「・・・・・・・・・」

「シャカシャカ」

「・・・・・・・・・」

「シャカシャカ」

時が止まり、無音が続くかと思われた部屋で、カヲルの頭を洗う音だけが響く。

「おい」

「シャカシャカ」

「おいってば!!」

状況を打破しようと、ケリーがついにカヲルに話しかける。

「んっ?なんだい?レイ?男のシャワータイムを、邪魔するなんて、えらく野暮ったいじゃないか?」

「レイじゃねーよ!!!」

「レイじゃない???じゃあ、誰だい?まさか、ストーカー?」

「なわけないだろ!ケリーだっつうの?!」

話が全くかみ合わない二人。

尚、部屋の隅では、顔を隠し、うずくまっているキャメルに、「ポケモンって喋るんだね」とアギーが話しかけている。

「とりあえず、こっち向けよ。いやっ、おい待て!!前は隠してくれ」

裸のまま、振り向くカヲルに焦るケリー。

作戦部長&その評価が非常に優秀といっても、まだ17歳。恥じらいがある。

「ふ〜全く、わがままだね〜。どうすればいいのさ?」

「いきなり、出てくることができるんだから、服もパパっと、出してくれ」

どうやら、ケリーはカヲルが勝手に出てきたと思ってるらしい。

「勝手に?どおいうことだい?」

「なにって・・・・お前がいきなり現れたんじゃないか!!」

カヲルはそこまで、聞いて、動きを止めると、何やら考え出す。

「まさか・・・」

「何?」

どこからか水があらわれ、頭をすすぐ。すると、目の前には、見たこともない人物3人。

「どおいうこと?」

「そおいうこと」

また考え出すカヲル。

「うん。ここをごまかすにはそれしかないね♪」

そういって、手を「ポンっ」と叩く。

「・・何をする気だよ・・・?」

満面に妖しい笑みを浮かべるカヲルに、嫌な予感がするケリー。

その次の瞬間、

裸のカヲルは走り出した。

ものすごい笑みを浮かべ、いろんなものをブラブラさせ、初対面のアメリカ娘へと。

「「キャ〜!!!!」」

混乱状態になるケリーとキャメル。

「すごい!すごい!!」

そして、別の意味で大興奮のアギー。

「どうなってるの?」

いつの間にかおきていたヒカリは、さっきまで敵だったアメリカ娘を追い回す裸のカヲルという映像にまた、

気を失った。










それぞれの天気

第十話 〜経験〜

presented by hot−snow様











「調子乗って、申し訳ありませんでした」

ひざにオモリを乗せたまま、正座をし、平謝りのカヲル。

その眼前で、仁王立ちしているのは、何かを触って、洗ったのか、体のあちこちが真っ赤な、キャメルとケリー。

「もうしないので、許してください。」

体全体を使って、誠意を示すカヲル。一体、ナニをしたんだろうか?

「なんで、あんなことやったの?」

「なんか、急に走りたくなったんです。」

「裸で?」

「いやっ・・・あれは、勢いというか、若さというか」

しどろもどろのカヲル。いつもの余裕は全く感じられない。

「もう、私、お嫁にいけない体になったのよ!!なんで、擦り付けるようなことをしたのよ!!

走りたいだけなら、ただ、走ってなさいよ!!」

「いやっ、快感というか、本能というか」

もう、わけの分からない言い訳を繰り返すカヲル。

その様子に苛立ちが増すキャメル。

「もう、いいわ!!私と戦いなさい!!」

「そんなんで、いいんすか?」

もはや、キャラすらままならないカヲル。

「いいの!!立ち上がりなさい!!いやっ、待って!何か着て!もう、ソレは見たくないの。」

どうやら、まだ裸らしい。

「申し訳ないっす。何かキルッス」

どこかへと消えると、なぜか、メガネに体操服に着替えてきた。

「それでいいのね?」

「モチロンっす!会心のファッションっす」

ケリーに目配せする。

「いいわよ!とりあえず、そいつをぶっ殺しなさい!!」

熱く殺せ宣言をする!!

アギーは弱ったところを捕まえようとしているのか、カプセルを片手に、様子を見守る。

「じゃあ、いくわよ!!」

「どうぞ。リリンは全く意味がわからないよ」

いきなりキャラを取り戻したカヲルに、少しだけムカッとしたキャメルであった。










「シンジ君、戦いにいったんじゃないのかい?」

訓練室にむかったはずのシンジは、なぜか、その頃、まだ司令室にいた。

「シンジ、チーズケーキと木苺のタルト、どっちがいい?」

「チーズで♪」

「問題ない」

頬を紅く染め、返事するゲンドウに冬月は気色悪さを覚える。

「シンジ君?」

「ああ。だって、なんで無料でやんなきゃいけないのさ?ねえ、父さん?」

「ああ。その通りだ。なぜ、シンジがそんなとこに行かなければならない!!危ないではないか」

庇護欲だしまくりのゲンドウ。微妙にすれ違っちゃってる二人。

「確かにその通りだが、勝てるのかね?」

「ああ。大丈夫だと思うよ。カヲル君も召還したし」

「だが、相手はSSクラスだぞ。Sクラスで大丈夫なのかい?」

「あ〜そのことか〜。大丈夫。強さじゃないし、詳しいことは言えないけど、要は、使い方だから」

「使い方?」

「そう。発想力、経験が戦いには大事なんだよ。カヲル君はその辺、ずばぬけてるし、相当、強いよ」

「そうだとしても・・・まあ、シンジ君がそう言うなら、間違いないな」

何かをいいかけた冬月だが、隣からのすさまじき殺気の目線に言葉を飲み込む。

「ゆっくりしていけ」

「うん♪」

3人が眺める画面の向こうでは戦いが始まっていた。










「はいや!!」

「ほいっ」

とりあえず、戦いが始まった。

「せいっ!」

「ほわっ」

どっかの中国拳法みたいな掛け声が響き渡る。

能力者同士の戦いなのだが、なぜか、肉弾戦が繰り広げられていた。

「ねえ、ケリー?」

「なぁに?」

「なんで、能力使わないの?」

「あぁ〜。それはだな、カヲルは変態だが、ガード能力は、超一流なんだよ。それに、奴は強いんだ。

うかつに、能力なんか使ったら、癖を見抜かれて、アウトってとこだな。

経験の違いは歴然だし、キャメルも考えてるのさ」

「なるほどね〜」

低能力者では、見ることすらままならない肉弾戦を前にして、のほほん構えている二人。

「いい加減、あたりなさいよ!!せいっ!!」

時空のひずみにはめて、動きをとめるのだが、なぜかあたる寸前にぬけてしまい、かわされる。

「そんな単調な攻撃では僕は捕らえられないよ。」

先程まではなかった余裕の笑みが浮かべられる。

「ちっ!!じゃあ、これは?」

カヲルの周りを360度、氷の槍で囲む。

「これが、どおしたんだい?」

「死ね!!!!!!!!!!!!」

待機していた槍たちが、カヲルに一斉に襲い掛かる。しかし、カヲルは、それに対して、ガードを張った。

「かかったわね!」

ガードを張った瞬間、その人間はすぐには動けない。そこを利用したのだ。

「ガキン!!!」

槍がガードにはじかれる音が響く。それに、あわせ、カヲルの懐に忍び込むキャメル。

「はっ!!死ね!!」

しかし、目の前に広がった光景にキャメルは目を丸くする。

そこには、先程まで自分が使っていた能力である、時空のひずみがあったのだ。

「くはっ!」

「ゲームセットだね」

カヲルはかけていたメガネを、動けないキャメルにかけると、静かに試合の終わりを告げた。










「シンジ君、あれはどうやったんだい?」

ここは観客席こと、司令室。

「ははっ。能力の応用だよ。時空系の能力はただ攻撃に使えるだけじゃないんだよ。

時空をゆがめることができるんだから、むこうに偽のものをみせることもできるんだ。

キャメルさんは力は強いけど、応用力がないね。能力は1つじゃないのにさ」

そういって、手元の紅茶を飲みながら、優雅な時間をすごす。

「ふふっ、やっぱりシンジは天才だな」

なぜか、その説明をゲンドウが誇る。

「父さん、うるさいよ」

「すまん」

シンジに叱られ、思わず、冬月を睨むゲンドウ。

いくらたっても、成長しない2人であった。










To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

hot−snow様より「それぞれの天気」の第十話を頂きました。
相変わらず執筆早いッスね。
しかしカヲル君が変態さんだったとは・・・。ただのナルシスホモじゃなかったんですねぇ。
それに強いことは強いんでしょうが、何ともはや微妙です。これでお笑い担当、決定ですな。
キャメルも思惑が外れてシンジとは戦えず、しかもあんな変態男(注:カヲル)に鼻っ柱を折られて、この先彼らにどういう態度(従順?反発?)をとるのか楽しみですね。
まあ、アスカとはキャラが被っているので、おそらく彼女とだけは反りが合わないでしょうが(たぶん)。
ゲンパパの親馬鹿ぶりも健在だし、シンジも馴染んでいるし・・・今後の展開、一体どうなるんでしょうか?(ほのぼの路線突入か?)
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
作者(hot−snow様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで