「先輩〜早く行かないと、やばいですよぉ〜」

非常警報が、鳴らされてもう20分が過ぎていた。

司令、副指令がいない場合の非常時では、ミサトが司令の代行を務める事が決まっているとはいえ、

部長職のものは、発令所に行かなくてはならない決まりである。

なのに、リツコとマヤは、人気のない廊下で立ち往生していた。原因は・・・

「私達は、お互いに出逢うために生まれてきたのね。運命の人が、あなたなんて、やっぱり、恋愛ってロジックじゃないわ」

オス猫を胸に抱え上げ、ほっぺを赤く染めながら、リツコはうっとりと言った。

「そんな事、今週に入って、もう3回目じゃないですか・・・。」

ため息をつきながら、答えるマヤ。

どうやら、日常茶飯事のことらしい。

「あなたは、ノルウェーフォレストジャンキャットね・・・ふふっ、その野性味溢れる目、気に入ったわ。今夜、私はあなたのものよ」

一目、見ただけで、種類も分かるらしい。ついには、危ない事まで言い出す。

その様子に、何やら、冷や汗が流れ出したマヤは、一つのことを決意する。

「ごめんなさい。先輩」

マヤは、一言、謝ると、危険と書かれたスタンガンをリツコへと、くらわせ、

引きずるようにして、走り出した。










それぞれの天気

第四話

presented by hot−snow様











「はぁはぁはぁ・・・」

左右を見回しながら、出てくる人影・・・

「もう、大丈夫だよな?いくらなんでも・・・」

ふざけんじゃねえよ!!と心の中で言いながら、半壊した発令所を見る。

そこにいるのは、うずくまり、時おり、うめき声をあげるチルドレン達。

「ちっ!!一体、なんだっていうんだよ!!」

思わず、悪態をつく。

「ちっくしょ〜!!全く歯がたたねえじゃねえか!!ミサトさんにはめられたな・・・」

落ち着いてきたのか、床に腰を下ろし、呟く。

思い出されるのは、逃げようとした者たちに、叱咤した葛城ミサトの姿。

「何、逃げようとしてんのよ!!給料払ってんだから、ちゃんと戦いなさい!!あれは人類の敵よ!!!」

あいつはどこにいったんだろう?

俺達を戦わせておいて、どこに行ってしまったんだろうか?

考えても思いつかない・・・でも、逃げたんだろうな?

状況をつなぐとそんな結論がしっくりくる。

「シンジが人類の敵か〜・・・・・いつから、そんなことになったのかな?」

言われた言葉・・・でも、あの時は心から、そう思った。

でも、今は・・・

「間違ってるのは俺達だな?NERVなんかの言うことを聞いて、どうするんだよ・・・」

一つのうずくまった人影に目線をむける。

「なあ?そうだろ?トウジ・・・」

その目は悲しみに彩られていた。


















「せんぱぁ〜い、怒らないでくださいよ〜」

廊下を走るふたつの人影。

「まさか、あなたが人にスタンガンを食らわす人物だとは思わなかったわ」

「そんな〜、それは、先輩がぁ〜」

「しっ!!!!黙って!!!」

話すマヤの口を押さえつける。もごもごと動かす口の息がこそばゆい。

さっきの仕返しに、殴ってやろうかと考えたが、

こくこくと態度で示すマヤ。

ちっ!!!っという舌打ちをかまし、耳をすます。

「葛城さん、どこまで逃げるんですか?あなたが仕掛けた戦争でしょ!!!」

「誰か助けて〜」

聞いてるものが情けなくなるような、声をあげ逃げる。

全く、あなたは好意に値しないよ。

手を振り上げ、動きをとめるために、槍状の氷を出現させた。

そして、逃げるミサトに放つ。

その槍は目の前を走るミサトの足へと突き刺さった。

「ぐげっ・・・」

蛙がつぶされるような声をあげ、床に転げる。

「あぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!痛いぃぃぃいっぃぃぃ」

足から吹き出る血でパニック状態に陥る。

「あははははっは。愉快だね〜」

そんなミサトを楽しげに見るカヲル。

これなら、あと一発はいけるな?そうかんがえていた時、

「ミサト!!!」

白衣の金髪が飛び込んできた。

邪魔だな?と消そうと考えるが、こちらをキッと睨みつけるその顔を見て、やめる。

「おやおや、これはご高名な赤城博士じゃないですか?またお会いできて非常に光栄ですよ。」

「なんですって!!!ミサトになんて事するのよ!!!」

話にならないな〜みたいな顔をし、頭を掻く。

「それについては、後でMAGIでも見て、調べてくださいよ。僕らの正当防衛ですから。」

「これのどこが正当防衛なのよ」

ぎゃ〜ぎゃ〜叫ぶ、ミサトを抱えながら、叫ぶ。

その目はカヲルが非があると言っている。しかし、カヲルはその目をあざけ笑いながら、

「その女はシンジ君を不法侵入者として、処分しようとしたんですよ。

無能牛のくせしてね!!!これじゃあ、足りないよな〜、」

「ぎゃーーーー!!!」

「ミサトっ!!!!」

ボンっという音がして、もう片方の足の肉が吹き飛んだ。

「ああああぁっぁっぁ・・・・」

目の焦点が合わなくなってきて、声もなくなっていく。

「おやっ?気を失うことは許しませんよ。」

そう言うやいなや、足のつめも吹き飛んだ。

「っ!!!!!!!!!!!」

痛みのあまり、声がでない。

「やめなさい!!!!うつわよ」

断末魔の声をあげ、痙攣しながらも、気を失えないその姿は拷問を超えていた。

しかし、それを見るカヲルの目はどこまでも楽しそうだった。

「僕を撃つんですか?その指でですか?」

「えっ?」

自分の手を見る。

そこには、指が存在していなく、足元に全部、落ちていた。

「きゃ〜〜!!!!」

認識した途端、強烈な痛みがその身を襲う。

「あははははは。赤木博士、どうしたんですか?」

「私の指が!!!私の指ぃぃっぃぃいぃー」

がたがた震わせて、転げまわる。

「はいっ?あなたはどこにも怪我なんてしてませんよ」

「何いってんのよ!!!この手を・・・嘘っ!!!」

改めて見てみると、いつもの自分の手に戻っている。そして、痛みも消えていた。

足元のミサトも最初の攻撃によっての負傷しかしていない。

「どういうこと・・・」

もしかして、催眠なの?しかし、スイッチがどこだか、分からないうえに、

分かったときには、死んでそうな気もする。

頭がパニックでおかしくなりそうだ・・・

「まあ、自分で考えてくださいよ。生きてただけでも感謝して欲しいですね。

これが、シンジ君かレイだったら、これよりも、ひどい精神攻撃を与えられて、死ぬんですから」

いつものさわやかな笑みを浮かべ、淡々と話す。

「ええ。ありがと。シンジ君はそんなことしないと思うけどね・・・」

疲れているのだろう。視界が暗くなっていく。

「はっ?あなたはもっと知ったほうがいい。自分自身の罪をね」

「どお・・いうこ・・と?」

倒れそうな自分にかつをいれ、声を絞り出す。



「シンジ君は壊されたんだ。あなた達にね」



意識が途切れる最後に見えたのは、憎しみに彩られたカヲルの顔だった。












「ぶしゃ〜」

人間だったものが、内側から破壊され、血が吹き飛ぶ。

「あははははっは」

返り血をあび、真っ赤に染まった体を前へ前へ、進める少年。

そんな少年を心配そうに見つめる空色の髪をもつ少女。

「シンジ・・・・」

「んっ?なんだい、レイ?」

こちらに振り向き、

血に染まっている手を頬に当て、微笑む。

その笑顔はレイに天使を想像させた。

「なんでもない」

血で目立たないが、頬を赤く紅潮させるレイ。

「そう、よかった」

再び、前を向き、歩き始める。










前へ、前へ、振り向くことなく、前へ、前へ。

後で後悔するために・・・・










To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

hot−snow様より「それぞれの天気」の第四話を頂きました。
早速ミサトが痛い目に遭ってますねぇ〜。グッドです。いい気味です。幻覚なのがチト残念ですが・・・。
この女、自分がしでかしたこと(シンジ抹殺未遂)が上層部にバレたとき、どんな言い訳をしてくれるのでしょうか。
MAGIにログが残っているでしょうし、言い逃れは難しいでしょう。ミサトの今後が楽しみです。
シンジ君、なんか悲壮感を漂わせていますねぇ。このまま修羅道を突き進むのでしょうか。
面白いので続きが読みたいです。
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
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