悠久の世界に舞い降りた福音

第四話

presented by ジャック様


 シンジ、フェイ、バルトの三人は、鍾乳洞を歩いていた。鍾乳洞に棲息する魔物はギアぐらいの大きさだったので生身では歩けない。だが、三人揃えば難なく先へと進めた。

 やがて、拓けた場所に出ると奥の方に巨大な扉があった。そして、その前には人口の灯りがあった。

「おい、まさか・・・・・・こんな所に人が住んでいるってのか? ちょっと行ってみようぜ」

 まさか、こんな鍾乳洞に人が住んでいるとは信じられず、バルトのギア――ブリガンティアは先頭に立って、そちらへ向かった。

 三人はギアから降りると、おもむろにその中へと入る。中はキッチンやベッドなど、確かに人が暮らせる環境が整っていた。

「おい、フェイ、シンジ。こんなとこにホントに人が住んでいる」

 すると奥の方から白髪を伸ばした老人が歩いて来た。

「ほう、珍しくギアの足音がすると思っておったら、お主らのギアか。まぁ、遠慮せずに奥に入ってきなさい」

 老人は三人を拒絶する訳でもなく、すんなりと迎え入れてくれた。

「久々の客人だな。どうした、若いの? 上から落ちてきたのかい?」

「ま、そんなとこだ」

「そうか・・・・・・気の毒にのぅ。足音から察するに、3人とも中々いいギアに乗っとるようだが・・・・・・一つはギアかどうか微妙だな」

「あ、僕のはギアじゃなくて生体部品を使った機体ですから・・・」

「ほう・・・」

 シンジの言葉に老人は興味深そうに頷くと、バルトとフェイを見て言った。

「二体ほど足の調子が悪そうだな」

「は? 爺さんは足音だけで調子がわかるのか?」

 意外そうに言うフェイの言葉に、老人は和やかに笑った。

「はっはっは。ギアの調子の聞き分けなんぞ容易いことだよ。
 察するに、片方のギアは関節の流体パイプあたりがやられているようだな。バタついた嫌な音を出している。
 それでは、歩き辛かろう。
 後な、わしの名はバルタザールだ。まあ、爺さんでも構わんが・・・・・・」

 老人――バルタザールは名乗るとシンジは眉を顰めた。

「(はて? バルタザール? 何処かで聞いたような・・・・)」

 何だか遠い昔、かなり近くにいたようで殆ど関る事が無かった何かだったとシンジは思い出そうと『う〜ん・・・』と首を傾げた。

「ところで、爺さんは何でこんな所にいるんだ?」

 住めるとは言っても娯楽も何も無い所に住んでるバルタザールに、バルトは当然の疑問をぶつけた。

「物探しと言ったところかな。この穴の中にはいろんな物が落ちているからな」

「物探しねぇ。ご苦労なこった。そこの棚に並んでるのがその収穫かい?」

 そう言ってバルトは棚に並べられている動物や人の頭骨を指差した。

「化石のことか? まぁ、物探しの一つはそれの事だ。ちょっと、眺めてみると良い」

 そう言われ、三人は化石を眺める。するとシンジはある事に気がついた。

「この辺りを発掘すると古代の機械や、人やら動物の化石が出てくるんだよ。
 どうだ、この棚を見て何か気付かんか? 左側が一番古い年代で、右に行く程新しくなっている」

「爺さん考古学が専門か? しかし気付かないか、と言われてもなぁ。俺にはどうも只の骨の化石にしか見えん。
 フェイ、シンジ。お前らは、どうだ?」

 話を振られ、フェイは左から化石を一瞥して答えた。

「そうだな・・・・まず、此処までには人骨がない。それに、ここより右は微妙に何かが違う・・・・・・そんな気がする」

 フェイの言うように、確かに人骨は途中でピッタリと無くなっていた。それにシンジも気付いていたのか頷いた。

「そう、ある一定の年代を境にパッタリと人骨が出土しなくなるのだ。およそ一万年前を境にな」

「どういうこった? そりゃ?」

「可能性としては一万年以上前に人間は存在していなかった・・・って事ですかね〜」

 シンジが何気なく呟くと、バルトが両手を挙げて鼻で笑った。

「おいおい、そんなことがあるのかよ。進化の系譜って奴はどうなるんだ?」

「『教会』の唱える進化論か? そんなもんは、アテにせん方がいい。わしは口碑伝承や神話の方を信じるよ」

「口碑伝承? 神話?」

「知らんのか? こんな話だ」

 バルタザールは部屋を歩きながら講義するように語り始めた。

「かつて人は神と共に天空にあり、常春の楽園で暮らしていたという。
 そこでは神の庇護により、死の恐怖に怯えることも、自然の驚異に晒されることもなかったそうだ。
 だがある日、人は神の禁断の果実を口にした。
 それにより人は卓絶した知恵を得るに至ったが、神にその罪を問われ、楽園より放逐される事となった」

「(ん?)」

 それを聞いていてシンジは何処かで聞いたような話だと思い、首を傾げた。その間にもバルタザールの話は続く。

「楽園から放逐された人は、神の仕打ちを憎み、禁断の果実から獲た知恵を使い、巨人を創り神に戦いを挑んだ。
 戦いを挑んだ人は神の怒りによって滅びたが、神もまた無傷ではすまなかった。
 神の使いである天使は滅び、また傷ついた神は楽園共々その身を大海深くに沈め、永い眠りについた。
 眠りにつく前、神はその残された力で、心義しき人達をこの地上に住まわされた。
 その人々が我々の祖先・・・・・・という話だ」

「(う、う〜む・・・・どうなってんだ?)」

 シンジはバルタザールの話を聞き終え、表情をヒクヒクさせた。彼の話は非常に自分の行ってきた事と酷似していた。禁断の果実で得た知識を使った巨人――即ちエヴァを使って神に戦いを挑む。もっともゼーレの老人達は神の下へと回帰しようとしていたが、神の使いである天使――使徒とは戦った。

 地球ではないが、使徒の存在や先程の伝承など、全く訳が分からなかった。

「まぁ、無駄話はこれくらいにしておくか」

「ああ。ところで、この洞窟の・・・・」

「出口か? 出口だったら、あの防砂壁の先にある発掘場を抜ければ外へ出ることが出来るが」

「防砂壁? それって此処の入口から見えるあのでかい壁の事かい?」

「ああ、そうとも。あの壁の向こうにアヴェの発掘場がある。
 だが、もう発掘はしてないがな。アヴェの連中が発掘してた時、上からの砂の進入を防ぐために造った大きな壁だ」

「それで、あのでかいのはどうすれば開くんだ?」

「壁なんて壊しちまえば良いだろう」

 相変わらず短絡的なバルトの発言にバルタザールは呆れ返った。

「おいおい、待ちなさい。いくらいいギアに乗っておっても、あの壁は壊せんよあれは、よく出来てるからな。
 ううむ、ひとつ取引せんか?」

「取引だって?」

「壁が閉まってるのは、降砂センサーが反応したからだ。
 おかげでわしは向こう側の発掘場に行けなくなってしまった。多分、お主らが砂と一緒に落ちてきたせいだろう。
 大方、上で暴れていたのではないか?」

 鋭いバルタザールに三人は揃って苦笑いを浮かべた。

「何でも、お見通しか? で、何をすれば良いんだい?」

「なぁに、簡単な事だ。降砂センサーのスイッチを切ってきてくればいい。
 そうすれば、あの壁は二度と閉まらなくなる。お主らが止めに行ってる間に、あの壁は開けておいてやろう」

「ああ、分かったよ」

 自分達のせいなので断る訳にもいかず、三人は頷いた。

「センサーは二ヶ所で赤く点滅しておる。よろしくな」




「一体、何なんだろうね〜、この世界は・・・・」

 フェイ、バルトとは別の降砂センサーを解除に向かっているシンジはエヴァのコックピットでボヤいた。その間、ずっとこの世界の事を考えていた。

 そして、まず中心には『神』という存在があった。グラーフは『神を滅ぼす』と言い、またフェイの力も『神を滅ぼすに値する』もので、かつての人間は『神に戦いを挑み』など神を中心に回っている。

「グラーフは使徒を『預かってる』って言った。どうやら使徒は造られてるようだな・・・・」

 あの二人のように、とシンジは心の中で付け加えた。そして、少し鬱な表情になった。

「やれやれ・・・・懐かしいもん見たから、随分と感傷的になってるな・・・」

 自嘲してシンジは髪を掻き毟ると、ふとあるモノに気が付いてエヴァを止めた。

「こんな所に観光客かな〜?」

 などとふざけて言うが、その目は鋭かった。彼の視線の先にはフード付きのマントを羽織り、仮面を付けた人物がこちらを見据えていた。

 自分に用があるのかと悟ると、シンジはエヴァから降りて、その人物と対峙した。二人はただ無言で対峙するが、突如、仮面の人物が目の前から消えた。

 するとシンジの背後に現れ、仮面の男は蹴りを繰り出す。が、シンジは腕で防御すると、そのまま相手の足を掴んで放り投げた。

 仮面の人物は空中で反転し、天井から伸びている鍾乳石に足を付けてシンジに向かって突っ込んで来た。

「にゃろ!」

 シンジは舌で唇を舐めると、両拳をゼルエルのようにATフィールドでコーティングした。

「はっ!」

 そして地面に拳を叩きつけ、石の弾幕を放つ。

「・・・・・」

 仮面の人物は無言で石の弾幕を全て拳で叩き落し、地面に着地するが、その隙を突いたシンジが土煙の中から現れて蹴りを入れた。

 仮面の人物は吹っ飛び、仰向けに倒れる。

「やれやれ・・・・最近の仮面してる人は遠慮なく人に喧嘩吹っ掛けて来るのかな?」

「ふ、ふふふ・・・・」

 シンジの言葉に仮面の人物――声からして男っぽい――は起き上がり、マントの埃を叩いた。

「すまぬな・・・・少々、主の実力が知りたくて」

「実力?」

「なるほど。グラーフが気に留める訳だ」

「グラーフを知ってるの?」

「ふ・・・因縁だ。私はワイズマン。訳あってグラーフを追っているのだ」

 それを聞いて、シンジは『仮面が仮面を追いかけてる』と少しズレた事を考えた。

「グラーフを知ってるならフェイさんの事も?」

「無論だ。グラーフの狙いは奴なのだから」

「じゃ、フェイさんの神を滅ぼす力ってのが何なのかも?」

「・・・・・・フェイは神の呪縛に囚われ、神から独立し、神を滅ぼすのだ」

「は?」

 ワイズマンの言葉の意味が分からず、シンジは唖然となった。

「主は・・・・神の・・・母の楔から外れているようだな」

「母の楔?」

「それが全ての者にとって大きなイレギュラーなのだろう・・・・」

 そう言うとワイズマンの姿が消えて行った。

「あ、ちょ、ちょっと・・・・!」

「それが・・・・この世界にとって吉か凶か見定めさせて貰う・・・・」

 そう言い残し、ワイズマンは消えて行った。シンジはワイズマンの消え去った後を呆然と見つめると、ポリポリと頭を掻いた。

「神の呪縛に囚われ、神から独立し、神を滅ぼすか・・・・ん?」

 呪縛に囚われてるのに独立する。何か矛盾してるような気がして、シンジは更に考え込むのだった。




「おう、遅かったじゃねぇか、シンジ」

 バルタザールの所に戻ると、既に防砂壁は開いており、フェイとバルトは既に戻っていた。

「ええ。ちょ〜っと道に迷いまして」

 曖昧に誤魔化し、苦笑いを浮かべるシンジにフェイとバルトも笑みを浮かべた。その時、ふとバルトがバルタザールに尋ねた。

「あのな、爺さん。少し聞きたいことがあるんだけどな」

「何をだ?」

「この世界のどこかには、全てのギアを超越する、太古の昔に創られた神のギアが眠っているって話を聞いたことがある。それについて何か知らないか?」

「神の知恵を使い創られた人造神。
 その力は一騎当千、腕の一振りで街を消し去り、その雄叫びは天まで轟く。『ギア・バーラー』の事か?」

「(ん? ん〜?)」

 腕の一振りで街を消し去って、天まで届く雄叫び・・・・シンジは暴走した時のエヴァを思い出して眉を顰めた。

「知っているのか!? それって、もしかしてさっきの話に出てきた神と戦ったっていう・・・」

「やれやれ、お主もか? あんなもの、人心をあおる為に作り上げられた話、それこそ伝承だ。“そんなもの”在りはせん」

 バルタザールは目を輝かせるバルトに呆れて肩を竦めると、入り口の方へと向かって行った。

「さて、お主らのギアの調子でも見てやるとするか。小一時間で終わるだろう。少々待っていなさい」

 そう言ってバルタザールは出て行った。その後姿を見送り、フェイがバルトに話し掛けた。

「なぁ、バルト。さっきの話の神のギアって、地中に埋まっているものなのか?」

「俺の聞いた話では、そうらしいぜ」

「俺達の使っているギアもその内の一体なんだろうか?」

「いくらなんでも、そりゃないんじゃねーか?」

 フェイの疑問をバルトは首を横に振って即座に否定した。

「発掘されているギアは、せいぜい数百年前の物なんだ。
 とてもじゃないが、伝承に出てくる様な大昔のもんじゃない」

「じゃあ何で地中に・・・・・」

「知らねぇよ。それについての記録もないしな。ただ・・・・・・ 」

「ただ?」

「大規模な戦争後に埋没したってことは確からしい。殆どの機体の装甲板に銃創が刻まれている事からもそれは確実だ」

「記録がないって、数百年前の記録が? それ以前のものも?」

「ああ、どちらもな。もっともその辺りの記録に関しては『教会』が管理しているからな。ひょっとすると大昔のものもあるのかもしれない・・・・“俺達が手にすることが出来る歴史ってのはわずか”なのさ」

「(教会・・・か)」

 以前から色々と話を聞いている『教会』という組織。発掘されるギアの修理や、貴重な歴史などの管理をしているそうだが、どうもシンジは胡散臭いと思っていた。

 そういうのを独占している所は裏があるものだ。それを教会という信仰などで隠れ蓑にしているようだが、少し調べてみようかとシンジは考えた。

「ところで、フェイ、シンジ。あの爺さん、お前はどう思う?」

「どうって・・・・・・」

「あんな年寄りが一人きりでこんな放棄された洞窟ん中で一体何をしているんだ?」

「さあな。やっぱり、太古のギアでも掘り起こしてるんじゃないのか?」

 何気なくフェイが答えるとバルトは腕を組んで大きく頷いた。

「やっぱり、お前もそう思うか!

「おいおい、俺は冗談で言っただけだぜ。そんなこと真に受けるなよ。所詮、伝承だろ」

「いや、きっとあの爺さんは手がかりを掴んでるんだ。おい、シンジお前は?」

「そうですね〜・・・・単なる世捨て人じゃないんですか?」

「お前、また面白くない答えを・・・」

 ゲンナリするバルトにムッとしながらも、シンジは更に言った。

「でも、こんな所に、そのギア・バーラーなんてあったら、とっくの昔にアヴェ軍が発掘してるんじゃないですか?」

「あ、それもそうだな」

「ふ・・・・無様ですね」

 何処かの某マッドサイエンティストの台詞を引用するシンジ。バルトは額に青筋を浮かべてシンジに突っかかって行った。

「んだと、テメェ?」

「それぐらい頭を使えば分かる事じゃないですか?」

「じゃあ何か? 俺は頭悪いって言いたいのか?」

「確か地上でそう言った様な気がしますね〜」

「この野郎、上等だ! 上での決着、此処でつけてやる!!」

 腰の鞭に手をかけるバルトに対し、シンジは気だるげに溜め息を吐いた。

 その態度に更に激怒し、今にもシンジに襲い掛かろうとするバルトをフェイが羽交い絞めにして引き止めた。

「おいおい、バルト。落ち着け。シンジ君も不必要に挑発するな」

「離せ、フェイ! このクソガキに一発・・・・」

「(クソガキって・・・・僕、随分と年上なんだけどね〜)」

 多分、二人よりも精神的にも随分と年上だと思うシンジ。ちっとも収まらないバルトに溜め息を吐いていると、外からカラーンと何かが落ちる音が響き、バルタザールの愕然とする声が届いた。

「こ、こいつは・・・・・・」

「どうした? 爺さん!」

 三人は気になって外に飛び出すと、バルタザールは大きく目を見開いてヴェルトールを見上げていた。

「お、お主のギアか? こいつは?」

「ああ。まぁ一応そうだけど・・・・・・」

「お主、こいつを何処で手に入れた!?」

「俺はそいつを拝借しているだけなんだ」

 何やら様子のおかしいバルタザールに戸惑いながらもフェイは答える。バルタザールはヴェルトールを見上げると小さく呟いた。

「こいつは・・・・・」


神を滅ぼす者の憑代・・・・・・


 その言葉にフェイは過敏に反応し、シンジも目を細めた。

「ち、ちょっと待ってくれ! 爺さん、今何て言った!?」

「な、何でもない! 何も言っとりはせん!!」

「いや! 今確かに聞こえたぞ! 神を滅ぼすとか・・・・・・おい、そう言ったんだろ!爺さん!」

 だが、バルタザールは答えずフェイに背を向けた。

「ギ、ギアは修理した。もうお前さん達は此処に用は無いはずだ! わしは具合が悪い。
 とっとと出ていけ!」

「出てけって・・・・・・あっ! お、おい爺さん!!」

 急に態度を変えたバルタザールはそう言って家の中へと入って行った。フェイは未だにバルタザールに問い詰めようとするが、シンジに肩を掴まれ、止められた。

「駄目ですよ、フェイさん。ああいう人は一度、口を閉ざしたら開きませんって」

「だけど・・・・!」

「フェイさん。フェイさんの気持ちも分かりますが、まずは此処から脱出してシタンさんと合流する事でしょう? 寄り道してる暇なんてありません」

「・・・・・・分かった」

 フェイは渋々ながらヴェルトールに乗り込んだ。それを見ながらシンジは先程のワイズマンの言葉を思い出していた。

「何なんだ?」

 バルトはただ一人、蚊帳の外で一連の事に唖然としていた。



 防砂壁を越えると、出口まではすぐそこだった。だが、出口直前で謎の巨大ギアに行く手を阻まれた。

『な、何だコイツ!?』

 そのギアは無人なのか、此処に来た相手を撃退するようプログラムされているようだった。普通のギアよりも一回りは大きく、動きは遅いが圧倒的なパワーだった。

『ちっ! おい、シンジ! フェイ! 俺が足止めするからお前ら後ろから・・・・!』

 バルトの言葉を遮り、ギアの背中に付いてるバーニアからミサイルが飛んで来た。

「ちっ!」

 シンジはヴェルトールとブリガンティアを庇うように立って、ATフィールドを展開してミサイルを防いだ。

「フェイさん!」

 シンジが叫ぶとヴェルトールがギアに向かって飛び出す。ギアはそれに対応しようと拳を振り上げるが、ブリガンティアの鞭がギアの脚に巻き付き、仰向けに倒した。

 そして、倒れたギアの胸部にヴェルトールは拳を叩き込んだ。するとギアはビクビクッと震えたが、やがて活動を停止した。

「ふむん・・・・ナイスチームワークですね」

『ふう。この野郎脅かしやがって。とんだ見かけ倒しだったな。なあフェイ?』

『・・・・・・・・・・・・』

『さて・・・と。どうやらこの先が出口のようだぜ。こんな辛気くさい洞窟とは、さっさとおさらばだ・・・』

「そうですね。太陽の光が恋しいです」

 バルトの言葉にシンジも苦笑して賛同した。すると突然、倒れていたギアがブリガンティアの背後で立ち上がった。

『な、何!?』

『どいてろ! バルトっ!!』

 驚愕するバルトを退け、ヴェルトールがギアに突撃した。そして奇妙な技を繰り出すと、ギアは爆発し、跡形もなく吹き飛んだ。

「な・・・・」

 その技の威力は今までのフェイの技と桁が違い、シンジも驚きを隠せなかった。

『お、おい・・・・今、何やったんだ、お前?』

『・・・・・・』

 唖然とするバルトの問いにフェイは答えずに黙っていた。

『おいっ!』

『・・・・・・あ?』

 怒鳴られ、フェイはようやくハッとなった。

『あ? ・・・・・・じゃねぇよ。今のは一体何なんだよ?』

『・・・・・・いや・・・俺にも分からない』

『凄ぇじゃねぇか。今の攻撃は。あのデカ物が一瞬で消し飛んだんだぜ? あーいうのはもっと早く出してくれよ』

 気楽に言うバルトだったが、フェイは首を静かに横に振った。

『俺は・・・・・・あんな技は知らない・・・何故出せたのかも分からないんだ』

『ふーん。まぁ、そんな事どっちだって良いじゃねぇか。とにかく助かったぜ』

『・・・・・・・・・』

『邪魔者も片づいた事だし、出ようぜ、フェイ、シンジ』

「え、ええ・・・」

 シンジはバルトの言葉に頷きながらもブリガンティアの後に続いて外に出るヴェルトールを見つめていた。

「(また神か・・・・)」

 神を滅ぼす者の憑代・・・・。

 また新しい謎が増え、思考の海に囚われながらもシンジは二人の後に続いて外に出た。






To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

ジャック様より「悠久の世界に舞い降りた福音」の第四話を頂きました。
いや〜懐かしいですね〜、バルタ爺さん。そういえばこんな感じでしたよねぇ。原作のシーンを思い出しました。
さて、巷で盛り上がっている(?)シンジ君のお相手ですが、管理人としては、やっぱ「エリィ」が一押しかな〜。
第一印象もさして悪くなかったみたいだし、余程ヘタレ君よりは相応しいかと・・・(笑)。
是非、連綿と続く前世の呪縛から解き放ってあげて下さい♪(某ストーカー男?からも♪)
そうですねぇ〜、「マルー」や「マリア」あたりだと、確かに萌えますけど、さすがにお子ちゃま(そうなのか?)すぎて、果たしてご高齢なシンジ君の食指が動くかどうかですねぇ〜(爆)。やっぱ18歳以上っすね♪(おい)
あ!この際、ハーレムってのもOKでは?(ニヤリ)
コホン・・・暴走はこれくらいにして、次話に進みましょうか♪
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