「シンジ君見つかったのかい?」
「う〜ん、確証はないけど、間違いないと思う」
NERV内に設けられたシンジの個室で密談する2人。
「じゃあ、サードインパクトは・・・」
「あの人の暇つぶしだね」
2人の間に沈黙が漂う。
「サードインパクト以前の管理者の6人中4人は、この世にはもう存在していなかったよ。どうやら、サードインパクトでお役ごめんだったみたい。
この世に残っているのは、統治者である母さんと2人だけだと思うよ。」
「ということは、碇 ユイが消えれば、こんなふざけた世界も終わると考えていいんだね?」
「うん。それは間違いないよ。僕らの能力はどうなるか分からないけど・・・」
飲みかけだったコーヒーを一口、含む。
「それで、どうするんだい?お姫様のいうとおり、アメリカ娘にも事実を告げる?」
「ん〜」
考え込むシンジ。どうやら、答えがでないらしい。
「シンジ君が悩むのは分かるよ。碇 ユイの能力は、僕たちでも敵うか分からない。なんたって、碇 ゲンドウに暗示をかけ、ゼーレを操り、サードインパクトではどっちの願いが叶えられるかを競わせたくらいの人だからね〜。
そして、最後には初号機で自らの願いを叶えた。すべての人に能力を、新たな管理者と統治者を、使徒を生み出し、まさにこの世は争いが絶えない。」
「母さんはきっと、退屈になってしまったんだろうね。サードインパクトも、暇つぶしと、新たな能力者を生み出し、”同等”を作るためのものと考えたほうがよさそうだ。全く”神様”も、ふざけたことをするよ」
やるせないといった感じで、懐からタバコを取り出すと、火をつけ、深く吸い込んだ。
そうして、吐き出された煙は、ゆっくり、ゆっくり、換気ダストへと向かう。
「人間に、人間の管理なんて、できっこないのにね。」
「本当にリリンとは罪深き生き物だね〜。こうなったら、そろそろレイを呼び寄せるよ。碇 ユイの覚醒も近い。どうする?アドバンテージをとるために、強制的にサルベージを、行うかい?」
「いいや。待つよ。僕はこの日のために、準備をしてきたんだ。身内だけでケリをつけるさ」
「でも、使徒を呼ばれたら、少しまずいね。彼らの創造主は碇 ユイだ。どうするんだい?」
その質問にシンジは微笑を浮かべ、チッ、チッ、チッとすると、
「そのために父さんの暗示を、嫌々ながら、解いて、アメリカ支部から管理者と能力者を呼んだんじゃないか?
僕らには勝てないけど、使徒には勝てるでしょ。体勢を整われたら、経験が浅いこちらが危ないからね〜。
彼女らがいるうちには、勝負をつけるよ。」
「だから、そのためにはサルベージをしたほうが。それに、お姫様と他の管理者は?」
「なぜ?サルベージをするためには、母さんがいるあのコアに意識を潜らせなければならないんだよ?
今だって、敵意や殺意を感じただけで、僕らにも触れられないガードをはるんだから、危なっかしくて、できないよ。
お姫様は同様の理由だし、他の2人には弱みは見せられないよ。」
「あぁ〜、3年前も、あのコアだけは無傷だったもんね。それだったら、仕方がないようだね。」
「そおいうこと。」
話も一段落して、お互いくつろぎタイムに入る。しかし、そんな時間は長くは続かなかった。
なぜなら、管理者を公言している者が、一能力者に負けることはプライドが許されないのだから。
アギーを連れ立って、キャメルがドアを蹴破って、入ってきたのはそれから5分後の出来事だった。
第十一話
presented by hot−snow様
「だから、僕は統治者では、ないの!!何度、言ったら分かるのさ?第一、管理者なんだから、姫にはもう会っているでしょ?」
もう、何本吸ったのであろうか?間違いなく体に良くない本数を、抱え込んでいる灰皿に、また一本、ぶち込む。
しかし、キャメルがそんなことで納得するんだったら、こんな事態になっていない。
「会ったわよ!でも、その強さは間違いなく統治者級でしょ?それとも、管理者の中にも、強さのランクとかあるの?全く、神様も意地悪ね」
頬を膨らまし、私は拗ねました的な表情を作る。そんな、キャメルに苦笑を浮かべながら、シンジは言葉を発する。
「強さにランクなんてないよ。基本的には僕らはすべての能力を使うことができるって知っているよね?」
「うん。」
「でも、僕等6人には、その中でもずばぬけた能力を一つずつ与えられてるんだ。」
「えっ、嘘?私、みんな同じに思えるけど・・・」
姫様から、管理者であることを伝えられたキャメルであったが、一緒にいた時間が少ない分だけ、シンジに比べて、情報量が少ない。
統治者である姫様はドイツの新生ゼーレに身を置いており、アメリカ支部のエースであるキャメルは、会う機会がめったになかった。
そのため、あんなかわいくて、小さい子が、統治者?と時間が経つにつれて、疑問がふつふつと沸いてきて、死神と評判の高い、シンジに詰め寄ったのだ。
「火、水、電気、時空力、身体能力、そして・・・もう1つ。」
「ゴクッ。」
じらすシンジに、思わずのどをならすキャメル。
しかし・・・シンジは、
「あはは。それは言えないんだな〜。その5つは周知だけど、もう1つは僕と姫様とあと数人だけの秘密なんだ。
それに、他の管理者も、いざという時のために、その能力はみんなに隠してるしね」
自分に不利となる情報は明かさないのは、上級能力者の常識である。それは、シンジも例外ではなく、話さない。
「・・・えっと、隠されたもう一つの能力が、あなたの能力と考えていい訳ね?
私が知らないというか、みんなが知らないということは・・・誰もその能力は使えないと?」
「ん〜、まあ、そういうことかな?」
「言ってることが違うじゃない!?すべての能力が使えるんじゃないの?」
明らかに隠されるうえに、なんか、能力の劣等感を感じているキャメルは、シンジに詰め寄る。
「まあ、いいじゃん♪例外だよ、例外♪プップ〜」
口元に手をあて、噴出し笑いをするシンジ。
「殺す!!!」
明るくごまかそうとしたシンジだが、明らかに失敗だった。
馬鹿にされたと感じたキャメルは、また暴れだす。
その横では、後ろから一撃をかまし、気絶させたカヲルを、なんとか、カプセルに詰め込もうとするアギーの姿があった。
「あ〜やってられないわね〜。一体、なんなのよ、あの餓鬼達はさ〜」
納得がいっていないのか、NERV内だというのに、ビール片手に歩く。
「んっ?」
何かおもしろいものを見つけたのか、その歩みが止まった。
「なあ、マナ?お前ならあいつらに警戒されていないし、チャンスなんだよ。頼むから力を貸してくれ。」
「やだよ。なんで、そんなことしないといけないの?仲間なんだし、力を合わせてがんばろうよ」
「何いってんだよ?力を合わせて?俺らにその気があっても、あいつらには一切、そんな気は感じられないじゃないか!
昨日の訓練室の話、聞いただろ?碇のせいで、俺達の仲間が怪我したんだぞ。
最後まで現れなかったみたいだし、ミサトさんが機転利かせて、応援呼んで来てくれなかったら、今頃、みんな死んでたんだ!!」
真実はいつでも、捻じ曲げられる。
真相は、あまりの力の違いにいち早く逃げ出したミサトを、リツコが発見し、戦いが終わったのを見計らって仲間を呼んだのだ。
助けたのはカヲルであって、ミサトではなかったが、本部内ではミサトが英雄になっていた。
「それは・・・何かの理由があったんだよ。第一、あの場にいたチルドレン達は目覚ましてないのに、
なんで、シンジ達のせいだって分かるの?ケイタは見たの?」
「そりゃあ、俺は見ていないけどさ・・・」
目撃したの?!と聞かれれば、見ていない。この話だって、オペレーターの日向さんに聞いた話だし、
今まで見たいな勢いは消えていく。
「ほらっ!見ていないじゃない。そういう話するのは、みんなが目を覚まして、
シンジ君たちに事情を聞いてから「その必要はないわ」
マナの言葉に、もう1つの言葉がかぶさった。
慌てて後ろを振り向くと、そこには、腕を三角巾で吊るされたミサトがたっていた。
ビールはもはやその手にはない。
「ケイタ君の言う通りよ。私はその場にいたんだから、間違いないわ」
「あっ、やっぱり、そうなんですね。やっぱり、ミサトさんはすごいやっ」
「そんなに褒めても何も出ないわよ」
怪我したはずの右手で、頬をポリポリ掻くミサト。
愛とは盲目と同様に、信頼とは盲目である。
「でも、葛城さんって、本部に助けを求めに行ったんじゃないんですか?」
「そういや、そうですね。葛城さんは、いつまでその場にいたんですか?」
「えっとね〜・・・」
返事に困る。
実はミサトは何がどうなっているのか、何も知らない。
命からがら生き延びて、本部に帰ってみれば、みんなから祝辞を言われ、舞い上がり、要所をまったく聞いていないのだから。
「えっと、えっと、チルドレン達が全員、倒れてからよ。私もこの通り、怪我したんだけどね、みんなのためにがんばったのよ」
誇らしげに右手を掲げるミサト。本当に怪我したのなら、絶対にできない芸当である。
「じゃあ、みんなを置いていったんですか?その間は、一体誰が・・・キャッ!!」
いきなり殴り飛ばされるマナ。
「うるさいわね!!私がそうだと言ったんだから、そうなのよ!!しつこいわね!」
「うっ、すいませんでした。」
自衛隊時代の癖が抜けていないのか、敬礼して答える。
「ところで、さっき、ケイタ君は霧島さんと何を話していたの?」
「はっ、はい。マナは碇の奴に警戒されていないから、色仕掛けでもして、この薬を飲ませて来いといっていました。」
びびってるのであろうか?声がうわずる。ケイタはチルドレンの中では、シンジとの戦闘で分かるとおり、能力は高いのだが、精神的弱さとミサトが潜在能力を見抜けないため、伸びてこない。
「なんの薬?」
「これであります」
「これは・・・・睡眠薬じゃない?どこで手に入れたの?」
「昔の友達から買いました」
ミサトも、シンジ達が来ると決まってから、リツコにおねだりしてるのだが、手に入らなかったのだ。
それも、ミサトの信頼の低さからくる行動であったが・・・
「いい作戦じゃない!やりなさいよ」
「ありがとうございます。おい、マナ。ミサトさんの許可はとったぞ!早速、詰めるぞ」
「そんな、ふざけないで!やめてよ」
強引に引っ張っていこうとする。しかし、
「待ちなさい。私の部屋に来なさい」
「えっ」
「あんた達に任せといたら、失敗するのは目に見えてるでしょ。私に任せなさい」
「はい!」
そう言って、3人は廊下の奥に消えていく。
すると、柱の隅から出てくる人影。
「これは、まずいわね〜。知らせたほうがいいのかしら?」
誰にも見られることなく、1人その人物は呟いた。
To be continued...
(ながちゃん@管理人のコメント)
hot−snow様より「それぞれの天気」の第十一話を頂きました。
相変わらず早い仕上がりですね。管理人も見習わなくては・・・(汗)。
なんと、諸悪の根源はユイだったんですねぇ。これはかなり意外でした。
ゲンパパも暗示が解けて、アレが素だったとは・・・もう驚くしかありません。
統治者とか管理者とかの段になって、ようやく世界観が見えてきたような気がしますね。
お姫様って誰でしょうね。小さい女の子のようですし、オリキャラでしょうか。
しかし、マナ、ええ子や〜。残りのチルドレンはミサト同様、腐っとる!
ミサトですが、もはや見るに堪えませんね。
早々のご退場を切望しますが、たぶん無理でしょうから、半殺しにしてやって下さい!あー腹立つ、あのクソ女!
アギーはカヲルがお気に入り(?)のようですね。ポケモン・ブリーダーを目指して頑張りましょう♪
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
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