第二十一話
presented by ジャック様
孤児院は孤島に建てられた小さな家だった。そこに入ると子供達が物珍しそうにシンジ達を見てくる。
「注目されてますね〜・・・・お?」
その中にシンジはプリメーラがいたのを見つける。そしてニヤッと本人は認めたくないがお父様ソックリの何かを企んだ時の笑みを浮かべ、今度は親友から受け売りのアルカイックスマイルを浮かべる。
「よぉ〜し、子供達! お兄ちゃんと一緒に遊ぼうじゃないか〜!」
ビシッと親指を立てて叫ぶシンジに、バルトが思いっ切りバコッと殴る。
「アホか! お前、此処に何しに来たんだよ!?」
シンジは涙目で頭を押さえながらバルトを見上げる。
「ビリーさんにお礼を言いにです・・・」
「じゃあ、まずソレを終えてからだ!」
「は〜い・・・」
ショボンとするシンジにエリィとシタンは苦笑し、孤児院の中へ入って行った。
孤児院の中ではビリーが驚いたようにシンジ達を見てきた。
「皆さん。どうしたんですか?」
するとエリィが一歩前に出てペコリと頭を下げた。
「ビリーさん、今回のフェイの事でちゃんとお礼を言いたくて・・・どうも、ありがとうございました」
「ああ、気にしないでください。たとえ信ずる神が違っても救いを求めている方々を放ってはおけませんからね」
そう言って微笑むビリーにエリィも微笑み返した。と、その時、孤児院の扉が開かれ、シグルドが入って来た。
「若、ユグドラシルのレーダーが何やら巨大な艦影を捉えました。至急、お戻りください」
バルトが「おう」と答えると、再び孤児院の扉が開かれ、今度はジェサイアが入ってくる。そのコートの裾にはプリメーラが隠れるように掴んでおり、それを見たビリーが不服そうな顔をした。
ジェサイアはシグルドを見て「お!?」という顔になる。
「そこの白くて黒いの。お前、シグルドか?」
その言葉にシグルドはムッとなって言い返す。
「人を見て白とか黒とか・・・一体、何なんです?」
「ジェサイア先輩ですよ、シグルド」
首を横に振ってシタンが言うとシグルドは目を見開いて、ジェサイアを見る。
「せ、先輩!?」
「おう。久し振りだな」
軽いノリで手を上げるジェサイアに呆然としているシグルドにビリーが恐る恐る話しかけてきた。
「シ、シグルド兄ちゃん?」
シグルドはビリーに気がつくと、思い出したように笑った。
「ビリーか? 大きくなったなぁ・・・笑った顔なんてラケルさんの生き写しだ」
「シグルド兄ちゃん!」
ビリーは本当に嬉しそうにシグルドに駆け寄る。と、そこへ不機嫌そうなバルトが口を挟んで来た。
「け! な〜にが、シグルド兄ちゃんだ! イイ子ぶりやがって。やい、テメェ! ウチのシグルドとどういう関係なんだよ?」
その言葉にビリーがムッとなって、バルトを見返す。
「君こそ、なんでシグルド兄ちゃんにそんなに偉そうなの? 何様のつもり?」
バチバチと火花を散らす二人。シンジとエリィは少し離れた位置から見ている。
「王子様ですよねぇ・・・」
「見えないけどね・・・」
などとボソボソと呟く。シグルドは苦笑しながらバルトに事情を説明した。
「若、ビリーとはユーゲント時代、しばらく先輩の所で厄介になっていた時に知り合ったんですよ」
「ま! 堅苦しい立ち話も何だ。おい、シグルド。お前の艦で飲みながら話そうぜ。どうせ、バーの一つや二つあるんだろ? ヒュウガも付き合えよな」
そう言ってシグルドの返答を聞かず、ジェサイアは出て行った。シグルドはシタンを見て呆れ返った様に尋ねた。
「どうする?」
「仕方ありません。ああなった先輩を止めるのは不可能です」
「はぁ・・・」
シグルドは溜め息を吐き、バルトに一礼するとシタンと共に出て行った。
「・・・・・嵐みたいな人ですね〜」
「そうね・・・」
シンジが呟くとエリィが同意した。シンジはふと自分をジーッと見ているプリメーラに気付く。
シンジはニコッと微笑み、おもむろにプリメーラの両手を掴んだ。
「せっせっせ〜のよいよいよい♪」
すると、いきなり歌いだしてリズムに合わせるように両手を交差させるが、プリメーラは分かってないのか首を傾げた。
「何だ、それ?」
「あ〜・・・」
どうやらバルト達も知らないようで、シンジは視線を泳がせた。
「そうだ!」
と、何か思い付いたのかシンジはビリーに紙とペンは無いか尋ねた。
「それだったら向こうの部屋にあるけど?」
「ちょっとお借りします!」
シンジは楽しそうな笑みを浮かべ、ダッシュで向こうの部屋へ駆け出した。エリィ達は呆然と見ていると、三十分ぐらいしてシンジが出てきた。
「プリメーラちゃん、外おいで。面白いもの、見せて上げるから」
そう言ってシンジが手を差し出すと、プリメーラは無言でギュッと彼の手を握った。それを見てビリーが目を見開く。シンジとプリメーラはそのまま外に出て行った。
「・・・・彼、何者? プリムが懐くなんて・・・」
その呟きにバルトとエリィはお互い見合って「さぁ?」と首を傾げた。
「は?」
「そういえばシンジ君って、昔話は良くしてくれるけど何処まで本当なのか分からないわね・・・」
「いつの間にやら逸らされたりしてるものね・・・」
実を言うと殆ど知らないのが実情な人達であった。
「はい! じゃあシンジお兄さんの昔話、始まり始まり〜♪」
庭ではシンジが子供達を集めて紙芝居などをやっていた。帽子被って、台の上に大きな桃の絵を描いた画用紙を置いている。
「お話は桃太郎で〜す」
「モモタロウ?」
子供達が一斉に首を傾げる。シンジはニッコリと笑うと、子供の頃に何度も読んだ桃太郎の話を聞かせた。
最初は分からなかった子供達もシンジの話術に話にのめり込んでいった。
「こうして桃太郎は鬼が島から沢山の宝物を持ち帰り、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らしました。めでたし、めでたし」
パチパチパチ。
「おろ?」
と、そこへ拍手の音が子供達の後ろから聞こえたのでシンジはそちらを向いた。そこにはメガネをかけ、微笑を浮かべた男性がいた。
「あ! ストーン司教!」
子供の一人が声を上げると、ストーンと呼ばれた男性はシンジの方を見た。
「中々、面白いお話でした。犬、猿、雉を率いて鬼退治ですか」
「はぁ・・・」
大人に冷静に話の判断を言われると少し戸惑うシンジ。
「ストーン司教!」
そこへビリーが孤児院から出て来て、ストーンに駆け寄って行った。シンジはふと、プリメーラが服をつ掴んでいるのに気付いた。
彼女は神妙な顔をしてストーンを見ている。
「・・・・・あのストーンって人が苦手かい?」
プリメーラはシンジを見上げ、コクッと頷いた。シンジはニヤッと笑みを浮かべ、ストーンを見る。
「うん。僕も苦手・・・いや、嫌いかな。ああいうタイプの人は」
腹の底で何を考えているか分からない・・・・そういったタイプの人種だとシンジの直感が告げていた。
「え? 死霊ですか?」
「ええ。実は行方不明になってた教会の輸送船が見つかったが全く応答がありません・・・おそらくは死霊にやられたのでしょう」
その会話にシンジはピクッと眉を吊り上げた。
「分かりました。僕が行きます」
「ですが、そこは海流が急で小さな船じゃ危ないのです。大型艦でもあれば話は別なのですが・・・」
ストーンが言うと、静観していたバルトが一歩前に出た。
「何なら俺の艦を使えよ。ユグドラなら海流の流れなんて関係ねぇよ」
「え? でも・・・」
「フェイを助けてもらった恩もあるしな。乗ってけよ。そこまで送ってってやる」
そんなバルトに、すかさずエリィが同意した。
「ええ。お礼だけじゃ物足りないわ・・・協力させてビリーさん」
「おい、シンジ! お前も良いよな?」
「艦長がお決めになった事には従いますよ・・・」
両肩を竦め、答えるシンジはチラッとストーンを見た。すると彼と視線が合い、ストーンは慌てて逸らす。
「(見え見え・・・かな)」
クスッと笑い、シンジはストーンには裏があると確信した。そしてビリーはユグドラシルで死霊退治へと向かい、シンジ達も同行する事になった。
To be continued...
〜あとがきの部屋〜
シンジ「アスカ〜お茶飲む?」アスカ「いらな〜い・・・(ボリボリ)」(煎餅食べながら本編を見ている)
シンジ「・・・・・ふぅ」(同じく本編を見ながらお茶を飲んでる)
アスカ「シンジ〜・・・」
シンジ「ん?」
アスカ「何、一人だけお茶飲んでんのよ?」
シンジ「今いらないって言ったでしょうが!!」
アスカ「急に飲みたくなったのよ」
シンジ「一体、何様のつもり!?」
アスカ「アスカ様よ!」
シンジ「僕、神様!」
アスカ「・・・・・・・はん!」
シンジ「うわ!? 鼻で笑ったよ!?」
アスカ「つべこべ言わず茶を入れる!」
シンジ「・・・・・・・はい」
アスカ「にしてもアンタ、暫く経って性格悪くなったわね〜」
シンジ「どうも・・・」
アスカ「って〜か、あのストーンって絶対に冬月副司令と同類ね」
シンジ「何で?」
アスカ「笑顔で裏で何やってるか分からない中間管理職」
シンジ「ぶっ!」
アスカ「それよりアンタもアンタで何で紙芝居なのよ? 外だったらサッカーとかドッジボールとか色々あるでしょ?」
シンジ「・・・・・・僕、体育以外でやった事ないから」
アスカ「あ〜、友達いなかったもんね。生来のヒッキー」
シンジ「・・・・・・・・・」
アスカ「大体、死霊って何よ? 使徒の方が格好良いじゃない」
シンジ「まぁね〜・・・(ってか名前関係あるんかい?)」
アスカ「ねぇシンジ・・・」
シンジ「何?」
アスカ「あのチュチュって可愛いから連れて来なさい。んでもって、ペンペンと交配させない?」
シンジ「あ! そろそろ帰らないと! アスカ! お茶自分で入れてね!!」
アスカ「あ!? こら、ちょっと待てぇ!!」
フェイ「・・・・・あのシンジ君が・・・凄い娘だ。世界は広いな」
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