悠久の世界に舞い降りた福音

第二十六話

presented by ジャック様


「高っ!!」

 シンジの言葉がバベルタワーの全てを物語っていた。雲を突き抜けるぐらい巨大なバベルタワー。ユグドラシルのブリッジで誰もが、その高さに唖然としていた。

「これ、登るんですか?」

「しょうがねぇだろ。此処しかシェバトに行く道がねぇんだから」

 シンジのボヤきにバルトが舌打ちしながら言う。

「あ、でも僕のエヴァだったら三機ぐらい引っ張って頂上まで行けるかな?」

 だが、その言葉に皆の表情が一瞬で強張った。

 


「じゃ! そういう訳で宜しくなシンジ君」

「お願いね」

「しゃあ!」

 シンジの目の前ではジャンケンに勝ったフェイ、エリィ、バルトの三人が笑っていて、負けた方達は悔しそうに歯噛みしていた。

 シンジは三人を見回すと、ふとフェイと目が合った。

「そういえばフェイさん、まともな出番、久し振りなんですよね〜。大体、一月半振りぐらいの出番ですか。此処で出撃しなかったら、余計に影薄くなりますね」

 ガーン、とフェイは頭を金槌で叩かれたぐらいの衝撃を受け、ブリッジの端っこで縮こまった。他の皆もシンジの言葉が真実なだけにフォローできない。せめて、もう少しオブラートに包んだ言い方があったろうに、直球だから性質が悪い。

「さぁ〜て、早いトコ出撃しましょうかね。シェバトが僕らを待ってますよ〜」

「わざとだな・・・」

「わざとね・・・」

 バルトとエリィが落ち込むフェイを気遣いながら、それぞれのギアに乗り込んだ。

 

『ひょええええええええええ!!!!!』

「うっさいです」

 悲鳴を上げるバルトをシンジが一蹴した。ヴェルトールとヴィエルジェはそれぞれエヴァが掴み、ブリガンティアはヴェルトールとヴィエルジェが掴んでいた。

『凄いな、シンジ君・・・・まさか、そんなに飛べるなんて・・・』

「はっはっは♪」

 と言って笑ってはいるが、実は飛んでるのではなく跳んでるのだ。サハクィエルの能力でエヴァの周りだけ無重力状態にすれば軽く跳ぶだけで何処までも飛んで行くのだ。

 ドギュンッ!!

「!? 何だ!?」

 外壁を飛んでいると、突如、砲撃が襲って来た。振り返ると、巨大な空中戦艦がこちらに向かって砲撃を行っていた。

『ゲブラー艦!?』

『どわああああああ! こ、こんなトコで攻撃するな〜!』

「はぁ・・・」

 シンジはゲブラーのしつこさに思わず溜め息を零した。すると近くに降りられそうな展望台のような所があったので、そこに着地した。

 やがてゲブラー艦から金と白のギアが飛んで来た。金色のギアは剣を構え、翼を広げた。

『待っていたぞ、フェイ。先日は海中という状況と、思わぬ裏切り者の助勢によって不覚をとったが、今度はそうはいかん。貴様らを此処から上に行かせはしない』

『ラムサス!』

 どうやら金色のギアに乗っているのはラムサスのようだ。

『ふふ、久し振りね坊や達』

 もう一体のギアからはミァンの声が聞こえて来た。

「(丁度良い)」

 シンジはニヤッと笑みを浮かべ、ミァンのギアに光の槍を放った。彼女は咄嗟の光の槍を避けるが、次の瞬間、エヴァがタックルして来た。

 エヴァとミァンのギアはそのまま地上に落下して行った。

『ミァン!』

『閣下! 私は大丈夫です! 閣下はそいつ等を!』

『シンジ君!』

「ちょ〜っと遊んで来ますね」

 シンジは軽いノリで言って、雲の下に落っこちて行った。

 

『ふふ・・・私をご指名かしら、坊や』

「あのラムサスって人より、貴女の方が気になるんで」

 雲の下ではエヴァとミァンギアが対峙していた。ミァンは妖艶な瞳をして冷笑を浮かべる。それはラムサスの前では決して見せない彼女の裏の顔だった。

『私はただの閣下の秘書よ?』

「とは思えないんだよね。隠してるようだけど貴女から感じる力は・・・・・・母」

 ブァッ!!

「!?」

 するとミァンギアから凄まじい力が溢れ出てシンジは目を見開いた。その力は覚えがあった。あのサードインパクトの時に感じたものに似ていた。

 世界全てを包み込んだアンチATフィールド・・・・それに非常に酷似していたのだ。

 ドロッ!

 するとシンジの体がLCLになって溶け始めた。

『ふふ・・・元あるべき姿に返りなさい・・・』

「ざ〜んねん♪」

『!?』

 だが、シンジの腕は一瞬で再生し、エヴァをミァンギアに突っ込ませた。

『馬鹿な! 【解放領域】が効かない!?』

 ミァンは信じられないといった様子で叫んだ。エヴァとミァンギアは互いの手を掴み合って力比べをするが、シンジの方が当然余裕だった。

「プロトアイオーンbQ・・・」

『!?』

「ずっと不思議だった・・・何で彼女だけがエーテル攻撃をして、他のプロトアイオーンと同じ壁を作り出せないか・・・・プロトアイオーンbQはbP同様、特別なのさ」

『まさか、貴方・・・・“ラジエル”の内容を知ってると言うの!?』

 ミァンの驚いたような声を聞き、シンジは眉を顰めた。だが、何か分かったようにフッと笑みを浮かべた。

「なるほどね〜・・・何となくカラクリが読めてきたよ・・・・・貴女が・・・“母”なんだな」

『ふ・・・本当に賢い坊やね。本気で貴方が何者なのか知りたくなったわ』

『ぐおおおおおおおお!』

 その時、上の方で戦っているラムサスの声が聞こえた。ミァンはハッとなり「閣下!」と叫ぶと上昇して行った。

 シンジは彼女のギアを見上げながら、眉を顰めた。

 

『おお、シンジ! 無事だったのか!』

 フェイ達のギアは膝を突いて満身創痍のようだった。

「三対一なのに・・・・情けない」

『うっせぇ・・・』

 どうやらかなり苦戦したようで三人とも疲れていた。だがミァンギアが上がって来たのにシンジが戻って来なかったから心配はしていたようだ。

「じゃ、早く行きますか」

『そうだな』

『ええ』

『おう』

 三人が頷くと、最初のような態勢で再びエヴァが引っ張って外壁を飛んだ。

「(ん? 何だコレ?)」

 その際、シンジは外壁に設置された巨大なレンズが目に入った。太陽光を集めるものなのか、あるいは別の何かの目的で作られたのか・・・?

 まぁ、このバベルタワーも相当古いものなので何があっても不思議ではない。

 やがて四体は頂上部にまで到達した。頂上部はまるで何か置かれていた跡のように所々壊れていた。

 恐らく此処にシェバトがあって、それが空に行ったのだろう。

『通信施設は? 近くに何かないか?』

「う〜ん・・・そういったものは見当たり・・・・・!?」

 シンジはハッとなって三人のギアを下ろし、真上を見上げた。

『どうした、シンジ君?』

「何か・・・来る」

『え?』

 すると一体の巨大ギアが空から降りて来た。そのギアは巨大で、通常よりも一回り大きいものだった。背中にはポッドのようなものが付いており、頭部に髪をロールにした少女が乗っていた。

『此処から先はシェバトの領域です。それを侵すものは、何人であろうと私とこのゼプツェンが排除します』

『ちょ、ちょっと待ってくれ。俺達はただ・・・・』

『行きます!!』

 少女が問答無用でギア――ゼプツェンで襲い掛かって来た。ラムサス戦で疲れ果てているフェイ、エリィ、バルトに舌打ちし、シンジはエヴァを三人を守るようにして立たせる。

「はぁ!!」

 ガキィン!!

 そしてゼプツェンの繰り出して来たパンチを同じようにパンチで受け止める。

 ビキッ!

「げっ!」

 だがパワー差が歴然のようでエヴァの関節部が悲鳴を上げた。

「(う〜む・・・どうしよう? 流石に倒す訳にはいかないだろうし、けどこのままじゃ腕イカレちゃうな〜)」

 何気にピンチなのだが焦った様子の無いシンジ。このまま手を引けば、後ろのフェイ達に当たってしまう。

「(あ、そ〜だ)」

 するとピーンと豆電球が光った感じになり、シンジはエヴァのコックピットを開いた。そして目にも留まらぬ速さでエヴァとゼプツェンの腕を伝い、一気にその頭上まで走った。

「え?」

「チャックメイト」

 シュッとシンジは少女の後ろから手刀を当てた。少女はツゥと冷や汗を垂らす。シンジはニコッと笑って囁くように言った。

「残念。ギアがコックピット式じゃなかったのが仇になったね」

「・・・・・今の動き、とても人間とは思えませんね」

 少女は年齢とは不似合いな態度で話した。シンジは苦笑し、手刀を引いた。少女は何で引くのか分からず、驚いた顔でシンジを見た。

「どうして引くんですか? 此処がゼプツェンの上である事を忘れたんですか?」

「まさか♪ 忘れてないよん♪」

 シンジはそう言って指を立てた。

 バリィッ!!

 すると結界がゼプツェンの周りを取り囲み、動けないようにした。少女は生身でゼプツェンの巨体を押さえ付けるシンジの力に驚愕した。

「さて・・・コレで君のギアは動けない。さ、僕と生身で戦うかどうか判断しなよ?」

 少女はシンジの威圧感に気圧されて足を引いた。シンジ自身、この少女は生身では戦う力が無いと確信している為、こういう形に追い込んだのだ。

【そこまでです、マリア。その方々をこちらに】

 すると、その時上空から声が響き、シンジは顔を上げた。少女が頷くと空から巨大な円盤のようなものが降りて来た。

「すいませんが、このバリアーみたいなものを解いてください」

「えぇ〜?」

「・・・・何で残念そうなんですか?」

「いや、別に」

 ガクゥッと少女は力が抜けて倒れそうになるが、ポフッとシンジに抱きかかえられた。

「はっはっは。冗談だよ」

 パチッと指を鳴らすと、ゼプツェンを拘束していた結界が消え去った。少女はシンジから離れると、恥ずかしそうに咳払いをしてフェイ達に向かって頭を下げた。

「ようこそ、シェバトへ。我々は皆様を歓迎致します」

 少女はニコリと微笑んだ。







To be continued...


〜あとがきの部屋〜

アスカ「・・・・・・・・・・」(←ゲームをプレイ中)

シンジ「大変だね〜、バベルタワー・・・あ、また落ちた」

アスカ「うき〜! シンジ! あんた全国のユーザーさんに謝りなさい!! 何よ!? あの反則的な昇り方(?)!?」

シンジ「だ、だってバベルタワーって面倒なだけで、描写しにくいんだもん」

アスカ「だからってアレよ・・・・バベルタワーって言えばゼノギアスをプレイした人の90%が挫折を味わうステージよ!!」

シンジ「だよね〜・・・あの警告君(敵の名前)に乗っかる所は落ちたらやり直しだもんね・・・」

アスカ「そうよ。作者だって、バベルタワーは古今東西RPGで一番嫌なステージって嘆いてたんだから!」

シンジ「だから僕は裏技使って昇ったのさ♪」

アスカ「爽やかに言うなぁ〜!」

シンジ「けど、とうとう出たね〜・・・マリア嬢」

アスカ「名前は出てないけどね・・・」

シンジ「ちなみに作者さん的にゼノギアスで好きな女の子は〜・・・」

1位:マリア&ケルビナ
2位:セラフィータ
3位:マルー
4位:エメラダ
5位:ユイ
6位:プリメーラ
7位:エリィ
8位:ドミニア
9位:トロネ
10位:ミァン

シンジ「ってな感じかな」

アスカ「ヒロイン低っ!」

シンジ「何か自己犠牲的な女の人は嫌い・・・っていうか苦手なんだってさ」

アスカ「カップリングはダントツで若マルなのにね〜」

シンジ「っていうか、このゲーム自体、男女カップリング少ないでしょ・・・」

アスカ「まぁね。若マルか、フェイエリぐらいしかないものね」

シンジ「さ〜て、次回はシェバト攻防戦かな。作者が連載初期から考えてたのが出来るかどうか!?」

アスカ「え? そんなのあったの?」

シンジ「うん。シェバトで戦う時、絶対やるぞって決めてたみたい」

アスカ「行き当たりバッタリの作者にしては珍しいわね」

シンジ「乞う御期待!」

マルー「僕は若の恋人じゃなくて子分だもん! 断じて、そんな間柄じゃないからね!」


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