「カヲル。スピードが落ちてきたわ。それに、異臭がする」

NERV近くの、とある場所。青髪の少女を背中に背負い、汗だらだらで疾走する少年の姿があった。

「・・そ・・そんな事、言われ・・・て・・も・・僕は・・・もう、無理み・・たいさ・・・。」

足がよろけ、フラフラしている。

「だらしないわね。あなたはタフガイとは対極の位置に存在する人物だわ」

しかし、レイは、右手に文庫本を抱えながら、カヲルに辛辣の言葉を叩き込む。

「パチン」

それには、さすがのカヲルもカチンときたのか、無言でレイの足を叩いた。

「ゴスッ」

負けじと、レイも文庫本の角を、カヲルの頭に向かって、振り落とす。

やられたら、やり返す。低レベルな喧嘩を繰り広げる二人。

頭から、赤い血を噴出しながら、応戦しようとするカヲルと、背中から冷静にカ
ウンターを狙うレイ。

互いに、タイミングを計る。

しばらく牽制が続き、カヲルの手が動いた。それに反応し、レイも迎え撃つ。しかし、お互いに当たろうかという瞬間、

同時に動きが止まった。

そして、レイは慌てたように、片手に持っていた文庫本を道の傍らに投げ捨てると、カヲルの背中から飛び降りる。

「レイ、聞こえたかい?」

「ええ。シンジが悲しんでるわ」

二人とも、先程の、倍以上のスピードで走り出す。

すると、今までは点にしか見えなかった、NERV玄関があっという間に近づく。

その様子に慌しくなる、警備員。どこからか、10人以上の黒服が現れ、いつでも、発砲できる体勢をとる。

そんなこと、目に入っていないように、今まで以上のスピードで突っ込んでくる二人。

「パン!パン!」

威嚇射撃が行われる。

その音に今まで、人がいることに気づいてなかったレイがそちらの方に初めて目が行ったかと思うと、

一言だけ、言葉を発した。

「あなたたち、邪魔」

耳をつんざくような、爆発音が当たり一面にこだまし、人だったものが、あたり一面に散らばる。

そして、爆発で舞い上がった鉄くずや、血煙が晴れた時には、二人の姿はそこには存在していなかった。










それぞれの天気

第三話 〜それぞれのよろこびの形〜

presented by hot−snow様











「はぁ〜、よく考えれば、ここってあまりいい思い出ないんだよな〜。呼ばれたのに、なぜか、攻撃されるしさ〜

いっそのこと、全部、ぶち壊しちゃおうかな?」

発令所まで、もう少しというところで、かなり危ないことを口走っている。

「でもな〜関係ない人を、殺せるほど、神経図太くもないしな〜。レイみたいな、神経回路だったら、どんなに、楽なんだろう?

・・・今の聞こえてないよな?」

慌てて、周りを確認する。いないことが信じられないのか、しばらくの間、周りをきょろきょろしていたが、いないことが分かると、

再び、歩き出した。

「ふぅ〜よかった。んっ?発令所ってあれかな?」

目の前に見えるでっかい扉。防犯対策なのか、そう簡単にはあきそうにない。

「ふむふむ。壊してもいいんだけど、修理費、請求されてもやだしな〜」

えらい現実的なところで悩む。さっきまでの落ち込みようが嘘みたいである。

「まっ、いいや。壊してしまおう。」

どうにかなるさ♪というオーラがついに出始め、右手に赤い剣が現れた。

「さくっと行こう。」

その合言葉と同時にきざまれ、ミリ単位まで分解される。

分解された無数の扉達は、舞い上がり、向こう側が見えなくなった。

「ここまで、やると、なんか爽快でいいよね♪うん、いいよ」

視界ゼロの中、芸術に酔うシンジ。

そうしている間にも、空間は落ち着きを見せ始め、向こう側が見えてきた。

そこに見えたのは、3年ぶりの発令所の姿でも、なければ、ドアを壊され、怒り狂う、リツコの姿でもなかった。

ただ、こちらに銃口を向け、微笑む女性。

「はぁ〜い、シンちゃん。おっひさ〜。突然で悪いんだけど、死んでくれる?」

発令所に銃声が響き渡った。

















「ねえ、カヲル。ここ通るのもう三度目よ」

通るたびに人数が増えていく、黒服たちに、ため息をつきながら、レイは前を歩く、少年に向かって、話しかけた。

「いや〜、3年前とはだいぶ構造が変わったみたいで、ここがどこだか、分からないよ。リリンは全くもって、意味難解なことをするね〜」

散々、俺について来いとばかしに、前を走ってたカヲルはお手上げだ〜とばかしに、手を上げた。

「あなた、迷ってたのね。ちなみに、ここは3年前と全く変わっていないわ。ついてらっしゃい、迷子の坊や。」

「はぁ〜い」

カヲルがかわいらしく、返事をし、あたりに静寂が漂う。

「・・・まずい・・・かわいらしくないわ・・・」

レイがぼそっと呟き、カヲルは100のダメージを受けた。















「危ないじゃないですか?ミサトさん。」

ミサトの首元に、どこからか取り出したか、分からない、ナイフをつきつけ、笑顔で話しかける。

「くっ!」

「ミサトさん!」「ミサト」

悔しそうに顔を歪めるミサト。そして、その様子に、声を荒げる少年、少女達。

「あれっ?トウジとアスカじゃないか?」

いたの?といった感じでシンジも声を出した。

「じゃかましい!その手、はなさんかい!!!」

そう言うと同時に、一瞬で、距離をつめるトウジ。どうやら、筋力増強系なようだ。

トウジから繰り出されたパンチは、慌ててバックステップを踏み、よけるシンジの鼻先を掠めた。

「あっぶな〜。」

「死になさい!!!」

よけた矢先、アスカの炎にも襲われる。

これは、避ける事が無理だと判断したシンジは、ベールで身を包んだ。

はじかれる、炎。それを眺めながら、シンジはミサトの様子がおかしいのに、気づいていた。

攻撃が効いていないのに、慌てる様子がない。しかも、単純な攻撃しか、してこない、アスカとトウジ。

どこからか、能力者の気配も漂っている。

何か、あるのか?それに、気をとられ、ガードの力をゆるめた瞬間、それは起きた。

「中和!!!」

背後から、いきなりヒカリが現れる。唱えられたものは、”中和”

本来のガードの能力なら、問題はなかっただろう。しかし、見慣れた人、大したことのない攻撃、不用意な思慮・・・

これらが、重なり、シンジのガードは一気に中和され、丸裸にされるシンジ。

「今よ!最大に攻撃!!!!!」

ミサトから、指示が出る。

それを、待っていたのか、物陰に隠れていた、ケンスケ、マユミにアスカを加えた3人が力を振り絞り、シンジへと攻撃が発せられた。

しかし、シンジは特に焦った様子もなく、向かってくる炎、電気、風を見ていた。

「ドシャァァァァッァ〜ン」

それらはシンジへと、当たり、大規模な爆発となる。

当たった瞬間、ヒカリが、シンジを中心に青白いベールで包み、被害を最小限に抑えた。

それを見届け、ミサトとチルドレン達は笑顔を受かべ、勝利を確信する。

「よっしゃぁぁぁ〜!勝ったで〜!!!」

トウジが雄たけびをあげる。

「何いってんのよ!筋肉バカは!バカシンジの1人くらい私達にかかれば、楽勝に決まってるでしょ。」

そう言いながらも、ものすごい笑顔を受かべるアスカ。

「みんなのおかげで化け物を掃除できたわ。あの様子じゃ、塵も残っていないでしょ。後始末は保安部に任せるとして、

さあ、今日はおごりよ!!食堂へ行きましょう!!!」

「おぉぉ〜」「ハイ」

手を上げ、吼える、トウジと、そんなトウジを、恥ずかしいという感じを出しながらも、嬉しそうなケンスケ。

「ヒカリやマユミもよくやったわ」とか言いながら、みんなを褒めあう女性人。

そんな誰かの犠牲の上で成り立つ幸せそうな光景・・・

その時、それをぶち壊す、大音量が響き渡った。

「ドゥゥゥゥ〜ン」

ミサトたちの横を掠めた、赤い球体は、みんなが出て行こうかとしていた扉に直撃し、破壊する。

慌てて、後ろを振り向くミサト一行。換気ダストに吸い込まれ、薄くなった煙。

そこにいたのは、カヲルとレイだった。

「君達は本当に、好意に値しないね。僕らのシンジ君を殺そうとして、喜んでいるんだから」

そこに浮かんでいるのはいつもの優しく微笑みではなく、血管を浮かび上がらせ、血走った目。

「あなた達は敵ね。抹殺するわ」

氷のような無表情で、ミサトたちを睨みつけるレイ。

「そんなに人を殺したことが嬉しいかい?」

底冷えするような声が辺りに響き、二人の影の部分から、現れたのは、殺したはずのシンジ。そして・・・

「僕にも教えてよ。その喜びをさ♪」

それと、同時に刃上の炎がシンジから繰り出された。







To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

hot−snow様より「それぞれの天気」の第三話を頂きました。
ここのミサトは完全に有害ですな。読んでいて腹が立ちましたよ。
独断で保身のためにシンジを殺そうとしているし・・・、ネルフの上層部にバレたときの言い訳が楽しみですな。
しかし、他の少年少女たちの変わり様・・・凄いですな。サード・インパクトで性格が変わったのでしょうか?
ここまでくると、ある意味爽快です。
OKです。このまま彼らも酷い目に遭わせちゃいましょう!いや是非ともお願いします。
レイとカヲル以外は、すべてシンジの敵っぽいです。今回出てこなかったマナはどっちなのでしょう?
レイとカヲル、いい味出してます。この性格は、管理人的には好感度アップです。
しかし、面白い展開です。思わず引き込まれます。
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
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