミハイルも内容は全て知っている。

 だが、実際の移住作業や管理体制の整備ともなると、これから整備しなくては為らない為に、やる事は山ほどあった。

 北欧の三賢者としての業務はあまり無い。ロックフォード財団の第一技術部を統括しているが、ミハイル不在でも支障が

 出ないように、部下の教育はしっかりと行っている。これは第二技術部を管轄するクリスにも同じ事が言えた。

 実際の移住の希望受付は開始されていないが、事前に準備する事は多い。その準備にミハイルは掛かりっきりになっていた。

 そして数日後には募集開始が出来る状況になったところだった。そのミハイルをクリスがサポートしていた。

 一段落ついた状況で、溜まったストレスを二人はベットで発散させていた。


 (投稿規程は『18禁は絶対に駄目』というルールなので、省かせて頂きます)


 第一ラウンドが終わった後、ミハイルはクリスの裸体を堪能していた。情事の後のクリスの火照った身体が悩ましく見えた。

 ミハイルがクリスとこういう関係になったのは、シンジが中東へ行ってからだ。つまり二年前になる。

 シンジには繋がっている為に知られていたが、ナルセス達には最後まで隠し通せると思っていた。

 だが、クリスが口を滑らした事で、二人の関係がナルセスとハンスに知られてしまった。

 別に悪い事をしている訳では無いが、どうしても気まずさがある。

 クリスの方は割り切って澄ました顔で済ませているが、ミハイルはそこまでいかない。変な趣味を知られた事もあるからだ。


「考え事をしているの? もしかして他の女の事を考えているんじゃ無いでしょうね」

「こんなに良い女を横にして、そんな事を考えるはずが無いだろう」

「うふ。でも義父様と義兄様に知られたけど、変な目で見られなくて良かったわ」

「祝福してくれたしな。あまり突っ込みが無くて助かるよ」

「あれだってミハイルがやって欲しいって言ったのが悪いんでしょう。胸だなんて恥かしかったんだからね」

「いやあ、クリスの素敵な胸を見てたら、つい……ところで式とかはどうする?」

「今は無理でしょうね。この事態が落ち着いたらで良いでしょう。シンから素敵な贈り物も貰えたしね。

 シンからプレゼントなんて六年ぶりかしら」

「ああ。あの物理障壁が展開可能な指輪の事か。あそこまでのオーバーテクノロジーは私達には知らされていないからな。ありがたい」

「浮気防止の意味も含めて、あたしもスペースコロニーには行くわ。良いでしょう」

「嫌だと言っても連れて行くさ。嫁なんだから当然だろう」

「うふふ。嬉しいわ!」


 シンジは事が終わればロックフォード財団を抜けて雲隠れするつもりだと発言して、ミハイルとクリスも同じつもりだと考えていた。

 だが、この時はミハイルは多忙な事とクリスに夢中だった事で、シンジの雲隠れ発言を忘れていた。

 そしてミハイルはクリスに第二ラウンドを挑もうと、クリスに覆い被さっていった。

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 どこかの雰囲気に毒された訳では無いだろうが、シンジの周囲もピンク色の雰囲気に包まれていた。

 現在、シンジは月の地下基地にある寝室のキングサイズのベットで横になっていた。

 シンジの両脇にはミーシャとレイが汗まみれになって、呼吸を整えているところだ。

 ミーシャとレイとマユミ。三人はローテーションを組んで、二人でシンジの相手を務めていた。

 体調の関係で一人が抜ける事もあるし、シンジも常時全開という訳でも無い。溜まれば別だが、通常は二人で十分である。


「シン様、凄過ぎ」  「癖になりそう」

「二人とも大丈夫?」

「はい。少し休めば大丈夫です。それにしても、何時までこの月面基地に居るんですか? 怪我はとっくに治ってますよね」

「次の使徒が来るまでかな。スペースコロニーの件もあるから、今はここに居た方が都合が良いんだ。指示が出し易いしね」

「だったら、それまでは夜の爛れた生活が送れるのね」

「レイったら結構貪欲なのね。それはそうと、姉さん達はどうしています?」

「こちらから何通もメールを送っているけど、何の回答も無いんだ。

 監視システムには異常が見られないから、今は生活環境の整備で大忙しの状況だよ」

「そのうちに遊びに行ってみますか?」

「それ良いわね。良いでしょう、お兄ちゃん」

「【HC】の事とコロニーの問題があるんだよな。そっちが落ち着いてからだな。それにボクは対外的には療養中なんだ。

 万が一でも怪我が治っているとばれたら、色々とまずい事が出てくるからね。それとも二人で行ってくる?」

「良いんですか?」

「ああ。案内はつけるさ」


 スペースコロニーの総管理者にミハイルを選んだので、シンジは公式にはコロニーに絡む業務は無い。

 だが、細かいところで最初から関わっていたシンジしか判断出来ないところも、かなり多い。

 それに世界の動向の確認とか、【HC】への指示とか業務が途切れる事は無かった。

 それでも【HC】基地にいた時ほど忙しくは無かったので、ある意味、月基地の滞在中は軽い休暇と割り切っていた。


 少し休んで体力を回復させたレイが、シンジの腕を抱かかえた。それに気がついたミーシャも負けじとシンジの腕を抱かかえた。

 二人の挑発を受けたシンジがニヤリと笑った。まだまだ体力はある。シンジは二人を抱え、第二ラウンドを開始した。


 (投稿規程は『18禁は絶対に駄目』というルールなので、省かせて頂きます)

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 世界のあちこちでピンク色の雰囲気が色濃く漂う中、不知火とライアーンは中年男の悲哀を漂わせながら会話をしていた。


「何処かで凄く馬鹿にされたような気がするのだが?」

「司令もですか? 私もそうです。ああ、本国の妻が恋しくなります」

「そうか、副司令は妻子持ちだったな。羨ましい

「何か言いましたか?」

「いや、何でも無い」


 不知火は独身であり、ライアーンは単身赴任で【HC】に出向で来ている。

 二人とも不満を溜めないように定期的に遊んでいるが、それでも寂しいと感じる時はある。

 特に不知火はそうだった。ハニートラップに掛からないように慎重に相手を選んでストレスを発散させているが、それでも不満は残る。

 自然と周囲の女性(主にセレナ)に視線が向けられるが、パワハラと言われない為に手を出す事は考えてはいない。


 シンジが【HC】基地内で記者会見した後、ジオフロントで搭乗していたVTOL機がミサイルで撃墜された。

 その時からシンジと話していない二人であった。シンジの怪我が実は全快している事を知る人間は、ミーシャ達だけであった。

 その為、不知火とライアーンはシンジが療養の為に月に居ると思い込んでおり、シンジの負担を増やす事はするつもりは無かった。

 つまり、【HC】サイドからはシンジに連絡を取るような事はしていない。シンジを療養に専念させようとする親切心からだった。

 ネルフ本部からの撤退はアーシュライトが指揮をとっており、ユグドラシルUや小型核融合炉などの主要設備の搬出は終わっている。

 零号機と初号機は最後になる予定だ。

 ネルフ側は強く慰留を求めたが、職員の安全が確保出来ない事を理由に不知火はネルフの要求を突っぱねた。

 ネルフ本部からの撤退が終了し、後はシンジが戻ってくれば以前の体制に戻ると考えている二人だった。

 だが、使徒が残り三体である事の連絡を受け、使徒戦が終われば【HC】を解散させると言われている不知火には不安があった。

 司令職に未練がある訳では無い。【HC】が解散する時、財団が日本から撤退するかを判断する予定だ。

 その判断が迫っているのだ。日本を愛する不知火にとって、日本が苦境に陥るのは見過ごせなかった。

 それにスペースコロニーの件もある。財団が日本から撤退し、その時に有能な人材を多数引き抜かれては、日本はさらに苦境に陥る。

 ライアーンとは立場が異なるので、この件に関しては不知火は誰にも相談していない。

 悩みを抱えている不知火に、ドイツの政府機関から連絡が入ってきた。

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 シンジ達四人がネルフ本部に行ってから、セレナとナターシャは以前と同じく、二人で食事するようになっていた。

 セレナの業務は不知火の秘書役である。不知火のスケジュールの調整や書類整理が主な仕事内容である。

 負荷的には軽く、通常に朝出勤して定時あがりで済むレベルの仕事だ。

 不知火もセレナを過負荷にするつもりは無く、双方が納得した事だった。

 その運命の日、セレナは定時であがってマンションへの帰り道で考え事をしていた。


(シンが大怪我したままネルフに行って、さらに怪我をして月で療養中か。まったく早く帰ってこないのかしら。

 ミーナがいなくなった理由は分からないけど、今がチャンスよね。あんな小娘達が騒ぐ前に既成事実を作っちゃえば、あたしの勝ちね。

 しかしあたしが結婚前にしちゃおうなんて考えるなんて、日本の悪い習慣に染まったのかしらね。まあ、将来性があるから良いわよね)


 マユミを始めとして、ミーシャとレイまでがシンジと深い関係になった事をセレナは知らない。

 ネルフに行く前日から始まり、ネルフ本部内に滞在中に起きた事だったので、セレナが知らないのも当然だった。

 そしてネルフに行く前のシンジが結構ストレスを溜めていた事をセレナは知っていた。シンジが帰ってきたら、どうやって邪魔な

 ミーシャとレイを掻い潜ってシンジに近づこうかと思案しているうちにマンションに到着した。

 部屋に入るとナターシャの置手紙が目についた。それには『さようなら』と書かれていた。


「何でっ!? 何でナターシャがいなくなるのよ!?」


 ナターシャは孤児だった為に、十歳の頃にセレナの実家が引き取って住み込みでメイドをやって貰っていた経緯がある。

 セレナが十四歳の時の事であり、『魔眼』に目覚める前の事だ。

 それ故に、ナターシャが日本に一緒に来て、一人で出て行く事など考えた事も無かった。


(何でナターシャが居なくなるの? 日本ではあの子の知り合いなんていないはず……でも日中はナターシャは一人よね。

 まさか男でも出来て駆け落ちでもしたの!?)


 ナターシャは携帯電話を持っていないので、連絡のしようが無い。

 結局、セレナはナターシャの失踪の理由が考え付かなく、一人で寂しく自棄酒を飲み始めた。


 そして、セレナが一人で自棄酒を飲んでいる頃、TVでセレナに関する報道が行われていた。


『海外のニュースをお知らせします。本日未明、現地時間○×時に、ドイツ当局はローレンツ財団の役員を務めるローレンツ夫妻を

 逮捕しました。罪状は娘であるセレナ・ローレンツに対し、隠れて遺伝子改造手術を行ったとされています。

 遺伝子改造手術を受けた彼女は、ある特殊能力を身につけており、今まで十数人もの一般人を廃人にしています。

 その為、セレナ・ローレンツに対しても逮捕状が出されていますが、現在彼女は【HC】の不知火司令の副官を務めており、

 ドイツ政府は【HC】に対し、彼女の身柄の引渡しを求めています。一般の人は彼女に近づかないようにと警告が出ています』

***********************************

 ドイツ政府機関からセレナに関する状況の説明と引渡し要求を受けたが、不知火が素直に了承するはずも無かった。

 だが、既にTV発表も済ませており、日本でもその報道がされたと聞き、不知火は後をライアーンに任せてセレナに連絡を取った。

 数回のコールでセレナは電話に出て来た。


「部屋にいたか。直ぐにTVをつけたまえ。君の事がTV報道されている」

『えっ!?』


 電話の向こう側でセレナがTVをつけて、ニュース報道を聞き出した。その内容を理解したセレナは身体を小刻みに震わせた。


『こ、これって……お父様とお母様が……あたしに逮捕状!?』

「状況は分かったようだな。君が出歩くのは拙い。私が迎えに行くまで部屋で待っていてくれ。今後の話がしたい」

『わ、分かりました』


 セレナは呆然としていたが、不知火の行動は早かった。情報が知れ渡り、他の職員が騒ぎ出す前にセレナを保護する必要がある。

 不知火は保安部にマンション一帯の不審者の取締りを命じた。

 そして急いでマンションに戻って、セレナを誰にも見られないようにして自室に連れ込んだ。

 不知火とセレナの部屋は階が違うだけで、同じマンション内である。非常階段を使えば、誰にも見られる心配は無かった。

 帰宅後、着替えていなかったセレナは出勤着のままだった。酒を飲んではいるが、事態を知ってかなり動揺していた。

 セレナをソファに座らせると、不知火は対面に座って話し出した。


「TV報道は見たな。ドイツ政府機関から君の引渡し要求が私のところにあった。まずは事情が知りたい。あの報道は本当なのか?」


 不知火の単刀直入の質問にセレナはどう答えるか悩んだ。

 セレナの遺伝子関係の事を知っているのは、【HC】サイドではシンジ達だけだった。

 不知火に話して良いのか、一瞬は悩んだがTV報道されては隠す意味も無いだろうと割り切った。

 酒が入ってはいるが、その程度の判断力はまだ残っていた。セレナは俯きながら、不知火に事情を説明し始めた。


 …………

 …………


「成る程、そういう事情だったのか。中佐は全て知って、ゼーレから君を解放させる為に引き込んだのか」

「はい、そうです」

「となると、今回のTV報道も仕組まれたか」

「仕組まれた!?」

「そうだ。ドイツの政府機関から私に連絡があったのと同じタイミングでTV報道されている。本来なら、こうも手際よくはいかない。

 可能性としては、中佐がいないので【HC】に揺さぶりを掛けてきたというところか」

「ご迷惑をお掛けします」

「君は巻き込まれただけだろう。君自身に非は無い。引渡しは出来ないが、さてどうするかだな」


 不知火が思案し始めた時、音量を小さくしていたTVからある内容が流れてきた。


『新しいニュースをお伝えします。実の娘に遺伝子改造手術をして逮捕されたローレンツ夫妻ですが、連行中に所持していた毒を呑み、

 自殺したとドイツ当局から発表がありました。引き続いて…………』


 セレナはジュースを飲んで落ち着こうとしていたが、ニュースを聞いてコップを落した。

 ジュースは服に掛かったが、そんな事は気にしない。それよりニュースの内容が大事だった。


「お父様とお母様が自殺!? そんな嘘よ! 嘘だと言って!!」

「落ち着きなさい!」


 セレナの家族は両親だけだ。ニュースでは自殺したと報じられている。セレナは目の前が真っ暗になったように感じていた。

 日本に知己はほとんどいない。そして唯一の家族である両親も死んだ。

 そして自分が遺伝子改造手術をされて、他人に害を及ぼしたと報道されてしまった。

 報道に関しては、大祖父が指示したとしか考えられない。つまりセレナはドイツ本国から完全に否定された。

 そして特殊能力を持って、他者に危害を加えたと報道された自分を日本が受け入れてくれるとも思えない。

 セレナは自分の居場所が無くなっている事に気がついて、愕然としていた。今朝は何時もと変わらぬ日常が続くと思っていた。

 だが、両親は自殺して、ドイツ本国からは罪人扱い。日本でも犯罪者と同じレベルと見られるだろう。

 真実が分かるのは、シンジと不知火ぐらいだ。そしてシンジは今は月にいる。

 ふと、自分の服が零したジュースで汚れている事に気がついた。


「……済みませんが、シャワーをお借りして良いですか?」

「ああ、服が汚れてしまったな。サイズは大きいだろうが、私の服を用意しておく。それを着てくれ」

「ありがとうございます」


 セレナがシャワーを浴びている間に不知火は着替えを用意した。

 そして床の掃除を済ませて、不知火は酒を飲みながら、これからの事を考え出した。


(彼女をドイツに引き渡す訳にはいかない。こうなったら中佐に保護を頼むか。

 行方不明という事にして、中佐の保護下に入れば大丈夫だろう。スペースコロニーに優先的に入ってもらっても良い。

 まったく中佐が不在の時に問題が起きるな。

 彼女はベットで寝て貰い、自分は管制ビルに戻るか。今夜はあそこの仮眠室で寝るとするか)


 不知火が考え事をしている間に、セレナは浴室から出てきた。だが、不知火が用意した服では無く、バスタオルを巻いただけの姿だ。

 何度も言うが、セレナは絶世の美女であり、美貌もそうだがスタイルも比肩しうる女性はいなかった。(過去にはミーナだけ)

 そんな女性がバスタオルだけを身体に巻いただけの姿で、自分の前に姿を現したのだ。その破壊力は並大抵のものでは無い。

 不知火の心臓の鼓動が早くなった。必死に己の中から湧いてくる衝動を抑えて、セレナを諭した。


「服が合わなかったのか。別の服を用意するから少し待っててくれ。今の君の姿は少々、刺激が強いんでな」

「不知火司令……」


 酒を飲んでいた為なのか、両親の自殺を知らされ自分が犯罪人として指名手配されて自棄になった為なのか、それは分からないが、

 セレナはバスタオルだけを身につけたまま、不知火にゆっくりと近づいていった。

 後日、この時のセレナの気持ちを不知火は何度も問い質したが、セレナは笑みを浮かべるだけで答える事は無かった。

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 (投稿規程は『18禁は絶対に駄目』というルールなので、省かせて頂きます)


 不知火は中年だが独身であり、健全な肉体を持っている。いや、軍人という事もあり普通の若者以上の健常な身体である。

 【HC】の司令官が夜遊びをしているなどと風評を立てられても困るから、夜の遊び相手を選ぶにも苦労していた。

 そしてシンジの負傷も絡んでネルフとの交渉も増え、不知火のストレスは危険水位に近いところまで溜まっていた。

 そこに他には誰もいない二人きりの部屋で、絶世の美女がバスタオル姿で迫ってきたのだ。しかも酒を飲み始めたところだった。

 自制心が強い不知火もこれには対抗出来なかった。ダムが決壊したかのように、溜まりに溜まった不知火の欲望は解放された。


 セレナは十八歳という事もあって、既に十分な大人である。セレナの身体は不知火の情熱の大波を全て受け止めていた。

 二人とも忘我の状態で、気がついた時は既に朝になっていた。はっとした不知火がセレナを気遣った。


「か、身体は大丈夫か? 君みたいな美女相手なんて初めてだったから、自制出来なかった。すまん」

「あたしの心配をしてくれるのは嬉しいんですが……あたしの中でまだ元気な人の言う台詞じゃ無いと思いますけど」

「す、すまん。久しぶりだったもので、つい、その……」

「あたしから迫った事ですし、後悔なんかしていませんから。こういう関係になってすっきりしました」

「責任は取る」

「あたしは結婚するまではしないつもりでした。でも、こうなってみると良いものですね。頭の中が真っ白になっちゃいました。

 シーツは真っ赤になっちゃいましたけど」

「その……夢中になっていたから分からなかったが……痛みは無かったのか?」

「最初は痛かったですけどね。最後の方は……あっ……動いてるのが分かります。……あと一回ぐらいしないと治まりませんか?」

「……良いのか?」

「はい」

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 寝不足の不知火とセレナだったが、汚れたシーツを処分して身支度を始めた。昨日、ジュースで汚れた服は洗濯と乾燥は終わっている。

 不知火は窓からマンションの周囲を確認すると、数十人の群集が見えた。おそらく、セレナの報道を見て集まったのだろう。

 徒歩でマンションから出るのは拙いと判断して、屋上のヘリポートを使って管制ビルの司令室まで辿り着いた。

 この間、セレナを膝の上に乗せて司令官専用通路を使うなどして、他の職員には見つかっていない。

 そしてシンジにメールを送ろうとした時、逆にシンジの方から通信が入ってきた。


「中佐か! ちょうどこちらから連絡しようとしていたところだ。良いタイミングだな」

『ボクは月に居ますけど、情報収集はちゃんとやっていますよ。ミス・ローレンツに関する報道は知っています』

「なら話しは早い。彼女を保護して欲しい。中佐になら出来るだろう」

『……保護は簡単に出来ますが、彼女の名誉を回復させなくて良いんですか?』

「出来るのか?」  「出来るの?」

『ドイツ国内の事は何も出来ません。御両親の件は終わった事ですし、内政干渉になってしまいます。

 ですが、彼女の特殊能力の件は何とか出来ます』

「頼む!」  「御願い!」


 シンジは二人の状態を詳しく観察していた。そしてセレナの首筋に痣のようなものが複数ある事を見つけていた。

 そして二人はかなり疲れた様子だ。昨日の状況から、シンジはある事を推測していた。


『ミス・ローレンツはドイツに帰りたいと思っていますか? それとも異国の日本に骨を埋めても良いと思ってますか?』

「……お父様もお母様もいないドイツに帰っても仕方無いわ。でも、可能ならお父様とお母様を陥れた人達に思い知らせてやりたいわ!」

『あなたの遺伝子はどうあっても変えられません。ですが、特殊能力はボクが使えなくする事は出来ます。

 そうした上で、ボクの名前であなたに特殊能力は無くて、他人に危害を加えた事は濡れ衣だと発表すればどうでしょう。

 ドイツ政府機関が証拠を揃えても、でっち上げとして潰す事は可能ですよ』

「あたしの能力を使えなく出来るの!? ……そうね。あなたなら可能かもね。こんな能力なんて要らない。御願いするわ」

『……代償が欲しいですね』

「代償!?」

『ええ。御存知のようにミーナがいなくなってから結構時間が経っています。ボクも結構溜まっていまして、出来れば夜の

 「嫌よ!!」……ボクが居る時は結構誘惑してきたあなたの言葉とは思えませんが?』

「あたしはもう将来を一緒にする相手を見つけたの! だからもうあなたを相手には考えないわ!」

『へえ。二人とも寝ないでやっていたんですか? 不知火司令も元気ですね。太陽が黄色く見えているじゃ無いですか』

「「なっ!?」」

『二人とも目の下にクマを作っていますし、ミス・ローレンツの首筋にキスマークがしっかりとついていますよ』

「「!!」」

『正直言って、残念という気持ちとほっとしたという気持ちの両方がありますが、今は素直におめでとうございますと言っておきます』

「あ、ありがとう」

『しかしマドンナたるミス・ローレンツが不知火司令とくっ付いたか。皆に知れたらどうなるんでしょうね? 覚悟した方が良いですよ』

「な、何だと!?」


 セレナの人気は【HC】内では非常に高い。そのセレナが基地司令である不知火とくっ付いたと知れ渡れば、職員から

 どんな反応が来るか、容易に想像出来た。事実、不知火の脳裏には自分に迫ってくる若い男性職員の大群が浮かんでいた。

 パワハラと弾劾されるだろうか? 年の差はどうする? 式はどうする? 新居はどうする?

 年甲斐も無く慌てふためく不知火の腕をセレナは抱かかえた。そして落ち着いた不知火にセレナは笑みを向けていた。


「あたしが不知火司令を好きになったと言えば終わりよね。あたしは年の差なんて気にしないわ。そうでしょう」


 セレナは屈託の無い笑みを浮かべていた。今までのセレナとは何かが違っていた。

 まるで何かの憑き物が落ちたみたいにシンジには感じられた。でも、これは良い変化だろう。

 そう感じたシンジは不知火とセレナの三人で今後の事に対する協議を始め出した。






To be continued...
(2012.04.21 初版)
(2012.07.08 改訂一版)


(あとがき)

 ネルフというかゼーレへの報復処理でしたね。キール議長とは完全決裂です。

 ゼーレの二人に関しては独自解釈ですが、黒幕と呼ばれる人達が目先の利益(神になる)だけに目が眩んだとも思えませんから。


 18禁の為の省略を五箇所に使ってしまいました。少々くどかったかなとも思いましたが、まあ補足と言うか、進行上の展開ですから。

 セレナは不知火とペアにしました。ミーシャ達と上手くやっていけないという理由と不知火が独りという理由の為です。

 シンジが何でも手に入れるというのも問題があるでしょうし、男と女の付き合うタイミングって偶然が影響すると思います。


 しかし、話しを大きくした為に纏めるのが一苦労です。



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