暗闇の円舞曲

第四話

presented by 樹海様


 その日、シンジは日本に来ていた。
 来た理由は、アルトルージュの妹という事に一応なっている、真祖の姫君アルクェイド・ブリュンスタッドへの連絡事項の為だった。昨今では更に力の安定し、死徒二十七祖の第十八位として相応しい力を身につけたシンジは死徒の間では、死徒最上層部からの重要事項に関わるメッセンジャーとして認識されており、お陰で最近ではすっかりお爺ちゃんと化した(演技が何時の間にか飲み込みも早く素直なシンジを気に入って本当のお爺ちゃんのようになった)トラフィムの元だけでなく、ヴァン・フェム財団やアルクェイド等その他の重要な場所への連絡役も担うようになったのだ。
 尚、赴く際にはきっちりと着こなしたスーツを着ている(色は常に灰色)。
 特に昨今の動きからして、本当の動きがあるのは近いという判断から、アルトルージュはアルクェイドに断りを入れる事にした。アルクェイドを、殺人貴をどうこう出来るような連中ではないと分かってはいるだけに、下手に騒ぎが起きて、しかもシンジが関わる事がほぼ確定な以上、ここでアルクェイドと揉めるネタを作るのは避けたかったのだ。加えて、将来的に自分が日本に行く事になるかも、という思惑もある。
 幸い、別にアルトルージュが関わって陰謀を進めているのではなく、人間が行っている策謀にアルトルージュが首を突っ込んだだけ、という事を知り、割とすんなりと向こうからの了承は得られた。
 さて、帰るか、という状態となった時……アルトルージュから第三新東京へと向かうよう指示が来たのだった。


 そのまま第三新東京へと向かい、途中空港に寄って、急ぎ運ばれてきた書類を受け取る。
 表向き住んでいる事になっている家からアルトルージュの元へと転送されていた為だ。ちなみにミサトの写真に関しては同封されていたものは即効破棄されて、彼女の国連軍時代のものがどこかから調達されてきて、同封されていた事を付け加えておく。
 別にアルトルージュがシンジに見せたくないとかではなく、一応念の為に事前開封した部下が『このようなものを見せる等お目汚しに他ならぬ』と手配した為だったりする。
 本来ならば早く済ませてしまいたかった。
 だが、要件を済ませ、転送されたのを再び持ってきたりしている間に奇しくもチケットに記されたのと同じ日付になっていた……ので、ありがたくチケットを有効利用させてもらった。

 セカンドインパクトは地軸をも歪めた。
 結果として、日本は常夏と化し、今も日がじりじりと照っている。デイライトウォーカーであるシンジは灰になったりはしないが、かといって死徒には違いないから心地良い訳ではない。
 電車が停止してから一時間少々は待った。
 だが、未だ誰も迎えに来ない。
 「……携帯も通じないし。こういう時にでも確実に繋がる回線ぐらい確保しておいて欲しかったね」
 そう呟くと、シンジは横に置かれたトランクを持ち上げ、事前にトラフィムの伝から受け取っていたNERV方面へと歩き出した。

 一方その頃。
 疾走する青いアルピーヌ・ルノーがあった。
 「あ〜拙い、拙いわ〜〜!」
 運転する女性こそNERV作戦部長葛城ミサトだ。彼女の名誉の為に付け加えておくならば、彼女本来の待ち合わせ場所に時間までには着いていた。が、一時間待っても全然出てくる様子がない為NERVに確認の電話を入れ……使徒接近により電車が止まった事を告げられたのだった。
 ヘリを呼ぶかとも考えたが、ここからなら自分が動いた方が早い。ましてや、使徒の進行方向は正に電車が止まった方向と一致する。
 これでせめてシェルターへの避難が確認されていればまだいいのだが、生憎シェルターに入る際の監視カメラの映像をMAGIが分析しても、シンジの姿は確認出来ていない。つまりはまだ停止した駅近辺にいる可能性が高いという事だ。
 「使徒との戦闘に巻き込まれる前に確保しないと…!」
 高速でぶっ飛ばす車に乗っていて、線の細い少年に意識が行っていた葛城ミサトだったが、一瞬誰かとすれ違った気がした。だが、ちらりとバックミラーとサイドミラーに目を走らせるも人の姿はない。
 気のせいか。
 そう割り切って、更に加速すべくアクセルを踏んだ。

 シンジはシンジで、困っていた。
 縮地の歩法で飛ばしていた所、高速でカッ飛んでくる車を視認。瞬時のすれ違いで乗っているのが待ち合わせの女性だと確認したが、生憎双方とも高速で動いている。シンジが慌てて立ち止まった時には既に車は視界の向こうへと走り去っていた。シンジ自身ならば確認出来る位置までならすぐだろうが、彼女には無理だろう。
 かといって追いかける等論外だ。最高速で走る車と同じ速さで走れる人間など笑い話にもならない。
 その上でシンジはその脳裏にトラフィムらが手配してくれたNERVの情報からミサトに関する情報を頭に思い浮かべていた。 
 アルトルージュは楽しむ為に敢えて分からない、という状況を楽しんでいたが、トラフィムは違う。そも、何故彼が頭が悪いなどと称されるのか?それは彼が死徒としては例外的に情が厚いという事に由来する。つまり、彼の為に命を投げ捨てる部下がいたとして、気軽に切り捨てられない、その方が楽だとしてもそれをせずに済む方法を模索する。だから頭が悪い、などと称される訳だが、同時にそれが彼を死徒の最大勢力に押し上げたとも言える。
 とにかく、そういう死徒である以上、情報収集は彼にとっては重要だ。情報があれば、余計な犠牲を減らす事が出来る。アルトルージュには彼女の遊びを邪魔する腹はないので黙っているが、シンジにはこっそり渡してくれていた。それらから葛城ミサトの情報を引っ張り出してみると……。
 ・兵士としての経験
  実戦経験あり、それなりに優秀な成績を残している
 ・指揮官としての経験
  小隊規模はあるものの(ただし実質的な指揮は経験豊富な軍曹による)、大規模な連携作戦に関してはなし
 ・参謀としての経験
  そもそも独自に作戦を立案して実際に作戦を実行した経験はなし(机上演習のみ)
 ・対外交渉経験
  軍人として民間への命令は行った経験あり。他の同列組織との交渉は殆どない
 トータルで『兵士としてはそれなりに優秀、軍人としては並をやや下回り、指揮官や参謀としては圧倒的に経験が不足している』
 となる(詳細は後書き参考)。

 何とも不安になる評価だ。
 と、言ってもこれはミサトが悪いのではない、そうした人間を仮にも作戦部長という実際に戦闘になった場合の最高責任を持つ地位に据えるのが間違っている。
 一応上にNERV総司令、副指令に技術部長といるが、全員が学者出身であり、軍人経験など皆無。ただ単に軍事組織の長の地位にある為に便宜上階級を得ているという不安さだ。これでは万が一作戦部長が問題のある作戦を立てたとしてもどこが間違っているかすら分かるまい。出来る事ならば、経験豊富な将官を頂点に据え、ミサトは参謀チームの一員として経験を積ませながら、というのが理想だろう。
 そんな事をつらつらと考えつつも足を止めていなかった為にもうNERVのゲートが見えてきた。
 葛城ミサトの事に関しては、あちらで伝えればいいだろう、とカメラの圏外で速度を落とし、わざわざ歩いてきたという風を装っていたシンジは背後で何か光ったのを感じた。爆音もかなりの轟音がここまで響いてくる。
 「巨大な爆弾でも使ったかな?」
 そう呟いてゲートに向かったシンジは、探し回ったミサトが懸命の退避で何とか逃げ切ったものの車がべこべこになって落ち込んだ事など知らない。

 
 「見たかね!これが我々の切り札だよ!」
 その頃、NERV発令所では戦略自衛隊の将官の一人が叫んだ。その視線の先には発令所の大スクリーンとそこに映るきのこ雲が映っている。N2地雷。クリーンな核とも称される兵器が今正に炸裂したのだった。確かにその破壊力を知っていれば、まともに直撃した状態で生物が生きているとは思えないのも無理はない。
 だが、その声を投げかけられたであろう二人……碇ゲンドウNERV総司令と冬月コウゾウNERV副司令は共に平然としてその姿勢すら崩そうとはしなかった。
 戦果確認が出来ないという報告に「あの爆発だ、ケリはついてる」と嘯いた将官だったが、その声は間もなくの「目標健在!」の報告に「馬鹿な!?」「街一つ犠牲にしたんだぞ!」「化け物め…」と口々に喚く羽目に陥った。
 まもなく、電話が入り、対使徒戦の権限委譲が命じられたのだろう。
 「我々の兵器が通用しなかったのは認めよう……だが、君なら勝てるのかね?」
 最早そう告げるのが精一杯だった。もっともその嫌味を篭めた口調も。
 「その為のNERVです」
 と傲然と答えるゲンドウには何の効果もなかったようだが。
 「………期待しているよ」
 嫌味半分だが間違いなく希望半分の思いを込め、戦略自衛隊の将官三名は自らの居場所ではなくなったNERV発令所から退室した。
 「それでどうする」
 退室後、平然とした口調で冬月が尋ねる。
 「初号機を起動させる」
 「初号機をか?だがレイは」
 「問題ない、もうすぐ予備が届く」
 だが、ここより状況は二転三転する事になった。
 「司令!葛城一尉より連絡が入っております!使徒戦闘に伴い列車の運行が停止、急遽停止した駅へと向かうも該当人物の姿なく、間もなくN2兵器作動の時間が迫る為離脱する、との事です!」
 その言葉に椅子を蹴立てて立ち上がった。
 「なんだとっ!」
 ゲンドウの焦りも当然。ゼーレの意図するサードインパクトならば、別にシンジでなくとも良いが、ゲンドウの意図するものであればシンジという駒が必要になるからだ。だが一瞬真っ暗になりかけた視界を続いての報告が救う。
 「司令!」
 「なんだ!」
 「地上のゲート警備より連絡!碇シンジを名乗る人物が列車停止の為直接こちらに来た、と告げて欲しいとの事で…」
 ゲンドウは安堵したが、その心理をあくまで内に抑え込み、外に出す事はなかった。そういう意味では、目的を同じくする冬月が瞬間強張った顔を緩めて深くほっとした溜息を吐いた辺り、まだ可愛げがあると言える。
 「そうか……ならば……そうだな、赤木博士を向かえに出してくれ」
 表に出したのは少しの思案とその言葉だけだった。この後の予定を考えると下手な人間に行かせる訳にはいかないし、かといって本来その役割を担うべき葛城ミサトはまだ戻って来れていない。かといって自分や冬月には別の役割がある。消去法で残ったのが、赤木リツコだった、という訳だ。
 
 さて、赤木リツコはNERV技術部長の地位にある。純粋な地位としてもNERV内におけるナンバー3という地位にある女性だ。
 当然ながら、本来は14歳の子供一人の迎えに行くなどという仕事をするような人ではない。例えそれが総司令の息子であっても、だ。それを言ってしまえば、そもそも作戦部長が直接迎えに来る、という事も普通はない。
 では、何故か。
 それはこの少年が、現在のNERVにおける唯一の希望であるからに他ならない。
 NERVの対使徒迎撃兵器エヴァンゲリオン。セカンドインパクトの際に南極で確保された使徒の細胞から培養されたクローンをその素体とした人造使徒とでも呼ぶべき人造人間。その制御はコアに取り込ませた人間の縁者をパイロットとする事で、パイロットを守ろうとするコア内部の反応を引き出し、シンクロさせて機体を操る、というものだ。とっても外道なシステムだが、現状これ以上の安定した成果を上げる事は出来ていないのだから仕方ない。
 そして、現状NERV本部にあるエヴァンゲリオンは二機。プロトタイプである零号機とテストタイプである初号機。パイロットは……現在不在。正確には本部には零号機専属パイロット綾波レイがいるが、彼女は先日の起動実験で重傷を負い、現在戦闘に耐える状態ではない……一応シンジを動かす種としての役割は背負ってもらう予定だが、戦闘に放り込む予定はない。それは単なる機体の無駄遣いだ。
 あくまでパイロットは碇シンジであり、そこからゼーレとは異なるNERVの補完計画が始まる…。
 そして、それは。
 「はじめまして、貴方…が……?いかり、しんじ、君?」
 いきなり最初から躓いていた。
 リツコからすれば、学生服に黒髪の気弱そうな少年をイメージしていたのだ。
 何故か最新の写真等がなかったが、年齢や育てられた環境その他を統合すれば、そうなる筈、だったのだが……目の前にいるのは灰色がかった銀髪に赤い目、纏った衣装は品のいいグレーのスーツ。荷物等は特に見当たらない。
 余りに想像と違う姿に思考停止しかけつつも、声を出し…。
 「そうですが、何か?」
 あっさりとそれは肯定された。
 
 「……本当に貴方シンジ君なの?」
 「ええ、正真正銘碇シンジですが」
 ちなみにさりげなく警戒にあたる護衛がリツコの傍に寄っていたりする。
 「……でも、貴方顔立ちはともかく、髪や目は日本人っぽくないんだけど……それにその服って一体?」
 碇シンジは両親共に純然たる日本人で、外国の血は入ってない。となれば、モンゴロイド系の黒髪に黒い瞳になる筈だし、服装に関しては余りお金を渡されていない筈なのだが……。
 「……以前に病気をして、色が抜けまして」
 言いつつ、髪を目の前で一本引き抜く。
 「お疑いであれば、DNA検査でもどうぞ」
 「……え、ええそうさせてもらうわ」
 病気?そんな報告はなかった筈だが……ひょっとして危うく死に掛けるような大病だったのに放置し過ぎて本当に死ぬ所だったから、下手に報告したら処罰されると恐れた結果黙ってたのかしら?リツコがそう考えたのは無理もない事だろう。とりあえずあっさりと髪の毛を渡してきた所からシンジである可能性が高い、と判断する。偽者ならこうもあっさり渡したりしないだろう。
 「あと服に関してはトラフィムお爺様から頂いたものです」
 「…………は?」
 誰、それ。
 アカラサマに日本人ではない名前が出てきて更に混乱した。

 「……えーと、つまり貴方はその大病した際に別の家に引き取られて、しばらく前までドイツにいたの、ね?」
 時間の関係で歩いてケージに向かいながら話を聞いて、リツコは頬を引きつらせていた。
 これらは事前に立てられていた作り話で、あちらこちらと連携を取って進められている。
 「そうです」
 「で、そのトラフィムさんって何をしている人なの?」
 とりあえず、リツコとしては色々言いたい事とかもあるのだが、とりあえずは現状の『本当の』シンジの状況を確認すべくアレコレと話しを聞き出していく、が。
 「悠々自適の富豪、ですね。ヴァン・フェム財団関係らしいですが詳細までは知りません」
 正直頭を抱えたくなった。
 ヴァン・フェム財団は世界でも相当大規模な財団だ。当主は『財界の魔王』ヴァン・フェム。一時は引退したと言われていたが、セカンドインパクトを機に復活した、と言われている。そして――現在ゼーレと最も激しく裏で遣り合ってる相手でもある。実の所、ゼーレは幾度となくヴァン・フェムの暗殺を行おうとしたらしいのだが、その全てが失敗に終わっている、とは碇司令から聞いた話だ。まあ、何が言いたいのかというと、ヴァン・フェム財団がゼーレの支配下と見えるNERVに味方してくれるとは到底思えず、しかもゼーレと遣り合える=同程度の力を持っている相手がシンジをそう易々とNERVに取り込ませてくれるかどうか……。
 事実、これは想像以上の形でそうなるのだが、それは今は置いておく。
 
 リツコは頭の痛い事が増えていると感じつつも、ケージに向かう……少し回り道をしたのはDNA検査の結果待ちの為だ。本来ならもっとずっと時間がかかるし、到底間に合うものではないが、NERVにはMAGIがある。詳細な検査は後日として、シンジが本人かどうかを確認するだけなら、さほど時間はかからない。
 そしてその結果は間もなく届いた。すなわち『碇シンジと同一人物と判断される』。
 ならば、とそこからは真っ直ぐに進む。
 間もなく、真っ暗なケージへと入った。
 「何ですか、このでかい紫の顔は」
 だが、再度予定は予定のままに終わった。
 辺りは真っ暗闇だ。当然見える筈もないのだが……シンジは正確にそこにある『存在』を告げてきた。
 「あ、顔の上の部屋に髭面がえらそうに立ってるな……ここ周囲にも結構整備の人らしき人いますが、このままで作業してたら危ないでしょう?まさか演出の為にわざわざライト消したんですか?」
 完璧に見えている。
 本当は驚きと勢いで流して、そのまま乗せてしまう予定だったのだが……これではいい道化だ。
 シンジにしてみれば、通常の死徒は太陽輝く昼間には活動出来ない。当然彼らの動きは夜となる訳で、暗くてよく見えないからまたにしよう、なんて事はない。当然死徒は夜目が利くし、魔術で強化すれば更にそれは補正される。
 「い、今つけるわね……ほんと、間違ってライト消しちゃったのかしら…」
 焦った口調でリツコは懸命にカバーしようとする。内心で『何で自分がこんな恥を』と憤っているが、さすがに口には出さない。
 そして、ケージは光で照らし出され……。
 「ひさしぶりだな」
 リツコが途中からゲンドウへと流していた中継のお陰でシンジの外見などの状況を把握していた為に、『誰だ、それは』などという事はなかった。
 それに対してシンジは。
 「やあ、お久し振り、遺伝子提供者の片割れ」
 そう皮肉げに返した。 



To be continued...
(2009.04.11 初版)


(あとがき)

私自身がミサトという女性について、改めて原作(アニメ)を元に考え直してみた結果…このようになりました。
基本として、ミサトは『作戦立案に関する教育を受けておらず、大規模部隊を率いた経験がない為に他組織との交渉も経験が殆どない』『装備に関する勉強を自分の扱う装備に関しては熱心だが、関係ない装備は余り詳しくなかった』という設定としました。
まあ、こんなミサトを作戦立案と指揮の最上位に置いたNERVが異常だったって事でしょう

1:ミサトの階級は下駄をはいたものか?(本来あるべき階級より明らかに高いのか?)
 A:違います
 そもそもミサトの29歳で一尉(=大尉)というのは決して早すぎる昇進という訳ではありません
 士官となる方法としては通常は士官学校に入りますが、ミサトの場合普通の大学を卒業したとあるので、OCSと呼ばれる一般4年制大学卒業後に6ヶ月の研修を受けて、軍士官となる道を選んだと思われます。ミサトが全て現役で受かっていったとしてここまで、最短で22歳6ヶ月。まあ再度の受験もあったでしょうから23歳としましょう
 士官訓練が終わった段階で、ミサトは少尉として任官します
 これが現実の米軍を例とすれば、以後は平時であれば、横並びに昇進していき、大体30歳前後で大尉や少佐が試験を受け、将来の将軍候補として指揮幕僚過程へと入っていきます
 ミサトはスタートで1年余計にかかってますが、おそらくNERV本部へ作戦部長として異動する際に一階級昇進したであろう事を考えれば、ほぼ平時の昇進状態です
 戦時に功績をあげれば、昇進は早まりますが、ミサトはこうしてみると後方勤務、まあ映画で戦自の兵士をあっさり撃ち殺してる所を見る限り実戦経験が多少はあるみたいですが、特筆する功績などはなかったと考えられます
 まあ、ゼーレにしてみればミサトに間違って戦死なんてしてもらいたくない訳で、そうすると基地警備やチルドレンの護衛といった任務が主体となったと思われます
 別段ゼーレが強引な昇進とかカバーしなくても、この昇進速度はごく一般の士官と大差ありません。後押しなんてしなくても普通に昇進出来る速度なんですね

2:ミサトの指揮官としての才能は高いのか?
 A:低いです
 彼女の責任ではなく純粋に経験不足です
 そもそもミサトの軍人としての経歴の大半、おそらく6年程度の期間の大部分は少尉と中尉の時代が占める筈で、そうなると指揮にある部隊規模は小隊規模であったと思われます(本来一尉=大尉でも中隊規模なのですけどね)
 当然ですが、現在NERVは要塞都市の名が示すとおり、大規模な要塞です。このような大規模な軍事組織を指揮下に置いた事も、自分が先頭に立って他の同列組織や政府と交渉した経験もないと思われます。彼女がアニメで戦自から陽電子砲を徴発した態度は軍人が民間人に協力という名の徴発を行う態度に似た印象です
 で、改めてミサトの作戦を拝見してみると、ミサトが機甲師団との連携作戦などの立案に乏しい事が予想出来ます
 彼女の作戦は基本、EVAという歩兵を元にした作戦という名の力押しです
 ヤシマ作戦も基本は犯人を狙撃によって射殺しようとしたものですし、サハクィエルを手で受け止める、というのも大きなものが落ちてくるから兵士が手で受け止めよう、というもの。例外と言えるのはガギエル戦ですが本来主砲は水中では発射出来ないので、ミサトの作戦は本来不可能です。つまりは単純にあれは戦艦を自爆させた爆発の衝撃によるものだという可能性が高く、あれならばむしろ魚雷やら爆雷やらを口に放り込んで締めれば良かったと思われます。最悪N2兵器を口に放り込むとか
 劣化ウラン弾のバカ発言、太平洋艦隊の艦船を見ての老朽艦発言を見れば、ミサトが兵器というものにまともな知識を有していない事も分かります。EVAの開始時間は2015年、一方設定集を見ると太平洋艦隊旗艦OTRはニミッツ級の8番艦、我々の世界で同級は2015年時建造より17年、ネームシップであるニミッツが退役予定の年齢が58歳である事を考えるとまだまだ若い空母です。これを老朽艦呼ばわりは失礼というものでしょう。まあ、陸軍であろうミサトが仲の悪い海軍(陸軍や海軍は古来から仲悪い事が多いようです)の事を知らなかったのは、どのみち自分が関わる可能性の少ない装備ですし、余り責められませんが
 もっとも、ミリタリーオタクである筈のケンスケが「いやあ、セカンドインパクト前のヴィンテージものじゃないですか?」などと続けている所を見ると、本当はスタッフに軍艦とかに詳しい人がいなかっただけのような気もしますが
 まあ、歩兵部隊での経験に頼るのも、それしか経験がないとなればどうしてもそっちに頼る気がします。ゼーレにしてみれば、歩兵の経験しかなければ、EVAという歩兵を使った戦闘により拘るようになると考えたのかは不明です

 この他、何かミサトってこれは?と思われる事がありましたら、私の作品内ではどのような判断を下すか、余裕があれば次にアップされる話の後書きで書かせて頂きます



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