暗闇の円舞曲

第五話

presented by 樹海様


 碇ゲンドウは不器用な男だった。
 ただ一人愛した女性、碇ユイ。彼女にもう一度会いたい……それだけの為に全てを捨てる覚悟を決めた。
 セカンドインパクトの際、彼は愛する妻と子供の為にと頑張って、結果的に葛城調査隊に配属されていた。そんな彼だったが、当時はまだ真っ当な意識が残っていたから、葛城博士の実験が相当に危険なものな事は分かっていた。
 彼自身を含め、幾人もの学者が危険だと判断し、或いは人道的に問題ありとして、実験の開始に反対し……その全てが黙殺された。今ならば分かる、葛城博士は確かに名声欲や研究者としての性もあったと思うが、ゼーレから圧力をかけられてもいたのだろう。
 結局、葛城博士の意思を変えさせる事が出来なかった彼らは大きく分けて二つに別れた。
 一つは残って、実験に協力し、少しでも失敗の可能性を引き下げようと足掻く者達。
 そして、もう一つが失敗に備えて、全研究資料のコピーを持って退避する事だった。こちらに関しては葛城博士自身もむしろ協力してくれた……おそらく葛城博士自身も失敗の可能性を意識しており、だが中止が出来なかったに違いない。
 そうして、ゲンドウ含め何名かの妻帯者が選ばれ、資料を持って実験前日に南極を離れ……セカンドインパクトが起きた。

 そして、資料が世間にばら撒かれる事を危惧したゼーレによって、資料を持ち出した者達に接触が図られ、ある者は科学者の良心に従って資料を公開しようとして消された。ある者は姿を隠した。そして、またある者は……ゼーレへと協力を約した。
 ここでややこしいのは、必ずしもゼーレへと協力した者が裏切り者とは呼べない点だ。 
 南極でセカンドインパクトが起きる原因となった高位エネルギー体とでも呼ぶべき存在、それが今後発生する可能性が高い、そしてそれらを撃退する兵器を完成させねばならない……その為には世界経済において、政治的な面において大きな力を持つ組織が必要だ。そうした観点からゼーレへと協力した側面も持つからだ。
 そうして、その中で頭角を現したゲンドウは、人工進化研究所で将来のNERVの為に優れた才能を持つ部下達と共に研究を進めた。
 その中で赤木ナオコがMAGIを、更に夫妻でEVAを完成させるに至った。
 そして、その稼動実験の過程で愛する女性はEVA初号機の中へと飲まれ……ゲンドウは狂った。たった一人の愛する人と再び会う為、それだけの為に息子を切り捨て、同僚を利用し尽くし、或いは脅迫で、或いは暴力で、或いは金で……裏を駆け上がっていったゲンドウは今NERV総司令という立場で持って、道具として呼びよせた息子と対面している。
 内心では高い金を払って、シンジを自身の思惑通りの状態にしておく筈だった連中に対して罵詈雑言を尽くしている。まあ、実際ゼーレからも見限られた彼らはこの後誰にも知られる事なく処理されるのだが……それを知る者は誰もいない。
 とりあえず、リツコが時間稼ぎをしている間に道化――ミサトも戻ってきた。まだまだこの要塞に不慣れな彼女に備えての案内役もつけたお陰で無事到着している。
 さて……では芝居の幕を開くとするか。
 
 『出撃』
 くい、とサングラスの位置を直して、告げる。
 その後は予定通り、「出撃!?誰を乗せるの?パイロットがいなわ」とか「今着いたわ」と言った会話が続いて、ミサトの「シンジ君、貴方が乗るのよ」と続いた。まあ、これでも優柔不断な我が子であれば、乗らないだろうからもう一押しが必要だろう、だが、このシンジはどうだ?そう見極める為にサングラスごしにその動きを睨む。そして。
 「そうですね……まあ、幾つか大体想定が着きましたから乗るのは構いませんが…」
 「え?いいの?」
 自分で言っておきながら、余りにあっさりと了承してくれた為、きょとんとした顔になるミサト。もっとも、リツコ等も似たり寄ったりの顔をしているから、だからどうという事ではないが。
 「ただ、幾つか確認しておきたい事があるんですが」
 「……何かしら?」
 何か駄々でも捏ねるのか、と思ったが……シンジが聞いてきたのは至極真っ当な事だった。
 「まず、一つ目ですが、自分に何に乗れと?」
 「え、それは………言ってなかったっけ?」
 「聞いてませんが」
 ちらり、とミサトがリツコを見やる。リツコも「あ」という顔になっているのを見て、どうやら本当に言ってないようだと判断して、手をそちらに向けながら宣言する。
 「これよ、エヴァンゲリオン初号機。私達の切り札」
 「……人型戦闘機械、ですか?……まあ、色物とかそういうのは後回しにするとして、操縦方法は?まさかただ座ってればいい、とか馬鹿丸出しな事は言わないでしょうし、操縦装置なんて訓練した事ないんですが」
 正に予定次第ではそれを言うつもりだったゲンドウとしては、ぐっという顔になっているが、幸い誰もそちらに意識は向けていなかったのは幸いだっただろう。
 「大丈夫、シンクロシステムって言ってね、パイロットの思考制御で動くわ。基本操縦装置みたいなものはないの」
 これはリツコからだ。ミサトではよく知るまいとなるだけ簡潔に伝えたつもりだ。
 「……脳波操縦系統ですか、どうやらそこらにパイロットが大人ではなく今日呼んだばかりの自分でなければならない理由がありそうですね……武器は何が?」
 前半の言葉にギクリとしたリツコだったが、最後の問いかけに頭の中で確認する。確か……。
 「肩にプログレッシブナイフがあるわ、他の武器は権限譲渡が戦略自衛隊から為されたのがさっきなので、それまで下手に動かしたり出来なかったから……」
 「ナイフがあるんですか、それなら十分です。あ、それとあのサイズの巨体に乗り込むとなると振動と上下運動が馬鹿になりませんね。その辺の対策は?」
 銃器等はない、と申し訳なさそうなリツコだったが、むしろほっとした様子のシンジの様子が気になった。が、続けての質問に少し慌ててしまった。
 「しょ、衝撃吸収装置と後はLCLと呼ばれる特殊な液体を操縦席内に満たす事で問題ないレベルになるのが確認できているわ」
 「LCL?」
 「詳細は機密なんだけど……そこに満たされてる液体の同系統よ。肺に取り込めば呼吸出来るようになっているわ」
 「成る程…。あと指揮系統とか作戦案とかはどうなるんでしょう?」
 そして、続けてのシンジの問いにはミサトが胸を張って宣言する、したのだが……。
 「分かりました、では早速ですが、この後出撃時の作戦計画を教えて下さい」
 その言葉に絶句した、何せ、まだ自分は何も考えてないからだ。
 「え、えーと、それはこれから……」
 「……まだなら、何故ここに来たんです?普通、作戦案を考えに向かうんじゃないんですか?」
 「…しょ、しょうがないじゃない!貴方を迎えに行って、時間の関係上私がそのまま向かった方がいいからって行ったら貴方居なくて、もう直接来たって連絡来るし!そっから急いで戻ってきてみれば、ここに案内されるし!」
 言い訳には違いないが、事実でもある。
 「………分かりました、出撃までには教えて下さいね?」
 シンジとしてもそう答えるしかなかった。
 この後、そのままシンジはリツコに連れられて、ロッカールームに向かう事になる。一応、『戦闘が終わったら、あの人と話す機会が欲しいんですが』とゲンドウを指差した点に関してはゲンドウからの『よかろう』の一言でケリがついた。実の所、こうした結果として出番なく病室に戻る事にレイはなるのだが、内心忸怩たるものがあったここまで連れてきた医師らはほっとしていたりする。
 「それじゃシンジ君、こっちに……」
 そうリツコが呟いた時、激しい衝撃が走った。
 『奴め、ここに気付いたか』
 そうゲンドウが舌打ちした時、それは起きた。
 一際激しい衝撃と共に天井の照明設備が落下してきたのだ。証明設備と侮るなかれ。この巨大なケージを照らす為のものだ。重量にして100キロを優に越える、この場に見合う巨大なものだ。無論直撃を食らえば人間などミンチになるのは必至だ。それが移動しつつあったシンジらの真上に落ちてきた。
 「シンジ君!リツコ!上!」
 発令所に向かう為に反対側の入り口へと足を向けていたミサトが気付いて声を掛けた時には既に手遅れだった。「え?」と上を見上げたリツコの表情が驚愕のものに変わる。ゲンドウも顔色を変えて足を動かし……それを見た。
 
 「………?」 
 赤木リツコにはもう、頭を抱えて蹲るしかなかった。落下速度と自分の足を考えると間に合わない、それがわかってしまったからだ。だが、何時まで経っても予想していた衝撃が来ない……?そうっと見上げたそこにあったものは……。
 「う、そ……」
 まず見えたのは伸ばされかけたEVA初号機の腕。拘束具を引き千切ってシンジの上に傘のように手をかざして護ろうとしたのだろう、それはおそらく最初の位置のまま話をしていれば間に合っていた筈だ、だが移動途中だった為にそれは間に合わない位置のまま停止していた。
 では、何故、自分達が無事なのか?それは……。
 「危ないですね……案外安普請なのか」
 ひょい、と軽く手首のスナップだけでシンジが挙げた右手で支えていたものを投げる。……100キロを越える嘗て証明設備と呼ばれていた重量物を。上から落ちてきたそれは勢いもあって、到底片腕で、いやそもそも人間に支えられるものではない。それを軽く受け止め、10m以上も手首のスナップだけで放り投げる等……人間業とは思えない。
 沈黙が周囲を支配する中、シンジは淡い笑みを浮かべ、リツコに告げた。「さあ、それじゃ行きましょう」と……。


 発令所は静かな沈黙に支配されていた。
 スクリーンにはシンジの姿が映っている。ちなみに服装はNERVのロゴ入りのジャージ姿なのがどうにも違和感を感じさせる。
 本当はプラグスーツが用意出来れば良かったのだが、あれはオーダーメイド品であり、かといって一つ一つが高価なので適当なサイズを常備しておくというのも予算の無駄遣いという印象があったのだ。何より、これまでのパイロットは本部のファーストチルドレンもドイツのセカンドチルドレンも女の子だ。男物はなかった。
 とはいえ、LCLという液体に浸されると分かっている以上、シンジとしてもスーツを浸けるのは避けたかったので、急遽ジャージを借りたという訳だった。
 ちなみにスーツに関しては後で何かの手掛かりがないかと探ろうとしたのだが、ロッカールームを探った者は何も発見出来なかった……そう、スーツそのものが見つからなかったのだった。ロッカールームを出てきた時シンジは手ぶらだったのに、だ。
 LCLの注入にも特に顔色を変える事なくそのまま沈む。ちょっと意外そうな表情ではあったが。
 『血の匂いですね……』
 「……我慢しなさい、男の子でしょ」
 『いえ、それは別にいいんですけどね。NERVの人って血の匂いが好きなのかな、と思いまして』
 「ちょ、ちょっと!何よ、そんな言い方は!?」
 さすがにミサトも慌てるし、周囲の人間もぎょっとした表情になっている。
 『え?だってあれだけ大量に日常的に使っているのに、匂いの改善さえしないってのは矢張り……』
 「私らは好きじゃないわよ!せいぜいリツコ達ぐらいよ!」
 「私達も好きじゃないわよ!」「そ、そうです!」
 ミサトの暴言には即効でリツコとマヤからの反論があった。まあ、さすがに技術部は血の匂いがお好きなんて噂が立つのは嫌だったらしい。
 「じゃ、何であの匂いはあのままなのよ!」
 「費用と時間の問題よ!今、私達が幾つの案件抱えてると思ってるの!?」
 と、そこまでいった所で、ゴホン、と上から咳を立てる音がした。はっとして二人が上を見ると、冬月がじろりと睨んでいる。慌てて二人とオペレーター達その他は作業に戻った。

 「……あの子って何なのかしらね」
 作業を進めながら、ぽつり、とミサトが呟いた。
 普通驚いて、混乱してもおかしくない状況。なのに、冷静に自身の為す事を確認してきた。更に何より異常なのは、あの力だ。
 「……分からないわ、現時点では全て不明」
 リツコとしてもそう答えるしかない。
 「ただ」
 「ただ?」
 「……何らかの身体改造処置を受けている可能性はあると考えているわ」
 「……あの子が?」
 ミサトがちらり、と視線をシンジに向ける。とはいえ、ミサトの声にはそれ自体を疑うような響きはない。というか、普通の人間にあんな事が出来る訳がない、と思ってるのだからその方が納得出来るというものだ。もっとも、リツコとしてはそれを考慮にいれたとしても違和感を感じているのだが。同年代の少年よりは体格がいいだろうが、あれだけの衝撃を支えるとなると相当に違和感のある肉体改造……もう、サイボーグ改造並の増強が必要なのではないだろうか?
 「……あくまで可能性、よ」
 一応釘を刺しておく。ミサトがそれを信じて暴走されても困るし、シンジに対してそういう目で周囲が見るようになっても困る。とはいえ、何らかの噂が流れるのは避けようがないだろうが……ケージにいた者は彼女達だけではなかったのだから。
 「それよりいいの?」
 とりあえず、何やら真面目に考え出したミサトの気を逸らす必要がある。
 「え?なにが?」
 「……呆れた、作戦何か考えてるんでしょうね?出撃前に言っておかないと拙いでしょう?」
 演技だけでもな気持ちでそう言うと、ミサトはぽりぽりと頭を掻いて困ったように言う。
 「いや〜それがさ……EVAってまともに動いたのまだ見た事さえないから、どの程度の攻撃力があるのか、とかさっぱり分かんないのよねえ……大砲とかならまだ分かるけど、今あるのってナイフだけだし。シンジ君の腕がどんぐらいかも分かんないし…」
 そもそもシンジが動かせるのかさえまだ分かっていない。
 
 シンクロ。
 これこそがEVAをEVAたらしめる要素と言っていい。パイロットを選び、素人でもそれなりに動かす事を可能とし――そして痛みを共有させる欠陥システムでもある。 
 そのシンクロは極めて困難で、現時点でEVAのパイロットは世界で二人だけ。シンジが成功すれば三人目となる。
 加えて、EVAの実際の動いた所など見た事がある者も――まともに制御下にあるという状況で、だが――実はいない、シミュレーションの映像上だけだ
 ファーストチルドレンは実験の途上で暴走を起こし、重傷を負った
 セカンドチルドレンは今の所まともなシンクロを果たしているが、何しろドイツにはEVAの巨体を自由に動かせるような場所はない。結果、地下施設においても軽く腕だけ動かしてみるとかがせいぜいで、本体を動かす機会は未だない
 ミサトもドイツにいたから、シミュレーション画像上で弐号機が自在に動く様を見せられていたのは確かだが……シミュレーションはあくまでシミュレーションだ。現実ではない。
 
 「シンクロスタート」
 稼動の為の作業が始まった。
 着々と作業が進められていく、黙って周囲はその光景を見詰めている。そして…結果は。
 「シンクロ率……0%…EVA初号機起動しません!」
 伊吹マヤ二尉のその言葉に一斉に呻き声が洩れた。矢張りダメだったか、元よりオーナインシステムと呼ばれる程に起動確率は低かったのだから、シンジが起動出来なかった事に疑念を抱く者はいない……一部例外はあるが。
 その例外の内、ゲンドウは内心でどういう事だと疑念が渦巻いていた。
 冬月は「碇、これは拙いのではないか?」と小声で問いかけていた。
 そして、赤木リツコは……疑問を抱いていた。
 「シンジ君?ちょっといいかしら?」
 実を言えば、0%というのはありえない。確かに起動レベルまでのシンクロが可能な人間は極少数だが、逆に全くシンクロしない、という人間もまたありえないのだ。これが人間全てを拒絶している、自分の内に完全に閉じ篭っているようなそんな人間ならばまだ分からないでもないが……互いに意志の疎通を可能とする以上はどこかで相手の心を理解する気持ちがあり、それがシンクロへと繋がる。そして、シンジは少なくとも意志の疎通は行える相手だ。
 『何でしょうか?』
 「……実は今起動の為のシンクロを行っているんだけど。何か接触してくるような感触はないかしら?」
 これがリツコの疑念だった。
 『ありますよ』
 そして、案の定あっさりとシンジは告げた。
 「そう、それに何かしら対応してる?」
 『そりゃまあ……何か訳分からないものが接触してこようとしたら、防ごうとしませんか?』
 その言葉にリツコは溜息をつきたくなった。成る程、確かにその通りだ、そしてシンクロをドアがノックされてドアを開ける事ならば、今のシンジはドアがノックされても相手が不審人物と見てドアを締め切って無視しているのに等しい。それでは確かにシンクロは0%を示しもするだろう。ゲンドウも察したのか焦らず黙っている。
 「ごめんなさい、説明し忘れていたわね……EVAはその接触を通じて互いにシンクロして動かすようになってるの。受け入れるように意識してもらえないかしら?」
 『成る程……分かりました、やってみましょう』
 その言葉と共に。
 「!シンクロ率上昇中!……37.4%で安定しました!エヴァンゲリオン初号機起動します!」
 伊吹マヤのその言葉が発令所に響き、一瞬の間を置いて歓声が上がった。
 『……動けるかも、って状態になっただけでこれとは……まあ、新兵器だと欠陥とかあるでしょうから仕方ないでしょうけれど』
 「け、欠陥なんてないわよ!」
 思わず叫んだミサトだったのだが。
 『そんな事はないでしょう?こんな人型巨大兵器なんて全くの新カテゴリーに属する兵器です。どの程度の時間をかけて開発したのか分かりませんが、10年20年で試験稼動までいったなら、それだけで賞賛に値しますよ』
 と、シンジからはさらりとした答えが返ってきて何も言えなくなった。
 例えば、空母を例に取ると、初めて最初から空母として作られた艦が竣工したのが日本空母鳳翔でこれが1922年。現在の空母の装備として標準であるアングルドデッキを装備した艦が生まれたのは1952年。実に30年の歳月をかけて現在の形へと変わっている。
 ちなみに最新機種の一つであるティルトローター機のケースだと初飛行から運用開始まで16年かかっている。それだけ新兵器の開発とは長い時間がかかるものなのだ。リツコもゲンドウも別にEVAをけなすつもりの発言ではないと悟り、平然とした様子だった。

 一つ頭を振って意識を切り換えると、ミサトはゲンドウらに視線を向ける。
 「構いませんね?」
 「無論だ、使徒を倒す事がNERVの存在意義だ」
 ゲンドウからは冷然とした口調で返答が返って来る。向き直るとミサトは声を上げた。
 「EVA初号機発進!」と……。



To be continued...
(2009.04.18 初版)


(あとがき)

当初は1話として完成させる予定でした、が……。
予想以上に分量が増えたので分割しました。
うーむ、このペースでは何話になるやら。プロットより膨らんでるよ……。
とりあえず、感想掲示板よりの疑問点

Q:ミサトは方向音痴なのか?
A:推測ですが違います
ミサトは確かに第1話にてネルフ本部内にて道に迷っています。またリツコから『呆れた、また迷ったのね』とも呟かれてはいます
ですが、ここで考えてもらいたいのはその後は一切道に迷うという描写はない事です。後半及び映画の描写では加持によってもたらされたコードを用いて奥深くに潜入し、戦略自衛隊からシンジを逃した際、きちんと正しいエレベーターに乗せています
では、何故、ミサトは第1話では迷っていたのか、という点ですが……ここで問題になるのは、ネルフ本部の巨大さです
設定資料から見ると、ネルフ本部は最大直径13.75kmの球体です
ネルフ本部のあの特徴的なピラミッドのある地下地表部で、直径6kmに及ぶ広大な空間となっています
さて、端の方は余り重要な施設はないからとして、地表部をそのまま降ろした直径6kmの円筒、ミサトのセキュリティで中心点より上の半球状の部分までしかいけないと仮定しても、高さ6km弱の空間になります
直径高さとも6km程もある円柱状の空間と言われると実感が沸かないかもしれませんが、東京で言えば、東京駅を中心にして半径3kmの円を描くと端は秋葉原辺りになり、皇居をその半径内にすっぽりと囲んでしまいます。大阪であれば、大阪駅から大阪城付近まで届いてしまいます
これが最大直径である13.75kmともなれば……
それが積層構造になっている訳です。
さて、ここで想像していただきたいのですが、貴方であればどうでしょうか?それだけの広大な空間、しかもそれが地下にも同じぐらいの高さで伸びているとして……道を覚えきれるでしょうか?私は自信ありません、実際初めて行った際新宿の地下で迷いましたからね……東京は新宿の地下など今の日本で広めの地下街にに行った事があれば、ネルフ本部の広さはそこの数十倍という事をイメージしてみてください
しかも、場合によっては更に同じ規模がその下にあるという……
ミサトはある程度の期間をそこで過ごしているのではないだろうか、と言った点を指摘されるかもしれません
ですが、おそらくまずは自分にとって最重要且つよく利用する場所最優先ではないでしょうか。ミサトの場合であれば、自身の執務室、作戦部、発令所、食堂、リツコの執務室と技術部、総司令と副司令の部屋。この辺りでしょうか
ケージはリツコならばよく行くでしょうが、ミサトにそう行く用事があるとは思えません
そうして考えてみると、ミサトが第1話で迷ったのは…
『ネルフ本部の巨大さ故にまだ覚えてない道順も多く、また普段余り行かない場所の為、分からなくなった』と考えるのが自然と思われます

ただし、ミサトに関しての問題点はそこではなく、ただでさえ時間がない訳です。迷ったなら早々に機械を使うなり、道が分かる人間を呼ぶなりすべきですし、迷う可能性があると思うならば事前に道案内可能な人間の手配も頼んでおくべきでしょう。そこら辺はミサトの迂闊かつ問題な点と思われます



作者(樹海様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで