リターンズ

第九話

presented by ハンドメイド様


※会議室※

会議室に残るように言われた面々。
その居残りを命じられたのはネルフ司令と副司令、作戦部長と技術部長とオマケ。
命じたのは、事務総長であるが、その他に居残ったのは総理と極東方面司令官と部下1名。
この面々で、どんな会議があるのだろうか…

「さて、どういった御用件でしょうか?」
「あと1人が到着していないが、先に話し始めよう。」
「どなたでしょうか?」

事務総長が気にした人物は、タイミング良く、扉をノックして入ってきた。
それは、包帯が痛々しいシンジだった。
今は怪我をしているので付き添いとして、シンジを支えるようにレイも来ていた。
財団の病院へ搬送され、専属医師団に引き渡したので、リツコも、どうなったのか心配だった。

「シンジ君 怪我の状態は、どうなの?」
「まあまあ、リツコ姉さん。 全身打撲と一部の骨折だけですから。」
「シンジ君 無理しないで、私を支えにして…」
「ありがとう レイ」

まっすぐ立つのが難しいのか、レイが傾いている方の腕をつかんで支えている。
そんな様子を見て、リツコは心配していた。
会議室内にいた士官が、椅子を準備したので、そこに座り、さらに持ってきたレイが近くに座っている。
会議の参加者が揃ったので、事務総長が口火を切る。

「メンバーが全員揃ったので話しましょう。 残って貰ったのはネルフの組織変更についてです。」
「組織変更ですと… (驚)」
「えぇ 六分儀司令を筆頭にした体制では、今後の関連組織とのサポートが難しくなります。」
「そんな事は無いでしょ! ネルフに従えばいいだけじゃない!」

事務総長とネルフ司令との会話に作戦部長であるミサトが割り込む。
副司令である冬月は冷や汗をかいて黙っている。
親友でもあるリツコが、ミサトを窘める。

「ミサト 自分のポジションに注意しなさい! トップ同士の話に割り込んで!」
「だって、使徒迎撃はネルフがメイン、あとはサポートでしょう。」
「今までは…ね。 明日からは国連宙軍と戦略自衛隊も入ってくるわ。」

脇役になっていた士官も会話に参戦する。

「今日は要請という形で、我々宙軍も参加したが明日から対等の状況になる。」
「主導権はネルフよ!」
「ネルフも軍隊だ。 階級で下の者は上の者へと命令は出来ない。 そこを言っているのだ! 葛城1尉。」
「そういうことよ…ミサト。 この会議室内で1番下はマヤの2尉。その上がネルフ各部長職の1尉。」
「あとは、副司令としての私が3将。司令が2将。軍士官は3佐。事務総長と総理は元帥クラス。」

ミサトはシンジたちを見て、会話の題材になっている下の階級を出す。

「じゃあ、チルドレンたちの階級は、どーすんのよ。 3尉よ! 3尉。」
「まあ、エヴァのパイロットだから特務権限で一応の階級は与えられているわ。」
「体制を1本化していないと、命令伝達で混乱を起すじゃないの!」
「確かに…葛城作戦部長のいうことだと思いますが、どうでしょう。 事務総長。」

会話の流れで巡り巡って最上位者でもある事務総長の所へと帰ってきた。

「確かにそうだが、ネルフには宙軍との連絡役となる軍人を入れようと思う。」
「それは」
「もう決定事項で通達は送られているが、届いていないのか?」
「赤木君… 確認してくれ」

技術部の秘書として着いてきたマヤが携帯端末からMAGIを経由して調べる。
確かに国連からの連絡文書の中に、その通達文書が送られていた。

「国連からの定期連絡便で届いています。 使徒迎撃で紛れて、まだ未読になっていました。」

髭親父の前に画面が置かれたので読んでみる。
結構、長い文章だったが、ネルフ司令部とは、別に司令部が作られること。
そのポジションにつく人物は、治安維持を行なう宙軍から選ばれ、後日、連絡が入ること。
ネルフの特務権限による命令は無効となること… 等々、注意事項が長々と書かれていた。

「この文書を見ますと、後日決定となっていましたが…」
「そうだが… ネルフの方から書類が回ってきたので、その人物で決定しようと思っている。」
「ネルフからの文書ですか? (誰のことだ?)」
「ちょうどポジション的に良い状態だったのでな♪」
「その人物は?」

事務総長の指示で会議室のスクリーンが準備される。
そこにはネルフから提出されたサード・チルドレンの就任に関する書類だった。

「さて、君は召喚状を持って、サード・チルドレンの就任となっていたが、手続き不備で不許可。」
「なんですと!」
「MAGIにも記録されていたが、君は召喚状を出していない。」

発令所のオペレータたちも見た電報のような文書がスクリーンに表示される。
そこにある文書を知らない面々は、見た途端に驚いていた。

「この文書では、召喚というより単純に呼び出した…だけだな。」
(うむむむむむ…)
「それと碇シンジ君の社会的地位を考えると、チルドレン就任は難しいだろう。」

事務総長の隣に座っていた総理が、髭親父が知らない事を話し出す。
数年前に裁判所を通じて、髭親父から親権を取り除いて、現在は碇家当主になり、財団トップであること。
日本だけでなく世界の財界にも力があり、国によっては財団が撤退すると国が滅んでしまう可能性もあること。
さらに国連宙軍の新設時に技術的支援を含めて、国連軍に貢献しており、国連軍の作戦にも参加したこと。
それで、国連宙軍での階級があること。

その事実を初めて知らされ、元父親でもあった髭親父は後の祭りであるが後悔していた。
さらに追い討ちを掛けるように事務総長から辞令の通知を本人がいる前で行なわれた。

「碇シンジ (はい♪)
 予備役から外し、師団復帰を命ずる。 (了解しました)
 貴官は元の師団に戻り、第3新東京市へ駐留。
 使徒迎撃及び治安維持活動を行なうこと。
 ネルフ内部的に不都合が生じる可能性もあるが、チルドレン就任も認め、使徒迎撃の任も任す。
 詳細は、ネルフ本部及び支部へは伝わっている文書と同じものを貴官宛てに送っておこう。」

事務総長は、ネルフの面々の前に立ち、組織変更した箇所について通達した。
作戦部はスタッフ方式に変更し、現場での直接命令権は破棄。
現場サイドで戦うチルドレンは、パイロット同士で話し合い、リーダーを決め、それに従うこと。
リーダー経由で、支援部隊への要請が行なわれ、複数発生した場合はチルドレンからの要請を優先すること。

事務総長からの通達を聞き流して、髭親父はシンジを、どうするのか考えていた。
シンジが軍人で、師団に所属し技術サポートをしたことから、技術士官と推察した。
技術士官の場合は、最上位であっても自分の階級より下である。
チルドレンにしても、リーダーは訓練期間が多い者になると思われるので、経験の少ないシンジにはならない。
軍としても組織としても、シンジの立場は、宙軍の連絡士官程度と思われた。

(どうにでも、できる。)
(今は、ファーストとサードだけなので、訓練期間の長いファーストがリーダーだろう。)
(レイは私の言うことを聞くので大丈夫だ。 何の心配もない。)

ひとり不敵に笑みを浮かべている髭親父に対して、作戦部長は沈んでいた。
ファーストに続いて、サードとしてチルドレンが自分の指揮下に来ると思っていた。
しかし、ネルフの上からの組織変更で、自分の指揮下にいても、いない状態になっている。

検査や調整は技術部なので参加させて貰える … これは良し。
訓練などについては作戦部と技術部の合同ではあるが主導権は作戦部にある … これも良い。
使徒迎撃で作戦指示は出せる … まあ制限は付くが、一応良し(か?)
現場での指示命令は駄目 … しかしチルドレン・リーダーが問合せた場合は作戦部長として指示できる。
使徒迎撃としての状態では、作成部長であるミサトが考えている状態にはなる。

(どうにでもなるわ。)
(シンジ君は来たばっかしだし、どうせリーダーはレイかアスカで決定よ。)

ひと通り説明が終って、重要人物たちが会議室を退出する時…
あとに続いて退出しようとするシンジへと並び、髭親父やミサトが気にする話題を話す。

「そうそう碇君 (なんでしょう)
 君の階級だけど (はい)
 予備役になった時より2階級上がっているからね。 (えぇぇぇ なんでまた…)
 最後の最後で、大きい任務をしただろう。 (まあ確かに)
 あれの功績で昇進したんだが直前で予備役になったからね。 (そうなんですか)
 新しい階級章は、自宅に届くようになっているよ。 (判りました)
 ついでに師団全員、上がっているから、くれぐれも間違えないように。 (了解です)」

シンジが予備役に入る前に、国連軍の大きな任務を2つ続けて済ませていた。
あまりにも功績が大きかった為、昇進辞令が出たのだが、その前に退役していた。
現在の時点で、もとの師団に戻ったため、昇進辞令が有効となり、シンジが知らない内に昇進してしまった。


会議室から出てくる面々。
それぞれが別れて帰るときにリツコはシンジに誘われて、シンジ宅へと寄る事になった。
その時、マヤが「いっしょに行きたい!」という事をシンジが了承したので、2人で寄る事に。

シンジのお迎え車に乗り込んだ2人。
乗せて貰っている車にも驚いたが、外側は骨董品の車なのに中は最新版。
技術者の血が騒ぐのか、乗った始めの頃は、アチコチを調べていた。
ひと通り調べ終わると、シンジの話題で盛り上がる。

「シンジ君って、本当に財団トップだったんですね。」
「調査書に載っていないのが不思議だわ…」
「一応、隠しておきましたし、そもそも調査書ってMAGI経由でしょ。 変更可能ですよ。」
「こっちで準備した文書が渡っていたみたい。」

車は第3新東京市の中心部を離れて、どんどんと郊外へと向かっている。
向かっている先には先日、開校されたばかりの学園があり、車はソッチ方向へと向かっている。
財団トップと聞いたマヤが興味シンシンでシンジへと質問する。

「シンジ君 学園へと向かっているけど…」
「えぇ 学園がある山の反対側に僕の自宅がありますから。」
「それじゃ〜 山ひとつ(汗)」
「…というか、学園がある山と周辺の山は全部、僕が所有しています。」
「でも、湖もあったよね。(引き攣り笑い)」
「人口湖ですけど、所有範囲に入っていますよ。」
「あははは… ひっろいわね。」
「まあ、本家が京都にありますけど、そこより小さいから別宅…ってトコロでしょうか。」
「(驚き) 別宅って、住んでいる人は?」
「僕も含めて20人ってトコロです。」
「使用人さんたちも含めてってこと。」
「まあ、一族というか家族ってトコロで20人です。
 執事さんやメイドさんたち、警備も含めると3ケタは軽く越えますね。」
「最低100人以上 (呆然)」

マヤとシンジの会話を聞いていたリツコは、さり気無く話に参加する。

「まあ、本家の方は、街全体の約半分が財団関係者だから、比較にするだけ無駄よ。
 こっちの方は、本当にシンジ君の関係者のみだから。」

「でも、でも…先輩〜 シンジ君って独身でしょ。」
「前に聞いた話しだけど、シンジ君の奥様候補たちも、いっしょに住んでいるらしいわ。」


※マヤ視点※

シンジ君のお家って、ちょっと洒落たお家かと思っていたけど、着いて見てビックリ。
純日本風の玄関で、乗って行った車が到着すると、開いたりして。
そのまま中に入って、お家の玄関先で停車したんで降りてみて、またビックリ。
玄関前の左右に列をなして執事さんとメイドさんたちの列でお迎えしてくれたの。
それで、お家に入ったんだけど、中は本当に純和風…木を沢山使っている木造建築。
くねくね曲がった長い廊下を抜けて、建物の奥にある広い応接間に案内されて唖然。
いったい何畳あるのか馬鹿らしくなるぐらい広い部屋。
ソファーセットの前には大きなテレビ…あれってシアターセットかなぁ。
少し離れた場所には、大きなテーブルがあって、そこには私と先輩が座っているの。


リツコとマヤの前にはシンジが持ってきたコーヒーが置かれてる。
コーヒー党のリツコが早速、飲んでみて銘柄を考えてみるが、思い付かない。

「シンジ君 このコーヒーって」
「えぇ 新種ですよ。 試しに掛け合わせで作ってみたら、こんな味になりました。」
「私的には気に入りそうよ。」
「それは良かったです。」

応接間に書類の束を持った少女と携帯プレイヤーを持ってきた少女たちが来た。
その2人は、シンジの傍にプレイヤーと書類を置く。

「資料映像をまとめておいたわ。 確認してね。」
ちょっとソバカスがある丸顔の女の子。
「それに添付する資料も出来上がっています。 添削して下さい。」
ちょい秀才風の細い女の子。

2人は、それぞれに言ってから、部屋の端にあるカウンターの椅子へと座った。
シンジは、渡された映像を見ながら資料の添削を進める。
リツコとマヤが不思議そうな表情を見せていたので、シンジが2人を紹介する。

「リツコさんは、まだ紹介してなかったですね。」
「えぇ まだね。」
「あの2人は僕の奥様候補で…」

まずは秀才風の女の子。あっさりとしたワンピを着ている。
「山岸マユミです。」
続けてソバカス丸顔の女の子。動き易さを重視しているのかポロシャツにスカートを着ている。
「洞木ヒカリです。」

奥様候補と聞いてビックリしたリツコ。
前に聞いていたのは、レイとアスカの2人。
いつの間に変わったのか不思議に思っていたが、部屋で着替えてきたレイが補足。
応接間にやってきたレイは、大きめのシャツにキュロットパンツ。

「マユミとヒカリは最近になってシンジ君の候補になったの。」
「そうなの。 でもね、4人とは多くない。 喧嘩にならない?」
「だって4人とも顔見知りだし」

レイの説明で、ヒカリはレイの親友で、マユミはアスカの親友。
候補になった経緯は省略して簡単に、レイはリツコやマヤに説明した。
この2人を候補に入れる際に、レイとアスカは相談し、候補として認めた。
ゆくゆくは候補ではなく奥様となるが…

「ここにはシンジ君の奥様であるレイと候補の2人が住んでいるのね。」
「アスカちゃんはドイツですからね。 あっちで不貞腐れていたりして (笑顔)」

リツコとマヤの話しに少し驚く表情を見せる3人(レイ・ヒカリ・マユミ)。
その驚き顔をみたリツコは怪訝そうにレイに聞く。

「そうじゃないの?」
「アスカって、向うで休みになる度に帰ってきているから。」
「じゃあ、ちょっとした出張感覚じゃないの。 (驚)」

カウンターの椅子に座っていたヒカリが切り出す。

「いま… アスカ、いますよ。」
「どこに?」
「シンジ君が帰ってくる少し前に、ボヤキながら帰ってきて」
ヒカリの言葉を引き継ぐようにマユミが話す。
「疲れた…って言って、そこのソファで寝ています。(笑)」

マヤが立ち上がり、マユミが言っていたソファに行って見ると確かにアスカが寝ている。

「先輩、アスカちゃん、ここで寝てます。」
「やれやれ  (フゥ) 全員いるって訳ね。」

2人に渡された資料と映像を見ていたシンジは、ひと通り見終えた。
映像メディアを取り出し、資料といっしょに、まとめて机の端に置いておく。
するとビジネス・スーツで決めている加賀ヒトミが持って行こうとした。
その顔見知りを見てリツコが声を掛ける。

「あらっ アナタは碇財団総帥秘書だったわよね。」
「はい、お久しぶりです。 ネルフ技術部長の赤木リツコさん。 (ニコッ)」
「良く覚えているわね。」
「はい、総帥の交友関係は広いですので。 お隣は同じ技術部の伊吹マヤさんですね。」
「は・はい。 伊吹マヤです。 初めまして。」

初対面となるマヤに紹介するシンジ。
ちょい前のドタバタの時(リターンズ第5話)に総帥秘書と言ったので、てっきりイワオ氏の秘書とリツコは思っていた。
しかし、シンジの紹介では総帥=シンジになっており、花嫁修行の頃からシンジの秘書だったらしい。

「シンジ君 一応、2人分、準備してきたけど。」
「1人は、すぐに渡してもOKだけど、もう1人は意思確認してないし。」

ヒトミからシンジへ顔写真付きのカードが渡されていた。
その顔写真はリツコとマヤ。
いつの間に撮影したのか、ネルフの身分証明カードのようになっていた。
それを手元に準備して、真顔になったシンジがリツコとマヤに向く。

「リツコ姉さん 確認するけど、本当に所属変えしても良い?」
「えぇ 何回も考えて、考えた挙句の結論だから、後悔は無いわ。」
「マヤさんについては?」
「もともとネルフに引き込んだのは私だから。」

リツコとシンジの会話の中にマヤ自身の事が入っている。
自分の名前を呼ばれて、怪訝な表情を見せているマヤだった。
その疑問に関することをシンジとリツコが説明する。

「いいことマヤ。 良く聞いてから結論を言ってね。」
「さて、今、リツコ姉さんと話していたのは、マヤさんの所属をネルフから碇財団へと引き抜くお話しです。
 前にIFSの研修でリツコ姉さんが国連宙軍へ出張してきたのが始まりです。
 もともとIFSは僕が開発し実用化したもので、現在は軍関係者か一般技術者ぐらいしか使っていません。
 まあ、普通に使用しているのはマヤさんも使っている簡易IFSの方です。
 研修に来たリツコ姉さんには、研修終了前に引き抜きの話をしていたんです。
 それの返事は本日、会った時に返事を聞いたんで、明日の朝イチで国連軍から所属異動辞令が出ます。
 ここまでは判りますね。」
「はい、 わかります。」

シンジを正面に見詰めたマヤが頷きながら返事をする。

「異動する際にリツコ姉さんから懸念事項というかマヤさんも、いっしょに…という話がありました。
 リツコ姉さんに詳細を聞いてみると、マヤさんがネルフに所属するようになったのはリツコ姉さんの紹介だったと聞いています。」
「はい、大学の先輩だったんで、助手をしてみないか…という誘いでネルフに入りました。」
「国連からの組織改革が進むとネルフ内部は難しい立場に追い込まれます。
 もともと非公開組織で始めていますが、膨大な予算を使っているのに非公開。
 今の国連内部でも情報公開を求めて反発する国も出ています。
 今回の使徒戦で、作戦部が機能していないのが判明し、これからの作戦次第では技術部にシワ寄せがきます。
 問題が発生した場合は技術部が矢面に立たされる場合もあるでしょう。
 そうなった場合を考慮して技術部長だったリツコ姉さんを国連軍経由で財団所属に変更するんです。」
「財団所属ってことは国連軍所属っという事も含まれているから、何かあった際、技術部ではなく司令部になるわ。」
「でも先輩。 エヴァはネルフの所有では?」
「マヤは知らないでしょうけど、大赤字のエヴァなのよ。
 今回の会議で、所有は国連軍に変えられるわ、実際には財団所有になるでしょうね。
 借金のカタで。」
「財団への借金ですかぁ〜」
「正しくは司令が財団の資産や資材を拝借してネルフやエヴァを作ったのが原因よ。
 借用金だけでも、桁が京を越えているの。 (ハァ〜)」
「京の桁ですか。 (大汗)」
「それも日本の通貨だったら良かったんだけど」
「先輩 ま・さ・か 世界共通通貨で (滝汗)」
「現在までに使い込んだ金額が、国連予算と、どっこいどっこいなんて、実際に計算してみるまで気付かなかったわよ。」

「んで、どうします。 マヤさんも所属異動しますか?」
「します、します。 急いで異動命令書でも何でも出して下さい。」

マヤの返事で、控えていたヒトミが自分の電話で、所属異動が2人になることを伝えていた。
もともと異動予定はリツコとマヤの2人。
準備していた2人の身分証明書である所属カードを2人に手渡した。
手渡されたカードを、まじまじと見ていたマヤが気になる点を見付けて、シンジに質問する。

「シンジ君っで呼んでもイイよね。」
「えぇ 身内はミンナそう呼んでいますから。」

「なんで2枚あるのかと、所属と階級が、国連宙軍・技術開発部と、大尉って?」
「碇財団所属のと、国連宙軍所属のとがあって、それで2枚なんです。
 まあ言い方が悪いとは思いますが、国連宙軍は碇財団の私兵っぽい軍になっています。
 使っている機材などは僕が開発した物で財団から供給されていますし、IFS技術は僕所有になっています。
 相当、道に外れない限りは財団=国連宙軍の関係が続きますので、使う際に2枚を使い分けて下さい。
 国連宙軍でリツコ姉さんは技術少佐の階級になります。
 それで助手であるマヤさんは技術大尉の階級になります。」
「マヤ、それにはネルフが関係するの。
 ネルフと同じ階級にしていると、何かの指示・命令があった時に今までのように言ってきた時、断れないでしょ。
 所属が違うから、何かを頼む場合は、必ず紙にしないと依頼できないし、元同僚という関係できても1つ上の階級だったら言い難いでしょ。」
「そういう事ですか」

「それに、あの髭親父からの命令は突っぱねて結構です。」
「でもネルフ司令は、2将ですよ。」
「リツコ姉さんやマヤさんの直属上司は大将ですから、突っぱねて大丈夫ですよ。」

「直属上司って?」
「僕です。」
「えぇーーー シンジ君が大将。 (驚)」
「予備役前に准将だったんですが、最後の任務が終った後、予備役になった時に少将。
 今日の会議で、現役復帰になったんですが、予備役時代に昇進辞令があったらしくって、今は大将です。」

今度はリツコが聞きたいことをシンジに言う。

「私が承諾したら、やって欲しい事があるって言っていたけど何なの?」
「本当なら僕がやる処なんですが時間がなくなりそうなので。」
「シンジ君のお得意というと、IFSね。」
「そうです。 IFSを軍事利用ではなく民間、それも医療活用して欲しいんです。」
「ひとくちに医療活用といっても幅が広いわよ。」
「まずはIFSの特徴である補助脳と伝達機能、それにエヴァの技術を掛け合わせて。」

そこまでシンジが説明すると、リツコは理解した。

「わかったわ。 身体補助なのね。」
「そうです。 免疫不全や身体未成熟や欠損を補うような医療技術をやって欲しいんです。」
「えぇっ えぇっ 何・なに。」
「つまりマヤの情報能力と、私の生体技術を活用しようという訳ね。」
「そういう事です。」

マヤが理解できていない感じだったので、ある例を思い付いた。
周辺を見てみると、対象となりそうなのはリツコとマヤ。
他はレイとアスカだったので、ソファに寝ているアスカを実験台にすることにした。
ソファの方向からの気配では、寝ているというより隠れて聞き耳を立てている感じ。
その感覚はレイも感じ取っているみたいで、レイを見ると肩をすくめて、「知ぃ〜らない」とポーズしていた。

「アスカ、 起きているんだろ。 ちょっと、こっちに来て。」
「えっ… アスカちゃん、起きてたの。」
「やっぱり、シンジには判っちゃったかぁ。」

バツが悪そうな表情でソファからアスカが起きる。
アスカは国連軍佐官の服装で上着を脱いだ状態で寝ていたみたい。
その服装を見た2人は、それぞれの感想を言っている。

「アスカって佐官なのね。」
「そうよ驚いた。 上着の階級は少佐だけど、今は?」
「アスカの階級は、変わっていないよ。
 アスカとレイは、あの作戦立案はしたけど参加はしてないからね。」
「ざぁ〜ん〜ねん。 シンジだけ上がった訳ね。」
「一応、立案者ということで申請はしているから、1階級ぐらいは上がると思うけど。」

「あっ (手を叩いて…ポン♪) そういえば」

離れた場所で、みんなの会話を聞いていたヒカリが何かを思い出した。
そして、隣の部屋へと行き、服を入れて運ぶ衣装箱を持ってきた。

「みんなが帰ってくる前に、書類袋といっしょに制服が届いていたわ。」

ヒカリが箱を開けて、レイやマユミも手伝ってテーブルの上に広げている。
ヒカリは、上着の名札を見て、各自の服を渡していく。

「えぇ〜と、S・Ikariはシンジ君で、H・Ikariは私で、M・Ikariはマユミ。」
「ヒカリ、私のは?」
「レイは、Rだからぁ〜。 あったあった。 コレね。 R・Ikari」
「ありがとう。」
「あとはアスカだけど、A・Ikariはあぁ〜 イチバン下にあったわ。 はい♪」

新しい階級を付けられた駐留軍の制服が各自2着ずつ。
それぞれが新しくなった階級章を見ている。

「僕が大将かぁ 今までと変わらないと思うけど、なあぁ。」
「ウチの所帯だと、シンジの大将は仕方がないわ。 だって師団長でしょ。
 私のは、あれ? 1階級上がって中佐になっているわ。」
「アスカだけじゃないわ、 私のも中佐になっているわ。」
「レイのも」

「2人とも申請が認められたんだね。 こっちの書類袋の中に辞令があったよ。
 それとヒカリとマユミも認められたから、それぞれ大尉になっているね。」
「いきなり士官なのね。 マユミとヒカリは。」
「仕方がないよ。 佐官と将官の秘書官で申請したから。」

「さて新しい服も届いたし、早速、アスカで実験というか実演… 実演♪」


アスカは嬉々としてシンジの前に立つ。
それを周りで見ている女の子3人は、羨ましそう。
それを見ているリツコとマヤは何が起きるのかと科学者の眼でみている。

「さて、リツコ姉さんやマヤに考えて欲しい技術のもとは、IFSの補助脳や感覚です。」
「実験するにしても、アスカは簡易IFSを使っているでしょ。」

そんな疑問を言ってくる科学者2人に見えるようにアスカが右手の甲を見せる。
アスカの手の甲には、独特パターンであるIFSパターンが浮き出ていた。

「浮き出てくるIFSパターン、 そんなIFSがあったの?」
「現在あるのは常時出ているパターンと簡易グラブを使ったパターンの2種類。
 違いは判るでしょうが、アスカが見せているのは、公開していないナノマシンを使ったIFSです。」
「コレって使いたい時に出すことができるIFSなの。」

「それを実装しているのはアスカだけ?」
「いいえ ここにいる3人だけですよ。」
「3人? (疑問)」
「僕とレイとアスカの3人です。」
「私たちに使えないの。」
「もともと僕だけだったんですが、特殊な因子が原因だったみたいで2人も使えるようになりました。」
「他の人でも使えるようになるの?」
「特殊タイプなので増やすツモリはありません。 結構、危険ですし。」
「そうなの… 仕方が無いわね。」

「さて実験ですが、身体のある感覚をあげると、どうなるかを見せます。」

シンジがアスカのパターンが出ている手を握ると、静かに眼を瞑る。
少しの間、瞑想のように少し俯き加減で握ったままだった。
準備ができたのか、アスカの後ろへと回ると徐に人差し指で、背中を撫でた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ (ペタン) 」

シンジが指1本で背中を撫でただけなのに、アスカは嬉しそうな声を出して座り込む。
良く見ると声は絞り出した感じで、息使いが荒い。
座り込んで両手で前屈みに倒れそうになるのを支えている。
顔は、うっすらと赤みが浮かんでおり、科学者であり女性でもある2人は、この表情が判る。

(( 軽く、いっちゃたのね。 人差し指1本で、こんな状態。 ))

「リツコ姉さん どの感覚を敏感にしたのか判りますね。」
「えぇ (これは癖になるわね)」

「シンジぃ〜ぃ 実験は終ったんでしょ〜。 (ハァハァ) 」
「今日は、みんなが頑張ってくれたからね。 ご褒美♪ (笑顔) 」
「早く戻してね♪ ねぇ♪」

アスカの傍に、しゃがみ込んで、笑顔のままアチコチを撫でる。
その度に、嬉しそうなアスカの声が奏でられる。
数回で、声が奏でられなくなり、シンジはアスカを触るのを辞めた。
床に伸びたアスカは軽く痙攣している。




To be continued...
(2007.11.03 初版)
(2009.07.26 改訂一版)


(あとがき)

さて第9話です。ちょうど2週間が経過してしまいました。話のスジは大体決まっていたのですが、18禁の表現で線引きがドコなのか? 知らなかったんで す。仕方が無いので差障りのない程度で書くようにします。さて、IFSという言葉がありますが、ナデシコのアレです。まあ都合が良かったんでアチコチから 利用しています。エアーウルフ・マスロス・ナデシコを使いました。今度はメガゾーン23とサイバーフォーミュラーも入れるツモリです。



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