「シンジ君・・・本当に行くのかい?言葉が伝わらない相手だよ?」
必死な表情を浮かべ、シンジを説得するカヲル。
それは、今から行う交渉ごとが如何に難しいかを表していた。しかし、シンジは・・・クビを横に振り、
「大丈夫さ。カヲル君。僕はあの頃とは違うんだ。」
「それにしたって・・・君が傷つくって分かってて、行かせられないよ!」
そんなカヲルにシンジは悲しい表情を浮かべる。
その様子に、もう止められない事を察したカヲルは涙を流し、レイに抱きつく。それを見届け・・・
「大丈夫。行って来るよ」
そう言って、扉を開け、出て行くシンジ。
まさしく、それは、男の顔をしていた。
何かを決意し、もう引き返せないそんな表情。
コントだとバカにしていたキャメルとケリーさえ一瞬、引き込まれるほどの・・・。
廊下を歩く。目的地は葛城さんの牧場小屋(通称)。
その胸を去来していた思い、それは、悲しさだった。
思い出されるのは、1年前・・・救うことができなかった加持のこと。
ある日、加持さんから連絡が入った。
ロンドン市内のとあるバーにいると・・・
僕は何事かと思い、急いで仕事を片付け、その場所へと向かった。
カラン、カラン・・・
小気味いい音がし、店内へと入る。店員が出てきて、待ち合わせだと告げる。すると、奥へ招待された。
そこには、もう大分酔っ払った加持さんの姿・・・
何があったんだろう?
そう思った僕は慌てて声をかけた。
「加持さん・・・一体何があったんですか?そんなに飲むなんて・・・まさか・・・仕事で?」
「いいや、違うんだ。シンジ君聞いてくれるか?」
大分、思い悩んだ表情・・・。目の下は窪み、頬はやつれている。
重要な用件ってことは間違いない。
心を落ち着け、何事であってもいいように、精神を統一する。
「分かりました。どんなことがあっても、僕は取り乱したりしません。
言ってください。力になりますから。」
そんな僕を加持さんはじっと見詰め、少しだけ残っていたウイスキーを煽る。
そして、小さく呟いた。
「俺・・・・ロリコンなんだ・・・・」
そんな時、僕は加持さんに苦笑いを返すことしかできなかった。
唯一、できたことなんて・・・洞木さんの妹を加持さんのもとに送ったことくらい・・・。
そんなことで、許されるとは思っていない。思い出すと、後悔って文字が襲ってくる。
だから、僕は思うんだ。
「ロリコンだって、牛だって、人間なんだってね♪」
決意を胸に、牛さんの元へいく。
僕はもう二度と、負けられないんだから・・・
「マナ・・・3Pなんて、君にはまだ早い・・・。」
何か間違っている気がするけど、いいんだ・・・
だって、これはコントなんだもの!!!
第十二話 〜それぞれの終わりと始まり〜
presented by hot−snow様
「見ていた人がいるんですよ。だから、返してくれません?」
「はぁ?ここは私の部屋よ。作戦室なの!あなたが入っていいところじゃないの。帰りなさい」
予想通り、押し問答を繰り広げる2人。なぜか、シンジはメガネをかけている。
そんな優等生シンジのかいもあってか、なんとか、マナがこの部屋にいることは認めさせたのだが、入室を許してくれない。
本来なら問答無用で、押し入るのだが、今日のテーマは話し合いのため、荒いことはできなかった。
「第一、私のチルドレンがこの部屋にいることが、何がおかしいの?
シンジ君もしばらくみないうちに、ボケたわね〜。元々、ボーとしてたけど、拍車がかかったわ」
そう言って、ケラケラ笑うミサト。
その様子をシンジは不思議そうに見つめる。
「何がおかしいんですか?昔の旧友が危ない目にあいそうなんだから、言うのは当たり前でしょ。
ただでさえ、アナタのもとにいるだけで、危ないことは間違いないのに。」
満面の笑みで嫌味を炸裂させるシンジ。ミサトの眉がつりあがる。
「あなたは作戦指揮能力も人間としての魅力も一切、ないんですよ。
それを分かっているのかな?それでいて、あなたに従うチルドレン。おかしいと思いませんか?
一体、トウジに何をしたんですか?
赤毛猿はともかく、トウジの様子は尋常じゃない。あんなに僕を憎むなんて、マインドコントロールしか思えませんよ。
はぁ〜。ただでさえ、人間のクズなのに、ここまで堕ちたか・・・。もう、動物以下ですね」
一気に畳み掛ける。その言葉には悪意しか感じられない。
「この餓鬼!!自分が少しだけ優れているからって、いい気になるんじゃないわよ!!
人には言っていいことと、悪いことがあるの!!第一、私に能力がなぁいぃー!!!
馬鹿も休み休み言いなさい。」
「あはは。ちゃんと国連から発表されたものですよ。
見てないんですか?」
半ば諦め気味に言葉を発する。
優等生キャラも飽きてきたらしい。そのことに気がついてないのか、ミサトは怒鳴りたてる。
「うるさいわね。あなた達は私の言うことだけ聞いてればいいのよ!
一体、なんで私ばかり責められるのよ!!私はみんなのことを思って、していることなのに!」
「みんなのため? あははははははははは。笑わせないでくださいよ〜。」
その言葉に反応し、笑い転げるシンジ。
どうやら、ツボにはまったのか?止まる様子がない。
「はぁはぁ。もう駄目だ。これ以上の話し合いは無駄っぽいですね。
笑い死にそうだ。もう、いいや。芸の肥やしになりました。ということで、消えてくれます?」
メモ帳を取り出し、何かを書き足すと、用済みとばかりに声をかける。ついでに、メガネを投げ捨てる。
どうやら、また1つキャラと知識を獲得したらしい。その顔は非常に満足気だ。
「なんで、私が消えなくちゃならないの?あなたが消えればいいじゃない。って、ちょっ、ちょっとー!」
そこにミサトがいないかの如く、豪快に無視をかまし、脇を通り抜け、部屋へと入った。
「あぁ〜マナ発見。って、なんで縛られているんですか?しかも、足元には、どこかで見たことがある男・・・。
まさか、まさか・・・」
「まさか?」
もう諦めたのか、問いかけるミサト。
「予想を超えた、SM3Pですか?」
「んなわけあるかー!!!」
豪快にミサトの突っ込みが炸裂すると同時に、また1つ部屋が吹き飛んだ。
ドンと廊下の向こうからすごい音が聞こえる。
その音を聞きながら、カヲル達は黙って、顔を見合わせた。
「どうやら、説得は無理だったようだね。
まあ、半ば予想された結果だったけど、人間はいつだって、チャレンジスピリットは忘れちゃいけない。」
そう言い、コーヒーを優雅に飲む。
その様子をアメリカ組は、呆れたように見つめると、口を開いた。
「まあ、私達の場所じゃないから、なんとも言えないけど、日本って変わっているのね。
あなた達って、トレーニングもする様子もないし、毎日、こんなコントみたいなことしているの?」
隣ではケリーがうんうんと頷いている。
「それは違うわ。私達、3人が揃う事自体あんまりないもの・・・。
シンジは私を置いて、いつもどこかに行ってしまう。
自由奔放の弟を持つと、大変ね。」
どこか、レイも他人事でものを言う。
どうやら、この前、村に置いていかれたのを、相当、根に持っているようだ。
「あはは。その通りだね。シンジ君はいつでも、自由だ。」
何やら、カヲルとレイは繋がっているものがあるみたいだ。
ゆったりと時間が流れる。
その時、カヲルの腕が止まり、コーヒーをテーブルへと戻した。
「来たか・・・」
「ええ。」
2人は目をゆっくりと閉じ、椅子から立ち上がった。
「じゃあ、また生きていたら会おう。じゃあね」
「また。」
「えっえっ?」
いきなり動き始めた時間にケリーは慌てて、声をかけようとする。
しかし、そのときには2人は部屋の中にはいなかった。
<びぃーびぃーびぃー>
あたり一面に響き渡る警報音。
その音と同時に、日常は終わりを告げ、戦いが始まった。
「ユイ様が動き出した。」
「ああ。」
ある暗い場所、密談する2人組み。
警報音が鳴り響く中、ゆっくりと立ち上がる。
「さあ、行こうか?時雨。」
「ああ。ユイ様の意志は我々の意志。
ただいま、お迎えに参ります。」
そして、暗闇に消える人影。
2人がいた場所・・・そこには、引きちぎれたような死体が散乱していた・・・・。
To be continued...
(ながちゃん@管理人のコメント)
hot−snow様より「それぞれの天気」の第十二話を頂きました。
なんか、お久しぶりって感じがしますねぇ(人様のことが言える立場か?→管理人、やぶ蛇で大恐縮中)。
今回シンジ君は、マナを救出しに行ったと思っていいんですよね?ねっ?ねっ?
しかし何でマナは牧場小屋(笑)で縛られていたんでしょうか?傍に転がっていたのはケイタ・・・ですよね?
確か前話で、色仕掛けでシンジに睡眠薬を盛る企みに当事者のマナが難色を示して、ミサトがさらに一計があるからと部屋に連れ込んで・・・うーむ、その後、中で何が起きたんでしょう?
(単にシンジ君が早く現れすぎて、企みが間に合わなかっただけなのか?)
さて、ついにユイが動き始めました。
最後に出てきた時雨なる人物(+α)も気になりますね。何か雰囲気的に強そうだし・・・。
まあ、いずれシンジ君たちと対峙する運命にはあるのでしょうが、露払いとしてミサトを噛ませ犬にしてぶつけて頂ければ嬉しいです(笑)。
彼らに殺されたのがレイとカヲルではないことを祈りつつ、待て次号!
追伸。まさか加持がロリコンだったとは・・・。しかしそれで良いのか、洞木妹よ?(笑)
さあ皆さん、作者様に感想メールを書いて、次作を催促しましょう!!
作者(hot−snow様)へのご意見、ご感想は、または
まで