「じゃあ、対抗戦という形でもよろしいのですか?見た感じ、そちらには二人しかおりませんが?」

「ええ。結構です。そちらの実力を見たいだけですので」

日本とアメリカの作戦部長同士が、やや緊張した顔つきで言葉を交わす。

「じゃあ。分かりました。じゃあ、チルドレン達に伝えてきますから、試合開始は10分後ってことでよろしいですか?」

「はい。じゃあ、審判はそちらが出してください」

「分かりました」

それだけ言い残すと、別々の方面に歩き出し、それぞれのチルドレン達に二言、三言、声をかける。

「キャメル、アギー、これから予定通り戦ってもらいけど、いいわね?」

「はぁ〜い♪」

「・・・わかりましたわ」

「いい?アギー。煽って、煽って、煽りまくりなさい!」

「おう♪」

かわいらしく返事するアギー。なごやかな雰囲気だ。その一方、

「アンタ達、これは戦争よ!!絶対に負けるんじゃないわよ!!!チャンスがあったらぶっ殺しなさい!!!」

「了解!!」

「任しとき!!」

(あんな資料、アテになるものですか。世界一は私よ)

言葉の裏にはこんな言葉が隠されているのだが、チルドレン達には分かるはずもない。

もちろん、チルドレン達もあの資料は見ており、赤毛猿とバカジャージは相当、不満を覚えていた。

「あの資料じゃ、あのキャメルとかいう女、実績能力は世界2位なんでしょ?私に戦わして!!!」

「ええ。いいわよ。その代わり絶対に殺してくるのよ」

「負けたら承知せんで!!惣流!!」

その様子を冷めた眼で見つめる他のチルドレン達。

「ラジャ〜」

アスカは意気揚々と訓練室の真ん中へ足を進める。

しかし、出てきたのはキャメルではなく、アギーのほうだった。

「なんで、餓鬼が出てくるのよ!!!そっちの偉そうにしてる女出しなさいよ」

「こわぁ〜い。」

アスカの悪態に笑顔で切り返すアギー。

見た目は小学生高学年といったところであろうか?

しかし、このやり取りだけでは、逆の立場がふさわしい。

「ふざけるんじゃないわよ。私はあんたみたいな餓鬼を相手するほど、暇じゃないの!!」

尚も騒ぎ立てるアスカ。

「くすくす」

そんな、アスカを見て、なぜか笑うアギー。

「あはははははは。もう、我慢できないよー。駄目、おかしい」

最初は抑えた笑いだったが、我慢できなくなってきたのか、腹を抱えて大笑いを始める。

「何、笑ってるのよ。」

おもしろくないのだろう。ムッとした様子でアギーに聞くアスカ。

そんな、アスカをアギーはまじまじと見つめ、

「落ちこぼれチルドレンが、偉そうだなって思ったら、もう我慢できなくって。えへっ♪ごめんね?」

「殺す!!!」

アスカから炎が繰り出され、開戦の合図が鳴り響いた。










それぞれの天気

第九話 〜召還〜

presented by hot−snow様











「キャメル遅〜〜〜い」

碇 シンジに連れられ、NERVに到着すると、もう、既に作戦部長のケリーは到着していた。

「あっ、ごめんね。アギー」

そういって、頭を撫でてやると、どこからか「ぐるぐる〜」という音が聞こえてくる。

「ところで、顔色が冴えないな。キャメル。何かあったか?」

「・・・碇 シンジにあいました」

「何っ?!あの死神にか!!」

「・・・ぐるぐる」

場に緊張が走る。その中でも、アギーはキャメルの膝の上に丸くなったままだが・・・

「はい。私の攻撃が通用しませんでした。一体、何がどうなっているのか?分かりません。」

「それは、無効化されたといっているのか?」

「違います。確かに感触はあったんです。目の前で粉々になりましたし、でも、なぜか気がつくと目の前で笑っているんです。もう、恐くて・・・」

あの後、恐怖のあまり、5回ほど、同じことをやったのだが、結果は変わらず、微笑むシンジが、いるだけ。

最後の方なんか、苦手意識さえついてしまっていた。

「世界に6人しかいないSSクラスのお前が通用しないなんて、噂以上の化け物だな・・・。一度でいいから、見てみたいものだ。」

負け知らずのキャメルの落ち込みように、作戦部長として、興味が増していく。

「私はもう嫌です。戦いたくありません。こんなんじゃ、管理者失格でしょうけど、苦手なものは苦手です」

いつもの毅然とした態度はどっかに行き、膝をついたまま床に滑り落ちる。

ケリーとアギーの前でしか見せない態度だ。

「キャメルちゃん、どうしたの?」

そんな様子に心配になったのか、声をかけてくるアギー。

「いいえ、なんでもないのよ。だから、心配しないでアギー」

愛しそうに頬を撫でながら、優しく語り掛けるキャメル。

「そんなことないもん。絶対、変だよ!その死神?とか言う人に、ひどいことされたんでしょ?!」

実際、したのはキャメルのほうだが、この少女にはあまり関係ないのか?

「ねえ?ケリー。私、そいつと戦いたい!」

「そうか。私も死神の戦いが見たいと思っていたんだ。気が合うな、アギー」

話がいつの間にか組みあがっていく。

「死神も規定外とはいえ、日本のチルドレンだ。対抗試合を提案して、・・・・・・・・・」

1人の世界に入り、ブツブツ言い出すケリー。

「だっ、駄目よ!!そんな危ないこと絶対しちゃだめ!!アギーお願いだからやめて?」

急いで止めようとするキャメルだが、

「やだも〜ん。」

もう倒して、キャメルにほめられる所まで、想像しているのだろうか?満面の笑みで答える。

「ケリーも何か言ってください。」

「もしかしたら、赤瞳の死神とマジシャンカヲルにも、会えるかもしれないぞ?・・・・・・・・・」

まだブツブツ言っている。なかなか帰ってこない。

「もぉ〜。私は知りませんからね!!」

頬を膨らませ、拗ねるキャメル。

「お嬢様・・・・」

そして、その斜め前方では、

そんなキャメルを遠くから撮影する黒服のおじいさんの姿があった・・・










「そんなんはいいから、約束守ってよ!!」

「ああ。問題ない。」

「本当に分かってるの?」

「ああ。任せておけ(ニヤリ)」

ここは、司令室。でっかいモニターに訓練室の模様が写されているが、誰も見ていない。

ここの長であるはずの、ゲンドウがお盆をもって、ケーキと紅茶を運び、冬月はそんなゲンドウを呆れた様子で見ていた。

「ふ〜。迎えに行く代わりにゴルバチョフ村は守ってくれるっていったんだからね。いいよね?」

「ああ。」

生返事なのか、真剣に答えているのか分からないが、お盆に悪戦苦闘してることだけはわかるゲンドウ。

「私がやろうか?」

「いらん!シンジへの接待は私の仕事だ!」

冬月の助けを頑なに拒否し、なんとか、テーブルまで運ぶのに成功する。

「なんか、父さんってキャラ変わったよね?なんか、要望でもあるの?」

一息ついていたゲンドウに声がかけられる。

「ああ。パパと呼んで欲しい。・・・ついでに、ユイをサルベージしてほしい」

一瞬、ユイのことを忘れていたゲンドウだったが、冬月の殺意に満ちた目になんとか思い出す。

「ああ。そういえばだね。前者はともかく、後者はできるよ?」

「後者はいいから、なんとか前、ムグッ!!!」

「ホントかね?!」

何かをいいかけたゲンドウの口を塞ぎ、興奮気味に話す冬月。

「うん。そのくらい早くいってくれればよかったのに♪」

「いやっ、すまない。いつごろできるかね?」

「むごごむごごご」

必死に何かを伝えるゲンドウだが、口を塞がれているため、うまく言葉にならない。

「う〜んと、明日でもいい?」

「もちろんだとも!!何か、要望はあるかね?」

「特にないな〜。ところで、アレはいいんですか?」

「アレとは?」

冬月とゲンドウがシンジの指が指すほうへ眼を向ける。

そこには、訓練室の映像が映っており、

アスカとトウジが積み重ねられて、その上に立ったアギーが、

こちらに向けて、あっかんべーをしていた。










「ねえ?本当にこんなんでいいの?」

二人の上に立ったアギーだが、いくら挑発しても、死神がくる雰囲気すらない。

「う〜ん、作戦間違えたかな?」

「だから、言ったじゃありませんか。これだから、彼氏にふられるんですよ。」

困ったように鼻をポリポリ掻く、ケリーにキャメルから、辛辣な言葉がかけられる。

「そんなこと言わなくたっていいのにな〜」

さすがアメリカ。ほのぼのとしてる。

「もう、これからどうすればいいの?!あいつらもやっつけちゃっていいの?」

思い通りの展開にならないことにイライラしてきたのか、ほっとかれたことにイライラしたのかは分からないが、残りのチルドレンを指差すアギー。

「ヒッ!」

その様子に、恐怖の声をあげるマユミ。

「あははは。そんなに、恐がらなくていいよ♪残ったお姉ちゃん達や、お兄ちゃんはいい人そうだね。」

微笑を浮かべて、話しかけるアギー。

「・・・・」

そんなアギーをぼ〜と眺めるチルドレン達。

「まあ、どーでもイイ人って意味でもあるんだけどさー。殺されたくなかったら、死神?っていう人出してよ!」

「死神!?そんな人知らないわよ。もう、いいでしょ?帰ってよ」

半ば半狂乱になって、怒鳴るヒカリ。

「ふ〜ん、隠すんだ。じゃあ、死んじゃえ〜♪」

そう言うと同時に肉眼で確認できるほどの電気がヒカリたちを襲う。

「キャー」

「くっ!!」

唯一、ガード能力がある、ヒカリが慌てて、ガードするが、長くは持ちそうもない。

「アギーやめなさい」

「やだ〜」

本当にシンジが出てくるまで、やめる気はないのだろう。

「アギー!!!」

「やだっていってるでしょ!!!」

声を大にしてさけぶ。それと、同調して強くなっていく力。

「パキパキ」

ガードが音を立てて、割れていく。

「もう駄目っ!!!」

「パリーン!!!」

砕け散るガード。それと、同時に気を失うヒカリ。

「ドーン」

進路を妨げるものがなくなった、電気の渦は、訓練室の壁にぶち当たり、大音量が響く。

「あ〜あ、隠すから。無駄になっちゃったー」

残念そうなアギーの声がする。

「いいやっ。ようやく本番が始められそうだぞ」

「ええ。きちゃいましたわね」

「えっ?」

何が起こったかわからないアギー。

向こうは煙でよく見えないのだ。

「もうっ、アギーったら?これで、よくみえるでしょ?」

風をおこし、煙を散らす。

「あっ!!!」

そこには、気を失ったチルドレン達が横たわっていた。

「ちっ!!見失ったか。」

「この部屋のどこかには・・・」

しかし、シンジの姿はどこにも見当たらない。すると、

「びゅ〜」

いきなり凄い風が起きる。

「ちっ?!なんなのよ?!」

「眼があけられない」

「すご〜い。台風みたいだ〜」

困惑する二人。とはしゃぎだすアギー。その時、

「召還!!!」

どこからか、シンジの声がした。すると、聞こえ出すもう一つの声。

「ふふふふ〜ん」

それと、同時に収まりだす風。そこに見えた映像・・・それは、

「・・・わおっ」

「・・・・わっわっわっ」

「キャ〜!!!あれ、ポケモン?あれがポケモンなの?」

なぜか、全裸で、頭を洗っているカヲルの姿であった。

「お風呂はいいね〜♪」










To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

hot−snow様より「それぞれの天気」の第九話を頂きました。
相変わらず執筆早いです。管理人、形無しです(汗)。
ここのゲンドウは本気で親バカみたいだし、すでにユイがどうでもいい存在だとは・・・些か意外でした。
シンジはシンジで、さり気なくゴルバチョフ村の件でネルフと裏取引きをしているし、もうレイとは仲直りできたのかな。
あと、シンジはカヲルにポケモンバトルでもさせる気なのでしょうかね?(笑)
カヲルも入浴中に召還させられるとは・・・。しかも公衆の面前に(笑)。甚だ憐れですな。
彼、このままお笑い路線を突っ走るのでしょうか?(笑)
しかし素っ裸でどう戦えというのでしょうかね?それ以前に戦意喪失とか?(どっちが?)
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
作者(hot−snow様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで