黄昏の果て

第四話

presented by KEI様


セントラル・ドグマ、人工進化研究所3号分室

ある者は言う、そこは罪の象徴、人が人を弄ぶ、神をも恐れぬ命弄ぶ傲慢の証。
だが、ある者はここにて思う、抱きし愛を、至らんと欲する希望を、掴み取らんとする未来を。

ここに満ちるは希望、野望、絶望、欲望、願望、懇願、無謀、愛、憎悪、苦痛、喜悦、妄執、虚構、真実、悲哀、歓喜。
それは人として、まさに人らしさを以って築かれし原罪にして始源。

その罪にして希望、綾波レイの素体の揺蕩う水槽の前に光の五芒星が描かれる。
一際強く輝くと、そこには戦自の士官服を着た男、安西シンがいた。

「・・・・・何時訪れても、気分の良いところではないな。力が無い事・・・・それこそがある意味罪になるとでも云うのか?ならばその罰は?
私は自ら道を歩む力が無かった、だから人生を奪われた。お前たちは生まれ落ちる力が無かった、だからその存在さえも奪われる。ならば死こそが救いか?判っている、お前たちは答える事すら出来ない。ならば私が勝手に決める、愚かしくも傲慢に。終ろう、産まれ落ちる事が出来ず、産まれ落とされる事も無いのならば。
・・・・・・もし、もしお前たちにそれでも意思が在るのならば、私を恨め、憎め、呪え。それが永劫に絶えないのならば、それもまた救いとなるかもしれない。それは、お前たちが決して虚ろな存在ではない証となるはずだ。そして、私は確かに存在するのだと、全ては夢などではないのだと、そう確信できる」

そのまま、中にいる素体たちを維持している装置に近づき、それがどのような物なのか始めから知っているかのように操作した。
操作が終ると、素体たちはその構成を保つことが出来なくなり崩れ落ちていった。
それを見詰めるシンのその瞳には、感情の動きを見る事は出来なかった、いやむしろそれはひどく虚ろだった。
崩れ落ちていく素体たちを瞳に写しながら、ゆっくりと水槽に近づき、その耐圧性の強化ガラスに手をあてる。
ジワリジワリとガラスに罅が入っていき、やがて内圧に耐え切れなくなり一気に割れる。
血の臭いが、中から部屋に流れ出した赤い水と共に広がっていく、しかしながらどういう訳か、シンは水が流れ出した場所に居たというのに濡れていなかった。
流れ出したのは水だけでなく、素体の残骸も部屋中に散乱していた。
朱に染まる部屋の惨状を、やはり虚ろな瞳で眺めていたシンが金属の塊を5つほど取り出した。

「焼夷手榴弾・・・・・荼毘に付すと云うには、乱暴で粗雑で格式ってものがないが多目に見てくれるとありがたい。お前たちの死後、それを誰かに利用させたりなど、そんなことはさせない」

そう言うと、安全ピンを抜き取り部屋に放った。
どういった訳か、その部屋以外の場所に炎の影響が出なかった、そのためゲンドウたちはここに訪れるまで、ここの異常に気付く事は無かった。
焼夷手榴弾のその火力は、その大きさとは裏腹に数千度を超えていた、その為素体たちの残骸はまさに灰も残さずに燃え尽きた。
また部屋に至っても、強化ガラスは溶けて割れ落ち、装置の類いも使い物にならない状態になってしまっていた。
シンは炎に包まれながらも、その身に火は燃え移る事は無く、ある程度見届けてから光の五芒星を足元に描き出し、その場から閃光と共に消えた。
後に残ったのは、ソドムとゴモラのごとく焼け落ちた施設の残骸だけであった。



第三使徒サキエル戦の翌朝、サキエルの屍骸は爆散することなく第三新東京市の道路のド真ん中に鎮座していた。
出来うる限り機密を守りたいネルフとしては早々に片付けたいものの、物が物だけに一朝一夕ではそれは適わず、鉄骨を組み上げシートで覆い隠しながらの作業となっていた。

本来ならば、この様な作業はエヴァでも使えば簡単に終る。
だが初号機はメルカバーと名乗る組織とシンジに徴発され、零号機は凍結中。
結局、最後に頼れるのは人の力といったところであろうか。

本来技術部の責任者であるリツコは、ネルフにおける使徒の第一人者と云う事情から、現場監督のような事をやらされていた。
このことが、レイの素体の異常を知ることが遅れる一因になっていたのだが、それでも彼女ならば余裕を持って作業に従事出来たはずであった。
簡易テントの中でリツコは解体作業の指揮や使徒の解析を行っていたのだが、どういう訳か関係ないミサトがビール(ヱビチュ)片手にテレビを見ていた。
ちなみに、はっきり言って酒臭い。
こんな環境で仕事がはかどるものならやってみやがれ!!と言わんばかりの状況である。

『昨日の特別非常事態宣言に関して、政府の発表が今朝、第二東きょ』

ピッと音がして、チャンネルが変わる。

『今回の事件は』

ミサトがTVチャンネルを、次々と変えるが、どのチャンネルも、先日の非常事態宣言の政府発表が、放送されている。

「発表は、シナリオBー22か・・・またも事実は闇の中ね」

ミサトがぶつくさ言いながら、TVを消し、20缶目のヱビチュを開けて一息に呑んだ。

「広報部は、喜んでいたわよ、やっと仕事ができたって」

こめかみに青筋浮かべながらリツコは応えた。
ここまで好き勝手にされていて、それでも追い出さないあたり親友云々以前の問題ではないかと思うのだが、何を言っても無駄と諦めきっているのだろうか?
ミサトはリツコの青筋など、全く目に入らずに続ける。

「うちも、御気楽なものよねぇ〜」(あんたに言われちゃおしまいだ)
「そんなわけ無いでしょ、今の状況分かっているの?現在ネルフには、実質戦力は存在しないと言って過言ではないわ」
「大袈裟ね〜、まだ零号機があるじゃない。それにレイだっているし」
「暴走を起こして凍結中の機体と、今だ重症で戦闘に耐えられないパイロット。それでどうやって戦えと云うの?」
「だったら、早くあのメルカバーって連中を見つけちゃってよ。何処の馬鹿か知らないけど、うちに逆らう事が、どう云う事か教えてあげれば良いのよ。んで、あのクソガキにも礼儀ってやつを教えてやらないとね」

想像力が少しでもあれば、そんな簡単な話ではない事ぐらい判る所ではないだろうか。
メルカバーがどの程度の規模で、どの程度の技術力を持つかは、推測しか出来ないが、少なくともネルフに劣る物ではあるまい。

メルカバー所属の特務准尉、そう名乗った碇シンジは、初号機を自在に操って見せた。(メルカバーには、エヴァ関係の知識などがある、と考えられる)
初号機を回収した飛空艇は、ネルフの監視網に一切引っかかることなく、第三新東京市上空まで進入して見せた。(高性能のステルス性か、リツコとしては考えたくないがMAGIへのアクセス)
そもそもその存在を、あの土壇場まで、MAGIであらゆる情報を制している筈のネルフから、ずっと秘匿して見せた。(不審な動きらしき物はあったが、具体的には知る事ができなかった)
後これは機密事項だが、総司令直々の命で動いていた、諜報部諜報一課の者たちがシェルターの付近で発見された、死体となって。(彼らの受けた命令の性質上、また前後の状況から、偶然敵対組織に襲われたとは考えにくい)

4つ目を入れずとも、残り3つの事実から、メルカバーが容易ならざる相手である事は、充分予測ができる。
大体言っていたではないか、「特務機関メルカバー」と。
「“特務機関”ネルフ」に対し、「“特務機関”メルカバー」と名乗ったのだ、最悪同等の権限を有していると考えるべきである。
そんな輩に、迂闊な行動などできるわけがない、まずは外堀を埋めて搦め手を使い勝てる状況を作り出す事が重要なのである。
其処の所をミサトは、戦自での教練からなにも学ぶ事が結局出来ず、ドイツで甘やかされまくっていたこの女は理解出来ていない。
しかしながら、それはミサトに限った話でもない、しかしながら少なくとも技術畑の人間であるはずのリツコでさえ、理解できていたのだから、一応の軍人であるミサトには理解してもらいたいところなのだが・・・・

「それよりもミサト。あなたいつまでここでサボっているの。作戦部の部長なんだから仕事があるでしょ」

リツコは忙しいのである、これ以上仕事場の環境を悪化されたくないし、馬鹿げた話にも付き合ってられないと、ミサトに仕事の事を思い出させようとした。
対してミサトは、24缶目のヱビチュを空けて(開けて、ではない)のたまった。

「なに言ってんのよ?使徒も来ていないのに、あたしに仕事なんてあるわけないじゃない」

・・・・・・そんなわけあるか!!
確かに、サキエルの殲滅はメルカバーに取って代わられた。
だが戦闘があった場所が、ネルフの縄張りである以上、片付けなくてはならない書類仕事がそれこそ山ほどある、被害報告だの事後処理だのエトセトラエトセトラ。
それ以外にも関係各所との軋轢に対する方針やら、今後の使徒戦において他の組織とどのように連携するかしないか、他所の組織に使徒を倒されたとはいえその戦闘の分析だの何だのやるべき事はそれこそ、1日は何故50時間ないのか、と叫びたいぐらいにある。
実際、某眼鏡のオペレーターなぞ眠らない為に「リッちゃん特製スペシャルドリンク剤EX」をピッチャーで確保している有様だ(もちろんダース単位で)。
それの上司である彼女に、仕事がないなんて事は有り得ない。

では、もう仕事をとっくに終えているのか?
それもない、使徒戦の後執務室で、自棄酒の絡み酒の怒り上戸。
その後使徒の後片付けがあると聞いて、ノコノコ付いて来てからは、暑いだの何だの言って作業の邪魔はするわ酒は飲むわ。

「ミサト、日向君はアナタの副官ではあるけどアナタ自身じゃないのよ。アナタが片付けるべき書類が滞っているって話じゃない。実際、技術部からアナタに出した書類、その内容に関する作戦部の見解、アナタのサインがなければ意味がないのよ。おかげで、昨夜の使徒戦までには出来あがっている筈だった、エヴァの武装が未だに開発に廻せないのよ。其処のところ判ってるの?」
「って、ちょっとリツコ。エヴァの武装ってまだ造ってなかったの?これだから技術者ってのは、現場が判ってないのよ。チャッチャと造ってくれなくちゃ困るじゃない、何してたのよ?」
「・・・・・人の話聞いていないのかしら。ア・ナ・タ・が書類に目を通して、サインとそちらの見解とか入れてくれないと、開発に廻せないって言っているのよ。こちらが好き勝手に造るわけにはいかないの、判ってるの其処のところ」
「でも相手は使徒なのよ、そんな悠長な事「2週間以上前に書類はそちらに回しているのよ、一体何に時間を取られていたの?」あ、あはははは〜、じゃあ私仕事があるから」

青筋に続き、眉間が震え始め、声には殺気が混じり、手には色とりどりの薬品の入った注射を構えたリツコを見て、さすがに本能が危険を訴えたミサトは、早々にその場を後にした。
内心は、リツコのいけず〜とか、ちょっとぐらい気を効かせてくれたって良いじゃないとか、全く反省の色がないまま、本部ではなく、自宅に帰った・・・・・呑み直しに。(殺気で酔いが覚めたから)
後日、過労で病院に叩き込まれた某眼鏡とこの事は、間違いなく関連した事象である。

だが結果としてミサトがこの場から消えたのは、或いはネルフの損失に繋がる事であったかもしれない。
指揮官としてはともかく、個人戦闘技能が問題なくAクラスを超えるミサトがいれば或いは・・・・・いや個人で集団には勝てんか。

ミサトが出ていって、漸く仕事がはかどりだしたリツコの下に、ある重大な報告が1時間もしない内にやって来た。



闇に覆われた部屋の中、男、六分儀ゲンドウは何時もの様に表情を覗わせない、顔の前に手を組んだ姿勢で座っていた。

『碇君、いや、六分儀だったな。一体どう言う事なのかね』
『零号機の事故に引き続き、今度は初号機を他所の組織に奪われるなど』
『失態、などと言う次元の問題ではないのだよ』
『シナリオの修正、ソレで済むかどうかもわからん』

漆黒の闇の中、ホログラムに映し出された人影が口々に文句を飛ばす。
ゼーレ、そう呼称される国連すら影から操る世界的な秘密の組織、その表向きでの姿、人類補完委員会。
ソレを前にし、ゲンドウはいつもと変わらぬ態度で答えた。

「問題ありません。使徒殲滅のシナリオが多少変化したただけです」

ゼーレの老人たちに対し、昨夜のイレギュラーを修正可能な範囲内と言い放つ。

『多少だと?よくもそのような事が言えたものだな』
『左様。使徒を殲滅するのはネルフでなければならない』
『でなければ、今まで莫大な予算を、幾つもの国が傾き、或いは崩壊させてまで出していた事が無意味になる』
『ネルフ以外が使徒を倒した。今はまだ良い、だがソレが続けばネルフの存続に関わるのだよ。判っているのかね、碇、いや六分儀君』

ゲンドウに対し、周りは一斉に不満を返すだけである。
さりげなく、わざわざ呼び名を言い間違える嫌味も入っている。

「・・・使徒殲滅を成せる戦力は、ネルフでしか用意できない。その前提は今だ崩れていません。件の組織もサードを抱き込んだものの、結局はネルフからエヴァを徴発しなくては使徒とは戦えていません。無論、サードを別の組織に抱き込まれていたことを、察知出来なかった失態は認めますし、むざむざと初号機を奪われてしまった非も認めましょう。ですがソレだけです。さて、では此方からよろしいでしょうか?」

一応は自らの失敗を認めた上で、ゲンドウは老人たちに尋ねる。

『なにかね、自分の無能を認め、その上で何があるのかね』
『まあ、聞いてやろう。君の言い訳をな』

老人たちの許可を得て尋ねる、ソレは決して言い訳の類ではなく、ある種の老人たちへの嫌味か攻撃か。

「件の組織、『“特務機関”メルカバー』と名乗りました。また初号機の徴発は国連から許可をもらっていると。アナタ方は、ネルフにとって害となりうる組織を何故野放しにするのですか?またその様な組織が出来ていた事を、何故教えて頂けなかったのですか。知らなかった、などと云うことはないでしょう。どうやら、国連からかなりの権限を与えられている様ですし。もう一度問い質させて頂きます、何故もう一つの特務機関などと言うものの存在を許したのですか?」

ゲンドウは、非は認めた。
だがそれを、根本的には老人たちに原因があるように、言い換えたのである。
ネルフ相手に好き勝手に振舞える組織を放っといたのは誰か、そもそもそんな組織を許したのは誰か、あまつさえそんなものの存在を計画の実行者たる自分に隠したのは誰か、と。
彼らが知らなかったなどとは言わせぬ、そう言ったのならば彼らの権威そのものに、亀裂が入るのだから
そして、それはそのままゲンドウを責め立てる理由がなくなる。
案の定、ゲンドウを責め立てていた老人たちは黙り込んだ。
そもそも彼らも、直前までメルカバーの事を知る事が出来なかった。
『碇』たちが国連事務総長と秘密裏に、まさに仲介すら介さず直接話を纏めてしまっていた。
その為サキエル戦の直前に、急遽発表されたソレに対する策も持たず、ネルフに連絡する事も出来なかったのである。

『・・・確かに、お前だけを責めるのは筋違いとも言えるな。だが確認しておく、六分儀、本当にお前はメルカバーを知らなかったのか?我々も、残念ながら今回の使徒線の直前まで、ソレを知る事はなかった。だがお前はどうなのだ、知っていて今回の事件を見過ごしたりはしていないのか?』

バイザーで目を覆った老人、人類補完委員会のいやその大本ゼーレの首魁、キール・ローレンツがゲンドウに聞く、自らの非を受け入れて。
その声には、ゲンドウに裏切りの兆候があれば、容赦しないと云った意志が乗っている。

「アナタ方が知り得なかった事を、私が知る事など出来ませんよ。メルカバーの事はまさに初耳でした」

ゲンドウはキールの通信越しにさえ殺気を感じるソレを、やはりいつもと変わらぬ姿勢で受け流す。

『よかろう、この件はこれで終わりとしよう。だが、どうするつもりだ六分儀?初号機を奪われ、緒戦においてネルフは使徒を打ち倒せなかった。国連の連中も、早々押さえてはおけんぞ。セカンド・インパクトの後、我々の力も予定通りには強化出来なかった』

ゲンドウを完全には信じてはいない、声色はそれを表している。
元々、信用はあっても信頼は無い関係なのだから、それは仕方がないのかもしれない。
だが、計画を進めると云う目的は一致している、それまでは化かし合いながら協力していくだけである。

「先ほども言った通り、基本的には大した問題ではありません。使徒をエヴァで倒している限り、それを建造できる我々のアドバンテージは、そう容易く無くなりはしません。無論、使徒殲滅をメルカバーに任せ切りにするつもりはありません。弐号機の本部への早期移送、ならびに建造中の参号機を本部に寄越すようお願いします」
『よかろう、早急に手配する。だが君の役目はそれだけではない』
『左様、些事に追われて本来の仕事を疎かにしてもらっては元も子も無い』
『人類補完計画。これこそが絶望的状況下に置かれた我々の、唯一の希望なのだ』
「もちろんです。全てはゼーレのシナリオ通りに・・・・」

やがて会議が終わり、ホログラムは次々に消えていく。

『六分儀、後戻りは出来んぞ・・・・』

最後にキールが静かな、しかし、有無を言わせぬ圧力を含んだ言葉を残して消え去った。

「判っている。人間には時間がないのだ」
「時間がない、か。確かに我々にもあまり余裕はないな?」

いつの間にかゲンドウの後ろに立っていた冬月が溜め息まじりの声で言った。

「どうするつもりだ、初号機が手元に無ければ俺たちの計画が進められないぞ」
「問題ない。メルカバーの詳細はわからないが、初号機のパイロットはどの道サードしか有り得ない。ならば初号機の覚醒に関しては、さしたる問題もない」
「依り代である彼の心を砕くには、状況は良くないぞ。セカンドを使うのか?」
「おそらく、サードをそのまま使える筈だ。シンジが『碇』と云うモノを、理解しているとは思えない。存外簡単に砕けるだろう」
「そうか、だが使えない時の事も考えておけよ」

其処まで話して、二人がその場を出ようとした時、備え付けられている電話が鳴った。
ゲンドウの代わりに冬月が受話器を取った。

「どうしたね」
『副司令?司令は?いえ、副司令で構いません。実は』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんだと!!それはホントかね!!」
『はい、内一個中隊がゲート前を押さえてます。司令に通達があると』
「判った。六分儀には私から伝える」

只ならぬ雰囲気で、冬月は受話器を置いた。
それを見計らってゲンドウは聞く。

「どうした、なにかあったのか」
「ああ、戦自が動いた。レイを入院させてある病院に、一個中隊が押しかけレイを連れ去ったそうだ」

冬月が伝えた事は、あまりにも予想外で有り信じ難い事であった。
日本にありながら、日本に属さぬ軍事組織。
そのような異常な存在を戦自、自衛隊とも快くは思ってなかったが、特務権限と云ったものによって文句を出しづらかった。
それに付随して今まで、非公式にはともかく表立って何かして来た事などなかったのだ。

「なんだと!!何故連中がそんな行動に出る!!連中とて、下手に我々に手を出せば、火傷で済まない事くらい判っているはずだ!!」
「落ち着け、それとは別の一個中隊が、正確にはその指揮官が我々に通達事項があるそうだ。どうする?」
「すぐに来させろ。状況を確認する。この件で、メルカバーが関わってないかも確認を急がせろ」
「判った、すぐに手配しよう。ところで何処に呼び出す?」
「執務室だ」


初の使徒戦は終わった。
だがその後始末は未だ終らない。



To be continued...


(ながちゃん@管理人のコメント)

KEI様より「黄昏の果て」の第四話を頂きました。
前回、初号機(+シンジ君)がメルカバーに持っていかれ、今回、綾波レイが戦自に持っていかれましたか・・・。
いい気味ですな。ゲンドウのマヌケ面が思い浮かびます。
まあ、この男やネルフなんて、端から道化でしかないのでしょうけど・・・、気になるのは、メルカバー(シンジ君)と戦自(安西先生)との対決ですよね。
尤も、今のところは後者が一枚上手のようですが。
やはりメルカバーのシンジ君もゲンドウと同じく、結局はギャフンと言わせられるのでしょうかね?(シンジ君ファンとしては痛いところですが)
このSSですが、まだまだ謎が多く、なかなか話が見えてきませんね。
誰が主役なのかもイマイチ不明ですし・・・(今のところは安西先生ですが、やはりそうなのでしょうか?)。
この後一体どうなるのか見当もつきませんね。もしかしたら、大どんでん返しが起きるのかも?
さあ、次話を心待ちにしましょう♪
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