「本当にこの場所でいいのかい?」

目を覆いたくなるほどの青空の下で、3人の少年、少女が途方に暮れていた。

「あっているはずだわ。おじいちゃんからそう言われたもの」

青い髪の少女は、文庫本であろうか?それを右手に抱え、読みながら答える。

「もう、めんどいから、時空すっとばして、直接、行っちゃおうよ〜」

黒髪の少年が、片手にジュース、片手にタバコという組み合わせで提案する。

「それは、駄目だし、無理だと思うよ。この辺は時空をワザと歪めているから、
そう簡単には出口を発見できなくなっているのさ」

「へぇ〜そうなんだ。」

よほど、この少年に感心されたのが、嬉しかったのか、喋り捲る。

「そうなんだよ。シンジ君。国連認定組織には大抵、このガードが施されてい
て、どんな侵入者も入らせないようになっているんだ。

もちろん、例外もあるんだけどね。例えば、アメリカの誇るF.B.Iは、SS級が
1人、S級を4人も抱えているから、

そんな、処置をしていないんだ。自信のあらわれなんだろうけど、全然っ
て・・・シンジ君何をしているんだい?」

屈伸運動を繰り返し、青い少女の持つ、バックの中から、サングラスを取り出そ
うとしているシンジ。

「えっ、やってみようとしてるんだけど、駄目?」

「も、もちろん、駄目さ!もしかしたら、帰ってこれなくなるんだよ。そんなこ
とって!ってお〜い、シンジ君〜」

カヲルが言い終わるのを待たずにシンジの姿は見えなくなる。

「行ってしまったわね。」

「うん。行ってしまったね」

呆然と立ち尽くすカヲルと、そんな、焦った様子のない、レイ。

「ウウウウウ〜」

しばらくして、街には非常警報が鳴り響き、焦ったカヲルは、レイの手をひき、
慌ててNERVへと向かった。










それぞれの天気

第二話 〜散歩&恐怖〜

presented by hot−snow様











「入ったはいいけど、ここどこだ?」

数年前の記憶を頼りに、発令所を目指したはずが、見覚えがないところへ出てし
まった。

「やっぱ、難しかったな。今更、引き返せないし、とりあえず歩こうっと♪」

意気揚々と歩き出す。その様子を捕らえているのは、監視カメラだけ。

ここで、不幸だったのは、監視カメラの向こうの人物が、通常いるはずの人物で
はなかったことと、司令、副指令が外出していたこと。

リツコのお留守番を頼まれた人物。暇ですることがなかった人物。

彼女は一目見て、シンジだということに気づいたが、ない頭脳を振り絞り、一つ
の間違った結論をはじき出した。

自分の駒に出来ないのなら、自分の地位を脅かすのならば、侵入者として、処分
してしまおう、と。

「チルドレンB班に連絡!侵入者よ!処理しなさい!」

急いで、非常警報ボタンを押す!

「ウウウウウ〜」

NERV内部、いや、街中にでかい音が響き渡り、日常は終わりを告げた。






「なんか、うるさいな〜。どっかで聞いたことがある音なんだけど、思い出せな
いや」

よく分からない道に悪戦苦闘しながらも、着実に発令所に近づいている。その
時、

「そこの人、止まって!!」

いきなり、後ろから、声がした。何事かと思い、後ろを振り向く。そこには、
昔、いざこざがあった3人組がたっていた。

「きゃっ。いきなり、振り向かないでよ」

歩けば、止まれといわれ、振り向けば、振り向くなといわれる。どうでも、よく
なったシンジは再び、歩き出す。

「おい!止まれって言ってんだろ!!攻撃するぞ!」

命令を無視した、シンジに血の気の多い男が、警告を発する。

「あ〜どうぞ」

歩いたまま、かったるそうに答えた。

「てめえ!!!!燃え尽きろ!!」

「ムサシ!!!やめなさい」

少女が慌てて止めるが、発動した力は、止まらず、シンジに向かって、刃上の炎
が襲い掛かる。しかし、

「僕は君を否定するよ。」

シンジを焼き尽くすかに思われた炎は、周りに現れた、赤いベールにあたり、砕
け散った。

「なっ」

「嘘・・・」

少年と少女は目の前の光景に、驚きを隠せない。

そんな事、お構いなしのシンジは目の前の、明らかに人がよさそうな少女に尋ね
る。

「あのさ〜、聞きたいんだけど、発令所ってどこかな?」

「あっ、それなら、そこを右に曲がってすぐだけど」

まだ、戻りきっていないのか、侵入者に向かって、バカ正直に答える少女。

「バカ!!マナッ!」

「ありがと。さぁ〜て、向かいますか。」

再び、前を向き、歩き出そうとする。

「ちょっと、それは無理な相談だね。これが。」

しかし、漫才をやっている横で、じっとシンジを見ていた男が、いつの間にか、
目の前に移動してきていた。

「なんで?別に君達には迷惑はかからないでしょ?」

「そんなことが理由じゃないのさ。君は碇 シンジだね?」

「えっ・・・」

黙って会話を聞いていたマナとムサシは、驚きのあまり、声をあげた。

「うん。そうだよ♪よく知ってるね。」

「君が来るということが決まって、僕らはA班からB班に異動させられたんだ。で
も、君を殺せばまた戻れる」

それまでの、穏やかな表情が、嘘のように歪み、狂気の表情へと変わる。

「ケイタ!!何をいっているの?!」

「うるさい!!マナは黙れ!ミサトさんが言ってくれたんだ!!!」

少女を一喝する。それと、同時に殺気が周りを満たし始めた。

「さあ、僕らのために死んでおくれ!!!!!」

360度如何なる角度からも急所を目指し、青白い、球体が飛んでくる。

「問答無用ですか・・・」

だが、それらは先程と同じように、シンジの周りで砕けちった。

「やっぱり、そのくらいじゃ、無理か〜。」

「うん。無理です」

緊張感のない返事。

「でも・・・君には死んでもらうよ」

ニタ〜と笑い、ぶつぶつ言い始めるケイタ・・・

「どうやっても、行かせてくれないんだね」

「当たり前だろ」

二人とも見つめ合い、視線を交換する。

「そんなに、やりあいたのなら、やりあってもいいよ♪でも〜」

これ以上、話し合うことに意味を感じなかったのか、シンジはケイタに問いかけ
た。

「退屈させないでね♪」

「もちろんさ」

その瞬間、二人の中間点で大きな爆発が起きた。












「退屈させるなって、言ったのにな〜」

落ちていたサングラスを拾い、かったるそうに、歩きだす。

目の前に見えるのは、ぼろぼろになった、少年2人と、青白いベールに包まれ、
体を震わせる少女だけ。

少女の脇を通り過ぎる。久しぶりの再会は、とんだことになってしまった。

「あ〜あ。」

そんな言葉が聞こえたのだろうか?少女は顔を上げると、一言だけ、口を開い
た。

「あなたは本当に、あの優しかったシンジ君なの?」

シンジにはもちろん聞こえている。少し、体を震わせたから。しかし、何も答え
を発しないまま、歩き続ける。

その様子に諦め、マナが下を向こうとしたとき、廊下の向こうから、

「さてね?そんなこと、自分で考えてよ。マナは僕をしっているだろう?」

答えが返ってきた。でも、その言葉にマナは何も反応することが出来ない。

事実、少年のことを知っていたから、そして、分からなかったから。

唇をかみ締める。人間一人、判断できない。そんな、自分に。

少女は再び、うつむいた・・・





廊下を曲がったところで、タバコを取り出し、火をつけると、自分の限界まで、
深く吸い込む。

くらくらっとして、程よく気持ちいい状態で、目を閉じると、少女の恐怖に満ち
た目が自分を見つめていた。

「僕は化け物なんかじゃないよ。」

そう強がりながらも、あの目のことは忘れられない。

「カヲル君とレイと一緒にいれば、よかった」

目の前に立ち込める煙の中、シンジは1人でそう呟いた。

そして、彼もまたゆっくりとうつむいた。







その様子を監視カメラで眺める、ミサトとチルドレンA班。

「弱点みっけ。」

沈黙に満たされた空間に、寂しく響いたミサトの声。

そして、彼女の口元は卑しく笑みを浮かべていた。







To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

hot−snow様より「それぞれの天気」の第二話を頂きました。
シンジ君、豪胆な性格のようです。しかも強い。いいですねえ♪
ここのミサトも最低のクズのようですね。これからが楽しみです。
なんかケイタが腐っているような・・・。ミサトに感化されたのでしょうか(笑)。
最後にミサトが呟いたセリフって、気になりますねえ。
弱点って一体何でしょうか。やっぱりマナに関係があるのかな?まさかこのSS、LMSとか!?
くう〜〜、無性に続きが読みたいです!
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
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