Capriccio

第六曲 〜黒狼と紫苑、そして「潰えぬ悪夢」〜

presented by 麒麟様


 

 

 

 

 

 

マナが【なんでも屋 十六夜】に勤務し始めてから、二ヶ月がたった

この日はちょうど給料日であり、マナは仲間たちを誘われて外食に出かけていた(奢らされてる?)

先月の給料日の外食の際はかなりの出費であった事を考慮し、今回は食べ放題のバイキングでの食事のようだ

幾ら食べようが、料金は一緒という事である

変な風に節約(?)ができるようになってきているマナであった

6人がけのテーブルを二つ占拠して食べまくる子供達

その姿はまさに欠食児童のそれであった

店員の表情が引きつるほどに、食べている

皿に山盛りに持ってあるスパゲッティナポリタンを食べつつ、マナは溜息を一つついた

「どうしたの、マナ。」

隣に座っていた原口ユカリが尋ねた

彼女の前には大量の皿が積み重なっている

実は仲間内では一番食べる量が多い少女である(男女問わずで)

「う〜ん、ちょっとね〜・・・」

「今日は食べ放題なんだから、先月みたくはならないんじゃない?」

ユカリとは逆隣に座る中辻エミ

マナより一つ年上で、仲間内ではお母さん的役割にある少女である

ちなみに、この店にしようとマナにアドバイスしたのはエミである

「そうじゃなくて・・・・・仕事のことなんだけどさ。」

「何か嫌な事でもあった?」

エミが食べるのを止め、真摯な表情でマナに尋ねる

「う〜、嫌って言うか、なんというか・・・・・・・シンさんがねぇ。」

ハフゥ、と溜息をついて言葉を続ける

「事あるごとに、頬っぺたにキスしてくるのよ。」

ちょっと頬を赤らめながら、マナは恥ずかしそうに言った

先程より若干声が小さいのは、恥ずかしさと乙女心の影響だろう

だが、マナのさも真剣な悩みを語っています、と言う雰囲気を無碍にし、ユカリとエミは「なーんだ。」とばかりに料理を口に運ぶ

「ねぇ、何でそんなに反応が無いの?」

マナは二人のそんな反応にちょっと不満そうだ

「何でって、いいじゃない、頬っぺぐらい。」

二人に代わって答えたのは、同い年の佐々木エリコだった

おしゃれ好きの彼女は、料理の汚れが服につかないように丁寧に食べているためか、ひどく上品に見える

食べるスピードが遅いだけで、食べる量は他の者とそう変わらないが

「シンさんってかっこいいじゃない。むしろ羨ましいわよ。」

そう言うと、エリコはパンをちぎって口に放り込む

「そうそう。むしろ口で無い事を残念に思わなくちゃ。」

ユカリがエリコに同調するように言う

頬っぺたにご飯粒が付いているのが実に愛らしい

「むー、皆はされて無いからわからないのよ。人前でされるのって凄く恥ずかしいんだから。」

「人前じゃなかったらいいの?」

揚げ足を取るようなことを言ったのは、エミと同い年の柏トモコだった

普段のほほんとしているくせに、こういうときは痛いところを付いてくる

「そ、そうじゃなくって!か、カナコはわかってくれるよね?」

マナは四面楚歌の状況で、助けを求めるように磯村カナコに問いかけた

女子の中では一番幼く見えるカナコ、小学生にすら間違えてしまうほど、幼く見えるのだ

「え?」

全く話しを聞いていなかったらしく、カナコはパフェを食べる手を休めて首を傾げる

「だから、シンさんのキス魔って言うかセクハラをどう思うかって話してるのよ。」

本人がいないからといって随分と無礼な言い方だが、実際やっていることはそういう事なので致し方ない

「?」

よく判っていないのか、カナコは首を傾げるばかりだ

「あーもう、じゃあ、カナコはシンさんの事をどう思う?」

「えっとね・・・・・この前お洗濯のお手伝いしたら頭撫でてくれたよ?」

だからいい人、とカナコは微笑む

どこか母性をくすぐるような無邪気な笑みに、隣に座っていたトモコがカナコの頭を撫でる

「ほらね、カナコもこういってるじゃない。大体ね、お金持ってる、強い、かっこいいの三拍子揃ってるのよ?それなのに何文句言ってるのよ。」

エリコが呆れたように言うが、マナは納得できそうも無い

「み、皆されたこと無いからわからないのよ!」

「出来るならして欲しいくらいよ。」

ハンバーグを食べ終えたユカリが口元を拭いながら言う

ちなみに頬のご飯粒は付いたままだ

「私はされたことあるし。」

そう言ったのは、エリコだった

「えぇ!?」

「あ、いいな〜。」

「ずる〜い。」

それぞれ口々に言うが、エリコは気にした様子も無く、ジュースを飲む

「この前仕事でシンさんに書類届けたときにされたけど。その一回だけね。」

何度もされているマナに、少し羨ましげに言う

「私もされた事あるよ〜。」

はーい、とスプーンを持った手を上げたのはカナコだった

「この前ね、十六夜さんの家に泊まったときにねお休みのキスしてくれたの。」

「お、おやすみのきす?」

あまりの衝撃に、マナの言葉は片言だ

「うん。」

ニッコリと満面の笑みを浮かべるカナコに、いつの間に泊まったのと言う質問をするのは憚られた

「じゃあ、されたことあるのはちょうど半分か。」

エミがそう言って、エビフライを食べる

「で、でも!シンさんにはメティスさんって言う恋人がいるんだよ!?」

「別に良いんじゃない?いざとなれば愛人でもいいし。」

だからどうしたと言わんばかりに、エリコが言う

「お妾さんってこと?」

「それもいいかもね〜。」

「(間違ってる!何か絶対間違ってるよ!)」

今まで知らなかった自分の仲間たちの非常識さにマナはノックアウト寸前だ

「それにほら、最近ニュースでも良くやってるじゃない。新法案。」

「ああ、あれ?あれだったら妾とかなくなっちゃうんじゃない?」

「ていうか、あれって政治家が自分達のために作ったとしか思えないんだけど。」

「あ、言えてる言えてる。」

「?」

口々に言う四人と、話しに付いていけていないカナコ

マナに至っては新法案が何かさえ知らない

「新法案って何?」

「「「「「え?」」」」」

全員が食べる手を止め、マナに注目する

「マナ、ニュース見て無いの?」

「最近良くやってるよ?」

トモコとエミの言葉にマナはばつが悪そうに俯いて答える

「最近忙しくてテレビ見てなかったから・・・。」

泊りがけの仕事で野生の猿退治をやっていたマナは最近テレビを見る暇がなかった

ちなみに猿退治と言うのは、野生猿が群れを率いて農村の作物を荒らすのを阻止してくれ、と言うものだった

スタン警棒とネット弾で全部捕獲し、後は村に任せてきたのである

尤も、テレビを見る暇があってもマナが見るテレビ番組はドラマかコメディーぐらいだが

「カナコだって知ってるのに、何で知らないのよ?」

「え、えぇ!?知ってるの!?」

カナコの見るテレビ番組の9割以上がアニメである

そのカナコが知っていて、自分が知らないと言うのはマナ的に大ショックであった

「そ、それで、その法案って、何?」

「重婚制度だってさ。」

あっけらかんとユカリが言う

「じゅうこん?銃の弾の痕?」

理解していないマナ

今までどういう環境で育ったかよく判るコメントである

「重ねる結婚の婚で、重婚。」

配偶者のある者、つまりは既婚者がさらに結婚する事を重婚という

「人口が減ってきているから、子供を増やせってことらしいよ。」

「どーみても、愛人を囲うための法案にしか見えないけどね。」

「権力持ってるのって、大体そんなのじゃない。」

実に偏見の混じった意見だが、彼女達の言っていることも間違いではない

「でも施行されたらされたで面白いんじゃない?皆でシンさんに結婚を申し込むとか。」

「アハハ、それ面白いかも。シンさんの驚いた顔とか見てみたいしね。」

普通そんな理由で結婚を申し込む奴はいない

マナは仲間の非常識さのあまりに、頭を抱えて俯いてしまった

 

 

 

「なに言ってんだ?女子の連中。」

「さぁ?」

貪り食うように食べる男子は実に年相応な姿だった









































仕事を依頼したいと言う話しが【なんでも屋 十六夜】に舞い込んだのは、とある週末の昼時だった

実にダルそうに落ち合う場所へと出かけていくシンの後姿を見て、マナは思う

どこまでもやる気がないんだな、と

そりゃぁもう、これ以上無いってくらいのダレっぷりだ

そんなシンが、仕事中は真剣な顔をしているのをチラリと思い出し、マナは少し頬を赤く染めた

「なにやってんだ?置いてくぞ。」

呼びかけられ、ハッと前を見れば、既にシンとの間が随分と空いてしまっている

「ま、待ってくださいよ!」

「待てといわれて待つ馬鹿はいねぇんだよ。」

それは逃げているときの話しだ

「でも、珍しいですね。依頼内容を事務所以外で聞くなんて。」

たいていの場合は、事務所に依頼人が訪れるなり、電話やメールで依頼内容がシン達に伝えられる

だが、今回はとあるホテルの一室で直接会って話したい、と言うのが依頼人の希望だった

「面倒だよなぁ。直接話したいなら事務所に来いってんだよ。」

「そうですよね。これって交通費は向こう持ちなんですか?」

なにか、マナが金に煩くなっているように感じる

「後で経費だって言って請求すりゃぁいいよ。」

「そうですね。ついでに迷惑料もとったらどうです?」

本気で、金に煩くなってる

おそらくと言うか、間違いなくシンとメティスの影響だろう

金に執着しないシンとメティスに変わって、マナがしっかりとするしかない、といった具合だろうか

所謂、反面教師という奴だろう

「まぁ、どうでもいいけど。お前の好きにしろよ。」

「じゃあ、迷惑料も経費込みという事で。」

ポケットからメモ帳を取り出して、なにやら書き込んでいくマナ

文字だけでなく数字も見受けられることから、どうやら仕事が始まる前から経費の計算を行っているようだ

随分と、確りした娘である

「そうそう、シンさん。新法案のこと、どう思います?」

マナはメモ帳から目を離さずに、思い出したように尋ねた

昨夜の会話を思い出しての発現なのだが、仲間の非常識な意見から、一人でも(彼女的に)まともな意見が聞きたかったのだろう

尤も、個人的にシンに聞きたかったと言う気持ちが無いわけでもないだろうが

「ああ?新法案って、重婚制度の事か?」

「ええ、そうです。知ってるんですね。」

自分は知らなかったのに、と少し拗ねるマナ

「知ってるんですねって、あのな、俺は毎日新聞読んでるんだぞ?つーか、ニュースでも散々やってるだろうが。」

事実である

なんでも屋に舞い込む仕事は、それこそ数多く種類も限りない

様々な技能と、様々な情報が必要となってくるわけで、必要最低限の社会情勢ぐらい知っているべきである

それから言うと、新聞とは非常に便利なものであり、毎日最新の情報が得られるのである

尤も、シンの中には"大人は新聞を読む"という、どこか間違った知識があるわけで、マナにいつもいつもガキだと言っている手前、自分は大人であることに勤めなければいけない、と思っていたりするのは余談である

「私、忙しくてニュース見てませんでしたよ。新聞も取ってないし・・・。」

「新聞ぐらい取れよ。何のために高い給料払ってると思ってるんだ。」

実を言うと、マナの給料は高い

マナの給料は歩合制であり、仕事を行った数だけ、給料も増える。勿論基本給は決まっているが

「別に、新聞取るために働いてるわけじゃないんですけど。」

正論だ

現在のマナの目的は、まず借金を返すことにある

そのために、色々節約しているし、仕事にも励んでいるのである

ニュースを見る暇がないほど、仕事を多くとっているのは、その目的のためである

だが、マナが仕事をしているという事は、シンも仕事をしていると言うわけで

同じ仕事量でこうも生活のゆとりに幅が出るのは、やはり経験と実力の差と言うべきか

「社会情勢ぐらい把握しておけ。仕事に寄っちゃぁ政治に関わる事も入ってくるからな。」

「そんな仕事、請けたこと無いんですけど?」

入社して二ヶ月

マナの請けた仕事はそれほど難しいものばかりであった

政治が関わってくる仕事など、勿論したことがない

「俺とメティスはあるぞ?・・・・・まぁ、詳しくは言わないが、そういう仕事もあるってことは覚えておけ。」

内容を話してくれると思っていたマナは、落胆し肩を落とした

シンを見ていて、あからさまに"面倒だから言わない"と判断したのだとわかるからだ

「って、話がずれてますよ。」

「ん、ああ、重婚の話しだったな。」

マナの思い出したような言葉に、シンも同様に呟く

「どうでもいいんじゃないのか?興味ないし。」

「興味ないって・・・。」

欠伸交じりに言うシンに、マナはどこか不満げだ

マナは常識的な答えが欲しかったのだが、シンのそれは常識的にも非常識的にも聞こえない

本当に、興味が無く、どうでもいいと思っているのだ

「だいたいな、一夫一妻制が順応している国に、急にそんな制度作っても誰が利用するんだよ?少なくとも、一般人は利用しないな。」

「権力者が自分のために作った法案だって、皆言ってましたけど。」

マナが昨夜の会話を思い出しながら、言う

「その通りだな。どう考えても、愛人を正式に囲うための法案だろ?要するに、相手が一人じゃ満足できないって奴のタメの法案なのさ。そんなの別に無くても、浮気とか不倫してる奴は居る。それが法律で認められるか、認められないかの違いだけさ。尤も、法律で認められたからって、人の心、独占欲とか、嫉妬とかを押さえ込める奴がそう多くいるとは思わないしな。」

「確かに・・・そうですね。」

シンの言葉が、最初のものよりまともであり、さらに仲間のように非常識なものではない事から、マナは少しだけ満足した

実際、マナは重婚制度とか言われてもピンと来ないし、非常識な法案だと思ったぐらいだ

シンがどちらかと言えば批判的な意見を言った事で、自分の考えを肯定されたような気がして、満足したのだ

「まぁ、法律がどうなろうと、俺はどうでもいいけどな。結婚にさしたる興味も無いし。」

「え?興味ないんですか!?」

跳ね上がるように、マナの顔が驚愕の色を映し、シンの顔を見上げる

「大して無いな。俺も、メティスも。俺たちは自分の在り方は自分で確立したい、って思ってる。法律なんて、どこぞの誰かが勝手に決めた事だろ?そうやって態々人から保障された上でようやく成り立つ"自分"とその"関係"なんてのは必要ないのさ。第一、普段から法律破ってる俺達が、こういうときだけ法律を守るのか?馬鹿らしいだろ、そういうの。」

「確かにそうですけど、でも、メティスさんは・・・」

女なのだし、結婚に憧れたりするんじゃないのか

マナはそう言葉を続けようとしたが、それを察したようなシンは首を横に振った

「メティスに常識はあまり求めるなよ?最近じゃマシになってきたが、最初なんて自分を奴隷のように言ったりしてたからな。」

「ど、奴隷って・・・・・」

あまりのことに、マナは二の句が告げられない

「まぁ、奴隷って言ったら語弊があるな。従者、とかそんな感じだな。ともかく、メティスが言うには、メティスは俺に仕えるべき存在なんだとよ。何でそう思うのかは、俺にもわからないがな。」

「使えるべきって・・・なんか、おかしいですよ。」

マナから見たシンとメティスの関係は、それこそ信頼しあっている夫婦のようにも見える

それが、その本人が、"従者である事を望んでいる"という

「最近はマシになったっていったろ。俺とあいつは唯一の相互関係にあるんだ。つまりは、対等なんだよ。双方互いを必要としているし、いないと自分の在り方が歪んでしまう。メティスが自分を従者だと思うのなら、それは決して対等な関係じゃない。つまりは、唯一って関係も崩れてしまう。意味、判るか?」

「・・・・・メティスさんは、唯一である事を望みながら、その望みを歪ませているってことですか?」

自らの望みを、自ら歪ませる

唯一がいないと確立できないという歪な自己を持ち、それゆえに望み、その望みさえ自ら歪へといざなう

何たる皮肉か

堂々巡りで、結局は歪んでしまう相互関係

なんと、悲しい関係か

なんと、儚い関係か

なんと、荘厳な関係か

マナには、理解できない関係だった

「ま、そういうことだが、それはごく最初の頃でな。最近じゃあメティスも従者とあるべき、なんてあまり考えないようにしているようだ。唯一である事があいつにとっても最優先らしいからな。」

そういってシンは、どこか気恥ずかしそうに、だがはっきりと、嬉しそうに微笑んだ

何処までも唯一を必要とする男

ならば、なぜ

「じゃあ、シンさんはどうして他の女の人と関係を持っているんですか。」

意識せずとも、マナの言葉には責めるように、棘が含まれた

「ああ、そうだな。メティスが言うには、トラウマのせいでもあるんだろうが、そんなものは言い訳にもなりやしない。」

マナは責めるような言葉を発した自分を呪った

そして知った

シンが唯一の関係を自ら歪めてしまっていると理解していると

そしてそれを悔いている事を

シンが自らを、呪っている事を

己を呪う男を責めた事を、マナは悔やんだ

「リスク、だな。」

「え?」

「大きなものを手に入れるには、それなりの代償が必要なんだ。俺が、大きな力を手に入れた代償が、この歪みさ。」

シンは空を見上げ、眩しそうに自嘲した

空は何処までも晴れ渡り、真っ白な雲が穏やかに流れ行く

されども、男の目に映るのは曇り空

何処までも陰鬱で、今にも涙雨をこぼしそうな、自分の心

「伝説に曰く、狼男は満月の夜に凶暴化するらしい。俺の能力【餓狼】もまた然り。過去より伝わるその概念が、俺をそう"あるべきもの"と律している。」

「よく、判らないんですけど・・・。」

物語などに伝わる狼男が満月の夜に変身し、凶暴化するのは良く知れ渡っている事だ

だが、概念とは、律するとはなにか

マナには理解が及ばぬところだった

「LevelUもVも結局のところはATフィールドの応用に過ぎない。【極東の魔女】が言うには、インパクト後は人々の心のつながりは大きくなっているらしい。」

「?」

「簡単に言うと、他人の気持ちを察してやれるようになっている、との事だが、それは個人差があってATフィールドを使える者にはそれが顕著に現れるって事らしい。LevelUやVになれば、なおさらその効果が現れる。」

「つまり、シンさんやメティスさんは、人の気持ちを寄り強く察してあげられると。」

「そういうことだ。」

つたない説明で納得してくれた事に安心したのか、シンは表情を緩めた

「気持ちを察する事が出来るのは、比較的良い事のようにも見える。だが、マイナス面だった確りあるんだ。怒りや憎しみに影響を受けたりする事だってある。そして、一番大きな影響が概念なんだ。」

「その概念ってなんなんですか?」

マナにはそれがよく理解できない

「俺も完全に理解しているわけでもないし、うまく説明する事ができるわけでもない。【極東の魔女】が言うには、"人がそう思うゆえにそう形ある"、だったか・・・。つまり、人が"狼男は満月の夜に凶暴化する"と思っている故に、俺は"満月の夜に凶暴化する"という事らしい。まぁ、俺もよく理解していないから、そういうもんだと思っておけ。」

「はぁ。」

シンが理解し切れていないように、マナも理解し切れていないようだ

「とにかく、月の満ち欠けで俺は凶暴化するわけだが、LevelUの俺が暴れまわってちゃ、危険すぎる。で、その凶暴性、破壊欲を別の何かに変換しているんだが、一番効率がよく、かつ安全なのが・・・・・性欲に変換することなんだよ。」

「せ・・・性欲って・・・・え、ええっとぉ・・・・・」

マナは頬を赤く染めて、シンから目線を逸らした

「言ってる方も恥ずかしいから、あまりそう顕著に反応するなよ。まぁ、そういうわけで、凶暴性が転じた強力な性欲を解消するために、月に二回他の女を抱いている、と。」

「トラウマのせいで、メティスさんには手出しできない、という事ですか。」

「それもあるが、俺は概念による強制なんかでメティスを抱きたくはない。その欲求は俺自身のものじゃないからな。それに、そういう時の俺はどうも手加減が出来ないらしくてな、結構強引らしい。メティスをそういう風に抱きたいと思うわけでもない。」

「そうですか・・・・・」

シンのメティスへの想いの強さは理解できた、14歳の少女に話す内容じゃないなぁ、とマナは思ったが口にはしなかった

言えば必ずシンは「普段はガキ扱いするなって言っておいて、こういう時はガキ扱いしろってか?」と言うに決まっているからだ

「ん?ちょっと待ってください。さっき、月に二回とか言いませんでした?」

月の満ち欠けは、約30日で一周する。つまりは、満月は月に一回という事だ

「新月でも凶暴化するんだよ。なんでも"満月との正対照"が関係している、とか聞いたな。」

「それもユイさんに聞いたんですか?」

マナの問いに、シンは頷く

「と言っても、凶暴化の質って言うか、満月と新月じゃ違うんだけどな。」

「?と言うと?」

「満月は、本当に凶暴と言うか、"本能"が活発化するというか、まぁそんな感じで。対する新月は、"理性ある狂気"と言ったところだな。自分がなにをしているか、なにをしたいかは理解できる。が、それが本質的な俺の望みではなく、新月の影響による望みであり、俺はそれを是認しない。だが、判っていても、狂気が俺を突き動かす、と言った感じだ。」

「結局、どっちもどっちですね。」

結局のところは、暴れるのを性欲に転化して晴らしているのだから、どちらも同じなのである

マナはシンの説明で一応理解はしたが、納得はしていなかった

事情としては理解できるが、一女として納得するわけには行かないのだ

「む、時間に遅れそうだ。さっさと行くぞ。」

「あ、待ってくださいよ。」

腕時計を確認し、歩みを速めたシンを慌ててマナは追って行った。

マナは気づかなかったが、性欲の処理においては自慰行為というものもある

だが、その自慰行為もシンの身を焦がす"狂気"を前にしてはなんら意味が無い

"狂気"、あるいは"狂暴"において、その発散方法は他者や物に対する力の行使である

シンの持つ"狂気"にしても、【他者への力の行使】でなければ、性欲が発散されないのである

それは、転換する以前に生じている"狂暴"としての基礎

その礎の上に気づかれた性欲もまた、他者への行使以外では発散されない

シン自身気づいてはいないが、自慰行為で発散されない事は本能レベルで植えつけられているのである

さらに言うならば、彼が彼になる前、少年であった頃の記憶が、自慰行為を遠ざけている要因の一つとも言えるだろう

どちらにせよ、難儀な事である









































今回の仕事の依頼人が会合場所に選んだのは、第二東京市のとある高級ホテルの一室だった

一泊数十万はするような部屋で、マナは勿論、シンも泊まった事も入ったことも無い

マナが物珍しそうにキョロキョロしている反面、シンは落ち着いてタバコをすっていたりしている

依頼人より先に部屋に着いたようで、二人は寛いで待っていたが、5分もしないうちに二人の男女が部屋に入ってきた

40過ぎの中肉中背の男であり、特に目立つ容姿でもないが、どことなく厳格な雰囲気を漂わせている

男の後ろに立つ女性は、細身の長身であり、プラチナシルバーのロングヘアーが印象的だ

「あ?サキ?」

「シン?貴方もこの依頼に噛んでいるの?」

どうやらシンとサキと呼ばれた女性は知り合いのようだが、生憎マナがその女性を知らなかった

「どういうことだ?依頼を複数に頼むとは、俺たちを舐めているのか?」

シンは目を細め、男を睨む

依頼を別のところにも頼むという事は、依頼人が自分達を信じていないという事だ

詰まる所、信用問題に関わってくる

全うな依頼ではないという事だ

「マナ、帰るぞ。」

「え?あ、はい。」

立ち上がって足早に帰ろうとするシンを男が慌てて押し留める

「ま、待ってくれ。これには事情があるんだ!」

男の必死の形相には目もくれず、シンはサキに視線を向ける

どこかとぼけた様子で、サキは肩をすくめ、視線で話しかける。「話しぐらい聞いても良いんじゃないか」と

「ちっ。」

不満げではあるが、シンは椅子に腰を下ろし、足を組む

不満さを隠してもいないが、留まってくれたシンを見て、男は安堵したように溜息をついた

「シン、その子は?」

ニヤニヤと、サキがからかう様な表情で尋ねる

「助手、いや、助手見習いか。」

「へぇ〜、てっきり愛人か何かだと思ったんだけどね〜。メティスに愛想が尽きたとか。」

クスクスと笑う、サキを睨む

「殺すぞ?」

「はいはい、怖いからやめてね。」

言葉とは正反対に、実に楽しそうに微笑み、椅子に腰を下ろすサキ

「あの、シンさん。この人は?」

「・・・【破壊屋】だ。なんでも屋と違って、荒事専門。ぶっ壊すだけが能ってわけだな。」

「酷いなぁ。まるで私が暴れるだけの力馬鹿に聞こえるじゃないか。」

心外そうな口ぶりだが、サキの表情は変わらず、楽しげなままだ

「で?何でお前までいるんだ?」

「それは私だって知らないよ。依頼をしたいって聞いて、此処まできたらシンがいたんだから。」

シンはその言葉に納得したのか、サキへの追及をやめる

サキとて状況は同じなのだ

依頼人は、【なんでも屋】と【破壊屋】に喧嘩を売っているようなものであり、双方を舐めているとしか言い様がない

二人揃って、視線を依頼人に向けると、男はビクリと身体を震わせた

主に殺気のこもったシンの視線に怯えたのだろう

「事情って奴を説明してもらおうか?」

「あ、ああ、わかった。」

息を落ち着け、男は話しだした

「最初に依頼したのは【魔法使い】だったんだ。だが、【魔法使い】が貴方達に依頼するよう言って来て「ああ、もういいや。」え?」

とある知り合いの二つ名が出た時点、シンは大体を察した

「つまりは、【魔法使い】は仕事をしたくないから仕事を別に回した。けど、私やシン一人ずつでは難しい依頼だから、二人共に依頼したってことね。」

「そういうことだな。」

うんうん、と頷いて、納得するサキ

疲れたように頷いて、納得するシン

そして、顔を見合わせ

「「はぁぁ〜〜〜〜・・・・・・・。」」

溜息をついた

二人とも【魔法使い】ことユイのことは知っている

お互いに料理を食べさせられて昏睡したと言う同じ経験を持つ者同士でもある

「厄介な依頼になりそうだ。」

「同感ね。」

もう一度、あわせたような溜息をつき、依頼人に向き直った

「依頼を聞こうか。」

打って変わって真剣な表情になってシン

呆気にとられたのか、いまひとつ反応しきれずにいる男だった





















男は"山岸"と名乗ると、依頼内容を話し始めた

妻を殺し、獄中で死亡した兄の娘を養子として引き取ったこと

兄の事は正直理解に苦しむが、娘に罪など無く、実の娘のように愛している事

その娘が使徒殲滅機関NERVの"覚醒者狩り"によって問答無用でさらわれていってしまった事

娘を助けて欲しいという事

「また、でかい山だな。」

「そうね。私たちだけで出来るかしら?」

「能力的に足りないな。政治的に力を持った奴が必要だ。」

「わ、私は国連に勤めているが・・・。」

政治的といわれ、名乗りを上げる山岸だったが

「駄目だ。国連でもTOPに影響を与えるような奴で無いと無理だ。・・・・・癪だが、カヲルを呼ぶか?」

「そうね、その方が良いわね。」

「政治的で収まらなかったら力技か?家からNERVに対抗できるのは俺とメティスだけだぞ。マナは戦力的には乏しい。」

マナは確かに軍属としての訓練は受けているが、覚醒者ではない

シンとマナの間には、とてつもない実力の差があるのだ

「家からは、楓と椿を出せるけど。」

「五人じゃ足らないな。同業者にも応援を呼ぶか?」

「そうね、情報面で言えば、A・Dと、後はロゥルを呼ぶわよ?」

「ああ。後は、ラルとゼル辺りでどうだ?」

「あの二人か、強すぎるけどね、問題ないでしょ。」

「相手がNERVだからな。馬鹿強いあいつらも必要だってことだ。後は、【復讐屋】の連中にも頼むか?」

「裏音に?馬鹿言わないで、仕事内容に合わないわよ。」

「戦力的には高いんだけどな、あいつらは。」

「でもLevelUでしょ?LevelVを筆頭に集めた方がいいわ。」

「世界中から集める気かよ。」

「相手は世界に蔓延る深淵、業敵NERVなんだから、いっそ全ての膿を出した方がいいわ。」

「確かに。」

なにやら依頼人そっちのけで話しを進める二人

「あ、あの・・・・・受けていただけるのですか?」

「話しの内容で察しろ。受けるさ。NERVはウザイしな。」

シンが今更なにを言っている、とばかりに言う

「私たちみたいな奴にとっては、NERVは業敵なのよ。口実が出来たって感じね。」

フフフ、とサキはどこか危険な笑みを浮かべる

「だな。こういう事でもない限り、結束するなんてことはしないからな。」

「そうね。いっその事【極東の魔女】も巻き込む?」

「当然だろ?あいつらが俺たちに回したんだから。責任ぐらい取ってもらうさ。あぁ、それと、あいつの名前ユイって言うらしいぞ。」

「え、嘘?何でそんなの知ってるの?」

「本人から聞いた。名乗り忘れてたらしいぞ。」

「あ〜、なんかあの人なら納得できる理由だわ。」

「確かにな。」

微妙に世間話に変わってきているのは、気のせいではないだろう

シンとサキの打ち合わせが延々と続くので、此処で"覚醒者狩り"についての話しをしよう

NEBVの行っている行動の事だが、公的には"候補者の募集"という事になっている

インパクト直前まで戦い抜いたチルドレン

そして、覚醒者となったチルドレンを、さらに増強するために、他の覚醒者をあつめ、軍隊化しようと言うものだ

NERVは強権を利用し、強引にこの計画を推し進め、覚醒者たちを集めている

NERVに入ることを容認すれば、チルドレンとして破格の対応を受ける代わりに、人生の自由を失う

NERVに入ることを拒否すれば、"使徒"として、人類の敵として死ぬまで追われることになる

彼らに覚醒者として判断された時点で、逃げ道は無いのである

故に、その好意を知る多くの一般人は自分が覚醒者であることを隠し生きている

自分の身を守るための能力を、自分の身を守るために隠さなければいけないのだ

なんとも、人の強欲の過ぎる話である

ちなみに、会話から取り残されたマナと依頼人の山岸は、二人で話しをしていた

内容と言えば、山岸の義娘が覚醒者であることが発覚した理由などだ

山岸が言うには、幼い頃から仕事の都合で引越しばかりで友人が作れなかった義娘は内気な性格になってしまった

そして、ようやく定住した街の学校では、いじめを受けてしまい、咄嗟にATフィールドを張ってしまったらしい

尤も、いじめの内容がエスカレートした結果、命も危ぶまれるような状況であったらしい

そして、そのいじめを行っていたグループが、いじめていた相手が力を持っているものだと知り、復讐を恐れた

恐れた故に、NERVに密告し、義娘は候補生として半ば拉致されるように連れて行かれたそうだ

密告とあるが、NERVは一般に対し覚醒者を募集しており、連絡ルートも確立している

詰まる所、一般人の恐怖心を利用して、密告を奨励しているのだ

マナは自分とは違った形の理不尽な人生を歩む少女に悲しみを抱き、そのいじめのグループとNERVに憎しみを持った

NERVの方はシン達が何とかしそうな勢いなので、いじめの方のグループは自分が何とかしようか、と思う始末である

方法は幾らでもあるし、例えばNERVを利用する事もできる

NERVは密告されてきた者が覚醒者でないとしても、それを信じないのだ

能力を隠して、覚醒者でないと偽っているのだとして、能力を出させようとする

専ら、拷問であったり、洗脳であったりするのだが、無いものは無いのだから、どうしようもない

死亡するか、廃人となって処分されるかしか、選択肢はない

それ故に、奨励されている密告も、数は少なくあまり利用されてはいない

もし密告すれば、復讐として自分も密告される事は、少し考えればわかることだからだ

いじめグループが密告したのは、考えの足らない子供であるとマナは判断した

自分と同い年の14歳であるという事も知ったが、何とも不愉快な気分だった

そういった考え無しの奴らこそ、シンの言うガキなのだ

そんな奴らと同じに呼ばれるのは何とも腹立たしいものだと、いつの間にかマナの怒りのベクトルはシンに向かっていたりした









































一機のヘリが、静かにヘリポートに降り立つ

巻き立つ強風の中、まるで無風のうちを歩くように、ヘリから姿を現した女が平然と歩く

透き通るような銀髪に、深紅の瞳

「よぅ、早かったな。」

ヘリポートに一人立つ男、シンだ

「早く君に会いたかったからね。嗚呼、君との一時こそ僕にとって至上の時間だ。会いたかったって事さ。」

「そうか。」

女の言葉を聞き流したかの様に、平然としているシン

「相変わらずつれないね、君は。でも、その冷たさもまた君を引き立てるアクセント。その在り方、そして生き方は君にこそ相応しい。」

「行くぞ、カヲル。」

「ああ、待っておくれ。荷物を下ろさなくては。」

ヘリに同席していた男が下ろした荷物をガラガラと引き釣り、既に先に行ってしまったシンの背中を見やる

「フフフ、優しい君も素敵だけど、つれない君も素敵だよ。繊細な心は失わず・・・・・故に我が身は女と成り果てた・・・・・か。」

歌うように、謡うように、詠うように言葉をつむぎ、カヲルは妖艶に微笑む

「死すら超越させ、性すら超越させる君の魅力。見初めたのが僕でない事が嘆かれるよ。・・・メティス君は本当に羨ましい。いっそ嫉ましいと言ってしまおうか。いやいや、それでは君に嫌われてしまうね。こんなにも愛しているのに、いつもつれないね、シンジ君。」

微笑み、歩くカヲル

「荷物を貸せ。」

ドアのところで待っていたシンが、荷物を受け取り、また歩き始める

「ああ、その些細な気配りも君の魅力だよ。シン君。」

「よかったな。」





















山岸に依頼を受けた高級ホテルの一室

そこに、10名程の男女が集まっていた

今回の依頼に対して、働く者達である

メティスやマナ、A・Dの姿もある

「さて依頼人。今回動く奴らの紹介でもしようか。」

このメンバーでの最初に依頼を受けたのがシンとサキであることから、二人がリーダー扱いを受けている

仕事と責任を押し付けあった結果、結局シンがリーダー役になってしまったようだ

「まずは【なんでも屋 十六夜】の俺とメティス、そしてマナ。」

胸に手を当て、深々と頭を下げるメティスと、ペコリとどこか愛らしげにお辞儀をするマナ

「で、知ってるだろうが、【破壊屋】の水狩みがり水狩サキ。」

どーも、と言いたげに手を上げるサキ

その後には、瓜二つの二人の女性が立っていた

「【破壊屋】の従業員で御鎚みかづち楓と椿。鬼女姉妹と言った方が知られているな。」

「鬼女だなんて・・・・・酷いです。」

「そうです。容姿で人を判断するなんて・・・・」

ブツブツと文句を言う楓と椿

「俺が呼び始めたわけじゃないだろ。次、【情報屋】のA・D、本名は省略。それと、同じく【情報屋】のロゥル・マッギフォーン。」

省略ってなんやねん! といきり立つA・Dを捨て置いて、シンはロゥルを紹介する

シンが紹介するのだから、実力は相応なのだろうが、見た目は如何ともしがたい

外見年齢、約10歳

それがロゥルの容姿なのだ、非常に愛らしい子供なのだが

その姿に何ともいえない山岸だったが、シンのフォローが入る

「ロゥルは情報工学の天才だ。チョコレートさえ与えておけば、間違いなく仕事をする。」

板チョコにかぶりついているロゥルを視界から排除しながら、シンは語る

口周りがチョコで汚れているのを、メティスがハンカチで拭いてやっていたりもする

山岸は内心「本当に天才なのだろうか」と酷く不安になったが、突っ込まない方が得策だと思い、黙った

「次ぎ行くぞ。【殲滅屋】のゼル・ハワードと、【殺し屋】のラル・ゼーファンだ。」

筋肉質の男、ゼルと、スリムで物静かな男、ラル

酷く対照的な見た目の二人だが、職業は危険を感じさせるものだ

「ゼルは放っておけば暴れるし、ラルはスナイパーだ。腕は確かだから安心しろ。」

紹介の言葉が不満だったのか、ゼルはシンを一睨みしたが、それ以上追求する気は無いようだ

「【仲介屋】のカヲル・ローレンツ。先代の当主を国連に売り渡す代わりに遺産を全て相続したローレンツ家の当主だ。暇つぶしで【仲介屋】をやっているがな」

「売り渡した、とは酷いね。彼は国際指名手配を受けたのだから、通報するのは義務だよ。」

ローレンツの名は山岸も聞き及んでいた

SELLEの企んだ人類補完計画の委員会の議長を務めた男、キール・ローレンツ

山岸は、ローレンツ家がキールを排他し、国連との関係を良好なものへと変貌させたと聞いた事があった

その若き当主が、目の前にいるのだ

シンに擦り寄ろうとしてメティスに阻止されているが

「あー、最後に【極東の魔女】、【奇術師】、【魔法使い】であり、そこで寝ているのがユイだ。」

フカフカの高級ベッドの上で安眠している女を指差し、紹介する

山岸自身も依頼をするために連絡をしたことがあったのだが、その破天荒ぶりは知らず、言葉も出なかった

本当に、熟睡しているのだ

これから、依頼内容の確認と、対抗策の捻出を行うと言うのに、寝ているのだ

「放っておけばいいさ。後でキツイ仕事やってもらうから。」

投げやりそういって、シンはユイから視線を外す

見た目20代後半ぐらいなのだが、セーラー服を着ているのは謎だ

スカートこそ、膝丈より長く、それこそ優等生のような校則(?)にのっとったものだが、シンは確信していた

"清純派を気取っているに違いない"と

時折奇行に及ぶユイは、その斬新さと言うか、意表を付く行動故に【奇術師】と呼ばれていたりする

本人は知らないが、公然の秘密と言う奴だ

「ルームサービスとるけど、どうするー?」

「適当に取っといてくれ。」

「りょうかーい。」

呑気な雰囲気を醸し出すサキと、その隣で「チョコレート、チョコレート」と騒ぐロゥル

面倒そうに答えたシンを見て、マナが、このメンバーで大丈夫かなぁ、と思ったのは仕方の無い事であったりする










To be continued...


(あとがき)

ご無沙汰してます、麒麟です
Capriccio、第六曲をお送りしました。
六話目ですね。
やっとNERVの話しに進んだのに、NERVのメンバー誰も出てきてないし・・・・・
"山岸"は出てきたのに、肝心のマユミは名前さえ出てこない始末。
シンの結婚観とか、月との関連性を説明が長くなってしまったし。
えー、結局は対NERVへの人員集めでした。
カヲルが出てきたり、ぶっちゃけて擬人化使徒が出てきたりと大変です。
【サキ→サキエル】、【ラル→ラミエル】、【ロゥル→イロウル】、【ゼル→ゼルエル】の四人ですか。え?カヲルの女性化?気紛れです。
人気の高いメティスは出番が殆どありません。と言うか、皆無と言っていい状態。もっと活躍させねば。
ユイははっちゃけてますね。ええ、セーラー服ですし。
別にコスプレの趣味があるとは言いませんが、おそらくシンに突っ込みを入れて欲しかったんでしょう。構って欲しかったんですね。黙殺されましたが。
楓と椿の双子のオリキャラも出てきました。つーか、基本的に擬人化って名前だけで、オリキャラじゃないのかなぁと思う今日この頃。
ああ、言い忘れましたが、少なくとも登場した擬人化使徒達の中で【インパクト前】のこと、つまりはEVAと使徒との戦いを覚えているのはカヲルだけだったりします。
他の面々は普通に【帰還者】として戸籍とってます。記憶喪失で。
感想もらえると凄く嬉しいです。(ちなみに掲示板よりメールの方が執筆スピードがアップします。戯言ですが。)
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