STAGE.04
presented by かのもの様
第3新東京市立第壱中学校。
今、この学校には一つの噂が流れていた。
それは、二年生の学年首席の双璧の片割れ、碇シンジに関する良くない噂である。
それは、彼が性質の悪い不良と付き合っている……と、いうモノであった。
浦飯ユウスケ。
同じ市内にある公立中学である皿屋敷中学の生徒で、万引き、カツアゲ、喧嘩、補導の常習犯。
その悪名は、この辺りで知らない者はいない。
極道予備校と呼ばれる累ヶ淵中学の学生よりも性質の悪い不良。
その男と蔵馬が先日、楽しそうに談笑していたのを、目撃した生徒がそれを広めたのだ。
★☆★
2−Aの教室で、蔵馬とユウスケのことをひそひそと噂しあうクラスメート達。
蔵馬の聴覚は人間のそれを遥かに上回る。
当然、彼らの噂話は蔵馬の耳に入っていた。
しかし、蔵馬はそのことに関しては無視していた。
他人にどう評価されようと蔵馬にしてみれば知ったことではないからである。
蔵馬にとって、ユウスケはかけがえのない戦友である。
彼と知り合えたことは蔵馬にとって何よりの至宝である。
しかし、ユウスケが超不良であることは当然、蔵馬も承知している。
彼の魅力に気付ける者は限られる。
そのことを理解しているので、彼と付き合うことが周りの人間には好ましく思われないのも理解していた。
「ねぇ、シンジ…」
「何だ、アスカ?」
幼馴染みのアスカが蔵馬に話しかけてきた。
その顔を見て、アスカも蔵馬がユウスケと友人付き合いしていることを好ましく思っていないことが見て取れた。
「アンタがあの浦飯と付き合っているって噂……本当なの?」
「……それがどうかしたのか?俺とユウスケが友人であることが……問題がある……と、言いたいのか?」
蔵馬に睨まれ、アスカはたじろいだ。
「碇君……あの浦飯って人の噂……聞いたことがあるでしょ?」
委員長であるヒカリも蔵馬に対し、注意を促してきた。
「どんな噂ですか?」
「知ってるだろ……街中のワルに命狙われてる……とか、既にいくつもの暴力団からスカウトが来てる……とか、一声掛ければ二千人の族の人間が動くとか……」
ケンスケも、加わってきた。
「シンジ……アンタ…あの浦飯に何か弱みを握られて……仲間に引き込まれているんじゃないの?」
アスカは、そう思っている。
そうでなければ、シンジがあんな不良と付き合うはずがない……と。
アスカは知らない。
かつての蔵馬が、ユウスケなど問題にもならないほど極悪非道だったことを……。
「お前らには関係ない……俺が誰と友人になろうが、それは俺の自由だ。少なくとも……俺にとってユウスケはお前らよりも大切な友であることは間違いないな」
流石に蔵馬も不機嫌になってきた。
「……幼馴染みのアタシよりも、あの浦飯の方が大事だって言うの!?」
「……そのとおりだ。噂を鵜呑みにし、あいつの本質を理解しようともしないお前らなどより、遥かに大事だ……まあ、確かに噂どおりな部分もあるが……」
まず、街中のワルに命を狙われている。
街中のワルどころか、名を上げようとする妖怪達に命を狙われていたのは確かである。
次の暴力団からのスカウト。
まあ、スカウトはされているかも知れないが、それをユウスケが受けるはずがない。
自分よりも弱い奴の子分になるような奴ではないからである。
まず、間違いなくこの街の暴力団員など、ユウスケから見れば雑魚に過ぎない。
一声掛ければ二千人の族の人間が動く。
ケイコ曰く、『二千人どころか二人の人間も動かせない。友達少ないから』とのことである。
まあ、今のユウスケなら、蔵馬や桑原などは動かせるだろうが……それは、仲間として協力するのであり、命令に従うというわけではない。
「アスカ……とりあえずユウスケは、弱みに付け込むなんていう真似をするような奴じゃない。アイツはそんなことは考えない。と、言うよりも何も考えずに行動する。つまり単純(バカ)なのさ。頭より先に体が動く馬鹿」
何気に、蔵馬の言い方も酷い。
「まあ、そんなバカだからこそ、気に入っているんだがな。そんなに気になるんなら、今度の日曜日にでもユウスケに会ってみたらどうだ?」
そういうと、ケイコからスポーツ施設のチケットを貰い、ユウスケらと行くことを告げる蔵馬はアスカも誘った。
「嫌なら別にいいが……俺と綾波さんだけで行くから…」
その台詞にアスカの頬が引き攣る。
「何…?あの女も一緒に行くの?」
「ああ」
先日、一緒に買い物に行ったと思ったら、今度は………。
これ以上、抜け駆けされて堪るか!!
そういう気分になったアスカは、蔵馬の誘いを受けた。
浦飯ユウスケのことよりも、レイの方が問題だ……。
「って、あたしは何、考えているのよ!」
「いきなり、何を叫んでいる?」
「何でもないわ!」
いつもの二人の関係になった所で、放送が入った。
「2−Aの碇君。2−Aの碇君。至急、生徒指導室まで来なさい」
どうやら、生徒指導の教師が蔵馬を呼び出してきたようであった。
うんざりした表情になった蔵馬は、無言のうちに教室を出て行った。
★☆★
「先生。用件はなんですか?」
蔵馬は不機嫌な顔のまま、生徒指導主任教師の元村に問いかけた。
「……碇君。君が皿屋敷中学の性質の悪い不良と付き合っているという噂があるが……真実かね?」
「性質の悪い不良……?そんな名前の奴と知り合いではありませんが?」
「……そういう意味ではなくてだね…」
「はっきりと言えばよろしいでしょう。俺が浦飯ユウスケと友人なのか?…と」
回りくどい言い方をする元村を軽く睨む。
「……では、どうなんでね?」
「ユウスケと友人であることは事実です……何か問題でもありますか?」
「大ありだよ!碇君。君のような優秀な生徒が、一時の気の迷いで、あんなクズと付き合う必要などあるまい。即刻、関係を絶ちなさい!」
元村は、皿屋敷中学の岩本教諭と同期である。
考え方も良く似ていて、出来の悪い生徒など切り捨てるべきだ……と、考える教師である。
浦飯のことはよく、岩本から聞かされていた。
そんな、不良学生を受け持つ岩本に同情してもいた。
それに引き換え、自分の学校には全国模試でも上位の成績が取れる生徒が二人もいる。
惣流・アスカ・ラングレーと碇シンジである。
皿屋敷にも雪村ケイコという、優秀な生徒もいるが、その雪村は浦飯の幼馴染みで恋人関係だとという話である。
岩本は、何度もケイコに浦飯と縁を切れと忠告したらしいが、二人が別れる形跡はまったくないとのことだ。
その点、こちらの幼馴染みカップルはどちらも成績優秀。
岩本にも羨ましがられ、優越感があった。
しかし……あろうことか、碇シンジが、その浦飯と親交があるなどという噂が流れてきたのだ。
あんなクズに、こちらの優秀な生徒を毒されてたまるか。
そう思った元村は、早急に蔵馬に忠告しようとしているのだ。
「……貴方達の面子の為に、友人を作っているわけではないので、お断りします」
「碇!私の言うことが聞けないのか?君は優等生だ……こんなことで人生を台無しするつもりか?」
「俺は自分を優等生だと思ったことなど一度もない……」
蔵馬は侮蔑した目で元村を見た。
蔵馬はこの生活指導教師をかけらも尊敬していない。
ぐーたらなミサトも、この教師に比べれば遥かにマシだと思っているのだ。
「それに……貴様に指図される謂れもない」
もはや、敬語すら使っていなかった。
「碇…なんだその言葉遣いは!どうやら……相当、浦飯の影響を受けてしまったようだな!!」
元村は咆えるが、次の蔵馬の一言で背筋が凍りついた。
「不倫や痴漢や援助交際をしている輩が、教育者気取りか?」
「……ッ!?」
「お前が奥さん以外の妙齢の女性や女子高生と歓楽街のラブホテルに入っていくのを何度か見かけたことがある。それに、電車内で女性に痴漢行為を働いているのも、何度も見ている……俺には関係ないから、今まで放置していたが……」
「何を、根も葉もない言いがかりを……」
冷や汗を掻きながらも、とぼける元村の眼前に携帯電話を突き出した。
「一応、こんなこともあろうかと、証拠画像を携帯にメモリーしておいてある……この画像を、ミサト先生や他の教師……後、俺の友人達の携帯に転送しようか……?」
「……ま……待て!!そ……それだけは……それだけは止めてくれ……。もう君のやることに口出しをしない…だ……だから!!」
元村は蒼褪め、情けない顔で蔵馬に縋る。
結局、この男は岩本と同類の悪徳教師であった。
何よりも体面を気にする。にも係わらず陰でこそこそと小悪に耽る。
かつて、岩本はユウスケを追い出すため、体育の授業中、ユウスケのクラスメイトの私物を盗み、焼却した。体育の授業をサボったユウスケが疑われるように仕向けたのだ。
だが、その中に世界で一つしかないオーダーメードの万年筆を見つけ、物珍しさゆえにそれだけは、自分の物にしようとポケットに入れた。立派な窃盗である。
結局、それが証拠になり、ユウスケの無罪が明らかになったわけだが……、そもそも、冤罪を仕組んだ時点で、教師の風上にもおけない男である。
元村は、そういうことはしなかったが、社会的に許される行為ではない、不倫や痴漢……更に教師であるにも係わらず、援助交際をしている女子高生と関係を持ったりしているのだ。
「……それでは、失礼してよろしいでしょうか?」
蔵馬が慇懃無礼な態度で訊ねるが、元村は頷くしか出来なかった。
指導室から退室するため扉を開けた蔵馬が、突然振り返った。
「ちなみに、証拠画像うんぬんの話は嘘です……ですが、先程の会話は録音しました。今度、余計なことを言ってきたら、それを公開しますので……」
蔵馬は、人の悪い笑みを浮かべそのまま退室していった。
後日、録音も嘘だと思い、「同じ手は二度も通じない」と、再び、蔵馬に呼び出そうとした元村は、今度こそ証拠を校長に提出され、懲戒免職になった。
確かに、蔵馬は録音機器は持っていなかったが、魔界植物『オウム草』をボイスレコーダーの代用にしてしっかりと録音していたのだ。
三流の悪党には、三流の行為が最も有効である。
蔵馬は、そのことを理解していたので、それを実行したのだ。
蔵馬という男は決して善人ではない。その本質は間違いなく盗賊妖怪であり、冷酷な妖狐なのであった。
★☆★
日曜日。
待ち合わせ場所に蔵馬、レイ、アスカの3人は向かっていた。
このまま行けば、十分時間には間に合うので、余裕を持って歩いていた。
「……たまには、こういうのんびりしたのもいいですね」
「………うん…」
などと楽しそうに雑談する蔵馬とレイを見て、アスカは少し不機嫌だった。
いつの間にか、この二人が仲良くなっている。
いくら一緒に住んでいるからといっても、昔の蔵馬を知っているアスカから見れば面白くなかった。
昔の蔵馬は、どちらかといえば社交性がなかった。
表面上は礼儀正しい受け答えをしていたが、アスカ以外の相手とはまったく親しくなかったのだ。
中学に入って、トウジ、ケンスケ等と付き合い始めたが、それ以前はアスカ以外友人などいなかったのだから……。
しかし、今はどうだ。
目の前で、たとえ従妹とはいえ、両親と自分以外の人間とはあまり付き合わなかった蔵馬が、楽しそうに話している。
更に、これから会うことになる自分よりも大切な友人と言い切る浦飯たち。
いつの間にか、自分と蔵馬との関係が変わっていってしまっているのだ。
待ち合わせ場所に到着したとき、既にユウスケとその母、浦飯アツコ、そしてケイコが待っていた。
「お待たせしました」
「気にしないで蔵馬君。まだまだ約束時間には余裕があるから」
「ユウスケが先に来ているとは珍しいですね?」
「朝、ケイコが迎えに来てよ……俺とお袋を叩き起こしやがったんだ……」
「……ケイコちゃん……朝からテンションが高くて……」
「二人とも、そんなことだろうと思ったから、起こしに行ったんです。まったくユウスケもアツコさんもぐうたらなんだから……」
浦飯親子のぐーたら振りに、呆れ果てているケイコであった。
「おっ、こないだの可愛い女の子と……もう一人居るのか?……蔵馬、彼女は?」
「ああ。紹介します。俺の幼馴染の惣流・アスカ・ラングレーです」
「……惣流・アスカ・ラングレーよ。よろしく」
アスカは、ユウスケには余り視線を合わせず、ケイコに手を差し出した。
「よ……よろしく……。惣流さんって……全国模試でトップレベルのあの惣流さんですか?」
アスカの天才ぶりは、ケイコも聞き及んでいたようであった。
「ふふん。まあね〜〜〜〜」
ちなみに全国模試の成績は、蔵馬とアスカは全教科満点。ケイコは478点であった。
「アタシは浦飯アツコよ……で、こっちが息子のユウスケ……よろしくね。アスカちゃんに……」
「……レイ……綾波レイです…」
「よろしく。レイちゃん!」
アツコの気さくな(図々しいとも言う)態度に、戸惑いながらも自己紹介するレイであった。
その後、桑原姉弟とぼたんが到着したので、皆でスポーツクラブに向かうこととなった。
アスカは、なるべくユウスケの方に視線を向けずに、ケイコたちとばかり話していた。
本人はさりげないつもりだが、周りにはそれが露骨に見えているので、正直、ケイコ達のアスカに対する評価はかなり低かった。
「……やれやれ…アスカにも困ったものですね…」
「まあ、あの娘の態度もしょうがね〜んじゃね〜か?浦飯の評判を考えればな」
「まあ、オレが嫌われ者だっつ〜のは解りきってるけどよ……」
桑原とユウスケは、アスカが何故、自分達を避けようとするのか理解しているので、特に気分は害していないが……。
「……だから、アイツはまだまだなんですよ。確かに才色兼備な奴ですが……人を噂のみで判断するのでは、アイツが望む一流にはなれませんよ」
大切な幼馴染みであるアスカではあるが、だからこそ、蔵馬は彼女を評価できないのだ。
★☆★
スポーツクラブに到着し、皆が最初に向かったのは……やはり、プールであった。
男の着替えは早いので、先にプールに来ていた蔵馬たちは、女連中が来るまで雑談していた。
「そういえば……最近、霊界からの指令はどうなんだよ、浦飯?」
「全然……大会以来、妖怪共も大人しいらしくてな。おかげで楽ができていいぜ」
「……元々、暗黒武術会の趣旨は、人間界に生息する妖怪たちのストレス発散が目的ですからね。武術会の存在が人間界での犯罪件数を抑えているのは確かですから……」
しかも、今大会の決勝戦はストレス発散どころの騒ぎではなかった。
大会を見に来ていた妖怪の大部分が、戸愚呂(弟)に殺され、喰われたのだ。
生き残った妖怪たちも、肝を冷やしている為、暫くは大人しくしているだろう。
「お待たせ!」
ぼたんの声に皆、そちらに視線を向け、それぞれの水着姿を見る。
ケイコの水着は、空のような青いビキニの水着で、とてもよく似合っていた。
そして、レイが先日買った水着……真っ白いワンピース水着であった。
白の水着がよく似合っていて、蔵馬も一瞬、見とれてしまった。
「……シンジ!何、鼻の下伸ばしてんの!!」
アスカの不機嫌な大声を聞き、蔵馬はアスカの方に視線を向けた。
アスカの水着は、赤と白の横縞のビキニで、14歳とは思えないアスカのプロポーションを引き立てていた。
流石の蔵馬も、アスカのプロポーションに目を奪われかけてしまった。
「……いやらしい目で見ないでよね!」
そう言うアスカではあるが、内心では、まんざらではなかった。
皆がプールでわきあいあいと楽しんでいる中、ユウスケと桑原がプールから離れた。
それを見計らい、アスカが二人を追った。
人通りが少なくなった所で、ユウスケと桑原は自分の後をついて来たアスカに向き直る。
「……何か用か?」
「あ……アンタに聞きたいことがあるのよ!」
ユウスケにビシッと指を突き刺し、アスカは叫んだ。
「アンタ……何の目的でシンジに近づいたのよ。もし……シンジの弱みを握って悪い道に引き込もうなんて言うんなら、アタシが承知しないわよ!!」
いきなり、わけのわからないことを聞かれ、呆然としたユウスケたちだが……、意味を理解すると……、抱腹絶倒した。
「だぁ〜はっはっはっはっはっ!!」
「ヒ……ヒ……ヒィ〜〜〜〜ッ……く……苦しい……!!」
いきなり笑い出した二人を見て、バカにされたと感じたアスカは、ユウスケに殴りかかった。
ユウスケの噂は聞いていたが、アスカも自分の強さに自信があった。
そんじょそこらのチンピラにも負けない強さがある故に……。
しかし、相手が悪い。
ユウスケの実力は、人間の中ではトップレベルである。
格闘技の世界チャンピオンですら、ユウスケには及ばない(何故か、ケイコの平手打ちには勝てないが……)。
アスカのくりだした拳を指一本で止める。
「…ッ!?」
ユウスケと桑原は、笑いを止め真顔で、アスカの質問の答えを出した。
「そんな恐ろしい真似ができるか!」
「いくら浦飯でも、そんな命知らずじゃねえよ!」
「ど……どういう意味よ?」
「オメー……アイツのことを知っているつもりで、ぜんぜん知らねーだろうから……。言っとくけど……アイツは黙って脅されているタマじゃねーぞ!」
「正々堂々と正面から戦えば、浦飯はアイツより強いだろう。だがよ……アイツを力で脅そうなんてことしたら…浦飯は無事じねーだろ〜な…」
「アイツは普段は優しいけど……自分に危害を加える奴には、ホント容赦ねーからな…」
「それに……オメー……もしかして、自分の方がアイツより強い…何て考えているとしたら間違いだぞ……。アイツはオメーなんか問題にならないくらい強いからな…」
「第一、オレと蔵馬はダチだぜ……。そんなことやんね〜よ!」
そう言うと、ユウスケと桑原はアスカを置いて、みんなの所に戻った。
「……アタシが……シンジの事……全然知らない?……そ……そんなこと……ない…」
アスカは呆然としながら、皆の所に戻っていった。
そして、ユウスケと桑原と話をしている蔵馬を見つめた。
「……あんなに楽しそうなシンジの顔……初めて見た…」
アスカは、笑いながら談笑する蔵馬を見たことがなかった。
常に冷静で、人より1歩下がった付き合いしかしなかった蔵馬。
母であるユイを大事にしているが、そのユイの前でさえ、あんなに楽しそうな顔はしていなかった。
冷静になって見て見れば、脅されて仲間に引き入れたれた人間が、あんなに楽しそうな訳がない。
ユウスケも、桑原も、噂で聞いたような極悪な不良にはとても見えなかった。
蔵馬に指摘された様に、自分が噂のみで相手を判断していたのがよく理解できた。
アスカはユウスケに近づいた。
「……何だよ…まだ、何か用なのか?」
「………悪かったわ…変な事言って……」
アスカは素直に謝った。
意地っ張りな処があるアスカではあるが、自分の間違いをはっきり自覚すれば、キチンと謝罪できる。
そこが、アスカの美点であった。
「……気にしなくていいですよ……。確かにユウスケも以前は、間違いなく極悪な不良でしたからね。貴女の誤解は半分以上はユウスケの以前の素行が原因ですから……」
アスカが、ユウスケの目をちゃんと見て、話すようになったので、ケイコもアスカに対する評価を改めたようであった。
「おい、そこまで言うこたーねーだろ!」
「事実でしょうが!」
口でケイコに勝てるはずも無く、ユウスケは不貞腐れた。
「まあまあ…ユウスケ…。アスカ……どうやら、納得できたようだな…」
蔵馬がユウスケを宥めながら、アスカに微笑む。
その微笑を見て、アスカの顔は真っ赤になった。
ユウスケに対する誤解も解け、ようやくアスカは皆と打ち解けたのだった。
そんなアスカを見て、蔵馬は安堵した。
〈STAGE.04 NEXT〉
To be continued...
(2010.05.22 初版)
(2010.08.21 改訂一版)
(あとがき)
コエンマ「ようやく、書き終わったか…」
ジョルジュ「今回は難産だったみたいですね……」
コエンマ「やはり、オリジナル話だからな…無理も無い。さて、今回の内容は……、ヒロインの二人と幽遊白書のキャラとの顔見せが目的じゃからな……それほど面白くはないかもしれん」
ジョルジュ「しかし、今回の話は必要不可欠ですので……さて、次回は…ついに、人工進化研究所に関する話です」
コエンマ「では、これからもかのものの駄文に付き合ってくれい」
作者(かのもの様)へのご意見、ご感想は、または
まで