リターンズ

第二話

presented by ハンドメイド様


「「「 なんか・・・ 入りずらい(なぁー) 」」」

碇本家の門前で3組が止まっている。
阿賀野、大井、最上・・・ 父親と母親、娘という組み合わせの3組。
門前で立ち止まっていると、後ろからランニングしてきたのが門前で転倒した。
思わず近くにいたカエデが起こしてみると、それはヒトミだった。

「ヒトミ・・・ どーしたの こんなに疲れて」
「ゼェゼェゼェ (キツイーーー)」

呼吸が荒く、返事もできない様子。
ランニングでもしてきたのか、スポーツウェア姿になっている。
暗闇になっているが、本宅の裏山を走ってきたみたいで、その暗闇からヒトミは出てきた。

「門前だとゴールになりませんよ。 ヒトミさん。 追い付くまでに門にタッチして下さいね。」

さらに後ろの暗闇から声が聞こえると、カエデに起こされていたヒトミが、ほふく前進で門へと進む。
暗闇から出てきたのは、同じようにスポーツウェアを着たシンジだった。

「シンジ君 ・・・ あれって?」
「3人とも来られましたね。 ささ、通用門は開けていますので、そこから本宅の玄関へと向かって下さい。」

そこに集まっている人たちを先導するように門へと歩む。
途中で、へばっているヒトミにタッチすると・・・

「ヒトミさん。 着替えてから部屋に来て下さい。」
(ゼェゼェゼェ)

シンジへの返事も出来ないくらい、呼吸が荒くなっている。

「これでは駄目ですね。」

玄関からは執事であり、ヒトミの父親である雄二が、シンジを出迎える。

「雄二さん すみませんが客間へと案内して行きますので…」
「判りました。 ヒトミの事は、お任せ下さい。」
「よろしく、お願いします。」

シンジの案内で客間へと進む3組。
客間には碇家当主であるイワオが待っていた。
お客様を案内したシンジは、3組が部屋に入ると、どこかへと行っている。
少し待っていると、当主であるイワオ付きの執事である雄二が戻ってきた。

「のう・・・ 雄二や・・・ シンジは、どうしたのか」
「お風呂で汗を流していらっしゃいます。」
「御主の娘もいっしょじゃろう・・・ (ほっほっほ)」
「疲れきっていましたので、部屋へと入れておきました。」

「初めの頃は途中でガードの者が拾ってきていたが、今日は1周してきたみたいじゃの」
「いいえ 門前で転倒しましたから1周ではありません」
「まあ、明日には1周できるじゃろう。 (わっはっは)」
「そうでしたら良いのですが・・・。」

この2人の会話でも判るが、シンジはヒトミと裏山1周ランニングを日課にしている。
もともとシンジのトレーニングとして、裏山のランニングを日課として始めた。
そしてシンジ付きになったヒトミも始めたのだが・・・最初の頃は道を間違えて警備員総出で探したこともあった。

お風呂に入って、汗を流して、サッパリしたシンジが客間へと帰ってきた。
そしてシンジはイワオの隣へと座り、持ってきた資料を、カエデとサツキ、アオイの前に置いた。
その中には、3人の雇用条件と、仕事をする時の条件が入っている。
イワオの目線から読み取り、娘の前にある封筒を父親が取り、中にある書類を広げた。

現在、碇グループ各社は順調に業績を伸ばしており、情報分析専門の部署を新設することになった。
その時に、シンジ直属の分析オペレータとして、3人を雇うことにしたこと。
それぞれの両親が雇用条件の書類を読むと学生にしては破格の金額。
学生という事で、主体は学校だが、毎日の労働は4時間程度。
これは、休みも関係なく毎日行なわなければならないが、土曜日と日曜日に偏らせても良いことになっている。
ただし、学業の成績が下がった場合は、仕事を停止させ、強制勉学というペナルティ付になっていた。
つまりは、両立させないと自分が好きに出来る時間がなくなるということになる。
そして、その条件は大学を卒業し、就職するまで継続される。

両親から考えると、ちょっと厳しい所へと放り込んだカタチになる。
また、ヒトミと同じように住込みということになった。


やっと来ました夏休み。
今日の学校は半ドンで、午前中で終了。
午前の終業式が終わり、今から担任の話しを聞いてから大掃除・・・ それから帰宅する。
担任がくるまでの時間・・・ クラスの話題は、早くも就職を決めた3人娘。

すでに碇本家の中に各自の部屋が割り当てられ、引越しをすませて生活している。
話題は、その本家内での生活や、仕事先の話しで盛り上がる。

「ねえねえ・・・ 次期当主様って、どんな御方なの?」
「現当主のイワオ様みたいな感じかな。」
「逆に美男子だったりして・・・」

((( 公表されてないから・・・ うっかり喋れない・・・ )))

「直接、お会いしてないのよ。 いつもはメールで指示が入るし・・・」
「電話って時もあるけど、声だけで姿は〜ね。 でも、やさしい声だったよ。」
「本家内だけど、最低限の規則さえ守れば大丈夫だし・・・」

「「「 ほぉぉぉぉ (羨ましい!) 」」」


「「「 ただいま戻りました〜。 」」」

3人娘がお屋敷へと戻ってきた。
玄関で掃除をしていたお手伝いさんが、シンジ様の部屋へ行くように言付けられた。
それぞれの部屋に戻ると荷物をおいて普段着に着替えると、目的の部屋へと向かう。

「シンジ君 来たよぉ」
「入ってもいい?」

「あっ 4人ともいいですよ」
「4人?」

3人娘の後ろにはダンボール箱を抱えたヒトミが立っていた。
部屋の広さは、娘たちの部屋と同じぐらいの広さだが、奥にも部屋が続いている。
廊下に面した部屋の真ん中に卓袱台があり、壁には作り付けの机が並んでいて画面とキーボードが4つ並んでいる。
ここは、ヒトミたちの仕事部屋にもなっていて、隣接する奥の部屋はシンジの部屋になっている。
フスマをあけると1間になるようになっていて、同じような机が続いているが、こっちはシンジの机になっていた。

ヒトミが部屋の真ん中に抱えていたダンボール箱をおいて、中にあった資料を取り出す。
この資料は、会社内にある情報分析班から届けられた資料で、シンジが指示して複写したもの。
カエデとサツキ、アオイが、これから詳細な資料として仕上げねばならない物だった。

「シンちゃん 頼まれた資料が会社から届いたよ。」
「はい・・・ ご苦労様。」

シンジの手には、お盆があり、ジュースを入れたグラスがあった。
卓袱台に置くと、それぞれが飲み物を取ってから、仕事の内容についての説明。
ヒトミが持ってきた資料の中から、ある特定項目のみ抜き出し、詳細な分析データを作ること。
その期限は約1ヶ月 ・・・ 夏休みが終わる頃に関係部署との会議があって、その時に使われる物らしい。

「ヒトミさん ・・・ 夏休み終了前でいいですから本社内の会議室を抑えてください。」
「大きさは、どうしょうか?」
「人工知能研究班と製造開発班の班員全員と、プラス10名が入れる所を抑えてください。」
「判りました。 それと・・・ (封筒を差し出す) これを預かりました。」

ヒトミが出した封筒を開けると、何かしら書類が5枚。
卓袱台に広げると、それは各自の成績表。
シンジの判定は ・・・ 全員セーフというか予定していたボーダー以下がないので、ペナルティなし。

「あー良かったぁー 下手にペナルティで強制的に勉強時間増えたら困るもの。」 (ヒトミ)
「ペナルティって何かあんの・・・」 (カエデ)
「毎日、勉強時間ってのが発生すんの」 (ヒトミ)
「面倒やなー でも夏休みの課題もあるし、やらんと・・・」 (カエデ)
「全部済ませるのに、みんな何日かかる。 私の場合、4週間かな。 毎日1時間ずつやって・・・」 (アオイ)
「気ぃ入れてやって・・・ ヒィ・・・ フゥ・・・ ミィ・・・ 約3週間ぐらいかな」 (サツキ)
「結構早いねぃー ギリギリ一杯までかかるかも。 そうそう時間あかないし」 (ヒトミ)
「ヒトミって、どこかで開けないと自由な日がなくなるよ。」 (カエデ)
「だって ご主人様といっしょにアチコチ行くことになるから、時間があかないかも・・・」 (ヒトミ)
「来月の中旬までは、僕もお休みですよ。」 (シンジ)
「・・・という事は?」 (ヒトミ)
「はい! ヒトミさんも、お休みです。」 (シンジ)
「やったー メイドだけだったら、自由時間が増えるーーー」 (ヒトミ)
「いえいえ 全部お休みです。1ヶ月間は、僕のスケジュール調整のみで、あとの仕事はお休みして下さい。」 (シンジ)

シンジが言うには秘書の仕事も増やしたので、ヒトミの休日は激減。
今回の夏休みに重ねて、お休みをまとめて取るように、シンジの仕事も調整したらしい。


夏休み最後の週・・・ 今日は会議の日。
会議室の中は会議前というのに戦争状態。
前日ギリギリまで、資料をまとめていた3人組プラス1。
夜の間に必要枚数を印刷することは出来たのだが、1人ずつに束ねる時間が足りなくなって会議室で整理中。
なんとか会議時刻までに間に合って、会議室のスミで会議に参加していた。

「・・・でありまして、現在、各開発班での進行は順調に進んでいます。」
「判りました。 では、ちょっと追加で開発と製造をお願いしたいのですが・・・」
「何でしょう? シンジ君の方でアイディアがあると聞き及んでおりますが?」
「設計図を引いたので、ちょっと見て下さい。」

壁の一部がスライドして、そこに図面が何枚か表示された。
そして、シンジが着席している机に置物がひとつ。
人工知能研究班と製造開発班の班員たちは図面から眼が離れない。

( これが こーなって ・・・ おいおい 人工知能搭載かよ)
( 自立移動も可能 ・・・にしても小さいなぁ )

「さて、そのサンプルがコレ!」
「実際に御作りに・・・」
「面白いから作ってみた。 でも頭の中は基本動作しか入ってないよ。」

シンジの机に座っているのは・・・

猫!

ただ、あまりにもリアルすぎて、剥製を置いているみたいだが、時々、毛繕いをしているので本物と見分けが付かない。
班員たちが代わる代わる抱っこしたりして感触を確かめているが、スリムなのに、ちょっと重めの三毛猫。
ロボットって聞いていなければ、本物と間違えそう。
シンジが座っている隣にもカバーが掛けている物があり、カバーを開けると・・・

ドーベルマン!

これもサンプルとして製作した物らしい。
今度はビデオの映像が流れていて、その映像には猫・犬・鳥が映っていた。
シンジの説明では、これらに映っているのは全部、ロボット。

「シンジ君 これらで?」
「これだったら誰も気付き難いですよね。 警備や偵察って方法でも使えるでしょう。」

会議室内にいるメンバーは口々にアイディアを出しまくる。
途中で広報担当部署まで呼び出し乱入させたので、よけいにゴチャゴチャ。
紛糾した会議も、実行可能なラインが見えたので、量産型の開発、プレゼン、販売開始までのスケジュールが出来上がった。
予算も通っているので、各部署に分かれて作業開始となった。

結果は後日… どこに入れようかなぁ〜(作者)


ある日・・・

仕事場である部屋に集まると5通の通知書。
各自の名前がある封筒を持って封を切る。
中から出てきたのは高校の特進試験の通知書。
恐る恐る取り出した紙を見て、反応はイロイロ。
結果は・・・ モチロン・・・ 合格。

続けて大学受験の勉強が始まる …が、シンジが教えているのか、5人とも、あっさりと合格してしまった。


京大の正門・・・

「今日から大学生ね」 (カエデ)
「学校と仕事・・・ 両立で苦労しそう」 (アオイ)
「ところで後の2人は?」 (サツキ)
「アレかな・・・」 (カエデ)

黒塗りの車両が3人娘前に止まると中からヒトミが降りてきた。

「セーフよね」 (ヒトミ)
「一応、セーフだけど、シンジ君は?」 (サツキ)
「昨日のプレゼンした時の反省会兼慰労会に参加してから来るって」 (ヒトミ)
「んで あんただけ先に来たわけ・・・」 (サツキ)
「そうだよー」 (ヒトミ)

シンジというと・・・

( うぅ〜ん 抜け出すタイミングが見付からない。 困ったなぁ )

プレゼンの首尾が良かったので、そのまま慰労会に突入。
現当主であるイワオも在席しているのだが、なかなか離してくれないので、抜け出すタイミングが見付からない。

( 仕方がないから、お開きになったら急いで行こう。 )

入学式が終わって4人が出てくる。
その後ろからは、いつ声を掛けようかとタイミングをみている男性陣。
歩いていく先には、学校内地図を見ている小さいのを発見した。

「「「「 シンジ君! 」」」」 

声を掛けようとして女性陣というか更に若いグループに眼を付けるのは仕方がないだろう。
眼を付けた若いグループの後に続いた男たちの頭には、疑問がいっぱい。
シンジは呼ばれた4人の後ろに、怪訝な顔をした男性陣に向かって、さらに釘刺す。

「 僕の彼女たちに、御用ですか? 」

シンジの彼女・・・ を聞いて、顔は真っ赤っかでクネクネしていたり、完全にのぼせていたりと反応は様々。
後ろに付いてきた男どもは、ぼーぜん。
奇異の視線が刺さるシンジは気にもせずに、これからお世話になる教授の研究室へと向かった。

「照月先生 いらっしゃいますか?」
「おぅ いるぞ ・・・ 入った入った (丸椅子を出して) 適当に座ってくれ 」
「お久しぶりです。」
「本当に久しぶりだなー そういえば”クロ”はどうした? 出来上がったのか?」
「はい! だいたい形になったので、今は思考回路を製作している所です。」

「「「「 クロ? 」」」」

「あぁ こっちの譲ちゃんたちは知らんのか?」
「統制機は、僕だけが作っていますから・・・」
「シンジ君 もしかして奥の部屋にある… あの大きいトラのこと?」

シンジの部屋は2間続きになっていて、奥の部屋へは専属メイドでもあるヒトミしか入らない。
その部屋には大きなトラの置物があったので、それをヒトミが覚えていたのだった。

「うん♪ あれが警護機シリーズの統制機「クロ」だよ。」
「統制機って」
「いろいろなタイプの警護機があるけど、全体の指揮役をまかせる機体がいるんで、作ったの♪」

シンジが考え出した警護機。
いろいろな動物を模写して作り上げた物で、ネコ・イヌ・トリの他に、牧場用にウシやウマもある。
イチバン小さいトリ型があるので、大きさは自由に作ることができる。

もっとも普及しているネコ型だったら、飼っている家ネコに混ざっても見分けが付かない。
玄関番としてイヌ型を置いても、普通のご家庭にいても違和感がない。
見分けが付かない動物で警備や警護に使うから、使い方もイロイロ。
1箇所で数が増えたら、リーダー役の警護機もあるが、統制機のことは相当の上層部にいないと知られていない。

「もともと統制機って、警護機の専用版だから5機しかないの。」
「シンジ君の他に … イワオ様 … あとは?」
「内緒にして欲しいけど … 許婚たち」

「「「「 えぇーーー 許婚! 」」」」

「まだ候補だけど公表されると危なくなるんで作ったんだ」

「おーい そろそろ紹介してくれんか!」
「あっすいません。 今度、僕といっしょに、彼女たちも、お世話になります。」

「 加賀ヒトミです 」
「 阿賀野カエデです 」
「 大井サツキです 」
「 最上アオイです 」

「「「「 よろしく、お願いしまーす。 」」」」

「おう! ここの研究室を任されている照月だ。 シンジ君とは猫型の制御系で知り合ってからの付き合いになる。 よろしくな!」

シンジが人工知能搭載型の警備機を考案した時に、京大の資料室を漁っていた。
その時に、照月教授と知り合った。
それから、サンプル版の製作をしたりして、仲良くなり、今では研究室で次タイプのアイディアなどを提供している。
京大へ入るときに、お世話になる研究室が、ここだったので4人を紹介したのだ。


京大・グループ本社・お屋敷の往復をする毎日

時には、気晴らしに海や山へと遊び
試験時期になると、勉強でカンズメ。
コンパなどは未成年ということで断ってはいるが、会社のパーティでは飲んでいたり・・・
結構、充実する毎日を過ごしていた。


そんな、ある日・・・ 碇本家の門前に黒塗りの車が停車し、特徴ありまくりの3人が降りた。
白髪頭でピシッとした服装の男 ・・・ スーツを着た女性 ・・・ 色白・青銀の髪・赤い瞳の少女 ・・・ 

「ここが碇本家の家か・・・ イワオ氏はいるかな?」
「アポはしていますので、大丈夫とは思いますが。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

門前に立っているのは、冬月コウゾウ・・・赤木ナオコ・・・レイ
ナオコがインターホンを見付けて、ボタンを押す前に、門が開いた。
開いた正面には執事の加賀雄二が立っていた。

「冬月様ですね。 お待ちしておりました。 ご主人様がお待ちです。」
「あ・あ・・・ (気付いていたのか) 」

執事の先導で、イワオが待っている部屋まで案内されると、碇グループ総帥であるイワオの前に並んで座った。
横には案内をしてきた執事の加賀が座っており、さらに反対側には、初老の男性が座っていた。

「さて用件については、電話で聞いているのだが・・・」 (イワオ)
「はい。 お話ししました通り、サルベージを行なった際に、この少女がサルベージされました。」 (ナオコ)
「どこで、こうなったのかは現在、調査中ですが、この少女を内部で育てるのは問題があり・・・」 (コウゾウ)

「調査は継続して貰おう。 必ずユイは助け出して貰おう。」 (イワオ)
「それは重々に感じております。 しかしながら・・・」 (コウゾウ)

「資金不足か・・・ あのボンクラが来ないで資金の催促か (ちょい怒)」 (イワオ)
「お怒りは最もですが、特殊な技術を使っていますので、おいそれとは・・・」 (コウゾウ)

「むぅぅぅ 資金については入れておこう。」 (イワオ)
「有難う御座います。 それと、この少女なんですが・・・」 (コウゾウ)

「当方で預かろう。 ちょうど綾波家の跡継ぎがいないので、養子とする。 よいな!」 (イワオ)
「はい。 構いません。」 (コウゾウ)
「健康診断や実験の際は、協力願います。」 (ナオコ)

「綾波家に連絡を取れ。 あとは家人が、その子を連れて行く。」 (イワオ)

話しは終わり、レイを残して、冬月と赤木が、執事に案内されて退室する。
少しの間を開けて、隣の部屋からシンジが入り、レイの隣へと座る。
機嫌悪いポーズをしていたイワオの表情が一変し、孫可愛さの顔に変わる。
あまりにも表情が変わりすぎるので、同じ部屋にいた綾波翁は驚いていた。

「さてと、予想通りに事は進んでいるなぁ シンジや」
「あそこまで順調に行くとはねぇー 夜な夜な細工しまくった甲斐があったよ。」

初号機のサルベージ実験は非公開で行なわれていたが、シンジが、ちょくちょく侵入しては細工をしていたので内部事情は丸判り。
レイが生み出されてから、深夜の接触で向こうのレイと判明。
その夜から、ヒゲ親父や白髪頭の夢の中に登場して、イタズラを毎夜続けていた。
夜な夜な夢見が悪ければ、昼間の仕事にも差支えがおきて、資金不足も発生し、とうとうレイを差し出すことになった。
差し出すのは、サルベージ資金を提供をしている碇イワオへ。
ヒゲ親父は、1人娘と駆落ちしたので敷居は跨げない ・・・ それで冬月が代わりにやってきた。

「さて・・・ 綾波翁には手間をかけるが、この子の養育を頼みたい。」
「御前様からの御話し通り、我が家へ迎え入れます。」
「うむ ・・・ ただし、時期がきたら差し出して貰うぞ!」

(レイが頬を染めてシンジに寄り添っているのを見て)

「シンジ様へ ・・・ ですね。」
「そういう事じゃ (笑)」

寄り添っているレイの頭を、やさしく撫でるシンジ。
その2人を見てイワオは、シンジの周りにいる女性たちを思い浮かべる。
そして、前々から考えていた事が、ついつい口に出した。

「やはり、次期当主の発表を早めた方が良いかのう。」
「あの2人を見てますと、それも一考ですが・・・ あの者達には・・・」
「そうなんじゃ。 シンジが、ここにいる事が知られては困るがのぉ」

その2人は
(やっと会えたね・・・ レイ)
(うん シンジくぅ〜ん はぁ〜気持ちいぃ もっともっと)
(あとはアスカだけど どーしょ)

「お爺ちゃん!」
「なんじゃ 布団なら隣に敷いてあるぞ」
「(真っ赤) まだ早いよ」
「昼間でも閉めれば大丈夫だぞ」
「そんなんじゃないよ もっと大きくなってから!」
「なんじゃい 少々早くても、いいと思うがの」

シンジのコメカミに青筋たてて爆発前・・・
ヤバ気な雰囲気になり、イワオが折れて落ち着いた頃

「アメリカのは、どうなったの?」
「あぁ 京子ちゃんの旦那か ゲンドウのボンクラと変わりがないが」
「来月だったよね 親族会議」
「娘のアスカちゃんを押さえておく・・・か」

常にシンジと情報交換していたので、レイだけでなくアスカも側に置かせる事は知っていた。
それも、お子様同士で話し合っていて、了解しあっている決定事項。
ヒゲ親父と同じで、同じ理由でイワオから資金提供を受けている。

綾波翁とレイが部屋から出て行くと、現当主と次期当主の会談・・・というか悪巧み。
夜遅くまで話し合い、これからの事を決める。

資金の返済を言わない変わりに、アスカを次期当主の許婚候補に入れること。
10歳の誕生日を越えると碇家に行儀見習いとして修行させること。
その他、いろいろとアスカが有利になるように条件を付けることにした。


「アスカを 許婚候補に入れるですって! (驚)」
「そうじゃ。 お前に融資している金額が金額になってしもうての。」
「確かにサルベージで資金が不足していますが、それにしても・・・ 別の言い方にすると人質・・・ 人身御供ですか」
「現在、綾波家の娘が許婚候補になっているんじゃが、同じ年頃ということで、おまえんとこの娘の写真を見て、気にいったみたいでのー」
「次期当主ですか・・・」
「お前が了承したら、次期当主の伴侶候補になるから、ある程度は資金援助の融通が利くことになる。」

結局は、ヒゲ親父と同類・・・ いろいろな条件を了承し、許婚候補ということになった。
はてさて、当の本人たちはというと、シンジの部屋で、レイも含めて悪巧み。

「やっとアスカもきたね。」 (シンジ)
「もーやってらんないわよ。 自由が少ないから、かったるいわ。」 (アスカ)
「まあまあ、今、お爺ちゃんが交渉しているけど、間違いなく条件通りになると思うよ。」 (シンジ)
「あれで少しは自由になれる。」 (レイ)

「そういえば・・・レイ! 地下の部屋は?」 (アスカ)
「もう無いわ。 今は第3新東京市郊外に、綾波家の屋敷があるから、そこに住んでいるわ。」 (レイ)
「そう・・・ 10歳になったら、こっちだけど、その時は?」 (アスカ)
「2人とも、この碇本家に部屋が割り当てられるよ。」 (シンジ)
「でも、いるという存在だけ・・・」 (レイ)
「わぁーってるわよ。 実際には国連軍参加でアメリカ行きね。」 (アスカ)
「一応、レイとアスカは1年間の予定。 僕は他のにも参加するから、もう1年間追加。」 (シンジ)

「でさぁー 私とレイは許婚候補って事になっているけど、候補が外れるのは?」 (アスカ)
「13歳ぐらいを予定しているよ! その頃になると僕の所在で向こうも、やっきになって探していると思うし・・・。」 (シンジ)
「バレた時点で、次期当主と許婚を公開。」 (レイ)

「そろそろ向こうの話しも終わっているでしょうし・・・ 戻るわ。 それじゃ、あとはメールで連絡し合いましょう。 またね!」 (アスカ)
「アスカ・・・ 私もお爺様に挨拶してから帰るわ。 シンジ君、またね。」 (レイ)
「また会おうね。 元気でね!」 (シンジ)


※小説内であった箇所の説明※

人物 「照月」
ネルフでお馴染みの秋月副指令の名前の由来が秋月型駆逐艦から来ているので、同型艦の名称を利用しました。
設定的には、冬月教授が出て行ってしまったので、次席教授として照月が京大にいる。




To be continued...

(2007.06.02 初版)
(2007.07.21 改訂一版)
(2009.07.26 改訂二版)


(あとがき)

第1話に続きまして、第2話を作りました。
作者のハンドメイドです。
ちょうど20KBちょい越えですね。

現在の段階では、前準備と感じのお話しを書いていますが、本編が始まった時の条件作りみたいな物です。
それで、長くなるような数話があるのです。
さて第3話では、いきなり10歳頃に飛びます。
シンジ・レイ・アスカは、揃って国連軍に入りますが、シンジ君の女難というか、レイとアスカの気苦労が増えます。
勘の良い方だったら判りますよね。
では、頑張って第3話目に突入します。



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