第三話
presented by ハンドメイド様
「フン♪ フッフゥ〜ン♪♪」
(みんなの顔ったら うぅ〜 面白かったなぁ〜)
妙な感じで、浮かれているアスカ。
彼女は、自分の部屋のベッドにのって、スーツケースに荷物を詰めている。
そんな彼女が、ご機嫌なのは少し前にあったパーティーでの出来事。
家族や、ご近所の友人、ネルフ関係者など、いろいろな人たちが参加していた。
エヴァのパイロットという事もあり、父親が将来の婿として、何人か候補者たちを参加させていた。
(アスカの父は、シンジの婚約者という約束を覚えていないのか、自己都合で進めていたらしい・・・)
今回のパーティーは、アスカのお披露目として父親が企画したもの。
夏休みに入ると、アスカは日本行きになるので、このパーティーで気になるのを見付けさせようと画策した。
その為に集められた婿候補たちから、アスカへのプレゼントは結構上物。
「アスカさん 私からのプレゼントを受け取って下さい!」
「いえいえ 私のは豪華に運転手付きの高級車をプレゼントします!」
「普段用のアクセサリーとして 私の宝石コレクションをプレゼントします!」
(美男子で、金持ちの次男坊や三男坊のやま…ばっか)
そんな、ひとやまナンボになりそうなプレゼント合戦している時に、大きく響く玄関の呼出音。
荷物の配達がきたのか、家の中まで聞こえる声がある。
「ラングレーさぁーん 日本からの荷物でぇーす 受け取りお願いしまぁーす」
「はぁーい♪」
日本のご家庭と同じように受け取りに行った母親が、その荷物を見た途端に悲鳴をあげた。
玄関での悲鳴を聞いて、パーティー会場にいる人たちも玄関方向を見ると、母親が飛び込んできた。
そして旦那に跳びつくと、玄関方向に指差ししているが、驚き過ぎて声が出ていない。
パーティー会場にいる人たちが玄関方向の廊下を見てみると、大きな動物が歩いてくる。
「「「 トラ 」」」
特徴的な黄色の体毛に黒い横縞模様があり体長2mほどのベンガルトラが歩いてきている。
これがプレゼントなのか首には赤いリボンが結んでいて、首の下でチョウチョ結びになっていた。
パーティー会場にいた人たちは、歩いてくる物をみて、部屋の奥に避難している。
バーカウンターの上に乗っている人。
テーブルの上に積み重なるように乗っている人。
壁に背中をつける感じで、少しでも離れようとしている人。
女性を背中に庇って、ホウキを武器のように持って構えている人。
部屋の真ん中に残された形になったアスカの目の前にトラが胸を張ったように座る。
このトラを観察すると、ベンガルトラの体毛は黄色が普通だが、アスカの髪のような色をしていた。
「お…おい! アスカ… それから離れろ!」
「銃は、どこにあった。 誰か持ってこい!」
「食われるのは嫌だぁー」
目の前にいるトラの目にあわせるようにアスカは座ると、トラの鼻に手を置く。
「私の名はアスカ。あなたの呼び名を紅と命名する。」
ピッ♪ ピィーーー♪
「指紋確認OK 音声確認OK 網膜照合OK 統制機呼称登録「紅」 マスター登録 完了しました。」
アスカの前に座っているトラから、警報音が聞こえ、マシンボイスが流れた。
トラの表情(?)が柔らかくなり、腰を上げるとアスカに近づき、身体を擦り付けてくる。
身体を擦り付けて横に並んだので、アスカは立ち上がったトラの背中に横座り。
すると、トラはアスカを乗せたまま回れ右した。
その方向には配達できていた人が確認書類を持って待っていた。
トラの背中に横座りしたまま、手渡された書類にサインして返すと、大きい荷物が車庫前に置いていることを告げて配達業者は帰っていった。
その様子をみて、壁際に避難していた人たちが恐る恐るアスカが座っているトラへと近づく。
怖いもの観たさもあるのか、悲鳴をあげて逃げた母親が、おずおずと頭を撫でている。
トラも撫でられて気持ちがいいのか咽喉を鳴らして、擦り寄っていた。
「なんか おっきな猫って感じね。 アスカちゃん♪ これの事…知っていたの?」
「うん♪ メールで連絡が来てたの。 私の専用ボディガードとして、警護機の最上位をプレゼントするって。」
「おい! アスカ。 外にもプレゼントがあるってのは?」
「おっきいから、運べないよ。ついでに見て来たら?」
度肝を抜かれたのか、あたふたと車庫前に置いているというプレゼントを見るために走っていく。
その父が、おっきなプレゼントを見付けたのか、怒涛の勢いで帰ってきた。
相当、驚いたのかアスカの前にきても、すぐには話せず、水を飲んだりして心を落ち着けてから色々と聞いてきた。
「あのヘリは、なんだ!」
「私の足がわりにプレゼント(ルン♪)」
「ア・ス・カーーー! 色々な航空免許を取ったのはアレの為だったのか!」
「そうよー ベル222に似せているケド・・・ あれって超音速攻撃ヘリ・エアーウルフなの (ルン♪)」
「超音速攻撃ヘリ!?」
(おーおー 思考フリーズしたなぁ)
固まっている父親は、ほっといて気分良くヘリの武装を、まわりにいる人たちに説明する。
「武装は2連装30ミリ機関砲が左右に1基ずつ。
その機関砲の直下に装備された単装40ミリキャノン砲が、同じように左右に1基ずつ。
機体下部に収納式のADFポッドがあって長距離空対空ミサイルを装備・・・モチロン核弾頭も装備可能。
一応、空対空だけでなくて空対地短距離ミサイルや地対空短距離ミサイル、対戦車用空対地長距離ミサイルも切り替えできるわよ。」
「結構、武装しているなぁ。」
「あとは防御だけど、ウインドウは防弾、ボディは装甲板で守られていて、銃撃程度では傷も付かないわよ。
もしミサイルが撃たれても機体側面に赤外線追尾ミサイルを引き付ける為のチャフやサンバーストもあるよ。」
「本当に歩兵師団ぐらい相手になりそう・・・」
「機体性能も面白くって、速度も音も抑えたウィスパーモードでの低速低空飛行から、ダーボジェットを使っての音速飛行まで幅広いし。
私専用にしてもらうために、安全機能が追加されていて・・・」
「自動操縦とか・・・ 専属パイロットがいるとか・・・」
「まあ、似たような感じだけど、この紅と接続したら、操縦してくれるの。」
「やっぱりなーーー ワンセットになるわけだ!」
「アスカはネルフ所属だから、ネルフのパイロットに操縦して貰ったら?」
「ワンセット・・・というのが曲者でね。 紅が接続しないとヘリの制御装置が動かないの!」
「「「 へっ? 」」」
「あのヘリの始動キーが、この紅なの。 だから私専用なワケ。」
「ちょっと待て! アスカ以外が使おうとしたら、どうなる?」
(フリーズしていたのが再起動したのね)
「各種確認機能があるから動かないけど、認識装置を騙して操縦したら、安全高度に達した途端に自爆するわ。」
「ホバリングしたまま低空飛行して移動したら?」
「周辺の障害物が少なくなった時点で自爆」
「そのセンサーも騙して、持って行った場合は?」
「私が自爆承認したら、この紅から信号が出て自爆するわ。」
「それも騙した場合は、どうなる?」
「紅の上位にあたる黒が信号をだすことになるわ。」
「その黒ってのは?」
「私の婚約者の統制機のことよ。」
婚約者という言葉が出てきて、ヘリの話題から婚約の話題に切り替わり、盛り上がる。
部屋のスミでは、婿取りを計画した父親と、その話に乗った候補たちが言い争いをしていた。
その時の出来事を思い出しつつ、アスカはドアへと目を向けると、プレゼントされた紅が座っている。
時々、ドアの向こうで待っている人が開けるのか、隙間ができると紅が警告がてら唸っていた。
アスカはプレゼントで貰ったヘリを操縦して、待ち合わせ場所であるフランクフルト国際空港に向かっている。
部屋から出るときに父親に邪魔されたが紅の前足に装備された電撃爪で排除。
玄関を出るときにネルフから派遣された護衛がいたが、ヘリに乗り込む前に父親と同じように電撃爪で痺れさせた。
(どうせ空港に行っても待ち構えているでしょうね)
アスカが考えている通り、ドイツ国内にある空港には支部から派遣された部隊が散らばって待ち構えていた。
ヘリで向かっているフランクフルト国際空港も、お馴染みの加持リョウジや葛城ミサトが待ち構えていた。
待ち構えていた2人は…
「なんなのよー ドイツに着いて、着任挨拶すませたら、すぐに我がまま娘の回収なんて。」
「そういうなよ! アスカは大切なエヴァのパイロットだぞ!」
「だからってアンタが甘やかしたせいで、こんな事態になったんでしょうが」
(実は、この2人・・・ 何年も前からアスカに婚約者がいて、今回の日本行きの事さえ知らされていない。)
(あの親父が約束を覚えていない位なので、話している訳ない。)
2人の目の前を特徴あるヘリが通過する。
そのまま、個人所有機が集まっているポートへと着陸しようとしているのをミサトが見つけた。
「加持ぃ〜ぃ あれ! あれ!」
「あぁ あのヘリだ。」
「あんたたち! 個人所有ポートにいたわ ・・・ 取り押さえに行くわよ」
まわりに散らばっていた黒服たちを引き連れて、個人ポートへと向かう。
目的地はミサトがいる建物のちょうど反対の端っこ。
距離が長いので、目的地である出入口に到着するときには、息も絶え絶えの状態。
それでも元気な者たちを引き連れてミサトが先頭を歩いて、着陸したヘリを探すが・・・
「おーい 葛城ぃー ヘリ見付かったか?」
「それがねぇ いないのよ」
「ハンガーは?」
「探させたけど、無いみたい。 どこ行ったのよー」
周辺にいた空港職員に職質した黒服がヘリの所在を報告する。
聞いた話しでは、牽引パレットに直接、着陸したので、そのまま積載する予定の航空機へと牽引して行ったらしい。
その場所は、先程までミサトたちがいた辺り。
目的地が判ったので、ヘリの搬入口と乗客の搭乗口の2つに分けて、目的地を目指す。
「ゼェゼェ・・・ 我がまま娘は どこにいるの!」
「「「 ゼェゼェゼェ 」」」
「葛城ぃー おまえ顔わかってんのか?」
「一応、写真見たから知ってるケド・・・ (キョロ キョロ) あぁ いたーーーぁ」
ミサトが指差す方向をリョウジも見ると、のんきにカフェで飲み物を飲んでいるアスカを発見した。
アスカのテーブルに2人は向かい、アスカの正面に座る。
「ネルフね」 (アスカ)
「当ったり前でしょ 勝手に飛び出す我がまま娘を アタシが迎えにきたのよ!」 (ミサト)
「へぇ〜 そ〜いう理由できたかぁ〜」 (アスカ)
「アスカ なんで空港まで出てきたのか訳を言ってくれないか?」 (リョウジ)
「前々から提出してあった休職届けに書いてあるでしょ」 (アスカ)
「「 休職届 」」 (ミサト&リョウジ)
「そうよ! 私は10歳になる年になったら花嫁修業で婚約者のいる家に行くことになってたの。」 (アスカ)
「そんなこと、 ワタシの知ったこっちゃないわよ」 (ミサト)
アスカの理由を聞いたミサトが、踏ん反りかえる。
3人が座っているテーブルの下から、何かしら動物の唸る声が聞こえてくる。
「アンタ、足元に注意した方がいいわよ。 さっき蹴ったでしょ!」 (アスカ)
「ペットでもいるの。」 (ミサト)
「まさか(大汗) この前のが下にいるのか?」 (リョウジ)
リョウジはパーティーに参加していたので、テーブルの下に何がいるのが予想がつく。
それに対して、何も考えがないミサトは、隣で大汗かいている相棒の様子をみても何も感じないらしい。
よくよく考えて周辺を見てみれば判るのだが、店員どころか、お客さえ、このテーブルの周辺にいない。
ちょうど、ぽっかりと隔離された状態になっている。
「あら 飛行機の準備が整ったみたいね。 お迎えがきたわ。」 (アスカ)
アスカの目線は、ミサトの隣を見ていたので、隣をみると白い動物!
(猫っぽいけど こんな大きいのいたっけ?)
乏しい知識のページをめくって、何なのか判ったミサトは隣にいる相棒を掴み、自分の盾にする。
「なんでホワイトタイガーがいるの!」 (ミサト)
「うっさいわねぇ だから、私のお出迎えよ。」 (アスカ)
「おいおいアスカぁ〜 これって、アレの兄弟か? (滝汗)」 (リョウジ)
「そうよ♪ さて、いきましょうか!」 (アスカ)
手荷物を持ってレジで会計を済ませるアスカ。
その後ろには迎えにきた白いトラが待っている。
会計を済ませたアスカが、白いトラのおでこを撫でて、先程まで座っていたテーブルに戻るとテーブル下へと声をかける。
「紅♪ 蹴られたのは仕方が無いでしょ ・・・ さあ、いくわよ!」 (アスカ)
アスカに言われて、テーブル下から黄色い巨体がでてくる。
テーブルの下に隠れていた巨体をみたミサトは再度、声をあげる。
「ベンガルトラ (なんちゅう物がペットなのよ) 」 (ミサト)
アスカが、カフェを出ると2匹のトラは左右に付く。
店内から続けて、リョウジやミサトの出てきて、黒服たちにアスカを取り押さえる命令を出そうとしたが…
「なんで誰もいないの?」 (ミサト)
「あっちゃ〜ぁ」 (リョウジ)
リョウジが見ている方向をみると、犬に引きずられて行く黒服がいた。
反対方向からも犬2匹が黒服の両足のスラックスをくわえたまま、引きずって移動している。
リョウジとミサトが、犬に引きずられて行く黒服の行き先に行ってみると、黒服の山。
所々では、這いずって逃げようとしている黒服がいるのか、背中にのった犬たちから電撃を浴びせられている者もいる。
そこにいる犬たちは、同じような胴巻きを身に着けていて、それには「空港巡回」と書かれていた。
「空港巡回って全部、警護機だったのか ・・・ それじゃぁ黒服たちは負けるわ」 (リョウジ)
「たかが犬っころでしょ! 拳銃で撃っちゃえば、 いいじゃない。」 (ミサト)
「警護機っていうのはロボット犬だ。 もともと拳銃や手榴弾ぐらいじゃ破壊できないシロモノなんだ。」 (リョウジ)
「でも空港のでしょ。 ネルフの特務権限で、こっちの命令を利かせりゃ、いいじゃないの!」 (ミサト)
「そうしたいが・・・ アスカの両脇にいるのが、警護機の上位で、その指令を出してしまうんだ。」 (リョウジ)
警護機と統制機について、リョウジがミサトに説明をして、一応、理解したらしい。
「あぁー とにかく特務権限で、連れて帰ればオッケーでしょ。」 (ミサト)
「(携帯片手に) そうしたいが・・・ アスカの休職届け、本当だったらしい。」 (リョウジ)
「へっ?」 (ミサト)
「もう何年も前に提出して、その当時の支部長が了承していたらしい。」 (リョウジ)
「なによー もう! ここに来るだけ無駄だったわけー。」 (ミサト)
無駄足になった2人を残して、アスカは搭乗口へ向かうブッリジ前で振り返り、護衛役だったリョウジに声をかける。
リョウジは、アスカが何か言いそうだったので、近くに言って聞こうとしたら…
「加持さん! 惣流・アスカ・ラングレーは、花嫁修行で日本に行ってきまぁーす。」 (アスカ)
「あぁ 頑張ってな。 アスカ!」 (リョウジ)
「そこの知能の低そうな女性とは縁を持たない方が、いいわよ。」 (アスカ)
「なんですってー (怒)」 (ミサト)
「だってぇー 家事できない! 料理できない! じゃ、いくらなんでも加持さん、可哀想だもん。」 (アスカ)
「加持から聞いたけど、アンタも、どっこいどっこいじゃないの!」 (ミサト)
「だから花嫁修行で習うのよ! 出来なくても財閥にお嫁入りだから、出来なくても困らないしね。」 (アスカ)
「ムッキー (怒・怒・怒)」 (ミサト)
「(あはは 後のフォローが大変だ) 修行と言ったって春には帰ってくるんだろ!」 (リョウジ)
「最低1年間はかかると思うし、遅かったら3年ぐらいかなぁ〜。 そのまま、お嫁入りするかもね。」 (アスカ)
アスカは加持にバイバイすると、飛行機に乗り込んで行く。
その後ろ姿を見送るリョウジと、声を荒げて悪口を並べるミサト。
しかし、アスカが言った花嫁修業の期間を考えていたリョウジが、困った点に気が付いた。
「(まてよ 期間が長いと マズイ!) おい 葛城! 急いで支部に戻るぞ。」 (リョウジ)
「なんでさー どっかで食事して帰らない。」 (ミサト)
「どころじゃない! 3年後っていったら何が予定されていた。」 (リョウジ)
そこまで聞くと、頭の回転が鈍いミサトでも、困ったことを思い出してしまう。
もともと葛城がドイツにきたのは、エヴァの運用に関する教育を受けるのと、そのパイロットであるアスカの教育兼護衛だった。
その護衛対象であるアスカが休職して日本へ。
1年間ぐらいだったら教育のスケジュールを調整すれば、予定年月までに訓練させることはできる。
しかし、アスカが言った最長年数になると、残りが短くなりすぎて、予定通りに訓練を消化できない。
最悪の場合は「お嫁入り」で、訓練どころか予定が崩壊する。
「マズイ… 急いでアスカを連れ戻さないと!」 (ミサト)
「おう! 支部に戻って対策しないと、俺たち2人のクビも考えられる。」 (リョウジ)
さて、この2人。
ちゃんとアスカを戻して、予定どおりに進むのだろうか?
ちょっと日付を戻して、場所は日本 … ある小学校。
長い夏休みが待っている時期になると教室内は騒がしい。
「かぁー暑っちぃのぉー」 (トウジ)
「仕方がないよ 常夏の気候で、さらに夏なんだから、暑いのがあたり前!」 (ケンスケ)
あいも変わらずにジャージ姿の鈴原トウジと、カメラを構えている相田ケンスケ。
その近くには女子グループの中にいる洞木ヒカリがいる。
「委員長 この夏、どーするの? 新しい水着とか準備した?」
「ううん ウチの場合は、遠出できないし、近くのプールぐらいかなぁ」 (ヒカリ)
「だったら 最近できた、あの室内プールに行かない?」
「あそこって会員制でしょ 高いんじゃないの」
「聞いたら、ロッカーなどの保管管理で会員制にしているだけで、普通らしいわ。」
「みんなで行かない?」
「保護者は、どうするの? まだ小学生だから入るときに保護者いるよ。」 (ヒカリ)
「そこなのよ 誰か いない?」
「保護者なしで入れる方法あるけど…」 (レイ)
ヒカリたちのグループの中にいた綾波レイが提案する。
綾波家の養子となって、小学校に転校してから委員長であるヒカリと仲良くなった。
その付き合いから、クラスメートたちとも仲良くなり、今では普通に、お話グループに混ざっている。
「どうやって?」 (ヒカリ)
「知り合いに頼んでみる。」 (レイ)
レイは持っていた携帯で相手を呼び出す。
興味シンシンの仲良しグループは聞き耳を立てている。
そんな状態に気付いたのか、レイは携帯のスピーカーをオンにして、みんなで聞けるようにする。
(Prrrrr Prrrrr Prrrrr カチャ)
「はい 碇財団本社・秘書課です。 どちら様でしょうか?」
「もしもし 綾波レイといいます。 加賀ヒトミさんをお願いします。」 (レイ)
「わかりました。 少々お待ち下さい。」
(♪♪♪ 保留音 ♪♪♪)
レイが掛けた先を聞いて、まわりで囲んでいた人たちはビックリ!
教室のみんなは、レイが学校を休んでは、ネルフの実験に行っている事は知っていた。
みんなが住んでいる街はネルフが作っている。
また、碇財団の企業が進出して、色々なショップや遊技場が出来ている。
(ちょっとレイちゃん!)
(あそこって碇グループの施設だけど、その碇グループに知り合い いたの?)
(まあね)
(♪♪♪ Pu)
「お待たせ、レイちゃん! 今日はどうしたの?」
「こっちに新しく出来るプール…」
「あぁ あの複合型のプールね♪ 使うんだったら登録しとくけど」
「今度 クラスのみんなで行こうと思って」
「オッケ〜ェ♪ 小学生だから保護者は、どうしようかって事でしょ」
「そうなんです。 出来ますか?」
「出来るわよ♪ (うぅ〜んと) レイちゃんのメアドにURL送っておくわ」
「はい」
「そのURLに行きたい人の顔写真と必要項目を入力してね。」
「結構な人数になると思うけど」
「まあ今日中に送ってきた人だけ会員証発行してあげる。 行く日付は、メールで知らせてね。」
「有難うございます」
「シンちゃんにも知らせておくわね。 Pi」
通話が終わると、もうメールが届いていたので、集まっている人たちの各携帯へ転送。
各自の携帯に届くと、顔写真を撮影して、それぞれが入力して送っていた。
ヒカリの顔写真は、レイが持っていたので、必要な項目を入力して、ヒカリが確認した後、送っておいた。
仲良しグループの女の子たちは、まだ送信準備中…
「レイちゃん 電話の相手って」
「碇財団 秘書課の加賀ヒトミさん」
「電話の最後に シンちゃん って言っていたけど」
「いかり シンジ くん (ポォ〜〜〜)」
「お〜い レイちゃん」
「委員長 こりゃ駄目だ アッチの世界に行っちゃったよ」
「いかりシンジ って言ってたけど、碇一族の人じゃないの?」
「かもね」
授業開始のチャイムが鳴って、アッチの世界に行っていたレイも現実に戻ってくる。
授業中のチャットでは、新しい水着をどーするか…など浮かれまくり。
授業も終わり … 帰宅前のHR。
「おい 綾波」
「はい」
担任に呼ばれると、教卓横に並んで、みんなから見れるように立つ。
「みんなには急で悪いが、今学期が終わると綾波は第2新東京市へと転校する。」
「「「 えぇーーーぇ 」」」
「みんな ごめんなさい (ペコリ) 転校についてはヒカリにも教えていなかったの」
「どーして 第2新東京市に行っちゃうの」
「綾波の家って、コッチにあるだろ。 親の仕事もコッチだし なんでだ」
「なんか理由があるのなら教えて!」
「前々から決まっていて 私が10歳になる年になったら第2新東京市に行く事になっていたの」
「前からの約束…」
「そう 碇本家に花嫁修業に行くの」
「「「 花嫁修業 ×多数 」」」
授業が始まる前に聞いた話の中で引っ掛かる言葉をヒカリが思い出す。
その点でレイに聞くと考えた通りに返ってきた。
「レイちゃん 朝の時に聞いた人 あのイカリシンジって」
「うん シンちゃんの許婚が私」
「年上」
「違うよ プールに行った時に会えるかも… その時に判断してみて」
「まあ会えるから、その時に聞くとして… もう会えないの…お別れなの?」
「花嫁修業が終わったら、また第3新東京市に帰ってくるよ」
「中学 それとも高校」
「ううん 中学生になる頃には帰ってくるから」
終業式も終わって、女子の仲良しグループで約束していたプール。
結局、集まった人数は、クラスの全員。
正面出入口で待ち合わせていると、ナンパ目的の男どもがワラワラと集まってきている。
色々と誘いをかけては来ているが、代表でもあるヒカリやトウジたちが、なんとか避けている。
「全員そろったぁ〜」
「ヒカリィ〜 まだレイが来てないよ!」
「遅っいなぁ〜」
そんなグループたちに近い道路へ大型高級車が停まり、後部座席からビジネススーツを着た女性が降りる。
その女性の後からレイが降りてきて、ヒカリを見付けると走り寄ってきた。
「ヒカリィ〜 遅くなって、ごめんなさい。」
「遅い! (遅っそぉ〜い)」
「まあまあ みんな! レイが来たから全員集まった事だしね。」
「みんな ごめんなさい! (ペコリ)」
「んで 後ろの女性は、誰?」
「えぇ 保護者をお願いした 加賀ヒトミさん」
「…というか、このレイちゃんのお守り役ね。」
「えぇー ひっどぉいー」
「さてと… みんなの会員証は受付カウンターで受取れるように手配しています。」
「んでね… 受取ったら別室で説明を受けてからプールに行くことになるの」
レイがお願いしてヒトミに準備して貰ったのは、一般会員証と、1日だけの特別会員証の2つ。
今日は、クラスとのお別れ会も兼ねているので、特別会員専用の展望プールを貸切にして貰った。
ヒトミのはからいで、日付と名前、顔写真を入れた特別会員証は記念として持ち帰れるようにしている。
説明が終わり、ロッカーで着替えて展望プールに出ると、立食形式の料理が準備されていた。
すぐにプールに飛び込む者…、準備された料理を選ぶ者…とバラバラ。
レイとヒカリ、仲良しグループの女の子たちは、デッキチェアで、のんびり。
そんな所にパーカーを着た男の子がやってきた。
見知った顔ではないので一応、ヒカリたちは警戒していたが、レイが腕に抱きつき、ヒカリたちに紹介する。
「ヒカリ この人が私の許婚で…」
「初めまして 碇シンジです。 よろしく!」
引き込まれるような笑顔で挨拶され、少しの間、見惚れていたが、それぞれが挨拶を交わす。
レイが寝ていたデッキチェアに2人で並んで座ると、ヒカリが代表して聞きたかった事を聞いてみる。
「碇くん…でいいかな?」
「いいですよ♪」
「あなたの年齢は?」
「みなさんと同じ歳ですよ。」
「レイと許婚って聞いたけど、碇家一族なの?」
「そうです。 碇家の一族ではなくて本家です。」
「ゆくゆくは碇財団の重役かな?」
「…というか本家筋の子供は僕だけです。 それで出入口にボディガードがいるんですよ。」
「それじゃぁ 碇くんって大人になったら財団のトップ(驚)になるの」
「もう、なってます。」
「「「 えっ 」」」
「今年になって、前財団総帥は会長職になって、現財団総帥は僕です。」
「でも私たちと同じ年齢だから小学校は」
「行ってませんよ! 昨年までに大学院でましたから。」
「「「 うっそぉ〜 」」」
その頃の地下…
「困ったことになったぞ! 碇」
「なんでしょうか 冬月先生」
「ドイツのセカンドなんだが、日本へと飛び立ったらしいぞ。」
「葛城くんと、いっしょでは?」
「それが休職届けを出して、ひとりで旅立ったらしい。」
「こっちで捕まえれば良いのでは」
「行き先が碇本家ということだ。」
「(汗) レイは…」
「レイも同じだ。 セカンドと同じように休職届けを出して、コッチには出てこない。」
「保安部が、ガードしているだろう。」
「それが、ロストしたままらしい。」
「冬月先生… 2人の休職届けの理由は」
「花嫁修業だそうだ」
「なんですか その理由は」
「資金提供の時に、前々から言っといたろうが… (怒)」
地下で、あいも変わらずに司令と副指令のドタバタ問答。
結果的には、レイとアスカを、ドイツにいる2人に探し出してくるように命令を出した。
さて、早期に見付かるのでしょうか?
※小説内の箇所説明※ 超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ
作者が好きだったアメリカのテレビドラマ。そのドラマでメインになっていたのが「エアーウルフ」という名前のヘリコプター。日本では日本テレビ系で1986年10月から1987年11月まで放送された番組。どこかで使ったら面白いかな…と考えて、今回使ってみました。
To be continued...
(2007.08.11 初版)
(2009.07.26 改訂一版)
(あとがき)
第3話が出来上がりましたので、さっそく投稿です。この辺りから作者の癖というか脇道に流れるクセが出てきました。自分なりの味というか、作者独自の追加味と考えて下さい。
第4話は、あの3人のお話しです。結構アチコチへと、あの2人も含めて多数の大人たちを引っ掻き回します。世界規模の鬼ごっこ…レイ・アスカ・シンジの順でネルフに尻尾を掴ますのですが、ネルフに到着するまで、いろいろと付け加えしていますので、今になって、どこを削ろうか考えていたりします。
ついでに次は少々遅れます…というのも製作で使っているパソコンがメーカーで修理中。お盆休みが重なっているので、帰ってくるまで期間が少々。修理費も4万円越えているから頭が痛いところです。
作者(ハンドメイド様)へのご意見、ご感想は、まで